説明

エンドレスベルト、定着装置、及び画像形成装置

【課題】複雑なシステムを要せず、エンドレスベルトの片側又は両側の端部の耐久性アップを図り、エンドレスベルトの挫掘又はエンドレスベルト端部の摩耗変形やベルト破断につながる亀裂が発生するのを防止することができるエンドレスベルトを提供する。
【解決手段】ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤保持部を備えることを特徴とするエンドレスベルト。前記保持部としては多孔質体、或いはベルト端面の円周方向に沿ってベルト軸方向と平行に外側に向かって開口した凹溝であることが好ましく、前記多孔質体の表面の一部が補強部材により覆われることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスベルト、定着部材、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えば、ドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を一様に帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、このトナー像を感光体ドラム上から中間転写ベルトに一次転写したのち更に中間転写ベルトから記録紙に二次転写した後、定着装置によってこのトナー像を記録紙に定着している。
【0003】
従来の定着装置としては、例えば、加熱源を有する回転可能な加熱定着ロールと、この加熱定着ロールに圧接し且つ加熱ロールと共に従動するエンドレスベルトと、この無端ベルトの内側に配設されて、前記無端ベルトを加熱ロールに押圧させ且つ前記エンドレスベルトと加熱定着ロールとの間に圧接域(ニップ部)を形成する押圧部材と、前記エンドレスベルトの両端部の内側に嵌合された状態に配設され、当該エンドレスベルトの内面を回転自在にガイドするベルトガイド部材と、を備え、この接触域にシートを通過させることで、当該シート上の未定着トナー像を加熱加圧定着するようにしたものが知られている、この種の定着装置(ベルトニップ方式)においては、エンドレスベルトは両端部の蛇行防止部材によりウォークを制御されているが、定着装置の長期に亘る使用によって、エンドレスベルトが両端面に配置された蛇行防止部材に突き当たる回数が増えると、エンドレスベルトの端面が蛇行防止部材との摺動によって摩耗し、エンドレスベルトの端部にクラックが生じたり、最悪の場合には端部破断に至る可能性もあった。
このようなベルト端部のクラックや破断の発生は前記ベルトニップ方式の定着装置に限らず、エンドレスベルトを使用する定着システムにおいては共通の課題となっており、ベルト駆動システムでの制御システムの改善や、ベルト自身の耐久性を上げることよって改善が図られている。
【0004】
例えば、ベルト駆動システムの改善を図ったものとしては、ベルト蛇行防止部材のベルト部材のエッジ面との圧接部が弾性変形可能に構成されたもの(例えば、特許文献1参照。)、また、ベルト自身の耐久性を向上させることよって改善を図ったものとしては、ベルト両端周縁部の外表面及び/又は内表面に耐熱性コート層を設けたり、或いは耐熱性テープを貼り付けたもの(例えば、特許文献2参照。)、ベルト金属層の両端部の厚さを中央部の膜厚より厚くしたもの(例えば、特許文献3参照。)、更に、ベルト外周層にゴム層を有し、前記ゴム層にてベルト端部を覆ったもの(例えば、特許文献4参照。)、或いは、ベルト長手方向端部にベルト円周に沿って凹溝を設けベルト端面にクラックが発生してもその成長を抑制し、ベルト破損までの時間的猶予を確保したもの(例えば、特許文献5参照。)等が提案されている。
【特許文献1】特開2006−065250号公報
【特許文献2】特開平5−345369号公報
【特許文献3】特開2005−31474号公報
【特許文献4】特開2005−55469号公報
【特許文献5】特開2006−138944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。
すなわち、ベルト駆動システムでの改善を図ったものでは、単純な突き当てタイプのガイドに比べコストアップとなってしまい好ましくない。従って、ベルト自身の耐久性を向上することによって改善することが好ましく、ベルトの膜厚を厚くすることが最も効果的ではあるが、コストアップやベルトの可撓性が低下することによる用紙の剥離不良などが発生してしまう。また、ベルト端部の膜厚のみを精度維持しつつ厚くすると製造コストがアップしてしまう。更に、ベルト端部に耐熱性コート層や耐熱テープの貼り付け又はシリコーンゴム等の補強リブを追加したものでは、蛇行防止部材との回転摺動に対する耐摩耗性や繰り返し疲労耐久性が不十分でエンドレスベルト両端部に設けられた蛇行防止部材との回転摺動抵抗を長期間に亘って安定して維持することができない。
【0006】
そこで、本発明は、複雑なシステムを要せず、エンドレスベルトの片側又は両側の端部の耐久性アップを図り、エンドレスベルトの挫掘、又はエンドレスベルト端部の摩耗変形やベルト破断につながる亀裂が発生するのを防止することができるエンドレスベルトを提供することを目的とする。
また、前記エンドレスベルトを使用した耐久性の高い電子写真用の定着装置、及び画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するためにエンドレスベルト、電子写真用の定着装置、及び画像形成装置について研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
【0008】
<1> ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えるエンドレスベルトである。
【0009】
<2> 前記潤滑剤保持部を前記ベルト本体の内周面に備えることを特徴とする<1>に記載のエンドレスベルトである。
【0010】
<3> 前記潤滑剤保持部を前記ベルト本体の外周面に備えることを特徴とする<1>又は<2>に記載のエンドレスベルトである。
【0011】
<4> 前記潤滑剤保持部が多孔質体を含んで構成されることを特徴とする<1>に記載のエンドレスベルトである。
【0012】
<5> 前記多孔質体を補強するための補強部材を更に備えることを特徴とする<4>に記載のエンドレスベルトである。
【0013】
<6> 前記潤滑剤保持部が、前記ベルト本体の端面の円周方向に沿ってベルト軸方向と平行に外側に向かって開口した凹溝を有することを特徴とする<1>に記載のエンドレスベルトである。
【0014】
<7> 定着部材と、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えるエンドレスベルトと、該エンドレスベルトの内側に配置され、該エンドレスベルトを前記定着部材に圧接させて前記定着部材と前記エンドレスベルトとの接触部分を形成する押圧部材と、を有することを特徴とする定着装置である。
【0015】
<8> 前記エンドレスベルトの端面と接触し、該エンドレスベルトの蛇行を防止する蛇行防止部材を有することを特徴とする<7>に記載の定着装置である。
【0016】
<9> 像保持体と、該像保持体表面を帯電させる帯電手段と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着させる定着手段とを有し、
前記定着手段が、定着部材と、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えるエンドレスベルトと、該エンドレスベルトの内側に配置され、該エンドレスベルトを前記定着部材に圧接させて前記定着部材と前記エンドレスベルトとの接触部分を形成する押圧部材と、を有する定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複雑なシステムを要せず、エンドレスベルトの片側又は両側の端部の耐久性アップを図り、エンドレスベルトの挫掘、又はエンドレスベルト端部の摩耗変形やベルト破断につながる亀裂が発生するのを防止することができるエンドレスベルトを提供することができる。
