説明

エレベーター

【課題】ヘリポートのフロアからの突出高さを低くしたエレベーターを提供する。
【解決手段】エレベーター1は、フロア3及び建物屋上面4間を連結する外枠5と、外枠5内を上下に移動するかご保持部18と、かご保持部18と共に外枠5内を上下に移動するかご6とを備えている。かご保持部18は、かご6の下方に位置する昇降基台15と、一端が昇降基台15に接続されると共に鉛直方向上向きに延びる4本の縦柱12と、縦柱12の他端に固定された矩形板状の上梁13とから構成されている。かご6の両側面のそれぞれの近傍を鉛直方向に延びるように、伸縮可能なテレスコピックシリンダ7が2本設けられている。テレスコピックシリンダ7の上端は、下方から上梁13に当接している。また、昇降基台15には、かご6を昇降するための補助昇降装置であるテーブルリフター10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレベーターに係り、特に、建物の屋上に設置されるヘリポート用のエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの建物の屋上に設置されたヘリポート用の従来のエレベーターが、例えば、特許文献1に記載されている。このようなヘリポート用のエレベーターの従来の構造を図5及び6に示す。エレベーター50は、ヘリポート51のフロア52と建物屋上面53とを連結する外枠54内を、人や物等を乗せるかご55が昇降するようになっている。かご55の上方には、縦柱60によって上梁58が固定され、かご55の両側方には、かご55を挟むように鉛直方向に伸縮可能なテレスコピックシリンダ56が互いに平行に設けられている。テレスコピックシリンダ56の下端は、外枠54内の建物屋上面53に対して窪むように形成されたピット57の底面57aに接続されると共に、上端は、下方から上梁58に当接している。テレスコピックシリンダ56が伸縮すると、上梁58が押し上げられたり下降したりすることにより、かご55が外枠54内を昇降する。
【0003】
図5に示されるように、かご55が建物の屋上にあるときに、建物屋上面53上の人は、かご55内に乗り込むことができる。その後、かご55が外枠54内を上昇してヘリポート51に到達すると、図6に示されるように、上梁58が床押上げ戸59を押し上げて、上梁58及びかご55がフロア52に対して突出するようになる。かご55がヘリポート51に到達したら、かご55内に乗っている人は、フロア52に降りることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−140223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベーター50では、テレスコピックシリンダ56が長いために、建物屋上面53に窪んだピット57を設けると共にかご55と上梁58との間に隙間62を設ける必要がある。このため、図6に示されるように、かご55が上昇してヘリポート51に到達すると、上梁58は、かご55の高さhと隙間62の間隔hとを加えた高さh(=h+h)だけ、フロア52よりも上方へ突出してしまう。一般に、ヘリコプター61が上梁58に接触することなしにヘリポート51へ飛来できるようにするためには、ヘリポート51から所定の角度をなす転移表面Sよりも上梁58が下方に位置するようにすることが必要である。フロア52からの突出高さhが高い場合には、この条件を満たすために、エレベーター50をヘリポート51から遠くに設けなくてはならないので、建物の屋上が狭い場合には、エレベーター50を設置できなくなってしまうといった問題点があった。この問題点を避けるために、隙間62を設けないとすると、隙間62の間隔hと同じ深さだけピット57を深くしなければならなくなってしまう。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ヘリポートのフロアからの突出高さを低くしたエレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベーターは、内部に空間を有するかごと、前記かごを保持するかご保持部と、前記かご保持部を昇降させることにより前記かご及び前記かご保持部を昇降させる、鉛直方向に伸縮可能な昇降装置と、前記かご保持部に設けられ、前記かごを昇降させる補助昇降装置とを備え、前記昇降装置が伸びて前記かご保持部を押し上げることによって前記かご保持部及び前記かごが上昇した後、前記補助昇降装置が前記かごをさらに上昇させる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、鉛直方向に設けられた伸縮可能な昇降装置が伸びてかご保持部を押し上げることによってかご及びかご保持部が上昇した後、補助昇降装置がかごをさらに上昇させることにより、ヘリポートのフロアに対するかご保持部の突出が抑えられるので、ヘリポートのフロアからの突出高さを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この実施の形態に係るエレベーターは、ビルなどの建物の屋上に設置されたヘリポート用のエレベーターである。図1に示されるように、エレベーター1は、ヘリポート2のフロア3と建物屋上面4とを行き来するためのものである。尚、図1は、エレベーター1を正面から見た図であり、エレベーター1の構成を分かりやすくするために、実際には正面に存在している扉や壁の記載を省略している。エレベーター1は、フロア3及び建物屋上面4間を連結する外枠5と、外枠5内を上下に移動するかご保持部18と、かご保持部18と共に外枠5内を上下に移動するかご6とを備えている。かご6は内部に空間を有しており、その空間内に人や物等を乗せることができるようになっている。かご保持部18は、かご6の下方に位置する昇降基台15と、一端が昇降基台15に接続されると共に鉛直方向上向きに延びる4本の縦柱12と、縦柱12の他端に固定された矩形板状の上梁13とから構成されている。かご6は、昇降基台15と上梁13との間で昇降基台15に対して上下方向に移動可能に、かご保持部18に保持されている。かご6と上梁13との間には、間隔Δhの隙間17が形成されている。
【0010】
建物屋上面4には窪んだピット8が設けられ、ピット8と連通するように外枠5が設けられている。ピット8の底面8aには、かご6及びかご保持部18が下降したときの衝撃を緩和するために緩衝器9が設けられている。また、かご6の両側面のそれぞれの近傍を鉛直方向に延びるように、伸縮可能なテレスコピックシリンダ7が2本設けられている。テレスコピックシリンダ7の下端はピット8の底面8aに接続され、上端は下方からかご保持部18の一部分である上梁13に当接している。ここで、テレスコピックシリンダ7は、かご6及びかご保持部18を昇降させるための昇降装置を構成する。さらに、一端がピット8の底面8aに接続されると共に鉛直方向上向きに延びるガイドレール11が4本設けられ、かご6の両側面のそれぞれの近傍を2本ずつのガイドレール11が通るようになっている。ただし、図1には、1本ずつのガイドレール11が図示され、さらに、テレスコピックシリンダ7の構造を明確にするために、ガイドレール11を破線で描いている。また、フロア3と外枠5とが接続した領域は開口しており、この開口を塞ぐように床押上げ戸14が開閉可能に設けられている。これにより、上梁13がフロア3よりも下方に位置しているときは、フロア3がほぼ平坦になっている。
【0011】
図2に示されるように、縦柱12のそれぞれには、2つのガイドシュー16が間隔を空けて固定されており、同一の縦柱12に固定された2つのガイドシュー16は同一のガイドレール11に嵌合している。ガイドシュー16は、かご保持部18の昇降と共に、ガイドレール11に沿って移動できるようになっている。尚、図2において、2つのガイドシュー16間の範囲で、ガイドレール11と縦柱12とは重なり合うように描かれている。
また、昇降基台15には、かご6の下方に位置するように、かご6を昇降するための補助昇降装置であるパンタグラフ式のテーブルリフター10が設けられている。テーブルリフター10は、互いに平行に間隔を置いて設けられた2つの案内手段20を備え(図2には1つのみが図示されている)、案内手段20によって、テーブル21が基台22に対して平行を保ったまま昇降するようになっている。テーブル21はかご6の下面に接するように設けられ、基台22は昇降基台15に固定されている。案内手段20は、内アーム23及び外アーム24がそれぞれの中央部分で交差してピン25によって互いに回動可能に支持されている。内アーム23は、一端がテーブル21に回動可能に取り付けられると共に、他端に基台22の上面を転動するコロ26が取り付けられている。外アーム24は、一端が基台22に回動可能に取り付けられると共に、他端にテーブル21の下面を転動するコロ27が取り付けられている。内アーム23及び外アーム24を回動させることによって案内手段20の高さhを調整する油圧シリンダー28が設けられ、油圧シリンダー28の油圧を調整するための油圧ユニット29が昇降基台15に設けられている。
【0012】
次に、この実施の形態に係るエレベーターの動作について説明する。
図1に示されるように、テレスコピックシリンダ7の長さLが最も短く、かつテーブルリフター10の高さhが最も低いときは、かご6の内部の空間の底面6aが建物屋上面4と面一の状態になっている。この状態で、建物屋上面4上の人は、かご6の内部の空間に乗り込むことができる。
【0013】
かご6の内部の空間に人が乗り込んだ後、テレスコピックシリンダ7が伸びることにより、テレスコピックシリンダ7の先端が上梁13を押し上げる。すると、縦柱12が上梁13に引っ張られて上昇し、さらに縦柱12が昇降基台15を上昇させる。すなわち、テレスコピックシリンダ7は、かご保持部18を上昇させる。これにより、かご6がかご保持部18と共に上昇する。この際、図2に示されるように、ガイドシュー16がガイドレール11に沿って上昇するので、かご6及びかご保持部18はガイドレール11に沿って上昇する。ただし、図2には、テーブルリフター10がかご6を上昇させた状態が示されているが、実際は、テーブルリフター10がかご6を上昇させていない状態、すなわちテーブルリフター10の高さhが最も低い状態で、テレスコピックシリンダ7がかご6及びかご保持部18を上昇させる。
【0014】
テレスコピックシリンダ7がかご6及びかご保持部18を上昇させると、最終的に図3に示された状態になる。すなわち、図3は、テレスコピックシリンダ7の長さLが最も長く、かつテーブルリフター10の高さhが最も低い状態である。かご6及びかご保持部18が上昇する過程で上梁13が床押上げ戸14を押し上げ、上梁13及びかご6の一部がヘリポート2のフロア3から突出している。しかし、この状態では、かご6の内部の空間の底面6aはフロア3よりも下方に位置しているので、かご6の内部の空間に乗る人は、フロア3へ降りることができない。
【0015】
そこで、次に、テーブルリフター10がかご6を上昇させると、図4に示された状態になる。すなわち、図4は、テレスコピックシリンダ7の長さLが最も長く、かつテーブルリフター10の高さhが最も高い状態である。テーブルリフター10がかご6を上昇させることにより、かご6の内部の空間の底面6aはフロア3とほぼ面一になるので、かご6の内部の空間に乗る人は、フロア3へ降りることができる。
【0016】
テーブルリフター10がかご6を上昇させる際、かご保持部18は上昇せず、隙間17(図1または3参照)が減少するようにかご6だけが上昇する。これにより、かご6と上梁13とが近接して隙間17がほぼなくなった状態となる。このため、テーブルリフター10がない場合に比べて、隙間17の間隔Δh(図1または3参照)だけ、フロア3から突出するかご保持部18の高さが低くなる。これにより、エレベーター1をヘリポート2から遠くの位置に設置しなくても、上梁13を、ヘリポート2から所定の角度をなす転移表面Sよりも低くすることができる。
【0017】
このように、テレスコピックシリンダ7の上端が下方から上梁13に当接し、テレスコピックシリンダ7が伸びて上梁13を押し上げることによってかご6及びかご保持部18が上昇した後、テーブルリフター10がかご6をさらに上昇させることにより、ヘリポート2のフロア3に対するかご保持部18の突出が抑えられるので、フロア3からの突出高さを低くすることができる。
また、フロア3からの突出高さが低くなることにより、ガイドレール11と縦柱12とが重なり合う範囲が大きくなるので、同一のガイドレール11に嵌合する2つのガイドシュー16の間隔を大きくすることができる。これにより、かご6及びかご保持部18のガイドレール11に対する安定性を向上することができる。
さらに、フロア3と建物屋上面4との間の距離が異なるエレベーターを設計する際に、テレスコピックシリンダ7の昇降能力だけでなく、テーブルリフター10の昇降能力を考慮することもできるので、エレベーターを設計する際の自由度を向上することができる。
【0018】
この実施の形態では、補助昇降装置として、油圧シリンダー28によって案内手段20を駆動させるパンタグラフ式のテーブルリフター10を使用したが、この構成のテーブルリフターに限定するものではない。テーブルを基台に対して平行に保ったまま昇降させるテーブルリフターであればどのような構成のものであってもよく、例えば、駆動源により駆動される回転ナットとこの回転ナットと螺合するねじ軸とからなる機構によって案内手段を駆動するテーブルリフターでもよい。また、この実施の形態で用いたいような、2つのアームをアルファベットのX字状に組み合わせた案内手段を有するテーブルリフターではなく、エレベーターのかごを昇降させる高さに応じて、X字状に2つのアームを組み合わせた案内手段を鉛直方向に複数組み合わせたものを有するテーブルリフターであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に係るエレベーターの構成を示す正面図である。
【図2】この実施の形態にかかるエレベーターの構造の一部を示す拡大側面図である。
【図3】この実施の形態にかかるエレベーターの昇降動作を説明するための正面図である。
【図4】この実施の形態にかかるエレベーターの昇降動作を説明するための別の正面図である。
【図5】従来のエレベーターの構成を示す正面図である。
【図6】従来のエレベーターの昇降動作を説明するための正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 エレベーター、6 かご、7 テレスコピックシリンダ(昇降装置)、10 テーブルリフター(補助昇降装置)、18 かご保持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有するかごと、
前記かごを保持するかご保持部と、
前記かご保持部を昇降させることにより前記かご及び前記かご保持部を昇降させる、鉛直方向に伸縮可能な昇降装置と、
前記かご保持部に設けられ、前記かごを昇降させる補助昇降装置と
を備え、
前記昇降装置が伸びて前記かご保持部を押し上げることによって前記かご保持部及び前記かごが上昇した後、前記補助昇降装置が前記かごをさらに上昇させるエレベーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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