説明

エレベータ装置

【課題】エンコーダや演算装置に依らずに戸開中のかごの昇降異常を抑制することができ、信頼性を向上させることができるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】第2調速装置31のソレノイドコイル47が給電されている場合には、昇降停止スイッチ45が操作回避位置に配置され、スイッチレバー45aは、作動爪38による操作を受けない。第2調速装置31のソレノイドコイル47が給電されていない場合には、昇降停止スイッチ45が操作可能位置に配置され、スイッチレバー45aは、戸開対応所定速度に対応する第2綱車24の回転による遠心力によってフライウエイト32A,32Bが回動した際に、作動爪38による操作を受ける。昇降停止スイッチ45は、スイッチレバー45aが操作されたことに応じて、巻上機への給電を遮断し、巻上機のブレーキ装置を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、戸開中のかごの昇降異常を抑制する機能を有するエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すような従来のエレベータ装置では、かごドア又は乗場ドアが開いたまま制御暴走等によってかごが高速で昇降を開始した場合に(例えば、戸開状態のままかごが昇降する「床合せ補正運転」時の走行速度を超える速度でかごが昇降した場合に)、かごの昇降異常を抑制する戸開走行判断部が用いられている。この戸開走行判断部は、巻上機又は調速装置に取り付けられたエンコーダ等からの信号を用いて、かごの昇降状態を判断する。また、戸開走行判断部は、かごの昇降異常が発生していると判断した場合には、巻上機のブレーキ装置を作動させて、かごの昇降を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/008058号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータ装置では、戸開走行判断部としての機能をもつ演算装置が、エンコーダからの信号を用いてかごの昇降状態を判断している。しかしながら、これらのエンコーダや演算装置に不具合が生じる場合がある。従って、このような不具合に対する信頼性をより向上させるために、エンコーダや演算装置に依らないで戸開中のかごの昇降異常を抑制する構成が望まれている。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、エンコーダや演算装置に依らずに戸開中のかごの昇降異常を抑制することができ、信頼性を向上させることができるエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のエレベータ装置は、昇降路内を昇降されるかご及び釣り合いおもりと、前記かご及び前記釣り合いおもりを前記昇降路内に吊り下げる主ロープと、前記主ロープが巻き掛けられたシーブを有し、前記かご及び前記釣り合いおもりの昇降を駆動する駆動装置と、前記かごの昇降に伴って回転可能な回転体を有し、前記かごに設けられたかごドア装置及び前記昇降路に設けられた複数の乗場ドア装置の少なくともいずれかの1つのドア装置が開状態の場合に、前記かごの走行速度が所定速度に達したことを前記回転体の回転による遠心力を用いて検出し、その検出したことに応じて、前記かごの昇降を停止させる戸開対応調速機構とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータ装置によれば、戸開対応調速機構が、かごの走行速度が所定速度に達したことを回転体の回転による遠心力を用いて検出し、その検出したことに応じて、かごの昇降を停止させるので、エンコーダや演算装置に依らずに戸開中のかごの昇降異常を抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータ装置を示す構成図である。
【図2】図1のかごドア装置の開状態を示す正面図である。
【図3】図1のかごドア装置の閉状態を示す正面図である。
【図4】図1の第2調速装置を拡大して示す正面図である。
【図5】図1の第2調速装置を拡大して示す正面図である。
【図6】図4,5のソレノイドコイルを給電・遮断するための回路構成を示す回路図である。