また、本発明によれば、前記エンドレスベルトを使用した耐久性の高い電子写真用の定着装置、及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明のエンドレスベルトを説明し、次にそれを用いた本発明の定着装置、及び本発明の画像形成装置について説明する。
【0019】
<エンドレスベルト>
本発明のエンドレスベルト(以下、単に「ベルト」と称する場合がある。)は、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤保持部を備えることを特徴とする。
本発明のエンドレスベルトは、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤保持部を有していればよく、その材質、形状、大きさ等については特に制限はない。また、ベルト本体は単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0020】
本発明のエンドレスベルトの実施形態について図面を用いて説明する。
まず、図7は、基層上に熱可塑性樹脂を含有する被覆層を形成してなるベルト本体、つまり、従来の構成のエンドレスベルトを示す断面図である。本発明のエンドレスベルトの一例としては、このベルト本体の端部に潤滑剤保持部が設けられた構成を有する。
具体的には、図1は、ベルト本体10の端部に潤滑剤保持部20aとして多孔質体22を設けた構成を有する本発明のエンドレスベルトの一例を示す断面図である。図1に示されるように、多孔質体22は、ベルト本体10の縁に接するように配置され、接合されている。
また、図2は、ベルト本体10の端部に潤滑剤保持部20bとして多孔質体22を設け、更に、補強部材24を追加した構成を有する本発明のエンドレスベルトの一例を示す断面図である。図2に示されるように、多孔質体22は図1と同様に設けられ、更に、多孔質体22の一部を補強部材24が被覆している。
更に、図3は、ベルト本体10の端部に、潤滑剤保持部20cとしてベルト軸方向に外側に向かって開口して凹溝29を設けた構成を有する本発明のエンドレスベルトの一例を示す断面図である。図3に示されるように、凹溝29は、ベルト本体10の基層12に、接合剤28を介して凹溝形成部材26を接合させることで形成されている。
【0021】
ベルトニップ方式の定着装置では、通常、エンドレスベルト内部に押圧部材とベルト内面との摺動抵抗を低減するために押圧部材とベルト内面との間に潤滑剤が供給されているが、低摺動抵抗を得るために低粘度のシリコーンオイルが使用されることが多い。このため、定着装置の使用に伴って、潤滑オイルがベルト端部側に回り込むが、従来のエンドレスベルトではベルト端部には留まることなくベルト端部から落下して装置内を汚してしまったり、或いはベルト表面(外周)側に回り込んで記録媒体を汚してしまったり、画像を汚してしまったりしてしまった。
【0022】
これに対して、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤保持部を設けた本発明のエンドレスベルトでは、その潤滑剤保持部に潤滑剤が留まり、ベルトガイド摺動面との摺動抵抗を長期に亘って低く維持することが可能となる。その結果、潤滑剤保持部がない場合に比べ、エンドレスベルト端部の摩耗変形やベルト破断につながる亀裂の発生を低コストで効果的に防止することができる。また、ベルト端部からの潤滑オイル漏れを低減する効果も得られる。
【0023】
また、ベルト内部に押圧部材とベルト内面との摺動抵抗を低減するために供給される潤滑剤(潤滑オイル)の量が少なかったり、或いはグリス等の流動性の低い潤滑剤を使用したりした場合には、潤滑剤がベルト端部へと回り込むことは少ない。その場合には、予め、潤滑剤を潤滑剤保持部に充填、保持させておき、その潤滑剤を用いることで、ベルトガイド摺動面との摺動抵抗を長期に亘って低く維持することが可能となる。その結果、潤滑剤を保持部がない場合に比べ、エンドレスベルト端部の摩耗変形やベルト破断につながる亀裂の発生を低コストで効果的に防止することができる。
【0024】
(潤滑剤保持部)
本発明においてベルト本体の端部に設けられる潤滑剤保持部について説明する。
ここで、潤滑剤保持部が設けられる「ベルト本体の端部」とは、ベルト本体の両端の縁からベルト軸方向に向かって20mmまでの範囲を言う。
本発明における潤滑剤保持部は、図1〜図3に示されるように、ベルト本体の縁に接するように設けられている必要はなく、上記端部の範囲内に設けられていればよいが、 エンドレスベルトのウォークによりベルト本体の端面が蛇行防止部材に突き当たることを考慮すると、エンドレスベルトの端面の強度は高いほどよく、エンドベルトの端面の強度の点から、ベルト本体の縁に接するように設けられることが好ましい。
また、潤滑剤保持部は、ベルト本体の端部の全周に亘って設けられる必要もなく、ベルト本体の端部に沿って断続的に設けられる態様であってもよいが、潤滑剤保持部の強度と製造容易性の観点から、ベルト本体の端部の全周に亘って連続的に設けられていることが好ましい。なお、潤滑剤保持部が断続的に設けられる場合、潤滑剤保持部のベルト本体の端部の全周に対して占める割合は、潤滑剤保持性能確保の観点から、全周の少なくとも50%以上であることが好ましい。
更に、本発明における潤滑剤保持部は、ベルト本体の片側の端部のみに設けてもよいが、本発明の効果をより効率的に奏し得る観点から、両側の端部に設けることが好ましい。
【0025】
本発明における潤滑剤保持部が、図1及び図2に示されるように、多孔質体を含んで構成される場合には、その多孔質体の大きさは特に制限はなく、ベルト本体の内周面側に設けられるか、外周面側に設けられるか等により、適宜決定すればよいが、定着装置に組み込むことを考慮すると、ベルト軸方向の長さ(図1及び図2におけるL)は1〜10mmが好ましく、3〜5mmがより好ましく、また、厚さ(図1及び図2におけるT)は0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましい。
なお、このような多孔質体を含んで構成される潤滑剤保持部は、図1及び図2に示されるように、ベルト本体の縁に接するように設けられることが好ましい。
【0026】
本発明における潤滑剤保持部が、多孔質体と補強部材とから構成される場合、この補強部材は、潤滑材保持機能を損なわない範囲において、多孔質体の表面の一部を覆うことが好ましい。多孔質体のベルト本体の端面に近い部位は、潤滑剤保持機能が最も効果的に発現する箇所であるため、この箇所以外の表面を補強部材により覆うことが好ましい。例えば、図2に示されるように、多孔質体がベルト本体の縁から設けられている場合には、ベルト本体の端面と連続する多孔質体の端面以外の部分を、補強部材が覆う構成であることが好ましい。このような構成とすることで、多孔質体の露出した端面で潤滑材保持機能が発現し、更に、その他の部分は、補強部材の存在により多孔質体が剥れたり、変形したりすることを防止することができる。
【0027】
また、図3に示されるように、本発明における潤滑剤保持部がベルト本体の端面の円周方向に沿ってベルト軸方向と平行に外側に向かって開口した凹溝である場合、凹溝の大きさは特に制限はなく、ベルト本体の内周面側に設けられるか、外周面側に設けられるか等により、適宜決定すればよいが、定着装置に組み込むことを考慮すると、深さ(凹溝の奥行き:図3におけるD)は0.5〜8mmが好ましく、1〜4mmがより好ましい。また、ベルト直径方向から見た幅(凹溝の高さ:図3におけるH)は、0.1mm〜2mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜1mmが好ましい。
また、凹溝は、ベルト本体の円周方向に沿って連続してすべて開口している必要はなく、不連続であってもかまわない。
【0028】
また、図2に示されるような、多孔質体と補強部材とから構成される潤滑材保持部、また、図3に示されるような、凹溝を有する潤滑材保持部は、ベルト本体の内周面側に設けることも可能である。
本発明における潤滑剤保持部は、製造容易性、蛇行防止部材との摺動に対する耐久性の観点から、ベルト本体の外周面側に設けることが好ましい。
