説明

エンジンにおけるマイクロバブル発生装置

【課題】小型、且つ廉価で、マイクロバブル発生装置が適用されるエンジンの状態に応じてより好適な量のマイクロバブルを潤滑用のオイルとともに供給する。
【解決手段】オイルを貯溜するオイルパン50dと、オイルを潤滑対象に供給する潤滑路と、オイルパン50dからオイルを吸い出して潤滑路に供給するオイルポンプ80と、オイルポンプの流入口にオイルを導く導入管路100と、一端が導入管路内又はオイルポンプ80の出力側管路104内に接続されて、他端が空気吸入口として開放された空気通路102と、導入管路100又は出力側管路104で、空気通路102との接続部より下流側に設けられたマイクロバブル発生器16と、を備え、空気吸入口には、エンジンの状態に応じて吸入流量を可変させる流量可変手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブル発生装置に係り、特にエンジンに供給する潤滑用のオイルにマイクロバブルを発生させて供給するエンジンにおけるマイクロバブル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関に潤滑用のオイルをオイルポンプ等によって循環させることにより内燃機関の所定部位における潤滑を行わせる潤滑装置において、マイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置を備え、このマイクロバブル発生装置により発生したマイクロバブルをオイルに混入し、それを内燃機関における所定部位に供給させる構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
このような構成を採ることで、内燃機関から出力される駆動力に対する摩擦による損失を低減させることが期待できる。
【特許文献1】特開2007−9900号公報(図4、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1に記載された構成によれば、確かに内燃機関の潤滑油供給中における摩擦損失を軽減させることが期待できる。
しかしながら、潤滑経路の状態は、内燃機関の状態(たとえば、油温)により変化するため、その変化に対応すべく、適切な量のマイクロバブルの発生を行うことのできる構成が望まれる。たとえば、低温時などは、オイルの粘度が高いため、油圧によるオイルポンプ自体の駆動抵抗損失が大きくなることが予測されるので、このような場合には、オイルの見かけ上の粘度を低減させるのに必要十分なマイクロバブルが発生され、当該オイルに混合されることが望まれる。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、小型、且つ廉価で、内燃機関であるエンジンの駆動状態によって変化するオイルの潤滑経路の状態変化に対応させて好適な量のマイクロバブルを発生させ、潤滑油とともに供給することが可能なエンジン用のマイクロバブル発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、第1の態様は、オイルを貯溜するオイル貯溜部と、オイルを潤滑対象に供給する潤滑路と、前記オイル貯溜部からオイルを吸い出して前記潤滑路に供給するポンプと、前記ポンプの流入口にオイルを導く導入管路と、一端が前記導入管路内又は前記ポンプの出力側管路内に接続されて、他端が空気吸入口として開放された空気管路と、前記導入管路又は前記出力側管路で、前記空気通路との接続部より下流側に設けられたマイクロバブル発生器と、を備え、前記空気吸入口には、エンジンの状態に応じて吸入流量を可変させる流量可変手段が設けられていることを特徴としている。
上記構成によれば、ポンプは、オイル貯溜部からオイルを吸い出して潤滑路に供給し、潤滑路を介してオイルを潤滑対象に供給する。
このとき、流量可変手段は、エンジンの状態に応じて空気吸入口における吸入流量を可変させる。
エンジンの状態に応じて潤滑するオイルの粘度は可変するものであり、上記構成によれば、そのオイルの粘度に応じたマイクロバブルを発生させることができる。
【0006】
