説明

エンボス加工装置

【課題】生産性が向上でき、かつ、良好な転写ができるエンボス加工装置を提供する。
【解決手段】エンボス加工装置1の転写装置3は、表面にエンボスパターンが形成され移動可能とするエンボス型32を有する。支持装置4は、ロール41A〜41C及びロール41A〜41Cに巻回され外周面421の一部とエンボス型32とでスクリーン100を挟持するベルト42を有し、ロール41A〜41Cの回転によりベルト42の一部がエンボス型32の移動方向に沿って移動する。モーター35A,35B,45A〜45Cは、エンボス型32及びベルト42を移動させる。ベルト42は、外周面421の一部がエンボス型32の型面321の形状に倣うように配設され、ロール31A,41A,41C、加熱ユニット5は、スクリーン100において、エンボス型32とベルト42の外周面421の一部との間に挟持された部位を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等から投射された画像光が投影されるスクリーンとして、表面にプリズム形状等の立体形状が設けられているスクリーンが知られている。この立体形状は、樹脂フィルム等のスクリーンにエンボス加工を施すことで形成することができる。
具体的に、基材ロールの外周表面にエンボスパターンが形成されたエンボスロールと、エンボスロールと対向して配置される受けロールとを有するエンボス加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のエンボス加工装置では、供給ロールから巻取ロールに巻き取られる被加工材料が、これらロール間に配置されたエンボスロールと受けロールとに押圧されることで、エンボスパターンが被加工材料に転写される。
このエンボス加工装置では、被加工材料にエンボスパターンを連続して転写できるため、例えば、平面状の型を用い、複数の被加工材料に対して個別にエンボス加工を施す枚葉式のエンボス加工装置に比べて生産性が向上する、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−92196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエンボス加工装置には、以下の問題がある。
樹脂フィルム等の被加工材料に精密なエンボスパターンを高精度で転写するためには、被加工材料を溶解温度付近まで加熱して流動状態にしてエンボス加工を施すことが望ましい。
ところが、特許文献1に記載のエンボス加工装置では、2つのロール状部材(エンボスロールと受けロール)で被加工材料を挟持して転写を行うため、被加工材料と接するエンボス型の面積が非常に小さい。
・ このため、流動状態でエンボス加工を行うには転写前に被加工材料の温度を溶解温度付近にする必要があるが、転写前に溶解温度付近まで加熱すると被加工材料が巻取張力に耐えられず、変形または破断してしまう。
【0005】
本発明の目的は、生産性が向上でき、かつ、良好な転写ができるエンボス加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンボス加工装置は、被加工材料をエンボス加工するエンボス加工装置であって、表面にエンボスパターンが形成され移動可能とするエンボス型を有する転写装置と、複数の支持用ロール、及び前記複数の支持用ロールに巻回され外周面の一部と前記エンボス型とで前記被加工材料を挟持するベルトを有し、前記複数の支持用ロールの回転により前記ベルトの一部が前記エンボス型の移動方向に沿って移動する支持装置と、前記エンボス型及び前記ベルトを移動させる移動装置と、前記被加工材料を加熱する加熱装置とを備え、前記ベルトは、外周面の一部が前記エンボス型の型面形状に倣うように配設され、前記加熱装置は、前記被加工材料において、前記エンボス型と前記ベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を加熱することを特徴とする。
【0007】
本発明では、ベルトは、外周面の一部がエンボス型の型面形状に倣うように配設されている。そして、ベルトは、複数の支持用ロールの回転により、外周面の一部とエンボス型とで被加工材料を挟持しながら、当該外周面の一部がエンボス型の移動方向に移動する。このため、2つのロール状部材で被加工材料を挟持して転写する場合よりも、被加工材料と接するエンボス型の面積を大きくでき、当該被加工材料を挟持する時間(転写時間)を長くすることができる。
そして、加熱装置は、被加工材料において、エンボス型とベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を加熱する。これにより、エンボス型での転写前に被加工材料を溶解温度付近まで加熱せずとも当該転写中に溶解温度付近まで加熱できるため、被加工材料が変形または破断することなくエンボスパターンを高精度に転写することができ、生産性を向上して良好な転写ができる。
