説明

エンジンの冷却装置

【課題】単にシュラウドを取り付け、シリンダ及びシリンダヘッドを外周面から空気冷却するだけの構造では、冷却ファンからの冷却風量が少ない場合には、シリンダヘッド内で高温になる箇所を十分に冷却出来ない場合があるので改善する。
【解決手段】クランク軸の一端部に固着された冷却ファン31と、冷却ファン31を囲むファンハウジング32と、ファンハウジング32内から排出される冷却風を、エンジン本体部5の外周面へ導くシュラウド41と、を備えたエンジンの冷却装置で、シリンダヘッド3には、シリンダヘッド3の一つの側面から別の側面まで、シリンダヘッド3内を貫通する冷却風通路44が形成され、シュラウド41には、ファンハウジング32内からの冷却風を、冷却風通路44の前記一つの側面の入口開口部45aへ導く絞りガイド部41bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸に固着された冷却ファン及び該冷却ファンを囲むファンハウジングを備えた空冷式エンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記空冷式エンジンでは、シリンダ及びシリンダヘッドを冷却するために、一般的に、シリンダ及びシリンダヘッドを覆うシュラウドが取り付けられており、ファンハウジング内から送られる冷却風を、前記シュラウドによって、シリンダ及びシリンダヘッドの外周面に沿って流通させている(特許文献1)。
【0003】
また、シリンダヘッド内の冷却効率を向上させるために、上記シュラウドを備えると共に、シリンダヘッド内を貫通する冷却風通路を形成した冷却装置を備えた空冷式エンジンも開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−42347号公報
【特許文献2】特開平10−241355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の従来例(特許文献1)のように、単にシュラウドを取り付け、シリンダ及びシリンダヘッドを外周面から空気冷却するだけの構造では、エンジン回転数が低くて冷却ファンからの冷却風量が少ない場合には、シリンダヘッド内で高温になる箇所、たとえば排気通路近傍あるいは燃焼室形成壁を十分に冷却出来ない場合がある。
【0006】
後者の従来例(特許文献2)のように、シュラウドに加え、シリンダヘッド内に冷却風通路を形成していると、シリンダヘッド内の排気通路近傍等の冷却効果が向上する。しかし、単にシリンダヘッド内に冷却風通路を形成しているだけでは、冷却通路に供給される冷却風量を十分に確保することが難しく、冷却風通路を効率良く利用することができない。ちなみに、該従来例では、冷却風通路の入口面積を大きくして、冷却風量を確保しようとしている。
【0007】
本発明は、シリンダ及びシリンダヘッドからなるエンジン本体部の冷却に関し、シリンダヘッド内の各箇所の冷却性を高め、かつ、シリンダヘッドを軽量化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、クランク軸の一端部に固着された冷却ファンと、該冷却ファンを囲むファンハウジングと、該ファンハウジング内から排出される冷却風を、エンジン本体部の外周面へ導くシュラウドと、を備えたエンジンの冷却装置において、前記エンジン本体部を構成するシリンダヘッドには、該シリンダヘッドの一つの側面から別の側面まで、シリンダヘッド内を貫通する冷却風通路が形成され、前記シュラウドには、前記ファンハウジング内からの冷却風を、前記冷却風通路の前記一つの側面の入口開口部へ導く絞りガイド部が形成されている。
【0009】
本発明は、上記構成において、好ましくは、次のような構成を採用する。
(a)前記冷却風通路は、前記シリンダヘッド内の排気通路の形成壁に接触し、あるいは前記形成壁の近傍を通過している。
【0010】
(b)前記冷却風通路は、該冷却風通路を流れる冷却風が点火プラグに供給されるように構成されている。
【0011】
(c)前記冷却風通路は、吸気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁と排気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁との間を通過するように形成されている。