また、第2の態様は、第1の態様において、前記流量可変手段は、前記空気吸入口を開閉する開閉手段と、前記開閉手段をエンジンの状態に応じて開閉制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、簡単な構成によってマイクロバブル発生量をコントロールすることができる。
【0007】
また、第3の態様は、第2の態様において、前記開閉手段は、開口面積が異なる複数のもので構成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、開閉手段の開閉制御により、マイクロバブル発生量を細かくコントロールすることができる。
【0008】
また、第4の態様は、第1ないし第3の態様において、前記エンジンの状態は、エンジンの油温であることを特徴としている。
オイルの動粘度は油温に応じて異なるため、上記構成によれば、その動粘度の状態に応じてマイクロバブル発生量、ひいては、エア供給量をコントロールすることができる。
【0009】
また、第5の態様は、第4の態様において、前記エンジンの油温が低いほど前記空気吸入口からの空気の吸入量を多くすることを特徴としている。
油温が低い状態では、オイルの動粘度が高いため、このような状態において、マイクロバブル発生量、すなわち、エアーを十分に発生させることにより、よりフリクションを低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエンジンにおけるマイクロバブル発生装置によれば、エンジンの状態に応じてより好適な量のマイクロバブルを生成し、供給することができ、特にオイルの粘度状態に応じたマイクロバブルを発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態のマイクロバブル発生装置が適用される自動二輪車の外観側面図である。
【0012】
自動二輪車12は、ロードスポーツ型の自動二輪車であり、クレードル型の車体フレーム14と、この車体フレーム14のヘッドパイプ15に取付けたフロントフォーク18と、このフロントフォーク18に取付けた前輪20並びにフロントフェンダ22と、フロントフォーク18に連結したハンドル24と、車体フレーム14の前部上部に跨ぐように取付けた燃料タンク26とを有する。
【0013】
また、自動二輪車12は、車体フレーム14の後部上部に取付けたシート(運転者席と同乗者席とを有するダブルシート)28と、車体フレーム14の各パイプで囲まれたクレードルスペース内に配置したエンジン(内燃機関)30及び変速機30aと、クレードルスペースの後方に且つシート28の下方に配置したエアクリーナ32と、このエアクリーナ32、エンジン30の吸気Pの開口に接続した気化器34と、エンジン30の排気口に接続した排気管35、集合チャンバ36並びにサイレンサ38とを有する。さらに、自動二輪車12は、エンジン30の前方に配置したラジエータ40と、車体フレーム14の後部にピボットを介して取付けたスイングアーム42と、このスイングアーム42の後端部有車体フレームMに懸架したリヤサスペンション44と、スイングアーム42に取付けた後輪46とを有する。
【0014】
図2は、本実施の形態に係るマイクロバブル発生装置が設けられたエンジンの断面側面図である。
図2に示すように、エンジン30の外郭は、上方から順にシリンダヘッド50a、シリンダ50b、クランクケース50c及びオイルパン(オイル貯溜部)50dによって形成されており、外部から異物が進入しないように構成されている。
【0015】
エンジン30は、吸気管52からスロットルバルブ54を介して空気を吸入し、燃料噴射弁56から燃料を噴出し、吸気バルブ58が開いているときに燃焼室60に混合気を供給する。シリンダ50b内では、ピストン62が往復運動をして、往復で混合気の吸気動作、圧縮動作、燃焼動作、及び排気動作を行う。燃焼動作は図示しない点火プラグにより行われる。排気動作は、排気バルブ64が開いているときに行われ、排気管66に排出される。吸気バルブ58及び排気バルブ64は、それぞれ対応するカムシャフト67のカム67aによって開閉駆動される。
【0016】
