説明

エンジンの吸気活性化用布帛及び吸気活性化方法

【課題】吸気管系のどの部分にも容易に設置可能にすると共に、吸気に直接接触しなくても吸気を活性し燃費低減を可能にするエンジンの吸気活性化用布帛及び吸気活性化方法を提供することにある。
【解決手段】単糸繊度0.05〜7dtxのフィラメント繊維により粗さ5〜100メッシュの編物又は織物に編織された布帛からなり、該布帛の表面がNi、Co、Cr、Mo、W、Fe、Mn、Cu、Al、Au及び白金類から選ばれた金属により表面金属化されている吸気活性化用布帛を特徴とする。この布帛を吸気系の内壁又は外壁に貼り付けた状態にして、エンジンを運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの吸気活性化用布帛及び吸気活性化方法に関し、さらに詳しくは、吸気を活性化することにより燃費を低減し、エンジンの運転効率を向上させるエンジンの吸気活性化用布帛及び吸気活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や液化ガスを燃料として運転するエンジン(内燃機関)の排気ガスが地球温暖化の原因の一つと考えられているため排気ガス規制が厳しくなっており、特に日本を含めた先進諸国では、自動車から発生する排気ガスの規制が厳しく規制されるようになっている。
【0003】
従来、自動車の排気ガスを浄化する方法は多数提案されているが、そのほとんどの方法は、エンジンで燃焼後の排気ガスを触媒と接触させ、その排気ガス中の有毒ガスを無毒の気体に変換するというものである。すなわち、エンジンの吸気系に導入された空気は気化器で燃料と混合されて混合ガスになり、その混合ガスが燃焼室で爆発燃焼することにより排気ガスになるが、この排気ガス成分をセンサーで検知して、その検知情報に基づき混合ガスの空燃比が最適の無毒排気ガスを生ずるように制御するというものである。しかし、この方法で混合ガスを排気ガスの無毒化に最適な空燃比にするには、結局燃料の過給が要求されているため、燃費が上昇する結果になっていた。
【0004】
排気ガスの浄化機能を損なうことなくエンジンの燃費を節減する方法として、特許文献1は、吸気系に吸気した空気中に含まれる水蒸気及び炭酸ガスを金属触媒により部分的に解離することにより、エンジン内での熱解離負荷を軽減する方法を提案している。この方法は、金属を担体に担持させた積層体(鉄粉を分散させたシリコーンラバーとニッケルメッキ布の積層体)を吸気ダクトに配置するという方法であって、一応の効果は得られる。しかしながら、積層体の形態になっているため吸気ダクトに対する設置場所が制限される上に、また設置作業に非常な困難を伴うという問題があった。
【特許文献1】特開2001−234820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、吸気管系のどの部分にも容易に設置可能にすると共に、吸気に直接接触しなくても吸気を活性し燃費低減を可能にするエンジンの吸気活性化用布帛及び吸気活性化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジンの吸気活性化用布帛は、単糸繊度0.05〜7dtxのフィラメント繊維により粗さ5〜100メッシュの編物又は織物に編織された布帛からなり、該布帛の表面がNi、Co、Cr、Mo、W、Fe、Mn、Cu、Al、Au及び白金類から選ばれた金属により表面金属化されていることを特徴とするものである。
【0007】
好ましくは、前記フィラメント繊維が単糸繊度0.1〜2dtxの合成繊維又は金属繊維からなり、前記布帛の粗さが10〜30メッシュであって、前記金属がNi又はCoであるものがよい。
【0008】
また、本発明のエンジンの吸気活性化方法は、上記粗さ5〜100メッシュの吸気活性化用布帛をエンジンの吸気系の内壁又は外壁に貼り付けた状態にして、前記エンジンを運転することを特徴とするものである。好ましくは、上記気活性化用布帛をエンジンの吸気系の外壁に貼り付け、さらに該吸気活性化用布帛の上にヒーターと断熱材を被覆した状態にし、前記ヒーターで加熱・保温しながら前記エンジンを運転することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸気活性化用布帛は、単糸繊度0.05〜7dtexのフィラメント繊維からなり、粗さ5〜100メッシュの粗密度であるため高い可撓性を有するため、吸気系の外壁ばかりでなく、複雑な外壁のであっても容易に貼り付けることができ、かつ表面金属化されていることで吸気を活性化し、エンジンの燃費低減を達成することができる。