一方、本発明における潤滑剤保持部は、潤滑剤がベルト外周面へと移動することを確実に防止することができるという点から、ベルト本体の内周面側に設けることが好ましい。
【0029】
また、ベルト本体に、凹溝を有する潤滑剤保持部をベルト本体の外周面側に或いは内周面側に設けた上に、更に、ベルト本体の外周面側に多孔質体からなる保持部を積層することも可能である。
更に、凹溝を有する潤滑剤保持部においては、低粘度潤滑剤の保持性をより向上するために、その凹溝中に多孔質体を埋め込んでいてもよい。また、この凹溝中に予め潤滑剤を保持させておいてもよい。
【0030】
本発明における潤滑剤保持部は、以下のようにして設けることができる。
例えば、図1及び図2に示されるように、潤滑剤保持部が多孔質体から構成される場合には、所定の厚さに加工したテープ状或いはリング状の多孔質体を、接着剤などの接合剤によってベルト本体の端部に接合したり、ベルト本体の表面層が熱可塑性樹脂であれば、加熱圧着することにより接合したりして製造することが可能である。
【0031】
図2に示されるように、潤滑剤保持部が、多孔質体と、該多孔質体を補強するための補強部材と、から構成される場合には、予め上記の方法で接合した多孔質体の表面に、接着剤を介してテープ状のシートを巻きつけたり、リング状の補強部材を被覆したりすることに製造することが可能である。
【0032】
また、図3に示されるように、潤滑剤保持部が、ベルト端面の円周方向に沿ってベルト軸方向と平行に外側に向かって開口した凹溝から構成される場合には、テープ状のシートをベルト本体の端部に巻きつけたり、また、ベルト本体の外径より大きな内径を有する幅の短いリング状の凹溝形成部材をベルト本体の端部に挿入すると共に、凹溝となる隙間部分を残して、接合剤を用いてベルト本体の端部に接着したり、或いは、材質が熱可塑性樹脂の場合には溶着したりすることによって接合が可能である。
【0033】
また、ベルトの内側に凹溝を設ける場合にも、テープ状のシートをベルト本体の端部に巻きつけたり、ベルト本体の内径より小さい外径の幅の短いリング状の凹溝形成部材をベルト本体の端部に挿入する共に、ベルト本体の外側に設ける場合と同様に、凹溝となる隙間部分を残して、接合剤を用いて接合したり、熱溶着させたりすることによって製造できる。
但し、凹溝を有する潤滑剤保持部を製造する場合、耐久性の点から凹溝形成部材としては、継ぎ目のないエンドレスのリング状のものを使用することが好ましい。
【0034】
本発明における潤滑剤保持部を構成する多孔質体としては、耐熱性を有する多孔質のものであれば使用可能であり、フェルト、不織布、織布、編布、発泡性材料、多孔質焼結体等の従来公知の多孔質組織材を用いることができる。具体的には、例えば、全芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド樹脂)繊維からなるフェルトや、非多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、多孔質PTFE繊維、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)繊維、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン(FEP)繊維、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)繊維等のフッ素樹脂繊維、及びこれらのフッ素樹脂繊維同士を組み合わせたもの、又はこれらのフッ素樹脂繊維と他の有機繊維や無機繊維を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。また、ポリイミド樹脂やメラミン樹脂などからなる発泡体も使用可能である。
これらの多孔質体は、凹溝中に埋め込まれるものとしても使用可能である。
【0035】
本発明における潤滑剤保持部を構成する凹溝形成部材、及び補強部材としては、ベルト本体の基層と同様な材質のものを使用することが可能であり、公知の各種プラスチック材料や金属材料のものの中から適宜選択して使用することができる。
プラスチック材料の中でも、一般に、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。
また、この中でも、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
また、金属材料としては特に制限はなく、各種金属が適宜使用可能で、例えば、SUS、ニッケル、銅、アルミなどが好適に使用可能である。
なお、前記各種樹脂や各種金属を積層することも可能である。また、後述するベルト本体の基層と同様に、各種フィラーを添加することも可能である。
【0036】
本発明において、潤滑剤保持部を構成する多孔質体、補強部材、凹溝形成部材と、ベルト本体(又は多孔質体)とを接合する接合剤としては、各種接着剤、各種未加硫ゴム、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂の使用が可能である。また、加熱或いは加圧によって接着性を発揮するものは、接合部の隙間に充填後、加熱及び必要に応じて加圧することが必要である。また、熱可塑性樹脂などにおいては、加圧下で超音波振動を加えることによって発熱融着(超音波融着)させることも可能である。
【0037】
前記接着剤としては、オルガノポリシロキサンを主成分とする縮合硬化型或いは付加硬化型のシリコーン系接着剤、メチルジメトキシシリル基を末端に持つポリプロピレンオキシド(変性シリコーン)を主成分とする変性シリコーン系接着剤、芳香族複素環ポリマーに属するポリイミド(PI)類の低分子ポリマーを主成分とするポリイミド系接着剤、芳香族複素環ポリマーに属するポリベンズイミダソール(PBI)を主成分とするポリベンズイミダソール接着剤、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、反応性ホットメルト接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤、クロロプレンゴム系接着剤などが挙げられ、中でも、耐熱性や可撓性の観点から、シリコーン系や変性シリコーン系或いはポリイミド系が好ましい。
【0038】
また、前記接合となす充填物中に、耐久性や導電性を確保することを狙いとして、各種フィラーを添加することも可能である。フィラーとしては、層状構造を持った潤滑性フィラー(例えば、二硫化モリブデン、六方晶窒化硼素、マイカ、グラファイト、二硫化モリブデン、タルク)、導電性を有するフィラー(例えば、カーボンブラック、黒鉛)、耐熱性樹脂を含んで構成されるフィラー(例えば、耐熱性樹脂がイミド系樹脂、アミド系樹脂、及び全芳香族ポリエステル系樹脂から選択されるフィラー:例えばポリイミド、液晶ポリマー、アラミド)、その他(ガラス粉末、珪酸アルミ、炭素繊維、ブロンズ、チタン酸カリウム、酸化チタン、金属粉末、硫酸バリウム、金属酸化物、炭化物、窒化物、ケイ酸塩化合物)などが使用可能である。
【0039】
また、前記接合剤としての熱可塑性樹脂としては、市販の各種熱可塑性樹脂が使用可能であるが、耐熱性を考慮すると、各種フッ素樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)が適している。
【0040】
本発明では、前述のように、凹溝を有する潤滑剤保持部の場合、その凹溝に予め潤滑剤を充填させておくことも可能である。
この際に用いられる潤滑剤としては、シリコーンオイルが好ましく、シリコーンオイルとしては、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩及びヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等を用いることもできるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。
