説明

エンボス加工金属製外壁材

【課題】金属板を組み合わされた一対のエンボスロールの間を通して、金属板の表裏に交互に絞り加工を加えて、凹凸の模様を付けるエンボスロール加工により、光の反射を変える美観が向上し、金属板表面の塗装やメッキを割れを防止する、装飾面を持つエンボス加工金属製外壁材。
【解決手段】長尺の外壁材の装飾面に関して、その前面基部の長手方向に沿って、それぞれがほぼ平行な多数の細長い溝状の横溝目地を形成し、それにほぼ直角に合わさる縦溝目地を複数形成し、それらにより区切られた区画面を多数形成し、一側方を表面側に少し折り曲げて斜平面と頂面を形成し、そして、頂面に対して斜平面の位置が互いに異なる区画面を、それぞれ交互に長手方向に隣接する、装飾面を形成するエンボス加工金属製外壁材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板を組み合わされた一対のエンボスロールの間を通して、金属板の表裏に交互に絞り加工を加えて、凹凸の模様を付けるエンボスロール加工により、光の反射を変える装飾面を持つエンボス加工金属製外壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
反射光を変化させて明るさが変化する効果を生む薄板金属板の壁材には、4方向以上の略平行凹凸模様を形設した凸部領域単位を配設する従来例がある。
(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】 特開2002−235423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
4方向以上の略平行凹凸模様を形設した凸部領域単位を配設する従来例の場合は、反射光を変化させる効果を生む方向性の異なる略平行凹凸模様であるため、その効果を強調させる為に、細い略平行凹凸模様となり、模様の表面質感の印象が制限されて単調となり、また、模様の表面の平坦性が無くなり、太陽光を反射しての鏡の様な輝きある意匠が無くなり、そして、細い略平行凹凸模様は、金属板にアールの小さな加工を加えるため、金属板の表面の塗装やメッキを割って、それらのクラックを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、金属板を成形して装飾面を構成する前面基部の一側端に差込片を形成し、その前面基部の他側端に嵌合溝と釘打片とを形成し、複数連続接続して壁面を施工する、長尺の外壁材の装飾面に関して、その前面基部の長手方向に沿って、それぞれがほぼ平行な多数の細長い溝状の横溝目地を形成し、それらの横溝目地の途中からほぼ直角に分岐して、隣に並行する横溝目地にほぼ直角に合わさる縦溝目地を複数形成し、それらの横溝目地と縦溝目地とにより区切られた次のような区画面を多数形成し、周囲の横溝目地と縦溝目地との底部から形成する面から、その区画面の一側方を表面側に少し折り曲げて斜平面を形成し、その斜平面をさらに裏面側に少し折り曲げて頂面を形成し、その頂面の斜平面に対する他側方を、くの字形に裏面側に折り曲げて、横溝目地に連なり、その頂面の長手方向の両端部も、くの字形に裏面側に折り曲げて、縦溝目地に連なり、そして、頂面に対して斜平面の位置が互いに異なる区画面を、それぞれ交互に長手方向に隣接する、装飾面を形成するエンボス加工金属製外壁材とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明による装飾面には、次のような、効果がある。
【0006】
A.この発明による明るさの異なる模様は、異なる傾斜の斜平面により発現し、方向性の異なる細い略平行凹凸模様によら無いため、
a.平坦な面の斜平面となり、
イ.細い略平行凹凸模様と異なり、模様の表面質感の印象が制限されずに、多様な意匠が発現して美観が向上し、
ロ.斜平面の表面に平坦性があり、一部の斜平面が太陽光を反射して鏡の様な輝く意匠が発現して美感が向上し、
b.細い略平行凹凸模様を金属板に成形するための、小さなアールによるエンボス加工が不要となり、
イ.そのための金属板表面の塗装やメッキを割って、それらのクラックを生じて、その為による錆の発生等を防止できる。
【0007】
