説明

エレベーター装置

【課題】簡易な構造で、つり合おもりに点検台を設けたものにおいて保守作業者の安全を確保することのできるエレベーター装置の提供。
【解決手段】つり合おもりに設けられる折りたたみ式の点検台と、つり合おもりを昇降路下部にて固定する固定手段とを備えたエレベーター装置において、固定手段が、つり合おもりに設けられる第1の貫通孔10aと、つり合おもり用ガイドレール7に固定され、第1の貫通孔と対向可能な第2の貫通孔10b1を有する受け材10bと、第1の貫通孔および第2の貫通孔に挿通される固定ピン10cとから成るとともに、点検台に、この点検台を開いたときに第1の貫通孔および第2の貫通孔と対向可能となり、かつ、固定ピンが挿通される第3の貫通孔を設けることで、点検台と固定手段とを機械的に連動させ、固定手段によりつり合おもりを固定した状態で点検台の組立てを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の最下階フロアレベル付近に設置した機器を点検するための点検台を備えたエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の最下階フロアレベル付近に設置した機器を点検するための点検台を備えたエレベーター装置として、従来、つり合おもりに点検台を直接設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、つり合おもりを最下部に固定する機械的ストッパーと、エレベーターが通常走行時はかごの昇降域にない壁側の位置に格納された状態で昇降路壁に固定されるとともに、点検作業時はかごの昇降域に組立てられる点検台、および、前述の機械的ストッパーを差し込まないときは点検台を収納位置にロックする電気錠とを設け、点検作業時の安全を図るようにしたものが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−176324(段落番号0015〜0017、図1)
【特許文献2】特開2005−179015(段落番号0028〜0051、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した特許文献1に示す従来のエレベーター装置では、点検中のかご、およびつり合おもりの固定については特に考慮されておらず、建物の最下階フロアレベル付近に巻上機を設け、点検台上からブレーキの調整作業を行った際に、かご、およびつり合おもりの重さが均等でないと、より重い方向に向けて動く恐れがあった。したがって、つり合おもりと同期して点検台が動いた際に、点検台上の保守作業者が挟まれたり、落下したりすることが懸念される。
【0004】
また、前述した特許文献2に示す従来のエレベーター装置では、つり合おもりを機械的ストッパーで固定しているため、つり合おもりが動くことはなく、安全性が確保されているといえる。しかし、点検台は機械的ストッパーを差し込まないと開錠しない電気錠によりその開閉が制限されている。すなわち、点検台とつり合おもりを固定する手段とは電気的に連動した構造となっている。このため、制御装置に電気錠用の電源を持たなければならず、建物の最下階フロアレベル付近に巻上機と制御盤の両方を設けた場合など、部品が増えて製造コストアップとなるとともに、複数のスイッチなどが必要となるため、保守点検する部品も増えるといった問題がある。さらに、電気錠への電源系統に異常があった場合は、つり合おもりに機械的ストッパーを差し込んでも電気錠が開錠できなくなり点検台が開かないため、制御装置を点検できないといった問題点もある。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、簡易な構造で、つり合おもりに点検台を設けたものにおいて保守作業者の安全を確保することのできるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、昇降路内を昇降するかごと、このかごと主索を介して連結され、前記かごと反対方向に昇降するつり合おもりと、前記かごの昇降を案内するかご用ガイドレールと、前記つり合いおもりの昇降を案内するつり合いおもり用ガイドレールと、前記つり合おもりに収納可能に設けられる折りたたみ式の点検台と、前記つり合おもりを昇降路下部にて前記つり合いおもり用ガイドレールに対して固定する固定手段とを備えたエレベーター装置において、前記点検台と前記固定手段とを機械的に連動させ、前記固定手段により前記つり合おもりを固定した状態で前記点検台の組立てを可能としたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、点検台と固定手段とは機械的に連動するようになっており、固定手段によりつり合おもりを固定した状態で初めて点検台の組立てが可能となる。これによって、点検台を組立てた状態にあるとき、つり合いおもり、およびかごが動くことを抑止し、したがって、つり合おもりに点検台を設けたものにおいて保守作業者の安全を確保できる。また、点検台と固定手段とを機械的に連動する構造とすることで、装置を簡易なものとすることができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記固定手段が、前記つり合おもりに設けられる第1の貫通孔と、前記つり合おもり用ガイドレールに固定され、前記第1の貫通孔と対向可能な第2の貫通孔を有する受け材と、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔に挿通される固定ピンとから成るとともに、前記点検台に、この点検台を開いたときに前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔と対向可能となり、かつ、前記固定ピンが挿通される第3の貫通孔を設け、前記固定ピンを前記第1の貫通孔、前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔に挿通させたときに前記点検台の開状態が保持されることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明では、第1の貫通孔、第2の貫通孔および第3の貫通孔のそれぞれを互いに対向させた状態とし、これらの貫通孔に固定ピンを挿通して、つり合おもりをつり合いおもり用ガイドレールに対して固定するとともに、点検台の開状態を保持する。