説明

エンジン

【課題】シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差を低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを防止することができるエンジンを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダブロック6及びオイルパン10が互いに熱膨張率の異なる材料(シリンダブロック6が鋳鉄、オイルパン10がアルミニウム)で構成され、ギヤケース8とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第一の三面合わせ部34が形成され、フライホイールハウジング9とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第二の三面合わせ部35が形成されるエンジン1において、フライホイールハウジング9の前面(クランク軸7方向一側面)には、フライホイール16が回転することにより発生する冷却風が、第一及び第二の三面合わせ部34・35に向かって流れる通風孔91が形成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クランク軸と、クランク軸を回転可能に軸支するシリンダブロックと、シリンダブロックのクランク軸方向一側面に設けられるギヤケースと、シリンダブロックのクランク軸方向他側面に設けられるフライホイールハウジングと、フライホイールハウジングで覆われ、クランク軸と一体的に回転するフライホイールと、シリンダブロックの下面に設けられ、潤滑油が貯溜されるオイルパンと、を備えるエンジンが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。このようなエンジンでは、ギヤケースとシリンダブロックとオイルパンとが合わさって第一の三面合わせ部が形成されると共に、フライホイールハウジングとシリンダブロックとオイルパンとが合わさって第二の三面合わせ部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記エンジンにおいては、シリンダブロック及びオイルパンが互いに熱膨張率の異なる材料(例えば、シリンダブロックが鋳鉄、オイルパンがアルミニウム)で構成される場合、燃焼によるエンジンの温度上昇に伴ってシリンダブロックとオイルパンとの間に大きな熱膨張差が生じ、三面合わせ部から潤滑油が漏れやすい、という問題があった。この要因の一つとして、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差によって、三面合わせ部を密閉する液状ガスケット等のシール剤が切断されて、三面合わせ部に隙間が生じたことが考えられる。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差を低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを防止することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、請求項1においては、シリンダブロックと、前記シリンダブロックに回転可能に軸支されるクランク軸と、前記シリンダブロックの前記クランク軸方向一側面に設けられるギヤケースと、前記シリンダブロックの前記クランク軸方向他側面に設けられるフライホイールハウジングと、前記フライホイールハウジングで覆われ、前記クランク軸と一体的に回転するフライホイールと、前記シリンダブロックの下面に設けられ、潤滑油が貯溜されるオイルパンと、を備え、前記シリンダブロック及び前記オイルパンが互いに熱膨張率の異なる材料で構成され、前記ギヤケースと前記シリンダブロックと前記オイルパンとが合わさって第一の三面合わせ部が形成され、前記フライホイールハウジングと前記シリンダブロックと前記オイルパンとが合わさって第二の三面合わせ部が形成されるエンジンにおいて、前記フライホイールハウジングの前記クランク軸方向一側面には、前記フライホイールが回転することにより発生する冷却風が、前記第一及び第二の三面合わせ部に向かって流れる通風孔が形成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記フライホイールには、送風用のフィンが設けられるものである。
【0009】
請求項3においては、前記通風孔は、前記シリンダブロック下部の高さの位置に配置されるものである。
【0010】
請求項4においては、前記フィンは、前記フライホイールの外周に設けられるものである。
【0011】
請求項5においては、前記フライホイールは、内輪と、前記内輪の外周に所定間隔をあけて配置される外輪と、を有し、前記フィンは、前記内輪の外周面と前記外輪の内周面とを連結するように設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、フライホイールの回転により発生する冷却風が、通風孔を流れてフライホイールハウジング側からシリンダブロック側に流れることにより、シリンダブロック及びオイルパンが冷却される。これにより、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差を低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを防止することができる。
【0014】
