説明

エレベータ据付調整方法

【課題】エレベータの据付調整時のみに必要な第1のソフトウエアを追加して記憶させるための十分な空きの記憶領域がない場合であっても、第1のソフトウエアを制御部に記憶させて、実行させるエレベータ据付調整方法を得る。
【解決手段】エレベータの制御部5に、エレベータの据付調整時のみに必要なオートチューニングソフトウエア10を記憶させ、実行させて、モータ4の固有の定数を測定するオートチューニング作業において、エレベータの据付調整時に不要なコンバータ制御ソフトウエア8を制御部5から外部記憶装置へ一時的に移動させた後、オートチューニングソフトウエア10を制御部5のコンバータ制御ソフトウエア8が記憶されていた領域へ記憶させ、その後、制御部5にオートチューニングソフトウエア10を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御部に、エレベータの据付調整時のみに必要なソフトウエアを記憶させ、実行させて、エレベータの据付調整を行うエレベータ据付調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの改修工事において、既設モータを流用するために、制御部に前記既設モータの固有の定数を算出するソフトウエアを記憶させ、実行させることで、前記定数を算出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特願2005−500558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制御部にソフトウエアを追加して記憶させるための十分な空きの記憶領域がない場合には、制御部にソフトウエアを記憶させることができないので、制御部にソフトウエアを実行させて既設モータの固有の定数を算出することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、エレベータの制御部に、エレベータの据付調整時のみに必要な第1のソフトウエアを追加して記憶させるための十分な空きの記憶領域がない場合であっても、第1のソフトウエアを制御部に記憶させ、実行させることができるエレベータ据付調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ据付方法は、エレベータの制御部に、前記エレベータの据付調整時のみに必要な第1のソフトウエアを記憶させ、実行させて、前記エレベータの据付調整を行うエレベータ据付調整方法において、前記エレベータの据付調整時に不要な第2のソフトウエアを、前記エレベータの制御部から外部記憶装置へ一時的に移動させ、コピーさせ、前記制御部から削除し、または前記制御部に維持し、前記第1のソフトウエアを前記制御部の前記第2のソフトウエアが記憶されていた、または記憶されている記憶領域へ記憶させた後、前記制御部に前記第1のソフトウエアを実行させる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータ据付方法によれば、エレベータの据付調整時のみに必要な第1のソフトウエアを追加して記憶させるための十分な空きの記憶領域がない場合であっても、第1のソフトウエアを制御部に記憶させて、実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はエレベータの主回路図、図2は図1の制御部5の記憶領域を示す説明図、図3はモータ4のオートチューニング作業を示すフローチャート図である。
実施の形態1に係るエレベータは、三相交流の電力を供給する電源1と、この電源1から供給された交流電力を直流電力に変換するコンバータ2と、このコンバータ2からの直流電力を交流電力に変換するインバータ3と、インバータ3からの交流電力により回転し、エレベータのかご(図示せず)を移動させるモータ4とを備えている。
コンバータ2およびインバータ3には、トランジスタ2a、3aとダイオード2b、3bとがそれぞれ組み合わされて設けられており、このトランジスタ2a、3aが、制御部5からの電気信号により制御されることで、コンバータ2およびインバータ3は作動する。
さらに制御部5は、電源1とコンバータ2との間に流れる電流およびインバータ3とモータ4との間に流れる電流を測定する電流計5aと、コンバータ2から送られた直流電力の電圧を測定する電圧計5bとを有しており、これらの電流計5aおよび電圧計5bによる測定値が適切な値となるようにコンバータ2およびインバータ3を制御する。
【0009】
制御部5は、コンバータ2を制御するための第2のソフトウエアであるコンバータ制御ソフトウエア8が記憶されているコンバータ用記憶領域6aと、インバータ3を制御するためのインバータ制御ソフトウエア9が記憶されているインバータ用記憶領域6bと、何も記憶されていない空き記憶領域6cとを有している。
コンバータ制御ソフトウエア8は、モータ4の固有の定数、例えば一次抵抗、二次抵抗、一次インダクタンス、二次インダクタンス等を測定するオートチューニング作業時に不要である。
オートチューニング作業時のみに必要な第1のソフトウエアであるオートチューニングソフトウエア10が記憶されている保守ツール(図示せず)のオートチューニング用記憶領域7は、空き記憶領域6cよりも大きく、コンバータ用記憶領域6aと空き記憶領域6cとをあわせたものより小さい。
