エンボスシート及びその製造方法
【課題】エンボス加工された生地の凹部のみに転写プリント加工を施して意匠性及び耐摩擦性を高めることができるエンボスシートの製造方法を提供する。
【解決手段】本製造方法は、支持層(支持体フィルム12)及び接着層4を有する転写シートの該接着層と生地18とを重ね合わせ、エンボス型15の凸部17により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部19を形成すると共に該凹部19のみに該接着層4の一部を接着させる。前記接着層はホットメルト接着剤からなることが好ましい。
【解決手段】本製造方法は、支持層(支持体フィルム12)及び接着層4を有する転写シートの該接着層と生地18とを重ね合わせ、エンボス型15の凸部17により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部19を形成すると共に該凹部19のみに該接着層4の一部を接着させる。前記接着層はホットメルト接着剤からなることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスシート及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、エンボス加工された生地の凹部のみに転写プリント加工を施して意匠性及び耐摩擦性を高めることができるエンボスシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両において室内の内装材としてエンボスシートが使用されている。この種のエンボスシートの製造方法としては、例えば、図13に示すように、ロール状のエンボス型101と、それに対向して設けられるブランケットロール102との間に生地103を通過させ、その際にエンボス型101の凸部により生地103を型押して、生地103の表面側に凹部104を形成するものが知られている。
【0003】
また、近年ではシートの意匠性を向上させるためにシートに転写プリント加工を施すことがある。この種のシートの製造方法としては、例えば、図14に示すように、加熱ロール106と、それに対向して設けられる圧胴107との間に生地108と箔転写シート109とを重ねて通過させるものが知られている。ここで、箔転写シート109は、支持体フィルム110及び箔111の二層構造を有するものである。また、生地108の表面の加色部位には予め接着樹脂112を孔版あるいは凹版等により印捺しておく。これにより、加熱ロール106で加熱及び加圧された生地は接着樹脂112が溶解して箔転写シート109の箔111に圧着される。そして、箔転写シート109を生地108から剥がすと、接着樹脂112のあった部位には箔111が接着されて張り付くと共に他の部位では箔111は箔転写シート109側に残るようになる。
【0004】
しかしながら、上述したエンボスシート100では、型押しされた生地103の表面には凹凸意匠が形成されるのみで加色はされず意匠性が低い。また、生地103に事前に加色しておき、その部分のみを型押しすることも考えられるが、型押しの際の位置合わせ等がし難く現実的でない。
【0005】
また、上述した転写プリント加工を施したシート105では、箔111が転写された部位はフラット部あるいは凸部に限られてしまい意匠性が低い。また、生地103に事前に形成された凹部のみに箔転写することも考えられるが、凹部への接着樹脂112の塗布及び凹部への箔111の圧着の際の位置合わせ等がし難く現実的でない。さらに、箔111が転写された部位はフラット部あるいは凸部であることから、箔転写後に外部からの摩擦によって剥離しやすい。このため、例えば、自動車室内の内装品のように摩擦が大きい場所で使用するには不適であった。
【0006】
なお、他のエンボスシートの製造方法として、平坦状の被転写基材に転写シートの転写層を転写すると同時に、その転写された転写層及び接着剤層にエンボス加工を施す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この従来の製造方法では、被転写基材(生地)に転写された転写層及び接着剤層に凹部を有するエンボスシートを得ることを目的としており、被転写基材(生地)自体に凹部を有するエンボスシートを得ることを目的としていない。したがって、この従来の製造方法で得られるエンボスシートでは、被転写基材の全面に転写層が接着されており、加色せずに被転写基材を露出させたい部位にも転写層が転写されており意匠性が低い。さらに、凹部の他にフラット部あるいは凸部にも転写層が転写されてしまうので、転写後に外部からの摩擦によって剥離しやすい。
【0007】
【特許文献1】特開2001−150884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、エンボス加工された生地の凹部のみに転写プリント加工を施して意匠性及び耐摩擦性を高めることができるエンボスシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とするエンボスシートの製造方法。
2.前記接着層はホットメルト接着剤からなる上記1.記載のエンボスシートの製造方法。
3.前記転写シートは、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有しており、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、前記凹部のみに前記接着層及び前記箔層の一部を接着させる上記1.又は2.に記載のエンボスシートの製造方法。
4.前記エンボス型の凸部の先端面側の一部には接着用加熱部が設けられており、該エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部で前記生地に前記凹部を形成すると共に、該接着用加熱部により前記接着層を溶融して該凹部の底面の一部に該接着用加熱部と略同じ形状の該接着層を接着させる上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
5.前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
6.生地に凹部を備えるエンボスシートであって、
支持層及び接着層を有する転写シートから転写された該接着層の一部が前記凹部のみに接着されていることを特徴とするエンボスシート。
7.前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている上記6.記載のエンボスシート。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンボスシートの製造方法によると、エンボス型の凸部の加熱押圧によって、生地に凹部を形成すると共に凹部のみに転写シートの接着層の一部を接着させるようにしたので、生地の凹部のみに転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に転写プリント加工を施したシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてシートの長寿命化を図ることができる。
また、前記接着層がホットメルト接着剤からなる場合は、エンボス型の凸部の加熱押圧により接着層を溶融して生地の凹部のみに接着層をより確実に接着させることができる。特に、エンボス加工とは別の前工程で転写シートにホットメルト接着剤からなる接着層を形成する場合、接着層が形成された転写シートの巻き取りの際のブロッキングを抑制することができる。
また、前記転写シートが、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有している場合は、エンボス型の凸部による加熱押圧時に、凹部のみに転写シートの接着層及び箔層の一部を接着させることができる。そのため、生地の凹部のみに箔転写プリント加工を施すことができる。
また、前記エンボス型の凸部の先端面側の一部に接着用加熱部が設けられている場合は、エンボス型の凸部で生地に凹部を形成すると共に、接着用加熱部により接着層を溶融して凹部の底面の一部に接着用加熱部と略同じ形状の接着層を接着させることができる。そのため、凹部に接着される接着層を、凹部の底面より小さな平面面積を有する接着層とすることができ、意匠性を更に高めることができる。特に、凹部に接着される接着層を、凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層とする場合には、意匠性を極めて高めることができる。