請求項2においては、送風用のフィンがあることで、フライホイールの回転により発生する冷却風の送風量が増加する。これにより、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差をさらに低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3においては、通風孔を通った冷却風がシリンダブロック下部のオイルパンとの合わせ面付近を流れることにより、大きな熱膨張差が生じやすい合わせ目付近が重点的に冷却される。これにより、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差をさらに低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0016】
請求項4においては、フライホイールの外周とフライホイールハウジングの内周との隙間に、フィンがコンパクトに配置される。これにより、フィンを設けることによるフライホイールハウジングの大型化ひいてはエンジン全体の大型化を回避することができる。
【0017】
請求項5においては、フィンがフライホイール内に構成されることで、フライホイールの回転により発生する冷却風が通風孔内に直接的に流れ込むため、冷却風の流れがスムーズになる。これにより、フライホイールの回転により発生する冷却風の送風量が増加するため、シリンダブロックとオイルパンとの間の熱膨張差をさらに低減して、三面合わせ部からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係るエンジンを示す側面図。
【図2】(a)本発明の第一実施形態に係るエンジンを簡略的に示す平面図。(b)本発明の第一実施形態に係るエンジンを簡略的に示す背面断面図。
【図3】(a)第一の三面合わせ部を簡略的に示す側面図。(b)第二の三面合わせ部を簡略的に示す側面図。
【図4】フライホイールハウジングに形成される通風孔を示す斜視図。
【図5】フライホイールハウジングに形成される通風孔を示す側面断面図。
【図6】(a)本発明の第一実施形態に係るフィンを示す背面図。(b)本発明の第一実施形態に係るフィンを示す斜視図。
【図7】(a)本発明の第二実施形態に係るフィンを示す背面図。(b)(a)におけるA−A位置での断面図。
【図8】フライホイールハウジングに形成される通風孔を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0020】
先ず、本発明の第一実施形態に係るエンジン1の全体構成について、図1から図3により説明する。なお、以下の説明では、エンジン1のクランク軸7方向を前後方向として、図1の矢印Uで示す方向を「上方」、矢印Fで示す方向を「前方」、図2の矢印Lで示す方向を「左方」という。また、図2において、白塗り矢印は、空気又は混合気の流れを示し、黒塗り矢印は、排気の流れを示す。
【0021】
図1及び図2に示すように、エンジン1は、エンジン主体部2、吸気通路部3、排気通路部4及び冷却ファン5等で構成される。本実施形態に係るエンジン1は、空気と可燃性ガス(例えば、天然ガス、都市ガス等)とを混合して混合気を作成し、この混合気を燃焼させることによって運転するエンジン、いわゆるガスエンジンである。
【0022】
エンジン主体部2は、シリンダブロック6、クランク軸7、ギヤケース8、フライホイールハウジング9、オイルパン10、及びシリンダヘッド11等で構成される。
【0023】
シリンダブロック6内には、本実施形態では四つのシリンダ12が直列に配置される。シリンダ12内には、ピストン13が摺動可能に設けられる。また、シリンダブロック6内には、クランク軸7が前後方向に架設される。
【0024】
クランク軸7は、シリンダブロック6に回転可能に軸支されると共に、コネクティングロッド14を介してピストン13と連接されており、ピストン13の往復動がコネクティングロッド14を介してクランク軸7の回転運動に変換される。
クランク軸7の前端部は、ギヤケース8の前面から突出すると共に、クランク軸7の前端部には、クランクプーリ15が設けられる。
クランク軸7の後端部は、シリンダブロック6の後面から突出すると共に、クランク軸7の後端部には、フライホイール16が設けられる。
【0025】
フライホイール16は、フライホイールハウジング9で覆われ、クランク軸7と一体的に回転する。フライホイール16の外周には、詳しくは後述する送風用のフィン19が設けられる。また、フライホイール16の前面には、リングギヤ17が設けられる。リングギヤ17は、スタータ18の図示しないギヤと噛合されており、エンジン1を始動させる際に、図示しないバッテリーの電力によってスタータ18が駆動すると、リングギヤ17を介してクランク軸7が回転する。
【0026】
ギヤケース8は、シリンダブロック6の前面に設けられる。ギヤケース8は、クランク軸7の動力によって回転する図示しない各種のギヤを覆う。
【0027】
フライホイールハウジング9は、シリンダブロック6の後面に設けられる。フライホイールハウジング9は、その後面が開口するように形成されると共に、フライホイールハウジング9の前面には、フライホイール16が回転することにより発生する冷却風が、第一及び第二の三面合わせ部34・35に向かって流れる詳しくは後述する通風孔91が形成される。
【0028】
オイルパン10は、シリンダブロック6の下面に設けられる。オイルパン10には、潤滑油が貯溜される。なお、オイルパン10内の潤滑油は、図示しない潤滑油ポンプによってシリンダブロック6、ギヤケース8等に送油される。
【0029】
シリンダヘッド11は、シリンダブロック6の上面に設けられる。シリンダヘッド11とピストン13との間には、燃焼室20が形成される。また、シリンダヘッド11には、燃焼室20に混合気を吸入する吸気ポート111、及び燃焼室20から排出された排気を排出する排気ポート112が形成される。さらに、シリンダヘッド11には、混合気に点火する点火プラグ21、吸気ポート111を開閉する吸気バルブ22、及び排気ポート112を開閉する排気バルブ23が設けられる。
