説明

エーテルカルボキシレートの製造方法

【課題】触媒の使用量を低減した場合でも、高い転化率を達成できるエーテルカルボキシレートの製造方法を提供する。
【解決手段】末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルと貴金属触媒とアルカリ物質とを含有する液相に、酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンエーテルを接触酸化させてカルボン酸を製造する際に、酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ1ppm以下に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテルカルボキシレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エーテルカルボキシレートは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどの末端をカルボン酸で置換した化合物であり、化粧品、乳化剤、可溶化剤、分散剤、ゲル化剤、洗浄基剤等に使用することができる界面活性剤として知られている。エーテルカルボキシレートは、pHを変化させることによりその性質を調整することができる。耐硬水性に優れ、水溶液はアルミニウム等の各種多価金属イオンに対して安定であり、皮膚に対する作用が穏和であるため、各種用途での応用が期待される。
【0003】
エーテルカルボキシレートの製造方法は種々知られているが、その一つに、貴金属触媒の存在下でポリオキシアルキレンアルキルエーテルを接触酸化させる方法が知られている。特許文献1には、特定のアルコキシアルカノールを、パラジウム触媒の存在下、酸化剤である過酸化水素と反応させる方法が記載されている。特許文献2には、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを、特定の貴金属触媒の存在下、特定の条件で酸化させる方法が記載されている。特許文献3には、ヒドロキシ化合物又はアルデヒド化合物を酸化してカルボキシル化合物又はケトン化合物を製造する際に用いる、特定の3成分を含有する酸化反応用触媒組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−169644号公報
【特許文献2】特開昭62−198641号公報
【特許文献3】特開昭62−269746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、貴金属触媒の存在下でポリオキシアルキレンアルキルエーテルを接触酸化させる方法では、反応系に酸素を供給しながら反応を進行させるが、特許文献3で指摘しているように、反応を十分に進行させることは困難である。特許文献3では、貴金属触媒を用いる酸化反応で観測される反応未完結現象は、白金やパラジウムの高い酸素吸着力に由来すると言及している。
【0006】
また、貴金属触媒は高価であるため、工業的規模の製造方法においては、できるだけ使用量を低減することが望ましいが、使用量を低減した場合には転化率の低下は著しくなる。
【0007】
本発明の課題は、触媒の使用量を低減した場合でも、高い転化率を達成できるエーテルカルボキシレートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルと貴金属触媒とアルカリ物質とを含有する液相に、酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを接触酸化させてエーテルカルボキシレートを製造する方法であって、酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ1ppm以下に維持するエーテルカルボキシレートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い転化率を達成できるエーテルカルボキシレートの製造方法が提供される。本発明の製造方法は、触媒の使用量を低減した場合でも、高い転化率を達成できるため、工業的に極めて有利な方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基の他に、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等を含むが、以下、便宜上、「末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテル」を「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」と言う。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
RO−(AO)n−H (I)
〔式中、Rは炭素数1〜36の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、nはAOの平均付加モル数であり、0.1〜100の数である。〕
【0011】
式中の構造は、目的とするカルボン酸の性能、用途等に応じて適宜決定できる。一般式(I)において、Rは、炭素数が1〜36の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜22の炭化水素基である。Rの炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状又は環状構造を有する脂肪族炭化水素基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基が好ましい。
【0012】
