オイル塗布ローラ、定着装置及び画像形成装置
【課題】定着装置の待機中の定着ローラや加圧ローラとの圧接においてもオイル塗布ローラの外周の変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラ、及びこれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】オイル保持層7の軸方向端部の外周に、オイル保持層7とともに回転するオイル保持層より硬質の弾性環体8を装着するので、定着装置の待機中の定着ローラ41との圧接においても、弾性環体8と定着ローラ41とが圧接してオイル塗布ローラ3が定着ローラと安定して連れ回りを継続することが可能となり、浸透制御膜6の損傷、汚染を良好に防止することができる。
【解決手段】オイル保持層7の軸方向端部の外周に、オイル保持層7とともに回転するオイル保持層より硬質の弾性環体8を装着するので、定着装置の待機中の定着ローラ41との圧接においても、弾性環体8と定着ローラ41とが圧接してオイル塗布ローラ3が定着ローラと安定して連れ回りを継続することが可能となり、浸透制御膜6の損傷、汚染を良好に防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金の外周部に多孔質弾性層を形成し、当該多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させた多孔質弾性層に回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラ及びこれを用いた定着装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等のトナー画像定着装置におけるオフセット現象を防止するために、シリコーンオイル等の離型性オイルを定着ローラや加圧ローラ等の定着装置に塗布することが行われている。こうした定着装置において、離型性オイルを定着ローラや加圧ローラに供給するオイル塗布ローラとして、安定したオイル塗布性能を維持しながら、省スペースに対応し、さらに、再利用、または分別廃棄が容易にできるオイル塗布ローラを提供するために、離型作用を有するオイルをゲル化剤を用いてゲル化させることにより形成したオイル固形化物と該オイル固形化物を表面の少なくとも一部に形成された多孔質樹脂シートに含浸させ、該多孔質樹脂シートの表面の少なくとも一部をオイル塗布面とするオイル塗布ローラが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−337495公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のオイル塗布ローラでは、定着装置の待機中は定着ローラ、もしくは加圧ローラが加熱されたまま停止し、それに伴いオイル塗布ローラも停止するため、オイル塗布ローラは、定着ローラもしくは加圧ローラに押圧されたままの状態となり、待機が長時間に及ぶとオイル塗布ローラの低硬度のオイル保持層のニップ部分が定着ローラ形状もしくは加圧ローラ形状に沿って、真円形から変形した状態となってしまう。その結果、オイル塗布ローラは、再稼動時に変形した部分で当接する定着ローラや加圧ローラとの連回りが停止し摺擦状態となって、オイル塗布ローラ外周に設けられた浸透制御膜を損傷したり、オイル塗布ローラ外周に設けられた浸透制御膜表面一部分に、定着ローラ表面もしくは加圧ローラ表面から未定着トナーが堆積し、再度定着ローラもしくは加圧ローラに転写して、紙表面を汚染する等の不具合が発生する問題を招いた。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、定着装置の待機中の定着ローラや加圧ローラとの圧接においてもオイル塗布ローラの外周の変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラ、及びこれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、芯金の外周部に形成された多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させたオイル保持層を回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラにおいて、前記オイル保持層の軸方向端部の外周に、前記オイル保持層と共に回転し且つ前記オイル保持層より硬質の弾性環体を設けたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向の両端に設けられていることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、フッ化シリコーンゴムで構成されていることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体が配置された前記塗布ローラの外径と、前記弾性環体が配置されていない前記塗布ローラの外径とが略同一であることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向における定着領域外の領域に配置されていることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体の厚みを3mm以上としたことを特徴とする。
