説明

エーテルカルボン酸塩の製造方法

本発明は、エーテルカルボン酸塩の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテルカルボン酸塩の調製方法に関する。エーテルカルボン酸塩は、典型的には、バッチ操作で調製され、これは通常、最初にアルコキシレート、NaOHなどの塩基、およびラネー銅などの触媒を入れるステップ、ならびにこの反応混合物を、超大気圧(superatmospheric pressure)下で反応温度にするステップによる。
【背景技術】
【0002】
弱いアニオン性界面活性剤として有用なエーテルカルボン酸塩のクラスは、昔から知られている。US 2,183,853(1934年の優先日を有する)には、アルコキレートとナトリウムおよびクロロ酢酸ナトリウムとを160〜200℃の温度で反応させることにより、エーテルカルボン酸塩を調製する方法が記載されている。高レベルの変換率および低レベルの副生成物形成を実現するために、撹拌中の反応器の異なる位置に塩基およびクロロ酢酸を添加することが有利であると記載されている。生成水または添加水を反応溶液から除去し、かつ非常に迅速な反応を実現するためには、70〜90℃で、約10〜50mbarの圧力にて反応を行なう。
【0003】
DE 31 35 946には、エーテルカルボン酸塩の別の調製方法として、白金またはパラジウム触媒による、水性アルカリ性媒体中での酸素または酸素含有ガスを用いたアルコキシレートの直接酸化が記載されている。
【0004】
アルコールとアルカリ金属またはアルカリ金属水酸化物との熱反応によるアルコールからカルボン酸塩への酸化的脱水素化は、1840年から知られている(Dumas and Stag, Ann, 35, 129〜173)。この反応は、古典的には、触媒なしで、200℃超で行なわれた。US 2,384,818(1945年発行)では、アミノアルコールを酸化するためにこの方法を用いている。
【0005】
同様に、酸化的脱水素化のための触媒の使用は、昔から知られている。US 2,384,817(1942年出願)には、反応速度に対する、カドミウム、銅、ニッケル、銀、鉛および亜鉛化合物のポジティブな影響が記載されている。
【0006】
EP 0 620 209には、クロム、チタン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン、タングステン、コバルトおよびそれらの混合物からなる群より選択される50〜10,000ppmの元素、または50〜10,000ppmのニッケルを含有する有効量の特異的活性型ラネー銅触媒の存在下で、第一級アルコールの水溶液とアルカリ金属水酸化物とを接触させるステップによる、カルボン酸塩の製造方法が記載されている。アルコールは、脂肪族アルコール、芳香族アルコールまたはポリオールであり得る。アルコール(一定の水溶性を有する必要があるであろう)および得られるカルボン酸塩の両方が、高温の苛性溶液中で安定でなければならないことが記載されている。加えて、記載された反応温度に到達するためには、反応には超大気圧が必要である。アミノアルコール、芳香族アルコールおよびエチレングリコールが、例として記載されている。
【0007】
EP 1 125 633には、ドープされたラネー銅(鉄族から選択される少なくとも1種の元素または貴金属でドープされている)の使用が記載され、凝集によるその不活性化ははっきりと減少しており、したがって使用サイクルはより多い。該発明は、アルコールからのカルボン酸の調製に関する。この場合もまた、160℃、10bar圧力にて強塩基条件下でのジエタノールアミンの酸化的脱水素化が例として挙げられている。アルコールは水溶性でなければならず、アルコールおよびカルボン酸は、強塩基溶液に対して安定でなければならない。
【0008】
EP 1 125 634には、ラネー銅固定床触媒(鉄または貴金属でドープされている)、反応溶液からのその容易な濾別可能性および連続法との関連でのその使用が記載されている。反応物質および生成物の両方が、強塩基溶液中で安定でなければならず、アルコールが水溶性でなければならないことが、アルコールの反応に対する必要条件であることが記載されている。
【0009】
