説明

エレベーターの空調装置およびその空調制御方法

【課題】空調制御の情報から、より実態に則した温度・湿度等のかご室内の環境変化を予測し、予測に従った空調制御を行うエレベーターの空調装置、空調制御方法を提供する。
【解決手段】かご室内の空気の状態と乗車人数に基づいて空調機に、乗車人数が所定の人数未満の時に通常空調モードの設定温度を設定し、乗車人数が前記所定の人数以上の時に前記通常空調モードより空調効果を高めた空調強化モードの設定温度を設定する空調制御手段と、前記空調強化モードによる制御を行った各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶する空調強化情報集計記憶部と、を備え、前記空調制御手段が、前記空調強化情報集計記憶部の空調強化頻度が所定の頻度値以上の時間帯には、乗車人数に関係なく前記空調強化モードの設定温度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの空調装置およびその空調制御方法、特にその予測制御に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記引用文献1では、所定の時刻において、かご内の温度・湿度・負荷が所定以上になると、空調能力を高める空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163272号公報
【特許文献2】特開2000−219440号公報
【特許文献3】特開平9−151041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの空調装置では、種々の情報に基づいて空調制御切り換えを行っている。
上記引用文献1では、所定の時刻において、かご内の温度・湿度・負荷が所定以上になると空調能力を高めているが、空調能力の切り替えから温度・湿度が変化するのに遅延時間があり、急激で大きな温度・湿度・負荷の変化に対応できない。
【0005】
また上記引用文献2では、所定の時刻になると、予め設定していた温度に設定値を切り替えているが、エレベーター周囲の現状の動的環境変化(温度・湿度・負荷等)を考慮した制御を行っていない。
【0006】
また上記引用文献3では、環境状況検出のための多数のセンサと分析学習装置を備え、エレベーターの利用状況としてエレベーター利用者の人数を検出している。しかしながら、過去に学習した結果と大きく異なる利用人数となった場合には、利用者に不快感をもたらす場合が多い。
空調が通常設定になっている空かごに大勢が乗車すると、その直後は不快な環境となる場合が多い。また、エレベーターの乗車時間はわずかであるため、温度・湿度の上昇を検知した後に空調能力を高めても、降車までに快適な環境にできない可能性がある。
【0007】
上記のことに鑑み、この発明は、空調制御の情報から、より実態に則した温度・湿度等のかご室内の環境変化を予測し、予測に従った空調制御を行うエレベーターの空調装置およびその空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、かご室内の空気の状態と乗車人数に基づいて空調機に、乗車人数が所定の人数未満の時に通常空調モードの設定温度を設定し、乗車人数が前記所定の人数以上の時に前記通常空調モードより空調効果を高めた空調強化モードの設定温度を設定する空調制御手段と、前記空調強化モードによる制御を行った各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶する空調強化情報集計記憶部と、を備え、前記空調制御手段が、前記空調強化情報集計記憶部の空調強化頻度が所定の頻度値以上の時間帯には、乗車人数に関係なく前記空調強化モードの設定温度を設定することを特徴とするエレベーターの空調装置等にある。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、この発明は、空調制御の情報から、より実態に則した温度・湿度等のかご室内の環境変化を予測し、予測に従った空調制御を行うエレベーターの空調装置およびその空調制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施の形態によるエレベーターの空調装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の特徴とする部分の動作を説明するための動作フローチャートである。
【図3】図2のステップS102での自動空調強化指令部の動作を説明するための動作フローチャートである。
【図4】この発明による空調強化情報集計記憶部に構築する空調強化情報の一例を示す図である。
【図5】この発明による空調強化情報集計記憶部に構築する空調強化情報の別の例を示す図である。