【図7】図4,5のソレノイドコイルを給電・遮断するための回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータ装置を示す構成図である。
図1において、建物の昇降路1の上部には、機械室1aが設けられている。機械室1aには、制御盤2、駆動装置としての巻上機3、及び反らせ車4が設けられている。巻上機3は、モータ、シーブ及びブレーキ装置を有している。シーブは、モータの駆動力によって回転される。シーブには、主ロープ5が巻き掛けられている。ブレーキ装置は、給電状態ではシーブの回転を許容し、給電遮断状態ではシーブの回転を制止する。
【0010】
主ロープ5は、昇降路1内に垂れ下げられている。また、主ロープ5の一端部及び他端部には、それぞれかご6及び釣り合いおもり7が吊り下げられている。かご6及び釣り合いおもり7は、巻上機3の駆動力によって、昇降路1内を昇降される。また、巻上機3の駆動を含むかご6及び釣り合いおもり7の昇降は、制御盤2によって制御される。
【0011】
さらに、かご6及び釣り合いおもり7の昇降は、それぞれ昇降路1内に立てて設けられたかごガイドレール8及びおもりガイドレール9によって案内される。昇降路1の底部におけるかご6及び釣り合いおもり7の鉛直投影領域には、それぞれ緩衝器10,11が設けられている。
【0012】
かご6の正面部には、かごドアパネル12を含むかごドア装置13が設けられている。かご6の出入口は、かごドアパネル12によって開閉される。かごドア装置13は、かごドアパネル12の開閉移動を駆動する。かごドア装置13の駆動は、制御盤2によって制御される。
【0013】
建物の各階の乗場には、乗場ドアパネル14A〜14Dを含む乗場ドア装置15A〜15Dがそれぞれ設けられている。各階の乗場の出入口は、乗場ドアパネル14A〜14Dによって開閉される。乗場ドア装置15A〜15Dは、かごドア装置13と係合可能な係合機構(図示せず)をそれぞれ有している。また、乗場ドア装置15A〜15Dは、係合機構がかごドア装置13と係合しているときに、かごドア装置13から開閉駆動力を受ける。このかごドア装置13からの開閉駆動力によって、乗場ドアパネル14A〜14Dが開閉移動される。
【0014】
ここで、かごドア装置13は、図2,3に示すように、ハンガケース16、カム17、及びかごドア開閉検出手段としてのかごドア開閉検出スイッチ18を有している。ハンガケース16は、その内部にかごドアパネル12を開閉移動可能に吊り下げるためのハンガ機構を収容している。カム17は、かごドアパネル12の上面に取り付けられている。
【0015】
かごドア開閉検出スイッチ18は、ハンガケース16の下面に取り付けられている。かごドア開閉検出スイッチ18は、カム17によって操作される常開接点型のスイッチである。また、かごドア開閉検出スイッチ18は、かごドアパネル12が全閉位置から開放側へ移動した際に、かごドア開閉検出スイッチ18の接点が閉状態となる。なお、乗場ドア装置15A〜15Bも、かごドア装置13と同様に、ハンガケース及びカム(いずれも図示せず)と、及び乗場ドア開閉検出手段としての乗場ドア開閉検出スイッチ(図6,7の符号19A〜19D)とを有している。
【0016】
また、図1において、かご6の下部には、非常止め装置20が設けられている。非常止め装置20には、非常止めアーム21を介して、調速用ロープ22が接続されている。調速用ロープ22は、機械室1aに設けられた第1綱車(通常運転対応回転体)23と、昇降路1の底部に設けられた第2綱車(戸開対応回転体)24との間に無端状に張り渡されている。また、調速用ロープ22は、かご6の昇降に伴って、第1綱車23と第2綱車24との間で循環移動する。
【0017】
第1綱車23は、機械室1aに設けられた基台25に軸27を支点に回転自在に取り付けられている。また、第2綱車24は、昇降路1の底部に設けられた基台26に軸27を支点に回転自在に取り付けられている。ここで、第1綱車23は、第1調速装置(通常運転対応調速機構)30の一部をなしている。また、第2綱車24は、第2調速装置(戸開対応調速機構)31の一部をなしている。
【0018】
第1調速装置30は、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度(例えば、定格速度の1.4倍程度の速度)に達したことを機械的に検出可能である。また、第1調速装置30は、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達したことを検出した際に、調速用ロープ22を介して非常止め装置20を作動させるとともに、巻上機3への給電を遮断し、かご6の昇降を停止させる。