【0010】
本発明の吸気活性化用布帛による吸気活性化のメカニズムは必ずしも明確ではないが、吸気中のCO2 やH2 Oを部分的にラジカル化してエンジン内の反応を促進させるものと考えられ、それによって排気ガス規制をクリアするための燃料の過給を抑制し、燃料消費量を少なくできるのである。
【0011】
また、本発明の吸気活性化用布帛が、吸気系の外壁に貼るだけで吸気と直接接触することなく吸気の活性化ができるのは、布帛が比較的メッシュの粗い編織物で表面金属化されたものであるため、メッシュの隙間に磁界が発生して吸気管内部を通過する空気に作用するためと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、フィラメント繊維の繊維素材としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、アラミド繊維、炭素繊維のほか、鉄、アルミニウム、銅等の金属繊維を使用することが可能である。フィラメント繊維は、単糸繊度が0.05〜7dtx(デシテックス)のフィラメントで構成される。このフィラメント繊維には、通常の編織物に使用される繊維より細い単糸繊度のもが使われ、単糸繊度は細いほど好ましいが、耐久性や強度の点からは0.1〜2dtxが好ましい。
【0013】
フィラメント繊維は、上記のように細い単糸繊度のフィラメントが1本だけで編織物を形成してもよいが、2〜100本の複数本のマルチフィラメントにして使用してもよい。複数本のマルチフィラメントでフィラメント繊維を構成する場合には、その複数本のマルチフィラメントを撚り合わせて使用することが好ましい。また、このように片撚りを与えたマルチフィラメント束を、さらに複数本合糸し、上撚りを与えて撚り合わせるようにしたものであってもよい。
【0014】
本発明の布帛は、上述したフィラメント繊維を使用して編物に編製したものか、或いは織物に織製したものである。布帛の粗さとして、5〜100メッシュにしたものが使用される。メッシュとは、布帛の1インチ幅間に配置された糸条の本数である。通常の衣料用織物の粗さが180〜210メッシュであるので、本発明の布帛は比較的粗い布であることを特徴としている。好ましくは、粗さが10〜30メッシュであるものがよい。
【0015】
本発明の吸気活性化用布帛は、さらに布帛が表面金属化されている。表面金属化する金属としては、Ni、Co、Cr、Mo、W、Fe、Mn、Cu、Al、Au及び白金類から選ばれる。鉄(Fe)には、パーマロイ、アモルファス、硅素鋼などの合金も含まれる。これらの金属のうちでも、特にNi、Coが好ましい。
【0016】
表面金属化する方法としては無電解メッキ、電解メッキ、蒸着、スパッタリングなどいずれでもよいが、フィラメント繊維が合成繊維等の電気絶縁物は、無電解メッキが好ましい。また、フィラメント繊維が金属線又は金属繊維であって、その金属材料が、Ni、Co、Cr、Mo、W、Fe、Mn、Cu、Al、Au又は白金類である場合には、その表面に表面金属化処理を行っても、行わなくても良い。つまり、フィラメント繊維として鉄線或いは鉄繊維の織物を使用しているとき、ニッケル表面にすることが望まれる場合には表面をニッケルメッキすることもあるが、ニッケル線或いはニッケル繊維を使用しているときは、さらにニッケルメッキを施す必要はない。
【0017】
また、布帛の表面金属化の方法としては、布帛にしてからメッキしても、或いは編織前のフィラメント繊維を予めメッキしておき、このメッキ後のフィラメント繊維を編織するようにしてもよい。
【0018】
本発明のエンジンの吸気活性化方法は、上述した吸気活性化用布帛をエンジンの吸気系の内壁又は外壁に貼り付け、その状態でエンジンを運転することにより実施すればよい。布帛の貼り付けは、吸気系の内壁又は外壁に対して一部であってもよく、或いは全面であってもよい。貼り付ける布帛の面積は特に限定さるものではなく、20cm×20cmの布帛を吸気系の内壁又は外壁に貼り付ければ十分である。このように布帛を貼り付けたことにより、吸気系に吸引された空気を活性化し、それによって排気ガスを浄化するための空燃比を低減させ、燃料消費量を低減することができる。
【0019】
エンジンの燃焼室に通じる吸気通路としては、例えばエンジンのインテークマニホールドであるが、近年のインテークマニホールドはほとんど樹脂製であり、複雑な形状をしている。このようなインテークマニホールドに対して、布帛の貼り付け箇所は内壁であっても、外壁であってもよく、どの部分に貼り付けても良い。また、貼り付け方法は、必ずしも接着剤で密着させることを意味せず、壁面にほぼ接触する状態にすれば有効である。
