説明

エンボスシート検査システム、エンボスシート検査方法

【課題】エンボスシートの外観の良・不良の検査を好適に行うことができるエンボスシート検査システム等を提供する。
【解決手段】エンボスシート検査システム1において、エンボス壁紙シート10を搬送しつつ、斜め上方の照明5より照明されたエンボス壁紙シート10の撮像範囲3aをラインセンサ3で撮像し、画像データ20を画像処理装置7に送信する。画像処理装置7は、画像データ20について、所定の閾値により明点および暗点を抽出し、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部の領域で明点および暗点の面積の総和を算出し、明点および暗点の面積の総和が、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部の領域で所定量以上異なる場合、エンボス壁紙シート10を、不良品であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスシートの外観の良・不良の検査を行うエンボスシート検査システム、およびエンボスシート検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁紙の一つに、エンボス版の凹凸形状を原紙上の樹脂層に転写することにより製造するエンボス壁紙シートがある。このようなエンボス壁紙シートでは、良品や不良品を判定するために、例えば、同一の照明下で幅方向の両端部の艶状態を比較する。
【0003】
幅方向の両端部で艶状態が大きく異なると、不良品であるとされる。内装としては、同じ模様のエンボス壁紙シートを幅方向に並べて貼り付けを行う場合が多いので、幅方向の両端部で艶状態が異なると、エンボス壁紙シート同士が幅方向に接する箇所等で外観上の違和感を与える可能性があるためである。
【0004】
同一の照明下でエンボス壁紙シートの艶状態が異なって見えるのは、エンボス壁紙シートに形成される凹凸形状のためであり、例えば、凸部が多いほど、また凸部が大きいほど艶があるように見えるが、このような外観の検査は目視で行われることが多く、その判断にばらつきが生じると共に、手間がかかっていた。
【0005】
一方、シート状の検査対象物の光沢度を目視によらず検査する例が知られており、例えば特許文献1や特許文献2にその例が示されている。このような方法をエンボス壁紙シートに適用すれば、その光沢度を測定することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−315938号公報
【特許文献2】特開平05−322762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、上記の光沢度は、検査範囲から受光する正反射光の光量を元に、その平均値やピーク値から評価を行うものである。エンボス壁紙シートの場合、凹凸の細かいパターンが艶状態の見えに影響するので、例えば、ある検査範囲で光沢度を測定しても、良品と不良品とでは十分な差を得ることができず、その判定が困難である。このように、従来の測定手法により測定される光沢度では、エンボス壁紙シートの艶状態の見えを十分に反映させることができない。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、エンボスシートの外観の良・不良の検査を好適に行うことができるエンボスシート検査システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための第1の発明は、エンボスシートを、照明装置で照明された所定の撮像範囲で撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像した画像データに基づき、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う画像処理装置と、を具備し、前記画像処理装置は、前記画像データの明点および/または暗点を抽出する明点/暗点抽出部と、抽出した前記明点および/または暗点に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行う良・不良判定部と、を有することを特徴とするエンボスシート検査システムである。
【0010】
かかる構成により、エンボスシートを撮像した画像の明点や暗点に基づき、エンボスシートの外観の良・不良を検査することができる。
すなわち、エンボスシートには凹凸が多数形成されているが、前記のように、凸部が多く、また大きいほど、艶があるように見え、逆の場合では、艶がなく見える。そして、上記のエンボスシート検査システムでエンボスシートを撮像した画像上では、照明光を反射しその反射光が撮像装置に入射したこの凸部が明点となり、また凸部により照明光が遮られる箇所が暗点となる場合が多くなる。
従って、画像上の明点や暗点の状態と、エンボスシートの艶状態の見えが対応するので、明点や暗点に基づきエンボスシートの良・不良の判定を行うことで、エンボスシートの艶状態の見えを十分に反映させた検査が可能となり、また目視によらず検査を容易に行うことができ、判定基準のばらつきもなくなる。
【0011】
前記照明装置は、前記エンボスシートの前記所定の撮像範囲を斜め上方から照明することが望ましい。
これにより、エンボスシートの凹凸がその明暗として顕著に表れるので、エンボスシートの外観の検査をより好適に行うことができる。
【0012】
前記画像処理装置は、前記画像データの所定の領域における、抽出した前記明点および/または暗点の面積の総和を算出する明点/暗点面積算出部を更に具備し、前記良・不良判定部は、算出した前記明点および/または暗点の面積の総和に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことが望ましい。
このように、所定の領域内の明点や暗点の面積の総和を求め、これに基づいてエンボスシートの良・不良の判定を行うことで、エンボスシートの艶状態の見えの違いを検査に好適に反映させることができる。