【図6】この発明の特徴とする部分の別の動作例を説明するための動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば夏場の出勤時間等、高い気温・湿度の中でエレベーターのかご室に大勢が乗り込むと、通常の空調設定では非常に不快となる。そこで、気温・湿度が高く、かご負荷により乗車人数が多いときに、空調を強めることが考えられるが、この発明では、空調を強めた時刻を記憶し、過去に空調を強める頻度が高かった時間帯において、乗車人数に関わらず(空かごであっても)空調を強めるようにする。これによって、大勢が乗り込む時点で十分に冷却されたかごとなっているため、エレベーターの利用者の快適性を損なうことがなくなる。
【0012】
以下、この発明によるエレベーターの空調装置およびその空調制御方法を実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態によるエレベーターの空調装置の構成を示すブロック図である。空調機1は、エレベーターかご室内やかご上等に設置され、エレベーターかご室内を所定の温度・湿度に所定の送風量で調整する機能を持つ。乗車人数検出部2は、エレベーターかご室内の乗車人数を検出して空調制御部3及び空調強化情報集計記憶部4へ出力する。温度・湿度検出部7はエレベーターかご室内の温度・湿度を検出して空調制御部3へ出力する。
【0014】
空調制御部3は、乗車人数検出部2、温度・湿度検出部7、自動空調強化指令部5の入力に従って空調機1の設定温度を出力する。空調強化情報集計記憶部4は、乗車人数が所定の人数以上になった日時を記憶する。自動空調強化指令部5は、自動空調強化指令を空調制御部3へ出力する。日時検出部6は現在の日時を空調強化情報集計記憶部4及び自動空調強化指令部5へ出力する。なお、空調制御部3、自動空調強化指令部5、日時検出部6が空調制御手段を構成する。
【0015】
図2は空調制御部3、空調強化情報集計記憶部4、自動空調強化指令部5の特にこの発明の特徴とする部分の動作を説明するための動作フローチャートである。この動作フローチャートの動作は所定の周期で繰り返される。以下、図2に従って動作を説明する。また、以下では説明を簡単にするために、かご室内の温度の制御について説明する。
【0016】
最初に図2には明確には示されていないが、空調制御部3は基本的な制御として、乗車人数検出部2から入力される乗車人数、温度・湿度検出部7からのエレベーターかご室内の温度・湿度に従って、かご室内の温度・湿度が快適な所定の値になるように空調機1に設定温度を出力する。
【0017】
空調制御部3は、乗車人数検出部2から入力される乗車人数が0人か否か(乗客の有無)を判定する(ステップS101)。ステップS101において、乗車人数が0人(乗客無し)と判定されれば、図3で後述する自動空調強化指令部5からの自動空調強化指令に従って現在、後述する自動空調強化時間帯か否かを判定し(ステップS102)、自動空調強化時間帯であれば、空調強化状態(空調強化モード)を選択し(ステップS103)、自動空調強化時間帯でなければ、空調強化状態を解除し、通常空調状態(通常空調モード)とする(ステップS104)。
【0018】
ステップS101において、乗車人数検出部2から入力される乗車人数が0人以外(乗客有り)と判定されれば、乗車人数検出部2から入力される乗車人数が予め設定しておく閾値(所定の人数)以上か否かを判定し(ステップS105)、乗車人数が閾値以上であれば、空調強化状態を選択し(ステップS106)、乗車人数が閾値未満であれば、空調強化状態を解除し、通常空調状態とする(ステップS108)。ここで、予め設定しておく閾値は、0人より大きい値すなわち1人以上であり、通常設定の空調では効果が低く感じる程度に混雑した場合の人数にすれば良く、かごの乗車定員などから設定する(例えば乗車定員×a%(a:乗車定員に従って段階的に変えてもよい)を四捨五入した人数)。ステップS107については後述する。
【0019】
ここまでのフローにて、空調強化状態または通常空調状態が設定される。続いて、空調強化状態か否か判定し(ステップS109)、空調強化状態であれば、空調機の設定温度を予め設定しておく空調強化時の値に設定し(ステップS110)、空調強化状態でなければ、空調機の設定温度を予め設定しておく通常空調時の値に設定する(ステップS111)。ここで、予め設定しておく空調強化時(空調強化モード)の値は、かごに大勢が乗り込んでも快適に感じられることができるような温度に設定する。また、予め設定しておく通常空調時(通常空調モード)の値は、一般的に快適に感じられることができるような温度に設定する。空調強化時の値は通常空調時の値からの差分として設定しても良い。
【0020】