US 5,916,840には、アルカリ耐性支持材料(例えば、活性炭)、アンカー金属(例えば、パラジウム)および別々に付加した活性金属(例えば、銅)からなる支持触媒の存在下で、カルボン酸塩を調製する方法が記載されている。反応は、160〜170℃にて、水の存在下で、バッチオートクレーブ中で行なう。この原理を継続して、WO 03/033140には、ジエタノールアミンからイミノ二酢酸を調製するためのさらなる触媒が記載されている。好ましい反応条件は、アルカリ金属水酸化物の使用(等モル使用)、超大気圧にて120〜220℃の温度での溶媒および触媒(少なくとも1質量%)の使用と記載されている。
【0010】
WO 98/13140には、ジルコニウム、銅および任意によりさらなる金属からなる、アミノアルコールおよびエチレングリコール誘導体の脱水素化のための触媒が記載されている。記載された触媒(30質量%)による、180℃、10bar圧力での水溶液中1当量のNaOHを用いたエチレングリコール(トリエチレングリコールなど)の反応が開示されている。
【0011】
US 4,110,371には、ニッケル、銅およびクロムからなる触媒を用いた、200〜300℃の温度でのアルカリ金属水酸化物水溶液を用いる2〜6エチレングリコール単位からなる化合物からのジカルボン酸塩の調製方法が記載されている。
【0012】
US 3,717,676には、オキシポリカルボン酸のアルカリ金属塩の調製方法が記載され、該方法では、オキシ置換またはポリオキシ置換第一級アルコールを、カドミウム触媒を用いて、190〜230℃、7〜14barの圧力で、アルカリ金属水酸化物、20%〜60%の水と反応させる。
【0013】
最後に、JP 10 277 391には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルからアルキルエーテルカルボン酸塩を調製するための、1〜20ミクロンの粒径を有する超微粒子銅触媒の使用ならびに石鹸および化粧品用途でのアニオン性界面活性剤としてのその使用が記載されている。触媒の細分割の微細状態により、古典的ラネー銅または銅-ジルコニウム触媒よりも明らかに高い活性がもたらされる(Degussa社のラネー銅を含む比較実施例は、他の点は同等な条件下で98%ではなく15%のみの変換率を示す)。
【0014】
したがって、記載された方法はすべて、多数の欠点を有し、本技術分野での長年の研究にもかかわらず、これを克服することは不可能であることが証明されている。圧力、高温および強アルカリ条件の組み合わせがこれまで必要とされており、これは用いる物質に厳しい応力を課し(応力腐食割れ)、反応性ならびに選択性を制限し、用いる触媒は、不便なことにドープされていなければならず、方法の実施中、塊を形成していなければならないので費用がかかり;水溶性でありしたがって多くの場合にむしろ短鎖であるアルコールのみを用いることができ;さらに、用いるアルコールおよび形成される生成物は塩基耐性でなければならず;多くの場合に開裂生成物として形成されるビニルエーテルは、形成された生成物中に存在することが望ましくないが、分析により検出するのは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US 2,183,853
【特許文献2】DE 31 35 946
【特許文献3】US 2,384,818
【特許文献4】US 2,384,817
【特許文献5】EP 0 620 209
【特許文献6】EP 1 125 633
【特許文献7】EP 1 125 634
【特許文献8】US 5,916,840
【特許文献9】WO 03/033140
【特許文献10】WO 98/13140
【特許文献11】US 4,110,371
【特許文献12】US 3,717,676
【特許文献13】JP 10 277 391
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Dumas and Stag, Ann, 35, 129〜173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、言及した欠点を減少させ、かつ/または除去する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、式Iのエーテルカルボン酸塩の調製方法により、この目的が達成されることを見出し:
【化1】