このように、各部位に設けた貫通孔に固定ピンを挿通するという簡易な構造で点検台と固定手段とを機械的に連動させることができる。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記固定ピンが所定の格納位置から移動したことを検知してかごの運転を停止させる格納スイッチを設けたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明では、点検台の組立てのために固定ピンが格納位置から外されると、格納スイッチを介してかごの運転が電気的に停止される。これによって、点検台利用時における保守作業者の安全をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定手段によりつり合おもりを固定した状態で初めて点検台の組立てが可能となることから、点検台を組立てた状態にあるとき、つり合いおもり、およびかごが動くことを抑止し、したがって、保守作業時の安全性を高めることができる。また、点検台と固定手段とを機械的に連動させる構造とすることで、装置を簡易なものとし、製造コストの低減を図るとともに、電気的な異常により点検台が開かないといった事態を避けることができる。さらに、作業時にかごの運転を電気的に停止する格納スイッチを設けた場合、機械的な手段および電気的な手段の2系統で、保守作業時、かご、およびつり合いおもりを固定するものとなり、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るエレベーター装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す概略構成図、図2は点検台を組立てた状態を示す側面図、図3は点検台を格納した状態を示す側面図、図4は本実施形態における点検台および固定手段の要部を示す斜視図、図5は要部を異なる方向から見た斜視図である。
【0015】
エレベーター装置は、図1に示すように、人および荷物を載せて昇降路1内を昇降するかご2と、このかご2と主索3を介して連結され、かご2と反対方向に昇降するつり合おもり4と、最下階付近に設置され、主索3を介してかご2とつり合おもり4とを駆動し昇降させる巻上機5と、かご2の昇降を案内するかご用ガイドレール6と、つり合いおもり4の昇降を案内するつり合いおもり用ガイドレール7と、つり合おもり4に収納可能に設けられる折りたたみ式の点検台8と、つり合いおもり4と対向する昇降路1の底部に設置されたつり合おもり用緩衝器9と、つり合おもり4を昇降路下部にてつり合いおもり用ガイドレール7に対して固定する固定手段10とを備えている。なお、5aは巻上機5を支持する支持台である。
【0016】
つり合おもり4は、図2および図3に示すように、かご2の重量に対応するように積載される着脱可能なおもり4aと、おもり4aを支持するつり合おもり枠4bと、つり合おもり枠4bの上部に設置され、主索3が巻き掛けられる吊り車4cとを備えている。
【0017】
点検台8は、図2および図3に示すように、保守作業者が作業を行なう作業部8aと、つり合おもり枠4bに固定され、作業部8aの一端が回動可能に取付けられる上受け台8bと、作業部8aの中間位置に一端が回動可能に接続される支持部材8cと、支持部材8cの他端が回動可能に取付けられる下受け台8dと、作業部8aの周囲に設けられる手摺り8eとを備えている。なお、図3は点検台8を格納してかご2の昇降スペースを確保した状態を示し、図2に示す状態から、手摺り8eを折り畳むとともに、作業部8aと上受け台8bとの回動部、作業部8aと支持部材8cとの回動部、支持部材8cと下受け台8dとの回動部を介し、作業部8aを下向きに格納する。なお、作業部8aの格納方向が上向きとなる構造とすれば、つり合おもり4下方に作業部8aの格納のために必要となる寸法が短くなることから、ピットの深さ寸法が浅い場合において有効である。
【0018】
そして、本実施形態のエレベーター装置は、図4に示すように、点検台8と固定手段10とを機械的に連動させるようになっている。すなわち、固定手段10が、つり合おもり枠4bに設けられる第1の貫通孔10aと、つり合おもり用ガイドレール7に固定されるとともに、第1の貫通孔10aと対向可能な第2の貫通孔10b1を有する受け材10bと、第1の貫通孔10aおよび第2の貫通孔10b1に挿通される固定ピン10cとから成るとともに、点検台8に、この点検台8を開いたときに第1の貫通孔10aおよび第2の貫通孔10b1と対向可能となり、かつ、固定ピン10cが挿通される第3の貫通孔(図示せず)を設けたものとなっている。なお、第3の貫通孔は下受け台8dに形成されている。また、エレベーターの運転速度が比較的速い場合、第3の貫通孔を介してボルト等を用いて格納状態にある点検台8をつり合おもり枠4bに対して固定することで、点検台8の振動・音の発生を防ぐことができる。さらに、エレベーターに備えられるブレーキ開放装置でつり合おもり4をつり合おもり側緩衝器9の上面に載置させた状態とし、すなわち、つり合おもり4の質量がつり合おもり側緩衝器9にかかった状態で、固定手段10の受け材10bを取付けるようにすることにより、受け材10bに求められる強度を低減し、その構造を簡易なものとすることができる。
【0019】