【0008】
本発明では、前記エンボス型は、シート状に形成され、前記転写装置は、前記エンボス型が巻回される複数の転写用ロールを備え、前記複数の転写用ロールの回転により前記エンボス型が移動することが好ましい。
本発明によれば、転写装置が備える複数の転写用ロールの回転により、当該複数の転写用ロールに巻回されたシート状のエンボス型が移動する。このため、周回運動するエンボス型で被加工材料にエンボスパターンを連続して転写できる。これにより、一連の転写の流れを止めることなくエンボス加工でき、生産性を向上できる。
また、転写装置がエンボスロール単体で構成されている場合と比較して、ベルトの外周面の一部をより広い範囲でエンボス型の型面形状に倣うように配設することができるため、転写時間をより長くすることができる。
【0009】
本発明では、前記転写装置は、複数の前記エンボス型を有し、前記エンボス型は、前記型面が平面状の型で構成されていることが好ましい。
本発明では、転写装置は、複数のエンボス型を有し、エンボス型の型面が平面状であるため、一連の転写の流れを止めることなくエンボス加工でき、生産性を向上しつつ安価な型でエンボス加工できる。
また、汎用のエンボス型を利用できるため、シート状やロール状の型を用いる場合と比較して、エンボス加工装置の製造を容易にできる。
【0010】
本発明では、前記加熱装置にて加熱された後に前記被加工材料を冷却する冷却装置を備え、前記冷却装置は、前記被加工材料において、前記エンボス型と前記ベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を冷却することが好ましい。
本発明では、エンボス加工装置は、被加工材料において、エンボス型とベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を加熱装置での加熱後に冷却するため、被加工材料を硬化させて、エンボス型からの被加工材料の剥離性を向上でき、転写した形状を保護することができる。被加工材料は、硬化した状態でエンボス型とベルトとの間から排出されるため、エンボス加工後の被加工材料が変形または破断することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンボス加工装置の概略図。
【図2】前記実施形態のエンボス加工装置の要部を示す概略図。
【図3】前記実施形態のエンボス加工装置で加工されるスクリーンの平面図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエンボス加工装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔エンボス加工装置の構成〕
図1は、本実施形態に係るエンボス加工装置1を示す概略図である。図2は、エンボス加工装置の要部を示す概略図、図3は、本実施形態に係るエンボス加工装置1にて加工される被加工材料としてのスクリーン100を示す平面図である。
エンボス加工装置1は、硬質塩化ビニール製のスクリーン100に対して、エンボス加工によりスクリーン100の表面に立体形状として凹凸を形成するものである。このエンボス加工装置1は、図1に示すように、搬送装置2、転写装置3、支持装置4、加熱ユニット5及び冷却ユニット6を備える。
【0013】
搬送装置2は、図1に示すように、送り出しロール21と、ヒーター22と、予熱ロール23と、複数のガイドロール24と、巻き取りロール25とを備え、スクリーン100を送り出しロール21から巻き取りロール25に送るものである。各ロール21,23〜25は、軸方向に沿って回転軸26を備える。送り出しロール21及び巻き取りロール25の回転軸26は、モーター(図示略)で駆動される。
【0014】
送り出しロール21は、スクリーン100を予め巻回しておくものである。送り出しロール21の回転軸26は、モーターによって回転駆動される。
ヒーター22は、予熱ロール23の外周表面に対向した位置に配置されて、送り出しロール21から供給されたスクリーン100を加熱する。
ここで、スクリーン100は、溶解温度付近である約200℃以上まで加熱されることで流動状態となり、良好な転写が行える。硬質塩化ビニール製のスクリーン100は、80℃以上に加熱すれば軟化して転写し易くなるが、高輝度スクリーン用の精密なエンボスパターンを精度よく転写するには溶解温度付近である200℃以上とすることが好ましい。ヒーター22は、スクリーン100を約150℃まで加熱する。
予熱ロール23は、ヒーター22にて加熱されたスクリーン100を転写装置3及び支持装置4に向けて送り出す。なお、予熱ロール23には、熱伝導性の高い材質が用いられることが好ましい。
【0015】
ガイドロール24は、送り出しロール21から予熱ロール23、及び転写装置3と支持装置4から巻き取りロール25に向けて、スクリーン100を案内(ガイド)して送るものである。巻き取りロール25は、エンボス加工されたスクリーン100を巻回するものである。この巻き取りロール25の回転軸26は、送り出しロール21と同様に、モーターによって回転駆動される。