空調強化情報集計記憶部4は、乗車人数が閾値以上であれば、(ステップS101及びステップS105)、空調強化情報を記憶する(ステップS107)。ステップS107では、日時検出部6から入力される現在の日時より、該当する時間帯の空調強化回数にカウントする。これにより例えば図4、図5に示すような時間帯毎の空調強化回数(頻度)を集計した空調強化情報を構築する。そして所定の頻度値(例えば10回/時間/日)以上の時間帯を自動空調強化時間帯とする(例えば図4、5では時間帯7:00−10:00、16:00−18:00)。空調強化情報集計記憶部4はこのような空調強化情報を例えば所定の期間毎(月毎、季節毎等)に集計し、集計後に集計した新しい空調強化情報に更新して使用する。なお最初は空調強化情報がないため、標準モデル(エレベータ設置環境別に予め求め準備されているもの等)の空調強化情報を初期設定しておく等すればよい。
【0021】
なお、上述のように図2の動作が所定の周期で繰り返されるため、頻度値とは、時間帯中の空調強化状態である時間の割合を示すことになる。
【0022】
図3は図2のステップS102での自動空調強化指令部5の動作を説明するための動作フローチャートである。以下、図3に従って動作を説明する。自動空調強化指令部5は、日時検出部6から現在の日時、空調強化情報集計記憶部4から空調強化情報を取得し、入力される現在の日時に関し、該当する時間帯の空調強化頻度が予め設定しておいた閾値(例えば上述の10回/時間/日)以上か否かを判定し(S201)、現在の時間帯の空調強化頻度が閾値以上であれば、自動空調強化時間帯を選択して(S202)自動空調強化指令を発生し、現在の時間帯の空調強化頻度が閾値未満であれば、自動空調強化時間帯を解除して(S203)自動空調強化指令を停止する。空調制御部3は図2の動作フローチャートのステップS102で、自動空調強化指令部5からの自動空調強化指令で、自動空調強化時間帯か否かを判定する。
【0023】
図4、5に示した空調強化情報集計記憶部4に構築する空調強化情報の空調強化頻度は、図4に例示するように、時間帯毎にカウントしておいた各日、1時間当たりの空調強化回数とする(図4、5は類似の頻度の時間帯をさらにまとめたもの)。また、時間帯は、全ての日で共通にする必要はなく、図5に例示するように、曜日、祝日か否か、日付別にするか、あるいはこれらに基づいてグループ分けしてもよい。予め設定しておく閾値は、頻繁にエレベーターが利用され、通常設定の空調では設定温度を維持することが困難となる値に設定する。
【0024】
この実施の形態に基づいてエレベーターの空調機を制御することで、夏場の混雑する時間帯であっても、快適なエレベーターを利用者に提供することが可能となる。乗車人数の検出は混雑具合を判断するための処理なので、エレベーターかご室内に設置されたカメラと画像処理装置等によって実際の人数をカウントしてもよいし、かご床に設置された秤によってかご負荷を計測し、負荷が0%であれば、乗車人数は0人(図2のステップS101)、所定の負荷以上であれば、乗車人数が所定の閾値の人数以上(図2のステップS105)として扱ってもよい。通常エレベーターには満員検出のためにかご秤が設置されているため、これを用いることで、特別なセンサを用いることなく、この実施の形態を実現することが可能である。
【0025】
またこの実施の形態では、空調機の温度設定のみを制御する構成としたが、湿度・送風量など他の要因を通常空調モード、空調強化モードの制御対象に加えてもよい。
【0026】
またこの実施の形態の空調制御は、常時実施する必要はなく、特定の日付や時間帯のみといった運用としてもよい。また、通常空調時の設定温度及び空調強化時の設定温度は、日付、曜日、時間帯等に応じて変更する運用としてもよい。
【0027】
また、図2の動作フローチャートの動作では、エレベーターかご室内が無人でなければ、空調強化情報集計記憶部4の空調強化情報に基づく空調強化制御は行っていない(図2のS101参照)。大勢が乗車する時間帯で空調を強める頻度が高い時間帯であっても、大勢が移動する方向と逆方向に乗車する場合など、乗車人数が少ない場合には、過剰に冷却してしまう可能性がある。そこで、空かごの場合には、空調を強めるが、少ない乗車人数を検出した場合には、通常の空調設定にすることで、乗客に寒さによる不快感を与えることを防ぐようにしている。
【0028】
しかしながら、乗車人数に係らず、空調強化情報集計記憶部4の空調強化情報に基づいて、空調強化制御の頻度が高い時間帯では空調強化制御を行うようにしてもよい。この場合の動作フローチャートは図6のようになる。ステップS102で自動空調強化時間帯か否かを判定し、自動空調強化時間帯であれば、空調強化状態(空調強化モード)を選択し(ステップS103)、自動空調強化時間帯でなければステップS105の乗車人数が閾値以上か否かの判断に移行する。他の部分は図2と同様である。