さらに、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる場合は、エンボス型の凸部以外の部位が転写シートに接触しないので、生地の凹部の外周側にエンボス型の凸部の熱が伝わり難く、凹部以外の部位に接着層が転写されてしまうことをより確実に防止できる。
【0011】
本発明のエンボスシートによると、転写シートから転写された接着層の一部が凹部のみに接着されているので、従来のように生地のフラット部や凸部に転写プリント加工を施したシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてシートの長寿命化を図ることができる。
さらに、前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている場合は、凹部に接着される接着層を、凹部の底面より小さな平面面積を有する接着層とすることができ、意匠性を更に高めることができる。特に、凹部に接着される接着層を、凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層とする場合には、意匠性を極めて高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.エンボスシートの製造方法
本実施形態1.に係るエンボスシートの製造方法は、支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とする。
【0013】
上記「転写シート」は、エンボス加工時にエンボス型の凸部の加熱押圧により変形可能である限り、その構造、大きさ、形状、材質などは特に問わない。この転写シートとしては、例えば、(1)支持層12及び接着層4と、これら両層12,4の間に介在される箔層13とを有する形態(図3参照)、(2)支持層42及び接着層34を有し、これら両層42,34の間に箔層が介在されない形態(図7参照)等を挙げることができる。
【0014】
上記(1)形態の転写シートを構成する支持層は、箔層及び接着層を支持する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この支持層は、通常、フィルム状に形成されている。この支持層には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂フィルム(シート)、或いは上質紙、薄葉紙等にポリオレフィン系樹脂やシリコン樹脂の離型層を積層した塗工紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、等による単層体又は積層体を用いる。この支持層の厚さは、例えば、5〜100μm(好ましくは10〜50μm)であることができる。
【0015】
上記(1)形態の転写シートを構成する支持層には必要に応じて、箔層側に箔層との剥離性を向上させる為、支持層の構成要素として離型層を設けても良い。この離型層としては、例えば、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。具体的には、例えば、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合樹脂に、好ましくはパラトルエンスルホン酸を添加したもの等は好ましい。また、剥離性の調整の為に、支持層の箔層側の面にコロナ放電処理、オゾン処理等を行っても良い。
【0016】
上記(1)形態の転写シートを構成する接着層は、生地に接着する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この接着層は、例えば、熱により溶融するホットメルト接着剤からなることができる。このホットメルト接着剤としては、硬化前に熱可塑性を示すならば硬化性樹脂を用いることもできるが、通常、熱可塑性樹脂を使用する。この熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このホットメルト接着剤の目付量は、例えば、1〜10g/m2(好ましくは1〜5g/m2)であることができる。このホットメルト接着剤の厚さは、例えば、1〜50μm(好ましくは1〜25μm)であることができる。この接着層の塗布方法としては、例えば、例えば、ロールコート、スプレーコート、カーテンフローコート、グラビアコート、コンマコート、シルクスクリーン印刷等を挙げることができる。
なお、上記接着層は、樹脂に顔料、染料、金属粉等の着色剤を含有してなる層としたり、樹脂に着色剤を含有せずに無色透明の層としたりすることができる。
【0017】
上記(1)形態の転写シートを構成する箔層は、生地を加色する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この箔層は、例えば、着色層及び金属層を有することができる。この着色層は、支持層側にあり、例えば、樹脂に顔料、染料、金属粉等の着色剤を含有してなる層としたり、樹脂に着色剤を含有せずに無色透明の層としたりすることができる。この金属層としては、例えば、アルミニウム、クロム、金、銀等の金属を公知の蒸着法等を用いて形成された金属薄膜層等を挙げることができる。この箔の厚さは、例えば、0.05〜3μm(好ましくは0.06〜2μm)であることができる。
【0018】
上記箔層には必要に応じて、支持層に接する剥離層を設けることができる。この剥離層は、支持層と箔層との剥離性を調整する為、また転写後の箔層の表面保護の為、転写後の箔層上に表面保護層を塗工形成時の塗工適性向上の為、等に設ける。この剥離層には、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。この剥離層は、従来公知の印刷法やロールコート等の塗工法で形成される。なお、この剥離層は、箔層の一構成要素であり、転写時に箔層の一部として生地側に転写され、箔層の表面を被覆する。
【0019】
なお、上記(1)形態の転写シートを用いる場合、エンボス加工後に上記支持層12を生地18から剥がすことによって、支持層12と共にエンボス型の凸部で加熱押圧されなかった接着層4及び箔層13の一部が生地18から剥がされることとなり、凹部19のみに転写シートの接着層4及び箔層13の一部が転写されたエンボスシート1が得られることとなる(図5参照)。
【0020】
上記(2)形態の転写シートを構成する支持層は、接着層を支持する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この支持層としては、例えば、上記(1)形態の転写シートの支持層の構成を適用したものを挙げることができる。この支持層には必要に応じて、接着層側に接着層との剥離性を向上させる為、支持層の構成要素として離型層を設けても良い。この離型層としては、例えば、上記(1)形態で説明した離型層の構成を適用したものを挙げることができる。
【0021】
上記(2)形態の転写シートを構成する接着層は、生地に接着する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この接着層としては、例えば、上記(1)形態の転写シートの接着層の構成を適用したものを挙げることができる。
【0022】
なお、上記(2)形態の転写シートを用いる場合、エンボス加工後に上記支持層42を生地18から剥がすことによって、支持層42と共にエンボス型の凸部で加熱押圧されなかった接着層34の一部が生地18から剥がされることとなり、凹部19のみに転写シート33の接着層34が転写されたエンボスシート31が得られることとなる(図9参照)。
【0023】
上記「生地」は、エンボス型の凸部の加熱押圧により凹部が形成される限り、その構造、大きさ、形状、材質などは特に問わない。この生地は、非可撓性シートであってもよいが、通常、可撓性シートである。この可撓性シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の不織布、織物、編物、ウレタンシート、接着ラミネート、皮等、起毛の有無によらず各種のシート材を適用することができる。この生地の厚さは、例えば、0.5〜15mm(好ましくは1〜3mm)であることができる。この生地の用途としては、特に限定されないが、例えば、車両内装材として、椅子、天井、サンバイザ、インパネ等に利用することができる。
【0024】
上記「エンボス型」は、転写シート及び生地を加熱押圧するものである限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。このエンボス型としては、例えば、ロール型、フラット型等を挙げることができる。エンボス型の凸部は、その内部又は外部のヒータ等の加熱部により加熱される。その加熱温度は、接着層の材質や厚さ、転写シートの厚さ、生地の凹部の深さ等により適宜選択されるが、120〜220℃(好ましくは150〜210℃)であることができる。