ピストン62は、コネクティングロッド70によってクランクシャフト72の偏心位置に接続されており、ピストン62が往復運動をすることによってクランクシャフト72が回転をする。始動時には、クランクシャフト72に接続されたフライホイール74をスタータモータ76により回転させる。
【0017】
クランクケース50c内には、クラッチ78、オイルポンプ80及び変速機30aが設けられている。変速機30aは、フライホイール74によって駆動され、クランクシャフト72の回転数を変速して後輪46に回転を伝達する。
【0018】
オイルパン50dには、エンジン30の各部の潤滑を行うためのオイルが貯溜されている。オイルは潤滑以外にも防錆、冷却、消浄等の作用も有することはもちろんである。
【0019】
図3に示すように,オイルポンプ80は、エンジン30の潤滑系統の一部であって、ドリブンスプロケット130に連動して回転する。ドリブンスプロケット130は、クランクシャフト72に設けられた図示しないドライプスプロケットに対してチェーンで接続されて回転する。
【0020】
オイルパン50dのオイルは、オイルポンプ80によって吸い出されて、出力側管路104からオイルフィルタ132及び潤滑路134を経由してエンジン30の各潤滑対象に供給される。出力側管路104には、過大な圧力がかかることを防止するリリーフ弁136が設けられている。潤滑路134は複数に分岐しており、各ピストン62やクランクシャフト72、カムシャフト67のカム67a、バランサ140に供給される。
オイルは、メインシャフト142及びカウンタシャフト144から変速機30aにも供給される。潤滑路134の圧力は、オイルプレッシャスイッチ146により検出され、所定の圧力が印加されているごとを確認できる。図3における複数の矢印はオイルの移動経路を示し、複数の黒点148は噴出するオイルを模式的に示している。エンジン30の潤滑対象に供給されたオイルは、やがて落下してオイルパン50dに回収される。潤滑系統には、オイルクーラが介在してもよい。
【0021】
図2及び図3に示すように、本実施の形態に係るマイクロバブル発生装置16は、クランクケース50c及びオイルパン50d内に設けられており、オイルパン50dからオイルを吸い出して潤滑路134(図3参照)に送給するオイルポンプ80と、オイルポンプ80の流入口にオイルを導く導入管路(主管路)100と、一端に導入管路100が接続され、他端に空気吸入口を構成する第1空気吸入開口102aおよび第2空気吸入開口102bが形成された空気管路102と、第1空気吸入開口102aの開閉動作を行うための第1リニアソレノイドバルブ103aおよび第2空気吸入開口102bの開閉を行うための第2リニアソレノイドバルブ103bを有する吸入口開閉部103と、オイルポンプ80の出力側管路(主管路)104に設けられ、マイクロバブルを発生するためのバブル生成オリフィス(マイクロバブル発生器)106と,空気管路102における導入管路100との接続部に設けられ、空気導入量の調整を行うための空気量調整オリフィス108と、を備えている。ここで、第1空気吸入開口102aの開口面積は、第2空気吸入開口102bの開口面積より大きく設定されており、開状態における空気吸入量は、第1空気吸入開口102aの方が第2空気吸入開口102bより大きくなっている。
オイルポンプ80とバブル生成オリフィス106とは、極めて近接しており、この間には他の機器は介在していないし、空気管路102は通常の管路である空気量調整オリフィス108以外の機器はない。また、バブル生成オリフィス106は、オイルポンプ80に直接設けられていてもよい。
【0022】
空気管路102は、一部が留め具110によってクランクケース50cに固定されて安定しており、耐振性の向上が期待できる。空気管路102は略全長にわたってクランクケース50cに固定してもよい、空気管路102の少なくとも一部をクランクケース50cの壁部を用いて形成してもよい。
【0023】
空気管路102は、クランクケース50c内に設けられており、先端の空気吸入開口102a、102bは、適度に高い箇所で、少なくともオイルパン50dのオイル油面120よりは高い位置に開口している。これにより、空気を確実に空気管路102に吸入することができ、マイクロバブルの発生量を多くすることができる。空気管路102は、二つの空気吸入開口102a、102bを高い位置に配置するために、途中に上昇部102cを有し、二つの空気吸入開口102a、102bは、導入管路100に対する接続部よりも高い位置にある。