【0012】
(d)前記冷却風通路は、シリンダ中心線方向に見て、略十字状に形成されている。この場合、好ましくは、略十字状に形成された前記冷却風通路の三つの出口開口部のうち、吸気通路の入口と同じ方向に開口する出口開口部は、前記吸気通路の入口に配置されるガスケット及びインシュレータのいずれか一方、あるいは両方により、冷却風の逃げ量が制限されている。
【0013】
(e)前記シュラウドは、前記絞りガイド部よりも冷却風の流れの上流側部分が、冷却風の流れの下流側部分よりも、前記エンジン本体部の外周面との間隔が広くなっており、前記絞りガイド部は、前記冷却風通路の前記入口開口部側に行くに従い前記エンジン本体の外周面に近づくように傾斜している。
【0014】
(f)前記シュラウドの上端には、前記エンジン本体部の外周面と前記シュラウドとの間の空間を上方から閉塞する蓋部分が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明によると、シュラウドにより、冷却風をエンジン本体部の外周面に沿って流すことにより、エンジン本体部を外周から冷却すると共に、シリンダヘッド内の冷却風通路を流れる冷却風により、シリンダヘッド内の各箇所を効果的に冷却できるのは勿論のこと、シュラウドに形成した絞りガイド部により、強制的に冷却風通路内に冷却風を送り込むので、シリンダヘッド内の各箇所の冷却性がさらに向上する。また、冷却風通路を形成することにより、シリンダヘッドを軽量化することもできる。
【0016】
(2)構成(a)によると、シリンダヘッド内で特に温度が高くなりやすい排気通路及びその近傍を、局所的に、効率よく、強制冷却できる。
【0017】
(3)構成(b)によると、排気通路と共に温度が高くなりやすい点火プラグを、冷却風により局所的に、効率良く冷却できる。
【0018】
(4)構成(c)によると、冷却風通路は、吸気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁と排気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁との間を通過するように形成されているので、吸、排気弁用プッシュロッド挿通孔の両形成壁間の無駄な空間を、冷却風通路として有効に利用でき、また、シリンダヘッド鋳造時、冷却風通路の形成も容易に行える。
【0019】
(5)構成(d)によると、冷却風通路を略十字状に形成しているので、シリンダヘッド内を広範囲に亘って冷却風により供給でき、シリンダヘッドの冷却性が向上すると共に、一層の軽量化が達成される。また、吸気通路近傍は、他の箇所に比べて温度の上昇が少ないが、この吸気通路近傍の出口開口部を、ガスケット及びインシュレータのいずれか一方、あるいは両方により、冷却風の逃げ量を制限するので、温度の高くなりやすい他の箇所への冷却風量を増やすことができ、さらに、冷却効率が向上する。
【0020】
(6)構成(e)によると、前記シュラウドに傾斜面を形成するという簡単に加工により、絞りガイド部を形成することができる。すなわち、簡単な加工で、効率良く冷却風通路に冷却風を送り込むことができる。
【0021】
(7)構成(f)によると、シュラウドの上端の蓋部分によって、冷却風がシュラウド内から上方へ逃げるのを阻止でき、冷却風によるシリンダ本体部の冷却効果並びに冷却風通路への冷却風の供給を、一層増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る冷却装置を備えた空冷式エンジンの左側面図である。
【図2】図1のエンジンの平面図である。
【図3】図1のエンジンの前面図である。
【図4】図1のエンジンであって、リコイルスタータ及びファンハウジングを取り外して示す左側面図である。
【図5】図4のV-V断面図である。
【図6】図1のエンジンのシュラウドを前右上方から見た斜視図である。
【図7】図1のエンジンのシュラウドを後左上方から見た斜視図である。
【図8】図1のエンジンの吸気通路の入口に配置するガスケットの正面図である。