【0025】
ここで、例えば、上記エンボス型の凸部の先端面側の一部に接着用加熱部を設けることができる(図10及び図11参照)。これにより、エンボス型の凸部による加熱押圧時に、エンボス型の凸部の先端面の全面で生地に凹部を形成すると共に、接着用加熱部により接着層を部分的に溶融して凹部の底面の一部に接着用加熱部と略同じ平面形状の接着層を接着させることができる。この場合、エンボス型の凸部の先端面側には、その一部に接着用加熱部を設けると共に、その接着用加熱部を囲むように断熱材や冷却水通路等の断熱部を設けることが好ましい(図10及び図11参照)。凹部の底面の外周側への接着加熱部の熱伝達をより確実に抑制できるためである。
【0026】
ここで、例えば、上記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、エンボス型の凸部のみを転写シートに接触させ、エンボス型の凸部以外の部位を転写シートに接触させないことができる。これにより、生地の凹部の外周側にエンボス型の熱が伝わり難く、凹部以外の部位に接着層が転写されてしまうことをより確実に防止できる。この場合、エンボス型の凸部の高さHは、通常、エンボス加工時の凸部の根元端と生地の表面との間の隙間Sと、生地の凹部の深さDと、の和より大きな値に設定されている(図5参照)。この凸部の高さHは、例えば、0.5mm以上(好ましくは1mm以上)であることができる。この隙間Sは、例えば、0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上)であることができる。この凹部の深さDは、例えば、0.4mm以上(好ましくは0.8mm以上)であることができる。
【0027】
なお、本実施形態1.のエンボスシートの製造方法では、エンボス加工時に生地の凹部のみに接着層及び/又は箔層を接着させるので、エンボス加工時に生地の凹部及びフラット部に接着層及び/又は箔層を接着させてから、生地のフラット部の接着層及び/又は箔層をサンディング等により削り取る方法に比べて、工程数等を低減して生産性を高めることができる。
【0028】
2.エンボスシート
本実施形態2.に係るエンボスシートは、生地に凹部を備えるエンボスシートであって、支持層及び接着層を有する転写シートから転写された接着層の一部が凹部のみに接着されていることを特徴とする。
ここで、例えば、上記凹部の底面の一部に接着層が接着されていることができる。
【0029】
なお、本実施形態2.のエンボスシートの各構成要素の構成としては、例えば、上述の実施形態1.のエンボスシートの製造方法で説明した各構成要素の構成を適用することができる。また、本実施形態2.のエンボスシートは、例えば、上述の実施形態1.のエンボスシートの製造方法で製造されたものであることができる。
【実施例】
【0030】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
(1)エンボスシートの製造方法
本実施例1に係るエンボスシートの製造方法では、図1に示すように、先ず、グラビアコート装置2を使用して箔転写シート3に接着層4を形成する。このグラビアコート装置2は、箔転写シート3を供給する供給ロール5と、グラビアロール6(凹版ロール)と、これに対向する押さえロール7と、グラビアロール6の一部が浸漬するホットメルト接着剤4a(以下、単に「接着剤4a」とも略記する。)の槽8と、グラビアロール6の接着剤4aを掻き落とすドクター9と、乾燥室10と、巻き取りロール11と、を備えている。この接着剤4aは、ポリエステル樹脂もしくはナイロン樹脂からなっている。
【0032】
上記箔転写シート3は、図2に示すように、ポリエステル製で厚さ約20μmの支持体フィルム12(本発明に係る「支持層」として例示する。)と、シリコン製の離型層12aと、着色層13a及びアルミニウム蒸着層13bから成る厚さ約1μmの箔層13と、を積層して形成されている。そして、上記供給ロール5から供給された箔転写シート3は、箔層13側がグラビアロール6側としてロール6,7間を通過する。その際に、箔転写シート3の箔層13側には、グラビアロール6により目付量が約1.5g/m2の接着剤4aが塗布される。次に、箔転写シート3は乾燥室10に搬送され、接着剤4aが乾燥され固化される。したがって、箔転写シート3の箔層13側には厚さ約2.5μmの接着層4が形成されることとなる(図3参照)。次いで、箔転写シート3は巻き取りロール11により巻き取られる。
なお、上記実施例の箔転写シート3に接着層4を形成してなるシートによって、本発明に係る「転写シート」が構成されている。
【0033】
次に、図4に示すように、エンボス加工機14を使用して加工対象であるポリエチレンテレフタレート製の不織布からなる厚さ約1.5mmの生地18にエンボス加工を施す。このエンボス加工機14は、ロール状のエンボス型15と、これに対向するボトムローラ16と、を備えている。このエンボス型15は少なくとも凸部17の先端面側の全体が約200℃に加熱される。図5に示すように、この凸部17の高さHは約1.2mmとされている。また、生地18の凹部19の深さDは約1mmとされている。さらに、エンボス加工時の凸部17の根元端と生地18の表面との間の隙間Sは約0.2mmとされている。したがって、このエンボス型15の凸部17による加熱押圧時には、その凸部17のみが箔転写シート3に接触しており、凸部17以外の部位が箔転写シート3に接触していない。
【0034】
そして、上述した箔転写シート3の接着層4側と生地18とを重ね合わせてローラ15,16間を通過させる。これにより、エンボス型15の凸部17により箔転写シート3側から箔転写シート3及び生地18が加熱押圧される。すると、生地18に凹部19が形成されると共に、接着層4のうちの凹部19の底面に位置する部分が溶融されて凹部19のみに接着層4及び箔層13の一部が残存するように接着される(図5参照)。
【0035】
その後、ローラ15,16間を通過した箔転写シート3が生地18から引き剥がされると、図6に示すように、凹部19の底面に接着された接着層4及び箔層13以外の接着層4及び箔層13は箔転写シート3に残った状態となり、凹部19の底面のみに接着層4及び箔層13が接着されたエンボスシート1が得られることとなる。
【0036】
(2)実施例の効果
本実施例のエンボスシート1の製造方法によれば、エンボス型15の凸部17の加熱押圧によって、生地18に凹部19を形成すると共に、接着層4を部分的に溶融して凹部19のみに接着層4及び箔層13の一部を接着させるようにしたので、生地18の凹部19のみに箔転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に箔転写プリント加工を施したエンボスシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてエンボスシート1の長寿命化を図ることができる。
【0037】
また、本実施例では、接着層4をホットメルト接着剤4aから形成したので、エンボス型15の凸部17の加熱押圧により接着層4を部分的に溶融して生地18の凹部19のみに接着層4及び箔層13をより確実に接着させることができる。特に、本実施例のように、エンボス加工とは別の前工程で箔転写シート3にホットメルト接着剤4aからなる接着層4を形成する場合、接着層4が形成された箔転写シート3の巻き取りの際のブロッキングを抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、エンボス型15の凸部17による加熱押圧時に、エンボス型15の凸部17のみを箔転写シート3に接触させるようにしたので、エンボス型15の凸部17以外の部位が箔転写シート3に接触せず、生地18の凹部19の外周側にエンボス型15の凸部17の熱が伝わり難く、凹部19以外の部位に接着層4及び箔層13が転写されてしまうことをより確実に防止できる。
【0039】
(実施例2)
(1)エンボスシートの製造方法
本実施例2に係るエンボスシートの製造方法では、図7に示す転写シート33を用いる。この転写シート33は、ポリエステル製で厚さ約25μmの支持体フィルム42(本発明に係る「支持層」として例示する。)と、シリコン製の離型層42aと、厚さ約50μmの接着層34と、を積層して形成されている。この接着層34は、ポリエステル樹脂もしくはナイロン樹脂に顔料等の着色剤を含有してなるホットメルト接着剤からなっている。
【0040】