【0016】
転写装置3は、以下のように、表面にエンボスパターンが形成され移動可能とされたエンボス型32を備える。転写装置3は、図1に示すように、2つの転写用ロール31A,31Bと、当該2つの転写用ロール31A,31Bに巻回されたエンボス型32とを備える。なお、各ロール31A,31Bは、軸方向に沿って回転軸33A,33Bを備える。
エンボス型32は、無端状のシート材で構成されている。このエンボス型32は、電鋳母型を金属塩からなる電解溶液に漬けて電解により金属塩を母型表面に析出させ、その析出した金属層を母型から剥離して得られた電鋳型であり、エンボス型32の表面には、当該母型表面の凹凸が複写されてエンボスパターンが形成されている。そして、エンボス型32は、図1に示すように、エンボスパターンが形成された表面を外側にして転写用ロール31A,31Bに巻回することで外面側に型面321を構成する。なお、エンボス型32のサイズは、スクリーン100のサイズに応じて決定される。エンボス型32は、各転写用ロール31A,31Bの回転により回転する。
【0017】
支持装置4は、3つの支持用ロール41A,41B,41Cと、当該3つの支持用ロール41A,41B,41Cに巻回されたベルト42と、ベルト42を押圧する押圧ロール43とを備える。なお、各ロール41A〜41C,43は、それぞれ軸方向に沿って回転軸44A〜44C,45を備える。各支持用ロール41A〜41Cは、それぞれ回転軸44A〜44Cにより、エンボス加工装置1に固定して配置される。押圧ロール43は、回転軸45により各支持用ロール41A〜41Cに巻回したベルト42を押圧可能にエンボス加工装置1に取り付けられている。
ベルト42は、無端状のシート材で構成されている。ベルト42は、具体的には、耐熱性のゴムベルトである。ベルト42のサイズは、エンボス型32と同じか、それよりも大きく構成されている。ベルト42は、各ロール41A〜41C,43の回転により回転する。なお、ベルト42は、外周面421の一部がエンボス型32の型面321の形状に倣うように配設されている。
【0018】
各回転軸33A,33Bの両端には、それぞれ油圧シリンダー34A,34Bが取り付けられている。油圧シリンダー34A,34Bは、それぞれ回転軸33A,33Bを径方向に進退させることで、エンボス型32をベルト42に対して近接離間させる。
エンボス加工前後では、転写用ロール31A,31Bをベルト42から離間させて、スクリーン100をエンボス型32とベルト42との間に配置する。また、エンボス加工中では、油圧シリンダー34A,34Bは、それぞれ、回転軸33A,33Bを径方向に押圧し、一定の圧力をエンボス型32からベルト42に対して加える。このことにより、スクリーン100は、エンボス型32の型面321とベルト42の外周面421とで一定の圧力が加えられた状態で挟持され、スクリーン100にエンボス型32のエンボスパターン(図3に示すような円弧状のパターン)が転写される。スクリーン100を挟持した状態は、スクリーン100がエンボス型32及びベルト42の間に挿入されてから、エンボス型32及びベルト42の間から排出されるまで保たれる。
【0019】
また、回転軸33A,33B及び回転軸44A,44B,44Cには、それぞれ移動装置としてのモーター35A,35B及びモーター45A,45B,45Cが取り付けられている。モーター35A,35Bは、それぞれ回転軸33A,33Bを回転駆動することで転写用ロール31A,31Bを回転させ、エンボス型32を回転させる。モーター45A〜45Cは、それぞれ回転軸44A〜44Cを回転駆動することで支持用ロール41A〜41Cを回転させ、ベルト42を回転させる。なお、図2に示すように、モーター35A,35B及びモーター45A〜45Cは、それぞれスクリーン100が搬送方向に移動するように、エンボス型32、ベルト42を回転させる。これにより、ベルト42の一部がエンボス型32の移動方向に沿って移動する。なお、ベルト42は、エンボス型32の回転とは反対方向に回転する。
【0020】
エンボス加工装置1は、加熱装置としてロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5を備えている。ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5は、スクリーン100において、エンボス型32とベルト42の外周面421の一部との間に挟持された部位を加熱する。
ロール31A,41A,41Cは、ロール自体が加熱する加熱ロールである。具体的に、ロール31A,41A,41Cは、内部に配設されている循環経路内に高圧蒸気を通過させることでスクリーン100を加熱する。なお、ロール31A,41A,41Cには、熱伝導性の高い材質が用いられることが好ましい。