【0013】
前記良・不良判定部は、前記明点および/または暗点の面積の総和が、前記エンボスシートの所定の2つの領域で所定量以上異なる場合に、前記エンボスシートを不良であると判定することが望ましい。
これにより、エンボスシートの領域の違いにより艶状態が異なって見える外観の不良を防ぐことができる。
【0014】
前記エンボスシートの所定の2つの領域は、それぞれ、前記エンボスシートの幅方向の両端部に対応する領域であることが望ましい。
これにより、壁紙など、幅方向にエンボスシートを並べて用いる場合に、シート同士が幅方向に接する箇所で違和感が生じることを防ぐことができる。
【0015】
前記明点/暗点抽出部は、前記明点および/または暗点を抽出した後、所定値より小さな面積の前記明点および/または暗点を除外することが望ましい。
これにより、エンボスシートの艶状態の見えへの影響が小さい微小な明点や暗点を取り除いて検査を行うことができるので、エンボスシートの艶状態の見えの違いを検査にさらに好適に反映させることができる。
【0016】
第2の発明は、撮像装置が、エンボスシートを、照明装置で照明された所定の撮像範囲で撮像するステップと、画像処理装置が、前記撮像装置で撮像した画像データに基づき、前記エンボスシートの良・不良の検査を行うステップと、を実行し、前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う際、前記画像データの明点および/または暗点を抽出し、抽出した前記明点および/または暗点に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことを特徴とするエンボスシート検査方法である。
【0017】
前記照明装置は、前記エンボスシートの前記所定の撮像範囲を斜め上方から照明することが望ましい。
また、前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う際、前記画像データの所定の領域における、抽出した前記明点および/または暗点の面積の総和を算出し、前記エンボスシートの良・不良の判定を行う際、算出した前記明点および/または暗点の面積の総和に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことが望ましい。
さらに、前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の判定を行う際、前記明点および/または暗点の面積の総和が、前記エンボスシートの所定の2つの領域で所定量以上異なる場合に、前記エンボスシートを不良であると判定することが望ましい。
ここで、前記エンボスシートの所定の2つの領域は、それぞれ、前記エンボスシートの幅方向の両端部に対応する領域であることが望ましい。
加えて、前記画像処理装置は、前記明点および/または暗点を抽出した後、所定値より小さな面積の前記明点および/または暗点を除外することが望ましい。
【0018】
第2の発明は、第1の発明のエンボスシート外観検査システムによるエンボスシート外観検査方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンボスシートの外観の良・不良の検査を好適に行うことができるエンボスシート検査システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エンボスシート検査システム1の概略構成を示す図
【図2】ラインセンサ3、照明5、エンボス壁紙シート10について説明する図
【図3】画像処理装置7のハードウェア構成を示す図
【図4】画像処理装置7の機能構成を示す図
【図5】エンボスシート検査システム1による検査の流れを示す図
【図6】画像データ20の例を示す図
【図7】画像データ20の例を示す図
【図8】画像データ20の例を示す図
【図9】画像データ20の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態のエンボスシート検査システム1の構成について説明する。
【0022】
エンボスシート検査システム1は、エンボス壁紙シート10(エンボスシート)の外観の良・不良を検査するもので、図1に示すように、ラインセンサ3、照明5、画像処理装置7等を有する。また、ラインセンサ3、照明5、およびエンボス壁紙シート10のラインセンサ3による撮像範囲3aは、暗箱8の内部にある。
【0023】
エンボス壁紙シート10は、図2に示すように、表面に凸部10aおよび凹部10bを有するものである。
このエンボス壁紙シート10は、搬送ローラ等の不図示の搬送手段により図1の矢印で示す搬送方向に搬送しつつ、エンボス壁紙シート10の幅方向全体にわたって設定される矩形状の撮像範囲3aにて、ラインセンサ3により撮像される。
【0024】
ラインセンサ3は、エンボス壁紙シート10を撮像する撮像装置であり、エンボス壁紙シート10の撮像範囲3aの上方で、エンボス壁紙シート10の幅方向の中央部に対応する平面位置に設けられる。エンボス壁紙シート10を搬送しつつ、撮像範囲3aにおける撮像を行うことにより、エンボス壁紙シート10全体の画像データが得られる。なお、撮像装置は、エンボス壁紙シート10の画像を取得するものであればよく、ラインセンサ3にかえてエリアセンサなど用いることも可能である。
【0025】
照明5は、エンボス壁紙シート10の撮像範囲3aの斜め上方に設けられ、該撮像範囲3aを斜め上方から照明する。光源は特に限られるものではなく、蛍光灯やLEDランプを用いることができる。
【0026】
照明5で照明されることにより、エンボス壁紙シート10の撮像範囲3aでは、その凹凸による明暗が発生する。
すなわち、図2に示すエンボス壁紙シート10の凸部10aは、照明5からの光を受け、凸部10aでの反射光がラインセンサ3に入射する。凸部10aにおける照明光の反射箇所は、ラインセンサ3により撮像した画像上で明点となるケースが多くなる。一方、凹部10bでは、照明からの光が凸部10aにより遮られる箇所が増加する。このような箇所は、ラインセンサ3により撮像した画像上で暗点となるケースが多くなる。
