エレベータ巻上機の交換装置および交換方法
【課題】昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に有用な交換装置およびそれを用いた交換方法を提供する。
【解決手段】昇降路の頂部に配設された架台から下方に延びる案内手段と昇降手段とを用いて、巻上機を載せた支持手段を降下させることにより、巻上機を昇降路頂部の架台と同じ高さ位置から乗場ホールの高さまで降下させる。これにより、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロックを用いて巻上機を吊り下げることができるから、乗場ホールへの吊り出しおよび乗場ホールからの吊り込みを容易に行うことができる。
【解決手段】昇降路の頂部に配設された架台から下方に延びる案内手段と昇降手段とを用いて、巻上機を載せた支持手段を降下させることにより、巻上機を昇降路頂部の架台と同じ高さ位置から乗場ホールの高さまで降下させる。これにより、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロックを用いて巻上機を吊り下げることができるから、乗場ホールへの吊り出しおよび乗場ホールからの吊り込みを容易に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、エレベータ巻上機の交換装置および交換方法に関し、より詳しくは、エレベータ昇降路の頂部に配設されている架台と乗場ホールとの間で巻上機を効率よくかつ安全に移動させる技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、エレベータ昇降路の上方に機械室を持たない、いわゆるマシンルームレスエレベータが種々開発されている。
例えば、図９に示したマシンルームレスエレベータにおいては、乗りかご１０が左右一対のかご側ガイドレール１１Ｌ，１１Ｒに案内されて昇降路の内部を昇降するとともに、乗りかご１０の後方に配設された釣合錘１２が左右一対の錘側ガイドレール１３Ｌ，１３Ｒに案内されて昇降するようになっている。
また、昇降路の頂部には、右側のかご側ガイドレール１１Ｒと左右一対の錘側ガイドレール１３Ｌ，１３Ｒとによって支持された架台１４が配設され、その上に巻上機１５が支持されている。
【０００３】
さらに、巻上機１５によって回転駆動されるトラクションシーブ１６に巻き掛けられたメインロープ１７により、乗りかご１０と釣合錘１２とが釣瓶状に懸架されている。
具体的には、メインロープ１７のうちトラクションシーブ１６と前側のヒッチ部１８との間で延びる部分が、左右一対のかご側シーブ１０ａ，１０ｂに巻回されて乗りかご１０を懸架している。
また、メインロープ１７のうちトラクションシーブ１６と後側のヒッチ部１９との間で延びる部分は、反らせシーブ２１，２２，２３を通って錘側シーブ１２ａ，１２ｂに延びて釣合錘１２を懸架している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、上述したマシンルームレスエレベータにおいては、昇降路の頂部に配設された架台１４の上に巻上機１５が支持されているため、昇降路の天井面と巻上機１５との間の上下方向の隙間が極めて小さくなっている。
そのため、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロック等によって巻上機１５を吊り下げることができないため、巻上機１５を交換する作業が困難であった。
【０００５】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に有用な交換装置およびそれを用いた交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記の課題を解決するための請求項１に記載した手段は、
エレベータ昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に用いる装置であって、
前記架台に着脱自在に取り付けられて前記架台から下方に延びる案内手段と、
前記巻上機を支持した状態で前記案内手段に沿って昇降可能な、前記案内手段に着脱自在に取り付けられる支持手段と、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に介装された、前記支持手段を昇降させるための昇降手段と、を備えることを特徴とする。
【０００７】
また、請求項２に記載した手段は、請求項１に記載したエレベータ巻上機の交換装置に対し、その上を前記巻上機が移動自在な移動経路を前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に形成する移動経路形成手段を追加したことを特徴とする。
【０００８】
また、請求項３に記載した手段は、請求項２に記載したエレベータ巻上機の交換装置に対し、前記移動経路上を転動する車輪を有して前記巻上機に着脱自在に取り付けられる巻上機搬送手段をさらに追加したことを特徴とする。
【０００９】
さらに、上記の課題を解決するための請求項４に記載した手段は、