【0024】
空気管路102の先端は、クラッチ78等の回転体よりも下方に配設されて、略U字形状に屈曲しており、空気吸入開口102a、102bは下方に向けて開口している。これにより、上方から滴下し又は回転体の遠心力により飛散してくるオイルが空気管路102に避入することを防止できる。空気吸入開口102a、102bと、その近傍部におけるクランクケース50cの壁面との問には適度な隙間が確保されており、該壁面からオイルが伝わり、又は跳ね返って侵入することが防止できる。導入管路100の下端にはストレーナ112が設けられており、オイルパン50dのオイルに浸されている。
【0025】
なお、本実施の形態では、空気管路102の先端は略U字形状に屈曲されているが、空気管路102の上方にひさし部を備えた場合には、その先端は略U字形状とすることに限定されない。
【0026】
ここで、空気管路102の空気吸入開口102a、102b近傍の構成について詳細に説明する。
図4は、空気管路の要部斜視図である。
図5は、空気管路の要部一部断面拡大図である。
空気管路102を構成する第1空気吸入開口102a(=直径D1)には、第1遮断弁本体(ジェット)102dが設けられ、第1空気吸入開口102aよりも開口面積の小さな第2空気吸入開口102b(=直径D2<D1)には、第2遮断弁本体(ジェット)102eが設けられている。
一方、第1リニアソレノイドバルブ103aは、第1遮断弁本体102dに対応し、第1遮断弁本体102d内に進入される第1弁体103cが先端部に形成されたプランジャ103dを有し、第2リニアソレノイドバルブ103bは、第2遮断弁本体102eに対応し、第2遮断弁本体102e内に進入される第2弁体103eが先端部に形成されたプランジャ103fを有している。
【0027】
これらの結果、第1リニアソレノイドバルブ103aのプランジャ103dが図示しないソレノイドコイルの発生した電磁力により第1遮断弁本体102d内に進入すると、第1弁体103cが第1遮断弁本体102dに当接して、第1空気吸入開口102aからの空気の吸入を遮断することとなる。また、第2リニアソレノイドバルブ103bのプランジャ103fが図示しないソレノイドコイルの発生した電磁力により第2遮断弁本体102e内に進入すると、第2弁体103eが第2遮断弁本体102eに当接して、第2空気吸入開口102bからの空気の吸入を遮断することとなる。
【0028】
そして、第1リニアソレノイドバルブ103aと第2リニアソレノイドバルブ103bとは、独立して駆動可能であるので、以下の4状態が実現できる。
(1)第1空気吸入開口102a開状態、第2空気吸入開口102b開状態
→開口面積最大(空気吸入量最大;バブル発生量多)
(2)第1空気吸入開口102a開状態、第2空気吸入開口102b閉状態
→開口面積大(空気吸入量大;バブル発生量中)
(3)第1空気吸入開口102a閉状態、第2空気吸入開口102b開状態
→開口面積小(空気吸入量小;バブル発生量少)
(4)第1空気吸入開口102a閉状態、第2空気吸入開口102b閉状態
→開口面積最小(空気吸入量最小[吸入なし];バブル発生なし)
【0029】
図6は、接続側空気管路における導入管路との接続部の断面側面図である。
図6に示すように、空気管路102は、導入管路100の側方に略90°で接続されており、導入管路100をオイルが流れることにより、流体の性質として、第1空気吸入開口102aあるいは第2空気吸入開口102bから空気管路102に取り込まれた空気が、図6中、矢印Aで示すように、空気量調整オリフィス108を介して吸い込まれ、オイル内に空気が気泡(バブル)156として混入することになる。この混入した気泡156は、この時点ではある程度大径であるが、オイルポンプ80を介してバブル生成オリフィス109を通過するときにマイクロバブルになる。
【0030】
空気量調整オリフィス108は、例えば、ねじ込み式であって、交換可能であり、オイル内に混入する空気量の調整が可能となっている。これにより、結果としてマイクロバブルの発生量を固定的に規制することができる。