【0027】
本実施形態では、エンボス壁紙シート10の明暗を強調するため、照明5は、好ましくは、図2で示すエンボス壁紙シート10の法線方向の面上で、撮像範囲3aの中心と照明5とを結ぶ方向とエンボス壁紙シート10の法線方向とがなす角度αが、30°を超えるように設けられる。一方、ラインセンサ3は、好ましくは、撮像範囲3aの中心とラインセンサ3を結ぶ方向とエンボス壁紙シート10の法線方向とがなす角度θが、0〜30°の範囲となるように設けられる。
【0028】
画像処理装置7は、ラインセンサ3と接続し、エンボス壁紙シート10を撮像した画像データをラインセンサ3より取得し、これに基づき、後述する処理によりエンボス壁紙シート10の外観の良・不良を判定する。
【0029】
図3は、画像処理装置7のハードウェア構成を示すブロック図である。図に示すように、画像処理装置7は、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、表示部16、周辺機器I/F部17等が、バス18を介して接続された構成である。
【0030】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
CPUは、記憶部12、ROM、記憶媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各装置を駆動制御し、画像処理装置7が行う後述する処理を実現する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記憶媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0031】
記憶部12は、HDD(ハードディスクドライブ)等であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理を実行するためのアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0032】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、―R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、―R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、他の装置との通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して他の装置との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0033】
入力部15は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
表示部16は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、およびディスプレイ装置と連携して、表示機能を実現するための論理回路等を有する。
【0034】
周辺機器I/F(インタフェース)部17は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部17を介して周辺機器とのデータ送受信を行う。周辺機器I/F部17は、USB等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0035】
図4は、画像処理装置7の機能構成を示す図である。
図4に示すように、画像処理装置7は、画像データ取得部71、明点/暗点抽出部73、明点/暗点面積算出部75、良・不良判定部77、結果出力部79等を有し、記憶部12に画像データ20を記憶する。
【0036】
画像データ取得部71は、画像処理装置7の制御部11が、ラインセンサ3でエンボス壁紙シート10を撮像した画像データ20を取得し、記憶部12に記憶するものである。
明点/暗点抽出部73は、画像処理装置7の制御部11が、画像データ20に対し所定の閾値に基づく多値化処理を行い、明点、暗点を抽出するものである。
明点/暗点面積算出部75は、画像処理装置7の制御部11が、上記抽出した明点、暗点の面積を算出するものである。
良・不良判定部77は、画像処理装置7の制御部11が、上記算出した明点、暗点の面積から、エンボス壁紙シート10の良・不良を判定するものである。
結果出力部79は、画像処理装置7の制御部11が、上記の良・不良の判定の結果を表示部16等で表示するなどして出力するものである。
【0037】
次に、エンボスシート検査システム1における処理の流れについて、図5を参照して説明する。
【0038】
エンボスシート検査システム1では、まず、エンボス壁紙シート10を搬送しつつ、ラインセンサ3で前記した撮像範囲3aの撮像を行うことにより、エンボス壁紙シート10の撮像を行う(S101)。
【0039】
ラインセンサ3は、エンボス壁紙シート10を撮像した画像データ20を画像処理装置7に送信する。画像処理装置7の制御部11は、この画像データ20を受信して取得し、記憶部12に記憶する(S102)。
画像データ20の例が図6である。図6は、エンボス壁紙シート10全体の画像データ20中で、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部にあたる所定の領域を左右にそれぞれ示したものである。後述する図7〜9でも同様である。
【0040】
次に、画像処理装置7の制御部11は、画像データ20について、局所的な明るさ変化の補正処理を行う(S103)。
【0041】