次に、図8に示すように、上記実施例1で説明したエンボス加工機14のローラ15,16間に、上記転写シート33の接着層34側と生地18とを重ね合わせて通過させる。これにより、エンボス型15の凸部17により転写シート33側から転写シート33及び生地18が加熱押圧される。すると、生地18に凹部19が形成されると共に、接着層34のうちの凹部19の底面に位置する部分が溶融されて凹部19のみに接着層34の一部が残存するように接着される(図9参照)。
【0041】
その後、ローラ15,16間を通過した転写シート33が生地18から引き剥がされると、図9に示すように、凹部19の底面に接着された接着層34以外の接着層34は転写シート33に残った状態となり、凹部19の底面のみに接着層34が接着されたエンボスシート31が得られることとなる。
【0042】
(2)実施例の効果
本実施例のエンボスシート31の製造方法によれば、上記実施例1のエンボスシート1の製造方法と略同じ作用・効果を奏することに加えて、エンボス型15の凸部17の加熱押圧によって、生地18に凹部19を形成すると共に、接着層34を部分的に溶融して凹部19のみに顔料等の着色剤を含む接着層34を接着させるようにしたので、生地18の凹部19のみに転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に箔転写プリント加工を施したエンボスシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてエンボスシート31の長寿命化を図ることができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1及び2では、エンボス型15の凸部17の先端面側の全体を加熱して凹部19の底面の全体に接着層4及び箔層13(接着層34)を転写するようにしたが、これに限定されず、例えば、図10又は図11に示すように、エンボス型の凸部17の先端面側の一部に他部より高温となり接着層4(接着層34)を溶融可能なヒータ等の接着用加熱部20を設けるようにしてもよい。これにより、生地18の凹部19に接着される接着層4及び箔層13(接着層34)を、凹部19の底面より小さな平面面積を有する接着層4及び箔層13(接着層34)とすることができ、意匠性を更に高めることができる。この場合、図12(a)に示すように、凹部19の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層4’及び箔層13’(接着層34’)としたり、図12(b)に示すように、凹部19の底面の外周形状と略同じ外周形状の接着層4"及び箔層13"(接着層43")としたりすることができる。
【0044】
上述の形態の場合、図10又は図11に示すように、エンボス型15の凸部17の先端面側には、その一部に接着用加熱部20を設けると共に、その接着用加熱部20を囲むように断熱材や冷却水通路等の断熱部22を設けることが好ましい。生地18の凹部19の底面の外周側への接着加熱部20の熱伝達をより確実に抑制できるためである。尚、図10中には、接着用加熱部20が他の部位より突出する凸部17を示し、図11中には、接着用加熱部20が他の部位と同じ高さレベルである凸部17を示す。
【0045】
また、上記実施例1では、エンボス加工と別の前工程として箔転写シート3に接着層4を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、エンボス加工と同じ工程で箔転写シート3に接着層4を形成するようにしてもよい。例えば、エンボス加工機14でロール15,16間に供給される前の箔転写シート3に接着剤4aを塗布して乾燥固化させ接着層4を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施例1及び2では、生地18の凹部19の底面形状(即ち、エンボス型15の凸部17の先端形状)として円形を例示したが、これに限定されず、例えば、生地18の凹部19の底面形状を楕円形、多角形、異形等としてもよい。
【0047】
また、上記実施例1では、グラビアコート装置2を用いて箔転写シート3に接着剤4を塗布しているが、これに限定されず、他の方法であってもよい。
【0048】
また、上記実施例1及び2では、エンボス型15はローラ状としているが、これに限定されず、例えば、板状のエンボス型であってもよい。
【0049】
さらに、上記実施例1及び2では、エンボス加工時に支持体フィルム12を剥離するようにしたが、これに限定されず、例えば、支持体フィルム12を剥離せずに残留させたままの物を中間製品として取り扱い、この中間製品の使用時に支持体フィルム12を剥離するようにしてもよい。
【0050】
さらに、上記実施例2では、生地の凹部に接着される接着層34として、顔料等の着色剤を含む層を例示したが、これに限定されず、例えば、顔料等の着色剤を含まず無色透明の接着層34としてもよい。この場合、生地18の凹部19に接着された無色透明の接着層34と生地18のフラット部との質感の違いにより意匠性が高められる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
凹部のみに転写プリント加工が施されたエンボスシートに関する技術として広く利用される。特に、自動車等の車両内装材用のエンボスシートに関する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例1に係る箔転写シートに接着層を形成する工程を示す概略図である。
【図2】接着層の形成前の箔転写シートを示す縦断面図である。
【図3】接着層の形成後の箔転写シートを示す縦断面図である。
【図4】本実施例1に係るエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図4のVI矢視部の拡大図である。
【図7】本実施例2に係る転写シートを示す概略図である。
【図8】本実施例2に係るエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】他のエンボス型の凸部を説明するための説明図である。
【図11】更に他のエンボス型の凸部を説明するための説明図である。
【図12】他の転写形態を説明するための説明図であり、(a)は凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層及び/又は箔層を示し、(b)は凹部の底面の外周形状と略同じ外周形状の接着層及び/又は箔層を示す。
【図13】従来のエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図14】従来の箔転写プリント加工の工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1,31;エンボスシート、3;箔転写シート、33;転写シート、4,34;接着層、4a;ホットメルト接着剤、12,42;支持体フィルム、13,13’,13";箔層、15;エンボス型、17;凸部、18;生地、19;凹部、20;接着用加熱部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスシート及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、エンボス加工された生地の凹部のみに転写プリント加工を施して意匠性及び耐摩擦性を高めることができるエンボスシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両において室内の内装材としてエンボスシートが使用されている。この種のエンボスシートの製造方法としては、例えば、図13に示すように、ロール状のエンボス型101と、それに対向して設けられるブランケットロール102との間に生地103を通過させ、その際にエンボス型101の凸部により生地103を型押して、生地103の表面側に凹部104を形成するものが知られている。
【0003】
また、近年ではシートの意匠性を向上させるためにシートに転写プリント加工を施すことがある。この種のシートの製造方法としては、例えば、図14に示すように、加熱ロール106と、それに対向して設けられる圧胴107との間に生地108と箔転写シート109とを重ねて通過させるものが知られている。ここで、箔転写シート109は、支持体フィルム110及び箔111の二層構造を有するものである。また、生地108の表面の加色部位には予め接着樹脂112を孔版あるいは凹版等により印捺しておく。これにより、加熱ロール106で加熱及び加圧された生地は接着樹脂112が溶解して箔転写シート109の箔111に圧着される。そして、箔転写シート109を生地108から剥がすと、接着樹脂112のあった部位には箔111が接着されて張り付くと共に他の部位では箔111は箔転写シート109側に残るようになる。