請求項１に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記架台に前記案内手段を取り付け、
前記案内手段に前記支持手段を取り付け、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に前記昇降手段を介装し、
前記昇降手段を用いて前記案内手段を上昇させて前記架台に高さを合わせ、
前記巻上機を前記架台から前記案内手段へと移載し、
前記昇降手段を用いて前記支持手段を降下させ、
前記支持手段から前記昇降路の乗場ホールへと前記巻上機を移動させる、ことを特徴とする。
【００１０】
また、上記の課題を解決するための請求項５に記載した手段は、
請求項２に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に前記移動経路形成手段を介装し、
前記巻上機を前記移動経路上で移動させて前記乗場ホールに移載することを特徴とする。
【００１１】
また、上記の課題を解決するための請求項６に記載した手段は、
請求項３に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記巻上機搬送手段を前記巻上機に取り付け、
前記車輪を前記移動経路上で転動させることにより前記巻上機を前記乗場ホールに移動させることを特徴とする。
【００１２】
すなわち、本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法は、昇降路の頂部に配設された架台から下方に延びる案内手段と昇降手段とを用いて、巻上機を載せた支持手段を降下させることにより、巻上機を昇降路頂部の架台と同じ高さ位置から乗場ホールの高さまで降下させるものである。
これにより、支持手段に載って降下した状態の巻上機は、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロック等を用いて容易に吊り下げることができるから、乗場ホールへの巻上機の吊り出し、および乗場ホールからの巻上機の吊り込みを容易に行うことができる。
したがって、本発明の交換装置および交換方法によれば、昇降路の頂部に配設された巻上機を効率よくかつ安全に交換することができる。
また、移動経路形成手段を用いて乗場ホールと支持手段との間に巻上機の移動経路、例えば滑り台を形成することにより、乗場ホールと支持手段との間における巻上機の移動を容易に行うことができる。
加えて、巻上機に車輪付きの搬送手段を取り付けて移動経路上を移動させることにより、乗場ホールと支持手段との間における巻上機の移動をさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に有用な交換装置およびそれを用いた交換方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下、図１乃至図８を参照し、本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分に同一の符号を用いることにより重複した説明を省略する。
【００１５】
まず最初に図１を参照すると、図９に示したマシンルームレスエレベータの全体的な構造が模式的に描かれている。
昇降路Ｓの頂部に配設された架台１４の上に支持されている巻上機１５を交換する際には、昇降路Ｓの所定位置に乗りかご１０を吊り下げて固定した後、乗りかご１０の上に専用足場３０を組み立てることにより、昇降路Ｓの天井面や架台１４および巻上機１５に作業者が容易に接近できるようにする。
同時に、メインロープ１７のうち釣合錘１２を懸架している部分にロープ休め具３１を取り付けることにより、メインロープ１７を昇降路Ｓに固定する。
次いで、トラクションシーブ１６からメインロープ１７を取り外し、架台１４に装着された図示されない保持具にメインロープを預ける。
これにより、架台１４の上から巻上機１５を取り外せる状態となる。
【００１６】
次に、図２および図３に示したように、本実施形態のエレベータ巻上機の交換装置４０を架台１４に取り付ける。
この交換装置４０は、架台１４の前面に着脱自在に取り付けられて互いに平行に下方に延びる左右一対の案内レール（案内手段）４１，４２と、これらの案内レール４１，４２に沿って昇降する巻上機支持台（支持手段）４３とを備えている。
【００１７】
巻上機支持台４３は、その上に巻上機１５を載置し固定するために必要な面積を具備して水平に延びる水平部材４４と、この水平部材４４を支持するために案内レール４１，４２に沿って下方に延びる左右一対の上下方向部材４５，４５と、これらの上下方向部材４５の下端と水平部材４４との間でそれぞれ傾斜して延びる左右一対の補強部材４６，４６とを有している。
また、左右一対の上下方向部材４５，４５の上部および下部には、左右一対の案内レール４１，４２上を転動する上下一対の案内ローラ４７，４８がそれぞれ回転自在に軸支されている。
これにより、巻上機支持台４３は、左右一対の案内レール４１，４２に沿って滑らかに昇降することができる。
【００１８】