【図9】図1のエンジンの吸気通路入口に配置するインシュレータの正面図である。
【図10】前記インシュレータとキャブレターとの間に配置するガスケットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
図1乃至図10は、本発明の一実施の形態に係る単気筒のシリンダ傾斜型エンジンであり、これらの図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(エンジン全体の構成)
図1は、前記シリンダ傾斜型エンジンをクランク軸の軸方向に見た側面図(左側面図)、図2は燃料タンク等を取り除いた状態の平面図、図3は図1のIII矢視図(前面図)である。説明の都合上、図1のように、略水平なクランク軸6と略直交する水平方向のうち、シリンダ中心線C1が傾斜している方向をエンジンの「前方」とし、エンジン後方から見たクランク軸6の軸方向を、エンジンの「左右方向」として、説明する。
【0025】
図2において、クランクケース1の前半部の上面に、シリンダ2がクランクケース1と一体に形成され、シリンダ2の前上面にはシリンダヘッド3が締着され、シリンダヘッド3の前上面にはシリンダヘッドカバー4が締着されている。なお、本実施の形態において、シリンダボアを囲む前記シリンダ2及びシリンダヘッド3を、総称してエンジン本体部5と称する。
【0026】
クランクケース1の左側面には、ファンハウジング32が取り付けられ、該ファンハウジング32の左側にはリコイルスタータ11が設けられている。クランクケース1の右側にはクランクケースカバー13が設けられている。クランクケースカバー13からは、クランク軸6の右端部が突出しており、この右端部が動力取り出し部(クランク軸6)となっている。
【0027】
シリンダヘッド3の左側面には吸気ポート15が形成されており、該吸気ポート15の周縁に形成された接続面(取付面)には、第1ガスケット16、遮熱用インシュレータ17及び第2ガスケット18を介してキャブレター20が接続されている。シリンダヘッド3の右側面には、排気ポート21が形成されている。また、シリンダヘッド3の上面の後半部には、シリンダヘッド3の左右幅の略略中央部に点火プラグ23が取り付けられている。
【0028】
図1において、シリンダ中心線C1は、前述のように、鉛直線Mに対し、前方に一定角度θ1(たとえば55度〜60度)だけ傾斜している。クランクケース1の後半部の上側には、燃料タンク25が配置され、シリンダヘッド3、シリンダヘッドカバー4及びキャブレター20の上側には、エアクリーナケース26及び排気マフラー27が配置されている。エアクリーナケース26は、前記キャブレター20の吸気入口に接続されている。
【0029】
図3において、エアクリーナケース26はエンジンの左右幅中心に対して左側に配置され、排気マフラー27はエンジンの左右幅中心に対して右側に配置され、該排気マフラー27は排気管29を介して前記排気ポート21に接続されている。
【0030】
[冷却装置の構成]
図4は、ファンハウジング32(仮想線)等を取り外して示すエンジンの左側面図、図5は図4のV-V断面図である。図5において、エンジンの冷却装置は、前記ファンハウジング32と、該ファンハウジング32内に収納された冷却ファン31と、エンジン本体部5の外周側面の一部、具体的には前面5a及び右側面5cの一部を覆うシュラウド41と、シリンダヘッド3内に形成された冷却風通路44とを備えている。
【0031】
図4において、冷却ファン(羽根車)31は、円周方向に間隔を置いて多数の遠心羽根31aを備えると共に、クランク軸6の左端部に固定され、矢印R1方向に回転する。ファンハウジング32は、クランク軸6の軸芯O1を中心として略円形状に形成されており、ファンハウジング32の前端部には前上方に突出する第1の冷却風出口32a(仮想線)が形成され、該第1の冷却風出口32aの上側には、略上方に突出する第2の冷却風出口32b(仮想線)が形成されている。
【0032】
第1の冷却風出口32aは、エンジン本体部5(シリンダ2及びシリンダヘッド3)の左側面5bの前半部からエンジン本体部5の前面5aに亘って冷却風を送るように、前上方に突出している。第2の冷却風出口32bは、エンジン本体部5(シリンダ2及びシリンダヘッド3)の左側面5bの後半部からエンジン本体部5の後面5dに冷却風を送るように、略上方に突出している。