【0004】
しかしながら、上述したエンボスシート100では、型押しされた生地103の表面には凹凸意匠が形成されるのみで加色はされず意匠性が低い。また、生地103に事前に加色しておき、その部分のみを型押しすることも考えられるが、型押しの際の位置合わせ等がし難く現実的でない。
【0005】
また、上述した転写プリント加工を施したシート105では、箔111が転写された部位はフラット部あるいは凸部に限られてしまい意匠性が低い。また、生地103に事前に形成された凹部のみに箔転写することも考えられるが、凹部への接着樹脂112の塗布及び凹部への箔111の圧着の際の位置合わせ等がし難く現実的でない。さらに、箔111が転写された部位はフラット部あるいは凸部であることから、箔転写後に外部からの摩擦によって剥離しやすい。このため、例えば、自動車室内の内装品のように摩擦が大きい場所で使用するには不適であった。
【0006】
なお、他のエンボスシートの製造方法として、平坦状の被転写基材に転写シートの転写層を転写すると同時に、その転写された転写層及び接着剤層にエンボス加工を施す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この従来の製造方法では、被転写基材(生地)に転写された転写層及び接着剤層に凹部を有するエンボスシートを得ることを目的としており、被転写基材(生地)自体に凹部を有するエンボスシートを得ることを目的としていない。したがって、この従来の製造方法で得られるエンボスシートでは、被転写基材の全面に転写層が接着されており、加色せずに被転写基材を露出させたい部位にも転写層が転写されており意匠性が低い。さらに、凹部の他にフラット部あるいは凸部にも転写層が転写されてしまうので、転写後に外部からの摩擦によって剥離しやすい。
【0007】
【特許文献1】特開2001−150884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、エンボス加工された生地の凹部のみに転写プリント加工を施して意匠性及び耐摩擦性を高めることができるエンボスシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とするエンボスシートの製造方法。
2.前記接着層はホットメルト接着剤からなる上記1.記載のエンボスシートの製造方法。
3.前記転写シートは、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有しており、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、前記凹部のみに前記接着層及び前記箔層の一部を接着させる上記1.又は2.に記載のエンボスシートの製造方法。
4.前記エンボス型の凸部の先端面側の一部には接着用加熱部が設けられており、該エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部で前記生地に前記凹部を形成すると共に、該接着用加熱部により前記接着層を溶融して該凹部の底面の一部に該接着用加熱部と略同じ形状の該接着層を接着させる上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
5.前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
6.生地に凹部を備えるエンボスシートであって、
支持層及び接着層を有する転写シートから転写された該接着層の一部が前記凹部のみに接着されていることを特徴とするエンボスシート。
7.前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている上記6.記載のエンボスシート。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンボスシートの製造方法によると、エンボス型の凸部の加熱押圧によって、生地に凹部を形成すると共に凹部のみに転写シートの接着層の一部を接着させるようにしたので、生地の凹部のみに転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に転写プリント加工を施したシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてシートの長寿命化を図ることができる。
また、前記接着層がホットメルト接着剤からなる場合は、エンボス型の凸部の加熱押圧により接着層を溶融して生地の凹部のみに接着層をより確実に接着させることができる。特に、エンボス加工とは別の前工程で転写シートにホットメルト接着剤からなる接着層を形成する場合、接着層が形成された転写シートの巻き取りの際のブロッキングを抑制することができる。
また、前記転写シートが、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有している場合は、エンボス型の凸部による加熱押圧時に、凹部のみに転写シートの接着層及び箔層の一部を接着させることができる。そのため、生地の凹部のみに箔転写プリント加工を施すことができる。
また、前記エンボス型の凸部の先端面側の一部に接着用加熱部が設けられている場合は、エンボス型の凸部で生地に凹部を形成すると共に、接着用加熱部により接着層を溶融して凹部の底面の一部に接着用加熱部と略同じ形状の接着層を接着させることができる。そのため、凹部に接着される接着層を、凹部の底面より小さな平面面積を有する接着層とすることができ、意匠性を更に高めることができる。特に、凹部に接着される接着層を、凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層とする場合には、意匠性を極めて高めることができる。
さらに、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる場合は、エンボス型の凸部以外の部位が転写シートに接触しないので、生地の凹部の外周側にエンボス型の凸部の熱が伝わり難く、凹部以外の部位に接着層が転写されてしまうことをより確実に防止できる。
【0011】
本発明のエンボスシートによると、転写シートから転写された接着層の一部が凹部のみに接着されているので、従来のように生地のフラット部や凸部に転写プリント加工を施したシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてシートの長寿命化を図ることができる。
さらに、前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている場合は、凹部に接着される接着層を、凹部の底面より小さな平面面積を有する接着層とすることができ、意匠性を更に高めることができる。特に、凹部に接着される接着層を、凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層とする場合には、意匠性を極めて高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.エンボスシートの製造方法
本実施形態1.に係るエンボスシートの製造方法は、支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とする。
【0013】
上記「転写シート」は、エンボス加工時にエンボス型の凸部の加熱押圧により変形可能である限り、その構造、大きさ、形状、材質などは特に問わない。この転写シートとしては、例えば、(1)支持層12及び接着層4と、これら両層12,4の間に介在される箔層13とを有する形態(図3参照)、(2)支持層42及び接着層34を有し、これら両層42,34の間に箔層が介在されない形態(図7参照)等を挙げることができる。
【0014】
上記(1)形態の転写シートを構成する支持層は、箔層及び接着層を支持する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この支持層は、通常、フィルム状に形成されている。この支持層には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂フィルム(シート)、或いは上質紙、薄葉紙等にポリオレフィン系樹脂やシリコン樹脂の離型層を積層した塗工紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、等による単層体又は積層体を用いる。この支持層の厚さは、例えば、5〜100μm(好ましくは10〜50μm)であることができる。
【0015】
