説明

エンジンのリコイルスタータ

【課題】 ロック解除従動具がロック機構を急に開放することにより、駆動停止操作手段を駆動停止部に正確に係入させて、エンジンの始動ミスを無くす。エンジンの始動時に、出力側一方向回転伝動手段が変形・破損するのを解消する。
【解決手段】 始動ロープの引き操作に連動して、弾性体巻き取り回数計測手段が初期位置から所定位置にまで進行したときには、ロック解除主動具12Aが所定の遅延用距離L1を空走した後にロック解除従動具12Bに達して、このロック解除従動具12Bをロック解除保持位置12Baからロック投入許容位置12Bbへ切換え移動させることに基づき、ロック機構10の駆動停止操作手段21の第2の受動部23がロック解除従動具12Bから開放されて、駆動停止操作手段21がロック解除位置21aからロック位置21bに切換え移動して、出力輪5の回転を阻止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのリコイルスタータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのリコイルスタータとして、特許文献1(特開2004−116388号公報)に記載されたものがある。これは図17−図22に示すように、つぎのように構成されている。
【0003】
図17−図22は従来技術である特許文献1のリコイルスタータの構成を示す。
図17はリコイルスタータの縦断正面図である。図18(A)は図17のXVIII−XVIII線矢視断面図、図18(B)は図18(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【0004】
図19は図17のXIX−XIX線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段11が初期位置にある状態を示す。図20は図19から駆動停止操作手段21を取り除いた図である。図21は図20から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。図22は図19の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【0005】
なお、この特許文献1に記載された構成・構成要素・図面・および各構成要素の符号は、本件特許の構成・構成要素・図面・および各構成要素の符号と共通する部分が多い。この特許文献1の以下に説明する構成要素については、本件発明の構成要素との関係理解しやすくするために、本件発明の構成要素と同じ符号を記載しておく。
【0006】
[ 特許文献1のリコイルスタータの基本的構成 ]
リコイルリール(1)に始動ロープ(34)を巻回する。
このリコイルリール(1)に、入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)・出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を連動連結する。
【0007】
上記出力側一方向回転伝動手段(6)は、上記始動軸(7)側に設けられた係合部(16)と、上記出力輪(5)側に設けられた被係合部(17)とを備える。
【0008】
上記入力輪(3)の逆転を防止する逆回転防止手段(8)と、
上記出力輪(5)の回転を阻止するロック機構(10)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数を計測する弾性体巻き取り回数計測手段(11)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに上記ロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)と を設ける。
【0009】
上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻す計測リセット手段(70)を設ける。この計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻された状態では、上記ロック解除手段(12)でロック機構(10)が解除されるように構成する。
【0010】
前記始動ロープ(34)の引き操作に連動して上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が所定位置に達したときに、上記ロック機構(10)が作動して出力輪(5)がロックされるように構成したものである。
【0011】
[ 基本的構成の作用・効果 ]
弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻す計測リセット手段(70)が設けられている。この計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻されたときには、上記ロック機構(10)が解除されるように構成されているため、弾性体巻き取り回数計測手段(11)がこの初期位置にある状態では、出力輪(5)の回転が許容された状態にある。
【0012】
この状態から、エンジンを始動させるべく始動ロープ(34)を引くと、この引き力は、リコイルリール(1)・入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)を介して出力輪(5)に伝達され、出力輪(5)を回転させるとともに、出力輪(5)側に設けられた被係合部(17)を回転させる。この結果、当初は係合部(16)と被係合部(17)とが係合していなかった場合でも、始動ロープ(34)を引くことで被係合部(17)を回転させて係合部(16)と係合させることが可能となる。
【0013】
そして、かかる始動ロープ(34)の引き操作に連動して弾性体巻き取り回数計測手段(11)が所定位置に達すると、ロック機構(10)が作動して出力輪(5)がロックされるため、その後は入力輪(3)が回転した分だけ上記動力蓄積用弾性体(4)が巻き取られることになる。
【0014】
このように、この特許文献1の発明では、出力輪(5)のロック解除以前に、始動ロープ(34)の引き操作により出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)と被係合部(17)とを係合させておけるので、動力蓄積用弾性体(4)の蓄力解放時の両者の衝突を避けることができ、破損等の事故や不快な騒音をなくすことができる。
【0015】
また、上記計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻されるため、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数のカウントをゼロから始めることができる。このため、目標巻き取り回数に相当する蓄力が動力蓄積用弾性体(4)に蓄えられることが保証される。
【0016】
すなわち、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数は目標巻き取り回数に達しているにもかかわらず現実にはそれに相当する蓄力がなされていないといった事態を防止することができる。この結果、蓄力不足に起因するエンジンの始動の失敗を防止することができるのである。
【0017】
[ ロック解除手段(12)の具体的構成 ]
前記ロック解除手段(12)は、具体的には単一の部品から成り、前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)の計測用爪車(15)と一体回転するように構成する。
【0018】
上記計測用爪車(15)が目標巻き取り回数相当位置に達したときには、上記ロック解除手段(12)が上記ロック機構(10)の駆動停止操作手段(21)の第1の受動部(22)を駆動して、駆動停止操作手段(21)をロック位置からロック解除位置に切り換えるように構成する。
【0019】
上記計測用爪車(15)が初期位置に復帰したときには、上記ロック解除手段(12)が上記ロック機構(10)の駆動停止操作手段(21)の第2の受動部(23)を駆動して、駆動停止操作手段(21)をロック位置からロック解除位置に切り換えるように構成したものである。
【0020】
[ ロック解除手段(12)の具体的構成の問題点 ]
[ 問題点イ. 駆動停止操作手段(21)の駆動停止部(20)への係入ミスにより、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力が不足して、エンジンの始動ミスを招き易くなる虞がある。 ]
【0021】
エンジンを始動させるために、始動ロープ(34)を引くと、これに連動して弾性体巻き取り回数計測手段(11)の計測用爪車(15)が間歇送りされる。このとき、この計測用爪車(15)と一緒になってロック解除手段(21)も間歇送りされ、これに伴い駆動停止操作手段(21)もロック解除位置からロック位置へ向かって追随移動する。
【0022】
このとき、駆動停止操作手段(21)は、ロック解除位置からロック位置への移動速度が比較的遅いので、駆動停止部(20)に係入するときに、角当りして跳ね返されて、係入ミスを起こす虞がある。
【0023】
この係入ミスを起こした場合、計測用爪車(15)の正規の計測開始時期に対して、駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(20)を受け止めて、出力輪(5)を回転阻止し始める時期が遅れる分だけ、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力が不足することとなり、エンジンの始動ミスを招き易くなる虞がある。
【0024】
[ 問題点ロ. 出力側一方向回転伝動手段(6)を構成するドッグ爪(82)の起立の開始から終了までに時間がかかる分だけ、ドッグ爪(82)が爪受部(84)からまだ離れたままの状態で、駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(22)を係止して、出力輪(5)の回転を阻止してしまった場合に、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力の出力時に、ドッグ爪(82)と爪受部(84)とが衝突して変形・破損する虞がある。 ]
【0025】
前記出力側一方向回転伝動手段(6)として、一般に図14−図16に示す構造のものを用いる場合がある。 この出力側一方向回転伝動手段(6)は、前記出力輪(5)の回転により、ドッグ爪(82)がドッグ爪起立具(83)で案内されて起立してから、爪受部(84)に接当して、始動軸(7)を回転駆動するように構成されている。
【0026】
この出力輪(5)の回転によるドッグ爪(82)の起立の開始から終了までに多少の時間がかかる分だけ、ドッグ爪(82)が爪受部(84)に接当する前に、駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(22)を係止して、出力輪(5)の回転を阻止してしまい、ドッグ爪(82)が爪受部(84)からまだ離れた状態のまま、動力蓄積用弾性体(4)を動力蓄積させていくことがある。
【0027】
この場合、動力蓄積用弾性体(4)が目標巻取り回数だけ動力蓄積した後に、ロック機構(10)のロック解除により、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力が出力されたときに、互いに離れていたドッグ爪(82)が爪受部(84)に衝突して、衝突音を発生させるうえ、ドッグ爪(82)と爪受部(84)とが衝撃力で変形・破損する虞がある。
【0028】
【特許文献1】特開2004−116388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の課題は、次のようにすることにある。
[イ]. ロック解除手段を構成するロック解除従動具がロック機構の駆動停止操作手段を急に開放することにより、駆動停止操作手段をロック位置に急速に移動させて駆動停止部に正確に係入させて、この係入のミスによる動力蓄積用弾性体の動力蓄積量の不足を無くして、エンジンの始動ミスを無くす。
【0030】
[ロ]. ロック解除手段を構成するロック解除主動具が遅延用距離を空走する間に、出力側一方向回転伝動手段の係合部 (ドッグ爪)と被係合部 (爪受部)とを十分に接当させることにより、この係合部と被係合部とは、動力蓄積用弾性体の蓄積動力の出力時に衝突することを無くして、衝突音・変形・破損が発生することを解消する。
【0031】
[ハ]. 弾性体巻き取り回数計測手段が初期位置に復帰移動する途中で、レバー退避操作用傾斜カム部がロック解除レバーを係合解除退避位置に自動的に退避させることにより、この退避のための構造および作動が簡単で正確に行える。
【0032】
[ニ]. ロック解除手段を構成するロック解除レバーをロック解除保持位置に弾圧する働きと、係合作用位置に弾圧する働きとの二つの働きを、一つのロック解除保持バネで兼ね行なわせることにより、そのための構造を簡素化する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明のエンジンのリコイルスタータは、上記課題を解決するために、例えば図1−図13に示すように、次のように構成したことを特徴とする。
【0034】
図1−図13は本発明のリコイルスタータの第1実施形態を示す。
図1はリコイルスタータの縦断正面図である。 図2(A)は図1のII−II線矢視断面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B線矢視断面図である。 図3は図1のIII−III線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段11が初期位置にある状態を示す。
【0035】
図4は図3から駆動停止操作手段21を取り除いた図である。 図5は図4から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。 図6は図3の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【0036】
図7は図3または図14におけるVII−VII線矢視断面図である。 図8(A)は入力輪3の正面図、図8(B)は図8(A)におけるB−B線矢視断面図である。 図9(A)は、ばね巻き取り回数計測手段11をエンジン側から見た図である(但し、駆動停止操作手段21と第1のラチェット爪51は省略してある)。図9(B)は図9(A)の要部を示し、送り爪14の動きを示す図である。
【0037】
図10はロック開放手段12を示す。図10(A)は図3のX部の拡大図。図10(B)は図10(A)のB−B線矢視断面図。図10(C)は図10(A)のC−C線矢視断面図である。 図11は図3のX部の取出し図であり、ロック開放手段12の作用を示す。図11(A)はロック解除従動具12Bがロック解除保持位置12Baにある状態を示す。図11(B)はロック解除従動具12Bがロック投入許容位置12Bbに切換わった状態を示す。
【0038】
図12は図10(C)に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー駆動部12Aaの機能を示す。 図13は図12に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー退避操作用傾斜カム部12Abの機能を示す。
【0039】
○ 請求項1の発明. 図1−図13参照.