加熱ユニット5は、エンボス型32内及びベルト42内にそれぞれ設けられている。具体的に、加熱ユニット5は、ロール31A,41A,41Cと同様、エンボス型32及びベルト42内に高圧蒸気を通過させることでスクリーン100を加熱する。図1に示すように、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5により、スクリーン100を両側(転写装置3側と支持装置4側)から加熱することで、均等かつ短時間にスクリーン100を加熱することができる。
【0021】
これらロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5は、スクリーン100を加熱して理想の熱転写条件を得るため設けられている。具体的に、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5は、エンボス型32とベルト42とで挟持しているスクリーン100の温度が溶解温度付近の約200℃以上となるように加熱する。なお、スクリーン100は、ヒーター22にて予め約150℃に加熱されるため、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5は、短時間でスクリーン100を加熱できる。
【0022】
また、エンボス加工装置1は、冷却装置として冷却ユニット6を備えている。冷却ユニット6は、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5で加熱後のスクリーン100において、エンボス型32とベルト42とで挟持された部位を冷却する。
冷却ユニット6は、エンボス型32内及びベルト42内にそれぞれ設けられている。具体的に、冷却ユニット6は、エンボス型32内及びベルト42内に配設された循環経路内に冷却水等の冷媒を循環させることで、スクリーン100を冷却する。図1に示すように、冷却ユニット6により、スクリーン100を両側(転写装置3側と支持装置4側)から冷却することで、均等かつ短時間にスクリーン100を冷却することができる。
【0023】
冷却ユニット6は、スクリーン100を冷却して流動状態から硬化状態とする。具体的に、冷却ユニット6は、エンボス型32とベルト42とで挟持しているスクリーン100の温度が約70℃以下となるようにスクリーン100を冷却して硬化状態とする。
なお、エンボス加工装置1は、搬送装置2の駆動、モーター35A,35B及びモーター45A〜45Cの駆動を制御することで、スクリーン100と、スクリーン100を挟持するエンボス型32及びベルト42とを、転写しているエンボスパターンがずれないように移動させる。
【0024】
〔エンボス加工装置の動作〕
使用者は、スクリーン100を予め送り出しロール21に巻回する。エンボス加工作業の前に、図1に示すように、送り出しロール21に巻回されたスクリーン100をガイドロール24、予熱ロール23、転写装置3、支持装置4、及びガイドロール24に沿って、巻き取りロール25にスクリーン100の一端を取り付けておく。この際、油圧シリンダー34A,34Bを駆動することにより、エンボス型32をベルト42に対して離間させて、スクリーン100をエンボス型32とベルト42との間に配置する。
【0025】
そして、スクリーン100のサイズに応じたエンボス型32を転写用ロール31A,31Bに巻回し、油圧シリンダー34A,34Bを駆動することにより、転写用ロール31A,31Bの回転軸33A,33Bをそれぞれ径方向に押圧して、スクリーン100をエンボス型32とベルト42とで挟持する。
【0026】
次に、エンボス加工装置1を稼働させると、搬送装置2の駆動と、モーター35A,35B及びモーター45A〜45Cの駆動によって、エンボス型32及びベルト42がそれぞれ回転して、スクリーン100は、ヒーター22にて約150℃に加熱され、予熱ロール23は、加熱されたスクリーン100を転写装置3及び支持装置4に向けて供給する。そして、スクリーン100は、エンボス型32とベルト42とに押圧され、スクリーン100には、エンボス型32のエンボスパターンが転写される。この際、予熱ロール23からエンボス型32及びベルト42の間に挿入されたスクリーン100は、先ず、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5により溶解温度付近である約200℃以上に加熱されて流動状態となる。そして、スクリーン100は、この加熱後に冷却ユニット6により約70℃以下に冷却されて硬化状態となった後、エンボス型32から剥離され、エンボス型32及びベルト42の間から排出される。エンボスパターンが転写されたスクリーン100は、巻き取りロール25に巻き取られていく。この巻き取られたスクリーン100を裁断することで、図3に示すスクリーン100が製造される。
【0027】