【0030】
吸気通路部3には、吸気上流側から順に、エアクリーナ24、吸気管25、ミキサ26、及び吸気マニホールド27が設けられる。
【0031】
吸気通路部3において、吸気管25の吸気上流側端部には、エアクリーナ24が接続されており、外部から吸入される空気がエアクリーナ24によって濾過される。また、吸気管25の吸気下流側端部には、ミキサ26を介して吸気マニホールド27が接続される。吸気マニホールド27は、各燃焼室20に向けて分岐するように形成されると共に、吸気ポート111を介して各燃焼室20と連通される。これにより、エアクリーナ24で濾過された空気が吸気管25によってミキサ26に案内され、この空気と可燃性ガスとがミキサ26によって混合されて混合気が作成される。そして、ミキサ26で作成された混合気は、吸気マニホールド27によって各燃焼室20に分配される。
【0032】
排気通路部4には、排気上流側から順に、排気マニホールド28、排気管29及び排気浄化装置30が設けられる。
【0033】
排気通路部4において、排気管29の排気下流側端部には、排気浄化装置30が接続される。また、排気管29の排気上流側端部には、排気マニホールド28が接続される。排気マニホールド28は、各燃焼室20に向けて分岐するように形成されると共に、排気ポート112を介して各燃焼室20と連通される。これにより、各燃焼室20から排出された排気が排気マニホールド28によって集合される。そして、排気マニホールド28で集合された排気は、排気管29によって排気浄化装置30に案内され、排気浄化装置30によって浄化されて外部に排出される。
【0034】
冷却ファン5は、図示しないラジエータに冷却風を送風する。冷却ファン5は、ファンプーリ31が設けられるファン軸32を有する。ファンプーリ31及びクランクプーリ15には、ベルト33が巻かれており、クランク軸7の動力がクランクプーリ15、ベルト33、ファンプーリ31を経てファン軸32に伝達されることにより、冷却ファン5が駆動される。
【0035】
なお、本実施形態に係るエンジン1は、ガスエンジンであるが、本発明にはこれに限定されない。例えば、エンジンは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンであってもよい。
【0036】
また、本実施形態に係るエンジン1は、直列四気筒エンジンであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、エンジンは、直列六気筒エンジンやV形エンジンであってもよい。
【0037】
ここで、エンジン1においては、シリンダブロック6及びオイルパン10は、互いに熱膨張率の異なる材料で構成される。本実施形態では、シリンダブロック6が鋳鉄、オイルパン10がアルミニウムで構成される。なお、アルミニウムの熱膨張率は、鋳鉄の熱膨張率よりも大きい。また、エンジン1においては、ギヤケース8とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第一の三面合わせ部34が形成されると共に、フライホイールハウジング9とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第二の三面合わせ部35が形成される。
【0038】
具体的には、図3(a)に示すように、第一の三面合わせ部34は、ギヤケース8の後面とシリンダブロック6の前面とオイルパン10の上面とが合わさって形成される。つまり、第一の三面合わせ部34は、ギヤケース8の後面とシリンダブロック6の前面との合わせ面をオイルパン10の上面が跨ぐように形成される。また、第一の三面合わせ部34は、液状ガスケット36等のシール剤で密閉されており、液状ガスケット36によって第一の三面合わせ部34からの潤滑油漏れを防止している。
【0039】
また、図3(b)に示すように、第二の三面合わせ部35は、フライホイールハウジング9の前面とシリンダブロック6の下面とオイルパン10の上面とが合わさって形成される。つまり、第二の三面合わせ部35は、シリンダブロック6の下面とオイルパン10の上面との合わせ面をフライホイールハウジング9の前面が跨ぐように形成される。また、第二の三面合わせ部35は、液状ガスケット36等のシール剤で密閉されており、液状ガスケット36によって第二の三面合わせ部35からの潤滑油漏れを防止している。
【0040】
なお、本実施形態では、シリンダブロック6が鋳鉄、オイルパン10がアルミニウムで構成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、シリンダブロックがアルミニウム、オイルパンが鋳鉄で構成されてもよい。
【0041】
また、本実施形態に係る第一の三面合わせ部34は、ギヤケース8の後面とシリンダブロック6の前面とオイルパン10の上面とが合わさって形成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一の三面合わせ部は、ギヤケースの後面とシリンダブロックの下面とオイルパンの上面とが合わさって形成されてもよい。つまり、第一の三面合わせ部は、シリンダブロックの下面とオイルパンの上面との合わせ面をギヤケースの後面が跨ぐように形成されてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係る第二の三面合わせ部35は、フライホイールハウジング9の前面とシリンダブロック6の下面とオイルパン10の上面とが合わさって形成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、第二の三面合わせ部は、フライホイールハウジングの前面とシリンダブロックの後面とオイルパンの上面とが合わさって形成されてもよい。つまり、第二の三面合わせ部は、フライホイールハウジングの前面とシリンダブロックの後面との合わせ面をオイルパンの上面が跨ぐように形成されてもよい。