【0033】
図5に戻り、シリンダヘッド3内に形成された冷却風通路44は、クランク軸6の軸方向(軸芯線O1)及びシリンダ中心線C1に対して略直交する略直線状の第1の冷却風通路45と、クランク軸6の軸方向(軸芯線O1)と略平行で、シリンダ中心線C1に対して略直交する略直線状の第2の冷却風通路46と、から略十字状に形成されている。
【0034】
前記第1の冷却風通路45は、シリンダヘッド3の前面(エンジン本体部5の前面5a)面において入口開口部45aが開口しており、該入口開口部45aから後方に延び、排気弁用プッシュロッド挿通孔53の形成壁53aと吸気弁用プッシュロッド挿通孔54の形成壁54aとの間を通過し、さらに、排気通路51の形成壁51aと吸気通路52の形成壁52aとの間を通過して、点火プラグ23の近傍で、出口開口部45bが後方に開口している。排気弁用プッシュロッド挿通孔53内には排気弁用プッシュロッド56が配置され、吸気弁用プッシュロッド挿通孔54内には排気弁用プッシュロッド57が配置されている。
【0035】
第2の冷却風通路46は、前記第1の冷却風通路45との交差部分から右方に延びる通路部分が、排気通路51の形成壁51aと排気弁用プッシュロッド挿通孔53の形成壁53aとの間を通過し、エンジン本体部5の右側面5cにおいて、出口開口部46aが開口している。さらに、第1の冷却風通路45との交差部分から左方に延びる通路部分が、吸気通路52の形成壁52aと吸気弁用プッシュロッド挿通孔54の形成壁54aとの間を通過して、エンジン本体部5の左側面5bにおいて、出口開口部46bが開口している。
【0036】
図8は、前記キャブレター接続用の吸気ポート側の第1ガスケット16を示し、図9は前記キャブレター遮熱用のインシュレータ17を示し、図10は、前記キャブレター接続用のキャブレター側の第2ガスケット18を示している。図8に示す第1ガスケット16の形状は、図4に示す吸気ポート15の周縁の接続面(取付面)の形状と対応している。図10に示す第2ガスケット18には、図8の第1ガスケット16の形状と同一の形状に加え、径方向の外方に張り出す拡張部18aが一体に形成されている。この第2ガスケット18の拡張部18aは、図5に示す第2の冷却風通路46の吸気通路52側(左側)の出口開口部46bを覆うように広がっており、これにより、左側の出口開口部46bから左方へ逃げようとする冷却風量が制限され、冷却風が左方へ逃げにくくなっている。また前記インシュレータ17も、冷却風の逃げ量を制限する役目を果たしている。
【0037】
図6はシュラウド41を右前上方から見た斜視図、図7はシュラウド41を左後上方から見た斜視図である。図6及び図7において、シュラウド41は前壁部分41aと、右壁部分41cと、上端の蓋部分41dとを一体に備えている。前壁部分41aの略左半分には、前方に膨らむ膨出部分41a1が形成され、該膨出部分41a1の右端には、該膨出部分41a1と前壁41aの右半部分とを連結する傾斜面状の絞りガイド部41bが形成されている。また、右壁部分41cの上下方向の略中間部と、膨出部分41a1の前下端部には、それぞれ取付孔を有するエンジン本体部5への取付部60,61が一体に形成されている。
【0038】
図5において、シュラウド41の前壁部分41aは、エンジン本体部5の前面5aを覆っているが、左側の膨出部分41a1は、エンジン本体部5の前面5aに対し、残りの前壁部分(右半部分)41aよりも前方に突出(膨出)している。また、膨出部分41a1の左端は、ファンハウジング32の第1の冷却風出口部32aに連通している。
【0039】
絞りガイド部41bは、前記第1の冷却風通路45の前端の入口開口部45aに略対応する位置に形成されると共に、右方に行くにつれてエンジン本体部5の前面5aに近づくように傾斜している。これにより、ファンハウジング32から膨出部分41a1に送られる冷却風を、第1の冷却風通路45の入口開口部45aへ強制的にガイドし、第1の冷却風通路45内に冷却風を供給するようになっている。絞りガイド部41bの傾斜角度θ2,すなわちクランク軸6の軸芯線O1と略平行な線Nに対する傾斜角度θ2は、該実施の形態では、40°乃至50°程度で形成されているが、15°乃至90°までの間の任意の角度に設定可能である。