【0005】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記オイル保持層の軸方向端部に環状の溝部を形成し、当該溝部内に前記弾性環体を配置したことを特徴とする。
また、請求項8の発明は、回転可能に取り付けられ、転写材に形成された未定着トナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対して前記転写材を介して押圧する加圧手段と、前記加熱手段又は加圧手段の少なくとも一方の表面に当接して離型性オイルを供給するオイル塗布ローラを備えた定着装置において、前記オイル塗布ローラは、請求項1乃至7のいずれか1項記載のオイル塗布ローラであることを特徴とする。
また、請求項9の発明は、感光体と、感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、該露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、感光体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、該転写手段によって転写材表面に転写されたトナー像を加熱、加圧して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、前記定着装置は、請求項8記載の定着装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記多孔質弾性層の軸方向端部の外周に、当該多孔質弾性層と共に回転する当該多孔質弾性層より硬質の弾性環体を装着したことによって、定着装置の待機中の定着ローラや加圧ローラとの圧接においてもオイル塗布ローラの外周の変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラ、及びこれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、画像形成装置本体1の中央部に記録用紙等のシート状記録媒体である転写材Pに画像を形成する画像形成部30とその下方に転写材Pを収納する給紙トレイ10を有する給紙装置2を備えている。
画像形成部30は、ドラム状の感光体31を有し、その外周に感光体31の表面を一様に帯電する帯電手段32、現像手段33を備えており、露光手段34からの画像情報に基づいた光が感光体31の表面に照射して、感光体31の表面に静電潜像を形成する。このように静電潜像が形成された感光体31の表面に現像手段33からトナーを供給して、静電潜像をトナー像化して現像する。
【0008】
給紙装置2は、多数の転写材Pの束を収納する給紙トレイ10から、転写材Pを、給紙トレイ10の底板25に取り付けられた図示しない押し上げ部材によって弾性的に押し上げて回転駆動する給紙コロ26と分離パッド27とによって1枚ずつ繰り出されるようになっている。
このようにして給紙トレイ10から繰り出された転写材Pは、図1の矢印Aで示すように、搬送ローラ対19によってレジストローラ対20に供給される。レジストローラ対20では、画像形成部30で上述のようにして形成されたトナー像を転写手段である転写ローラ21で転写材Pの表面に転写するタイミングをみて転写材Pを転写ローラ21に送給して転写材P上にトナー像を転写する。このようにしてトナー像が転写された転写材Pは、定着装置40に搬送され、定着装置40で定着ローラ41及び加圧ローラ42によって加熱、加圧処理を受けてトナー像が転写材Pの表面に定着される。その後、定着処理された転写材Pは、搬送ローラ対24で搬送されて排紙ローラ22によって排紙トレイ23に排出される。
【0009】
この定着装置40においては、図2に示すように、未定着トナー像Tを表面に転写された転写材Pが加熱された定着ローラ41と加圧ローラ42のニップ部Nの間に矢印A方向から送給され、定着ローラ41及び加圧ローラ42によって加熱、加圧されて転写材P上にトナー像を定着させる。この定着時に、オフセット現象を防止するために、定着ローラ41の外周面41aにシリコーンオイル等の離型性オイルをオイル塗布ローラ3から塗布供給するようになっている。このオイル塗布ローラ3は、駆動回転する定着ローラ41に圧接して、定着ローラ41の回転に連れ回りしながら、後述するように、オイル塗布ローラ3内に含浸されている離型性オイルを定着ローラ41の外周面41aに供給するようになっている。従って、定着装置40の待機中等、定着ローラ41が回転されない場合には、定着ローラ41の外周面41aにオイル塗布ローラ3の外周面3aの一部が圧接した状態となって保持され、オイル塗布ローラ3の外周面3aが変形を起こし、適切に定着ローラ41と連れ回りが生じなくなり、定着ローラ41に十分に離型性オイルを供給できない場合が生じた。