空気吸入開口102a、102bは、クランクケース50c内で開口しているので、空気管路102内に異物が侵入しにくい。
【0031】
図7は、バブル生成オリフィスの断面図である。
バブル生成オリフィス106は、図7に示すように、入力側から出力側に向かって縮径する第1テーパ部150と、第1テーパ部150によって小径になった絞り部152と、出力側で次第に拡径する第2テーパ部154とを有し、いわゆるベンチュリ形状となっている。
【0032】
第1テーパ部150は出力側に向かって比較的急に縮径しており、第2テーパ部154は出力側に向かって比較的緩やかに拡径している。このようなバブル生成オリフィス106では、第1テーパ部150でオイル及び気泡156が加圧され、増速されることにより、絞り部152で気泡156が潰れてマイクロバブルが発生しやすい。図7中では多数のマイクロバブルMBを点で示している。第2テーパ部154は、比較的緩やかに拡径していることから、絞り部152で発生したマイクロバブルは急激な圧力変動などの影響を受けることなく、消滅せずにそのまま下流側へ流れていくと考えられる。バブル生成オリフィス106は、簡便構成であって、小型、軽量且つ廉価であることはもちろんである。
【0033】
上述したように、本実施の形態に係るマイクロバブル発生装置16は、オイルポンプ80の導入管路100に対して空気管路102を接続するとともに、該オイルポンプ80の出力側にバブル生成オリフィス166を段けることで小型且つ廉価な装置が得られ、潤滑用のオイルにマイクロバブルを簡便に混入させることができる。マイクロバブル発生装置16では、オイルポンプ80とバブル生成オリフィス106が近接配置されていることにより、小型化が可能である。
【0034】
マイクロバブル発生装置16は、高価で且つ、体積の大きい超音波発生装置が不要で、コンパクト且つ廉価である。
【0035】
マイクロバブル発生装置16は、空気を混入させたオイルをオイル流路中に設けたバブル生成オリフィス166内を流すだけでマイクロバブルを発生させるので、超音波発生装置等の別機器を設ける必要がなく、最小限のスペースでエンジン30内に収納することができるので、機器容積を増加させることがなく、レイアウト上好適である。また、別機器を設ける必要がないことからオイルや空気の接続管路も不要であり、オイル等の漏れ対策は特に必要ない。
【0036】
マイクロバブル発生装置16では、通常のエンジン30の基本構成に対して、大きく変更することなく適用可能であり、専用のオイルタンク、空気タンク又は駆動源等が不要である。
【0037】
オイルに混在するマイクロバブルは,見かけ上の粘度が下がることにより潤滑対象の摩擦を低下する作用があり、エンジン30の摩擦損失を低減することができる。したがって、例えば、低温時にも適温のオイルと同程度の動粘度が得られ、循環抵抗及び駆動抵抗が小さく、暖機効果を短時間で得られると考えられる。
【0038】
なお、バブル混入オイルは温度が上昇すると、見た目上消滅することが本願発明者により確認されている。したがって、マイクロバブル発生装置16を設けても高温時の見かけ上の粘度は変わらず、バブル混入オイルが循環しても、高温時にバブルがなくなるので、耐久タフネス性は維持される。つまり、高温時においてマイクロバブルが消滅することにより、泡噛みの影響を低減させることができるので、バッフルプレートやオイルパンの深さを浅くでき、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0039】
次にマイクロバブルの発生量の制御について説明する。
図8は、マイクロバブルの発生量の制御系の概要構成ブロック図である。
マイクロバブル発生量の制御系200は、大別すると、エンジン30の回転数を検出し、回転数検出信号SRを出力するエンジン回転数センサ201と、エンジンに供給するオイルの温度を検出し、温度検出信号STを出力するオイル温度センサ202と、回転数検出信号SRに対応するエンジン回転数および温度検出信号STに対応するオイル温度に基づいてマイクロバブル発生量、ひいては、エンジンに供給するオイルに含まれるマイクロバブル量の制御を行うコントローラ203と、コントローラ203の制御下で第1リニアソレノイドバルブ103aを開閉させるべく駆動する第1バルブコントローラ204と、コントローラ203の制御下で第2リニアソレノイドバルブ103bを開閉させるべく駆動する第2バルブコントローラ205と、を備えている。