上述した本実施形態のエンボス加工装置1によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、ベルト42は、外周面421の一部がエンボス型32の型面321の形状に倣うように配設されている。そして、ベルト42は、3つの支持用ロール41A〜41Cの回転により、外周面421の一部とエンボス型32とでスクリーン100を挟持しながら、当該外周面421の一部がエンボス型32の移動方向に移動する。このため、2つのロール状部材でスクリーン100を挟持して転写する場合よりも、スクリーン100と接するエンボス型32の面積を大きくでき、スクリーン100を挟持する時間(転写時間)を長くすることができる。
そして、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5は、スクリーン100において、エンボス型32とベルト42の外周面421の一部との間に挟持された部位を加熱する。これにより、エンボス型32による転写前にスクリーン100を溶解温度付近まで加熱せずとも当該転写中に溶解温度付近まで加熱できるため、スクリーン100が変形または破断することなくエンボスパターンを高精度に転写することができ、生産性を向上して良好な転写ができる。
また、エンボス加工装置1は、搬送装置2及びモーター35A,35B及びモーター45A〜45Cを制御して、挟持しているスクリーン100の移動速度を調整することで生産性と転写時間とを適切に設定することができる。
【0028】
転写装置3が備える2つの転写用ロール31A,31Bの回転により、転写用ロール31A,31Bに巻回されたシート状のエンボス型32が移動するため、周回運動するエンボス型32でスクリーン100にエンボスパターンを連続して転写できる。これにより、一連の転写の流れを止めることなくエンボス加工でき、生産性を向上できる。
また、転写装置がエンボスロール単体で構成されている場合と比較して、ベルト42の外周面421の一部をより広い範囲でエンボス型32の型面321の形状に倣うように配設することができるため、転写時間をより長くすることができる。
【0029】
エンボス加工装置1は、スクリーン100において、エンボス型32とベルト42の外周面421の一部との間に挟持された部位を、ロール31A,41A,41C及び加熱ユニット5での加熱後に冷却するため、スクリーン100を硬化させて、エンボス型32からのスクリーン100の剥離性を向上でき、転写した形状を保護することができる。スクリーン100は、硬化した状態でエンボス型32とベルト42との間から排出されるため、エンボス加工後のスクリーン100が変形または破断することを防止できる。
【0030】
ところで、2つのロール状部材(エンボスロールと受けロール)で被加工材料を挟持して転写を行う従来のエンボス加工(以下、ロールエンボス加工と称する)では、大型の被加工材料にエンボス加工を施すことが難しかった。すなわち、100インチ等の大型のスクリーンにエンボス加工を施すには、φ800mm以上の大径のエンボスロールが必要となるが、このような大型のエンボスロールは、製造が困難である。また、ロールエンボス加工では、硬質塩化ビニール製のスクリーンに精密な凹凸のエンボスパターンを精度良く被加工材料に転写するのは困難である。
【0031】
そこで、従来の型面が平面状の型を用いたエンボス加工(以下、平面エンボス加工と称する)を施すことが考えられるが、平面エンボス加工では、生産性の向上及びコスト改善が難しかった。すなわち、平面エンボス加工では、転写毎の被加工材料のセッティング、型の加熱、高温条件下における長時間の被加工材料との接触により型に付着した被加工材料の洗浄等に時間を要する。また、サイズが大きい型では、プレス条件、特に平面度を満たすことが困難であった。さらに、型からの被加工材料の剥離性が良好でないため、型が損傷し易く、また、欠陥製品や不良製品が発生し易かった。
本実施形態のエンボス加工装置1は、前述した構造を備えることにより、これらの点が改善され、ロールエンボス加工と平面エンボス加工の利点を併せ持つことができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施形態のエンボス加工装置1は、主としてスクリーン100を支持装置4と転写装置7とで挟持する点において、前記第1実施形態とは相違する。
このエンボス加工装置1は、図4に示すように、搬送装置2、支持装置4、転写装置7、加熱ユニット8、型予熱装置9及び冷却ユニット10を備える。
【0033】
本実施形態では、図4に示すように、支持装置4は、転写装置7の上方に配置され、エンボス加工中では、支持装置4と転写装置7との間にスクリーン100が配置される。このため、支持用ロール41B,41C及びベルト42は、前記第1実施形態とは反対に回転する。また、支持装置4は、前記第1実施形態の支持用ロール41A及び押圧ロール43を省略し、2つの支持用ロール41B,41Cにベルト42を巻回している。
【0034】