請求項1の発明は、次のように構成したことを特徴とする。
[ リコイルスタータの基本的構成 ]
【0040】
リコイルリール(1)に始動ロープ(34)を巻回する。
このリコイルリール(1)に、入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)・出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を連動連結する。
【0041】
上記出力側一方向回転伝動手段(6)は、上記始動軸(7)側に設けられた係合部(16)と、上記出力輪(5)側に設けられた被係合部(17)とを備える。
【0042】
上記入力輪(3)の逆転を防止する逆回転防止手段(8)と、
上記出力輪(5)の回転を阻止するロック機構(10)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数を計測する弾性体巻き取り回数計測手段(11)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに上記ロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)と を設ける。
【0043】
上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻す計測リセット手段(70)を設ける。この計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻された状態では、上記ロック解除手段(12)でロック機構(10)が解除されるように構成する。
【0044】
前記始動ロープ(34)の引き操作に連動して上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が所定位置に達したときに、上記ロック機構(10)が作動して出力輪(5)がロックされるように構成したものである。
【0045】
[ ロック解除手段(12)の特徴的構成 ]
前記ロック解除手段(12)はロック解除主動具(12A)とロック解除従動具(12B)と計測終了時ロック解除具(12C)とを備える。
【0046】
ロック解除主動具(12A)と計測終了時ロック解除具(12C)とは前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)に連動するように構成する。 ロック解除従動具(12B)は、前記ロック機構(10)をロック解除位置(21a)に保持するロック解除保持位置(12Ba)と、ロック機構(10)をロック解除位置(21a)からロック位置(21b)へ投入移動することを許容するロック投入許容位置(12Bb)とに切換え移動可能に構成する。
【0047】
前記始動ロープ(34)の引き操作に連動して、上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から所定位置にまで進行したときには、ロック解除主動具(12A)が所定の遅延用距離(L1)を空走した後にロック解除従動具(12B)に達して、このロック解除従動具(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)へ切換え移動させることに基づき、ロック機構(10)がロック解除従動具(12B)から開放されて、ロック解除位置(21a)からロック位置(21b)に切換え移動して、前記出力輪(5)の回転を阻止するように構成する。
【0048】
前記計測終了時ロック解除具(12C)は、弾性体巻き取り回数計測手段(11)が目標巻取り回数を計測し終えたことに連動して、上記ロック機構(10)を上記ロック位置(21b)から上記ロック解除位置(21a)に切換え作動させることにより、ロック機構(10)をロック解除作動させて、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力を出力させて、出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を始動回転させるように構成したものである。
【0049】
なお、前記ロック解除手段(12)のロック解除主動具(12A)と計測終了時ロック解除具(12C)とは、互いに別体に形成する場合と、一体に形成する場合とが考えられる。
【0050】
[ ロック解除手段(12)の特徴的構成による効果 ]
[ イ. ロック解除従動具(12B)がロック機構(10)を急に開放することにより、ロック機構(10)がロック位置(21b)に急速に移動して(例えば図3・図6に示す駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(20)に)正確に係入するため、この係入のミスによる動力蓄積用弾性体(4)の動力蓄積量の不足を無くして、エンジンの始動ミスを無くす。 ]
【0051】
この請求項1の発明においては、エンジンを始動させるために、始動ロープ(34)を引くと、この始動ロープ(34)の引き操作に連動して、上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から所定位置にまで進行したときには、図11に示すように、ロック解除主動具(12A)が所定の遅延用距離(L1)を空走した後にロック解除従動具(12B)に達して、このロック解除従動具(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)へ切換え移動させることに基づき、ロック機構(10)がロック解除従動具(12B)から開放されて、ロック解除位置(21a)からロック位置(21b)に切換え移動して、前記出力輪(5)の回転を阻止するように構成した。
【0052】
このように、ロック解除主動具(12A)がロック解除従動具(12B)をロック投入許容位置(12Bb)へ切換え移動させたときに、ロック解除従動具(12)はロック機構(10)を急に開放する。これにより、ロック機構(10)はロック解除位置(21a)からロック位置(21b)へと急速に切換え移動するので、このロック機構(10)のロック位置(21b)への切換え移動が、切換えミスを起こすこと無く正確に行われる。
【0053】
すなわち、具体例として図3・図6・図11に示すように、上記のようにロック解除従動具(12B)がロック機構(10)の駆動停止操作手段(21)を急に開放すると、この駆動停止操作手段(21)はロック解除位置(21a)からロック位置(21b)へ急速に切り換わる。
【0054】
この急速な切り換わりのため、この駆動停止操作手段(21)は回転中の駆動停止部(20)に対して、急速に係入していくため、角当りして跳ね返されて係入ミスを起こす虞が無くなる。
【0055】
これにより、弾性体巻き取り回数計測手段(11)の計測用爪車(15)の正規の計測開始時期に対して、駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(20)を受け止めて出力輪(5)を回転阻止し始める時期が、遅れること無く正確に一致する。
【0056】
このため、計測用爪車(15)が目標巻取り回数を計測する時期には、動力蓄積用弾性体(4)は目標巻き取り回数に正確に到達して動力蓄積量が不足することが無くなり、この動力蓄積量の不足によるエンジンの始動ミスを無くすことができる。
【0057】
[ ロ. ロック解除主動具(12A)が遅延用距離(L1)を空走する間に、出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)(ドッグ爪(84))と被係合部(17)(爪受部(84))とが十分に接当するに至るため、この係合部(16)と被係合部(17)とは、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力の出力時に衝突することが無くなって、衝突音・変形・破損の発生を解消する。 ]
【0058】
一般に、出力側一方向回転伝動手段(6)の具体的構成しとては、機械運動機構学の書籍や特許文献などにより、多種多様のものが公知にされており、その種類によっては、回転遮断状態から回転接続状態に切り換わるまでの接続作動に、時間が少し長めにかかる種類のものがある。
【0059】
この場合、この出力側一方向回転伝動手段(6)の時間の長めにかかる接続作動の途中であるにも拘わらず、前記巻き取り回数計測手段(11)がロック機構(10)をロック作動させて、出力輪(5)を回転阻止させてしまうことが起こる。
【0060】
すると、出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)と被係合部(17)とは、まだ離れた状態のままで置き残されるため、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力の出力時に衝突して、衝突音を発したり衝撃力で変形・破損を生じたりするという問題点が残る。
【0061】
この問題点の具体例としては、前記段落番号[0024]−[0027]で詳述したように、従来技術である前記特許文献1の[問題点ロ.動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力の出力時に、ドッグ爪(82)と爪受部(84)とが衝突して変形・破損する虞がある。]がある。
【0062】
この請求項1の発明は、この[問題点ロ]を解消することができる。その理由をつぎに述べる。
接続作動に時間が少し長めにかかる種類の出力側一方向回転伝動手段(6)の具体例として、図14−図16に示す構造のものを採用した場合について、つぎに説明する。
【0063】
この請求項1の発明はつぎの構成を有する。
エンジンを始動させるために、始動ロープ(34)を引くと、この始動ロープ(34)の引き操作に連動して、上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から所定位置にまで進行したときには、ロック解除主動具(12A)が所定の遅延用距離(L1)を空走した後にロック解除従動具(12B)に達して、このロック解除従動具(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)へ切換え移動させることに基づき、ロック機構(10)がロック解除従動具(12B)から開放されて、ロック解除位置(21a)からロック位置(21b)に切換え移動して、前記出力輪(5)の回転を阻止するように構成した。
【0064】
この構成から、前記出力側一方向回転伝動手段(6)のドッグ爪(82)の起立開始から起立終了までにかかる時間遅れは、前記ロック解除主動具(12A)の遅延用距離(L1)の空走期間中に充分に吸収される。 このため、ドッグ爪(82)が爪受部(84)に充分に接当した状態になってから、ロック機構(10)がロック作動し始めて、出力輪(5)が回転阻止され、動力蓄積用弾性体(4)の動力蓄積が始まる。
【0065】
これにより、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力の出力時には、ドッグ爪(82)が爪受部(84)に接当した状態になっているので衝突することが無くなり、衝突音の発生が無くなるうえ、ドッグ爪(82)(係合部(16))と爪受部(84)(被係合部(17))とが衝突による衝撃力で変形・破損するのを解消することができるのである。
【0066】
○ 請求項2の発明. 図1−図6参照.