コントローラ203は、マイクロコンピュータとして構成されているECU206と、マイクロバブル発生量を制御するための制御プログラム、テーブルを含む各種データを不揮発的に記憶する外部記憶装置としてのROM207と、を備えている。
【0040】
図9は、マイクロバブル発生量の制御状態の説明図である。
本実施形態においては、マイクロバブルの発生量は、上述したように、4段階に調整可能である。そこで、本実施形態においては、エンジン回転数範囲およびオイル温度範囲で定められるエンジン10の動作領域を、以下に詳述する4つの動作領域A1〜A4に分け、各動作領域に適した量のマイクロバブルを発生させるようにしている。
【0041】
動作領域A1は、エンジン回転数に拘わらず、オイルの粘性(=動粘度。以下、同じ)が高いと考えられる第1の動作領域A11と、比較的エンジン回転数およびオイル温度が高い第2の動作領域A12と、を含んでいる。
第1の動作領域A11においては、オイルの粘性が高く、オイルの粘性に起因するエンジン10における負荷を低減するためにオイルの粘性を下げるべく、マイクロバブル発生量を最大値とするように制御を行っている。また、第2の動作領域においては、オイルの粘性は比較的低くなっているが、エンジンオイルの粘性をさらに低下させ、エンジンオイルの実効的な供給量を減らすことにより、潤滑性能を維持しつつエンジンの負荷を低減し、馬力の向上あるいはエンジン出力を向上させるべく、マイクロバブル発生量を最大値とするように制御を行っている。
【0042】
すなわち、動作領域A1においては、コントローラ203は、第1バルブコントローラ204を介して第1リニアソレノイドバルブ103aを駆動し、第1空気吸入開口102aを開状態とし、第2バルブコントローラ205を介して第2リニアソレノイドバルブ103bを駆動し、第2空気吸入開口102bをa開状態とし、空気吸入量を最大として、バブル発生量を多くするように制御を行う。
【0043】
図10は、オイル圧力に対するオイル流量および摩擦力のマイクロバブル混入前後の状態を説明する図である。
この結果、例えば、図8に示すように、オイル流量は、マイクロバブルを混入する前(図10中、◇印で示す。)と比較して、マイクロバブルを混入した状態では(図10中、◆印で示す。)、オイル圧力の低下とともに、オイル流量も低下していることがわかる。また、摩擦力は、マイクロバブルを混入する前(図10中、○印で示す。)と比較して、マイクロバブルを混入した状態では(図10中、●印で示す。)、オイル圧力の低下とともに、摩擦力も低下していることがわかる。
したがって、オイルポンプ80の負荷を低減しつつ、少ないオイル量で、十分に潤滑がなされていることがわかる。
【0044】
動作領域A2は、オイルの粘性はやや低下していると考えられる動作領域であるが、比較的エンジン回転数が低い低−中回転数領域、特に中回転数領域において、オイルの粘度の影響が大きく出ると考えられるため、オイルの粘性を下げるべく、マイクロバブル発生量を大とするように制御を行っている。すなわち、この動作領域A1においては、コントローラ203は、第1バルブコントローラ204を介して第1リニアソレノイドバルブ103aを駆動し、比較的開口面積が大きな第1空気吸入開口102aを開状態とし、第2バルブコントローラ205を介して第2リニアソレノイドバルブ103bを駆動し、比較的開口面積が小さな第2空気吸入開口102bを閉状態として遮断し、第1空気吸入開口102a側からのみ空気が吸入されるようにしている。
【0045】