転写装置7は、以下のように、表面にエンボスパターンが形成され移動可能とされたエンボス型71を備える。転写装置7は、複数のエンボス型71と、各エンボス型71を搬送する移動装置としての型搬送機72とを備えている。すなわち、このエンボス加工装置1は、移動装置として、モーター45B,45C及び型搬送機72を備えている。
エンボス型71は、型面711が平面状の電鋳型である点において、第1実施形態のシート状のエンボス型32とは相違する。エンボス型71の型面711には、エンボスパターンが形成されている。なお、エンボス型71のサイズは、スクリーン100のサイズに応じて決定される。
【0035】
型搬送機72は、油圧シリンダー721を介してエンボス型71を載置する載置面722を備えている。各油圧シリンダー721は、それぞれエンボス型71を支持装置4の方向(上下方向)に進退させることで、エンボス型71をベルト42に対して近接離間させる。
エンボス加工前後では、エンボス型71をベルト42から離間させて、スクリーン100をエンボス型71とベルト42との間に配置する。また、エンボス加工中では、油圧シリンダー721は、エンボス型71を支持装置4の方向に押圧し、一定の圧力をエンボス型71からベルト42に対して加える。このことにより、スクリーン100は、エンボス型71の型面711とベルト42の外周面421とで一定の圧力が加えられた状態で挟持され、スクリーン100にエンボス型71のエンボスパターン(図3に示すような円弧状のパターン)が転写される。
また、型搬送機72は、複数のエンボス型71を巡回させて、載置面722に載置されているエンボス型71をスクリーン100の移動方向に合わせて移動させる構造を有している。
【0036】
エンボス加工装置1は、加熱装置として、加熱ユニット8と、型予熱装置9とを備える。加熱ユニット8は、前記第1実施形態における加熱ユニット5と同様の構成である。
型予熱装置9は、型搬送機72で巡回しているエンボス型71をヒーター等により加熱する。具体的に、型予熱装置9は、エンボス型71を約200℃以上に加熱する。エンボス加工装置1は、複数のエンボス型71を巡回させるため、エンボス型71を加熱する時間を十分に得ることができる。
そして、加熱ユニット8と型予熱装置9は、スクリーン100において、エンボス型71とベルト42の外周面421の一部との間に挟持された部位を約200℃以上に加熱する。
【0037】
また、エンボス加工装置1は、冷却装置として冷却ユニット10を備える。冷却ユニット10は、前記第1実施形態における冷却ユニット6と同様の構成である。そして、冷却ユニット10は、加熱ユニット8及びエンボス型71で加熱後のスクリーン100において、エンボス型71とベルト42とで挟持された部位を約70℃以下に冷却する。
なお、エンボス加工装置1は、搬送装置2の駆動、モーター45B,45Cの駆動及び型搬送機72によるエンボス型71の移動速度を制御することで、スクリーン100と、スクリーン100を挟持するエンボス型71及びベルト42とを、転写しているエンボスパターンがずれないように移動させる。
【0038】
上述した本実施形態のエンボス加工装置1によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
転写装置7は、複数のエンボス型71を有し、エンボス型71の型面711が平面状であるため、生産性を向上しつつ安価な型でエンボス加工できる。
また、汎用のエンボス型を利用できるため、シート状やロール状の型を用いる場合と比較して、エンボス加工装置1の製造を容易にできる。
【0039】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、前記各実施形態では、硬質塩化ビニール製のスクリーン100を例示して説明したが、これに限らず、軟質塩化ビニール製等、他の材料を用いたスクリーンの加工に適用してもよい。また、各部におけるスクリーン100の温度は、材料に応じて適宜設定すればよい。また、スクリーン100を挟持した状態において、前記各実施形態で説示した温度状態にできるのであれば、加熱及び冷却の方法は、前記各実施形態で示したものに限定されない。
【0040】
前記第1実施形態では、シート状のエンボス型32を例示し、前記第2実施形態では型面が平面状のエンボス型71を例示したが、エンボス型の形状はこれに限らない。例えば、第1実施形態での転写用ロール31Aをエンボスロールとする構成であってもよい。また、エンボス型32,71は、電鋳型として説明したが、エンボス加工による転写が可能な型面を有するのであれば電鋳型に限らない。
前記各実施形態では、ベルト42としてゴムベルトを例示したが、これに限らず、スチールベルト等の金属製のベルトで構成してもよい。
前記第1実施形態では、2つの転写用ロール31A,31Bにエンボス型32を巻回し、3つの支持用ロール41A〜41Cにベルト42を巻回する構成とし、前記第2実施形態では、2つの支持用ロール41B,41Cにベルト42を巻回する構成としたが、巻回するロール数は、これらに限らない。