このRの直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、各種のメチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられ、直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基としては、各種のビニル基、プロペニル基、テトラニル基、ペンタニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクテニル基、ノネル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセネル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセネルル基、オクタデセニル基、ノナデセネルル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。また、環状構造を有する脂肪族炭化水素基としては、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロドデセニル基、2−(シクロヘキシル)エチル基、3−(シクロヘキシル)プロピル基、2−(シクロヘキセニル)エチル基、3−(シクロヘキセニル)プロピル基等が挙げられる。
【0013】
一般式(I)中、AOで表される炭素数2〜4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられるが、炭素数2〜3のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基、又はエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基(プロパン−1,2−ジイルオキシ基)の混合物が更に好ましい。また、接触酸化反応にてカルボン酸とするために、末端水酸基は1級であることが好ましい。更に、Rからみた末端に位置するAO基はエチレンオキシ基であることが好ましい。また、アルキレンオキシ基の平均付加モル数は、起泡性や使用感の観点から、0.1〜50が好ましく、0.1〜20が更に好ましく、0.1〜10が特に好ましい。
【0014】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、一般式(I)で表される化合物を用いた場合、本発明の製造方法で得られるエーテルカルボキシレートの構造は、下記一般式(II)で表すことができる。
{RO−(AO)n-1−A’−COO}mM (II)
〔式中、R、AO、nは、一般式(I)と同じ意味を表し、A’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、Mは陽イオンであり、mはMの価数である。〕
【0015】
一般式(II)におけるR、AO及びnの好ましい様態は、一般式(I)におけるものと同じである。陽イオンであるMとしては、水素イオン、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンなどが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられる。A’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、一般式(I)の末端−AO−が酸化して−A’−COO−の構造となることから、A’の炭素数は一般式(I)のおける末端−AO−の炭素数から1つ少ないものとなる。
【0016】
製造時の混合物の粘度の観点から、Mは水素イオン、またはアルカリ金属イオンであることが好ましく、製造工程の簡便さからアルカリ金属イオンであることがより好ましい。アルカリ金属イオンの内、製造コストの観点から、Mはナトリウムイオンまたはカリウムイオンであることが好ましい。
【0017】
なかでも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、一般式(I)で表される化合物であって、AOが炭素数2のアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)である化合物を用いた場合、本発明の製造方法で得られるエーテルカルボキシレートの構造は、下記一般式(II−1)で表すことができる。
{RO−(CH2CH2O)n-1−CH2−COO}mM (II−1)
〔式中、R、nは、一般式(I)と同じ意味を表し、Mは陽イオンであり、mはMの価数である。〕
【0018】
接触酸化反応開始時の液相中におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの濃度は、1〜100重量%、更に5〜80重量%が好ましく、10〜40重量%が特に好ましい。
【0019】
本発明に用いられる貴金属触媒は、白金族元素から選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましい。具体的には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群から選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましく、パラジウム及び白金からなる群から選ばれる1種以上の元素を含有することがより好ましい。
【0020】
また、貴金属触媒が、白金族元素から選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第1成分という)を含有する場合、更に、触媒成分として、スズ、ビスマス、セレン、テルル及びアンチモンからなる群から選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第2成分という)を含有することが好ましい。
【0021】
更に、貴金属触媒が、触媒第1成分及び触媒第2成分を含有する場合、更に、触媒成分として、希土類元素から選ばれる1種以上の元素(以下、触媒第3成分という)を含有することができる。