また、耐熱性により優れた性能が必要な場合、メチルフェニルシリコーンオイル或いはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、耐熱性を向上させるためにシリコーンオイル中に微量の酸化防止剤を添加することも可能である。
その他、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、例えば、シリコーングリス、フッ素グリス等、更にはこれらを組み合わせたものも用いることができる。
【0041】
(ベルト本体)
本発明のエンドレスベルトを構成するベルト本体は、前述のように、基層のみからなる単層構造であってもよいし、該基層上に任意の層(例えば、熱可塑性樹脂を含有する被覆層)を有する多層構造であってもよい。
【0042】
本発明におけるベルト本体の基層に用いられる材質としては特に制限はないが、公知の各種プラスチック材料や、金属材料のものの中から適宜選択して使用することができる。
プラスチック材料の中では、一般に、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。また、この中でも、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
また、金属材料としては特に制限はなく、各種金属が適宜使用可能で、例えば、SUS、ニッケル、銅、アルミなどが好適に使用可能である。
なお、前記各種樹脂や各種金属を積層することも可能である。
ベルト本体における基層の厚さは、20〜200μmの範囲とすることが好ましく、40〜100μmの範囲とすることがより好ましい。
【0043】
また、本発明におけるベルト本体は、前記基層の全面又は一部にゴム材料を積層することも可能である。このゴム材料としては、各種ゴム材料の中から、適宜使用可能であり、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に、耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが好ましい。
このゴム材料の厚さは、30〜500μmの範囲とすることが好ましく、100〜300μmの範囲とすることがより好ましい。
【0044】
更に、本発明のエンドレスベルトが定着用ベルトとして使用される場合には、ベルト本体は、表面離型層として最外表面層に非粘着性の高いフッ素樹脂が積層されることが好ましい。このフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂挙げられ、特に耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル(EFA)共重合体或いはこれらの変性体が好適に用いられる。
この表面離型層の厚さは5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜50μmの範囲であることがより好ましい。
【0045】
本発明におけるベルト本体を構成する各層には、適宜、導電性、熱伝導性、絶縁性、剥離性、摺動性、補強等の目的に応じて、各種フィラーを添加することも可能である。
フィラーとしては、層状構造を持った潤滑性フィラー(例えば、二硫化モリブデン、六方晶窒化硼素、マイカ、グラファイト、二硫化二硫化モリブデン、タルク)、導電性を有するフィラー(例えば、カーボンブラック、黒鉛)、耐熱性樹脂を含んで構成されるフィラー(例えば、耐熱性樹脂がイミド系樹脂、アミド系樹脂、及び全芳香族ポリエステル系樹脂から選択されるフィラー:例えばポリイミド、液晶ポリマー、アラミド)、その他(ガラス粉末、珪酸アルミ、炭素繊維、ブロンズ、チタン酸カリウム、酸化チタン、金属粉末、硫酸バリウム、金属酸化物、炭化物、窒化物、ケイ酸塩化合物)などが使用可能である。
【0046】
本発明のベルトは、単層構造、又は多層構造のベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤保持部を設けた後、更にその上にフッ素樹脂をはじめとする各種耐熱性樹脂や各種金属、或いは各種ゴム材料を複数に亘って積層することも可能である。
【0047】
<定着装置>
次に、本発明のエンドレスベルトを用いた、本発明の定着装置について説明する。
図4は、本発明の定着装置の一実施形態を示した概略断面図である。
図4に示す定着装置30において、31が加熱定着ロール、32がエンドレスベルト、33が記録媒体、34が加熱源、35が支持体、36が押圧部材、36aがプレニップ部材、36bが剥離ニップ部材、37が摺動用シート部材、38がベルトガイド、39がトナー像、40が潤滑剤保持部材である。定着装置30において、エンドレスベルト32が、本発明のエンドレスベルトであり、耐久性が高いなど既述の効果を奏する。
【0048】
図4に示す定着装置30は、駆動式の加熱定着ロール31にエンドレスベルト32を外接させ、その外接部位のエンドレスベルト32部分に対し、支持体35上に弾性体を装着し、摺動用シート部材37を被せた押圧部材36を内接させ、加熱定着ロール31とエンドレスベルト32との間に圧接域(ニップ部)を形成している。エンドレスベルト32に対する摺接面には、潤滑剤が介在しており、エンドレスベルト32の内周面に供給された潤滑剤は連れ回され、圧接域の摺接面側に供給される。また、加熱定着ロール31及びエンドレスベルト32は、加熱源34で所定の温度に加熱され、それぞれ矢印の方向に回転する。トナー像39を有する記録媒体33がニップ部を通過する間にトナー像が定着される。
また、潤滑剤保持部材40を有するベルトガイド38は支持体35に固定されており、このベルトガイド38によりエンドレスベルト32がスムーズに摺動回転する。
【0049】
以下、本実施形態の定着装置に使用されるエンドレスベルト以外の部材について説明する。
定着部材としての加熱定着ロールは、その形状、構造、大きさ等につき特に制限はなく、目的に応じてそれ自体公知のものの中から適宜選択して使用することができる。加熱定着ロールは、一般には、円筒状のコアと、その表面に形成された弾性層と、更にその弾性層の表面に形成された離型層と、を備えてなる。この加熱定着ロールは公知の製造方法で製造することが可能で、一般的には円筒状のコアの周りに弾性層を形成するための金型を配置し、液状ゴムを金型と円筒状のコアの隙間に流し込んだ後に加硫し固め、その上で、表面にPFA等の樹脂スリーブを装着したものが使用できる。
【0050】
前記円筒状のコアの材質としては、機械的強度に優れ、伝熱性が良好である材質ならば特に制限はないが、例えば、アルミ、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。
【0051】
前記弾性層の材質としては、該弾性層として公知の材質の中から適宜選択できるが、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。本発明においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0052】
なお、弾性層の厚みとしては、3mm以下であることが好ましく、0.5〜1.5mmの範囲であることがより好ましい。
【0053】
トナー像のオフセットを好適に防止することができる点から、弾性層の表面には離型層が形成されていることが好ましい。離型層の材質としては、トナー画像に対し、適度な離型性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの材質の中でもフッ素樹脂が好適に挙げられる。
【0054】
前記フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂挙げられる。
【0055】
特に、耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル(EFA)共重合体が好適に用いられる。
【0056】
離型層の厚みとしては、通常、10〜100μmであり、好ましくは20〜30μmである。前記離型層を前記弾性層の表面に形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、押出し成型によって形成されたチューブを被覆する方法が挙げられる。