【0019】
第2調速装置31は、第1調速装置30と同様に、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達したことを機械的に検出可能であり、その検出した際に、調速用ロープ22を介して非常止め装置20を作動させる。また、第2調速装置31は、かご6の走行速度が戸開対応所定速度に達したことを機械的に検出可能であり、その検出した際に、巻上機3への給電を遮断し、かご6の昇降を停止させる。この戸開対応所定速度の一例としては、分速10mや分速20mであり、この戸開対応所定速度は、エレベータの設置環境や仕様等に応じて適宜決定することができる。
【0020】
ここで、第1調速装置30及び第2調速装置31の具体的な構成は互いにほぼ同様の構成であり、第1調速装置30が第2調速装置31における昇降停止スイッチ45を変位させるための構成(即ちアクチュエータ)を有していない点と、第1調速装置30及び第2調速装置31が互いに上下逆向きである点と、第1調速装置30が昇降路1の上部に配置され第2調速装置31が昇降路1の底部に配置されている点とが主に異なる。以下では、第2調速装置31の構成を中心に説明し、第1調速装置30の構成についての説明を省略する。
【0021】
図4,5は、図1の第2調速装置31を拡大して示す正面図である。なお、図4,5では、基台26の下側を省略して示す。図4,5において、第2調速装置31は、一対のフライウエイト(回動部材)32A,32B、ピン33A,33B、リンク34、ラチェット35、ラッチ36、平衡ばね37、作動爪(操作部)38、接続レバー39、アーム40、シュー41、ばね軸42、一対のばね受け部材43A,43B、ロープ掴みばね44、昇降停止スイッチ45、プランジャ46、プランジャ付勢ばね(図示せず)及びソレノイドコイル47を有している。
【0022】
フライウエイト32A,32Bは、第2綱車24の側面にピン33A,33Bを支点に回動自在に取り付けられている。また、フライウエイト32A,32Bは、リンク34によって互いに連結されている。ラチェット35は、軸27を支点に回転可能に(第2綱車24と同軸に)基台26に取り付けられている。ラチェット35の外周部には、複数の歯が設けられている。
【0023】
ラッチ36は、フライウエイト32Bの一端部(図4の右端部)に取り付けられており、フライウエイト32Bが図4の反時計方向に回動した際に、ラチェット35の歯と係合する。また、フライウエイト32Bの一端部は、第2綱車24の回転による遠心力に対抗する平衡ばね37を介して、第2綱車24の側面に接続されている。
【0024】
作動爪38は、フライウエイト32Bの他端部(図4の左端部)に取り付けられている。従って、第2綱車24の回転による遠心力が平衡ばね37のばね力を上回ったときに、その遠心力によって、フライウエイト32A,32Bがそれぞれピン33A,33Bを支点に、第2綱車24の径方向外側へ向けて回動される。
【0025】
接続レバー39の一端部(図4の右端部)は、ラチェット35の側面に回動可能に接続されている。アーム40の一端部(図4の上端部)は、基台26に回動可能に接続されている。シュー41は、アーム40に取り付けられている。また、シュー41は、第2綱車24の外周面の近傍に配置されている。
【0026】
ばね軸42の一端部(図4の右端部)は、接続レバー39の他端部(図4の左端部)に接続されている。ばね受け部材43A,43Bは、それぞればね軸42の両端部に取り付けられている。ばね受け部材43Aは、アーム40の他端部(図4の下端部)とばね軸42の一端部とを繋いでいる。ロープ掴みばね44は、ばね軸42におけるばね受け部材43A,43B間に設けられている。また、ロープ掴みばね44は、シュー41を調速用ロープ22に押し付けるためのばね力を発している。
【0027】
ソレノイドコイル47は、取付具(図示せず)を介して、基台26に取り付けられている。ソレノイドコイル47には、導線48が接続され、ソレノイドコイル47は、導線48を介して給電されて励磁する。プランジャ46は、ソレノイドコイル47の内部に往復動可能に挿入されている。
【0028】