【0019】
該方法は、式IIの対応するアルコキシレート:
【化2】

【0020】
[式中、独立に、
R1は、C1〜C50-アルキル、モノアミン、ジアミン、トリアミン、・・・ポリアミンであり、
Xは、O、COO、CH2-NH-O(r=0かつq=1の場合)またはN、
【化3】

、N(CH2)tO(r=0〜50かつq=2の場合)であり、
rは0〜50の整数であり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
Mは、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基であり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40であり、
qは、1〜20であり、
sは、0または1であり、
tは、0〜20であり、
但し、n+m+pは少なくとも1であり、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な好ましい実施形態があり、一実施形態は、sが0であり、RがC1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリールまたはC6〜C50-アルキルアリールである場合であり;他の実施形態は、sが1であり、RがHまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である場合である。
【0022】
rについては好ましい範囲もある。好ましくは、rは1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
【0023】
式IIIのエーテルカルボン酸塩の調製方法が好ましく:
【化4】

該方法は、式IVの対応するアルコキシレート:
【化5】

【0024】
[式中、独立に、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
Xは、O、COO、CH2-NH-O(q=1の場合)またはN、
【化6】

、N(CH2)tO(q=2の場合)であり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
Mは、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基であり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40であり、
qは、1〜2であり、
tは、1〜10であり、
但し、n+m+pは少なくとも1である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加する。
【0025】
式Vのエーテルカルボン酸塩の調製方法:
【化7】