【0040】
図3において、シュラウド41の上端の蓋部分41dは、シリンダヘッド3の前面の形状に対応する形状に形成されており、これにより、シュラウド41内の冷却風が上方に逃げるのを阻止している。またシュラウド41の前壁部分41aの膨出部分41a1は、図4のように、下方に行くにエンジ本体部4の前面に近づくように傾斜している。
【0041】
図5において、前記シュラウド41の右壁部分41cの取付部60は、ボルト65によりエンジン本体部5の右側面5cに取り付けられ、また、図4に示すようにシュラウド41の膨出部分41a1に形成された取付部61は、ボルト66により、ファンハウジング32と共にクランクケース1の側面に取り付けられている。
【0042】
[作用]
(1)エンジン運転中、図4のクランク軸6と一体的に冷却ファン31が回転することにより、冷却風が発生する。
【0043】
(2)ファンハウジング32で発生する冷却風の一部は、第1の冷却風出口部32aにおいてエンジン本体部5の左側面5bの前半部を冷却すると共に、シュラウド41の膨出部分41a1部内に送られる。ファンハウジング32内で発生する冷却風の残りは、第2の冷却風出口部32bにおいてエンジン本体部5の左側面5bの後半部を冷却すると共に、エンジン本体部5の後面5dに送られ、エンジン本体部5の後面5dを冷却する。
【0044】
(3)図5において、シュラウド41の膨出部分41a1に送られた冷却風は、傾斜面状の絞りガイド部41bにより、圧縮され、一部はシュラウド41の前壁部分(右側部分)41aに沿って右方に流れ、右壁部分41c内を通過して、エンジン本体部5の右側面5cへ供給される。前記絞りガイド部41bで圧縮された冷却風の残りは、入口開口部45aから第1の冷却風通路45内に送風される。
【0045】
(4)前端の入口開口部45aから第1の冷却風通路45に送風された冷却風は、両プッシュロッド挿通孔53,54の形成壁53a,54a間を通過して、両冷却風通路45,46の交差部分に至り、その大部分は、排気通路51の形成壁51a及び吸気通路52の形成壁52aに接触しつつ後方に流れ、排気通路51及び吸気通路52を冷却した後、点火プラグ23に供給される。そして、点火プラグ23を冷却して、後端の出口開口部45bから後方に排出される。
【0046】
(6)また、両冷却風通路45,46の交差部分に至った冷却風の一部は、排気通路51の形成壁51aを冷却しつつ、第2冷却風通路46の右側部分を右方に流れ、右端の出口開口部46aから排出される。一方、両冷却風通路45,46の交差部分から第2の冷却風通路46の左側部分を左方に流れようとする冷却風は、第2の冷却風通路46の左端に図10に示す第2ガスケット18の拡張部分18aが広がっていることにより、第2の冷却風通路46の左側部分への冷却風の流れが制限される。すなわち、吸気通路52の形成壁52a側への冷却風の流れが制限される。また、インシュレータ17自体も、前記第2ガスケット18と共に冷却風の逃げ量を制限している。
【0047】
[実施の形態の効果]
(1)冷却ファン31と、ファンハウジング32と、該ファンハウジング32内から排出される冷却風を、エンジン本体部5の外周面へ導くシュラウド41と、を備えたエンジンの冷却装置において、前記エンジン本体部5を構成するシリンダヘッド3には、該シリンダヘッド3内を貫通する冷却風通路44が形成され、前記シュラウド41には、前記ファンハウジング32内からの冷却風を、前記冷却風通路44の入口開口部45aへ導く絞りガイド部41bが形成されているので、シュラウド41により、冷却風をエンジン本体部5の外周面に沿って流すことにより、エンジン本体部5を外周から冷却すると共に、シリンダヘッド3内の冷却風通路44を流れる冷却風により、シリンダヘッド3内の各箇所を効果的に冷却できる。
【0048】
しかも、シュラウド41に形成した絞りガイド部41bにより、冷却風の一部を強制的に冷却風通路44内へ冷却風を送り込むことができるので、シリンダヘッド3内の各箇所の冷却性がさらに向上する。また、シリンダヘッド3内に冷却風通路44を形成することにより、シリンダヘッド3を軽量化することもできる。