【0029】
また、過去に上述の空調制御を行った頻度を判定するときに、時間帯と共にカレンダーを考慮するようにしてもよい。エレベーターの利用状況は、1日の時間帯毎の変化だけでなく、曜日や祝日、商用ビルであれば定休日等、日毎に偏りが生じることが多い。そのため、曜日毎にグループ分けして空調を強める頻度と時刻を記憶することで、より正確に空調を制御することが可能となる。曜日毎ではなく、平日と土日祝日、平日と土曜日と日祝日等、ビルの特色に合わせて、利用状況が同一となるグループに分けてもよい。
【0030】
この発明では、乗車人数そのものではなく、空調制御の情報である、時間帯毎の空調強化頻度に基づいて空調制御を行う。空調強化は乗車人数が閾値以上の際の制御であるが、時間帯毎の空調強化頻度を求めることで、かご室内の環境に与える影響の個々の乗客での差が平均化される。従ってより実態に則した温度・湿度等のかご室内の環境変化の予測が行え、この予測に従ってより快適なかご室内環境を維持できる空調制御を行うことができる。
【0031】
さらに、時間帯毎の空調強化頻度を求める際、乗車人数が所定の人数以上になったことによる空調強化モードだけに従って各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶するようにしており、この発明による強制的な空調強化の分が含まれないようにしており(図2,6のS107参照)、より正確なかご室内の環境変化の予測が行える。
【符号の説明】
【0032】
1 空調機、2 乗車人数検出部、3 空調制御部、4 空調強化情報集計記憶部、5 自動空調強化指令部、6 日時検出部、7 温度・湿度検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室内の空気の状態と乗車人数に基づいて空調機に、乗車人数が所定の人数未満の時に通常空調モードの設定温度を設定し、乗車人数が前記所定の人数以上の時に前記通常空調モードより空調効果を高めた空調強化モードの設定温度を設定する空調制御手段と、
前記空調強化モードによる制御を行った各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶する空調強化情報集計記憶部と、
を備え、
前記空調制御手段が、前記空調強化情報集計記憶部の空調強化頻度が所定の頻度値以上の時間帯には、乗車人数に関係なく前記空調強化モードの設定温度を設定することを特徴とするエレベーターの空調装置。
【請求項2】
前記空調強化情報集計記憶部が、乗車人数が前記所定の人数以上になったことによる前記空調強化モードだけに従って各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶することを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段が、かご室内に乗客がいない場合に、前記空調強化情報集計記憶部の前記空調強化頻度が所定の頻度値以上の時間帯には、前記空調強化モードの設定温度を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項4】
前記空調強化情報集計記憶部が、前記空調強化頻度を所定の期間毎に求めて更新することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項5】
前記空調強化情報集計記憶部が、曜日、祝日か否かに分けて前記空調強化頻度を求めて記憶することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のエレベーターの空調装置。
【請求項6】
かご室内の空気の状態と乗車人数に基づいて空調機に、乗車人数が所定の人数未満の時に通常空調モードの設定温度を設定し、乗車人数が前記所定の人数以上の時に前記通常空調モードより空調効果を高めた空調強化モードの設定温度を設定するエレベーターの空調制御方法であって、
前記空調強化モードによる制御を行った各時間帯の空調強化頻度を求めて記憶し、
前記空調強化頻度が所定の頻度値以上の時間帯には、乗車人数に関係なく前記空調強化モードの設定温度を設定する、
ことを特徴とするエレベーターの空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103795(P2013−103795A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248489(P2011−248489)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】