また、プランジャ46は、プランジャ付勢ばねによって、第2綱車24側へ突出するように付勢されている。さらに、プランジャ46は、ソレノイドコイル47の磁力によって、第2綱車24の反対側へ吸引される。なお、プランジャ46、プランジャ付勢ばね及びソレノイドコイル47は、アクチュエータ(ソレノイド)を構成している。
【0029】
昇降停止スイッチ45は、プランジャ46の先端部(図4の左端部)に取り付けられている。また、昇降停止スイッチ45は、スイッチレバー45aを有している。さらに、昇降停止スイッチ45は、巻上機3とその電源との間の電路(図示せず)に電気的に接続されている。
【0030】
また、昇降停止スイッチ45は、スイッチレバー45aが操作(押圧)されたことに応じて、巻上機3とその電源との間の電路を開放する。即ち、昇降停止スイッチ45は、スイッチレバー45aが操作されたことに応じて、巻上機3への給電を遮断する。さらに、昇降停止スイッチ45は、アクチュエータによって、スイッチレバー45aが作動爪38の移動範囲と重なる操作可能位置と、スイッチレバー45aが作動爪38の移動範囲から外れる操作回避位置との一方から他方へ変位される。
【0031】
つまり、ソレノイドコイル47の給電遮断状態では、図4に示すように、昇降停止スイッチ45が操作可能位置に配置される。この状態では、スイッチレバー45aは、フライウエイト32A,32Bが回動した際に作動爪38による操作を受ける。他方、ソレノイドコイル47の給電状態では、図5に示すように、昇降停止スイッチ45が操作回避位置に配置される。この状態では、スイッチレバー45aは、フライウエイト32A,32Bが回動しても、作動爪38による操作を受けない。
【0032】
ここで、第2綱車24の回転による遠心力は、第2綱車24の回転速度の2乗に比例して大きくなり、回転速度が大きくなるほど、フライウエイト32A,32B及び作動爪38は、第2綱車24の径方向外側に広がる。従って、かご6の走行速度が床合せ補正運転時の走行速度を超える速度に達した際に、作動爪38がスイッチレバー45aを操作するように、昇降停止スイッチ45及び作動爪38の位置や、平衡ばね37のばね力が予め調整されている。
【0033】
次に、ソレノイドコイル47を給電・遮断するための回路構成について説明する。図6,7は、図4,5のソレノイドコイル47を給電・遮断するための回路構成を示す回路図である。図6,7において、ソレノイドコイル47には、直流電源50とかごドア開閉検出スイッチ18と乗場ドア開閉検出スイッチ19A〜19Dとを直列に繋ぐ電路(導線48を含む電路)が接続されている。
【0034】
かごドア開閉検出スイッチ18と乗場ドア開閉検出スイッチ19A〜19Dとの少なくとも1つスイッチの接点が開状態である場合には、図6に示すように、ソレノイドコイル47が給電遮断状態であり、プランジャ付勢ばねによって、プランジャ46がソレノイドコイル47から突出した状態である。従って、この状態では、昇降停止スイッチ45が操作可能位置に配置される。
【0035】
他方、かごドア開閉検出スイッチ18と乗場ドア開閉検出スイッチ19A〜19Dとの全てのスイッチの接点が閉状態である場合には、図7に示すように、ソレノイドコイル47が給電状態であり、プランジャ46がソレノイドコイル47によって吸引された状態である。従って、この状態では、昇降停止スイッチ45が操作回避位置に配置される。
【0036】
次に、かごドア装置13及び乗場ドア装置15A〜15Dの全てが閉状態の場合の第2調速装置31の動作について説明する。かご6の昇降が開始されて、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達すると、この速度に対応した第2綱車24の回転による遠心力によって、フライウエイト32A,32Bが第2綱車24の径方向外側へ向けて回動する。このときに、ソレノイドコイル47が給電状態であることから、昇降停止スイッチ45が操作回避位置に配置されており、スイッチレバー45aは、作動爪38による操作を受けない。
【0037】
また、フライウエイト32A,32Bが第2綱車24の径方向外側へ向けて回動することにより、ラッチ36がラチェット35の歯に係合する。そして、ラチェット35が第2綱車24とともに図4の反時計方向へ回転される。このラチェット35の回転は、接続レバー39、ばね軸42及びばね受け部材43Aを介してアーム40に伝達される。これにより、アーム40も図4の反時計方向へ回動される。
【0038】