【0049】
(2)冷却風通路44内を流れる冷却風は、シリンダヘッド3内で特に温度が高くなる排気通路51の形成壁51aに接触しているので、効率よく、排気通路51を冷却できる。
【0050】
(3)また、冷却風通路44は、該冷却風通路44を流れる冷却風が点火プラグ23に供給されるように構成されているので、排気通路51と共に温度が高くなりやすい点火プラグ23も、冷却風により局所的に、効率良く冷却できる。
【0051】
(4)冷却風通路44の第1の冷却風通路45は、吸気弁用プッシュロッド挿通孔54の形成壁54aと排気弁用プッシュロッド挿通孔53の形成壁53aとの間を通過するように形成されているので、前記形成壁53a,54a間の無駄な空間を冷却風通路44として有効利用でき、また、シリンダヘッド鋳造時、冷却風通路の形成も容易に行える。
【0052】
(5)前記冷却風通路44は、シリンダ中心線C1方向に見て、第1の冷却風通路45と第2の冷却風通路46とを略十字状に配置することにより構成されているので、シリンダヘッド3内を流れる冷却風による冷却面積が増え、シリンダヘッド3内を広範囲に亘って冷却でき、シリンダヘッド3内の冷却性が向上すると共に、シリンダヘッド3の更なる軽量かも達成できる。
【0053】
(6)略十字状に形成した冷却風通路44において、吸気通路52の入口(吸気ポート15)と同じ方向に開口する出口開口部46bは、吸気通路52の入口とキャブレギュレータ20との間に配置される一つの第2ガスケット18の拡張部18aにより、冷却風の逃げ量が制限されているので、吸気通路52側へ流れる冷却風を制限し、温度の高く成り易い排気通路51側への冷却風量を増やすことができ、シリンダヘッド3内全体で冷却効率が向上する。また、冷却風通路制限用の部材を第2ガスケット18で兼用しているので、新たに部材を設ける必要がない。
【0054】
(7)シュラウド41は、前記絞りガイド部41bよりも冷却風の流れの上流側に膨出部分41a1が形成され、前記エンジン本体部5の前面5aとの間隔が広くなっており、前記絞りガイド部41bは、前記冷却風通路44の入口開口部45a側に行くに従い前記エンジン本体部5の外周面に近づくように傾斜しているので、冷却風を強制送風して、かつ、効率良く、冷却風通路44に送り込むことができる。また、また、簡単な折り曲げ加工により、絞りガイド部41bを設けることができる。
【0055】
(7)シュラウド41の上端に、シリンダヘッド3の前面の形状に対応する形状の蓋部分41dを一体に形成し、冷却風がシュラウド41内から上方へ逃げるのを阻止しているので、冷却風によるエンジン本体部5の冷却効果並びに冷却風通路への冷却風の供給を、一層向上させることができる。
【0056】
[その他の実施の形態]
(1)前記実施の形態では、図8及び図10に示すように、インシュレータ17を挟む二つのガスケット16,18のうち、キャブレター側に配置された第2ガスケット18に拡張部18aを一体に形成し、該第2ガスケット18及びインシュレータ17により、第2の冷却風通路46の左端出口開口部46bからの冷却風の逃げ量を制限しているが、吸気ポート側に配置された第1ガスケット16(図8)に、図10のような拡張部を一体に形成することも可能である。また、インシュレータ17のみにより、第2の冷却風通路46の左端出口開口部46bからの冷却風の逃げ量を制限することも可能である。
【0057】
(2)吸気に燃料を供給する燃料供給装置として、前記実施の形態のようなキャブレターの他に、インジェクターを有するスロットルボディを備えたエンジンにも適用可能である。
【0058】
(3)本発明は、単気筒の傾斜シリンダ型エンジンには限定されず、シリンダ中心線が略鉛直な状態にシリンダが形成されたエンジンや、複数気筒エンジンにも適用可能である。
【0059】
(4)貫通する冷却風通路の形状は、略十字状には限定されず、単なる直線状、L字状、Y字状等とすることもできる。
【0060】
(5)本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 クランクケース
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