この請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0067】
前記計測リセット手段(70)は、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転に基づいて、前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻すように構成した、 ことを特徴とする。
【0068】
この請求項2の発明は、この特徴構成から、つぎの作用・効果を奏する。
この請求項2の発明では、前回の始動操作後に始動ロープ(34)を巻き戻したときに、弾性体巻き取り回数計測手段(11)は初期位置に戻されている。しかも、弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置にあるときには、ロック機構(10)が解除され、出力輪(5)の回転が許容された状態にある。
【0069】
このため、エンジンを始動させるべく始動ロープ(34)を引くと、この引き力は、リコイルリール(1)・入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)を介して出力輪(5)に伝達され、出力輪(5)を回転させるとともに、出力輪(5)側に設けられた被係合部(17)を回転させる。
【0070】
この結果、当初は係合部(16)と被係合部(17)とが係合していなかった場合でも、始動ロープ(34)を引くことで被係合部(17)を回転させて係合部(16)と係合させることが可能となる。かかる始動ロープ(34)の引き操作に連動して弾性体巻き取り回数計測手段(11)が所定位置に達すると、ロック機構(10)が作動して出力輪(5)がロックされるため、その後は入力輪(3)が回転した分だけ上記動力蓄積用弾性体(4)が巻き取られることになる。
【0071】
また、請求項2の発明では、上記計測リセット手段(70)により、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転に基づいて上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻されるため、前回の始動操作後に始動ロープ(34)を巻き戻したときに、弾性体巻き取り回数計測手段(11)は初期位置に戻されている。
【0072】
このため、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数のカウントをゼロから始めることができ、目標巻き取り回数に相当する蓄力が動力蓄積用弾性体(4)に蓄えられることが保証される。言い換えれば、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数は目標巻き取り回数に達しているにもかかわらず現実にはそれに相当する蓄力がなされていないといった事態を防止することができる。この結果、蓄力不足によるエンジンの始動の失敗を防止することができる。
【0073】
○ 請求項3の発明. 図1−図6参照.
この請求項3の発明は、上記請求項2の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0074】
上記請求項2の発明は、次に述べる請求項3の発明のように構成することが好ましい。
すなわち、請求項3に記載するように、前記ロック機構(10)は、出力輪(5)に設けられた駆動停止部(20)と、この駆動停止部(20)に係脱自在な駆動停止操作手段(21)とを備える。
【0075】
この駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)とロック解除位置(21a)とに切換可能に構成して、上記駆動停止操作手段(21)がロック位置(21b)にあるときには、駆動停止部(20)と係合して、出力輪(5)の回転を阻止するのに対し、
上記駆動停止操作手段(21)がロック解除位置(21a)にあるときには、駆動停止部(20)を解放して、出力輪(5)の回転を許容するように構成する。
【0076】
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)は、入力輪(3)に設けた送り爪(14)と、この送り爪(14)によって刻み送りされる計測用爪車(15)と、この計測用爪車(15)を各計数位置に置き残すラチェット機構(49)とを備える。
【0077】
前記計測リセット手段(70)は、リコイルリール(1)に設けられたリセット用主動部(72)と、上記ラチェット機構(49)に設けられたリセット用従動部(73)と、上記計測用爪車(15)を初期位置に付勢する初期位置付勢手段(71)と を備える。
【0078】
このリセット用主動部(72)は、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転時に、上記リセット用従動部(73)を駆動することにより、前記ラチェット機構(49)を解除するように構成する。
【0079】
上記初期位置付勢手段(71)は、上記ラチェット機構(49)が解除されたときに、計測用爪車(15)を初期位置に復帰させるように構成する。
【0080】
前記駆動停止操作手段(21)にロック位置付勢手段(48)を設けて、このロック位置付勢手段(48)により上記駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)に付勢するとともに、上記駆動停止操作手段(21)に第1の受動部(22)と第2の受動部(23)とを設ける。
【0081】
前記ロック解除手段(12)のロック解除主動具(12A)を上記計測用爪車(15)と一体回転するように構成して、上記計測用爪車(15)が目標巻き取り回数相当位置に達したときには、上記ロック解除手段(12) のロック解除主動具(12A)が上記第1の受動部(22)を駆動して、駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)からロック解除位置(21a)に切り換えるように構成する。
【0082】
上記計測用爪車(15)が目標回数計測終了位置から初期位置に復帰した状態では、上記ロック解除手段(12) のロック解除従動具(12B)が上記第2の受動部(23)を受け止めて、駆動停止操作手段(21)をロック解除位置(21a)に保持するように構成した、 ことを特徴とする。
【0083】
○ 請求項4の発明. 図1−図5参照.
この請求項4の発明は、上記請求項3の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0084】
すなわち、 前記ラチェット機構(49)は、第1のラチェット爪(51)と第2のラチェット爪(52)とを備える。
前記リセット用従動部(73)をこの第1のラチェット爪(51)に設けて、リコイルリール(1)の巻き戻し回転に基づいて上記第1のラチェット爪(51)の係止が解除されるように構成する。
【0085】
上記第2のラチェット爪(52)は、前記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに、前記駆動停止操作手段(21)がロック位置(21b)からロック解除位置(21a)に切り換えられることに連動して、その第2のラチェット爪(52)の係止が解除されるように構成した、 ことを特徴とする。
【0086】
この請求項4の発明は、この特徴構成から、つぎの作用・効果を奏する。
前記請求項3の発明では、始動ロープ(34)を短く引いては戻す操作を繰り返す場合には、始動ロープ(34)が巻き戻されるたびに弾性体巻き取り回数計測手段(11)の計数値がリセットされることになる。このため、始動ロープ(34)を一度に引き切ることで動力蓄積用弾性体(4)が目標巻き取り回数に達するように構成しておく等の必要がある。
【0087】
かかる問題を上記請求項4の発明で解決した。すなわち、請求項4の発明では、計測用爪車(15)を各計数位置に置き残す第2のラチェット爪(52)が設けられているため、始動ロープ(34)の巻き戻しの際に第1のラチェット爪(51)の係止が解除されても、第2のラチェット爪(52)によって計測用爪車(15)は計数位置に置き残されるので、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数の計数値は加算されていくことになる。
【0088】
したがって、エンジンの始動操作を複数回に分けて行えるので、多様な使用形態に対応できユーザーの利便性が向上する。
【0089】
○ 請求項5の発明. 図3・図6・図10−図12参照.
この請求項5の発明は、上記請求項1・2・3または4の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0090】
前記ロック解除従動具(12B)はロック解除従動レバー(12B)から成る。 このロック解除従動レバー(12B)は、支点軸心(12D)を支点として前記ロック解除保持位置(12Ba)と前記ロック投入許容位置(12Bb)とに切換え揺動可能に構成する。
【0091】
このロック解除従動レバー(12B)は、ロック解除保持用ばね(12E)でロック解除保持位置(12Ba)に弾圧されるのに対して、前記ロック解除主動具(12A)でロック解除保持用ばね(12E)に抗してロック投入許容位置(12Bb)に切換え移動させられるように構成した、 ことを特徴とする。
【0092】
○ 請求項6の発明. 図10−図13参照.
この請求項6の発明は、上記請求項5の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0093】
前記ロック解除主動具(12A)にはレバー駆動部(12Aa)とレバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)とを設ける。
【0094】
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から目標巻き取り回数到達位置に向かって往行移動する計測移動途中で、前記ロック解除主動具(12A)のレバー駆動部(12Aa)が前記ロック解除従動レバー(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)に切換え移動させるように構成する。
【0095】
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が前記計測リセット手段(70)により目標巻き取り回数到達位置から初期位置に向かって復帰移動する途中で、前記ロック解除主動具(12A)のレバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)がロック解除従動レバー(12B)をロック解除主動具(12A)に対する係合作用位置(12Bc)から係合解除退避位置(12Bd)に退避させて、ロック解除主動具(12A)がロック解除従動レバー(12B)を回避して通過するように構成した、 ことを特徴とする。
【0096】
[ 請求項6の発明の効果 ]
この請求項6の発明は、つぎの効果を奏する。
[ ハ. 弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に復帰移動する途中で、レバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)がロック解除レバー(12B)を係合解除退避位置(12Bd)に自動的に退避させるので、この退避のための構造および作動が簡単で正確に行える。 ]
【0097】
○ 請求項7の発明. 図10−図13参照.
この請求項7の発明は、上記請求項6の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0098】
前記ロック解除従動レバー(12B)は、前記支点軸心(12D)の部分を支点として前記ロック解除保持位置(12Ba)と前記ロック投入許容位置(12Bb)とに亘って切換え揺動する方向に対して、この揺動方向と交差する方向に沿って、係合作用位置(12Bc)と係合解除退避位置(12Bd)とに切換え揺動可能に構成する。
【0099】
このロック解除従動レバー(12B)は前記ロック解除保持用ばね(12E)で、前記ロック解除保持位置(12Ba)に弾圧するとともに、前記ロック解除主動具(12A)に対する係合作用位置(12Bc)にも弾圧するように構成する。
【0100】
このロック解除従動レバー(12B)は、前記レバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)によりロック解除保持用ばね(12E)に抗して、前記係合作用位置(12Bc)から前記係合解除退避位置(12Bd)に退避移動させられるように構成した、 ことを特徴とする。
【0101】
[ 請求項7の発明の効果 ]
この請求項7の発明は、つぎの効果を奏する。
[ ニ. ロック解除レバー(12B)をロック解除保持位置(12Ba)に弾圧する働きと、係合作用位置(12Bc)に弾圧する働きとの二つの働きは、一つのロック解除保持バネ(12D)が兼ね行う分だけ、そのための構造を簡素化することができる。 ]
【0102】
○ 請求項8の発明. 図3参照.