該方法は、式VIの対応するアルコキシレート:
【化8】

【0026】
[式中、独立に、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
XはOであり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは5〜10であり、
但し、n+m+pは少なくとも1である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加する。
【0027】
方法が好ましいものになるように、用いるアルコキシレートに関して好ましい型があり、その場合、式中、独立に、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
XはOであり、
R2は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
R3は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
R4は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
nは、1〜30であり、
mは、1〜20であり、
pは、1〜20であり、
但し、n+m+pは少なくとも2である。
【0028】
式中、独立に、
Xが、OまたはCOOであり、
RはC2〜C10-アルキルであり、
R2は、HまたはC3〜C5-アルキルであり、
R3は、HまたはC3〜C6-アルキルであり、
R4は、HまたはC3〜C6-アルキルであり、
nは、1〜18であり、
mは、1〜12であり、
pは、1〜12であり、
但し、n+m+pは少なくとも5である方法が特に好ましい。
【0029】
Rは、より詳細には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシルおよび2-プロピルヘプチル、ドデシル、トリデシル、ミリスチル、ラウリル、i-C17、トールオイル脂肪(C16,18)、ベヘニルである。
【0030】
存在する場合、R2、R3およびR4は、それぞれより詳細かつ独立に、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびイソブチルであり、そのうち、水素、メチルおよびエチルが特に好ましく、メチルおよびエチルが非常に特に好ましい。
【0031】
nは、最も好ましくは3〜20である。
【0032】
mは、より好ましくは3〜20である。
【0033】
pは、より好ましくは3〜20である。
【0034】
n、mおよびpの合計は、より好ましくは3〜20である。個々のアルコキシド単位は、様々な様式で配列することができる(例えば、ランダムに、ブロック型で、または勾配を有して)。最初に高級オキシド(例えば、プロピレンオキシド)を用い、次にEOを用いる方法が特に好ましい。
【0035】
様々なアルキレンオキシドに加えて、本発明の方法はまた、種々のアルコキシレートa、b、c、・・・、zを1回以上に分けて加えて用いることもできる。例えば、Ra=C12,14〜C20であり、Rb=C2〜C10である化合物を有利に用いることができる。
【0036】
有用な塩基は、原則として、用いるアルコキシレートを脱プロトン化することができるいずれかの化合物である。これには、ビエルム(Bjerrum)の酸塩基定義の意味の範囲内での塩基が含まれる。数種類の好ましい塩基があり、したがって、塩基が、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、水酸化アンモニウム、水酸化コリンおよびハイドロタルサイトからなる群より選択される方法が、本発明の特に好ましい実施形態を構成する。生成物が狭いモル質量分布を有するはずである場合、ハイドロタルサイトが特に好ましい。
【0037】
塩基は、バッチ方式で、または連続的に、反応中に反応混合物に添加する。これは、塩基、または塩基の一部分を、反応条件が整っている時点で反応混合物に添加することを意味する。
【0038】
したがって、好ましい実施形態は、塩基を2〜10,000回にわたって反応混合物に添加する方法である。塩基を添加する回数は、好ましくは、3〜1000回、より好ましくは4〜100回、最も好ましくは5〜20回である。
【0039】
別の好ましい実施形態は、塩基を、30分間超の時間にわたって反応混合物に添加する方法である。塩基を反応混合物に添加する時間は、特に有利には、2時間超〜10時間、好ましくは5時間〜9時間、さらにより好ましくは6時間〜8時間である。
【0040】
両方の場合(すなわち、塩基の連続的添加の場合および塩基のバッチ方式での添加の場合)で、塩基を、数箇所で反応混合物に導入することができる。塩基を、2〜10箇所で、好ましくは3〜5箇所で反応器に添加する場合が特に好ましい。この手順を用いて、反応混合物中の塩基の局所濃度をさらに低下させることができ、それにより、副生成物の形成をさらに抑えることができる。
【0041】
触媒が関与する限りでは、第4〜12族の金属(すなわち、Ti〜Znおよびそれらの下にあるもの)が、主成分および二次成分の両方として考慮に入れられ、第8〜11族のもの(すなわち、Fe〜Cuおよびそれらの下にあるもの)が好ましい。したがって、遷移金属触媒が、Fe、Cu、CoおよびNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む方法が好ましいということになる。
【0042】
遷移金属は、純金属または金属酸化物などの様々な状態であり得るが、好ましくは、ラネー金属として活性型で存在する。ラネー銅が特に好ましい。このラネー銅は、例えば他の金属でドープすることにより、さらに修飾することもできる。合成についてよい結果を得るためにそのようなドーピングが必要ないことは、本発明の方法の利点であるが、しかしそれでも、ドーピングは合成の結果をさらに改善するために有利であり得る。好適な遷移金属触媒の調製は、例えば、EP 1 125 634(Degussa社)(単純なラネー銅固定床触媒を開示している)に記載されている。EP 1 125 633(Degussa社)には、様々なドーパント(例えば、ラネー銅に対して1%Pt、3%Fe、2000ppm Crまたは1%V)を含むラネー銅が記載されており、ドープされた触媒は、慣用のラネー銅(Degussa BFX 3113W)よりも不活性化しにくいことが示されている。最後に、WO 96/01146(Monsanto社)には、貴金属を含むC支持体(例えば、Cuにアンカー金属として添加されたPt)が記載されている。この技術は、その上、Cuの焼結を防止すると記載されている。遷移金属の特に好ましい組み合わせは、銅と鉄との組み合わせである。DMC触媒が、さらに特に好ましい。
【0043】
本発明の方法では、生成物中に、ほんの少量の触媒しか残らない。好ましい方法では、生成物のM含量は、0.1ppm〜1%、好ましくは1〜500ppm、より好ましくは10〜50ppmである。
【0044】
本発明の方法はまた、喜ばしいことに、大規模でも行なうことができる。したがって、1kg超、好ましくは10kg超、さらにより好ましくは100kg超、最も好ましくは1t(メートルトン)超のアルコキレートを用いる方法が好ましい。
【0045】
反応温度が140℃〜220℃である本発明の方法が好ましい。160〜200℃、より詳細には160〜190℃(例えば、180℃)の温度で行なわれる方法がより好ましい。
【0046】
本発明の方法は、原則として、反応条件下で安定であり、反応物質または生成物と反応しないいずれかの溶媒を用いることができる。したがって、以下のリストから選択される溶媒が好ましい:
【表1】