本発明においては、このような定着装置40の待機中等、定着ローラ41が回転されない場合においても、オイル塗布ローラ3の外周面3aの変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラを提供しようとするものである。次に具体的なオイル塗布ローラの構造について実施例に基づいて説明する。
【0010】
[実施例1]
図3は、本発明による実施例1の定着装置40の上面図で、本実施例におけるオイル塗布ローラ3の概略構成を示している。本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、図4に示すように、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の端面を含めた外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。
さらに、オイル保持層7の軸方向両端の少なくとも一方には、図5に示すように、外径15mmの小径部7aが形成されており、これらの小径部7aに、図6で示すようなフッ素ゴム、フッ化シリコーンゴム等を主成分とした弾性体からなる内径14mm、外径20mm、幅3mmの、弾性環体8を装着させている。弾性環体8を装着した部分での外径は22mmとなり、オイル保持層7より外径が若干大きくなっている。また、オイル保持層7の軸方向の長さL1は、定着ローラ41の軸方向におけるトナー像の定着領域L2よりも長くなっており、少なくとも、定着領域L2には、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7から離型性オイルが塗布、供給されるようになっている。
【0011】
弾性環体8を装着しない場合(従来例)、フッ素ゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合(サンプル1)、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合(サンプル2)、フッ素ゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合(サンプル3)、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合(サンプル4)のオイル塗布ローラを使用して図2に示す定着装置に取り付け、図1に示す画像形成装置で通紙稼動、予熱待機を行った。そして停止時間を変えて連れ回りの状態を試験した。この場合、定着ローラ41の稼動中は、オイル塗布ローラ3は、定着ローラ41の回転に合わせて連回りし、内部に含有するオイル保持層7中のシリコーンオイルが浸透制御膜6を通し、微少量が定着ローラ41表面もしくは、定着ローラ41表面を介して加圧ローラ42表面に塗布され、両ローラ表面の離型性が確保される。
【0012】
図7は、その結果を示し、○:連れ回りあり、△:断続的に回転(一時的に摺擦)、×:連れ回りなし(摺擦)として評価した。この結果から弾性環体のない従来の塗布ローラでは、停止時間が24時間以内であれば、連れ回りを生ずることが可能であるが、120時間を越えると連れ回りは全く生じなかった。これに対し、サンプル1及び2で示す弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合には、120時間の停止時間であっても連れ回りが生じた。また、サンプル3及び4で示す弾性環体8をオイル保持層7の両端端に装着した場合には、500時間の停止時間であっても連れ回りが生じ、弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合の方がより安定して連回りすることを確認した。
また、定着ローラ41の回転稼動中は、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7の一部が凹んだ状態でも一ヶ所のみに凹みが集中することはなく、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7の変形も生じないが、停止中は、1ヶ所が凹んだ状態で保持されるため、圧縮永久歪が60%程度であるオイル保持層7は、凹み等の変形が維持され易くなる。しかし、端部外周に装着された圧縮永久歪2%程度のフッ化シリコーン製の弾性環体8を装着した場合にオイル保持層7の変形もなく、しかも、弾性環体8の表面の摩擦係数が浸透制御膜6の摩擦係数より大きいこともあり、定着ローラ41の再回転にもオイル塗布ローラ3は追随して連回りすることを確認した。
また、弾性環体の材質と累積通紙枚数毎の状態比較を行なった。その結果を図8に示す。この結果から、加熱される定着装置40内で用いられる弾性環体8の材質は、フッ素ゴム(サンプル3)を使用する場合に比べより耐熱性の高いフッ化シリコーンゴム(サンプル4)を用いることによって破断もなく、長時間に渡ってオイル塗布ローラ3の回転を維持できることが明らかである。
【0013】