上記(1)形態の転写シートを構成する支持層には必要に応じて、箔層側に箔層との剥離性を向上させる為、支持層の構成要素として離型層を設けても良い。この離型層としては、例えば、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。具体的には、例えば、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合樹脂に、好ましくはパラトルエンスルホン酸を添加したもの等は好ましい。また、剥離性の調整の為に、支持層の箔層側の面にコロナ放電処理、オゾン処理等を行っても良い。
【0016】
上記(1)形態の転写シートを構成する接着層は、生地に接着する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この接着層は、例えば、熱により溶融するホットメルト接着剤からなることができる。このホットメルト接着剤としては、硬化前に熱可塑性を示すならば硬化性樹脂を用いることもできるが、通常、熱可塑性樹脂を使用する。この熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂(疎水化ポリビニルアルコール樹脂等、特にビニロン)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このホットメルト接着剤の目付量は、例えば、1〜10g/m2(好ましくは1〜5g/m2)であることができる。このホットメルト接着剤の厚さは、例えば、1〜50μm(好ましくは1〜25μm)であることができる。この接着層の塗布方法としては、例えば、例えば、ロールコート、スプレーコート、カーテンフローコート、グラビアコート、コンマコート、シルクスクリーン印刷等を挙げることができる。
なお、上記接着層は、樹脂に顔料、染料、金属粉等の着色剤を含有してなる層としたり、樹脂に着色剤を含有せずに無色透明の層としたりすることができる。
【0017】
上記(1)形態の転写シートを構成する箔層は、生地を加色する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この箔層は、例えば、着色層及び金属層を有することができる。この着色層は、支持層側にあり、例えば、樹脂に顔料、染料、金属粉等の着色剤を含有してなる層としたり、樹脂に着色剤を含有せずに無色透明の層としたりすることができる。この金属層としては、例えば、アルミニウム、クロム、金、銀等の金属を公知の蒸着法等を用いて形成された金属薄膜層等を挙げることができる。この箔の厚さは、例えば、0.05〜3μm(好ましくは0.06〜2μm)であることができる。
【0018】
上記箔層には必要に応じて、支持層に接する剥離層を設けることができる。この剥離層は、支持層と箔層との剥離性を調整する為、また転写後の箔層の表面保護の為、転写後の箔層上に表面保護層を塗工形成時の塗工適性向上の為、等に設ける。この剥離層には、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。この剥離層は、従来公知の印刷法やロールコート等の塗工法で形成される。なお、この剥離層は、箔層の一構成要素であり、転写時に箔層の一部として生地側に転写され、箔層の表面を被覆する。
【0019】
なお、上記(1)形態の転写シートを用いる場合、エンボス加工後に上記支持層12を生地18から剥がすことによって、支持層12と共にエンボス型の凸部で加熱押圧されなかった接着層4及び箔層13の一部が生地18から剥がされることとなり、凹部19のみに転写シートの接着層4及び箔層13の一部が転写されたエンボスシート1が得られることとなる(図5参照)。
【0020】
上記(2)形態の転写シートを構成する支持層は、接着層を支持する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この支持層としては、例えば、上記(1)形態の転写シートの支持層の構成を適用したものを挙げることができる。この支持層には必要に応じて、接着層側に接着層との剥離性を向上させる為、支持層の構成要素として離型層を設けても良い。この離型層としては、例えば、上記(1)形態で説明した離型層の構成を適用したものを挙げることができる。
【0021】
上記(2)形態の転写シートを構成する接着層は、生地に接着する限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この接着層としては、例えば、上記(1)形態の転写シートの接着層の構成を適用したものを挙げることができる。
【0022】
なお、上記(2)形態の転写シートを用いる場合、エンボス加工後に上記支持層42を生地18から剥がすことによって、支持層42と共にエンボス型の凸部で加熱押圧されなかった接着層34の一部が生地18から剥がされることとなり、凹部19のみに転写シート33の接着層34が転写されたエンボスシート31が得られることとなる(図9参照)。
【0023】
上記「生地」は、エンボス型の凸部の加熱押圧により凹部が形成される限り、その構造、大きさ、形状、材質などは特に問わない。この生地は、非可撓性シートであってもよいが、通常、可撓性シートである。この可撓性シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の不織布、織物、編物、ウレタンシート、接着ラミネート、皮等、起毛の有無によらず各種のシート材を適用することができる。この生地の厚さは、例えば、0.5〜15mm(好ましくは1〜3mm)であることができる。この生地の用途としては、特に限定されないが、例えば、車両内装材として、椅子、天井、サンバイザ、インパネ等に利用することができる。
【0024】
上記「エンボス型」は、転写シート及び生地を加熱押圧するものである限り、その構造、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。このエンボス型としては、例えば、ロール型、フラット型等を挙げることができる。エンボス型の凸部は、その内部又は外部のヒータ等の加熱部により加熱される。その加熱温度は、接着層の材質や厚さ、転写シートの厚さ、生地の凹部の深さ等により適宜選択されるが、120〜220℃(好ましくは150〜210℃)であることができる。
【0025】
ここで、例えば、上記エンボス型の凸部の先端面側の一部に接着用加熱部を設けることができる(図10及び図11参照)。これにより、エンボス型の凸部による加熱押圧時に、エンボス型の凸部の先端面の全面で生地に凹部を形成すると共に、接着用加熱部により接着層を部分的に溶融して凹部の底面の一部に接着用加熱部と略同じ平面形状の接着層を接着させることができる。この場合、エンボス型の凸部の先端面側には、その一部に接着用加熱部を設けると共に、その接着用加熱部を囲むように断熱材や冷却水通路等の断熱部を設けることが好ましい(図10及び図11参照)。凹部の底面の外周側への接着加熱部の熱伝達をより確実に抑制できるためである。
【0026】
ここで、例えば、上記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、エンボス型の凸部のみを転写シートに接触させ、エンボス型の凸部以外の部位を転写シートに接触させないことができる。これにより、生地の凹部の外周側にエンボス型の熱が伝わり難く、凹部以外の部位に接着層が転写されてしまうことをより確実に防止できる。この場合、エンボス型の凸部の高さHは、通常、エンボス加工時の凸部の根元端と生地の表面との間の隙間Sと、生地の凹部の深さDと、の和より大きな値に設定されている(図5参照)。この凸部の高さHは、例えば、0.5mm以上(好ましくは1mm以上)であることができる。この隙間Sは、例えば、0.1mm以上(好ましくは0.2mm以上)であることができる。この凹部の深さDは、例えば、0.4mm以上(好ましくは0.8mm以上)であることができる。
【0027】
なお、本実施形態1.のエンボスシートの製造方法では、エンボス加工時に生地の凹部のみに接着層及び/又は箔層を接着させるので、エンボス加工時に生地の凹部及びフラット部に接着層及び/又は箔層を接着させてから、生地のフラット部の接着層及び/又は箔層をサンディング等により削り取る方法に比べて、工程数等を低減して生産性を高めることができる。
【0028】
2.エンボスシート
本実施形態2.に係るエンボスシートは、生地に凹部を備えるエンボスシートであって、支持層及び接着層を有する転写シートから転写された接着層の一部が凹部のみに接着されていることを特徴とする。
ここで、例えば、上記凹部の底面の一部に接着層が接着されていることができる。
【0029】