この請求項8の発明は、上記請求項3−7のうちのいずれか1項の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0103】
前記駆動停止部(20)を出力輪(5)の周方向に所定間隔をあけて複数個設けるとともに、各駆動停止部(20)を凹部として構成し、この凹部に取り付けおよび取り外し自在な閉塞部材(26)を設ける。
【0104】
この請求項8の発明は、この特徴構成から、つぎの作用・効果を奏する。
前記請求項3−7のうちのいずれか1項の発明では、出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)と被係合部(17)とを係合させるべく始動ロープ(34)を引いたとしても、十分に出力輪(5)が回転しないうちに駆動停止操作手段(21)と駆動停止部(20)とが係合して(すなわち、係合部(16)と被係合部(17)が係合する前に駆動停止操作手段(21)と駆動停止部(20)とが係合して、)出力輪(5)がロックされてしまう事態が起こり得る。
【0105】
しかし、請求項8の発明のように構成すれば、複数個ある上記凹部のうちのいくつかを適宜閉塞部材(26)で塞ぐことにより、出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)と被係合部(17)とが係合する前に駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(20)に係合しないようにしておくことができ、駆動停止操作手段(21)が駆動停止部(20)に係合するまでに十分な出力輪(5)の回転を確保することができる。
【0106】
このため、出力側一方向回転伝動手段(6)の係合部(16)と被係合部(17)とを確実に係合させることができる。また、閉塞部材(26)の取り付けまたは取り外しという簡単な作業で上記目的を達成できるので、かかる調整をリコイルスタータの組立後に行うことができ、生産効率の向上に寄与する。
【0107】
○ 請求項9の発明. 図1・図3参照.
この請求項9の発明は、上記請求項3−8のうちのいずれか1項の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0108】
前記出力側一方向回転伝動手段(6)を遠心式クラッチ機構として構成する。この遠心式クラッチ機構は、前記始動軸(7)側に設けられた遠心爪(44)と、前記出力輪(5)側に設けられた爪受部(45)とを備え、上記遠心爪(44)は、始動軸(7)の回転が所定回転速度以上になったときに遠心力により揺動して上記爪受部(45)との係合を解除するように構成した、 ことを特徴とする。
【0109】
○ 請求項10の発明. 図14−図16参照.
図14−図16は本発明のリコイルスタータの第2実施形態を示す。 図14は図3に相当する図である。 図15は出力側一方向回転伝動手段をエンジン側から見た図である。 図16は出力側一方向回転伝動手段の正面視断面図である。
【0110】
この請求項10の発明は、上記請求項1−8のうちのいずれか1項の発明において、次の特徴構成を追加したことを特徴とする。
【0111】
出力側一方向回転伝動手段(6)は、前記出力輪(5)側に設けられたドッグ爪(82)と、このドッグ爪(82)を出力輪(5)の回転時に起立させるドッグ爪起立具(83)と、前記始動軸(7)側に設けられかつ上記ドッグ爪(82)が起立したときにドッグ爪(82)と係合する爪受部(84)とを備えたものとして構成した、 ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0112】
以下、本発明のエンジンのリコイルスタータの実施の形態を、図面に基づき説明する。
○ 実施形態1. 請求項1−9の発明. 図1−図13参照.
【0113】
図1−図13は本発明のリコイルスタータの第1実施形態を示す。
図1はリコイルスタータの縦断正面図である。 図2(A)は図1のII−II線矢視断面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B線矢視断面図である。 図3は図1のIII−III線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段11が初期位置にある状態を示す。
【0114】
図4は図3から駆動停止操作手段21を取り除いた図である。 図5は図4から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。 図6は図3の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【0115】
図7は図3または図14におけるVII−VII線矢視断面図である。 図8(A)は入力輪3の正面図、図8(B)は図8(A)におけるB−B線矢視断面図である。 図9(A)は、ばね巻き取り回数計測手段11をエンジン側から見た図である(但し、駆動停止操作手段21と第1のラチェット爪51は省略してある)。図9(B)は図9(A)の要部を示し、送り爪14の動きを示す図である。
【0116】
図10はロック開放手段12を示す。図10(A)は図3のX部の拡大図。図10(B)は図10(A)のB−B線矢視断面図。図10(C)は図10(A)のC−C線矢視断面図である。 図11は図3のX部の取出し図であり、ロック開放手段12の作用を示す。図11(A)はロック解除従動具12Bがロック解除保持位置12Baにある状態を示す。図11(B)はロック解除従動具12Bがロック投入許容位置12Bbに切換わった状態を示す。
【0117】
図12は図10(C)に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー駆動部12Aaの機能を示す。 図13は図12に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー退避操作用傾斜カム部12Abの機能を示す。
なお、本明細書では、図1の紙面に向かって右方を前方、左方を後方と定める。
【0118】
図1において、符号7は強制空冷式4サイクルガソリンエンジンのクランク軸、符号31はフライホイルファンである。このクランク軸7の一端にスタータプーリ32が設けられる。このスタータプーリ32はクランク軸7に固定され、クランク軸7と一体に回転する。
【0119】
本発明の第1実施形態たるリコイルスタータは、上記クランク軸7の一端側に設けられるスタータケース33を有する。このスタータケース33は、その内部に、上記クランク軸7と同軸上に配置される固定部9を有する。
【0120】
この固定部9に、前方から順に、リコイルリール1と入力輪3と出力輪5とがそれぞれ回転自在に外嵌される。このうち、リコイルリール1には始動ロープ34が巻回される。そして、リコイルリール1とスタータケース33との間にはリール巻き戻し用うず巻きばね35が設けられ、始動ロープ34を引っ張ったときに、このリール巻き戻し用うず巻きばね35の復元力により始動ロープ34がリコイルリール1に巻き戻されるように構成されている。
【0121】
なお、本明細書では、図2に示すように、始動ロープ34の引き操作によりリコイルリール1が回転する方向Xをリコイルリール1の正転方向とし、このリコイルリール1の正転が伝達されて入力輪3さらには出力輪5が回転する方向X(図3参照)をそれぞれ入力輪3または出力輪5の正転方向とする。
【0122】
リコイルリール1と入力輪3との間には、図2に示すように、入力側一方向回転伝動手段2が介装されている。この入力側一方向回転伝動手段2は、リコイルリール1の後端面(入力輪3側の端面)に揺動自在に設けられた爪38と、入力輪3の前端面(リコイルリール1側の端面)の周縁に設けられた突合縁39とを備える。
【0123】
この爪38は図示しないばねにより外方に向けて揺動付勢され、始動ロープ34の引き操作時には、この爪38と突合縁39とが突合してリコイルリール1の回転は入力輪3に伝達されるが、始動ロープ34の巻き戻し作動時には、上記の爪38と突合縁39との突合が解け、リコイルリール1の回転が入力輪3に伝達されないようになっている。
【0124】
上記入力輪3は、また、図2に示すように、間欠係合式の逆回転防止手段8により逆転が防止されるようになっている。この間欠係合式逆回転防止手段8は、固定部9側に設けられた逆止用爪車24と、入力輪3側に設けられた逆止用爪25とを備える。上記逆止用爪車24は、固定部9に回転不能に外嵌されるとともに、その中心部から外方に向けて4つの逆止用係合部41を延出している。各逆止用係合部41は略90度の間隔を置いて十字状に配設されている。
【0125】
各逆止用係合部41は、図2(B)に示すように、略三角形断面を有し、入力輪3が正転するときに(すなわちX方向回転時に)逆止用爪25を逃すための傾斜をつけた逃し面41aと、入力輪3が逆転するときに(すなわちY方向回転時に)逆止用爪25と係合する係合面41bとを備える。逆止用爪車24は、リコイルリール1の後端面と入力輪3の前端面との間の空間に収容される。
【0126】
一方、逆止用爪25は、図1・図2に示すように、入力輪3の前端面から出没自在に構成され、入力輪3とともに回転するようになっている。本実施形態では、逆止用爪25は2つ設けられている。各逆止用爪25は、入力輪3の回転中心を間に挟んで略点対称な位置に配置されている。
【0127】
このような構成の結果、逆止用爪25は、入力輪3がX方向へ正転しようとするときには、上記の逃し面41aによって入力輪3内に退入するため、入力輪3の正転を可能にするが、入力輪3がY方向へ逆転しようとするときには、突出状態を保ったまま逆止用係合部41の係合面41bと係合して入力輪3の逆転を阻止する。
【0128】
但し、各逆止用係合部41が90度の間隔を置いて配置されているためと、逆止用爪25が入力輪3の回転中心に対して略点対称な位置に配置されているために、逆止用爪25が係合面41bと係合するまでには、入力輪3は最大で約90度逆転し得る。
【0129】
この第1実施形態の動力蓄積用弾性体4は、図1に示すようにうず巻きばねとして構成される。この動力蓄積用うず巻きばね4は、入力輪3と出力輪5の間の空間に収容され、その外端部は入力輪3に固定され、その内端部は出力輪5に固定される。
【0130】
出力輪5とクランク軸7との間には、出力側一方向回転伝動手段6が介装されている。この出力側一方向回転伝動手段6は、出力輪5の回転をクランク軸7に伝達するもので、図1と図3とに示すように、遠心式クラッチ機構として構成されている。すなわち、前記クランク軸7と一体回転するスタータプーリ32に、ばね43で内方に付勢された遠心爪44が枢支され、一方、出力輪5の後端面に、この遠心爪44と係合可能な爪受部45が設けられる。
【0131】