そして、シュー41が調速用ロープ22に当接するとともに、ロープ掴みばね44によりシュー41がかご調速用ロープ22に押し付けられる。これにより、かご調速用ロープ22の循環移動が制止される。そして、かご調速用ロープ22の循環移動が制止された状態で、かご6が昇降することにより、非常止めアーム21が操作されて、かご非常止め装置20が作動する。この結果、かご6の昇降が瞬時に停止される。
【0039】
次に、かごドア装置13及び乗場ドア装置15A〜15Dの少なくともいずれか1つが開状態の場合の第2調速装置31の動作について説明する。かご6の昇降が開始されて、かご6の走行速度が戸開対応所定速度に達すると、この速度に対応した第2綱車24の回転による遠心力によって、フライウエイト32A,32Bが第2綱車24の径方向外側へ向けて回動する。
【0040】
このときに、ソレノイドコイル47が給電遮断状態であることから、昇降停止スイッチ45が操作可能位置に配置されており、スイッチレバー45aが作動爪38による操作を受ける。そして、昇降停止スイッチ45は、スイッチレバー45aが操作されたことに応じて、巻上機3への給電を遮断し、巻上機3のブレーキ装置を作動させる。この結果、かご6の昇降が瞬時に停止される。
【0041】
なお、第1調速装置30の動作も、かごドア装置13及び乗場ドア装置15A〜15Dの全てが閉状態の場合の第2調速装置31の動作とほぼ同様である。第1調速装置30では、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達した際に、昇降停止スイッチ45によって巻上機3への給電を遮断し、巻上機3のブレーキ装置を作動させる点が第2調速装置31とは異なる。
【0042】
上記のような実施の形態1のエレベータ装置によれば、第2調速装置31が、かご6の走行速度が所定速度に達したことを第2綱車24の回転による遠心力を用いて検出し、その検出したことに応じて、かご6の昇降を停止させる。この構成により、エンコーダや演算装置に依らずに戸開中のかご6の昇降異常を抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、アクチュエータが、かごドア装置13及び乗場ドア装置15A〜15Dの全てが閉状態の場合に、昇降停止スイッチ45を操作回避位置に配置し、かごドア装置13及び乗場ドア装置15A〜15Dの少なくともいずれか1つが開状態の場合に、昇降停止スイッチ45を操作可能位置に配置する。この構成により、かご6の通常運転中には昇降停止スイッチ45が操作回避位置に配置されるので、かご6の昇降異常の誤検出を回避することができる。
【0044】
さらに、第1調速装置30が昇降路1の上部に配置され、第2調速装置31が昇降路1の底部に配置され、第1綱車23及び第2綱車24が調速用ロープ22の循環移動に伴って互いに同期して回転するように構成されている。この構成により、第2調速装置31の設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0045】
なお、実施の形態1では、第1調速装置30及び第2調速装置31の2つの調速装置を用いた。しかしながら、この例に限定するものではなく、第1調速装置30を省略して、第2調速装置31のみを用いてもよい。ここで、通常運転対応所定速度に対応した第2綱車24の回転による遠心力が生じているときの作動爪38の移動範囲と重なるように、第2の昇降停止スイッチ(アクチュエータによって変位されないスイッチ)を第2調速装置31に設けることによって、第1調速装置30の機能を第2調速装置31に併合することができる。
【0046】
また、実施の形態1では、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達したことを検出するための構造を第2調速装置31が有していた。しかしながら、この例に限定するものではなく、かご6の走行速度が通常運転対応所定速度に達したことを検出するための構造を、第2調速装置31から省略してもよい。