B.頂面に対して斜平面の位置が互いに異なる区画面を、それぞれ交互に長手方向に隣接する、装飾面を形成する場合、
a.斜平面のエンボス加工において左右側のエンボス加工量が異なり、金属板の延び量が異なることを防止して、
イ.金属板の延び量の偏りによる、装飾面の有害な凹みであるポケットウェーブの発生を防止可能になり、
ロ.金属板の延び量の偏りによる、金属板の反り、ねじれ、曲がり等を防止可能となり、
ハ.そのために不良率が低下し、生産性が向上し、コストが低下する。
【0008】
C.区画面の幅を複数にする場合、
a.装飾面に幅広い明るさの異なる斜平面を発現し、より多様な変化に富んだ意匠の装飾面となり、
イ.意匠性が向上する。
【0009】
D.頂面に小凹凸を多数形成する場合、
a.入射光が様々な方向に反射されて、ほぼ乱反射状態となり、観察者と外壁材との位置関係によらず、観察者から見ればほぼ一定の明るさの頂面が観察され、
イ.装飾面の意匠に基調となる調子を与えて、壁面にふさわしい落ち着いた印象を与え、意匠性が向上する。
【0010】
E.縦溝目地の中心間の距離の合計の倍数が、エンボスロールの外周に応じる場合は、
a.倍数が大きくなるにしたがって、エンボス加工の斜平面の影響が分散されて、
イ.金属板の延び量の偏りによる、装飾面の有害な凹みであるポケットウェーブの発生を防止可能になり、
ロ.金属板の延び量の偏りによる、金属板の反り、ねじれ、曲がり等を防止可能となり、
ハ.そのために不良率が低下し、生産性が向上し、コストが低下する。
【0011】
F.頂面から下側に続く深い横溝目地を形成する場合は、
a.太陽光等により頂面の下側に途中で途切れた濃い影が入り組んで配置された外壁材の装飾面が発現し、
イ.装飾面の意匠にアクセントを与えて、壁面に印象を与え、意匠性が向上する。
【0012】
G.この発明による明るさの異なる模様は、外壁材の色彩を、
a.明るい場合は、白っぽく彩度が減った色に感じさせ、暗い場合は、彩度の高い鮮やかな色に感じさせて、
b.また、平坦な面の斜平面となるため、色を感じる面積が広くなり、より色の違いが大きくなり、
イ.壁面により大きな変化を与えて、
ロ.意匠性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.この発明による金属板は、
a.次に代表される塗装金属板や、
イ.塗装亜鉛メッキ鋼板
ロ.塗装アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板
ハ.塗装ステンレス鋼板
ニ.塗装銅板
ホ.塗装アルミニウム合金板
ヘ.合成樹脂シート張り合わせ金属板
ト.塗装チタン・ニッケル合金板
チ.その他の塗装合金鋼等
b.次に代表される無塗装金属板、
イ.亜鉛メッキ鋼板
ロ.アルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板
ハ.ステンレス鋼板
ニ.銅板
ホ.アルミニウム合金板等
ヘ.チタン・ニッケル合金板
ト.その他の合金鋼等
c.それらの金属板に深いエンボス加工を加えた金属板
d.エンボス加工の上に塗装した金属板
e.次に代表されるバネ用板
イ.バネ用ステンレス板
ロ.バネ用炭素鋼板
ハ.バネ用銅合金板等を使用する。
【0014】
B.この発明に使用される外壁材は釘打ち固定には、
a.次に代表される、固定具を使用して、外壁材の釘打片を固定し、
イ.セルフドリリングタッピングビス
ロ.釘
ハ.ホッチキス
ニ.木ネジ
ホ.コースレッド等を使用する。
【0015】
C.この発明に使用される発泡合成樹脂等は、
a.外壁材の裏打材には、
イ.次に代表される発泡合成樹脂に
○硬質発泡ウレタン樹脂
○硬質発泡ヌレート樹脂
○発泡フェノール樹脂
○発泡スチレン樹脂等
ロ.次に代表される裏面材を積層している。
○はり合わせアルミニウム箔
○スチールペーパー
Oポリエチコートクラフト紙
○アルミ蒸着紙
○合成樹脂シート等
ハ.前記の金属板と裏面材との間に、それらの発泡合成樹脂を充填し、主に発泡合成樹脂の自己接着性を利用して、積層している。
ニ.また、裏面材を欠いた発泡合成樹脂のみの、裏打材とする事も可能である。
【0016】
発明の実施例について、次の、実施例1により、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1,図2,図3,及び図4の(b)は、この発明の実施例1を示すものである。