なお、本実施形態2.のエンボスシートの各構成要素の構成としては、例えば、上述の実施形態1.のエンボスシートの製造方法で説明した各構成要素の構成を適用することができる。また、本実施形態2.のエンボスシートは、例えば、上述の実施形態1.のエンボスシートの製造方法で製造されたものであることができる。
【実施例】
【0030】
以下、図面を用いて実施例1及び2により本発明を具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
(1)エンボスシートの製造方法
本実施例1に係るエンボスシートの製造方法では、図1に示すように、先ず、グラビアコート装置2を使用して箔転写シート3に接着層4を形成する。このグラビアコート装置2は、箔転写シート3を供給する供給ロール5と、グラビアロール6(凹版ロール)と、これに対向する押さえロール7と、グラビアロール6の一部が浸漬するホットメルト接着剤4a(以下、単に「接着剤4a」とも略記する。)の槽8と、グラビアロール6の接着剤4aを掻き落とすドクター9と、乾燥室10と、巻き取りロール11と、を備えている。この接着剤4aは、ポリエステル樹脂もしくはナイロン樹脂からなっている。
【0032】
上記箔転写シート3は、図2に示すように、ポリエステル製で厚さ約20μmの支持体フィルム12(本発明に係る「支持層」として例示する。)と、シリコン製の離型層12aと、着色層13a及びアルミニウム蒸着層13bから成る厚さ約1μmの箔層13と、を積層して形成されている。そして、上記供給ロール5から供給された箔転写シート3は、箔層13側がグラビアロール6側としてロール6,7間を通過する。その際に、箔転写シート3の箔層13側には、グラビアロール6により目付量が約1.5g/m2の接着剤4aが塗布される。次に、箔転写シート3は乾燥室10に搬送され、接着剤4aが乾燥され固化される。したがって、箔転写シート3の箔層13側には厚さ約2.5μmの接着層4が形成されることとなる(図3参照)。次いで、箔転写シート3は巻き取りロール11により巻き取られる。
なお、上記実施例の箔転写シート3に接着層4を形成してなるシートによって、本発明に係る「転写シート」が構成されている。
【0033】
次に、図4に示すように、エンボス加工機14を使用して加工対象であるポリエチレンテレフタレート製の不織布からなる厚さ約1.5mmの生地18にエンボス加工を施す。このエンボス加工機14は、ロール状のエンボス型15と、これに対向するボトムローラ16と、を備えている。このエンボス型15は少なくとも凸部17の先端面側の全体が約200℃に加熱される。図5に示すように、この凸部17の高さHは約1.2mmとされている。また、生地18の凹部19の深さDは約1mmとされている。さらに、エンボス加工時の凸部17の根元端と生地18の表面との間の隙間Sは約0.2mmとされている。したがって、このエンボス型15の凸部17による加熱押圧時には、その凸部17のみが箔転写シート3に接触しており、凸部17以外の部位が箔転写シート3に接触していない。
【0034】
そして、上述した箔転写シート3の接着層4側と生地18とを重ね合わせてローラ15,16間を通過させる。これにより、エンボス型15の凸部17により箔転写シート3側から箔転写シート3及び生地18が加熱押圧される。すると、生地18に凹部19が形成されると共に、接着層4のうちの凹部19の底面に位置する部分が溶融されて凹部19のみに接着層4及び箔層13の一部が残存するように接着される(図5参照)。
【0035】
その後、ローラ15,16間を通過した箔転写シート3が生地18から引き剥がされると、図6に示すように、凹部19の底面に接着された接着層4及び箔層13以外の接着層4及び箔層13は箔転写シート3に残った状態となり、凹部19の底面のみに接着層4及び箔層13が接着されたエンボスシート1が得られることとなる。
【0036】
(2)実施例の効果
本実施例のエンボスシート1の製造方法によれば、エンボス型15の凸部17の加熱押圧によって、生地18に凹部19を形成すると共に、接着層4を部分的に溶融して凹部19のみに接着層4及び箔層13の一部を接着させるようにしたので、生地18の凹部19のみに箔転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に箔転写プリント加工を施したエンボスシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてエンボスシート1の長寿命化を図ることができる。
【0037】
また、本実施例では、接着層4をホットメルト接着剤4aから形成したので、エンボス型15の凸部17の加熱押圧により接着層4を部分的に溶融して生地18の凹部19のみに接着層4及び箔層13をより確実に接着させることができる。特に、本実施例のように、エンボス加工とは別の前工程で箔転写シート3にホットメルト接着剤4aからなる接着層4を形成する場合、接着層4が形成された箔転写シート3の巻き取りの際のブロッキングを抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施例では、エンボス型15の凸部17による加熱押圧時に、エンボス型15の凸部17のみを箔転写シート3に接触させるようにしたので、エンボス型15の凸部17以外の部位が箔転写シート3に接触せず、生地18の凹部19の外周側にエンボス型15の凸部17の熱が伝わり難く、凹部19以外の部位に接着層4及び箔層13が転写されてしまうことをより確実に防止できる。
【0039】
(実施例2)
(1)エンボスシートの製造方法
本実施例2に係るエンボスシートの製造方法では、図7に示す転写シート33を用いる。この転写シート33は、ポリエステル製で厚さ約25μmの支持体フィルム42(本発明に係る「支持層」として例示する。)と、シリコン製の離型層42aと、厚さ約50μmの接着層34と、を積層して形成されている。この接着層34は、ポリエステル樹脂もしくはナイロン樹脂に顔料等の着色剤を含有してなるホットメルト接着剤からなっている。
【0040】
次に、図8に示すように、上記実施例1で説明したエンボス加工機14のローラ15,16間に、上記転写シート33の接着層34側と生地18とを重ね合わせて通過させる。これにより、エンボス型15の凸部17により転写シート33側から転写シート33及び生地18が加熱押圧される。すると、生地18に凹部19が形成されると共に、接着層34のうちの凹部19の底面に位置する部分が溶融されて凹部19のみに接着層34の一部が残存するように接着される(図9参照)。
【0041】
その後、ローラ15,16間を通過した転写シート33が生地18から引き剥がされると、図9に示すように、凹部19の底面に接着された接着層34以外の接着層34は転写シート33に残った状態となり、凹部19の底面のみに接着層34が接着されたエンボスシート31が得られることとなる。
【0042】
(2)実施例の効果
本実施例のエンボスシート31の製造方法によれば、上記実施例1のエンボスシート1の製造方法と略同じ作用・効果を奏することに加えて、エンボス型15の凸部17の加熱押圧によって、生地18に凹部19を形成すると共に、接着層34を部分的に溶融して凹部19のみに顔料等の着色剤を含む接着層34を接着させるようにしたので、生地18の凹部19のみに転写プリント加工を施すことができる。これにより、従来のように生地のフラット部や凸部に箔転写プリント加工を施したエンボスシートに比べて、意匠性を高めることができると共に、耐摩擦性を高めてエンボスシート31の長寿命化を図ることができる。
【0043】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1及び2では、エンボス型15の凸部17の先端面側の全体を加熱して凹部19の底面の全体に接着層4及び箔層13(接着層34)を転写するようにしたが、これに限定されず、例えば、図10又は図11に示すように、エンボス型の凸部17の先端面側の一部に他部より高温となり接着層4(接着層34)を溶融可能なヒータ等の接着用加熱部20を設けるようにしてもよい。これにより、生地18の凹部19に接着される接着層4及び箔層13(接着層34)を、凹部19の底面より小さな平面面積を有する接着層4及び箔層13(接着層34)とすることができ、意匠性を更に高めることができる。この場合、図12(a)に示すように、凹部19の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層4’及び箔層13’(接着層34’)としたり、図12(b)に示すように、凹部19の底面の外周形状と略同じ外周形状の接着層4"及び箔層13"(接着層43")としたりすることができる。
【0044】