【0057】
加熱源としては、例えば、ハロゲンランプを用い、上記コアの内部に収容することができる形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。ハロゲンランプにより加熱された加熱定着ロールの表面温度は、加熱定着ロールに設けられた感温素子により計測され、制御手段によりその温度が一定に制御される。感温素子としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
また、押圧部材が、抵抗発熱機構を有するものであってもよい。
【0058】
押圧部材としては、支持体上に弾性体(プレニップ部材)を装着し、エンドレスベルトの内側に配置されてエンドレスベルトを介して加熱定着ロールを押圧し、エンドレスベルトと加熱定着ロールとの間に、未定着トナー像を保持する記録シートが通過可能な圧接部(ニップ部)が形成することができる機能を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものの中から選択できるが、定着時の熱による劣化を防止するという観点からすれば、耐熱性を具備するもので構成することが好ましい。
【0059】
前記弾性体の材料としては、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーなどが適しており、これらの材質の中でも、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。硬度の点からJIS−A硬度10〜40°のシリコーンゴムが好適に用いられる。
【0060】
弾性体(プレニップ部材)の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記押圧部材は、単一の部材からなる構造であってもよいし、異なる機能を有する複数の部材からなる構造であってもよい。摺動オイルとしてシリコーンオイルを使用した場合には、ポリジメチルシリコーンゴム或いはメチルビニルシリコーンゴムはシリコーンオイルによって膨潤しやすく、弾性体表面上にフッ素樹脂などをコーティング施すことが必要である。
また、押圧部材は、弾性体の他に、加熱定着ローラの外周面側に対し突出させた剥離ニップ部材を有していてもよい。また、押圧部材(プレニップ部材)は必ずしも弾性体である必要はなく、耐熱性樹脂や金属などであってもよい。
【0061】
また、押圧部材とエンドレスベルトとの間に介在する摺動用部材(摺動用シート部材)としては、少なくともエンドレスベルトとの接触面側が、表面に凹凸形状を有するフッ素樹脂から形成されている。この凹凸形状により潤滑剤が保持される。
【0062】
押圧部材とエンドレスベルトとの間に供される潤滑剤としては、シリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩及びヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等を用いることができるが、濡れ性に優るアミノ変性シリコーンオイルがより好ましい。また、耐熱性により優れた性能が必要な場合、メチルフェニルシリコーンオイル或いはフッ素オイル(パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル)などを使用することも好適である。なお、耐熱性を向上させるためにシリコーンオイル中に微量の酸化防止剤を添加することも可能である。その他、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリス、例えば、シリコーングリス、フッ素グリス等、更にはこれらを組み合わせたものも用いることができる。
【0063】
前記支持体には、エンドレスベルトの摺動回転をスムーズにするように、ベルトガイドが取り付けられている。このベルトガイドには潤滑剤保持部材が設けられ、この潤滑剤保持部材に上記潤滑剤が保持される。
【0064】
更に、本発明の定着装置は、エンドレスベルトの端面に接触し、その蛇行を防止する蛇行防止部材が設けられていることが好ましい。この蛇行防止部材について図5を参照して説明する。ここで、図5(a)及び(b)は、本発明の定着装置に設けられる蛇行防止部材の構成を示す概略図である。
図5(a)及び(b)によれば、蛇行防止部材90は、支持部92と、フランジ部94と、挿入部96と、を有する。図5(a)に示されるように、蛇行防止部材90は、その挿入部90をエンドレスベルト(図1に示されるエンドレスベルト)の両端部から挿入し、フランジ部94を、エンドレスベルトが蛇行した際にその端面と突き当たるように一定の距離離間させた状態で配置する。この際、エンドレスベルトはベルトガイド38の外周面に沿って回転するように構成されている。図4に示されるように、エンドレスベルトは押圧部材36よって加熱定着ロール31に押圧されるように構成されているため、その押圧力による加熱定着ロール31からの摩擦力で従動して回動する。その結果、部品寸法のバラツキやニップ部を通過する用紙の影響を受けて、加熱定着ロールからの摩擦力が幅方向で不均一になった場合には、エンドレスベルトは幅方向に移動する力が働き、いずれかの端部に片寄る、いわゆるベルトウォークが発生する。そこで、本発明の定着装置においては、図5に示されるような蛇行防止部材90を設け、エンドレスベルトの端部が突き当たるように設けられたフランジ部94によってエンドレスベルトの蛇行を制限することで、エンドレスベルトに片寄りが生じるのを規制することができる。
また、蛇行防止部材は、PPS、PET、PBT、LCP等の耐熱性樹脂や、更に耐久性や摩擦係数を下げるためのフィラーを加えたものによって形成される。
【0065】
<画像形成装置>
次に、本発明の定着装置を備える、本発明の画像形成装置について説明する。
図6は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示した概略構成図である。図6に示される画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにて形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト45に順次転写(一次転写)させる一次転写部40、中間転写ベルト45上に転写された重畳トナー画像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部50、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置30を備えている。この定着装置30が既述の本発明の定着装置であり、当該定着装置は既述の本発明のエンドレスベルトを有してなる。従って、当該画像形成装置は耐久性が高いなど既述の効果を奏する。
また、各装置(各部)の動作を制御する制御部70を有している。
【0066】
本実施形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kには、それぞれ、矢印A方向に回転する感光体ドラム41の周囲に、これらの感光体ドラム41を帯電させる帯電器42、感光体ドラム41上に静電潜像が書込まれるレーザー露光器43(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム41上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器44、感光体ドラム41上に形成された各色成分トナー像を一次転写部40にて中間転写ベルト45に転写する一次転写ロール46、感光体ドラム41上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ47、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト45の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0067】