[実施例2]
本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の両端それぞれ3mm長を直径16mmまで研削して小径部7aを形成し、この小径部7aの外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。さらに、前記小径部7aには、フッ化シリコーンゴムを主成分とした、内径14mm、外径20mm、幅3mmの弾性環体8を装着した。装着後の弾性環体8の外径φaは両側とも20mmであり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径とした(サンプル5)。なお、比較のため、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8を装着して外径φa=22mmの実施例1で調製したオイル塗布ローラ(サンプル4)をそれぞれ用い、定着装置40で未定着トナーTを有する転写紙Pを通し、定着ローラ41表面の状態を観察、比較した。その結果を図9に示す。
【0014】
図9で示す結果から明らかなように、実施例1のサンプル4で示す弾性環体8を装着して外径φaがオイル保持層7の外径φbより大径とした場合には、250K枚(250,000枚)以上の通紙を行う定着ローラ14の外周表面にトナーの固着が認められる。これに対して、外径オイル保持層7の両端に装着後の弾性環体8の外径φaと、弾性環体8を装着しない部分のオイル保持層7の外径φbをφa=φbとなるようにすることによって、オイル塗布ローラ3が確実に定着ローラ41表面に当接し、安定してシリコーンオイルが塗布されるため、定着ローラ41表面のトナー付着が長時間に亘り防止できることが明白である。
【0015】
[実施例3]
次に、外径、内径及び厚さを種々変更した弾性環体8を使用し、実施例2で示すオイル保持層7の小径部の外径φcを変え、図10に示す組み合わせで、装着後の弾性環体8の外径φaは両側ともφ20であり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径としてオイル塗布ローラ3を調製した。
このようにして調製されたオイル塗布ローラ3を使用して定着装置40を組立て、未定着トナー像Tを有する転写紙Pを定着装置40に通紙して弾性環体8のオイル保持層7への保持状態を観察した。その結果を図11に示す。この結果から、φa=φbを保ち、かつ、弾性環体8の厚さtがt≧3mmであれば、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7におけるずれ、脱落を抑制することが可能となることが明らかである。
【0016】
[実施例4]
次に、弾性環体8のオイル保持層7からのずれ、脱落を防止するため、図12及び図13で示す構造のオイル塗布ローラ3を使用した。即ち、本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、図12に示すように、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の端面を含めた外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。
【0017】
さらに、オイル保持層7の軸方向両端部には、外径φd=16mmとなる深さを有する環状の溝部9が形成されており、これらの溝部9内にフッ化シリコーンゴムを主成分とした、内径14mm、外径20mm、幅3mmの弾性環体8を装着した。装着後の弾性環体8の外径φaは両側とも20mmであり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径とし、弾性環体8を装着したオイル保持層7の外側に、弾性環体8を装着しない8b部を設け、弾性環体8がオイル保持層7からの脱却を防止する構成とした(サンプル10)。
このサンプル10で示すオイル塗布ローラ及び前述のサンプル5、8、9、10のオイル塗布ローラを使用して定着装置40で未定着トナー像Tを有する転写紙Pを定着装置40に通紙して弾性環体8のオイル保持層7への保持状態を観察した。その結果を図14に示す。図14の結果から明らかなように、オイル保持層の端部に形成された小径部7aに弾性環体8を装着したオイル塗布ローラでは、500K枚の通紙で弾性環体8のずれの発生が認められるのに対し、サンプル10で示す溝部9内に弾性環体8を装着したオイル塗布ローラ3では、600K枚の通紙でも弾性環体8は、稼動中のずれ、脱落が生じないことが明である。また、600K枚の通紙時点では、オイル塗布ローラ3内部からのシリコーンオイル供給能力の上限を超えており、弾性環体8は必要、十分な寿命を持つといえる。
【0018】
以上のように、本実施例におけるオイル塗布ローラにおいては、オイル保持層7の軸方向端部の外周に、オイル保持層7とともに回転するオイル保持層より硬質の弾性環体8を装着するので、定着装置の待機中の定着ローラ41との圧接においても、弾性環体8と定着ローラ41とが圧接してオイル塗布ローラ3が定着ローラと安定して連れ回りを継続することが可能となり、浸透制御膜6の損傷、汚染を良好に防止することができる。