【0022】
触媒第1成分と触媒第2成分の比率は、モル比で、触媒第2成分/触媒第1成分=0.001〜10、更に0.005〜7、更に0.01〜6が好ましい。また、触媒第1成分と触媒第3成分の比率は、モル比で、触媒第3成分/触媒第1成分=0.01〜5が好ましい。
【0023】
貴金属触媒は、担体に担持させた担持触媒であることが好ましい。担体は無機担体が好ましく、例えば、活性炭、アルミナ、シリカゲル、活性白土、珪藻土等が挙げられる。なかでも活性炭が好ましい。触媒第1成分の担持量は、担持触媒全体の0.1〜20重量%、更に1〜15重量%、更に2〜13重量%であることが好ましい。触媒第1成分として複数の元素を用いる場合は、それらの量の合計が、前記担持量の範囲になることが好ましい。触媒第2成分の担持量は、担持触媒全体の0.001〜20重量%、更に0.01〜15重量%、更に0.05〜10重量%であることが好ましい。触媒第3成分の担持量は、担持触媒全体の0.01〜20重量%、更に0.05〜15重量%、更に0.1〜5重量%が好ましい。触媒第2成分、第3成分についても、それぞれ複数の元素を用いる場合は、それらの合計が、それぞれ、触媒第2成分の担時量の好ましい範囲、触媒第3成分の好ましい範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる貴金属触媒は、特開昭62−269746号公報等、公知の方法で製造することができる。例えば、触媒第1成分の元素を含む化合物(塩化パラジウム、塩化白金酸等)の水溶液、触媒第2成分の元素を含む化合物(塩化ビスマス、五塩化アンチモン等)の水溶液、必要に応じて触媒第3成分の元素を含む化合物(塩化セリウム、塩化ランタン等)の水溶液を一括又は分割で、水中で、活性炭等の担体に吸着させた後、触媒成分の還元処理を行う方法で製造できる。
【0025】
貴金属触媒は、貴金属触媒中の触媒第1成分の量がポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して0.001〜2.0重量%となる様用いることが好ましく、0.01〜1.5重量%となる様用いることがより好ましく、0.02〜1.3重量%となる様用いることが特に好ましい。触媒第1成分として複数の元素を用いる場合は、それらの量の合計が、前記使用量の範囲になることが好ましい。
【0026】
また、貴金属触媒が、触媒第1成分及び触媒第2成分を含む場合、触媒第1成分と触媒第2成分との量の合計が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して0.001〜4重量%、更に0.01〜3重量%であることが好ましい。
【0027】
貴金属触媒が、触媒第1成分、触媒第2成分及び触媒第3成分を含む場合、触媒第1成分、触媒第2成分と触媒第3成分の量の合計が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに対して0.001〜6重量%、更に0.01〜4重量%であることが好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化は、アルカリ物質を含有する液相で行われる。アルカリ物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩及び炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属水酸化物が好ましい。液相は水を含むことが好ましく、アルカリ物質は、反応速度及び生成するエーテルカルボキシレートの色相の観点から、液相のpHが7.5以上、好ましくはpH8〜11となるような量で用いることが好ましい。接触酸化反応の進行と共に反応系のpHが低下するため、反応開始前に必要量のアルカリを一括添加しても良いが、上記好ましいpH範囲を維持しながらアルカリを連続又は断続的に仕込み、接触酸化反応を進行させることが好ましい。接触酸化反応においては、生成物であるエーテルカルボキシレートがアルカリを消費するため、反応を上記好ましいpH範囲の中で実施するためには、アルカリの使用量は、原料として用いる末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルに対して当量以上あることが好ましい。アルカリの使用量が生成したエーテルカルボキシレートに対し、当量未満の量であった場合、生成したエーテルカルボキシレートの一部は、一般式(II)におけるMが水素イオンである酸型で存在する。
【0029】
本発明の製造方法においては、特に溶媒は必要ないが、系の粘度を低減し、攪拌効率を改善する目的で溶媒を用いることができる。溶媒としては、水が好ましく、有機溶媒を使用することもできる。本発明の製造方法においては水が生成するため、水の濃度は反応の進行と共に変化するが、接触酸化反応開始時において液相中の水の濃度は、通常0〜99重量%であり、20〜95重量%が好ましく、更に60〜90重量%が好ましい。
【0030】
液相への酸素の供給は、液相への酸素ガスもしくは酸素含有混合ガス(空気等)の吹き込みによって行うことができる。酸素含有混合ガスを用いる場合、酸素と併用するガスの具体例としては、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等の所謂不活性ガスやメタン、エタン、プロパン等の炭化水素などといった本発明の接触酸化に影響を与えないガス(以下、本発明における不活性ガスという)が挙げられる。また吹き込まれるガス中の酸素濃度は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましいが、特に酸素単独で吹き込むことが好ましい。
【0031】
