説明

エンジンの排気装置

【課題】例えば自動車用エンジン、特に複数の気筒から排出される排気を排気マニホールドで集合させて下流側の排気管等に導く多気筒エンジンの排気装置に係り、排気マニホールドのエンジン側の端部での排気温度の低下を極力防止して排気浄化性能や排気浄化効率の優れたエンジンの排気装置を提供する。
【解決手段】排気マニホールド5のエンジン1側の端部をフランジ継手16を介してシリンダヘッド10に取付けることによって該シリンダヘッド10内の排気ポート3に上記排気マニホールド5を連通接続したエンジンの排気装置において、上記排気ポート3から上記排気マニホールド5内に至る排気通路内に、上記フランジ継手16の内周面を覆う排気案内筒体20を上記フランジ継手の内周面から離間させて設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等のエンジンの排気装置、特に複数の気筒から排出される排気を排気マニホールドで集合させて下流側の排気管等に導く多気筒エンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の気筒を有する多気筒エンジンにおいては、各気筒から排出される排気を排気マニホールドで集合させて、その下流側に接続した排気管を介して消音器等に導くのが一般的であり、上記のような排気マニホールドとしては下記特許文献1のように従来より鋳物製のものが多く用いられている。
【0003】
しかし最近、特に自動車用のエンジンにおいては、最近排ガス規制がますます厳しくなる傾向にあり、より優れた排ガスの浄化対策や後処理等が要求されている。例えば選択還元型NOx触媒や酸化触媒等を用いた触媒コンバータ等による効率的な浄化対策や、ディーゼルエンジンにあっては、DPF(ディーゼル微粒子除去装置)による炭素を主成分とした粒子状物質(PM)のより効果的な除去が求められている。
【0004】
上記のような浄化対策や後処理等を効率よく行うためには、多くの熱エネルギーが必要で、特にエンジンから出た排気は上記の触媒コンバータやDPFに至るまでの間に極力温度が低下しないようにするのが望ましい。ところが、前記のような鋳物製の排気マニホールドは重量が重く、ヒートマスも高い。そのため、排気マニホールド内を排気が通過する過程で多量の熱が奪われて排気温度が低下しやすい。
【0005】
そこで下記特許文献2のように排気マニホールドを内外二重に形成することによって、上記マニホールド内を流れる排気温度の低下を極力防止することが提案されているが、上記排気マニホールドのエンジン側の端部は、一般にそれと一体的に設けた肉厚の金属製フランジ継手を介してボルト等でエンジンに取付けるのが一般的であり、上記エンジンからマニホールドに流入する際の排気の一部が上記フランジ継手の内周面に直接もしくは殆ど直接的に接触して排気温度が低下する不具合があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−83048号公報
【特許文献2】特開平8−338240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案したもので、排気マニホールドのエンジン側の端部での排気温度の低下を極力防止して排気浄化性能や排気浄化効率の優れたエンジンの排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明によるエンジンの排気装置は以下の構成としたものである。すなわち、排気マニホールドのエンジン側の端部をフランジ継手を介してシリンダヘッドに取付けることによって該シリンダヘッド内の排気ポートに上記排気マニホールドを連通接続したエンジンの排気装置において、上記排気ポートから上記排気マニホールド内に至る排気通路内に、上記フランジ継手の内周面を覆う排気案内筒体を上記フランジ継手内周面から離間させて設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように排気ポートから排気マニホールド内に至る排気通路内にフランジ継手の内周面を覆う排気案内筒体をフランジ継手内周面から離間させて設けたことによって、上記エンジンからマニホールドに流入する際の排気の一部が前記従来のようにフランジ継手の内周面に直接もしくはほぼ直接接触して上記端部で排気温度が低下するのを極力防止することができる。その結果、排気マニホールドの下流側に配置される触媒コンバータやDPF等に比較的高い温度状態で排気が導入されて効率よく且つ良好に排気浄化を行うことが可能となるもので、排気浄化性能や排気浄化効率の優れたエンジンの排気装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明によるエンジンの排気装置の一実施形態を示す斜視図、図2は図1におけるA−A拡大断面図、図3はその一部の拡大図である。
【0011】