なお、本実施例においては、オイル塗布ローラ3を定着ローラ41の表面に圧接させたが、加圧ローラ42に圧接させても同様の効果を得ることができる。
また、オイル塗布ローラによって離型性オイルが塗布される被塗布物として定着ローラ41及ぶ加圧ローラ42を例示したが、定着装置の未定着トナー像を加熱する加熱手段やとしては、加圧手段としては、定着ローラや加圧ローラに限らず無端状のベルトやシートからなる加熱手段や加圧手段であっても有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面摸式図である。
【図2】本発明による一実施形態の定着装置の概略構成を示す断面模式図である。
【図3】図2の上面図である。
【図4】図3のA−A線上で切断した断面図である。
【図5】本発明による実施例1のオイル塗布ローラで使用されるオイル保持層を示す平面図である。
【図6】図3のB−B線上で切断した断面図である。
【図7】本発明による実施例1で使用される弾性環体の構造と定着装置の停止時間との関係を示す試験結果の図である。
【図8】本発明による実施例1で使用される弾性環体の材質と耐久性との関係を示す試験結果の図である。
【図9】本発明による実施例2で使用される弾性環体の構造と定着ローラの表面状態との関係を示す試験結果の図である。
【図10】本発明による実施例3で使用される弾性環体の形状とオイル保持層の小径部の外径との組み合わせの関係を示す図である。
【図11】本発明による実施例3で使用される弾性環体と弾性環体の保持状態を示す試験結果の図である。
【図12】本発明による実施例4のオイル塗布ローラで使用されるオイル保持層を示す平面図である。
【図13】本発明による実施例4のオイル塗布ローラを示す平面図である。
【図14】本発明による実施例1から4で使用されるオイル塗布ローラと弾性環体の保持状態を示す試験結果の図である。
【符号の説明】
【0020】
1 画像形成装置本体、3 オイル塗布ローラ、4 芯金、5 多孔質弾性体、6 浸透制御膜、7 オイル保持層、7a 小径部、8 弾性環体、9 溝部、30 画像形成部、31 感光体、32 帯電手段、33 現像手段、34 露光手段、40 定着装置、41 定着ローラ、42 加圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金の外周部に多孔質弾性層を形成し、当該多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させた多孔質弾性層に回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラ及びこれを用いた定着装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等のトナー画像定着装置におけるオフセット現象を防止するために、シリコーンオイル等の離型性オイルを定着ローラや加圧ローラ等の定着装置に塗布することが行われている。こうした定着装置において、離型性オイルを定着ローラや加圧ローラに供給するオイル塗布ローラとして、安定したオイル塗布性能を維持しながら、省スペースに対応し、さらに、再利用、または分別廃棄が容易にできるオイル塗布ローラを提供するために、離型作用を有するオイルをゲル化剤を用いてゲル化させることにより形成したオイル固形化物と該オイル固形化物を表面の少なくとも一部に形成された多孔質樹脂シートに含浸させ、該多孔質樹脂シートの表面の少なくとも一部をオイル塗布面とするオイル塗布ローラが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−337495公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のオイル塗布ローラでは、定着装置の待機中は定着ローラ、もしくは加圧ローラが加熱されたまま停止し、それに伴いオイル塗布ローラも停止するため、オイル塗布ローラは、定着ローラもしくは加圧ローラに押圧されたままの状態となり、待機が長時間に及ぶとオイル塗布ローラの低硬度のオイル保持層のニップ部分が定着ローラ形状もしくは加圧ローラ形状に沿って、真円形から変形した状態となってしまう。その結果、オイル塗布ローラは、再稼動時に変形した部分で当接する定着ローラや加圧ローラとの連回りが停止し摺擦状態となって、オイル塗布ローラ外周に設けられた浸透制御膜を損傷したり、オイル塗布ローラ外周に設けられた浸透制御膜表面一部分に、定着ローラ表面もしくは加圧ローラ表面から未定着トナーが堆積し、再度定着ローラもしくは加圧ローラに転写して、紙表面を汚染する等の不具合が発生する問題を招いた。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、定着装置の待機中の定着ローラや加圧ローラとの圧接においてもオイル塗布ローラの外周の変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラ、及びこれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、芯金の外周部に形成された多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させたオイル保持層を回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラにおいて、前記オイル保持層の軸方向端部の外周に、前記オイル保持層と共に回転し且つ前記オイル保持層より硬質の弾性環体を設けたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向の両端に設けられていることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、フッ化シリコーンゴムで構成されていることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体が配置された前記塗布ローラの外径と、前記弾性環体が配置されていない前記塗布ローラの外径とが略同一であることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向における定着領域外の領域に配置されていることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記弾性環体の厚みを3mm以上としたことを特徴とする。
【0005】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、前記オイル保持層の軸方向端部に環状の溝部を形成し、当該溝部内に前記弾性環体を配置したことを特徴とする。
また、請求項8の発明は、回転可能に取り付けられ、転写材に形成された未定着トナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対して前記転写材を介して押圧する加圧手段と、前記加熱手段又は加圧手段の少なくとも一方の表面に当接して離型性オイルを供給するオイル塗布ローラを備えた定着装置において、前記オイル塗布ローラは、請求項1乃至7のいずれか1項記載のオイル塗布ローラであることを特徴とする。
また、請求項9の発明は、感光体と、感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、該露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、感光体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、該転写手段によって転写材表面に転写されたトナー像を加熱、加圧して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、前記定着装置は、請求項8記載の定着装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記多孔質弾性層の軸方向端部の外周に、当該多孔質弾性層と共に回転する当該多孔質弾性層より硬質の弾性環体を装着したことによって、定着装置の待機中の定着ローラや加圧ローラとの圧接においてもオイル塗布ローラの外周の変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラ、及びこれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る画像形成装置は、画像形成装置本体1の中央部に記録用紙等のシート状記録媒体である転写材Pに画像を形成する画像形成部30とその下方に転写材Pを収納する給紙トレイ10を有する給紙装置2を備えている。
画像形成部30は、ドラム状の感光体31を有し、その外周に感光体31の表面を一様に帯電する帯電手段32、現像手段33を備えており、露光手段34からの画像情報に基づいた光が感光体31の表面に照射して、感光体31の表面に静電潜像を形成する。このように静電潜像が形成された感光体31の表面に現像手段33からトナーを供給して、静電潜像をトナー像化して現像する。
【0008】
給紙装置2は、多数の転写材Pの束を収納する給紙トレイ10から、転写材Pを、給紙トレイ10の底板25に取り付けられた図示しない押し上げ部材によって弾性的に押し上げて回転駆動する給紙コロ26と分離パッド27とによって1枚ずつ繰り出されるようになっている。
このようにして給紙トレイ10から繰り出された転写材Pは、図1の矢印Aで示すように、搬送ローラ対19によってレジストローラ対20に供給される。レジストローラ対20では、画像形成部30で上述のようにして形成されたトナー像を転写手段である転写ローラ21で転写材Pの表面に転写するタイミングをみて転写材Pを転写ローラ21に送給して転写材P上にトナー像を転写する。このようにしてトナー像が転写された転写材Pは、定着装置40に搬送され、定着装置40で定着ローラ41及び加圧ローラ42によって加熱、加圧処理を受けてトナー像が転写材Pの表面に定着される。その後、定着処理された転写材Pは、搬送ローラ対24で搬送されて排紙ローラ22によって排紙トレイ23に排出される。
【0009】
この定着装置40においては、図2に示すように、未定着トナー像Tを表面に転写された転写材Pが加熱された定着ローラ41と加圧ローラ42のニップ部Nの間に矢印A方向から送給され、定着ローラ41及び加圧ローラ42によって加熱、加圧されて転写材P上にトナー像を定着させる。この定着時に、オフセット現象を防止するために、定着ローラ41の外周面41aにシリコーンオイル等の離型性オイルをオイル塗布ローラ3から塗布供給するようになっている。このオイル塗布ローラ3は、駆動回転する定着ローラ41に圧接して、定着ローラ41の回転に連れ回りしながら、後述するように、オイル塗布ローラ3内に含浸されている離型性オイルを定着ローラ41の外周面41aに供給するようになっている。従って、定着装置40の待機中等、定着ローラ41が回転されない場合には、定着ローラ41の外周面41aにオイル塗布ローラ3の外周面3aの一部が圧接した状態となって保持され、オイル塗布ローラ3の外周面3aが変形を起こし、適切に定着ローラ41と連れ回りが生じなくなり、定着ローラ41に十分に離型性オイルを供給できない場合が生じた。
本発明においては、このような定着装置40の待機中等、定着ローラ41が回転されない場合においても、オイル塗布ローラ3の外周面3aの変形を抑制することが可能なオイル塗布ローラを提供しようとするものである。次に具体的なオイル塗布ローラの構造について実施例に基づいて説明する。
【0010】
[実施例1]
図3は、本発明による実施例1の定着装置40の上面図で、本実施例におけるオイル塗布ローラ3の概略構成を示している。本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、図4に示すように、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の端面を含めた外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。
さらに、オイル保持層7の軸方向両端の少なくとも一方には、図5に示すように、外径15mmの小径部7aが形成されており、これらの小径部7aに、図6で示すようなフッ素ゴム、フッ化シリコーンゴム等を主成分とした弾性体からなる内径14mm、外径20mm、幅3mmの、弾性環体8を装着させている。弾性環体8を装着した部分での外径は22mmとなり、オイル保持層7より外径が若干大きくなっている。また、オイル保持層7の軸方向の長さL1は、定着ローラ41の軸方向におけるトナー像の定着領域L2よりも長くなっており、少なくとも、定着領域L2には、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7から離型性オイルが塗布、供給されるようになっている。
【0011】
弾性環体8を装着しない場合(従来例)、フッ素ゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合(サンプル1)、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合(サンプル2)、フッ素ゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合(サンプル3)、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合(サンプル4)のオイル塗布ローラを使用して図2に示す定着装置に取り付け、図1に示す画像形成装置で通紙稼動、予熱待機を行った。そして停止時間を変えて連れ回りの状態を試験した。この場合、定着ローラ41の稼動中は、オイル塗布ローラ3は、定着ローラ41の回転に合わせて連回りし、内部に含有するオイル保持層7中のシリコーンオイルが浸透制御膜6を通し、微少量が定着ローラ41表面もしくは、定着ローラ41表面を介して加圧ローラ42表面に塗布され、両ローラ表面の離型性が確保される。
【0012】
図7は、その結果を示し、○:連れ回りあり、△:断続的に回転(一時的に摺擦)、×:連れ回りなし(摺擦)として評価した。この結果から弾性環体のない従来の塗布ローラでは、停止時間が24時間以内であれば、連れ回りを生ずることが可能であるが、120時間を越えると連れ回りは全く生じなかった。これに対し、サンプル1及び2で示す弾性環体8をオイル保持層7の一端に装着した場合には、120時間の停止時間であっても連れ回りが生じた。また、サンプル3及び4で示す弾性環体8をオイル保持層7の両端端に装着した場合には、500時間の停止時間であっても連れ回りが生じ、弾性環体8をオイル保持層7の両端に装着した場合の方がより安定して連回りすることを確認した。