本発明では、酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量を0ppmを超え、且つ1ppm以下、好ましくは0.8ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下に維持する。この範囲であれば、反応は速やかに、且つ十分に進行させることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの転化率を向上させることができる。この場合、酸素の供給とは、実質的にポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化を開始するために、液相が所定の反応温度(反応設定温度)に達した後に、最初に供給するものいう。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化を開始するために最初に酸素を供給した後も、液相への酸素の供給を継続的に行うが、本発明では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化を行う間、液相中の溶存酸素量を前記範囲に維持するものである。
【0032】
なお、液相の昇温中にも酸素を供給することができるが、この場合の液相中の溶存酸素量は問わない。
【0033】
本発明の製造方法において、接触酸化反応は、原料であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの転化率が飽和に達するまで行なうことができる他、所望の転化率に達するまで行うことができる。いずれの場合も、目標となる転化率となった時点で接触酸化反応を終了することができる。接触酸化反応は、酸素の供給を停止する、攪拌を停止する、反応混合物から触媒を除去する、及び/又は反応が停止する温度まで冷却するなどの方法で、反応を停止させることもできる。本発明の製造方法は高い転化率を達成できる点に特徴を有するため、高い転化率を得、且つ高い収率が得られるまで反応を行うほど、本発明の製造方法を適用する価値がある。この観点から、反応停止時の収率は、65%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。酸素を供給した後、この収率となるまでの間、液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ1ppm以下に維持してもよい。転化率及び収率は、ガスクロマトグラフィなどの測定を行なうことによって確認することができる。
【0034】
本発明において、液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ1ppm以下に維持する方法としては、例えば下記の方法が挙げられ、(1)の方法が好ましい。
(1)酸素ガスあるいは酸素含有混合ガスの吹き込み速度を制御する。
(2)酸素含有混合ガスを用い、該混合ガス中の酸素濃度を制御する。
(3)酸素ガスと別に、本発明における不活性ガスを系内に吹き込み、該不活性ガスの吹き込み速度を制御する。
(4)過剰の酸素と反応する添加剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、水素等を反応液に添加して制御する。
(5)反応系内の圧力を制御する。
(6)攪拌翼の選定と、攪拌動力を制御する。
【0035】
本発明においては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化を行う際の反応温度は30〜100℃、更に40〜90℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃であり、反応圧力は常圧でも良いが、通常0.03〜0.5MPa(ゲージ圧。以下単に「G」とも言う。)、好ましくは0.05〜0.4MPa(G)、より好ましくは0.07〜0.3MPa(G)である。
【0036】
本発明においては、液相を撹拌しながらポリオキシアルキレンアルキルエーテルの接触酸化を行うことが好ましい。液相の撹拌は、例えば三枚後退翼、フルゾーン翼、タービン翼、マックスブレンド翼等の攪拌翼を備えた攪拌機により行うことが好ましい。
【0037】
本発明では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルカリ物質、液相、貴金属触媒は、一括もしくは分割で、また、連続的もしくは断続的に、反応容器に仕込むことができる。
【0038】
反応終了後、液相からろ過等の方法で触媒を除去する。触媒を除いた液相には、エーテルカルボキシレートがアルカリ物質との塩の形で溶解しているので、必要であればpH調整をした後、そのまま界面活性剤溶液として使用するか、或いは、塩酸等の鉱酸で酸型化して、遊離のエーテルカルボキシレートを得ることもできるし、更にアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、またはアンモニアや低級アルカノールアミンなどで中和して、所望のエーテルカルボキシレートの塩を得る事ができる。
【実施例】
【0039】
以下において、特に断りの無い限り「%」は重量%を示す。また、反応により生成した反応混合物中のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム含量は、ガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。
(GC条件)
GC機器;アジレントテクノロジー社製 6850シリーズII
カラム;アジレントテクノロジー社製 HP−ULTRA1(25m)
検出器;FID
キャリア;ヘリウムガス、1mL/min
昇温;100℃から300℃まで10℃/minで昇温。その後120分間300℃を保持
【0040】
実施例1