本実施形態は自動車用多気筒エンジン、特に直列6気筒のディーゼルエンジン1の排気装置に適用したもので、各気筒の燃焼室2からそれぞれ2つの排気バルブ3・3を介して排気ポート4に排出された排気を、排気マニホールド5で集合させた後、その排気マニホールド5の下流側に接続した排気管6を介して図に省略した消音器等に導く構成である。上記排気管6の下流側には触媒コンバータやDPFも設けられているが図には省略した。図中、8は吸気バルブ、9は吸気ポート、10はシリンダヘッド、11はシリンダ、12はピストンである。
【0012】
上記の排気マニホールド5は、本実施形態においては、その略全長にわたって内外二重に形成したもので、特に図の場合は枝状の内管51と、それを覆う外管52とで内外二重に形成し、その内管51と外管52との間に所定間隔の断熱空間(空気断熱層)Sを形成したものである。なお、上記内管51および外管52は必ずしも厳密に管状である必要はなく、例えば断面半円形の一対の半割状のものを互いに向かい合わせて管状をなすようにしたものでもよい。図中、15は上記排気マニホールド5の熱による膨張収縮や振動を吸収するためのベローズ管等よりなる可撓管で、その可撓管15も内外二重に形成されているが図には省略した。
【0013】
上記の内外管51・52よりなる排気マニホールド5の上流側の端部、すなわちエンジン1側の端部は、図2および図3に示すように内管51を拡径加工もしくは外管52を縮径加工して内外管51・52の端部51a・52aが互いに重なるようにすると共に、その重なり部の外側にリング状の厚手の金属板よりなるフランジ継手16を嵌合して溶接等で一体的に固着した構成であり、そのフランジ継手16を上記エンジン1のシリンダヘッド10にスタットボルト17やナット18等で連結固定することによって、前記各気筒の排気ポート4が上記排気マニホールド5に連通接続されている。
【0014】
そして本発明は図2および図3に示すように上記排気ポート4から排気マニホールド5内に至る排気通路内に、上記フランジ継手16の内周面を覆う排気案内筒体20を上記フランジ継手16の内周面から離間させて設けたもので、その排気案内筒体20の長さは適宜であるが、本実施形態においては上記フランジ継手16の内周面と、その両側の内管51の上流側端部51aおよび排気ポート4の下流側端部の一部を覆う長さに形成されている。
【0015】
上記排気案内筒体20の取付手段は適宜であるが、例えば該筒体20の下流側の端部を排気マニホールド5に溶接等で固着するとよく、図の場合は内外二重に形成した排気マニホールド5の内管51のエンジン側の端部内周面に排気案内筒体20の下流側の端部20aをスポット溶接等で固着した構成である。その排気案内筒体20の上流側の端部20bは、図の場合はフランジ継手16の内方を通って排気ポート4内に突出させた構成であり、その排気案内筒体20とフランジ継手16および排気ポート4とは互いに所定の間隔をおいて離間させることによって非接触の状態にある。
【0016】
なお、上記排気案内筒体20の排気ポート11側の端部20bは、必要に応じてなだらかなラッパ状に拡開させるとよく、図の場合は排気案内筒体20の排気ポート4側の端部を半径方向外方になだらかに湾曲する曲面に形成すると共に、その先端部を上記排気案内筒体20と同心状の略円筒面で切断した構成である。その場合にも排気案内筒体20の排気ポート4側の端部20bは排気ポート4の内面に接触しないようにするのが望ましい。
【0017】
図中、21・22は排気マニホールド5と排気管6とを接続するフランジ継手で、その各フランジ継手21・22はそれぞれ排気マニホールド5および排気管6の端部に溶接等で一体的に固着され、その両継手21・22はボルト・ナットで連結されるが図には省略した。また上記排気管6も本実施形態においては内外管で内外二重に形成されている。
【0018】
上記の構成において、エンジン1の運転時に各気筒の燃焼室2から排気バルブ3を介して排気ポート4に流入した排気は、排気案内筒体20内に導かれる。その際、上記排気案内筒体20の上流側の端部、すなわち排気ポート11側の端部20aを、前記のようになだらかなラッパ状に拡開させると、上記排気案内筒体20内に排気を円滑に流入させることができる。そして、上記排気案内筒体20内に流入した排気は、該筒体20内を通って排気マニホールド5内に導かれ、そのとき、排気はフランジ継手16には直接はもとより間接的にも殆ど接触することがないので排気温度の低下が抑制される。
【0019】
特に、図の実施形態においては、内外管51・52で内外二重に形成された排気マニホールド5の上記内管51の極く一部に上記排気案内筒体20の一端が接触するだけで、それ以外は上記排気案内筒体20はフランジ継手16はもとより上記外管52と排気ポート4とも非接触であるので、排気温度の低下を大幅に抑制できるものである。
【0020】