動作領域A3は、オイル温度が中−高中温領域でエンジン回転数がやや低回転数の領域と、オイル温度が高中−高御領域でエンジン回転数が中回転数の領域と、オイル温度が低中−中温領域でエンジン回転数が比較的高回転数の領域と、を含んでおり、オイルの粘性はそれなりに下がっているはずであるので、実効的なオイルの供給量を増やすべく、マイクロバブル発生量を比較的少なくするように制御を行っている。すなわち、この動作領域A3においては、コントローラ203は、第1バルブコントローラ204を介して第1リニアソレノイドバルブ103aを駆動し、比較的開口面積が大きな第1空気吸入開口102aを閉状態として遮断し、第2バルブコントローラ205を介して第2リニアソレノイドバルブ103bを駆動し、比較的開口面積が小さな第2空気吸入開口102bを開状態とし、第2空気吸入開口102b側からのみ空気が吸入されるようにしている。したがって、この動作領域A3においては、動作領域A1あるいは動作領域A2と比較して、実効的なオイル供給量が増加してエンジンを最適な状態で駆動することが可能となる。
【0046】
動作領域A4は、オイル温度が中−高中温領域でエンジン回転数が低−低中領域と、を含んでおり、オイルの粘性はそれなりに下がっているはずであるので、マイクロバブルを発生させなくても、十分に潤滑がなされるので、マイクロバブルをほとんど発生させないように制御を行っている。すなわち、この動作領域A4においては、コントローラ203、第1バルブコントローラ204を介して第1リニアソレノイドバルブ103aを駆動し、第1空気吸入開口102aを閉状態として遮断し、第2バルブコントローラ205を介して第2リニアソレノイドバルブ103bを駆動し、第2空気吸入開口102bも閉状態として遮断し、第1空気吸入開口102aおよび第2空気吸入開口102bのいずれからも空気が吸入されないようにしている。したがって、この動作領域A4においては、従来のエンジンと同様にそれ自身が適度な粘性を持ったオイルが適量供給されることとなる。
【0047】
以上の説明のように、本実施形態によれば、エンジンの状態に応じてマイクロバブル発生量を制御するための空気の吸入量を簡易な構成で可変させることができ、オイルの粘性(状態)に応じたマイクロバブルを発生させて、摩擦を低減することができる。
【0048】
本発明に係るマイクロバブル発生装置は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
例えば、以上の説明においては、空気吸入開口の開閉動作を行うためにソレノイド弁(電磁弁)を用いていたが、弁体をニードル形状とし、電動弁を用いて空気吸入量をリニアに変更する構成を採ることも可能である。この場合には、追従速度が許すのであれば、一つの開口で空気吸入量を調整するように構成することも可能である。
【0049】
また、空気管路102は、導入管路100側に接続していたが、出力側管路104に接続し、バブル生成オリフィス106を出力側管路における空気管路102との接続部より、下流側に設ける構成としてもよい。
また、空気管路102自体が適度に細ければ、空気量調整オリフィス108は省路してもよい。
【0050】
図11は、第1の変形例の説明図である。
図11に示すように,第1の変形例に係るマイクロバブル発生装置16aは、前述のバブル生成オリフィス106に相当するバブル生成オリフィス106aが、出力側管路104におけるオイルポンプ80の内部の部分に設けられているものである。
【0051】
図12は、第2の変形例の説明図である。
図12に示すように、第2の変形例に係るマイクロバブル発生装置16bは、前記のバブル生成オリフィス106に相当するバブル生成オリフィス106、導入管路100におけるオイルポンプ80の内部に設けられているものである。
【0052】
つまり、マイクロバブル発生装置16a及び10bによれば、実施形態と同様の効果に加えて、バブル生成オリフィス106aまたはバブル生成オリフィス106bとオイルポンプ80が一体構成となっており、マイクロバブル発生装置を別体に設ける必要がなく、部品点数が増えることを防止できるとともに、他の機種との互換性を保っことができる。
また、オイルポンプ80の入力側及び出力側のバブル生成オリフィス106a及び106bは、併存させることも可能である。
【0053】
図13は、第3の変形例の説明図である。
図13に示すように、第3の変形例に係るマイクロバブル発生装置16cは、バブル生成オリフィス106、空気量調整オリフィス108および空気管路102が一体となったユニットとして構成されている。