【0047】
以下の溶媒または懸濁媒体が特に好ましい:N-メチルピロリドン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酸ナトリウム塩およびホワイトオイル。
【0048】
好ましい圧力範囲もある。反応容器中の圧力が10bar未満、好ましくは5bar未満、より好ましくは2bar未満である方法が好ましい。大気圧下でも行なうことができることは本発明の方法の特別な利点であり、これが実際には最も好ましい実施形態である。
【0049】
本発明の方法により得られるエーテルカルボン酸塩および本発明の方法により得られたエーテルカルボン酸塩はまた、保護されている。
【0050】
清浄化、作物保護および化粧品用途での、ならびに可溶化剤としてのこれらのエーテルカルボン酸塩の使用は、本発明の対象のさらなる一部分を構成する。
【0051】
本発明の方法により得られたエーテルカルボン酸塩を含む組成物も同様に、本発明の対象の一部分を形成する。
【0052】
この種類の組成物の追加の一般的な成分は、例えば、WO 2008/071582に記載されている。
【0053】
以下の実施例により、本発明をより詳細に明らかにするが、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1:非イオン性エトキシレート(界面活性剤A)の合成
300gのC12,14アルコール混合物(0.3重量%未満のC8、1.0重量%未満のC10、65.0重量%超のC12、21.0〜28.0重量%のC14、4.0〜8.0重量%のC16、0.5重量%未満のC18)(例えば、Radianol C12-C16 1726、Oleon社)を、最初に2.6gのKOH(水中45重量%)と共に入れ、80℃、減圧下(約20mbar)で一緒に脱水した。次に、462gのエチレンオキシドを150℃での定量添加により加え、その温度で反応させた。反応の終了は、圧力降下により決定した。不活性ガスでパージし、室温まで冷却した後、1.25gの濃酢酸を加えることにより触媒を中和した。
【0055】
実施例2:半バッチ法での大気圧下における酸化的脱水素化
内部温度計、滴下漏斗およびカラム式蒸留器ヘッドを装着した2L多頚フラスコに、最初に498gの界面活性剤Aおよび30gのラネー銅を入れ、初期内容物を撹拌しながら180℃まで加熱した。152gの水酸化ナトリウム水溶液(25%濃度)を8時間にわたって滴下添加し、その間に、反応混合物から水を蒸留して除去した。水酸化ナトリウム水溶液の添加が完了したら、反応混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を140℃まで冷却し、フリットを通してろ過し、排出液を分析した。
【0056】
強塩基滴定:
7mg KOH/g
弱塩基滴定:
95mg KOH/g
OH数分析:
反応物質:119mg KOH/g
排出液:13mg KOH/g、強塩基で補正:6mg KOH/g;これは、変換率が95%だったということである。
NMR (DMSO, CDCl3 = 1/1); 1H NMR, 13C 分離:
δ = 0.85 (t, 3H, -CH3), 1.25 (s, 20H, CH2), 1.55 (m, 2H, -CH2CH2-O), 3.4 (m, 2H, CH2-O), 3.6 (m, 24H, 反応物質のO-CH2-CH2-OおよびCH2-OH), 3.75 (s, 1.77H, CH2-COO). これは、変換率が89%だったということである。
【0057】
HPLC:非イオン性界面活性剤中の遊離ポリエチレングリコールの測定のために開発されたシステムで、サンプルを分解した。分析原理は、脂肪族部分を有する分子は逆相に留まり、極性物質は保持されることなくカラムを通過する、というものである。スイッチバルブを用いて非滞留画分をサイズ排除カラムに移し、これによりポリマー成分を低分子量二次成分から分離した。分析サンプル中の開裂生成物のレベルは、0.5g/100g未満であった。
【0058】
実施例3:バッチ法での超大気圧下における酸化的脱水素化
15barで圧力維持した1.2Lオートクレーブに、最初に249gの界面活性剤A、15gのラネー銅(Degussa社)および76gの水酸化ナトリウム水溶液(25%)を入れ、この初期内容物を撹拌しながら10時間、180℃に加熱した。ろ過により触媒を除去した後、有機相を分離し、弱塩基について滴定し(6mg KOH/g)、OH数測定に供して(113mg KOH/g)、変換率を決定した(6%)。
【0059】
実施例4:半バッチ法での超大気圧下における酸化的脱水素化
15barで圧力維持した1.2Lオートクレーブに、最初に249gの界面活性剤Aおよび15gのラネー銅(Degussa社)を入れ、この初期内容物を撹拌しながら180℃に加熱した。7時間の間に、76gの水酸化ナトリウム水溶液(25%)の全量を、HPLCポンプを用いてオートクレーブに量り入れ、続いてさらに30分間撹拌した。ろ過により触媒を除去した後、有機相を分離し、弱塩基について滴定し(9mg KOH/g)、OH数測定に供して(115mg KOH/g)、変換率を決定した(3.5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのエーテルカルボン酸塩の調製方法であって:
【化1】