そして、クランク軸7の回転速度が所定速度に達するまでは、遠心爪44と爪受部45とは係合状態にあるが、クランク軸7の回転が所定速度以上になったときには、遠心爪44はクランク軸7の回転による遠心力で外方に揺動し、遠心爪44と爪受部45との係合は解除されるようになっている。なお、この第1実施形態では、上記遠心爪44が係合部16として機能し、上記爪受部45が被係合部17として機能する。
【0132】
本実施形態に係るリコイルスタータには、図3に示すように、出力輪5の回転を阻止するロック機構10が設けられている。このロック機構10は、出力輪5に設けられた駆動停止部20と、この駆動停止部20に係脱自在な駆動停止操作手段21とを備える。上記駆動停止部20は、出力輪5の後端面に設けられた凹部として構成される。この凹部は、出力輪5の後端面の周縁に等間隔で設けられる。
【0133】
図3から図5に示すように、本実施形態では、かかる凹部が4つ設けられており、このうち、出力輪5の回転中心を挟んで点対称の位置にある2つの凹部には、取り付け/取り外し自在な閉塞部材26がネジ止めされて上記凹部を塞いでいる。このため、駆動停止部20として機能するのは、この閉塞部材26によって塞がれていない2箇所である。
【0134】
この駆動停止部20として機能する凹部も出力輪5の回転中心を挟んで点対称の位置にあり、したがって、駆動停止操作手段21が駆動停止部20に係合するためには、出力輪5が最大で約180度(約半回転)回転しなければならないようになっている。
【0135】
一方、駆動停止操作手段21は、スタータケース33に固定された第1の枢支軸47に揺動自在に枢支される。駆動停止操作手段21は、ロック位置21bとロック解除位置21aとに切換可能に構成される。上記駆動停止操作手段21がロック位置21bにあるときには、駆動停止部20と係合して出力輪5の回転を阻止する。これに対し、上記駆動停止操作手段21がロック解除位置21aにあるときには、駆動停止部20を解放して、出力輪5の回転を自由にするように構成される。第1の枢支軸47はスタータケース33内で、その前後方向に架設されている。
【0136】
上記駆動停止操作手段21は、ロック位置付勢手段48によってロック位置21b方向に付勢されている。本実施形態におけるロック位置付勢手段48は引っ張りばねによって構成され、この引っ張りばね48は、その一端がスタータケース33側に係止され、その他端が駆動停止操作手段21に係止される。
【0137】
図3に示すように、この駆動停止操作手段21は、腕部21eを備える。この腕部21eは、後述の第2の枢支軸57に向けて延出され、駆動停止操作手段21がロック位置21bに切り換えられたときに、第2の枢支軸57に懸架するようになっている。この腕部21eは、第2の枢支軸57に懸架することにより駆動停止操作手段21のロック位置21b方向への一定以上の揺動を規制する。
【0138】
この駆動停止操作手段21には第1の受動部22と第2の受動部23とが設けられている。このうち、第1の受動部22は駆動停止操作手段21の腕部21eの途中部から下方に向けて垂設されている。一方、第2の受動部23は、駆動停止操作手段21の先端部に設けられている。駆動停止操作手段21は、この第1の受動部22または第2の受動部23において後述のロック解除手段12の計測終了時ロック解除具12Cと当接して、その駆動を受けるようになっている。
【0139】
図1−図5に示すように、このリコイルスタータは、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数を計測するばね巻き取り回数計測手段11を備える。このばね巻き取り回数計測手段11は、入力輪3に設けた送り爪14と、この送り爪14によって刻み送りされる計測用爪車15と、この計測用爪車15を各計数位置に置き残すラチェット機構49とを備える。さらに、このラチェット機構49は、上記計測用爪車15と一体回転する残置用爪車50と、この残置用爪車50に係止する第1のラチェット爪51および第2のラチェット爪52を備える。
【0140】
このうち、入力輪3に設けられる送り爪14は次のように構成される。すなわち、図8と図9とに示すように、この送り爪14は、入力輪3の外周面に設けられた凹部に収容され、起伏自在に枢支されるとともに、ねじりばね55によって入力輪3の半径方向外方に向けて付勢される。そして、入力輪3が動力蓄積用うず巻きばね4を蓄力する方向Xに回転するとき(すなわち、入力輪3の正転時)には、この送り爪14は起立して後述の計測用爪車15を刻み送りするのに対し、入力輪3がその逆方向Yに回転するときには、この送り爪14は計測用爪車15との当接により倒伏するように構成される。
【0141】
上記計測用爪車15と残置用爪車50は、スタータケース33に固定された第2の枢支軸57に回転自在に枢支され、一体に回転するように構成される。この第2の枢支軸57は、スタータケース33内でその前後方向に架設され、前記第1の枢支軸47と略平行になるようにしてある。
【0142】
本実施形態では、図2に示すように、2つの送り爪14が入力輪3の外周面に設けられているため、入力輪3の1回転により計測用爪車15は爪2つ分刻み送りされる。
【0143】
前記ロック解除手段12は、図3−図7および図10−図13に示すように構成する。
すなわち、前記ロック解除手段12はロック解除主動具12Aとロック解除従動具12Bと計測終了時ロック解除具12Cとを備える。 ロック解除主動具12Aと計測終了時ロック解除具12Cとは、前記弾性体巻き取り回数計測手段11を構成する計測用爪車15に固定する。
【0144】
ロック解除従動具12Bは、前記ロック機構10をロック解除位置21aに保持するロック解除保持位置12Baと、ロック機構10をロック解除位置21aからロック位置21bへ投入移動することを許容するロック投入許容位置12Bbとに切換え移動可能に構成する。
【0145】
前記始動ロープ34の引き操作に連動して、上記弾性体巻き取り回数計測手段11が初期位置から所定位置にまで進行したときには、ロック解除主動具12Aが所定の遅延用距離L1を空走した後にロック解除従動具12Bに達して、このロック解除従動具12Bをロック解除保
持位置12Baからロック投入許容位置12Bbへ切換え移動させることに基づき、ロック機構10がロック解除従動具12Bから開放されて、ロック解除位置21aからロック位置21bに切換え移動して、前記出力輪5の回転を阻止するように構成する。
【0146】
前記計測終了時ロック解除具12Cは、弾性体巻き取り回数計測手段11が目標巻取り回数を計測し終えたことに連動して、上記ロック機構10を上記ロック位置21bから上記ロック解除位置21aに切換え作動させることにより、ロック機構10をロック解除作動させて、動力蓄積用弾性体4の蓄積動力を出力させて、出力輪5・出力側一方向回転伝動手段6を順に介して、エンジンの始動軸7を始動回転させるように構成した。
【0147】
図10・図11に示すように、前記ロック解除従動具12Bはロック解除従動レバー12Bから成る。このロック解除従動レバー12Bは、支点軸心12Dを支点として前記ロック解除保持位置12Baと前記ロック投入許容位置12Bbとに切換え揺動可能に構成する。
【0148】
このロック解除従動レバー12Bは、ロック解除保持用ばね12Eでロック解除保持位置12Baに弾圧されるのに対して、前記ロック解除主動具12Aでロック解除保持用ばね12Eに抗してロック投入許容位置12Bbに切換え移動させられるように構成した。このロック解除保持用ばね12Eは、圧縮コイルスプリングを兼ねるトルクスプリングから成る。
【0149】
図10−図13に示すように、前記ロック解除主動具12Aにはレバー駆動部12Aaとレバー退避操作用傾斜カム部12Abとを設ける。 前記弾性体巻き取り回数計測手段11が初期位置から目標巻き取り回数到達位置に向かって往行移動する計測移動途中で、前記ロック解除主動具12Aのレバー駆動部12Aaが前記ロック解除従動レバー12Bをロック解除保持位置12Baからロック投入許容位置12Bbに切換え移動させるように構成する。
【0150】
図13に示すように、前記弾性体巻き取り回数計測手段11が前記計測リセット手段70により目標巻き取り回数到達位置から初期位置に向かって復帰移動する途中で、前記ロック解除主動具12Aのレバー退避操作用傾斜カム部12Abがロック解除従動レバー12Bをロック解除主動具12Aに対する係合作用位置12Bcから係合解除退避位置12Bdに退避させて、ロック解除主動具12Aがロック解除従動レバー12Bを回避して通過するように構成した。
【0151】
図10−図13に示すように、前記ロック解除従動レバー12Bは、前記支点軸心12Dの部分を支点として前記ロック解除保持位置12Baと前記ロック投入許容位置12Bbとに亘って切換え揺動する方向に対して、この揺動方向と交差する方向に沿って、係合作用位置12Bcと係合解除退避位置12Bdとに切換え揺動可能に構成する。
【0152】
このロック解除従動レバー12Bは、前記圧縮コイルスプリング兼トルクスプリング製のロック解除保持用ばね12Eで、前記ロック解除保持位置12Baに弾圧するとともに、前記ロック解除主動具12Aに対する係合作用位置12Bcにも弾圧するように構成する。
このロック解除従動レバー12Bは、前記レバー退避操作用傾斜カム部12Abによりロック解除保持用ばね12Eに抗して、前記係合作用位置12Bcから前記係合解除退避位置12Bdに退避移動させられるように構成した。
【0153】
図3−図5に示すように、第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52は、前記第1の枢支軸47に枢支され、リコイルスタータの前方から第1のラチェット爪51・第2のラチェット爪52・駆動停止操作手段21の順に並設されている。このうち、第1のラチェット爪51は、引っ張りばね61によって前記残置用爪車50に係止する方向に付勢されている。この引っ張りばね61は、一端が第1のラチェット爪51に係止され、他端がスタータケース33側に係止されている。
【0154】
一方、第2のラチェット爪52は、引っ張りばね62によって残置用爪車50に係止する方向に付勢されている。この引っ張りばね62は、一端が第2のラチェット爪52に係止され、他端が前記駆動停止操作手段21に係止されている(図3・図4参照)。この第2のラチェット爪52には、また、入力部52aが設けられ、この入力部52aは、駆動停止操作手段21に設けられた切り欠き部21cとの係合により駆動停止操作手段21の揺動を第2のラチェット爪52に伝達するようになっている。
【0155】
すなわち、前記ロック解除手段12の計測終了時ロック解除具12Cが駆動停止操作手段21の第1の受動部22に当接してこれを押動することにより、駆動停止操作手段21をロック位置21bからロック解除位置21aに切り換えたときに、この駆動停止操作手段21の揺動は上記切り欠き部21gと入力部52aとの係合を介して第2のラチェット爪52に伝達され、第2のラチェット爪52を揺動起立させることにより第2のラチェット爪52と残置用爪車50との係止を解除する。