なお、上記実施形態は、フランジ継手16の内周面を覆う排気案内筒体20を排気マニホールド5とは別体に形成したが、図示例のように排気マニホールド5を内管51と外管52とで内外二重に形成したものにあっては、その内管51のエンジン側の端部を、例えば図4に示すように排気ポート4内に延長突出51bさせることによって、その延長突出部51bが上記排気案内筒体20を兼ねるようにしてもよい。すなわち、上記延長突出51bが上記フランジ継手16の内周面から離間した状態で該フランジ継手16の内周面を覆うようにしてもよい。
【0021】
上記のように構成することによって、前記実施形態のように排気案内筒体20を別途設けることなく、上記延長突出部51bが前記排気案内筒体20と同様の機能を発揮して排気温度の低下を防止することができるものである。なお、この場合にも排気案内筒体20を兼ねる内管51の延長突出部51bの上流側の端部51cを前記排気案内筒体20の上流側の端部20bと同様になだらかなラッパ状に拡開させると、上記排気ポート4から内管51内に排気を円滑に流入させることができる。図中、53は上記内管51と外管52とを所定の間隔に保持するリング状の間隔保持スペーサである。
【0022】
上記のようにして排気案内筒体20もしくは排気案内筒体20を兼ねる内管51の延長突出部51bを介して排気マニホールド5内に導入された排気は、引き続き排気管6を経て図に省略した触媒コンバータやDPFに導かれて触媒による浄化や粒子状物質の除去等がなされるもので、その際、上記のように排気温度の低下が抑制されて比較的高い温度で触媒コンバータやDPFに導かれるので効率よく浄化処理等を行うことができる。特に、選択還元型NOx触媒や酸化触媒等は従来の比較的低い排気温度では必ずしも充分な浄化処理ができなかったが、本発明においては上記のような構成とすることによって排気温度を極力高温に維持することができるので上記のような触媒を有効に使用できると共に、DPFを用いるものにあっては、極力高い排気温度で効率よく粒子状物質等を除去できるものである。
【0023】
なお、上記各実施形態は、排気マニホールド5から排気管6を介して触媒コンバータやDPFに排気を導く場合を例にして説明したが、上記排気管6を介することなく上記排気マニホールド5から触媒コンバータやDPFに直接あるいは消音器等を介して導く構成のものにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明によるエンジンの排気装置によれば、エンジンから出る排気の温度が極力低下することなく触媒コンバータやDPF等に導くことが可能となり、排気の浄化処理や粒子状物質の除去等を効率よく行うことができる。その結果、排気温度を高めるために別途加熱手段や熱エネルギーを用いることなく比較的高い排気温度が得られ、最近ますます厳しくなる傾向にある排ガス規制にも容易・安価に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるエンジンの排気装置の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1におけるA−A拡大断面図。
【図3】図2の一部の拡大図。
【図4】本発明によるエンジンの排気装置の他の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 燃焼室
3 排気バルブ
4 排気ポート
5 排気マニホールド
51 内管
52 外管
6 排気管
8 吸気バルブ
9 吸気ポート
10 シリンダヘッド
11 シリンダ
12 ピストン
15 可撓管
16 フランジ継手
17 スタットボルト
18 ナット
20 排気案内筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気マニホールドのエンジン側の端部をフランジ継手を介してシリンダヘッドに取付けることによって該シリンダヘッド内の排気ポートに上記排気マニホールドを連通接続したエンジンの排気装置において、上記排気ポートから上記排気マニホールド内に至る排気通路内に、上記フランジ継手の内周面を覆う排気案内筒体を上記フランジ継手内周面から離間させて設けたことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項2】
上記排気マニホールドを内管と外管とで内外二重に形成し、その内管内から排気ポート内に至る排気通路内に上記排気案内筒体を設けてなる請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項3】
上記排気マニホールドを内管と外管とで内外二重に形成し、その内管のエンジン側の端部を排気ポート内に延長突出させることによって、その延長突出部が上記排気案内筒体を兼ねるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278156(P2007−278156A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104859(P2006−104859)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】