式IIの対応するアルコキシレート:
【化2】

[式中、独立に、
R1は、C1〜C50-アルキル、モノアミン、ジアミン、トリアミン、・・・ポリアミンであり、
Xは、O、COO、CH2-NH-O(q=1かつr=0の場合)またはN、
【化3】

、N(CH2)tO(q=2かつr=0〜50の場合)であり、
rは0〜50の整数であり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
Mは、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基であり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40であり、
qは、1〜20であり、
sは、0または1であり、
tは、0〜20であり、
但し、n+m+pは少なくとも1であり、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加される、上記方法。
【請求項2】
式IIIのエーテルカルボン酸塩の調製方法であって:
【化4】

式IVの対応するアルコキシレート:
【化5】

[式中、独立に、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
Xは、O、COO、CH2-NH-O(q=1の場合)またはN、
【化6】

、N(CH2)tO(q=2の場合)であり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
Mは、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基であり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40であり、
qは、1〜2であり、
tは、1〜10であり、
但し、n+m+pは少なくとも1である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加される、上記方法。
【請求項3】
式Vのエーテルカルボン酸塩の調製方法であって:
【化7】

式VIの対応するアルコキシレート:
【化8】

[式中、独立に、
Rは、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
XはOであり、
R2は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R3は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
R4は、HまたはC1〜C10-アルキルであり、
Mは、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
nは、0〜50であり、
mは、0〜40であり、
pは、0〜40であり、
但し、n+m+pは少なくとも1である]
を、遷移金属触媒を用いることにより塩基と反応させるステップを含み、塩基は2回以上に分けて不連続に、または30分間超の時間にわたって連続的に反応混合物に添加される、上記方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、式中、独立に、
Rが、C1〜C50-アルキル、C1〜C50-アルケニル、C1〜C50-アルキニル、C6〜C50-アリール、C6〜C50-アルキルアリール、Hまたは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属であり、
Xは、O、
【化9】

、COO、CH2-NH-O、N(CH2)tOであり、
R2は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
R3は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
R4は、HまたはC2〜C8-アルキルであり、
nは、1〜30であり、
mは、1〜20であり、
pは、1〜20であり、
n+m+pは少なくとも2であり、
tは1〜10の整数である、上記方法。
【請求項5】
請求項2または3に記載の方法であって、式中、独立に、
Xが、OまたはCOOであり、
Rは、C2〜C10-アルキルであり、
R2は、HまたはC3〜C5-アルキルであり、
R3は、HまたはC3〜C5-アルキルであり、
R4は、HまたはC3〜C6-アルキルであり、
nは、1〜18であり、
mは、1〜12であり、
mは、1〜12であり、
n+m+pは少なくとも5である、上記方法。
【請求項6】
塩基がNaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、水酸化アンモニウム、水酸化コリンおよびハイドロタルサイトからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
塩基が2〜10,000回にわたって反応混合物に添加される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩基が30分間超の時間にわたって反応混合物に添加される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
遷移金属触媒が、Fe、Cu、CoおよびNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応温度が140℃〜220℃である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応容器中の圧力が10bar未満である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により得られるエーテルカルボン酸塩。
【請求項13】
洗浄用および清浄化用組成物における、繊維製品および化粧品用途での、硬表面の清浄化のための、ならびに石油生産のための、請求項1〜11のいずれか1項に従って得られるエーテルカルボン酸塩の使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により得られるエーテルカルボン酸塩を含む組成物。

【公表番号】特表2013−519700(P2013−519700A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553269(P2012−553269)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051993
【国際公開番号】WO2011/101287
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】