前記第1実施形態では、モーター35A,35B及びモーター45A〜45Cを移動装置とし、前記第2実施形態では、モーター45B,45C及び型搬送機72を移動装置としたが、移動装置は、エンボス型32,71及びベルト42を移動させることができるのであれば、これに限らない。例えば、各実施形態において、支持装置4側の各ロールに取り付けられているモーターを省略してもよい。
【0041】
前記第1実施形態では、エンボス型32が、油圧シリンダー34A,34Bによりベルト42に対して押圧される構成とし、第2実施形態では、エンボス型71が、油圧シリンダー721によりベルト42に対して押圧される構成としたが、ベルト42がエンボス型32,71をそれぞれ押圧する構成としてもよい。
前記第1実施形態では、エンボス型32を各転写用ロール31A,31Bに直接、巻回していたが、各転写用ロール31A,31Bにベルト部材を巻回させて、このベルト部材の表面にエンボス型32を覆うように取り付けてもよい。
【0042】
前記各実施形態で加工されるスクリーン100は、反射型スクリーンを前提としたが、これに限定されず、透過型スクリーンであってもよい。また、スクリーン100としては、近接投射型のプロジェクターからの画像光を投影するスクリーンに適用することが好ましいが、これに限らず、コントラストの向上を目的とするスクリーン等、様々な目的で立体形状が形成されているスクリーンの製造に適用することができる。
また、前記各実施形態では、エンボス加工装置1によりスクリーン100が加工されていたが、加工対象はスクリーン100に限定されず、紙、金属薄板、プラスチックフィルム等であってもよい。転写する形状についても円弧状のエンボスパターンに限らず、他の立体形状をエンボスパターンとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、被加工材料に凹凸を形成するエンボス加工装置に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・エンボス加工装置、3,7・・・転写装置、4・・・支持装置、5,8・・・加熱ユニット(加熱装置)、6,10・・・冷却ユニット(冷却装置)、9・・・型予熱装置(加熱装置)、31A,31B・・・転写用ロール、32,71・・・エンボス型、35A,35B,45A〜45C・・・モーター(移動装置)、41A〜41C・・・支持用ロール、42・・・ベルト、72・・・型搬送機(移動装置)、321,711・・・型面、421・・・外周面、100・・・スクリーン(被加工部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材料をエンボス加工するエンボス加工装置であって、
表面にエンボスパターンが形成され移動可能とするエンボス型を有する転写装置と、
複数の支持用ロール、及び前記複数の支持用ロールに巻回され外周面の一部と前記エンボス型とで前記被加工材料を挟持するベルトを有し、前記複数の支持用ロールの回転により前記ベルトの一部が前記エンボス型の移動方向に沿って移動する支持装置と、
前記エンボス型及び前記ベルトを移動させる移動装置と、
前記被加工材料を加熱する加熱装置とを備え、
前記ベルトは、
外周面の一部が前記エンボス型の型面形状に倣うように配設され、
前記加熱装置は、
前記被加工材料において、前記エンボス型と前記ベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を加熱する
ことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンボス加工装置において、
前記エンボス型は、シート状に形成され、
前記転写装置は、
前記エンボス型が巻回される複数の転写用ロールを備え、前記複数の転写用ロールの回転により前記エンボス型が移動する
ことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンボス加工装置において、
前記転写装置は、複数の前記エンボス型を有し、
前記エンボス型は、前記型面が平面状の型で構成されている
ことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のエンボス加工装置において、
前記加熱装置にて加熱された後に前記被加工材料を冷却する冷却装置を備え、
前記冷却装置は、
前記被加工材料において、前記エンボス型と前記ベルトの外周面の一部との間に挟持された部位を冷却する
ことを特徴とするエンボス加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−136461(P2011−136461A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297058(P2009−297058)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】