ここで、空気管路102は、主管路160の側面に接続されており、この主管路160における空気管路102との接続部より下流側にバブル生成オリフィスl06が設けられている。主管路160は、オイルポンプ80の導入管路100又は出力側管路104に対して直列に挿入される。
【0054】
このようなユニット形式のマイクロバブル発生装置16cは、バブル生成オリフィス106と空気量調整オリフィス108と空気管路102が、一体構造であることから、部品点数が増えることを防止できるとともに、既存のポンプシステムに対して簡便に取り付けが可能である。
【0055】
上述したマイクロバブル発生装置16、16a、16b及び16cは、小型、軽量、且つ、廉価であって、レイアウトスペースの限られている自動二輪車12に好適に適用可能である。また、マイクロバブル発生装置16は、自動二輪車又は他の車両において摩擦低減の目的以外の用途に用いてもよい。さらにマイクロバブル発生装置16、10a、10b及び10c、は、車両以外の用途に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態に係るマイクロバブル発生装置が搭載される自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施の形態に係るマイクロバブル発生装置が設けられたエンジンの断面側面図である。
【図3】エンジンの潤滑系統図である。
【図4】空気管路の要部斜視図である。
【図5】空気管路の要部一部断面拡大図である。
【図6】接続側空気管路における導入管路との接続部の断面側面図である。
【図7】バブル生成オリフィスの断面図である。
【図8】マイクロバブルの発生量の制御系の概要構成ブロック図である。
【図9】マイクロバブル発生量の制御状態の説明図である。
【図10】オイル圧力に対するオイル流量および摩擦力のマイクロバブル混入前後の状態を説明する図である。
【図11】第1の変形例の説明図である。
【図12】第2の変形例の説明図である。
【図13】第3の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
16、16a、16b、16c マイクロバブル発生装置
30 エンジン
50d オイルパン
80 オイルポンプ
100 導入管路
102 空気管路(空気通路)
102d 第1遮断弁本体
102e 第2遮断弁本体
103 吸入口開閉部
103a 第1リニアソレノイドバルブ
103b 第2リニアソレノイドバルブ
104 出力側管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯溜するオイル貯溜部と、
オイルを潤滑対象に供給する潤滑路と、
前記オイル貯溜部からオイルを吸い出して前記潤滑路に供給するポンプと、
前記ポンプの流入口にオイルを導く導入管路と、
一端が前記導入管路内又は前記ポンプの出力側管路内に接続されて、他端が空気吸入口として開放された空気管路と、
前記導入管路又は前記出力側管路で、前記空気通路との接続部より下流側に設けられたマイクロバブル発生器と、を備え、
前記空気吸入口には、エンジンの状態に応じて吸入流量を可変させる流量可変手段が設けられていることを特徴とするエンジンにおけるマイクロバブル発生装置。
【請求項2】
前記流量可変手段は、前記空気吸入口を開閉する開閉手段と、
前記開閉手段をエンジンの状態に応じて開閉制御する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のエンジンにおけるマイクロバブル発生装置。
【請求項3】
前記開閉手段は、開口面積が異なる複数のもので構成されたことを特徴とする請求項2記載のエンジンにおけるマイクロバブル発生装置。
【請求項4】
前記エンジンの状態は、エンジンの油温であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエンジンにおけるマイクロバブル発生装置。
【請求項5】
前記エンジンの油温が低いほど前記空気吸入口からの空気の吸入量を多くすることを特徴とする請求項4記載のエンジンにおけるマイクロバブル発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate