説明

オイルミスト除去装置

【課題】切粉の破片などの比較的質量の大きな塵埃などの被除去物を含んだ気相流体であっても、頻繁な濾過材のメンテナンスを必要としたり、濾過材の目詰まり時を想定したより大きなモータを装備する必要のないオイルミスト除去装置を提供する。
【解決手段】本体ケーシング1内に設けた複数の起風手段によって吸気口2から吸引したダストを含んだ気相流体を、ケーシング内部の整流板4と半径方向外側に起風する第一起風手段9によって比較的質量の大きな切粉などの塵埃を除塵処理後に、半径方向外側に起風する第二起風手段10と第二起風手段を囲むように構成された濾過手段7,8,13によってオイルミストを凝縮・回収するようにし、清浄な状態にして排気口14から排出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等の作業場で主に機械加工を行う機器類などから発生するオイルミストや油煙、切粉の破片など、気体の中に微細な物質(以下、塵埃と総称する)を含んで全体としては気相を呈する流体や、気体とともに吸引される切削油などの液体を含む流体(以下、いずれも「気相流体」と呼称する)を処理し、切粉の破片などの比較的質量の大きな塵埃などの被除去物を除去するとともに、オイルミスト、油煙などの比較的質量の小さな塵埃を凝縮し回収するためのオイルミスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の気相流体を処理するオイルミスト除去装置としては下記の特許文献1に示すような吸気口直後に設けたケーシング内の衝突板に気相流体を衝突させ、ある程度質量の大きな塵埃を捕捉した上で、さらに下流に設けた樹脂、繊維、金網などの濾過材からなるフィルターを備えたものが、従来より知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−88050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のオイルミスト除去装置にあっては、衝突板に気相流体を衝突させても切粉の破片などの比較的質量の大きな塵埃などの被除去物を完全に除去することは出来ず、その結果衝突板を回り込んだ比較的質量の大きな塵埃を含んだ気相流体が通路集合体を通過することになるので、通路集合体の通路が目詰まりを起こしてしまうなどの不具合を生じる。また、切削油などの油分を含んだ塵埃が通路集合体の通路にどろどろの状態で付着し通路を塞いでしまう不具合を生じる。この結果、頻繁に通路集合体を洗浄、交換などのメンテナンスをしたり、通路集合体の下流にある羽根車を駆動するモータの容量を上げ通路集合体が目詰まり気味になっても吸引力が不足しないようにする必要性が生じるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、切粉の破片などの比較的質量の大きな塵埃などの被除去物を含んだ気相流体であっても、頻繁な濾過材のメンテナンスを必要としたり、濾過材の目詰まり時を想定した、より大きなモータを装備する必要のないオイルミスト除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴がある。
【0007】
〔解決手段1〕
請求項1に記載のように、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体を、ケーシング内部の整流板と半径方向外側に向って起風する第一起風手段によって、比較的質量の大きな切粉などの塵埃を整流板への衝突と第一起風手段の起風作用によって除塵処理後に、半径方向外側に向って起風する第二起風手段と第二起風手段を囲むように構成された濾過手段によってオイルミストを凝縮・回収するようにし、清浄な状態にして排気口から排出するように構成したことである。
【0008】
〔作用〕
上記の技術手段を講じたことによる作用は次の通りである。すなわち、複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体を、ケーシング内部に設けた有孔の整流板に切粉などの比較的質量の大きな塵埃を衝突、落下させることで回収し、整流板の下流にある半径方向外側に向って起風する第一起風手段の起風作用によって完全にこれを除去した上で、さらに下流にある半径方向外側に向って起風する第二の起風手段と第二起風手段を囲むように構成された濾過手段によってオイルミストを凝縮、回収し、排気口からは清浄な状態にして排出することが出来る。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明のオイルミスト除去装置は、請求項2に記載のように、請求項1に記載のオイルミスト除去装置において、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、起風要素自体が螺条を形成してなり、起風要素自体が自転運動することで起風手段の半径方向外側に向かって起風しつつ、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動をすることで、起風手段の公転軸中心に沿った流れを速める構成としてもよい。
【0010】
〔作用〕
上記の技術手段を講じたことによる作用は次の通りである。すなわち、起風要素自体が螺条を形成してなり、起風要素自体が自転運動することで起風手段の半径方向外側に向かって起風する構成としているので、螺条の溝に捕捉された気相流体は起風要素の自転運動により起風手段の半径方向外側に向かって移動するとともに、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動しているので、この公転運動によって起風手段の公転軸中心に沿った流れを速める。気相流体は、ケーシング内部に設けた有孔の整流板に切粉などの比較的質量の大きな塵埃を衝突、落下させることで回収され、整流板の下流にある半径方向外側に向って起風する第一の起風手段の自転、公転運動の起風作用によってこれを除去した上で、さらに下流にある半径方向外側に向って起風する第二起風手段の自転、公転運動と第二起風手段を囲むように構成された濾過手段によってオイルミストを凝縮、回収し、排気口からは清浄な状態にして排出することが出来る。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明のオイルミスト除去装置は、請求項3に記載のように、請求項2に記載のオイルミスト除去装置において、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、起風要素自体が起風手段の回転軸中心に対して公転運動する回転数に対して、起風要素自体の自転運動の回転数を同一としない構成としてもよい。
【0012】
〔作用〕
上記の技術手段を講じたことによる作用は次の通りである。すなわち、起風要素自体の自転運動の回転数と起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動する回転数を同一としていないので、起風要素の螺条溝の図心を起風手段の回転軸を中心軸とする円筒上に投影すると、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して一回転公転運動する間に、この図心の投影軌跡は前記円筒上にサインカーブを描くことになるが、前記両回転数を同一としていないので前記の円筒上で前記サインカーブの始点と終点が一致しない。従って、回転毎に描かれる前記図心の投影軌跡のサインカーブ同士が公転運動の回転ごとに同一軌跡を通過することがないので、気相流体を濾過する濾材の目詰りを発生しにくくすることが出来る。この結果、濾過材を洗浄、交換などのメンテナンスをしなくともいつも排気口からは清浄な空気を排出することが出来る。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明のオイルミスト除去装置は、請求項4に記載のように、請求項1または2に記載のオイルミスト除去装置において、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、吸気口から遠ざかるにつれて各々の起風手段の外径が大きくなるように構成してもよい。
【0014】
〔作用〕
上記の技術手段を講じたことによる作用は次の通りである。すなわち、起風手段の外径を吸気口から遠ざかるにつれて大きくなるように構成したので、吸気口から近く外径の小さい起風手段の周速よりも吸気口から遠く外径の大きい起風手段の周速が早くなる。その結果、吸気口から近く外径の小さい起風手段周辺の圧力よりも吸気口から遠く外径の大きい起風手段周辺の圧力が低くなる。従って、複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体を、ケーシング内部に設けた有孔の整流板から整流板の下流にある第一の起風手段を経てさらに下流にある圧力の低い第二の起風手段へと順次導くことが出来る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる発明によれば、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体は、吸気口の下流にある有孔の整流板に衝突、落下することで切粉などの比較的質量の大きな塵埃がまず回収され、次に下流にある半径方向外側に向って起風する第一の起風手段の起風作用でさらにこれを除去される。除去され残った質量の小さなオイルミストなどの塵埃はさらに下流に運ばれ半径方向外側に向って起風する第二の起風手段の起風作用と、第二起風手段を囲むように構成された濾過手段を通過することで凝縮、回収されるので、排気口からは清浄な空気が排出される。すなわち、目詰りを起こしやすい切粉などの比較的質量の大きな塵埃は下流にある濾過手段を通過する前に完全に除去されているので濾過手段は目詰りを起こす恐れがなく濾過材の洗浄や交換などのメンテナンスを施す必要がないという利点がある。
【0016】
請求項2にかかる発明によれば、本体ケーシング内に設けた複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体は、吸気口の下流にある有孔の整流板に衝突、落下させることで切粉などの比較的質量の大きな塵埃がまず回収され、ここを通過した気相流体は次に半径方向外側に向って起風する第一起風手段を構成する螺条の起風要素に捕捉される。この起風要素は自転することで捕捉した気相流体を半径方向外側へ移動させる。一方、この起風要素は起風手段の回転軸中心に対して公転運動しているので、この公転運動によって気相流体に起風手段の公転軸を中心とする遠心力を付加することになる。これらの相互作用によって比較的質量の大きな塵埃は起風要素の遠心分離作用により確実に除去される。従って、さらに下流にある濾過手段が比較的質量の大きな塵埃により目詰りを起こす恐れがなく濾過材の洗浄や交換などのメンテナンスを施す必要がないという利点がある。
【0017】
請求項3にかかる発明によれば、本体ケーシング内に設けた有孔の整流板、起風手段の構成は請求項2にかかる発明と基本構成は同じであるので作用も同一である。半径方向外側に向って起風する第一起風手段の自転、公転運動による遠心分離作用を通過した切粉などの比較的質量の大きな塵埃を含まない気相流体は、次に半径方向外側に向って起風する第二起風手段を構成する螺条の起風要素に捕捉される。第二起風要素は第一起風手段と同様な自転、公転運動をすることで捕捉された気相流体をさらに下流にある第二起風手段を囲むように構成された濾過手段へと導出することになる。ここにおいて、起風要素自体の自転運動の回転数と起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動する回転数を同一としていないので、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して一回転の公転運動をする間に、起風要素は一回転未満または一回転を超える自転運動をすることになり、起風要素の螺条溝の図心を起風手段の回転軸を中心軸とする円筒上に投影すると、この図心の投影軌跡は前記円筒上に始点と終点が一致しないサインカーブを描くことになる。従って、回転に伴って描かれる前記図心の投影軌跡のサインカーブが回転毎に少しずつずれて同一軌跡を通過することがないので、気相流体を濾過する濾過材の面積を有効に使え目詰りの発生をより確実に回避することが出来る利点がある。
【0018】
請求項4にかかる発明によれば、本体ケーシング内に設けた有孔の整流板、第一起風手段、第二起風手段の構成は請求項1または2にかかる発明と基本構成は同じであるが、この本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、吸気口から遠ざかるにつれて各々の起風手段の外径が大きくなるように構成されている。即ち、第一起風手段の外径より第二起風手段の外径が大きい構成となっている。この結果、吸気口から近い第一起風手段の公転運動に伴う周速よりも吸気口から遠い第二起風手段の公転運動に伴う周速が早くなるので、第一起風手段の起風手段周辺の圧力よりも吸気口から遠い第二起風手段の起風手段周辺の圧力が低くなる。従って、複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体は、ケーシング内部に設けた有孔の整流板から、整流板の下流にある第一の起風手段を経てさらに下流にある第二の起風手段へと順次滑らかな流れを形成出来る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔除塵装置の全体構成〕
以下に、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
本発明の除塵装置は、図1から図7に示すように、ケーシング1の内部に、吸気口2から気相流体を吸い込み、これを排気口14から排出するように、内部に気相流体の気流を生じさせるための第一起風手段9、第二起風手段10、電動機11を備え、かつ、気相流体を通過させる途中で塵埃を除去処理する整流板4、第一濾過手段7、第二濾過手段8、第三濾過手段13を備えたものである。
【0020】
上記ケーシング1内には、塵埃の除去処理を行うための処理部として、吸気口2から吸引導入された気相流体から、比較的質量の大きな切粉などの塵埃を衝突、落下させる整流板4と、さらに半径方向外側に起風する第一起風手段9と、整流板4と第一起風手段9を通過した気相流体を第一濾過手段7、第二濾過手段8、第三濾過手段13へ圧送する半径方向外周に向けて起風する第二起風手段10と、各起風手段を駆動する電動機11と、排気口14とが設けられている。
【0021】
〔整流板〕
図3乃至4に示すように、ケーシング1内に設けられる整流板4は、ホルダー5と例えばスポット溶接などで固着されている。もちろん、整流板4は、ホルダー5と一体で形成されていてもよい。吸気口2はフロントカバー3と一体または別部品として溶接等で固着されている。ホルダー5のフロントカバー3との当接部はフロントカバー3に添うようにフランジ部5aが形成されており、ボデー6とフロントカバー3とを止め金具6cで締付ける時に共締めされている。なお、ボデー部品同士の当接部には空気漏れを防止するため断面が「コ」型のシール部材やOリングが介挿されているが、以下の説明分にはその旨記載を省略している。
フロントカバー3とホルダー5とは、予め溶接などで固着されていてもよい。また、ホルダー5はフランジ部5aを設けずにフロントカバー3に突き当てて溶接などで固着してもよい。整流板4は、シャフト17を固定する中央部以外は一部図示を省略してあるパンチングメタルなどの有孔材料で構成されている。シャフト17を固定するシャフト固定穴4aはパンチングメタルの穴をそのまま利用してもよい。また、ホルダー5には第一濾過手段7を固定する段差部5bと、吸気口2から吸引された気相流体が、整流板4に衝突した際に落下する比較的質量の大きな切粉などの塵埃を回収する回収口5cが設けられている。
【0022】
〔ボデー〕
図3乃至4に示すように、ボデー6は断面が略「口」形をしており、その開口部の一方において止め金具6cによりフロントカバー3を締付け固定しており、もう一方の開口部で止め金具6dによりエンドカバー12を締付け固定している。ボデー6の内部には電動機11を固定し、起風手段9,10と第三濾過手段13を区画する仕切り板6aがボデー6に対して溶接などで固着されている。ボデー6の下部には防振ゴム16を固定するブラケット6bが溶接などでボデー6に固着されている。防振ゴム16はボルト16bでブラケット6bに固定されている。一方、防振ゴム16はワッシャ15b、ナット15cなどでフィクスチャー15に固定されている。フィクスチャー15は、図示しない締付けボルトにより固定穴15aを介して図示しない机、工作機械の本体など相手部品に固定されている。ボデー6の下部には、比較的質量の大きな切粉などを排出する漏斗状の第一排出口6cと比較的質量の小さなオイルミストの凝縮物などを排出する漏斗状の第二排出口6dが具備されている。
【0023】
〔第一起風手段〕
図4乃至6で明らかなように、第一起風手段9はドライブギヤ18fの中心Xに対して点対称で螺条を有する一対の起風要素9aで構成されている。起風要素9aは、一対のベアリング18aを介して、ワッシャ18b、ナット18cにより起風要素9aの長手方向中心軸に対して回転自在にハウジング18に取付けられている。一対のベアリング18aの間にはドリブンギヤ18dが起風要素9aに対して圧入などの、ドリブンギヤ18dと起風要素9aの相互滑り回転を許容しない手法で介装されている。また、ベアリング18aの一端にはベアリング18aへの塵埃の侵入を防止するためオイルシール18eと、他端にはキャップ18gが取付けられている。ハウジング18の中心にはドライブギヤ18fが具備されている。
【0024】
ハウジング18は電動機11によりドライブギヤ18fを中心にして吸気口2の方向から見て反時計方向に回転する。この時、ドライブギヤ18fは後述する如く固定されているので、ドライブギヤ18fにねじ歯車として噛合うドリブンギヤ18dが、ハウジング18の回転につれて噛合い回転することになり、結果としてドリブンギヤ18dを圧入などで固着されている起風要素9aが長手方向軸回りに回転することになる。起風要素9aは、ハウジング18を回転運動させる電動機11の動力を減ずる揚力を発生させる方向、すなわち起風要素9aを長手方向にナット18cの方向から見た時に反時計方向に回転するように、ドリブンギヤ18d、ドライブギヤ18fのねじ歯車のねじれ方向が設定されている。一方、起風要素9aは、起風要素9aを長手方向にナット18cの方向から見た時に、反時計方向に回転した時に捕捉した気相流体を外周方向Pに圧送するように螺条のねじれ方向が設定されている。すなわち、図6で明らかなように時計方向ねじれの三条の螺条が形成されている。
【0025】
〔第二起風手段〕
図4乃至6で明らかなように、第二起風手段10の基本的な部品構成は第一起風手段と同じである。第二起風手段は起風要素10aと10bで構成されている。起風要素10aは起風要素9aに対して公転運動の回転方向で120度位相がずれ起風要素9aの外径D1より大きいD2で構成されており、起風要素10bは起風要素10aに対してさらに120度位相がずれ外径はさらに大きいD3で構成されている。このため、起風要素9aの周速より起風要素10aの周速が、起風要素10aの外径より起風要素10bの周速が早くなるので、起風要素9a、10a、10bとなるにつれ圧力が低下する。これにより、起風要素の起風作用により吸引された気相流体のうち、比較的質量の大きな切粉などを含んだ塵埃は最初の起風要素9aで捕捉され第一濾過手段7から排出されると共に、ここを通過した気相流体は起風要素10a、10bと順次圧力勾配に応じて公転軸のQ方向に移動しながら、半径方向外側に向って起風する次の第二起風手段によりR方向へ移動しつつ同心円状の第二濾過手段8、第三濾過手段13へと移動する。
【0026】
起風要素10a、10bを駆動するドリブンギヤ、ドライブギヤは起風要素9aを駆動するドリブンギヤ18d、ドライブギヤ18fと同じ構成である。ドリブンギヤ18dとドライブギヤ18fの駆動比は1にならないように設定されている。この駆動比が1の場合は各起風要素9a、10a、10bが各ドライブギヤ18fの周りを一回転の公転運動をする時に各起風要素は各々の長手方向軸線回りに一回転自転することになるので、各起風要素に捕捉されて半径方向外側に排出される気相流体は毎回同じ軌跡上に排出されることになる。この結果、濾過材は軌跡上と相対する部分が毎回転毎に同じ個所で気相流体を通過させることになり劣化が進む。
【0027】
この駆動比を1にならないように設定することで、各起風要素に捕捉されて半径方向外側に排出される気相流体は、回転のたびに排出軌跡が少しずつずれるので濾過面積の全てを利用出来、排出先の第一濾過手段7、第二濾過手段8、第三濾過手段13の目詰りの発生を防止することが出来る。詳説すると、起風要素の螺条溝の図心を起風手段の回転軸を中心軸とする円筒上に投影すると、この図心の投影軌跡Sは前記円筒上に始点Tと終点Uが一致しないサインカーブを描くことになる。従って、回転に伴って描かれる前記図心の投影軌跡のサインカーブが回転毎に少しずつずれて同一軌跡を通過することがないので、気相流体を濾過する濾過材の面積を有効に使え目詰りの発生をより確実に回避することが出来る。同時に各ねじ歯車の歯同士が回転のたびに同じ歯と噛み合って局所磨耗を起こしたり噛合い音を起こしたりする不具合を避けることが出来る。
【0028】
〔第一濾過手段〕
図4乃至5で明らかなように、第一濾過手段7は起風手段9および10の同心円状外側でホルダー5と仕切り板6aの間に円筒状に形成されている。この第一濾過手段7はパンチングメタルのような図示しない有孔の材料で構成されており、気相流体が高速でパンチングメタルに衝突することでオイルミストなどの凝縮を促進し、気相流体が第二濾過手段8以下の濾過材に捕捉されずに通過してしまうことを防止し濾過効率を向上させることが出来る。なお、実施例では第二起風手段10の外周のみならず第一起風手段9の外周まで第一濾過手段7を延長させているが、第一起風手段9に相対する部分はパンチングメタルの孔径を大きくして比較的質量の大きな切粉などの通過性を上げたり、第一濾過手段7を短縮して第一起風手段9と相対する部分を廃止することも可能である。
【0029】
〔第二濾過手段〕
図4乃至5で明らかなように、第二濾過手段8は第一濾過手段7の同心円状に間隔を設けて仕切り板6aとバルクヘッド19の間に配置されている。第一濾過手段7を通過した気相流体の凝縮を促進されたオイルミストなどの塵埃は、金網などで補強された不織布などで構成されている第二濾過手段8を通過させることでほとんどの塵埃が除去される。
【0030】
〔第三濾過手段〕
図4乃至7で明らかなように、第三濾過手段13は第二濾過手段8の同心円状に仕切り板6aとエンドカバー12の間に配置されている。第二濾過手段8を通過したほとんどの塵埃が除去された気相流体は、ボデー6の仕切り板6aに設けられている通気孔6bを通過した後、第三濾過手段13の半径方向外側から内側に向けて第三濾過手段13を通過することで塵埃が完全に除去された状態で、エンドカバー12に形成されているサポートリング12aの通気孔12bを通って排気口14から排出される。第三濾過手段13は、アルミ箔をエキスパンドメタル状に加工したものを重ね合わせたものが圧力損失と濾過効率の面で都合がよい。
【0031】
〔駆動手段〕
図4乃至6乃至7で明らかなように、駆動手段は電動機11、シャフト17、ハウジング18、カップリング20などで構成されている。電動機11は、ボデー6の仕切り板6aに4個のボルト11aで固定されている。電動機11から延在するシャフト11bにはカップリング20が止めねじ11cで固定されている。カップリング20に対向する位置にはハウジング18が配置されている。ハウジング18の内部には、その両端にベアリング17aが圧入されておりスナップリング17bで位置を拘束している。ベアリング17aの外側には、ベアリング17aへの塵埃の侵入を防止するためオイルシール17cがハウジング18に圧入されている。
【0032】
シャフト17の電動機11側は、ベアリング17aの内輪に当接するようにフランジ部17dが形成されている。また、シャフト17の長手方向軸部には、起風要素9a、10a、10bを駆動するドライブギヤ18fが圧入などでシャフト17に固着されている。シャフト17の反電動機側にはおねじが形成されており、アジャストナット17eとナット17gが螺合されている。アジャストナット17eはベアリング17aの内輪に当接するようにフランジ部17fが形成されている。シャフト17のフランジ部17dとアジャストナット17eのフランジ部17fとは、ハウジング18の両端のベアリング17aの内輪間隔に合うようにアジャストナット17eのシャフト17に対するねじ込み位置が調整されている。アジャストナット17eとナット17gは、シャフト17の長手方向に対する位置が使用中に変わらないようにダブルナット(アジャストナット17eを緩める方向、ナット17gを締め込む方向にお互いが当接した状態から同時に回転させ固定させる手法)として固定されている。
【0033】
この状態で、シャフト17はワッシャ21、ナット22により整流板4に固定されている。カップリング20には軸継手ボルト23がワッシャ23a、ナット23bで固定されており、軸継手ボルト23の先端はハウジング18のフランジ部の穴18hに勘合している。しかして、電動機11がシャフト11b側から見て反時計方向に回転すると、軸継手ボルト23によりハウジング18も同じ方向に回転することになる。しかしながら、シャフト17は固定されているのでドライブギヤ18fも固定されており、これに噛合うドリブンギヤ18dがハウジング18の回転に伴い噛合い回転し、起風要素9a、10a、10bが自転運動を起こすとともに、電動機11の回転によるハウジング18の回転で公転運動することになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】除塵装置の側面図
【図2】除塵装置の平面図
【図3】除塵装置の正面図
【図4】除塵装置の正面図 A−A における断面図
【図5】フロントカバーを外した状態での除塵装置の斜視図
【図6】除塵装置の側面図 B−B における断面図
【図7】除塵装置の側面図 C−C における断面図
【符号の説明】
【0035】
1 ケーシング
2 吸気口
3 フロントカバー
4 整流板
5 ホルダー
6 ボデー
7 第一濾過手段
8 第二濾過手段
9 第一起風手段
10 第二起風手段
11 電動機
12 エンドカバー
13 第三濾過手段
14 排気口
15 フィクスチャー
16 防振ゴム
17 シャフト
18 ハウジング
19 バルクヘッド
20 カップリング
21 ワッシャ
22 ナット
23 軸継手ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケーシング内に設けた複数の起風手段によって吸気口から吸引したダストを含んだ気相流体を、ケーシング内部の整流板と半径方向外側に向かって起風する第一起風手段によって除塵処理した後に、半径方向外側に向かって起風する第二起風手段と、第二起風手段を囲むように構成された濾過手段によってオイルミストを凝縮・回収するようにし、清浄な状態にして排気口から排出するように構成したことを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、その起風要素自体が螺条を形成してなり、起風要素自体が自転運動することで起風手段の半径方向外側に向かって起風しつつ、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動をすることで、起風手段の公転軸中心に沿った流れを速めたことを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項3】
本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、起風要素が起風手段の回転軸中心に対して公転運動をする回転数に対して、起風要素自体の自転運動の回転数が同一でないことを特徴とする請求項2に記載のオイルミスト除去装置。
【請求項4】
本体ケーシング内に設けた複数の起風手段は、吸気口から遠ざかるにつれて各々の起風手段の外径が大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載のオイルミスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−142670(P2010−142670A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319065(P2008−319065)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(309025029)
【Fターム(参考)】