4 シリンダヘッドカバー
5 エンジン本体部(シリンダ2+シリンダヘッド3)
5a エンジン本体部の前面(外周面の一部)
5b エンジン本体部の左側面(外周面の一部)
5c エンジン本体部の右側面(外周面の一部)
5d エンジン本体部の後面(外周面の一部)
15 吸気ポート(吸気通路52の入口)
18 ガスケット
18a 拡張部
23 点火プラグ
31 冷却ファン
32 ファンハウジング
41 シュラウド
41a1 膨出部分
41b 絞りガイド部
44 冷却風通路
45 第1冷却風通路
46 第2冷却風通路
45a 入口開口部
51 排気通路
51a 排気通路の形成壁
52 吸気通路
52a 吸着通路の形成壁
53、54 プッシュロッド挿通孔
53a、54a プッシュロッド挿通孔の形成壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の一端部に固着された冷却ファンと、該冷却ファンを囲むファンハウジングと、該ファンハウジング内から排出される冷却風を、エンジン本体部の外周面へ導くシュラウドと、を備えたエンジンの冷却装置において、
前記エンジン本体部を構成するシリンダヘッドには、該シリンダヘッドの一つの側面から別の側面まで、シリンダヘッド内を貫通する冷却風通路が形成され、
前記シュラウドには、前記ファンハウジング内からの冷却風を、前記冷却風通路の前記一つの側面の入口開口部へ導く絞りガイド部が形成されている、ことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記冷却風通路は、前記シリンダヘッド内の排気通路の形成壁に接触し、あるいは前記形成壁の近傍を通過している、請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記冷却風通路は、該冷却風通路を流れる冷却風が点火プラグに供給されるように構成されている、請求項1又は2に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項4】
前記冷却風通路は、吸気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁と排気弁用プッシュロッド挿通孔の形成壁との間を通過するように形成されている、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のエンジンの冷却装置。
【請求項5】
前記冷却風通路は、シリンダ中心線方向に見て、略十字状に形成されている、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のエンジンの冷却装置。
【請求項6】
略十字状に形成された前記冷却風通路の三つの出口開口部のうち、吸気通路の入口と同じ方向に開口する出口開口部は、前記吸気通路の入口に配置されるガスケット及びインシュレータのいずれか一方、あるいは両方により、前記出口開口部からの冷却風の逃げ量が制限されている、請求項5に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項7】
前記シュラウドは、前記絞りガイド部よりも冷却風の流れの上流側部分が、冷却風の流れの下流側部分よりも、前記エンジン本体部の外周面との間隔が広くなっており、前記絞りガイド部は、前記冷却風通路の前記入口開口部側に行くに従い前記エンジン本体の外周面に近づくように傾斜している、請求項1乃至6のいずれか一つに記載のエンジンの冷却装置。
【請求項8】
前記シュラウドの上端には、前記エンジン本体部の外周面と前記シュラウドとの間の空間を上方から閉塞する蓋部分が形成されている、請求項1乃至7のいずれか一つに記載のエンジンの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−136971(P2012−136971A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288581(P2010−288581)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】