【0020】
本発明の吸気活性化方法においては、上記布帛を吸気系の内壁に貼り付けた場合だけに限定されず、外壁に貼り付けた場合にも吸気の活性化を行うことができる。吸気系の外壁に布帛を貼り付ける場合は、さらに布帛の上にヒーターを配置し、さらにそのヒーターの上を断熱材でラッギングして、加熱と保温を行いながらエンジンを運転するようにするとよい。吸気の活性化は温度が低いと効果が低いので、このようにヒーター及び断熱材による補助を行うことにより吸気の活性作用を一層向上することができる。
【0021】
本発明の吸気活性化用布帛は、自動車メーカーにおけるエンジン組立工程で貼り付け装着を行っても良いが、自動車メーカーにおけるエンジン組立後に自動車販売のディラーや修理業者等が貼り付け装着を行うようにしてもよい。勿論、ユーザーが個人的に貼り付け装着を行うことも可能である。
【0022】
このような貼り付け作業をするとき、車種によってはエンジン部の空間が小さいものも多いが、本発明の布帛は、構成繊維として単糸繊度の小さいフィラメント繊維が使用されており、布帛の粗さが低メッシュであることにより高い可撓性を有しているので、布帛を変形自在に変形させることができるため、わずかな隙間であっても容易に貼り付けを行うことができる。
【実施例1】
【0023】
単糸繊度0.39dtxのポリエステルフィラメントを144本合わせたマルチフィラメントに下撚りを付与し、更に3本を上撚りして撚り合わせ(56T−144×3)、布帛用のフィラメント繊維を形成した。このフィラメント繊維を使用して粗さが18メッシュの編物を編成した。この編物を通常の無電解メッキ法によりニッケルメッキし、繊維表面に厚さ0.02〜0.04μmのニッケルをメッキした布帛を作成した。
【0024】
この布帛を5cm×9cmの大きさに切り出し、スポーツ車(“メルセデスベンツスポーツクーペC−180S”;ハイオクガソリン仕様)のエンジンの吸気ダクトの外壁に貼り付け、さらにヒーターを巻き付けると共に、表面をグラスウールでラッギングした。
【0025】
このように吸気ダクトに加工処理を行ったスポーツ車を市中道路及び高速道路でそれぞれ走行させて、単位燃料当たりの走行距離を測定した。その結果、市中道路の走行では12km/リットルであり、高速道路の走行では18km/リットルであった。
【0026】
比較例1
実施例1において、吸気ダクトの布帛を取り外した以外は実施例1と同様の走行実験を行った。
【0027】
その結果、市中道路の走行での走行距離は7km/リットルであり、高速道路の走行の走行距離は10km/リットルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度0.05〜7dtxのフィラメント繊維により粗さ5〜100メッシュの編物又は織物に編織された布帛からなり、該布帛の表面がNi、Co、Cr、Mo、W、Fe、Mn、Cu、Al、Au及び白金類から選ばれた金属により表面金属化されていることを特徴とするエンジンの吸気活性化用布帛。
【請求項2】
前記フィラメント繊維が単糸繊度0.1〜2dtxの合成繊維又は金属繊維であり、前記布帛の粗さが10〜30メッシュであって、前記金属がNi又はCoである請求項1に記載のエンジンの吸気活性化用布帛。
【請求項3】
前記表面金属化が無電解メッキ又は電解メッキにより形成されている請求項1又は2に記載のエンジンの吸気活性化用布帛。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の吸気活性化用布帛をエンジンの吸気系の内壁又は外壁に貼り付けた状態にして、前記エンジンを運転することを特徴とするエンジンの吸気活性化方法。
【請求項5】
請求項項1〜3のいずれかに記載のエンジンの吸気活性化用布帛をエンジンの吸気系の外壁に貼り付け、さらに該吸気活性化用布帛の上にヒーターと断熱材を被覆した状態にし、前記ヒーターで加熱・保温しながら前記エンジンを運転することを特徴とするエンジンの吸気活性化方法。

【公開番号】特開2008−144323(P2008−144323A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335339(P2006−335339)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(597013940)株式会社祥起 (5)
【Fターム(参考)】