上述の形態の場合、図10又は図11に示すように、エンボス型15の凸部17の先端面側には、その一部に接着用加熱部20を設けると共に、その接着用加熱部20を囲むように断熱材や冷却水通路等の断熱部22を設けることが好ましい。生地18の凹部19の底面の外周側への接着加熱部20の熱伝達をより確実に抑制できるためである。尚、図10中には、接着用加熱部20が他の部位より突出する凸部17を示し、図11中には、接着用加熱部20が他の部位と同じ高さレベルである凸部17を示す。
【0045】
また、上記実施例1では、エンボス加工と別の前工程として箔転写シート3に接着層4を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、エンボス加工と同じ工程で箔転写シート3に接着層4を形成するようにしてもよい。例えば、エンボス加工機14でロール15,16間に供給される前の箔転写シート3に接着剤4aを塗布して乾燥固化させ接着層4を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施例1及び2では、生地18の凹部19の底面形状(即ち、エンボス型15の凸部17の先端形状)として円形を例示したが、これに限定されず、例えば、生地18の凹部19の底面形状を楕円形、多角形、異形等としてもよい。
【0047】
また、上記実施例1では、グラビアコート装置2を用いて箔転写シート3に接着剤4を塗布しているが、これに限定されず、他の方法であってもよい。
【0048】
また、上記実施例1及び2では、エンボス型15はローラ状としているが、これに限定されず、例えば、板状のエンボス型であってもよい。
【0049】
さらに、上記実施例1及び2では、エンボス加工時に支持体フィルム12を剥離するようにしたが、これに限定されず、例えば、支持体フィルム12を剥離せずに残留させたままの物を中間製品として取り扱い、この中間製品の使用時に支持体フィルム12を剥離するようにしてもよい。
【0050】
さらに、上記実施例2では、生地の凹部に接着される接着層34として、顔料等の着色剤を含む層を例示したが、これに限定されず、例えば、顔料等の着色剤を含まず無色透明の接着層34としてもよい。この場合、生地18の凹部19に接着された無色透明の接着層34と生地18のフラット部との質感の違いにより意匠性が高められる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
凹部のみに転写プリント加工が施されたエンボスシートに関する技術として広く利用される。特に、自動車等の車両内装材用のエンボスシートに関する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例1に係る箔転写シートに接着層を形成する工程を示す概略図である。
【図2】接着層の形成前の箔転写シートを示す縦断面図である。
【図3】接着層の形成後の箔転写シートを示す縦断面図である。
【図4】本実施例1に係るエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図4のVI矢視部の拡大図である。
【図7】本実施例2に係る転写シートを示す概略図である。
【図8】本実施例2に係るエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】他のエンボス型の凸部を説明するための説明図である。
【図11】更に他のエンボス型の凸部を説明するための説明図である。
【図12】他の転写形態を説明するための説明図であり、(a)は凹部の底面の外周形状と異なる外周形状の接着層及び/又は箔層を示し、(b)は凹部の底面の外周形状と略同じ外周形状の接着層及び/又は箔層を示す。
【図13】従来のエンボスシートを製造する工程を示す概略図である。
【図14】従来の箔転写プリント加工の工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1,31;エンボスシート、3;箔転写シート、33;転写シート、4,34;接着層、4a;ホットメルト接着剤、12,42;支持体フィルム、13,13’,13";箔層、15;エンボス型、17;凸部、18;生地、19;凹部、20;接着用加熱部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とするエンボスシートの製造方法。
【請求項2】
前記接着層はホットメルト接着剤からなる請求項1記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項3】
前記転写シートは、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有しており、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、前記凹部のみに前記接着層及び前記箔層の一部を接着させる請求項1又は2に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項4】
前記エンボス型の凸部の先端面側の一部には接着用加熱部が設けられており、該エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部で前記生地に前記凹部を形成すると共に、該接着用加熱部により前記接着層を溶融して該凹部の底面の一部に該接着用加熱部と略同じ形状の該接着層を接着させる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項5】
前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項6】
生地に凹部を備えるエンボスシートであって、
支持層及び接着層を有する転写シートから転写された該接着層の一部が前記凹部のみに接着されていることを特徴とするエンボスシート。
【請求項7】
前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている請求項6記載のエンボスシート。
【請求項1】
支持層及び接着層を有する転写シートの該接着層と生地とを重ね合わせ、エンボス型の凸部により該転写シート側から該転写シート及び該生地を加熱押圧して、該生地に凹部を形成すると共に該凹部のみに該接着層の一部を接着させることを特徴とするエンボスシートの製造方法。
【請求項2】
前記接着層はホットメルト接着剤からなる請求項1記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項3】
前記転写シートは、前記支持層及び前記接着層の間に介在される箔層を更に有しており、前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、前記凹部のみに前記接着層及び前記箔層の一部を接着させる請求項1又は2に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項4】
前記エンボス型の凸部の先端面側の一部には接着用加熱部が設けられており、該エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部で前記生地に前記凹部を形成すると共に、該接着用加熱部により前記接着層を溶融して該凹部の底面の一部に該接着用加熱部と略同じ形状の該接着層を接着させる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項5】
前記エンボス型の凸部による加熱押圧時に、該エンボス型の凸部のみを前記転写シートに接触させる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンボスシートの製造方法。
【請求項6】
生地に凹部を備えるエンボスシートであって、
支持層及び接着層を有する転写シートから転写された該接着層の一部が前記凹部のみに接着されていることを特徴とするエンボスシート。
【請求項7】
前記凹部の底面の一部に前記接着層が接着されている請求項6記載のエンボスシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−18012(P2010−18012A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183176(P2008−183176)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(593207798)田中金整理工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(593207798)田中金整理工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]