【0018】
A.図1,図2,図3,及び図4に示す、実施例1においての外壁材1は、
a.金属板4による長尺の表面材1aを成形して、次の段落に示す装飾面2を構成する前面基部1bを形成し、
b.その前面基部1bの一側端に、次のような差込片1dを持つ前面下端1cを形成し、
イ.その前面下端1cは、前面基部1bの一側端を裏面側に折り返して、さらに、クランク状に表面側に折り曲げ、さらに、U字形に表面側に折り曲げて、その先端を裏面側に折り返した差込片1dを形成し、
c.前面基部1bの他側端に、次のような、前面上端1eと、嵌合溝1fと、釘打片1gとを形成し、
イ.前記の前面基部1bを、くの字形に裏面側に折り曲げて、さらに、クランク状に裏面側に折り曲げて、そして、裏面側に折り返して、前面上端1eを形成し、
ロ.その前面上端1eを、U字形に表面側に折り曲げて、嵌合溝1fを形成し、
ハ.その嵌合溝1fを延長して、先端を表面側に折り返した釘打片1gを形成し、
d.また、成形した表面材1aの裏面側に、裏面材1iにより覆った、発泡合成樹脂5による次のような、裏打材1hを形成し、
イ.その裏面材1iは、前面下端1cの前面基部1bと差込片1dとの隙間から、釘打片1gに亘る間を覆い、
ロ.その前面下端1cの、近傍において、クランク状に厚さを増加して、釘打片1gへ続く、平坦な裏打材1hを形成し、
e.それらの表面材1aと裏打材1hとを切断して、長手方向の両端に切断端1jを形成する。
【0019】
B.前面基部1bにおいての、前記の装飾面2の構成は、金属板4をエンボスロール加工により成形して、
a.その前面基部1bの長手方向に沿って、それぞれがほぼ平行な多数の細長い溝状の横溝目地2dを形成し、
b.それらの横溝目地2dの途中からほぼ直角に分岐して、隣に並行する横溝目地2dにほぼ直角に合わさる縦溝目地2eを複数形成し、
イ.それらの、縦溝目地2eの中心間の距離の合計の倍数が、エンボスロールの外周に応じ、
c.それらの横溝目地2dと縦溝目地2eとにより、区切られた次のような区画面2fを多数形成し、
イ.周囲の横溝目地2dと縦溝目地2eとの底部から形成する面から、その区画面2fの一側方を表面側に少し折り曲げて斜平面2cを形成し、
ロ.その斜平面2cをさらに裏面側に少し折り曲げて、周囲の横溝目地2dと縦溝目地2eの底部との底部から形成する面にほぼ平行な頂面2aを形成し、
ハ.その頂面2aに、多数の小さな裏面側に凹んだ小さな小凹凸2bを形成し、
ニ.また、その頂面2aの斜平面2cに対する他側方を、くの字形に裏面側に折り曲げて、横溝目地2dに連なり、
ホ.そして、その頂面2aの長手方向の両端部も、くの字形に裏面側に折り曲げて、縦溝目地2eに連なり、
d.そして、その横溝目地2dの幅は、大中小の3種類があり、それぞれが外壁材1を横張り施工した時に、頂面2aに対する斜平面2cの位置により、更に上下の2種類に分けられ、区画面2fは次のように分類され、
イ.幅が大きく、斜平面2cが上側の上大区画2gと、
ロ.幅が中間で、斜平面2cが上側の上中区画2hと、
ハ.幅が小さく、斜平面2cが上側の上小区画2iと、
ニ.幅が大きく、斜平面2cが下側の下大区画2jと、
ホ.幅が中間で、斜平面2cが下側の下中区画2kと、
ヘ.幅が小さく、斜平面2cが下側の下小区画2lと、
チ.それらの頂面2aの、縦溝目地2eの底部との底部から形成する面からの高さは、ほぼ一定とし、
e.そして、上大区画2gと下大区画2jとが交互に隣接し、上中区画2hと下中区画2kとが交互に隣接し、上小区画2iと下小区画2lとが交互に隣接し、
イ.それらの、隣接する上大区画2gと下大区画2jと、隣接する上中区画2hと下中区画2kと、隣接する上小区画2iと下小区画2lとの、組み合わせた長さの倍数がエンボスロールの外周に応じた装飾面2を形成する。
【0020】
C.図4に示す、実施例1の外壁材1を横張り施工した時の、外壁材1の装飾面2による光線3の反射は、
a.次のような入射光3aが上方から入射し、
イ.太陽光はその直径が距離に対して小さいからほぼ平行光線となり、平行光線の入射光3aとして表せ、