また、固定ピン10cを通常運転時に格納する格納部11が設けられている。格納部11は、図5に示すように、受け材10bの裏面側に対となって配置され、固定ピン10cが挿通される貫通孔を有し、その両端を支持する支持体11aと、固定ピン10cが挿通される貫通孔を有するおもり11bと、おもり11bを上下移動可能に案内するとともに、上下方向の抜けを防止する案内部11cと、固定ピン10cが所定の格納位置から移動したことを検知してかご2の運転を停止させる格納スイッチ11dとから成っている。
【0020】
本実施形態にあっては、最下階付近に設置された巻上機5の保守作業を行なうため点検台8を組立てる場合、つり合おもり枠4bの第1の貫通孔10aと、受け材10bの第2の貫通孔10b1が同じ高さ位置となり互いに対向するように、つり合おもり4を昇降路下部に移動する。なお、ここで、つり合おもり4を最下位置とした状態にあわせて固定手段10の受け材10bをあらかじめつり合おもり用ガイドレール7に取付けておくことで作業時間の短縮を図ることができる。その後、固定ピン10cを格納部11から引抜くとともに、つり合おもり4に格納されている点検台8を開き、受け台8dの第3の貫通孔8fを、第1の貫通孔10aおよび第2の貫通孔10b1に対向した状態とし、固定ピン10cを各々の貫通孔に貫通する。このように、固定ピン10cを第1の貫通孔10a、第2の貫通孔10b1および第3の貫通孔8fに挿通させたときに点検台8の開状態が保持される。この状態で図1に示すように、保守作業者が作業台8に乗り、作業を行なう。このとき、つり合おもり4は固定手段10によりつり合いおもり用ガイドレール7に対して機械的に固定されているため、巻上機5のブレーキの分解・調整作業を実施しても、かご2およびつり合おもり4が移動することはなく、保守作業者の安全が保たれる。また、点検台8の組立て時に固定ピン10cが格納部11から引抜かれた際、おもり11bが自重で落下して格納スイッチ11dが動作し、かご2の運転を電気的に停止することで、第三者による不意な運転を抑止し、保守作業者の安全をさらに確保する。
【0021】
本実施形態によれば、固定手段10によりつり合おもり4を固定した状態で初めて点検台8の組立てが可能となることから、点検台8を組立てた状態にあるとき、つり合いおもり4、およびかご2が動くことを抑止し、したがって、保守作業時の安全性を高めることができる。また、点検台8と固定手段10とを機械的に連動させる構造とすることで、装置を簡易なものとし、製造コストの低減を図るとともに、電気的な異常により点検台8が開かないといった事態を避けることができる。さらに、作業時にかご2の運転を電気的に停止する格納スイッチ11dを設けることで、機械的な手段および電気的な手段の2系統で、保守作業時、かご2、およびつり合いおもり4を停止するものとなり、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】点検台を組立てた状態を示す側面図である。
【図3】点検台を格納した状態を示す側面図である。
【図4】本実施形態における点検台および固定手段の要部を示す斜視図である。
【図5】要部を異なる方向から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 昇降路
2 かご
3 主索
4 つり合いおもり
4a おもり
4b つり合おもり枠
4c 吊り車
5 巻上機
6 かご用ガイドレール
7 つり合いおもり用ガイドレール
8 点検台
8a 作業部
8b 上受け台
8c 支持部材
8d 下受け台
8e 手摺り
8f 第3の貫通孔
9 つり合おもり用緩衝器
10 固定手段
10a 第1の貫通孔
10b 受け材
10b1 第2の貫通孔
10c 固定ピン10
11 格納部
11a 支持体
11b おもり
11c 案内部
11d 格納スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するかごと、このかごと主索を介して連結され、前記かごと反対方向に昇降するつり合おもりと、前記かごの昇降を案内するかご用ガイドレールと、前記つり合いおもりの昇降を案内するつり合いおもり用ガイドレールと、前記つり合おもりに収納可能に設けられる折りたたみ式の点検台と、前記つり合おもりを昇降路下部にて前記つり合いおもり用ガイドレールに対して固定する固定手段とを備えたエレベーター装置において、
前記点検台と前記固定手段とを機械的に連動させ、前記固定手段により前記つり合おもりを固定した状態で前記点検台の組立てを可能としたことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
前記固定手段が、前記つり合おもりに設けられる第1の貫通孔と、前記つり合おもり用ガイドレールに固定され、前記第1の貫通孔と対向可能な第2の貫通孔を有する受け材と、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔に挿通される固定ピンとから成るとともに、前記点検台に、この点検台を開いたときに前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔と対向可能となり、かつ、前記固定ピンが挿通される第3の貫通孔を設け、前記固定ピンを前記第1の貫通孔、前記第2の貫通孔および前記第3の貫通孔に挿通させたときに前記点検台の開状態が保持されることを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記固定ピンが所定の格納位置から移動したことを検知してかごの運転を停止させる格納スイッチを設けたことを特徴とする請求項2記載のエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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