攪拌翼(三日月型)、酸素ガス導入管、溶存酸素測定計((株)堀場製作所 OM-51)及び温度計を取り付けた反応装置に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(一般式(I)において、R=ラウリル基、AO=エチレンオキシ基、n=6の化合物。以下「AE」とも言う)90.3g(0.2モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液16.7g(水酸化ナトリウムとして0.2モル)、パラジウム−白金−ビスマス系触媒(活性炭にパラジウム4%、白金1%及びビスマス5%を担持、含水率50%)0.9g、水494.4gをそれぞれ仕込んだ。液相を350rpmで撹拌し、反応液(液相)の温度が30分で70℃に達するように昇温した。その際、窒素ガスを液相中を流通させた。70℃に到達したら酸素を27モル%(対AE/時間)の割合で吹き込みはじめ、反応液中の溶存酸素量が0.2ppm以下に維持されるように酸素供給量を制御しながら、70℃で25時間接触酸化反応を行った。なお、酸素ガス吹き込み開始前の液相中の溶存酸素量は0ppmであった。
【0041】
反応終了後、反応液から触媒を濾別し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(一般式(II)においてR=ラウリル基、AO=エチレンオキシ基、n=6、A’=メチレン基、M=ナトリウムイオンの化合物)の水溶液を得た。本実施例の反応条件等について表1にまとめた。
【0042】
実施例2及び比較例1
反応条件等を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例1と同じ構造のポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムを含む水溶液を得た。酸素ガス吹き込み開始前の液相中の溶存酸素量は、実施例2、比較例1共に0ppmであった。なお、実施例2では、酸素供給量の制御に加え、増粘時にも反応混合物が十分攪拌される様、攪拌回転数を増大するなど、攪拌回転数を調整しながら反応を行った(表中、可変と表記)。また、比較例1では、液相中の溶存酸素量の制御を行わなかったため、酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量は、反応開始4時間後から上昇を始め、4時間20分後には1ppmを超えるものとなり、これに伴い反応の進行は停止した(反応開始から4時間30分後及び5時間後の収率は共に61%)。反応開始から5時間後(操作停止時)の液相中の溶存酸素量は6ppmであった。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルと貴金属触媒とアルカリ物質とを含有する液相に、酸素を供給して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを接触酸化させてエーテルカルボキシレートを製造する方法であって、酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ1ppm以下に維持するエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項2】
末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルが、下記一般式(I)で表される化合物であり、エーテルカルボキシレートが一般式(II)で表される化合物である、請求項1記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
RO−(AO)n−H (I)
〔式中、Rは炭素数1〜36の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、nはAOの平均付加モル数であり、0.1〜100の数である。〕
{RO−(AO)n-1−A’−COO}mM (II)
〔式中、R、AO、nは、一般式(I)と同じ意味を表し、A’は炭素数1〜3のアルキレン基であり、Mは陽イオンであり、mはMの価数である。〕
【請求項3】
貴金属触媒が、白金族元素から選ばれる1種以上の元素を含有する、請求項1又は2記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項4】
貴金属触媒中の白金族元素から選ばれる1種以上の元素の量が、末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルに対して、0.001〜2.0%(重量比)になる量貴金属触媒を用いる、請求項1〜3の何れか1項記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項5】
酸素を供給した後の液相中の溶存酸素量を0ppm超、且つ0.5ppm以下に維持する、請求項1〜4の何れか1項記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項6】
アルカリ物質が、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ金属炭酸塩から選ばれる化合物である、請求項1〜5の何れか1項記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項7】
末端に炭化水素基を有するポリオキシアルキレンエーテルの接触酸化を30〜100℃で行う、請求項1〜6の何れか1項記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。
【請求項8】
液相が水を含む、請求項1〜7の何れか1項記載のエーテルカルボキシレートの製造方法。

【公開番号】特開2011−184379(P2011−184379A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52727(P2010−52727)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】