ロ.太陽光が雲により散乱された時も、その平均で最大の入射光3aは、その外壁材1から空を見た時の立体角の中心を通り、外壁材1は全天の空に対して小さいからほぼ平行光線となり、平行光線の入射光3aとして表せ、
b.それらの入射光3aは、外壁材1の装飾面2の区画面2f上において、次のように反射し、
イ.その区画面2fの頂面2aにおいては、それに形成された多数の小凹凸2bにより、様々な方向に反射されて、ほぼ乱反射状態となり、観察者と外壁材1との位置関係によらず、観察者から見ればほぼ一定の明るさの頂面2aが観察され、
ロ.その区画面2fの斜平面2cにおいては、その表面がほぼ平坦であり、入射光3aと斜平面2cの交点において、入射光3aの斜平面2cに立てた垂線に対して対称な方向の光線3が最大の反射光3bとなり、その最大の反射光3bから角度が外れるほど小さな光線3となり、
ハ.その反射光3bは、上大区画2gと上中区画2hと上小区画2iとは、その幅が異なりその頂面2aの高さが一定であるため、その頂面2aに対する斜平面2cの角度が異なり、また、下大区画2jと下中区画2kと下小区画2lとは、前者のグループとは、その頂面2aに対する斜平面2cの角度がマイナスになる関係になり、より大きな角度の差が発生し、
ニ.そのため、下側の多様な方向への反射光3bが発生し、観察者への外壁材1から引いた仮の直線の角度と、その反射光3bの角度との差に大小が発生し、
c.その反射の結果により、次のような状態が発生し、
イ.観察者から見れば、明るさの異なる斜平面2cが観察され、
ロ.その事により、ほぼ一定の明るさの頂面2aと、様々に明るさの異なる斜平面2cが入り組んだ外壁材1の装飾面2が観察され、
d.また、横溝目地2dにより、
イ.頂面2aから下側に続く横溝目地2dは深くなり、太陽光等により頂面2aの下側に濃い影を作り、
ロ.しかし、頂面2aから上側に続く横溝目地2dは影は作らずに、
ハ.斜平面2cから続く横溝目地2dの場合は浅くなり、太陽光等による影は作っても薄く目立たずに、
ニ.そのため、途中で途切れた濃い影が入り組んで配置された、外壁材1の装飾面2が観察され、
e.そして、上記の現象は、外壁材1を縦張り施工した場合にも現れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】外壁材の一部を示す斜視図(実施例1)
【図2】外壁材の一部省略拡大斜視図(実施例1)
【図3】外壁材の一部を示す正面図(実施例1)
【図4】(a)外壁材の光線の状態を示す説明図(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を成形して装飾面を構成する前面基部の一側端に差込片を形成し、その前面基部の他側端に嵌合溝と釘打片とを形成し、複数連続接続して壁面を施工する、長尺の外壁材の装飾面に関して、その前面基部の長手方向に沿って、それぞれがほぼ平行な多数の細長い溝状の横溝目地を形成し、それらの横溝目地の途中からほぼ直角に分岐して、隣に並行する横溝目地にほぼ直角に合わさる縦溝目地を複数形成し、それらの横溝目地と縦溝目地とにより区切られた次のような区画面を多数形成し、周囲の横溝目地と縦溝目地との底部から形成する面から、その区画面の一側方を表面側に少し折り曲げて斜平面を形成し、その斜平面をさらに裏面側に少し折り曲げて頂面を形成し、その頂面の斜平面に対する他側方を、くの字形に裏面側に折り曲げて、横溝目地に連なり、その頂面の長手方向の両端部も、くの字形に裏面側に折り曲げて、縦溝目地に連なり、そして、頂面に対して斜平面の位置が互いに異なる区画面を、それぞれ交互に長手方向に隣接する、装飾面を形成することを特徴とするエンボス加工金属製外壁材。

【図4】(b)外壁材の端面図(実施例1)
【符号の説明】
【0022】
1 外壁材
2 装飾面
3 光線
4 金属板
5 発泡合成樹脂
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−167775(P2009−167775A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29663(P2008−29663)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(391022647)株式会社チューオー (21)
【Fターム(参考)】