中間転写体である中間転写ベルト45は、ポリイミド或いはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは、例えば、0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト45は、各種ロールによって図6に示すB方向に所定の速度で循環駆動されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモーター(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト45を回転させる駆動ロール61、各感光体ドラム41の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト45を支持する支持ロール62、中間転写ベルト45に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト45の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール63、二次転写部50に設けられるバックアップロール55、中間転写ベルト45上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール64を有している。
【0068】
一次転写部40は、中間転写ベルト45を挟んで感光体ドラム41に対向して配置される一次転写ロール46で構成されている。一次転写ロール46は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール46は中間転写ベルトを挟んで感光体ドラム41に圧接配置され、更に、一次転写ロール46にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム41上のトナー像が中間転写ベルト45に順次、静電吸引され、中間転写ベルト45上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0069】
二次転写部50は、中間転写ベルト45のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール52と、バックアップロール55とによって構成される。バックアップロール55は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール55は、中間転写ベルト45の裏面側に配置されて二次転写ロール52の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール56が接触配置されている。
【0070】
一方、二次転写ロール52は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール52は中間転写ベルト45を挟んでバックアップロール55に圧接配置され、更に、二次転写ロール52は接地されてバックアップロール55との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部50に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0071】
また、中間転写ベルト45の二次転写部50の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト45上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト45の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ65が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニットYの上流側には、各画像形成ユニットY,M,C,Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)72が配設されている。また、黒の画像形成ユニットKの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ73が配設されている。この基準センサ72は、中間転写ベルト45の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部70からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0072】
更に、本実施形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ80、この用紙トレイ80に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール81、ピックアップロール81にて繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール82、搬送ロール82により搬送された用紙Pを二次転写部50へと送り込むための搬送路83、二次転写ロール52によって二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置30へと搬送する搬送ベルト85、用紙Pを定着装置30に導く定着入口ガイド86を備えている。
【0073】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図6に示すような画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置にて所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザー露光器に出力される。
【0074】
レーザー露光器43では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザーから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム41に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム41では、帯電器42によって表面が帯電された後、このレーザー露光器43によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにて、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0075】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム41上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム41と中間転写ベルト45とが接触する一次転写部40にて、中間転写ベルト45上に転写される。より具体的には、一次転写部40において、一次転写ロール46にて中間転写ベルト45の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト45の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0076】
トナー像が中間転写ベルト45の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト45は移動してトナー像が二次転写部50に搬送される。トナー像が二次転写部50に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部50に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール81が回転し、用紙トレイ80から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール81により供給された用紙Pは、搬送ロール82により搬送され、搬送路83を経て二次転写部50に到達する。この二次転写部50に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト45の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる
【0077】
二次転写部50では、中間転写ベルト45を介して、二次転写ロール52がバックアップロール55に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト45と二次転写ロール52との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール56からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール52とバックアップロール55との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト45上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール52とバックアップロール55とによって押圧される二次転写部50にて、用紙P上に一括して静電転写される。
【0078】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール52によって中間転写ベルト45から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール52の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト85へと搬送される。搬送ベルト85では、定着装置30における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置30まで搬送する。定着装置30に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置30によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部へと搬送される。
【0079】
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト45上に残った残留トナーは、中間転写ベルト45の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール64及び中間転写ベルトクリーナ65によって中間転写ベルト45上から除去される。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0081】
以下に、本発明のエンドレスベルト(実施例)と、比較例としてベルト本体の端部に潤滑剤保持部を有さない従来のエンドレスベルトと、を作製し、定着装置及び画像形成装置に取り付けた時の評価結果を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
まず、表面にブラスト処理を施した外径30mmのアルミ製円筒金型表面に、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製)をフローコーティング(螺旋巻き塗布)法により塗布し、回転乾燥させた後に、更に、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(商品名:710CL、三井・デュポンフロロケミカル社製)をスプレーコーティングによりコートした後、380℃で塗膜を焼成した。次いで、形成された被膜を芯体表面から取り外し、更に両端部をカットし、膜厚70μmのポリイミド樹脂(耐熱性樹脂)の外周に、熱可塑性樹脂としてPFAを含有する膜厚25μmの被覆層が形成された全長352mmのベルト本体を得た。
【0083】
次に、延伸多孔質PTFEフィルムと、多孔質PTFE繊維から成る織布と、の積層品(ジャパンゴアテックス製、品番♯8181)の織布面に、12μm厚のFEPフィルム(ダイキン工業製ネオフロンNF−0012)を熱圧着した厚さ300μmのシートから、幅5mm長さ94.5mmのシートを切り出した。このシートを、ベルト本体の外周面の両端部において、FEPフィルム面側がベルト本体の被覆層(PFAを含有する被覆層)と接するように重ね、約300℃に加熱しながら圧着し、多孔質体から構成される潤滑剤保持部を形成した。
これにより、図1に示されるような、多孔質体22から構成される潤滑剤保持部20aを備えたエンドレスベルトが得られた。なお、形成された多孔質体のベルト軸方向の長さ(図1におけるL)は5mmであり、厚さ(図1におけるT)は300μmである。
【0084】
(実施例2)
まず、表面にブラスト処理を施した外径30mmのアルミ製円筒金型表面に、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製)をフローコーティング(螺旋巻き塗布)法により塗布し、回転乾燥させた後に、更に、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(商品名:710CL、三井・デュポンフロロケミカル社製)をスプレーコーティングによりコートした後、380℃で塗膜を焼成した。次いで、形成された被膜を芯体表面から取り外し、更に両端部をカットし、膜厚70μmのポリイミド樹脂(耐熱性樹脂)の外周に、熱可塑性樹脂としてPFAを含有する膜厚25μmの被覆層が形成された全長352mmのベルト本体を得た。
【0085】
次に、延伸多孔質PTFEフィルムと、多孔質PTFE繊維から成る織布と、の積層品(ジャパンゴアテックス製、品番♯8181)の織布面に、12μm厚のFEPフィルム(ダイキン工業製ネオフロンNF−0012)を熱圧着した厚さ300μmのシートから、幅5mm長さ94.5mmのシートを切り出した。このシートを、ベルト本体の外周面の両端部において、FEPフィルム面側がベルト本体の被覆層(PFAを含有する被覆層)と接するように重ね、約300℃に加熱しながら圧着した。
その後、補強部材として、厚さ0.2mm、内径32mmのFEP熱収縮チューブ(汎用市販品)を長さ10mmにカットし、上記のように多孔質体が設けられたベルト本体の両端部に挿入し、更に、200℃の温風を吹き付けて、FEPチューブを収縮させ、前記多孔質体を補強部材で被覆した。
これにより、図2に示されるような、多孔質体22及び補強部材24から構成される潤滑剤保持部20bを備えたエンドレスベルトが得られた。なお、形成された多孔質体のベルト軸方向の長さ(図2におけるL)は5mmであり、厚さ(図2におけるT)は300μmである。
【0086】
(実施例3)
まず、表面にブラスト処理を施した外径30mmのアルミ製円筒金型表面に、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製)をフローコーティング法により塗布し、回転乾燥させた。次いで、前記ポリイミド被覆金型の中央部336mm以外をマスキングし、更に、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(商品名:710CL、三井・デュポンフロロケミカル社製)をスプレーコーティングによりコートした後、380℃で塗膜を焼成した。その後、形成された被膜を芯体表面から取り外し、更に両端部をカットし、膜厚70μmのポリイミド樹脂の外周に、熱可塑性樹脂としてPFAを含有する膜厚25μmの被覆層が、全長352mm中の中央部336mmのみに形成されたベルト本体を得た。
【0087】
次に、ベルト本体の製作方法と同様にして、表面にブラスト処理を施した外径31mmのアルミ製円筒金型表面に、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製)をフローコーティング法により塗布し、回転乾燥した。更に380℃で塗膜を焼成し、次いで、形成された被膜を芯体表面から取り外した後、幅8mmのリング状にカットし、内径31mm、肉厚50μmの凹溝形成部材とした。
【0088】
そして、ベルト本体の両端部の縁から4mmに亘ってマスキング材を被覆した上で、PFAを含有する被覆層が設けられていない、残りの4mmの範囲に接合剤として、信越シリコーンゴム製の液状シリコーンゴム(LSR)を塗布した後、前記内径31mmの凹溝形成部材をベルト本体の両端部に挿入すると共に、200℃で接合剤を硬化させた。その後、マスキング材を取り除くことで、凹溝を有する潤滑剤保持部が形成された。