【0043】
次に、通風孔91及びフィン19について、図4から図6により説明する。なお、図4及び図5における白塗り矢印は、冷却風の流れを示す。
【0044】
図4及び図5に示すように、通風孔91は、円形断面形状に形成される。本実施形態では、フライホイールハウジング9の外周側の前面には、二つの通風孔91が形成される。本実施形態に係る通風孔91は、その軸心がクランク軸7と略平行となるように配置されており、通風孔91を通った風がシリンダブロック6の表面に沿って流れるようにしている。また、通風孔91は、シリンダブロック6下部の高さ(クランク軸7と略同じ高さ)の位置に配置される。本実施形態に係る通風孔91は、フライホイールハウジング9前面の右側(クランク軸7直交方向において吸気マニホールド27側)に配置される。
【0045】
なお、本実施形態に係る通風孔91は、二つであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、通風孔は、一つ又は三つ以上であってもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る通風孔91は、フライホイールハウジング9前面の右側(クランク軸7直交方向において吸気マニホールド27側)に配置されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、通風孔は、フライホイールハウジング9前面の左側(クランク軸7直交方向において排気マニホールド28側)に配置されてもよく、又は、フライホイールハウジング9前面の左右両側に配置されてもよい。
【0047】
また、本実施形態に係る通風孔91は、その軸心がクランク軸7と略平行となるように配置されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、通風孔をクランク軸7方向に対して前方斜め下方に傾斜するように配置して、通風孔を通った冷却風がシリンダブロック6下部のオイルパン10との合わせ面付近を流れることにより、大きな熱膨張差が生じやすい合わせ目付近が重点的に冷却されるようにしてもよい
【0048】
図5及び図6に示すように、フィン19は、フライホイール16の外周に設けられる。具体的には、フィン19は、板状部材で構成され、複数のフィン19がフライホイール16の外周に放射状に立設される。フィン19は、フライホイール16の中心を基準に等角度間隔で配置されており、フライホイール16の回転により均一な冷却風が発生するようにしている。また、フィン19は、フライホイール16の厚さ(クランク軸7方向の長さ)内に収まるように構成されており、フィン19がコンパクトに配置されるようにしている。
【0049】
すなわち、シリンダブロック6と、シリンダブロック6に回転可能に軸支されるクランク軸7と、シリンダブロック6の前面(クランク軸7方向一側面)に設けられるギヤケース8と、シリンダブロック6の後面(クランク軸7方向他側面)に設けられるフライホイールハウジング9と、フライホイールハウジング9で覆われ、クランク軸7と一体的に回転するフライホイール16と、シリンダブロック6の下面に設けられ、潤滑油が貯溜されるオイルパン10と、を備え、シリンダブロック6及びオイルパン10が互いに熱膨張率の異なる材料(シリンダブロック6が鋳鉄、オイルパン10がアルミニウム)で構成され、ギヤケース8とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第一の三面合わせ部34が形成され、フライホイールハウジング9とシリンダブロック6とオイルパン10とが合わさって第二の三面合わせ部35が形成されるエンジン1において、フライホイールハウジング9の前面(クランク軸7方向一側面)には、フライホイール16が回転することにより発生する冷却風が、第一及び第二の三面合わせ部34・35に向かって流れる通風孔91が形成されるものである。
【0050】
このような構成により、フライホイール16の回転により発生する冷却風が、通風孔91を流れてフライホイールハウジング9側からシリンダブロック6側に流れることにより、シリンダブロック6及びオイルパン10が冷却される。これにより、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差を低減して、第一及び第二の三面合わせ部34・35からの潤滑油漏れを防止することができる。つまり、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差によって、第一及び第二の三面合わせ部34・35を密閉する液状ガスケット36等のシール剤が切断されず、第一及び第二の三面合わせ部34・35に隙間が生じることがない。
【0051】
そして、通風孔91は、シリンダブロック6下部の高さの位置に配置されるものである。
【0052】
このような構成により、通風孔91を通った冷却風がシリンダブロック6下部のオイルパン10との合わせ面付近を流れることにより、大きな熱膨張差が生じやすい合わせ目付近が重点的に冷却される。これにより、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差をさらに低減して、第一及び第二の三面合わせ部34・35からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0053】
また、フライホイール16には、送風用のフィン19が設けられるものである。
【0054】