さらに、図４に示したように、巻上機支持台４３を構成している左右一対の上下方向部材４５，４５のうちの一方の下端と、架台１４との間には、チェーンブロック（昇降手段）５０が介装されている。
これにより、このチェーンブロック５０を操作することによって、巻上機支持台４３を左右一対の案内レール４１，４２に沿ってスムーズに昇降させることができる。
【００１９】
次に、図４〜図８を参照し、本実施形態の交換装置４０を用いて巻上機１５を交換する手順について説明する。
なお、図示を簡略化するため、乗りかご１０上に組み立てた専用足場３０の図示を省略する。
【００２０】
昇降路Ｓの頂部に配設された架台１４の上に支持されている巻上機１５を乗場ホールＨに吊り出す際には、図４（ａ）に示したように、上述した構造を有する交換装置４０を架台１４の前面にボルトを用いて取り付ける。
そして、図４（ｂ）に示したように、チェーンブロック５０を操作して巻上機支持台４３を上昇させ、その上面が架台１４の上面と面一になるようにする。
このとき、チェーンブロック５０の一端を上下方向部材４５の下端に係止させているため、チェーンブロック５０のチェーンが水平に延びることはなく、巻上機支持台４３を確実に上昇させることができる。
【００２１】
それから、図５（ａ）に示したように、架台１４の上に支持されている巻上機１５の固定を緩めてスライドさせることにより、架台１４から巻上機支持台４３へと巻上機１５を移載し、ボルトを用いて仮固定する。
次いで、チェーンブロック５０を操作することにより、図５（ｂ）に示したように巻上機支持台４３を所定の高さまで降下させる。
【００２２】
図６に示したように、巻上機１５を載置した巻上機支持台４３が所定の高さまで降下した状態では、昇降路Ｓの天井面Ｓ１に取り付けた別のチェーンブロック５１により、巻上機支持台４３上に載置されている巻上機１５を容易に吊り下げることができる。
これにより、図７に示したように、チェーンブロック５１によって吊り下げた巻上機１５を揺動させて、巻上機１５を巻上機支持台４３から乗場ホールの床面Ｈへと容易に移動させることができる。
【００２３】
なお、図８に示したように、巻上機支持台４３と乗場ホールの床面Ｈとの間に滑り台（移動経路形成手段）６１を介設するとともに、この滑り台６１の表面を転動する車輪６２ａ，６２ａを有した台車（巻上機搬送手段）６２を取り付けることにより、巻上機支持台４３から乗場ホールの床面Ｈへの巻上機１５の移動をより一層容易に行うことができる。
【００２４】
なお、新しい巻上機１５を架台１４の上に据え付ける際には、上述した手順とは反対の手順で作業を行えば良い。
【００２５】
以上、本発明に係るエレベータ巻上機の交換装置および交換方法の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、滑り台６１を巻上機支持台４３と乗場ホールの床面Ｈとによって支持したが、乗りかご１０の上に組み立てた専用足場３０によって滑り台６１を支持することもできる。
さらに、滑り台６１は必ずしも傾斜させる必要はなく、巻上機支持台４３の昇降ストロークの下限位置を調整することにより、水平な状態で用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法を適用するマシンルームレスエレベータの構造を模式的に示す図。
【図２】交換装置を架台に取り付けた状態を示す正面図。
【図３】交換装置を架台に取り付けた状態を示す側面図。
【図４】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図５】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図６】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図７】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図８】交換装置を用いて巻上機を交換する手順の変形例を示す図。
【図９】本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法を適用可能なマシンルームレスエレベータの構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【００２７】
１０ 乗りかご
１１Ｌ，１１Ｒ かご側ガイドレール
１２ 釣合錘
１３Ｌ，１３Ｒ 錘側ガイドレール
１４ 架台
１５ 巻上機
１６ トラクションシーブ
１７ メインロープ
１８，１９ ヒッチ部
２１，２２，２３ 反らせシーブ
３０ 専用足場
３１ ロープ休め具
４０ 巻上機の交換装置
４１，４２ 案内レール（案内手段）
４３ 巻上機支持台（支持手段）
４４ 水平部材
４５ 上下方向部材
４６ 補強部材
４７，４８ 案内ローラ
５０ チェーンブロック（昇降手段）
５１ 巻上機吊り下げ用のチェーンブロック
６１ 滑り台（移動経路形成手段）