撮像範囲3aでは、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部に向かうに従って、撮像範囲3aからラインセンサ3に入射する光量が、若干ではあるが平均的に低下する。従って、S103では、上記の光量の変化に対応して、画像データ20において、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部に向かうに従って、その平均的な輝度(画素値)を全体的に若干上昇させる補正を行う。この画像データ20の例が、図7である。
【0042】
続いて、画像処理装置7の制御部11は、画像データ20について、明点、暗点の抽出を行う(S104)。
【0043】
S104では、画像データ20について、所定の2つの閾値による多値化を行い、高い方の閾値より高輝度の部分を明点として抽出するとともに、低い方の閾値より低輝度の部分を暗点として抽出する。この閾値は予め適当な値に定めておき、記憶部12等に記憶させておく。画像データ20において、明点を白で、暗点を黒で表示した例が、図8である。
【0044】
その後、画像処理装置7の制御部11は、画像データ20における明点および暗点について、微小点を除外する処理を行う(S105)。
【0045】
S105において、画像処理装置7の制御部11は、S104で抽出した個々の明点および暗点の領域のラベリングを行うとともに、その面積(画素数)を算出し、これが所定値より小さいものを明点、あるいは暗点から除外する。この所定値も、前記と同様予め適当な値に定めておき、記憶部12等に記憶させておく。このようにして小さな明点および暗点を除外した状態が、図9である。
なお、上記の処理に代えて、各明点、暗点について、外周部の画素を所定幅の画素分削減する収縮処理を行うことにより、微小点を消滅させ除外するようにしてもよい。
【0046】
そして、画像処理装置7の制御部11は、微小点を除外した後の、明点および暗点の面積の総和を算出し(S106)、この値に基づいて、エンボス壁紙シート10の良品・不良品の判定を行う(S107)。
【0047】
S106では、画像データ20において、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部にあたる所定の2つの領域(図9の左右の画像)について、上記の明点および暗点の面積の総和を算出する。
そして、S107では、2つの領域間で、明点および暗点の面積の総和が所定量以上異なっていれば、不良品であると判定する。
比較する領域、および上記の所定量は、前記と同様、予め適当なものに定めておき、記憶部12等に記憶させておく。
【0048】
明点および暗点の状態は、前記の通りエンボス壁紙シート10の凸部に依存し、明点および暗点の総面積は、凸部が多く、また凸部が大きいほど大きな値となる。このような場合、エンボス壁紙シート10は艶のある外観となる。一方、凸部が少なく、また凸部が小さい場合には逆となる。従って、2つの領域間で、明点および暗点の面積の総和が大きく違えば艶状態が大きく異なることになるので、このような場合にエンボス壁紙シート10が外観上不良品であるとする判定を行う。
【0049】
その後、画像処理装置7は、良・不良の判定結果を検査結果として表示部16に表示するなどして出力し(S108)、エンボスシート検査システム1における処理を終了する。
なお、警報装置を画像処理装置7に接続しておき、不良と判定された場合に警報を行いオペレータに不良が発生している旨を知らせるようにしてもよい。警報装置としては、例えばランプの点灯により警報を行うものや、音声により警報を行うもの、あるいはモニタ等に不良が発生している旨を表示するもの等を用いることができる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、エンボス壁紙シート10を撮像した画像データ20上の明点や暗点に基づき、エンボス壁紙シート10の外観の良・不良を判定することができる。
前記のように、画像データ20上の明点や暗点の状態と、エンボス壁紙シート10の艶状態の見えが対応するので、明点や暗点に基づきエンボス壁紙シート10の良・不良の判定を行うことで、判定結果がエンボス壁紙シート10の艶状態の見えを十分に反映させたものとなり、また目視によらず判定を容易に行うことができ、判定基準のばらつきもなくなる。
【0051】
また、照明5は、エンボス壁紙シート10の撮像範囲3aを斜め上方から照明するので、エンボス壁紙シート10の凹凸がその明暗として顕著に表れ、エンボス壁紙シート10の外観の検査をより好適に行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部の2つの領域で明点および暗点の面積の総和を算出し、これが所定量異なる場合に、エンボス壁紙シート10を不良であると判定するので、エンボス壁紙シート10の艶状態の見えの違いを判定結果に好適に反映させることができ、エンボス壁紙シート10の領域の違いにより艶状態が異なって見える外観上の不良を防ぐことができる。特に、本実施形態ではエンボス壁紙シート10の幅方向の両端部を比較しており、内装等でエンボス壁紙シート10同士を幅方向に並べて貼り付けて用いた場合に、シート同士が幅方向に接する箇所で違和感が生じることを防ぐことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、明点および暗点の面積の総和を算出して判定に用いているが、この他、明点の面積の和、あるいは暗点の面積の和のみ用いて同様に判定を行うことも可能である。
また、面積以外にも、明点および暗点の数を算出し判定に用いることも可能である。例えば、前記の2つの領域間でその数が所定量以上異なる場合に、エンボス壁紙シートを不良品と判定することも可能である。上記と同様、この場合も、明点あるいは暗点の数のみ用いて判定を行うことができる。
【0054】
また、比較する領域も目的に応じて定められ、エンボス壁紙シート10の幅方向の両端部に限ることはない。
加えて、領域同士の比較ではなく、1つの領域における明点や暗点の面積の総和等によって良・不良を判別することも可能である。例えば基準値を事前に設けておき、基準値以上あるいは未満である場合に不良品と判定することも可能である。