【0156】
また、駆動停止操作手段21がロック解除位置21aにある場合には、第2のラチェット爪52も入力部52aと切り欠き部21gとの係合を介して、残置用爪車50との係止を解除する係止解除姿勢を維持する。他方、駆動停止操作手段21がロック解除位置21aからロック位置21bに切り換えられたときには、第2のラチェット爪52も入力部52aを介してこれに連動し残置用爪車50に係止するようになっている。
【0157】
本実施形態のリコイルスタータには、リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す方向に回転することに基づいて、弾性体巻き取り回数計測手段11が計測した動力蓄積用弾性体4の巻き取り回数の計数値をリセットする計測リセット手段70が設けられている。この計測リセット手段70は、前記計測用爪車15を初期位置に付勢する初期位置付勢手段71と、リコイルリール1に設けられたリセット用主動部72と、前記第1のラチェット爪51に設けられたリセット用従動部73と、を備える。
【0158】
このうち、初期位置付勢手段71は、図1と図7とに示すように、第2の枢支軸57に巻回された第1のねじりばねとして構成され、この第1のねじりばねの一端はスタータケース33側に固定され、その他端は計測用爪車15に固定される。この初期位置付勢手段71は、前記第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52の両方が残置用爪車50との係止を解除されたときに、計測用爪車15を初期位置に回動復帰させる。
【0159】
なお、図3から図5に示すように、スタータケース33に設けられたブラケット76によって、上記初期位置付勢手段71による計測用爪車15の一定以上の回動復帰は規制されており、このブラケット76と計測用爪車15とが当接する位置を計測用爪車15の初期位置と定める(図3から図5参照)。
【0160】
上記リセット用主動部72は、リコイルリール1の後端面の周縁に等間隔に突設された凸部として構成される。一方、リセット用従動部73は、一端が第1のラチェット爪51に係止された第2のねじりばね78の他端部として構成され、この他端部は解放端となっている。この第2のねじりばね78は、前記第1の枢支軸47に巻回されたうえ、リセット用従動部73として機能するその解放端を下方に延出して、リコイルリール1の回転時にリセット用主動部72と当接してその駆動を受けるようになっている。これにより、リコイルリール1の回転がリセット用主動部72とリセット用従動部73との当接を通じて第1のラチェット爪51に伝達される。
【0161】
但し、リコイルリール1の正転時Xには、リセット用主動部72がリセット用従動部73と当接してこれを駆動しても、この駆動力は第2のねじりばね78を介して第1のラチェット爪51を残置用爪車50に係止させる方向に作用するため、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止は維持される。しかし、リコイルリール1の逆転時Y(リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す巻き戻し回転時)には、リセット用主動部72がリセット用従動部73を駆動することにより第1のラチェット爪51を揺動起立させ、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止が解除されるようになっている。
【0162】
[ 第1実施形態の作用 ]
本発明の第1実施形態に係るリコイルスタータは次のように作動する。
いま、エンジンは停止しており、これからエンジンを始動させる場合を想定する(図3から図5参照)。始動ロープ34はリコイルリール1に巻き取られており、また、計測用爪車15は初期位置にあるものとする。第1のラチェット爪51は、引っ張りばね61の付勢力によって残置用爪車50に係止している。
【0163】
このとき、駆動停止操作手段21は、図3に示すように、ロック解除手段12のロック解除従動具12Bによって第2の受動部23が受け止められて、を押動されてロック解除位置21aに保持されている。したがって、出力輪5のロックは解除された状態にあり、動力蓄積用うず巻きばね4には何ら蓄力がなされていない。また、第2のラチェット爪52は、切り欠き部21gと入力部52aとの係合を介して残置用爪車50との係止を解除する姿勢にある。
【0164】
ここで、出力側一方向回転伝動手段6の遠心爪44が爪受部45に係合していなかったものとする。この場合において、始動ロープ34を引っ張ると、リコイルリール1が正転方向Xへ回転し、このリコイルリール1の回転が入力側一方向回転伝動手段2・入力輪3・動力蓄積用うず巻きばね4を介して出力輪5に伝達され、出力輪5を回転させる。この結果、出力輪5に設けられた爪受部45も回転し、遠心爪44と爪受部45との係合が可能となる。
【0165】
本実施形態では、前述のように、駆動停止操作手段21が駆動停止部20と係合するためには計測用爪車15が爪一つ分刻み送りされなければならないため、駆動停止操作手段21が駆動停止部20に係合するまでには入力輪3の半回転に相当する出力輪5の回転を確保することができる。これにより、遠心爪44と爪受部45とが係合する前に駆動停止操作手段21と駆動停止部20とが係合して出力輪5がロックされてしまうことを防止でき、遠心爪44と爪受部45とをあらかじめ係合させておくことが可能となる。
【0166】
このようにして遠心爪44と爪受部45とを係合させると、一方で、計測用爪車15が爪一つ分または二つ分だけ刻み送りされる。これに連動して、図11・図12に示すように、ロック解除主動具12Aのレバー駆動部12Aaがロック解除従動レバー12Bを、ロック解除保持位置12Baからロック投入許容位置12Bbに切り換える。すると、このロック解除従動レバー12Bから第2の受動部23が外れ落ちて、駆動停止操作手段21がロック位置付勢手段48の力でロック解除位置21aからロック位置21bに切り換えられる。(図11(B)・図6参照)。
【0167】
これにより、動力蓄積用うず巻きばね4は蓄力可能な状態になり、その後の始動ロープ34の引き操作により入力輪3が回転した分だけ上記動力蓄積用うず巻きばね4は巻き取られることになる。
なお、計測用爪車15が爪一つ分または二つ分だけ刻み送りされて、駆動停止操作手段21がロック位置(21b)に切り換えられると、これに連動して第2のラチェット爪52も残置用爪車50に係止する(図6参照)。
【0168】
このような入力輪3の回転は、送り爪14によって計測用爪車15に伝達され、さらに計測用爪車15を刻み送りする。そして、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達すると、ロック解除手段12の計測終了時ロック解除具12Cが駆動停止操作手段21の第1の受動部22を押動し、駆動停止操作手段21をロック位置21bからロック解除位置21aに切り換える。これにより出力輪5のロックは解除され、動力蓄積用うず巻きばね4に蓄えられた蓄力が解放されて出力輪5が回転する。
【0169】
この出力輪5の回転は、出力側一方向回転伝動手段6によってクランク軸7に伝達される。前述のように、すでに遠心爪44と爪受部45とは係合状態にあるため、動力蓄積用うず巻きばね4の蓄力解放により両者が衝突したり、あるいは不快な騒音を発したりすることはない。このようにして、出力輪5の回転は爪受部45と遠心爪44とを介してスムーズにスタータプーリ32に伝達されてクランク軸7を回転させ、エンジンを始動させることになる。
【0170】
このように、本実施形態では、始動ロープ34の引き操作に連動して上記弾性体巻き取り回数計測手段11が所定位置に達したときに(爪一つ分または爪二つ分だけ送られたときに)、上記ロック機構10が作動して出力輪5がロックされるようになっている。このため、動力蓄積用弾性体4の目標巻き取り回数到達時における出力輪5のロック解除だけでなく、ロック投入も自動的に行われユーザーの利便性が向上する。
【0171】
エンジンが始動してクランク軸7の回転速度が所定速度以上になると、クランク軸7と一体回転するスタータプーリ32に設けられた遠心爪44が遠心力により外方に揺動し、爪受部45との係合が解除される。これによりクランク軸7と出力輪5との連繋は断たれる。
【0172】
一方、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達して駆動停止操作手段21がロック位置21bからロック解除位置21aへと切り換えられたときには、これに連動して第2のラチェット爪52が揺動起立し、第2のラチェット爪52と残置用爪車50との係止が解除される。
【0173】
なお、リコイルリール1による始動ロープ34の巻き戻しが開始していない状態では、ロック解除手段12の計測終了時ロック解除具12Cが第1の受動部22を介して駆動停止操作手段21を押し上げている状態にあるため、駆動停止操作手段21はロック解除位置21aに保持され、また、第2のラチェット爪52は残置用爪車50との係止を解除された係止解除姿勢をとり続けることになる。
【0174】
この状態から、次に、始動ロープ34の巻き戻し作動が開始される。すなわち、リコイルリール1はリール巻き戻し用うず巻きばね35により始動ロープ34を巻き戻す方向Yに回転し始める。このリコイルリール1の逆転により、リセット用主動部72がリセット用従動部73を駆動し、この駆動力が第2のねじりばね78を介して第1のラチェット爪51に伝達され、これを揺動起立させて、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止が解除される。
【0175】
この結果、計測用爪車15は、初期位置付勢手段71の付勢力により初期位置に回動復帰する。これに連動して、ロック解除手段12の計測終了時ロック解除具12Cも回動して駆動停止操作手段21の第1の受動部22から離れる。この結果、駆動停止操作手段21は、ロック位置付勢手段たる引っ張りばね48のばね力(および自重)によりロック位置側へ引かれるが、第2の受動部23がロック従動レバー12Bに受け止められて、駆動停止操作手段21はロック解除位置(21a)に保持され続ける。
【0176】
なお、図3・図4・図7に示すように、第2の枢支軸57には第3のねじりばね80が巻回されている。この第3のねじりばね80の一端は残置用爪車50に係止され、その他端は解放端になっており、この解放端部は、計測用爪車15が入力輪3の正転に従動して刻み送りされてゆく度に上昇して、駆動停止操作手段21に下から当接する。そして、計測用爪車15が目標巻き取り回数相当位置にあるときには、駆動停止操作手段21を下から支持するようになっている。
なお、図6では、図面が過度に複雑になるのを避けるために、第3のねじりばね80は省略されている。
【0177】
○ 実施形態2. 請求項10の発明. 図14−図16参照.