このような構成により、送風用のフィン19があることで、フライホイール16の回転により発生する冷却風の送風量が増加する。これにより、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差をさらに低減して、第一及び第二の三面合わせ部34・35からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0055】
さらに、フィン19は、フライホイール16の外周に設けられるものである。
【0056】
このような構成により、フライホイール16の外周とフライホイールハウジング9の内周との隙間に、フィン19がコンパクトに配置される。これにより、フィン19を設けることによるフライホイールハウジング9の大型化ひいてはエンジン1全体の大型化を回避することができる。
【0057】
次に、本発明の第二実施形態に係るエンジンについて、図7及び図8により説明する。第二実施形態に係るエンジンにおいては、フィン19Aがフライホイール16A内に構成される点で、フィン19がフライホイール16の外周に設けられる第一実施形態に係るエンジン1と相違する。
【0058】
具体的には、フライホイール16Aは、内輪161と、内輪161の外周に所定間隔をあけて配置される外輪162と、を有する。フライホイール16Aは、内輪161を介してクランク軸7に取り付けられる。フィン19Aは、板状部材で構成され、複数のフィン19Aが内輪161の外周面と外輪162の内周面とを連結するように設けられる。フィン19Aは、フライホイール16Aの中心を基準に等角度間隔で配置されており、フライホイール16Aの回転により均一な冷却風が発生するようにしている。また、フィン19Aは、フライホイール16Aの厚さ(クランク軸7方向の長さ)内に収まるように構成されており、フィン19Aがコンパクトに配置されるようにしている。
【0059】
すなわち、フライホイール16Aには、送風用のフィン19Aが設けられるものである。
【0060】
このような構成により、送風用のフィン19Aがあることで、フライホイール16Aの回転により発生する冷却風の送風量が増加する。これにより、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差をさらに低減して、第一及び第二の三面合わせ部34・35からの潤滑油漏れを確実に防止することができる。
【0061】
また、フライホイール16Aは、内輪161と、内輪161の外周に所定間隔をあけて配置される外輪162と、を有し、フィン19Aは、内輪161の外周面と外輪162の内周面とを連結するように設けられるものである。
【0062】
このような構成により、フィン19Aがフライホイール16A内に構成されることで、フライホイール16Aの回転により発生する冷却風が通風孔91内に直接的に流れ込むため、冷却風の流れがスムーズになる。これにより、フライホイール16Aの回転により発生する冷却風の送風量が増加するため、シリンダブロック6とオイルパン10との間の熱膨張差をさらに低減して、第一及び第二の三面合わせ部34・35からの潤滑油漏れを防止することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン
6 シリンダブロック
7 クランク軸
8 ギヤケース
9 フライホイールハウジング
10 オイルパン
16 フライホイール
16A フライホイール
19 フィン
19A フィン
34 第一の三面合わせ部
35 第二の三面合わせ部
91 通風孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックと、
前記シリンダブロックに回転可能に軸支されるクランク軸と、
前記シリンダブロックの前記クランク軸方向一側面に設けられるギヤケースと、
前記シリンダブロックの前記クランク軸方向他側面に設けられるフライホイールハウジングと、
前記フライホイールハウジングで覆われ、前記クランク軸と一体的に回転するフライホイールと、
前記シリンダブロックの下面に設けられ、潤滑油が貯溜されるオイルパンと、を備え、
前記シリンダブロック及び前記オイルパンが互いに熱膨張率の異なる材料で構成され、
前記ギヤケースと前記シリンダブロックと前記オイルパンとが合わさって第一の三面合わせ部が形成され、
前記フライホイールハウジングと前記シリンダブロックと前記オイルパンとが合わさって第二の三面合わせ部が形成されるエンジンにおいて、
前記フライホイールハウジングの前記クランク軸方向一側面には、前記フライホイールが回転することにより発生する冷却風が、前記第一及び第二の三面合わせ部に向かって流れる通風孔が形成されることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記フライホイールには、送風用のフィンが設けられることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記通風孔は、前記シリンダブロック下部の高さの位置に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記フィンは、前記フライホイールの外周に設けられることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記フライホイールは、内輪と、前記内輪の外周に所定間隔をあけて配置される外輪と、を有し、
前記フィンは、前記内輪の外周面と前記外輪の内周面とを連結するように設けられることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225281(P2012−225281A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94478(P2011−94478)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】