これにより、図3に示されるような、凹溝29を有する潤滑剤保持部20cを備えたエンドレスベルトが得られた。形成された凹溝の深さ(図3におけるD)は4mm、幅(図3におけるH)は0.43mmであった。
【0089】
(比較例1)
まず、表面にブラスト処理を施した外径30mmのアルミ製円筒金型表面に、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製をフローコーティング法により塗布し、回転乾燥させた後に、更に、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(商品名:710CL、三井・デュポンフロロケミカル社製)をスプレーコーティングによりコートした後、380℃で塗膜を焼成した。次いで、形成された被膜を芯体表面から取り外し、更に両端部をカットし、膜厚70μmのポリイミド樹脂の外周に、熱可塑性樹脂としてPFAを含有する膜厚25μmの被覆層が形成された全長352mmエンドレスベルトを得た。
これを比較例1のエンドレスベルトとした。
【0090】
<評価>
実施例1〜3で作製したエンドレスベルト及び比較例1のエンドレスベルトを定着装置に取り付け、更にこの定着装置を画像形成装置に取り付けた時の評価について説明する。
評価には、図5に示す蛇行防止部材90を備えた図4に示す定着装置30を使用し、この定着装置に実施例1〜3、及び比較例1のエンドレスベルトをそれぞれ取り付けた後、更に、この定着装置を図6の画像形成装置に取り付けた。
この画像形成装置により画像印刷を実施し、50,000枚、100,000枚、150,000枚、200,000枚、250,000枚、300,000枚印刷ごとに、前記定着装置を画像形成装置より取り出し、エンドレスベルトの端部(端面)の破損状況についての確認を行った。
【0091】
定着装置30中の加熱定着ロール31は、肉厚0.5mm、外径25mmの炭素鋼管からなるパイプに上にシリコーンゴム(信越化学工業製LSR)を厚さ0.6mmで且つ最外表面層に厚さ30μmのPFAチューブ(三井・デュポンフロロケミカル社製950HP−Plusを押し出し成型し、内面をエキシマレーザー処理したもの)が一体に被覆されるように注入成型を行ったものである。
【0092】
なお、評価に際しては、潤滑剤保持部材40に、潤滑剤としてアミン変性シリコーンオイルを2.0g添加してエンドレスベルト32を定着装置に装着した。また、エンドレスベルトの端部の耐久性確認のための加速条件として加熱定着ロール31とエンドレスベルト32との接触域の圧力(ニップ圧力)を通常の1.3倍に設定した。
【0093】
評価の結果、実施例1〜3のエンドレスベルトにおいては、いずれも300,000枚まで問題なく印刷が可能であった。また、エンドレスベルトの端部からのオイル漏れもほとんど見られず、特に、実施例3ではオイル漏れはまったく見られなかった。
また、実施例1のエンドレスベルトでは、300,000枚終了時に多孔質体の部分的な剥がれが見られたが、補強部材を施した実施例2のエンドレスベルトでは多孔質体の剥がれ等はまったく見られなかった。
これに対して、比較例1のエンドレスベルトにおいては、50,000枚終了時からベルト端部からのオイル漏れが発生し始めると共に、150,000枚終了時に、ベルトの端部(端面)に小さなクラックが見られはじめ、290,000枚終了時には、ベルトの端部が破断して、印刷不能となってしまった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のエンドレスベルトの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のエンドレスベルトの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のエンドレスベルトの一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の定着装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図5】本発明の定着装置に設けられる蛇行防止部材の構成を示した概略図である。
【図6】本発明の画像形成装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図7】従来のエンドレスベルトの層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 ベルト本体
12 基層
14 被覆層
20 潤滑剤保持部
22 多孔質体
24 補強部材
26 凹溝形成部材
28 接合剤
29 凹溝
30 定着装置(転写手段)
31 加熱定着ロール
32 エンドレスベルト
36 押圧部材
41 感光体ドラム(像保持体)
42 帯電器(帯電手段)
43 レーザー露光器(潜像形成手段)
44 現像器(現像手段)
50 二次転写部(転写手段)
90 蛇行防止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えることを特徴とするエンドレスベルト。
【請求項2】
前記潤滑剤保持部を前記ベルト本体の内周面に備えることを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト。
【請求項3】
前記潤滑剤保持部を前記ベルト本体の外周面に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンドレスベルト。
【請求項4】
前記潤滑剤保持部が多孔質体を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト。
【請求項5】
前記多孔質体を補強するための補強部材を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のエンドレスベルト。
【請求項6】
前記潤滑剤保持部が、前記ベルト本体の端面の円周方向に沿ってベルト軸方向と平行に外側に向かって開口した凹溝を有することを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト。
【請求項7】
定着部材と、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えるエンドレスベルトと、該エンドレスベルトの内側に配置され、該エンドレスベルトを前記定着部材に圧接させて前記定着部材と前記エンドレスベルトとの接触部分を形成する押圧部材と、を有することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
前記エンドレスベルトの端面と接触し、該エンドレスベルトの蛇行を防止する蛇行防止部材を有することを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
像保持体と、該像保持体表面を帯電させる帯電手段と、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着させる定着手段とを有し、
前記定着手段が、定着部材と、ベルト本体の片側又は両側の端部に潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を備えるエンドレスベルトと、該エンドレスベルトの内側に配置され、該エンドレスベルトを前記定着部材に圧接させて前記定着部材と前記エンドレスベルトとの接触部分を形成する押圧部材と、を有する定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−185661(P2008−185661A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17398(P2007−17398)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】