次に、本発明の第2実施形態について、図14−図16に基づき説明する。
図14−図16は本発明のリコイルスタータの第2実施形態を示す。 図14は図3に相当する図である。 図15は出力側一方向回転伝動手段をエンジン側から見た図である。 図16は出力側一方向回転伝動手段の正面視断面図である。
なお、第1実施形態と同一の部材・要素には同一の符合が付してある。また、第2実施形態の説明中、特に言及のない部分については第1実施形態と同様に構成されている。
【0178】
この第2実施形態に係るエンジンのリコイルスタータは、図14ないし図16に示すように、出力側一方向回転伝動手段6の構成においてのみ、第1実施形態と相違する。
【0179】
すなわち、この第2実施形態の出力側一方向回転伝動手段6は、出力輪5側に設けられたドッグ爪82と、このドッグ爪82を出力輪5の回転時に起立させるドッグ爪起立具83と、クランク軸7側に設けられかつ上記ドッグ爪82が起立したときにドッグ爪82と係合する爪受部84とを備えている。
【0180】
上記ドッグ爪82は、出力輪5の後端面において揺動可能に枢支される。この出力輪5の後端面にはまたドッグ爪保持部85が突設され、このドッグ爪保持部85によって上記ドッグ爪82の揺動が一定範囲に規制されるとともに、出力輪5からクランク軸7への回転伝達の際にドッグ爪82にかかる荷重が受け止められるようになっている。
【0181】
前記ドッグ爪起立具83は、前記固定部9の後端部に螺着されたボルト86に遊嵌されるとともに、ばね87によってボルト86の頭部に摩擦当接されている。このドッグ爪起立具83には起立案内部83aが設けられ、出力輪5が回転したときに、前記ドッグ爪82がこの起立案内部83aによって押し上げられ起立するようになっている。
【0182】
前記爪受部84は、スタータプーリ32の内周面を切り起こして形成され、上記ドッグ爪82がドッグ爪起立具83によって起立させられたときにドッグ爪82と係合して、出力輪5の回転をクランク軸7に伝達するようになっている。なお、この第2実施形態では、上記ドッグ爪82が被係合部17として機能し、上記爪受部84が係合部16として機能する。
【0183】
このように構成された出力側一方向回転伝動手段6においても、出力輪5が回転し始めるまではドッグ爪82は倒伏しているので、この出力側一方向回転伝動手段6を従来のリコイルスタータに用いた場合には、動力蓄積用うず巻きばね4の蓄力解放により出力輪5が急回転し、ドッグ爪82と爪受部84との衝突が起こり得る。
【0184】
しかし、次に述べるように、第2実施形態のように構成した場合には、かかる問題を解消することができる。
いま、エンジンを始動させるべく始動ロープ34を引いたとする。始動ロープ34の引き操作によりリコイルリール1が回転し、このリコイルリール1の回転が入力側一方向回転伝動手段2・入力輪3・動力蓄積用うず巻きばね4を介して出力輪5に伝達され、出力輪5を回転させる。
【0185】
このようにして出力輪5が回転すると、ドッグ爪82がドッグ爪起立具83によって起立させられ、出力輪5とともに回転する。これにより、出力輪5のロック解除前に予めドッグ爪82をクランク軸7側の爪受部84と係合させておくことができ、動力蓄積用うず巻きばね4の蓄力解放によるドッグ爪82と爪受部84との衝突をなくすことが可能となる。
【0186】
なお、エンジンが始動してクランク軸7の回転速度が上昇すると、ドッグ爪82の背面に爪受部84が当接し、これによりドッグ爪82は倒伏させられ、出力輪5とクランク軸7との連繋が断たれることになる。
【0187】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、入力輪3の逆回転防止手段8は上記のものに限られるものではなく、他の構成のラチェット機構やワンウェイクラッチ等を用いて構成してもよい。上記の各実施形態では、動力蓄積用弾性体4がうず巻きばねの場合について説明したが、蓄力可能な弾性体であればよく、例えば、ねじりばねであってもよい。
【0188】
上記の各実施形態では、送り爪14を起伏自在に構成したが、可動部材としてではなく入力輪3に固定されていてもよい。上記各実施形態における計測リセット手段70は、リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す巻き戻し回転に基づいて、前記弾性体巻き取り回数計測手段11を初期位置に戻すように構成されていたが、かかる構成に限定されるものではない。
【0189】
上記各実施形態では、出力輪5に4つの凹部が設けられていたが、4つに限られるものではなく、また、閉塞部材26で塞ぐ個所やその個数も実施例のものに限定されるわけではない。上記各実施形態では、計測用爪車15が初期位置から爪一つ分または二つ分だけ刻み送りされたときに、出力輪5がロックされるように構成したが、これに限定されるものではない。
【0190】
上記各実施形態では、ロック解除手段12のロック解除主動具12Aと計測終了時ロック解除具12Cとは、二つの部品として別体に形成したが、一体に形成して一つの部品にすることも考えられる。
【0191】
上記各実施形態のラチェット機構49は、第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52を備えていたが、第1のラチェット爪51のみを備えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明のエンジンのリコイルスタータは、例えば小型の農業用・汎用・または発電用などのエンジンのリコイルスタータに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1−図13は本発明のリコイルスタータの第1実施形態を示す。 図1はリコイルスタータの縦断正面図である。
【図2】図2(A)は図1のII−II線矢視断面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段11が初期位置にある状態を示す。
【0194】
【図4】図3から駆動停止操作手段21を取り除いた図である。
【図5】図4から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。
【図6】図3の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【0195】
【図7】図3または図10におけるVII−VII線矢視断面図である。
【図8】図8(A)は入力輪3の正面図、図8(B)は図8(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【図9】図9(A)は、ばね巻き取り回数計測手段11をエンジン側から見た図である(但し、駆動停止操作手段21と第1のラチェット爪51は省略してある)。図9(B)は図9(A)の要部を示し、送り爪14の動きを示す図である。
【0196】
【図10】図10はロック開放手段12を示す。図10(A)は図3のX部の拡大図。図10(B)は図10(A)のB−B線矢視断面図。図10(C)は図10(A)のC−C線矢視断面図である。
【図11】図11は図3のX部の取出し図であり、ロック開放手段12の作用を示す。図11(A)はロック解除従動具12Bがロック解除保持位置12Baにある状態を示す。図11(B)はロック解除従動具12Bがロック投入許容位置12Bbに切換わった状態を示す。
【0197】
【図12】図12は図10(C)に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー駆動部12Aaの機能を示す。
【図13】図13は図12に相当する図であり、ロック解除主動具12Aのレバー退避操作用傾斜カム部12Abの機能を示す。
【0198】
【図14】図14−図16は本発明のリコイルスタータの第2実施形態を示す。 図14は図3に相当する図である。
【図15】出力側一方向回転伝動手段をエンジン側から見た図である。
【図16】出力側一方向回転伝動手段の正面視断面図である。
【0199】
【図17】図17−図22は従来技術である特許文献1のリコイルスタータの構成を示す。 図17はリコイルスタータの縦断正面図である。
【図18】図18(A)は図17のXVIII−XVIII線矢視断面図、図18(B)は図18(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段11が初期位置にある状態を示す。
【0200】
【図20】図19から駆動停止操作手段21を取り除いた図である。
【図21】図20から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。
【図22】図19の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0201】
1…リコイルリール、2…入力側一方向回転伝動手段、3…入力輪、4…動力蓄積用弾性体(うず巻きばね)、5…出力輪、6…出力側一方向回転伝動手段、7…始動軸(クランク軸)、8…逆回転防止手段、10…ロック機構、11…弾性体巻き取り回数計測手段(ばね巻き取り回数計測手段)、
【0202】
12…ロック解除手段、12A…ロック解除主動具、12Aa…レバー駆動部、12Ab…レバー退避操作用傾斜カム部、12B…ロック解除従動具(ロック解除従動レバー)、12Ba…ロック解除保持位置、12Bb…ロック投入許容位置、12Bc…係合作用位置、12Bd…係合解除退避位置、12C…計測終了時ロック解除具、12D…支点軸心、12E…ロック解除保持用ばね、
【0203】
14…送り爪、15…計測用爪車、16…係合部、17…被係合部、20…駆動停止部、21…駆動停止操作手段、21a…ロック解除位置、21b…ロック位置、22…第1の受動部、23…第2の受動部、26…閉塞部材、34…始動ロープ、44…遠心爪、45…爪受部、48…ロック位置(21b)付勢手段(引っ張りばね)、49…ラチェット機構、51…第1のラチェット爪、52…第2のラチェット爪、70…計測リセット手段、71…初期位置付勢手段(第1のねじりばね)、72…リセット用主動部、73…リセット用従動部、82…ドッグ爪、83…ドッグ爪起立具、84…爪受部、L1…遅延用距離。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコイルリール(1)に始動ロープ(34)を巻回し、
このリコイルリール(1)に、入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)・出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を連動連結し、
上記出力側一方向回転伝動手段(6)は、上記始動軸(7)側に設けられた係合部(16)と、上記出力輪(5)側に設けられた被係合部(17)とを備え、
上記入力輪(3)の逆転を防止する逆回転防止手段(8)と、
上記出力輪(5)の回転を阻止するロック機構(10)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数を計測する弾性体巻き取り回数計測手段(11)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに上記ロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)と を設け、
上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻す計測リセット手段(70)を設け、この計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置に戻された状態では、上記ロック解除手段(12)でロック機構(10)が解除されるように構成し、