即ち、ラチェット35、ラッチ36、接続レバー39、アーム40、シュー41、ばね軸42、ばね受け部材43A,43B及びロープ掴みばね44を、第2調速装置31から省略してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 昇降路、3 巻上機(駆動装置)、5 主ロープ、6 かご、7 釣り合いおもり、13 かごドア装置、15A〜15D 乗場ドア装置、18 かごドア開閉検出スイッチ(かごドア開閉検出手段)、19A〜19D 乗場ドア開閉検出スイッチ、20 非常止め装置、22 調速用ロープ、23 第1綱車(通常運転対応回転体)、24 第2綱車(戸開対応回転体)、30 第1調速装置(通常運転対応調速機構)、31 第2調速装置(戸開対応調速機構)、32A,32B フライウエイト(回動部材)、38 作動爪(操作部)、45 昇降停止スイッチ、46 プランジャ、47 ソレノイドコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降されるかご及び釣り合いおもりと、
前記かご及び前記釣り合いおもりを前記昇降路内に吊り下げる主ロープと、
前記主ロープが巻き掛けられたシーブを有し、前記かご及び前記釣り合いおもりの昇降を駆動する駆動装置と、
前記かごの昇降に伴って回転可能な回転体を有し、前記かごに設けられたかごドア装置及び前記昇降路に設けられた複数の乗場ドア装置の少なくともいずれかの1つのドア装置が開状態の場合に、前記かごの走行速度が所定速度に達したことを前記回転体の回転による遠心力を用いて検出し、その検出したことに応じて、前記かごの昇降を停止させる戸開対応調速機構と
を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記戸開対応調速機構は、
前記回転体に設けられ、前記回転体の回転による遠心力によって前記回転体の径方向外側へ向けて回動可能な回動部材と、
前記回動部材に設けられた操作部と、
前記操作部によって操作され、その操作されたことに応じて前記かごの昇降を停止させるための昇降停止スイッチと
をさらに有し、
前記回転体の回転による遠心力によって前記回動部材が回動されて、前記操作部によって前記昇降停止スイッチが操作されることにより、前記かごの走行速度が所定速度に達したことを検出する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記戸開対応調速機構は、前記操作部の移動範囲と重なる操作可能位置と、前記操作部の移動範囲外の操作回避位置との一方から他方へ前記昇降停止スイッチを変位させるアクチュエータをさらに有し、
前記アクチュエータは、
前記かごドア装置の開閉状態を検出するためのかごドア開閉検出手段と、前記複数の乗場ドア装置のそれぞれの開閉状態を検出するための複数の乗場ドア開閉検出手段とに接続され、
前記かごドア開閉検出手段及び前記複数の乗場ドア開閉検出手段の少なくともいずれか1つがドア装置の開状態を検出したことに応じて、前記昇降停止スイッチを前記操作可能位置に配置し、
前記かごドア開閉検出手段及び前記複数の乗場ドア開閉検出手段の全てがドア装置の閉状態を検出したことに応じて、前記昇降停止スイッチを前記操作回避位置に配置する
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記かごに設けられ、前記かごの昇降を停止させるための非常止め装置と、
前記かごの昇降に伴って回転可能な通常運転対応回転体を有し、前記昇降路の上部及び底部のいずれか一方に設けられ、前記所定速度としての戸開対応所定速度とは異なる通常運転対応所定速度に前記かごの走行速度が達したことを前記通常運転対応回転体の回転による遠心力を用いて検出し、その検出したことに応じて、前記非常止め装置を作動させる通常運転対応調速機構と
をさらに備え、
前記戸開対応調速機構は、前記回転体としての戸開対応回転体を有し、前記昇降路の上部及び底部の他方に設けられ、
前記戸開対応回転体及び前記通常運転対応回転体には、前記かごに接続された調速用ロープが巻き掛けられ、
前記戸開対応回転体及び前記通常運転対応回転体は、前記調速用ロープによって互いに同期して回転する
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記所定速度は、前記かごの床合せ補正運転の走行速度を超える速度である
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−6707(P2012−6707A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144037(P2010−144037)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】