６２ 台車（巻上機搬送手段）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、エレベータ巻上機の交換装置および交換方法に関し、より詳しくは、エレベータ昇降路の頂部に配設されている架台と乗場ホールとの間で巻上機を効率よくかつ安全に移動させる技術に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、エレベータ昇降路の上方に機械室を持たない、いわゆるマシンルームレスエレベータが種々開発されている。
例えば、図９に示したマシンルームレスエレベータにおいては、乗りかご１０が左右一対のかご側ガイドレール１１Ｌ，１１Ｒに案内されて昇降路の内部を昇降するとともに、乗りかご１０の後方に配設された釣合錘１２が左右一対の錘側ガイドレール１３Ｌ，１３Ｒに案内されて昇降するようになっている。
また、昇降路の頂部には、右側のかご側ガイドレール１１Ｒと左右一対の錘側ガイドレール１３Ｌ，１３Ｒとによって支持された架台１４が配設され、その上に巻上機１５が支持されている。
【０００３】
さらに、巻上機１５によって回転駆動されるトラクションシーブ１６に巻き掛けられたメインロープ１７により、乗りかご１０と釣合錘１２とが釣瓶状に懸架されている。
具体的には、メインロープ１７のうちトラクションシーブ１６と前側のヒッチ部１８との間で延びる部分が、左右一対のかご側シーブ１０ａ，１０ｂに巻回されて乗りかご１０を懸架している。
また、メインロープ１７のうちトラクションシーブ１６と後側のヒッチ部１９との間で延びる部分は、反らせシーブ２１，２２，２３を通って錘側シーブ１２ａ，１２ｂに延びて釣合錘１２を懸架している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
ところで、上述したマシンルームレスエレベータにおいては、昇降路の頂部に配設された架台１４の上に巻上機１５が支持されているため、昇降路の天井面と巻上機１５との間の上下方向の隙間が極めて小さくなっている。
そのため、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロック等によって巻上機１５を吊り下げることができないため、巻上機１５を交換する作業が困難であった。
【０００５】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に有用な交換装置およびそれを用いた交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記の課題を解決するための請求項１に記載した手段は、
エレベータ昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に用いる装置であって、
前記架台に着脱自在に取り付けられて前記架台から下方に延びる案内手段と、
前記巻上機を支持した状態で前記案内手段に沿って昇降可能な、前記案内手段に着脱自在に取り付けられる支持手段と、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に介装された、前記支持手段を昇降させるための昇降手段と、を備えることを特徴とする。
【０００７】
また、請求項２に記載した手段は、請求項１に記載したエレベータ巻上機の交換装置に対し、その上を前記巻上機が移動自在な移動経路を前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に形成する移動経路形成手段を追加したことを特徴とする。
【０００８】
また、請求項３に記載した手段は、請求項２に記載したエレベータ巻上機の交換装置に対し、前記移動経路上を転動する車輪を有して前記巻上機に着脱自在に取り付けられる巻上機搬送手段をさらに追加したことを特徴とする。
【０００９】
さらに、上記の課題を解決するための請求項４に記載した手段は、
請求項１に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記架台に前記案内手段を取り付け、
前記案内手段に前記支持手段を取り付け、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に前記昇降手段を介装し、
前記昇降手段を用いて前記案内手段を上昇させて前記架台に高さを合わせ、
前記巻上機を前記架台から前記案内手段へと移載し、
前記昇降手段を用いて前記支持手段を降下させ、
前記支持手段から前記昇降路の乗場ホールへと前記巻上機を移動させる、ことを特徴とする。
【００１０】
また、上記の課題を解決するための請求項５に記載した手段は、
請求項２に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に前記移動経路形成手段を介装し、
前記巻上機を前記移動経路上で移動させて前記乗場ホールに移載することを特徴とする。
【００１１】
また、上記の課題を解決するための請求項６に記載した手段は、
請求項３に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記巻上機搬送手段を前記巻上機に取り付け、
前記車輪を前記移動経路上で転動させることにより前記巻上機を前記乗場ホールに移動させることを特徴とする。
【００１２】
すなわち、本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法は、昇降路の頂部に配設された架台から下方に延びる案内手段と昇降手段とを用いて、巻上機を載せた支持手段を降下させることにより、巻上機を昇降路頂部の架台と同じ高さ位置から乗場ホールの高さまで降下させるものである。
これにより、支持手段に載って降下した状態の巻上機は、昇降路の天井面に取り付けたチェーンブロック等を用いて容易に吊り下げることができるから、乗場ホールへの巻上機の吊り出し、および乗場ホールからの巻上機の吊り込みを容易に行うことができる。
したがって、本発明の交換装置および交換方法によれば、昇降路の頂部に配設された巻上機を効率よくかつ安全に交換することができる。
また、移動経路形成手段を用いて乗場ホールと支持手段との間に巻上機の移動経路、例えば滑り台を形成することにより、乗場ホールと支持手段との間における巻上機の移動を容易に行うことができる。
加えて、巻上機に車輪付きの搬送手段を取り付けて移動経路上を移動させることにより、乗場ホールと支持手段との間における巻上機の移動をさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に有用な交換装置およびそれを用いた交換方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下、図１乃至図８を参照し、本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分に同一の符号を用いることにより重複した説明を省略する。
【００１５】
まず最初に図１を参照すると、図９に示したマシンルームレスエレベータの全体的な構造が模式的に描かれている。
昇降路Ｓの頂部に配設された架台１４の上に支持されている巻上機１５を交換する際には、昇降路Ｓの所定位置に乗りかご１０を吊り下げて固定した後、乗りかご１０の上に専用足場３０を組み立てることにより、昇降路Ｓの天井面や架台１４および巻上機１５に作業者が容易に接近できるようにする。
同時に、メインロープ１７のうち釣合錘１２を懸架している部分にロープ休め具３１を取り付けることにより、メインロープ１７を昇降路Ｓに固定する。
次いで、トラクションシーブ１６からメインロープ１７を取り外し、架台１４に装着された図示されない保持具にメインロープを預ける。
これにより、架台１４の上から巻上機１５を取り外せる状態となる。
【００１６】
次に、図２および図３に示したように、本実施形態のエレベータ巻上機の交換装置４０を架台１４に取り付ける。
この交換装置４０は、架台１４の前面に着脱自在に取り付けられて互いに平行に下方に延びる左右一対の案内レール（案内手段）４１，４２と、これらの案内レール４１，４２に沿って昇降する巻上機支持台（支持手段）４３とを備えている。
【００１７】
巻上機支持台４３は、その上に巻上機１５を載置し固定するために必要な面積を具備して水平に延びる水平部材４４と、この水平部材４４を支持するために案内レール４１，４２に沿って下方に延びる左右一対の上下方向部材４５，４５と、これらの上下方向部材４５の下端と水平部材４４との間でそれぞれ傾斜して延びる左右一対の補強部材４６，４６とを有している。
また、左右一対の上下方向部材４５，４５の上部および下部には、左右一対の案内レール４１，４２上を転動する上下一対の案内ローラ４７，４８がそれぞれ回転自在に軸支されている。
これにより、巻上機支持台４３は、左右一対の案内レール４１，４２に沿って滑らかに昇降することができる。
【００１８】
さらに、図４に示したように、巻上機支持台４３を構成している左右一対の上下方向部材４５，４５のうちの一方の下端と、架台１４との間には、チェーンブロック（昇降手段）５０が介装されている。
これにより、このチェーンブロック５０を操作することによって、巻上機支持台４３を左右一対の案内レール４１，４２に沿ってスムーズに昇降させることができる。
【００１９】
次に、図４〜図８を参照し、本実施形態の交換装置４０を用いて巻上機１５を交換する手順について説明する。
なお、図示を簡略化するため、乗りかご１０上に組み立てた専用足場３０の図示を省略する。
【００２０】
昇降路Ｓの頂部に配設された架台１４の上に支持されている巻上機１５を乗場ホールＨに吊り出す際には、図４（ａ）に示したように、上述した構造を有する交換装置４０を架台１４の前面にボルトを用いて取り付ける。
そして、図４（ｂ）に示したように、チェーンブロック５０を操作して巻上機支持台４３を上昇させ、その上面が架台１４の上面と面一になるようにする。
このとき、チェーンブロック５０の一端を上下方向部材４５の下端に係止させているため、チェーンブロック５０のチェーンが水平に延びることはなく、巻上機支持台４３を確実に上昇させることができる。
【００２１】
それから、図５（ａ）に示したように、架台１４の上に支持されている巻上機１５の固定を緩めてスライドさせることにより、架台１４から巻上機支持台４３へと巻上機１５を移載し、ボルトを用いて仮固定する。
次いで、チェーンブロック５０を操作することにより、図５（ｂ）に示したように巻上機支持台４３を所定の高さまで降下させる。
【００２２】
図６に示したように、巻上機１５を載置した巻上機支持台４３が所定の高さまで降下した状態では、昇降路Ｓの天井面Ｓ１に取り付けた別のチェーンブロック５１により、巻上機支持台４３上に載置されている巻上機１５を容易に吊り下げることができる。
これにより、図７に示したように、チェーンブロック５１によって吊り下げた巻上機１５を揺動させて、巻上機１５を巻上機支持台４３から乗場ホールの床面Ｈへと容易に移動させることができる。
【００２３】
なお、図８に示したように、巻上機支持台４３と乗場ホールの床面Ｈとの間に滑り台（移動経路形成手段）６１を介設するとともに、この滑り台６１の表面を転動する車輪６２ａ，６２ａを有した台車（巻上機搬送手段）６２を取り付けることにより、巻上機支持台４３から乗場ホールの床面Ｈへの巻上機１５の移動をより一層容易に行うことができる。
【００２４】
なお、新しい巻上機１５を架台１４の上に据え付ける際には、上述した手順とは反対の手順で作業を行えば良い。
【００２５】
以上、本発明に係るエレベータ巻上機の交換装置および交換方法の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、滑り台６１を巻上機支持台４３と乗場ホールの床面Ｈとによって支持したが、乗りかご１０の上に組み立てた専用足場３０によって滑り台６１を支持することもできる。
さらに、滑り台６１は必ずしも傾斜させる必要はなく、巻上機支持台４３の昇降ストロークの下限位置を調整することにより、水平な状態で用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法を適用するマシンルームレスエレベータの構造を模式的に示す図。
【図２】交換装置を架台に取り付けた状態を示す正面図。
【図３】交換装置を架台に取り付けた状態を示す側面図。
【図４】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図５】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図６】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図７】交換装置を用いて巻上機を交換する手順を示す図。
【図８】交換装置を用いて巻上機を交換する手順の変形例を示す図。
【図９】本発明のエレベータ巻上機の交換装置および交換方法を適用可能なマシンルームレスエレベータの構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【００２７】
１０ 乗りかご
１１Ｌ，１１Ｒ かご側ガイドレール
１２ 釣合錘
１３Ｌ，１３Ｒ 錘側ガイドレール
１４ 架台
１５ 巻上機
１６ トラクションシーブ
１７ メインロープ
１８，１９ ヒッチ部
２１，２２，２３ 反らせシーブ
３０ 専用足場
３１ ロープ休め具
４０ 巻上機の交換装置
４１，４２ 案内レール（案内手段）
４３ 巻上機支持台（支持手段）
４４ 水平部材
４５ 上下方向部材
４６ 補強部材
４７，４８ 案内ローラ
５０ チェーンブロック（昇降手段）
５１ 巻上機吊り下げ用のチェーンブロック
６１ 滑り台（移動経路形成手段）
６２ 台車（巻上機搬送手段）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
エレベータ昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に用いる装置であって、
前記架台に着脱自在に取り付けられて前記架台から下方に延びる案内手段と、
前記巻上機を支持した状態で前記案内手段に沿って昇降可能な、前記案内手段に着脱自在に取り付けられる支持手段と、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に介装された、前記支持手段を昇降させるための昇降手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項２】
その上を前記巻上機が移動自在な移動経路を前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に形成する移動経路形成手段、をさらに備えることを特徴とする請求項１に記載したエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項３】
前記移動経路上を転動する車輪を有して前記巻上機に着脱自在に取り付けられる巻上機搬送手段、をさらに備えることを特徴とする請求項２に記載したエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項４】
請求項１に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記架台に前記案内手段を取り付け、
前記案内手段に前記支持手段を取り付け、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に前記昇降手段を介装し、
前記昇降手段を用いて前記案内手段を上昇させて前記架台に高さを合わせ、
前記巻上機を前記架台から前記案内手段へと移載し、
前記昇降手段を用いて前記支持手段を降下させ、
前記支持手段から前記昇降路の乗場ホールへと前記巻上機を移動させる、
ことを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【請求項５】
請求項２に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に前記移動経路形成手段を介装し、
前記巻上機を前記移動経路上で移動させて前記乗場ホールに移載することを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【請求項６】
請求項３に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記巻上機搬送手段を前記巻上機に取り付け、
前記車輪を前記移動経路上で転動させることにより前記巻上機を前記乗場ホールに移動させることを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【請求項１】
エレベータ昇降路の頂部に配設された架台の上に支持されている巻上機を交換する際に用いる装置であって、
前記架台に着脱自在に取り付けられて前記架台から下方に延びる案内手段と、
前記巻上機を支持した状態で前記案内手段に沿って昇降可能な、前記案内手段に着脱自在に取り付けられる支持手段と、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に介装された、前記支持手段を昇降させるための昇降手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項２】
その上を前記巻上機が移動自在な移動経路を前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に形成する移動経路形成手段、をさらに備えることを特徴とする請求項１に記載したエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項３】
前記移動経路上を転動する車輪を有して前記巻上機に着脱自在に取り付けられる巻上機搬送手段、をさらに備えることを特徴とする請求項２に記載したエレベータ巻上機の交換装置。
【請求項４】
請求項１に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記架台に前記案内手段を取り付け、
前記案内手段に前記支持手段を取り付け、
前記架台若しくは前記案内手段と前記支持手段との間に前記昇降手段を介装し、
前記昇降手段を用いて前記案内手段を上昇させて前記架台に高さを合わせ、
前記巻上機を前記架台から前記案内手段へと移載し、
前記昇降手段を用いて前記支持手段を降下させ、
前記支持手段から前記昇降路の乗場ホールへと前記巻上機を移動させる、
ことを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【請求項５】
請求項２に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記昇降路に臨む乗場ホールと前記支持手段との間に前記移動経路形成手段を介装し、
前記巻上機を前記移動経路上で移動させて前記乗場ホールに移載することを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【請求項６】
請求項３に記載した交換装置を用いてエレベータの巻上機を交換する方法であって、
前記巻上機搬送手段を前記巻上機に取り付け、
前記車輪を前記移動経路上で転動させることにより前記巻上機を前記乗場ホールに移動させることを特徴とするエレベータ巻上機の交換方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２００９−１４９４２２（Ｐ２００９−１４９４２２Ａ）
【公開日】平成２１年７月９日（２００９．７．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−３２９７９８（Ｐ２００７−３２９７９８）
【出願日】平成１９年１２月２１日（２００７．１２．２１）
【出願人】（３９００２５２６５）東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年７月９日（２００９．７．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１２月２１日（２００７．１２．２１）
【出願人】（３９００２５２６５）東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Ｆターム（参考）】
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