【0010】
次に、図3に示すように、モータ4の固有の定数を測定するオートチューニング作業を行う手順について説明する。
まず、保守ツールを用いて、コンバータ制御ソフトウエア8を制御部5のコンバータ用記憶領域6aから一時的に保守ツール内の外部記憶装置(図示せず)に移動させる(ステップS1)。
次に、コンバータ制御ソフトウエア8が記憶されていたコンバータ用記憶領域6aおよび空き記憶領域6cにオートチューニングソフトウエア10を記憶させる(ステップS2)。
さらに、制御部5にオートチューニングソフトウエア10を実行させる(ステップS3)。
【0011】
制御部5のコンバータ用記憶領域6aにはコンバータ制御ソフトウエア8が記憶されていないので、コンバータ2内のトランジスタ2aを作動させることはできないが、ダイオード2bを用いて、コンバータ2をダイオードコンバータとして動作させることができる。
オートチューニングソフトウエア10の実行が終了すると(ステップS4)、そのオートチューニング結果であるモータ4の固有の定数の値を制御部5の記憶領域に記憶させる。
保守ツールの外部記憶装置に移動させていたコンバータ制御ソフトウエア8を再び制御部5のコンバータ用記憶領域6aに記憶させて(ステップS5)、オートチューニング作業が終了する。
【0012】
以上説明したように、このエレベータ据付調整方法を用いると、制御部5に、オートチューニング作業時のみに必要なオートチューニングソフトウエア6を追加して記憶させるための十分な記憶領域がない場合であっても、オートチューニング作業時に不要なコンバータ制御ソフトウエア8が記憶されていたコンバータ用記憶領域6aにオートチューニングソフトウエア10を記憶させて、実行させることができる。
【0013】
また、モータ4の固有の定数を算出することができるので、既設のモータ4を流用して、エレベータの改修を行うことができる。
【0014】
また、コンバータ2は、トランジスタコンバータであるので、制御部5にコンバータ制御ソフトウエア8が記憶されていなくても、ダイオードコンバータとして機能し、インバータ3に直流を供給することができ、オートチューニング作業を行うことができる。
【0015】
なお、上記実施の形態1では、エレベータ据付調整を、モータ4のオートチューニング作業として説明したが、勿論このものに限らず、例えば、据付けられたエレベータの配線の確認のために、制御部5に配線確認用のソフトウエアを記憶させ、実行させる、エレベータの配線の確認作業であってもよい。
【0016】
また、上記実施の形態1では、コンバータ制御ソフトウエア8をコンバータ用記憶領域6aから外部記憶装置に移動させるオートチューニング作業について説明したが、予め、コンバータ制御ソフトウエア8が外部記憶装置に記憶されている場合には、コンバータ制御ソフトウエア8をコンバータ用記憶領域6aから削除する、またはコンバータ制御ソフトウエア8をコンバータ用記憶領域6aに維持するオートチューニング作業であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】エレベータの主回路図である。
【図2】図1の制御部の記憶領域を示す説明図である。
【図3】モータのオートチューニング作業の手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0018】
1 電源、2 コンバータ、2a トランジスタ、2b ダイオード、3 インバータ、3a トランジスタ、3b ダイオード、4 モータ、5 制御部、5a 電流計、5b 電圧計、6a コンバータ用記憶領域、6b インバータ用記憶領域、6c 空き記憶領域、7 オートチューニング用記憶領域、8 コンバータ制御ソフトウエア(第2のソフトウエア)、9 インバータ制御ソフトウエア、10 オートチューニングソフトウエア(第1のソフトウエア)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの制御部に、前記エレベータの据付調整時のみに必要な第1のソフトウエアを記憶させ、実行させて、前記エレベータの据付調整を行うエレベータ据付調整方法において、
前記エレベータの据付調整時に不要な第2のソフトウエアを、前記エレベータの制御部から外部記憶装置へ一時的に移動させ、コピーさせ、前記制御部から削除し、または前記制御部に維持し、
前記第1のソフトウエアを前記制御部の前記第2のソフトウエアが記憶されていた、または記憶されている記憶領域へ記憶させた後、
前記制御部に前記第1のソフトウエアを実行させることを特徴とするエレベータ据付調整方法。
【請求項2】
前記第1のソフトウエアを実行することで、前記制御部は既設モータの固有の定数を算出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ据付調整方法。
【請求項3】
前記既設モータを駆動させる回路に設けられたコンバータは、トランジスタコンバータであることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ据付調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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