前記始動ロープ(34)の引き操作に連動して上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が所定位置に達したときに、上記ロック機構(10)が作動して出力輪(5)がロックされるように構成した、
エンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ロック解除手段(12)はロック解除主動具(12A)とロック解除従動具(12B)と計測終了時ロック解除具(12C)とを備え、
ロック解除主動具(12A)と計測終了時ロック解除具(12C)とは前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)に連動するように構成し、
ロック解除従動具(12B)は、前記ロック機構(10)をロック解除位置(21a)に保持するロック解除保持位置(12Ba)と、ロック機構(10)をロック解除位置(21a)からロック位置(21b)へ投入移動することを許容するロック投入許容位置(12Bb)とに切換え移動可能に構成し、
前記始動ロープ(34)の引き操作に連動して、上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から所定位置にまで進行したときには、ロック解除主動具(12A)が所定の遅延用距離(L1)を空走した後にロック解除従動具(12B)に達して、このロック解除従動具(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)へ切換え移動させることに基づき、ロック機構(10)がロック解除従動具(12B)から開放されて、ロック解除位置(21a)からロック位置(21b)に切換え移動して、前記出力輪(5)の回転を阻止するように構成し、
前記計測終了時ロック解除具(12C)は、弾性体巻き取り回数計測手段(11)が目標巻取り回数を計測し終えたことに連動して、上記ロック機構(10)を上記ロック位置(21b)から上記ロック解除位置(21a)に切換え作動させることにより、ロック機構(10)をロック解除作動させて、動力蓄積用弾性体(4)の蓄積動力を出力させて、出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を始動回転させるように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記計測リセット手段(70)は、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転に基づいて、前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期位置に戻すように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ロック機構(10)は、出力輪(5)に設けられた駆動停止部(20)と、この駆動停止部(20)に係脱自在な駆動停止操作手段(21)とを備え、
この駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)とロック解除位置(21a)とに切換可能に構成して、上記駆動停止操作手段(21)がロック位置(21b)にあるときには、駆動停止部(20)と係合して、出力輪(5)の回転を阻止するのに対し、
上記駆動停止操作手段(21)がロック解除位置(21a)にあるときには、駆動停止部(20)を解放して、出力輪(5)の回転を許容するように構成し、
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)は、入力輪(3)に設けた送り爪(14)と、この送り爪(14)によって刻み送りされる計測用爪車(15)と、この計測用爪車(15)を各計数位置に置き残すラチェット機構(49)とを備え、
前記計測リセット手段(70)は、リコイルリール(1)に設けられたリセット用主動部(72)と、上記ラチェット機構(49)に設けられたリセット用従動部(73)と、上記計測用爪車(15)を初期位置に付勢する初期位置付勢手段(71)と を備え、
このリセット用主動部(72)は、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転時に、上記リセット用従動部(73)を駆動することにより、前記ラチェット機構(49)を解除するように構成し、
上記初期位置付勢手段(71)は、上記ラチェット機構(49)が解除されたときに、計測用爪車(15)を初期位置に復帰させるように構成し、
前記駆動停止操作手段(21)にロック位置付勢手段(48)を設けて、このロック位置付勢手段(48)により上記駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)に付勢するとともに、上記駆動停止操作手段(21)に第1の受動部(22)と第2の受動部(23)とを設け、
前記ロック解除手段(12)のロック解除主動具(12A)を上記計測用爪車(15)と一体回転するように構成して、上記計測用爪車(15)が目標巻き取り回数相当位置に達したときには、上記ロック解除手段(12) のロック解除主動具(12A)が上記第1の受動部(22)を駆動して、駆動停止操作手段(21)をロック位置(21b)からロック解除位置(21a)に切り換えるように構成し、
上記計測用爪車(15)が目標回数計測終了位置から初期位置に復帰した状態では、上記ロック解除手段(12) のロック解除従動具(12B)が上記第2の受動部(23)を受け止めて、駆動停止操作手段(21)をロック解除位置(21a)に保持するように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ラチェット機構(49)は、第1のラチェット爪(51)と第2のラチェット爪(52)とを備え、
前記リセット用従動部(73)をこの第1のラチェット爪(51)に設けて、リコイルリール(1)の巻き戻し回転に基づいて上記第1のラチェット爪(51)の係止が解除されるように構成し、
上記第2のラチェット爪(52)は、前記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに、前記駆動停止操作手段(21)がロック位置(21b)からロック解除位置(21a)に切り換えられることに連動して、その第2のラチェット爪(52)の係止が解除されるように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項5】
請求項1・2・3または4に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ロック解除従動具(12B)はロック解除従動レバー(12B)から成り、 このロック解除従動レバー(12B)は、支点軸心(12D)を支点として前記ロック解除保持位置(12Ba)と前記ロック投入許容位置(12Bb)とに切換え揺動可能に構成し、
このロック解除従動レバー(12B)は、ロック解除保持用ばね(12E)でロック解除保持位置(12Ba)に弾圧されるのに対して、前記ロック解除主動具(12A)でロック解除保持用ばね(12E)に抗してロック投入許容位置(12Bb)に切換え移動させられるように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ロック解除主動具(12A)にはレバー駆動部(12Aa)とレバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)とを設け、
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が初期位置から目標巻き取り回数到達位置に向かって往行移動する計測移動途中で、前記ロック解除主動具(12A)のレバー駆動部(12Aa)が前記ロック解除従動レバー(12B)をロック解除保持位置(12Ba)からロック投入許容位置(12Bb)に切換え移動させるように構成し、
前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)が前記計測リセット手段(70)により目標巻き取り回数到達位置から初期位置に向かって復帰移動する途中で、前記ロック解除主動具(12A)のレバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)がロック解除従動レバー(12B)をロック解除主動具(12A)に対する係合作用位置(12Bc)から係合解除退避位置(12Bd)に退避させて、ロック解除主動具(12A)がロック解除従動レバー(12B)を回避して通過するように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記ロック解除従動レバー(12B)は、前記支点軸心(12D)の部分を支点として前記ロック解除保持位置(12Ba)と前記ロック投入許容位置(12Bb)とに亘って切換え揺動する方向に対して、この揺動方向と交差する方向に沿って、係合作用位置(12Bc)と係合解除退避位置(12Bd)とに切換え揺動可能に構成し、
このロック解除従動レバー(12B)は前記ロック解除保持用ばね(12E)で、前記ロック解除保持位置(12Ba)に弾圧するとともに、前記ロック解除主動具(12A)に対する係合作用位置(12Bc)にも弾圧するように構成し、
このロック解除従動レバー(12B)は、前記レバー退避操作用傾斜カム部(12Ab)によりロック解除保持用ばね(12E)に抗して、前記係合作用位置(12Bc)から前記係合解除退避位置(12Bd)に退避移動させられるように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項8】
請求項3から7のうちのいずれか1項に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記駆動停止部(20)を出力輪(5)の周方向に所定間隔をあけて複数個設けるとともに、各駆動停止部(20)を凹部として構成し、この凹部に取り付けおよび取り外し自在な閉塞部材(26)を設けた、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記出力側一方向回転伝動手段(6)を遠心式クラッチ機構として構成し、この遠心式クラッチ機構は、前記始動軸(7)側に設けられた遠心爪(44)と、前記出力輪(5)側に設けられた爪受部(45)とを備え、上記遠心爪(44)は、始動軸(7)の回転が所定回転速度以上になったときに遠心力により揺動して上記爪受部(45)との係合を解除するように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
【請求項10】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記出力側一方向回転伝動手段(6)は、前記出力輪(5)側に設けられたドッグ爪(82)と、このドッグ爪(82)を出力輪(5)の回転時に起立させるドッグ爪起立具(83)と、前記始動軸(7)側に設けられかつ上記ドッグ爪(82)が起立したときにドッグ爪(82)と係合する爪受部(84)とを備えた、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−90253(P2006−90253A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279186(P2004−279186)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】