説明

エレベータ乗りかごの操作盤

【課題】限られたスペースに表示される行き先階の数を実効的に増やすことができるエレベータ乗りかごの操作盤を提供する。
【解決手段】乗りかごの操作盤は、行き先階表示を含む行き先階登録ボタンと、行き先階登録ボタンの行き先階表示内容を切り替える操作が入力される切替操作部と、切替操作部の状態に応じて、行き先階表示内容を一括して切り替える表示内容切替部とを備える。また、操作盤は、行先登録ボタンの押下を検出するボタン押下検出部と、切替操作部の状態と押下状態が検出された行先登録ボタンとに基づいて、指定された行き先階を判定する行き先階判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ乗りかごの操作盤に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの着床階数が多い場合、行先登録ボタンの数が増加するため行先登録ボタンの設置のために必要なスペースが広くなる。しかし、行先登録ボタンが設置される乗りかご内の操作盤のスペースは限られているため、着床階数が多い場合には乗りかご内の操作盤の設計が困難になる。一方、乗りかご内の操作盤に関する多くの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には、エレベータの行先呼び登録装置の発明が開示されている。この装置においては、乗りかご内の操作盤に行先登録ボタンの他にテンキーを設け、このテンキーは乗りかご内の操作盤の下方部に配置する。テンキーには数字ボタン、「登録」ボタンおよび「取消」ボタンを有する。数字ボタンおよび「登録」ボタンを操作すると、行先呼びが登録され、行先登録ボタンに内蔵する行先呼び登録灯が点灯する。数字ボタンおよび「取消」ボタンを操作すると行先呼びが取り消され、行先呼び登録灯が消灯する。テンキーを乗りかご内の操作盤の下方部に配置することによって、年少者あるいは身長の低い搭乗者はテンキーを用いて乗りかご呼びを行うことができる。しかし、乗りかご内の操作盤に行先登録ボタンの他にテンキーを設けると、さらに広い操作盤スペースが必要となる。また、テンキーを用いた乗りかご呼びは操作性が良いとは言いがたい。
【0004】
特許文献2には、エレベータ運転操作システムの発明が開示されている。このシステムにおいては、エレベータの乗りかご内または乗場に設置されたタッチパネルのエレベータの通常運転時に用いられる基本画面には、階床名が表示された行先登録ボタンと、車椅子ボタンと、メニューボタンとが配置され、行先登録ボタンに触れると行先呼び登録を行なうとともに、車椅子ボタンに触れると、車椅子専用運転に切り替り、さらにメニューボタンに触れると、種々の特殊運転指令が行える画面に切り替えられるようになっている。このことによって、乗りかご内もしくは乗場のタッチパネルによるエレベータの運転操作の一元管理を実現するエレベータ運転操作システムが得られるとしている。しかし、乗りかご内の操作盤に行先登録ボタンの他に車椅子ボタンおよびメニューボタンを設けると、さらに広い操作盤スペースが必要となる。
【0005】
特許文献3には、エレベータの乗りかご操作盤の発明が開示されている。この乗りかご操作盤には、エレベータの複数の着床階にそれぞれ対応して配列された行先登録ボタンと、これらの行先登録ボタンそれぞれのボタンヘッドの裏面に重合して設けられ各行先登録ボタンに対応した着床階の関連情報等を表示する表示パネルと、行先登録ボタンの操作に伴い表示パネルに表示される内容を制御する制御回路と、この制御回路に接続されて人為操作により表示パネルに表示される内容の表示データを変更する入力装置が備えられている。このことによって、乗りかご操作盤をよりインテリジェントなものにし得るとともに、利用者によって有効な建物およびエレベータ等の情報を表示することができるとしている。しかし、このような構成を採ることによって、限られたスペースの乗りかご操作盤に表示される行き先階の数を増やすことができるわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−221172号公報
【特許文献2】特開2006−282308号公報
【特許文献3】特公平8−9461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、限られたスペースに表示される行き先階の数を実効的に増やすことができるエレベータ乗りかごの操作盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるエレベータ乗りかごの操作盤は、エレベータ乗りかごの行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンと、複数の行き先階登録ボタンの行き先階表示内容を切り替える操作が入力される切替操作部と、切替操作部の状態に応じて、乗りかごの搭乗者の目に見える行き先階表示内容を一括して切り替える表示内容切替部とを備える。また、操作盤は、行先登録ボタンが押下されたことを検出するボタン押下検出部と、切替操作部の状態とボタン押下検出部によって押下状態が検出された行先登録ボタンとに基づいて、指定された行き先階を判定する行き先階判定部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図である。
【図2】一実施形態における乗りかごの室内から乗りかごドア方向を見た図である。
【図3】一実施形態による乗りかご内の操作盤の一状態を表す図である。
【図4】一実施形態による乗りかご内の操作盤の他の状態を表す図である。
【図5】他の実施形態による乗りかご内の操作盤の一状態を表す図である。
【図6】行き先階登録ボタンの行き先階表示内容を切り替える構成の一例を表す図である。
【図7】行き先階表示形態の例である。
【図8】指定された行き先階を判定する動作を説明するための機能ブロック図の一例である。
【図9】行き先階登録ボタンの行き先階表示内容を切り替える構成の他の例を表す図である。
【図10】行き先階登録ボタンの行き先階表示内容を切り替える構成の、さらに他の例を表す図である。
【図11】別な実施形態による乗りかご内の操作盤の一状態を表す図である。
【図12】さらに別な実施形態による乗りかご内の操作盤の一状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜、図面を参照しながら本発明の一例としての実施形態の説明を行う。尚、それぞれの図において、同一の部分または対応する部分には同一の参照符号を付すとともに、重複した説明は省略する。また、添付する図面は、それぞれの実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。
【0011】
本明細書および添付する図面においては、例としてエレベータの乗りかごは1階〜20階に着床可能な場合を想定しているが、本実施形態は、着床階の数が20に限定されることなく、2以上の任意の正数の着床階が存在する場合にも実施可能である。図1に、一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図を示す。また、通常のエレベータシステムの構成要素であるが、本実施形態に直接的には関連しない機能要素は、図に示していない。エレベータシステムの運行を制御する主制御盤102は、エレベータ機械室あるいは昇降路内に設置され、乗りかご104を昇降させる巻上機106を制御する。また、主制御盤102は、乗りかご104に設置され、乗りかご104内の機器を制御する乗りかご制御盤108に、指示データ、監視データ、その他必要なデータを伝達する。乗りかご104には、後ほど説明を行う操作盤110が設けられている。乗りかご104の搭乗者は、操作盤110を介して、乗りかご104の行き先階を指定する。乗りかご104の指定された行き先階の情報は、操作盤110から、乗りかご制御盤108を介して、主制御盤102に伝達され、乗りかご呼び登録が行われる。
【0012】
図2に一実施形態における乗りかご104の室内から乗りかごドア方向を見た図を示す。乗りかご104内には、搭乗者が乗りかご104を運転操作するための操作盤110が設けられている。
【0013】
一実施形態による操作盤110には、図3に示すように、乗りかご104の搭乗者が行き先階を指定するための行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタン302、乗りかご104が着床階で停止しているときに乗りかごドアを開閉するためのドア開閉ボタン304、乗りかご104の搭乗者に音声で報知するためのスピーカ(図示せず)等が設けられている。操作盤110には、行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示の内容を切り替える操作が入力される切替操作部306が、さらに、設けられている。図に示した切替操作部306は、左右に捻ることによって2つの状態を切り替えるスイッチであるが、人為的な操作入力によって2つの状態を切り替える機能を有するものであれば、他の形態であってもよい。前述したように、一例として乗りかご104は1階〜20階に着床可能な場合を想定しているが、本実施形態においては行き先階を2つの群に分け、行き先階登録ボタン302にはいずれか一方の群に属する行き先階表示内容を、切替操作部306の状態に応じて、一括して切り替え表示する。例えば、1階〜10階を第1の群とし、11階〜20階を第2の群とする。図3に示した状態においては行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示のうち、5行×2列に配列された、第1の群に属する1階〜10階に対応する行き先階を表す文字「1」〜文字「10」のみが乗りかご104の搭乗者の目に見える。行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を切り替える操作が切替操作部306に入力されると、図4に示すように、操作盤110に備えられた行き先階登録ボタン302には第2の群に属する11階〜20階に対応する行き先階を表す文字「11」〜文字「20」のみが乗りかご104の搭乗者の目に見えるようになる。
【0014】
以上、図3および図4を参照しながら操作盤110に備えられた行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容等を説明したが、図3および図4に示したような合計20の行き先階の表示に限定されることなく、個々の行き先階表示の大きさと操作盤の面積によって制限される限度内で、任意の数の行き先階を一括して切り替え表示することができる。
【0015】
本実施形態によれば、操作盤の限られたスペースに表示される行き先階の数を、実効的に増やすことができる。逆に言えば、所定の数の行き先階を表示するスペースを小さくすることができる。
【0016】
図5に、他の実施形態による操作盤110の一状態を示す。図5に示す実施形態は、図3および図4に示した実施形態と、切替操作部の構成が異なる点で相違する。図5に示す操作盤110における切替操作部は2つの切替操作部506aおよび506bからなる。切替操作部506aに搭乗者による操作が入力されると行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示のうち第1の群に属する1階〜10階に対応する行き先階を表す文字「1」〜文字「10」のみが乗りかご104の搭乗者の目に見えるように行き先階表示が切り替えられ、切替操作部506bに搭乗者による操作が入力されると行き先階表示のうち第2の群に属する11階〜20階に対応する行き先階を表す文字「11」〜文字「20」のみが乗りかご104の搭乗者の目に見えるように行き先階表示が切り替えられる。すなわち、本実施形態においては、切替操作部は、予め2つの群に分けられた行き先階に対応する2つの表示内容のうち、一方の表示内容に切り替える操作が入力される第1の切替操作部506aと、他方の表示内容に切り替える操作が入力される第2の切替操作部506bとからなる。図5は、切替操作部506aに人為的な操作が入力された状態を示している。切替操作部506aおよび506bとして、例えば、押しボタンスイッチを用いることができるが、人為的な操作入力を検知する機能を有するものであれば、他の形態のものを用いることもできる。尚、図6ないし図10を参照しながら行う説明においては主として図3に示した実施形態の状態と関連して記載するが、その説明内容は図3に示した実施形態についてもあてはまる。
【0017】
図6に、行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を一括して切り替える構成の一例を示す。尚、それぞれの行き先階登録ボタン302の構造は同じであるため、一部の行き先階登録ボタンについてのみ説明する。図6(a)は、図3に示した状態における操作盤110の行き先階登録ボタン302の一部を表した図である。図6(a)に示した状態では行き先階登録ボタンに含まれる行き先階表示のうち、第1の群に属する行き先階、例えば、1階と6階に対応する行き先階を表す文字表示602a「1」、文字表示602b「6」等のみが乗りかご104の搭乗者の目に見える。文字表示602a、602b等の前面、すなわち乗りかご104の室内側には不透明な表面プレート604が設けられており、文字表示602aおよび602bは、それぞれ、表面プレート604に形成された開口606aおよび606bを通じて乗りかご104の搭乗者から見えている。図6(b)は、図6(a)に示した文字表示602aおよび602bの中心間を通る直線部における図6(a)の断面の一例を表す図である。文字表示602aが形成された部材および文字表示602bが形成された部材の背面には、それぞれスイッチ608aおよびスイッチ608bが設けられている。スイッチ608aおよびスイッチ608bは、それぞれ、文字表示602aおよび文字表示602bが押下されたことを検出する。スイッチ608aおよびスイッチ608bは回路基板610に接続されており、スイッチ608a、スイッチ608b等によって検出される文字表示602a、文字表示602b等の押下状態が回路基板610に伝達される。回路基板610には、切替操作部306の状態も伝達される。ここで、文字表示602aが形成された部材には文字表示602a’が形成された部材が、文字表示602bが形成された部材には文字表示602b’が形成された部材が連結されており、これらの部材は切替操作部306に行き先階表示内容を切り替える操作が入力されると、表示内容切替部(図示せず)によって一括して図6(b)に示すP方向にスライドする。乗りかご104の行き先指定階を表す文字表示が形成された部材をスライドさせるためには、本技術分野で周知の任意の適切なスライド機構を用いることができる。
【0018】
行き先指定階を表す文字表示が形成された部材がP方向にスライドすると、図6(a)に示した操作盤110の行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示が、一部を図6(c)に示すように一括して切り替わる。すなわち、図6(c)に示した状態では行き先階登録ボタンに含まれる行き先階表示のうち、図6(a)に示した状態においては不透明な表面プレート604によって隠されていた第2の群に属する行き先階、例えば、11階と16階に対応する行き先階を表す文字表示602a’「11」および文字表示602b’「16」のみが乗りかご104の搭乗者の目に見える。図6(a)に示した状態において搭乗者の目に見えていた、第1の群に属する行き先階、例えば、1階と6階に対応する行き先階を表す文字表示602a「1」および文字表示602b「6」は、不透明な表面プレート604によって隠され、乗りかご104の搭乗者には見えなくなる。この状態において、操作盤110の行き先階登録ボタン302の外観は図4に示した状態になる。図6(d)は、図6(c)に示した文字表示602a’および602b’の中心間を通る直線部における図6(c)の断面の一例を表す図であるが、文字表示が形成された部材の位置が異なる点を除くと、図6(b)と同一である。この状態において、スイッチ608aおよびスイッチ608bは、それぞれ、文字表示602a’および文字表示602b’が押下されたことを検出する。スイッチ608a、スイッチ608b等によって検出される文字表示602a’、文字表示602b’等の押下状態が回路基板610に伝達される。
【0019】
尚、図6に示した構成例において、行き先階登録ボタン302の各行き先階表示内容を図7(a)に示すように凸状に形成することによって、目が不自由な搭乗者が各行き先階表示を認識することができる。行き先階表示内容は凹状に形成してもよい。また、行き先階登録ボタン302の各行き先階表示内容の輪郭を図7(b)に示すように凸状に形成することによっても、目が不自由な搭乗者が各行き先階表示を認識することができる。行き先階表示内容の輪郭は凹状に形成してもよい。さらに、行き先階登録ボタン302の各行き先階表示に対応する内容の点字表記を図7(c)に白い丸で示すように重畳して形成することによっても、目が不自由な搭乗者が各行き先階表示を認識することができる。点字表記を透明にするか、行き先階表示に合わせた色にすることによって、行き先階表示内容の視認性は殆ど損なわれない。
【0020】
前述したように、例えば、スイッチ608aは、文字表示602aが押下されたことを検出するとともに、文字表示602a’が押下されたことを検出する機能を担う。したがって、スイッチ608aから回路基板610に伝達される文字表示の押下状態だけでは、文字表示602aが押下されたのか、文字表示602a’が押下されたのかを判定することはできない。このため、回路基板610に伝達される切替操作部306の状態を加味して、乗りかご104の搭乗者によって押下された文字表示(行先登録ボタン)、すなわち指定された行き先階を判定する。行き先階を判定する動作については、後ほど図8を参照しながら説明を行う。
【0021】
以上、図6を参照しながら行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を切り替える構成の一例を一部の行き先階登録ボタンについて説明したが、2つの群の行き先階表示を切り替えるスライド方向は、必ずしも図6(b)に示したP方向、すなわち水平方向に限定されるわけではない。2つの群の行き先階表示を切り替えるスライド方向は、2つの群の行き先階表示の位置関係に応じて、例えば、上下方向あるいは斜め方向にすることができる。このことは、図6に示した実施形態に限らず、以降述べるすべての実施形態においても同様である。
【0022】
図8に、乗りかご104の搭乗者によって指定された行き先階を判定する動作を説明するための機能ブロック図の一例を示す。複数のボタン押下検出部802の出力は行き先階判定部804に接続されている。図6に示した実施形態においては、ボタン押下検出部802はスイッチ608であり、行き先階判定部804は回路基板610に実装されている。また、行き先階判定部804には切替操作部306の状態が入力される。ボタン押下検出部#1(802)が図6に示したスイッチ608aである場合を例として説明を行う。前述したように、スイッチ608aは、1階に対応する文字表示602aが押下されたことを検出するとともに、11階に対応する文字表示602a’が押下されたことを検出する。換言すれば、スイッチ608aによって押下状態が検出される行先登録ボタンは、文字表示602aまたは文字表示602a’である。行き先階判定部804は、スイッチ608aから押下状態検出信号を受信すると、切替操作部306から入力される切替操作部306の状態に応じて、乗りかご104の搭乗者によって指定された行き先階を判定する。すなわち、行き先階判定部804は、切替操作部306の状態が図3に対応する状態であるときには文字表示602aが押下されており指定行き先階は1階であり、切替操作部306の状態が図4に対応する状態であるときには文字表示602a’が押下されており指定行き先階は11階であると判定する。行き先階判定部804によって判定された指定行き先階を表す情報は、乗りかご制御盤108を介して主制御装置102に伝達され乗りかご呼び登録が行われる。図8に示した行き先階を判定するための機能ブロック図の一例は、以降述べるすべての実施形態においても同様に適用することができる。
【0023】
図9に、行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を一括して切り替える構成の他の例を示す。尚、それぞれの行き先階登録ボタン302の構造は同じであるため、一部の行き先階登録ボタンについてのみ説明する。図9(a)は、図3に示した状態における操作盤110の行き先階登録ボタン302を表した図である。図9(a)に示した状態では行き先階登録ボタンに含まれる行き先階表示のうち、第1の群に属する行き先階、例えば、1階と6階に対応する行き先階を表す文字表示602a「1」、文字表示602b「6」等のみが乗りかご104の搭乗者の目に見える。文字表示602a、602b等の前面、すなわち乗りかご104の室内側には行き先階を表す文字表示の位置に対応する箇所に透明部906を有する表面プレート904が設けられており、文字表示602aおよび602bは、それぞれ、表面プレート904に形成された透明部906aおよび906bを通じて乗りかご104の搭乗者から見えている。他の文字表示も同様に透明部906を通じて搭乗者から見えている。表面プレート904には、どの透明部906に入力操作が行われたのかを検出する位置検出機能が備えられている。このような位置検出機能は、抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、赤外線方式およびマトリクス・スイッチ方式等のタッチパッドによって実装することができる。すなわち、表面プレート904は、複数の透明部906のそれぞれにボタン押下検出部が組み込まれたタッチパッドから構成することができる。図9に示した形態においては、表面プレート904は、透明部906以外の領域では不透明である。表面プレート904の透明部906以外の領域も透明とし、透明部906に対応する位置に開口を備えたプレートまたはフィルムを表面プレート904に取り付ける等、行き先階を表す文字表示の位置に対応する箇所以外の領域を実質的に不透明とする形態としてもよい。
【0024】
図9(b)は、図9(a)に示した文字表示902aおよび902bの中心間を通る直線部における図9(a)の断面の一例を表す図である。表面プレート904は回路基板910に接続されており、回路基板910は表面プレート904から伝達される信号に基づいて押下された透明部906を特定する。回路基板910には切替操作部306の状態も伝達され、図8を参照しながら説明を行った方法によって、乗りかご104の搭乗者によって指定された行き先階が判定される。文字表示602a、602a’、602b、602b’等の文字表示602が形成された部材は、図6を参照しながら説明を行ったように、切替操作部306に行き先階表示内容を切り替える操作が入力されると、表示内容切替部(図示せず)によって一括してスライドする。
【0025】
図10に、行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を一括して切り替える構成の、さらに他の例を示す。図10に示す構成は、エレベータ乗りかごの行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンがフラットパネルディスプレイに表示される点で、図9に示した構成と大きく異なる。尚、それぞれの行き先階登録ボタン302の構造は同じであるため、一部の行き先階登録ボタンについてのみ説明する。
【0026】
図10(a)は、図3に示した状態における操作盤110の行き先階登録ボタン302を表した図である。図10(a)に示した状態では行き先階登録ボタンに含まれる行き先階表示のうち、第1の群に属する行き先階、例えば、1階と6階に対応する行き先階を表す文字表示1002a「1」、文字表示1002b「6」等のみが乗りかご104の搭乗者の目に見える。文字表示1002a、1002b等の前面、すなわち乗りかご104の室内側には行き先階を表す文字表示の位置に対応する箇所に透明な位置検出部1006を有する表面プレート1004が設けられており、文字表示1002aおよび1002bは、それぞれ、表面プレート1004に形成された透明な位置検出部1006aおよび1006bを通じて乗りかご104の搭乗者から見えている。他の文字表示も同様に位置検出部1006を通じて搭乗者から見えている。このような表面プレート1004はタッチパッドによって実装することができる。図10に示した形態においては、表面プレート1004は、位置検出部1006以外の領域で不透明である必要は必ずしもない。
【0027】
図10(b)は、図10(a)に示した文字表示1002aおよび1002bの中心間を通る直線部における図10(a)の断面の一例を表す図である。文字表示1002a、1002b等の文字表示をそれぞれ含む複数の行き先階登録ボタンはフラットパネルディスプレイ1012に表示される。フラットパネルディスプレイ1012としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイまたはSED(Surface-conduction Electron-emitter Display)等を用いることができる。行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンは、回路基板1010に含まれる表示内容切替部によってフラットパネルディスプレイ1012に表示される。回路基板1010には表面プレート1004も接続されており、回路基板1010は表面プレート1004から伝達される信号に基づいて押下された位置検出部1006、すなわち押下された行き先階登録ボタンの位置を特定する。回路基板1010には切替操作部306の状態も伝達され、図8を参照しながら説明を行った方法によって、乗りかご104の搭乗者によって指定された行き先階が判定される。文字表示1002a、1002b等の行き先階表示内容は、切替操作部306に行き先階表示内容を切り替える操作が入力されると、回路基板1010に含まれる表示内容切替部によって一括して切り替えられる。
【0028】
図11に、行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を一括して切り替える構成の、別な例を示す。図11に示す構成例においては、図3に示した乗りかご内の操作盤110に点字表記部を付加したものである。エレベータ乗りかご104の操作盤110に設けられた行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタン302それぞれの近傍には、それぞれの行き先階登録ボタン302に対応する行き先階表示内容を表す行き先階点字表記部1102が配置されている。例えば、図において左下に示されている行き先階登録ボタン302には、図に示す状態のおいては「1」が表示されているが、切替操作部306に切替操作が入力されると「11」が表示されるため、対応する行き先階点字表記部1102には「1または11」を意味する点字が表記されている。
【0029】
図11に示した操作盤110には、図3および図4に示した操作盤と同様に、人為的な操作入力によって2つの状態を切り替える1つのスイッチからなる切替操作部306が設けられている。切替操作部306の近傍には、行き先階登録ボタン302に対応する行き先階表示内容の2つの状態に対応して、2つの切替操作点字表記部1104が設けられている。例えば、一方の切替操作点字表記部1104には「1から10」、他方の切替操作点字表記部1104には「11から20」を意味する点字を表記し、目が不自由な搭乗者による切替操作部306の操作を支援する内容が表記されている。
【0030】
本実施形態によれば、前述した実施形態の効果に加えて、目が不自由な搭乗者による乗りかご内における行き先階指定のための操作が可能となる。
【0031】
図12に、行き先階登録ボタン302の行き先階表示内容を一括して切り替える構成の、さらに別な例を示す。図12に示す構成例においては、図5に示した乗りかご内の操作盤110に点字表記部を付加したものである。また、図12に示す構成例は、切替操作部およびその点字表記部が図11に示した構成例と異なるが、エレベータ乗りかご104の操作盤110に設けられた行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタン302それぞれの近傍には、それぞれの行き先階登録ボタン302に対応する行き先階表示内容を表す行き先階点字表記部1102が配置されている点は図11に示した構成例と同一である。このため行き先階点字表記部1102に関する説明は省略する。
【0032】
図12に示した操作盤110には、図5に示した操作盤と同様に、第1のスイッチ(第1の切替操作部)506aと第2のスイッチ(第2の切替操作部)506bが設けられている。第1のスイッチ506aと第2のスイッチ506bそれぞれの近傍には、それぞれ切替操作点字表記部1204が設けられている。前述したように、複数の行き先階登録ボタン302にそれぞれ含まれる乗りかご104の行き先階表示の内容は、予め2つの群に分けられている。第1のスイッチ506aに搭乗者による操作が入力されると、行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示の内容は一方の表示内容、例えば、1階ないし10階を表す表示内容に切り替えられる。第1のスイッチ506aの近傍に設けられている切替操作点字表記部1204には一方の表示内容、例えば、「1から10」を意味する点字を表記し、目が不自由な搭乗者による切替操作部の操作を支援する内容が表記されている。第2のスイッチ506bに搭乗者による操作が入力されると、行き先階登録ボタン302に含まれる行き先階表示の内容は他方の表示内容、例えば、11階ないし20階を表す表示内容に切り替えられる。第2のスイッチ506bの近傍に設けられている切替操作点字表記部1204には他方の表示内容、例えば、「11から20」を意味する点字を表記し、目が不自由な搭乗者による切替操作部の操作を支援する内容が表記されている。
【0033】
本実施形態によれば、図11を参照しながら説明を行った実施形態の効果と同様に、目が不自由な搭乗者による乗りかご内における行き先階指定のための操作が可能となる。
【0034】
以上述べた実施形態によれば、操作盤の限られたスペースに表示される行き先階の数を、実効的に増やすことができる。逆に言えば、所定の数の行き先階を表示するスペースを小さくすることができる。また、一部の実施形態によれば、目が不自由な搭乗者の乗りかご内における行き先階指定のための操作を支援することができる。
【0035】
尚、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で開示した構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示した全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
102・・・主制御盤、 104・・・乗りかご、 106・・・巻上機、
108・・・乗りかご制御盤、 110・・・操作盤、
302・・・行き先階登録ボタン、 304・・・乗りかごドア開閉ボタン、
306、506a、506b・・・切替操作部、
602a、602a’、602b、602b’・・・文字表示
604・・・表面プレート、 606a、606b・・・開口、
608a、608b・・・スイッチ、
610、910、1010・・・回路基板、 802・・・ボタン押下検出部、
804・・・行き先階判定部、 904・・・表面プレート、
906、906a、906b・・・透明部、
1002a、1002b・・・文字表示、 1004・・・表面プレート、
1006・・・位置検出部、 1010・・・回路基板、
1012・・・フラットパネルディスプレイ、
1102・・・行き先階点字表記部、
1104、1204・・・切替操作点字表記部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ乗りかごの行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンと、
前記複数の行き先階登録ボタンの前記行き先階表示内容を切り替える操作が入力される切替操作部と、
前記乗りかごの搭乗者の目に見える前記行き先階表示内容を、前記切替操作部の状態に応じて、一括して切り替える表示内容切替部と、
前記行先登録ボタンが押下されたことを検出するボタン押下検出部と、
前記切替操作部の状態と、前記ボタン押下検出部によって押下状態が検出された行先登録ボタンとに基づいて、指定された行き先階を判定する行き先階判定部と
を備えることを特徴とするエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項2】
前記行き先階表示は2つの群の行き先階表示を含み、
前記エレベータ乗りかごの操作盤は、
前記複数の行先登録ボタンにそれぞれ対応し、前記行き先階表示のうち一方の群の行き先階表示のみを視認可能なように形成された複数の透明部を含む表面プレートを備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項3】
前記表示内容切替部は、前記行先登録ボタンの前記行き先階表示内容が表された部材を、前記切替操作部の状態に応じて、スライドさせるスライド機構を含むことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項4】
前記透明部は、前記表面プレートに形成された開口であることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項5】
前記行き先階表示内容または前記行き先階表示内容の輪郭が、凸状または凹状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項6】
前記行き先階表示には対応する点字表記が重畳して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項7】
前記表面プレートは、前記複数の透明部のそれぞれにボタン押下検出部が組み込まれたタッチパッドからなることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項8】
前記エレベータ乗りかごの行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンはフラットパネルディスプレイに表示され、
前記ボタン押下検出部は、前記フラットパネルディスプレイの前面に配置されたタッチパッドに組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項9】
前記切替操作部は、人為的な操作入力によって2つの状態を切り替える1つのスイッチからなり、
前記エレベータ乗りかごの操作盤は、
前記行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンそれぞれの近傍に配置され前記行き先階表示内容を表す行き先階点字表記部と、
前記切替操作部の近傍に配置され前記切替操作部の操作を支援する内容を表す切替操作点字表記部と
を、さらに、備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4または請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のエレベータ乗りかごの操作盤。
【請求項10】
前記切替操作部は、予め2つの群に分けられた行き先階に対応する2つの表示内容のうち、一方の表示内容に切り替える操作が入力される第1のスイッチと、他方の表示内容に切り替える操作が入力される第2のスイッチとからなり、
前記エレベータ乗りかごの操作盤は、
前記行き先階表示を含む複数の行き先階登録ボタンそれぞれの近傍に配置され前記行き先階表示内容を表す行き先階点字表記部と、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチの近傍に配置され前記切替操作部の操作を支援する内容を表す切替操作点字表記部と
を、さらに、備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4または請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のエレベータ乗りかごの操作盤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−35610(P2013−35610A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170214(P2011−170214)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】