【0055】
また、本実施形態では、エンボス壁紙シート10の艶状態の見えへの影響が小さい微小な明点や暗点を取り除いて前記の判定を行うので、判定結果がエンボス壁紙シート10の艶状態の違いにさらに沿ったものとなる。ただし、微小点を除外せずにおくことも可能である。
【0056】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本実施形態では、エンボスシート検査システム1の検査対象をエンボス壁紙シートとしたが、壁紙に限らず、凹凸を有するエンボスシートであれば同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1………エンボスシート検査システム
3………ラインセンサ
3a………撮像範囲
5………照明
7………画像処理装置
10………エンボス壁紙シート
20………画像データ
71………画像データ取得部
73………明点/暗点抽出部
75………明点/暗点面積算出部
77………良・不良判定部
79………結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンボスシートを、照明装置で照明された所定の撮像範囲で撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像した画像データに基づき、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う画像処理装置と、
を具備し、
前記画像処理装置は、
前記画像データの明点および/または暗点を抽出する明点/暗点抽出部と、
抽出した前記明点および/または暗点に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行う良・不良判定部と、
を有することを特徴とするエンボスシート検査システム。
【請求項2】
前記照明装置は、前記エンボスシートの前記所定の撮像範囲を斜め上方から照明することを特徴とする請求項1記載のエンボスシート検査システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は、
前記画像データの所定の領域における、抽出した前記明点および/または暗点の面積の総和を算出する明点/暗点面積算出部を更に具備し、
前記良・不良判定部は、
算出した前記明点および/または暗点の面積の総和に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載のエンボスシート検査システム。
【請求項4】
前記良・不良判定部は、前記明点および/または暗点の面積の総和が、前記エンボスシートの所定の2つの領域で所定量以上異なる場合に、前記エンボスシートを不良であると判定することを特徴とする請求項3に記載のエンボスシート検査システム。
【請求項5】
前記エンボスシートの所定の2つの領域は、それぞれ、前記エンボスシートの幅方向の両端部に対応する領域であることを特徴とする請求項4に記載のエンボスシート検査システム。
【請求項6】
前記明点/暗点抽出部は、前記明点および/または暗点を抽出した後、所定値より小さな面積の前記明点および/または暗点を除外することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンボスシート検査システム。
【請求項7】
撮像装置が、エンボスシートを、照明装置で照明された所定の撮像範囲で撮像するステップと、
画像処理装置が、前記撮像装置で撮像した画像データに基づき、前記エンボスシートの良・不良の検査を行うステップと、
を実行し、
前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う際、
前記画像データの明点および/または暗点を抽出し、
抽出した前記明点および/または暗点に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことを特徴とするエンボスシート検査方法。
【請求項8】
前記照明装置は、前記エンボスシートの前記所定の撮像範囲を斜め上方から照明することを特徴とする請求項7記載のエンボスシート検査方法。
【請求項9】
前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の検査を行う際、
前記画像データの所定の領域における、抽出した前記明点および/または暗点の面積の総和を算出し、
前記エンボスシートの良・不良の判定を行う際、算出した前記明点および/または暗点の面積の総和に基づいて、前記エンボスシートの良・不良の判定を行うことを特徴とする請求項7または請求項8記載のエンボスシート検査方法。
【請求項10】
前記画像処理装置は、前記エンボスシートの良・不良の判定を行う際、前記明点および/または暗点の面積の総和が、前記エンボスシートの所定の2つの領域で所定量以上異なる場合に、前記エンボスシートを不良であると判定することを特徴とする請求項9に記載のエンボスシート検査方法。
【請求項11】
前記エンボスシートの所定の2つの領域は、それぞれ、前記エンボスシートの幅方向の両端部に対応する領域であることを特徴とする請求項10に記載のエンボスシート検査方法。
【請求項12】
前記画像処理装置は、前記明点および/または暗点を抽出した後、所定値より小さな面積の前記明点および/または暗点を除外することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれかに記載のエンボスシート検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68445(P2013−68445A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205529(P2011−205529)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】