また、定着ローラ41の回転稼動中は、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7の一部が凹んだ状態でも一ヶ所のみに凹みが集中することはなく、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7の変形も生じないが、停止中は、1ヶ所が凹んだ状態で保持されるため、圧縮永久歪が60%程度であるオイル保持層7は、凹み等の変形が維持され易くなる。しかし、端部外周に装着された圧縮永久歪2%程度のフッ化シリコーン製の弾性環体8を装着した場合にオイル保持層7の変形もなく、しかも、弾性環体8の表面の摩擦係数が浸透制御膜6の摩擦係数より大きいこともあり、定着ローラ41の再回転にもオイル塗布ローラ3は追随して連回りすることを確認した。
また、弾性環体の材質と累積通紙枚数毎の状態比較を行なった。その結果を図8に示す。この結果から、加熱される定着装置40内で用いられる弾性環体8の材質は、フッ素ゴム(サンプル3)を使用する場合に比べより耐熱性の高いフッ化シリコーンゴム(サンプル4)を用いることによって破断もなく、長時間に渡ってオイル塗布ローラ3の回転を維持できることが明らかである。
【0013】
[実施例2]
本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の両端それぞれ3mm長を直径16mmまで研削して小径部7aを形成し、この小径部7aの外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。さらに、前記小径部7aには、フッ化シリコーンゴムを主成分とした、内径14mm、外径20mm、幅3mmの弾性環体8を装着した。装着後の弾性環体8の外径φaは両側とも20mmであり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径とした(サンプル5)。なお、比較のため、フッ化シリコーンゴムを主成分とした弾性環体8を装着して外径φa=22mmの実施例1で調製したオイル塗布ローラ(サンプル4)をそれぞれ用い、定着装置40で未定着トナーTを有する転写紙Pを通し、定着ローラ41表面の状態を観察、比較した。その結果を図9に示す。
【0014】
図9で示す結果から明らかなように、実施例1のサンプル4で示す弾性環体8を装着して外径φaがオイル保持層7の外径φbより大径とした場合には、250K枚(250,000枚)以上の通紙を行う定着ローラ14の外周表面にトナーの固着が認められる。これに対して、外径オイル保持層7の両端に装着後の弾性環体8の外径φaと、弾性環体8を装着しない部分のオイル保持層7の外径φbをφa=φbとなるようにすることによって、オイル塗布ローラ3が確実に定着ローラ41表面に当接し、安定してシリコーンオイルが塗布されるため、定着ローラ41表面のトナー付着が長時間に亘り防止できることが明白である。
【0015】
[実施例3]
次に、外径、内径及び厚さを種々変更した弾性環体8を使用し、実施例2で示すオイル保持層7の小径部の外径φcを変え、図10に示す組み合わせで、装着後の弾性環体8の外径φaは両側ともφ20であり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径としてオイル塗布ローラ3を調製した。
このようにして調製されたオイル塗布ローラ3を使用して定着装置40を組立て、未定着トナー像Tを有する転写紙Pを定着装置40に通紙して弾性環体8のオイル保持層7への保持状態を観察した。その結果を図11に示す。この結果から、φa=φbを保ち、かつ、弾性環体8の厚さtがt≧3mmであれば、オイル塗布ローラ3のオイル保持層7におけるずれ、脱落を抑制することが可能となることが明らかである。
【0016】
[実施例4]
次に、弾性環体8のオイル保持層7からのずれ、脱落を防止するため、図12及び図13で示す構造のオイル塗布ローラ3を使用した。即ち、本実施例におけるオイル塗布ローラ3は、図12に示すように、外径8mm、長さ330mmの鉄メッキ芯金4外周の、略中心振り分けにて外径20mm、長さ310mmの発泡ウレタン樹脂からなる円筒状の多孔質弾性体5を装着し、多孔質弾性体5の端面を含めた外周部に、ポリテトラエチレン(以下PTFEという)を主成分とし厚みt=0.05mm、多孔質の浸透制御膜6を被覆、接着している。そして、シリコーンゴムとシリコーンオイルの液状の混合体物質を、多孔質弾性体5内の空隙に注射針にて全域に注入し、焼成してゲル状となって多孔質弾性体5及び浸透制御膜6内に含浸されたオイル保持層7が形成されている。
【0017】
さらに、オイル保持層7の軸方向両端部には、外径φd=16mmとなる深さを有する環状の溝部9が形成されており、これらの溝部9内にフッ化シリコーンゴムを主成分とした、内径14mm、外径20mm、幅3mmの弾性環体8を装着した。装着後の弾性環体8の外径φaは両側とも20mmであり、弾性環体8を装着しないオイル保持層7の外径φbと同径とし、弾性環体8を装着したオイル保持層7の外側に、弾性環体8を装着しない8b部を設け、弾性環体8がオイル保持層7からの脱却を防止する構成とした(サンプル10)。
このサンプル10で示すオイル塗布ローラ及び前述のサンプル5、8、9、10のオイル塗布ローラを使用して定着装置40で未定着トナー像Tを有する転写紙Pを定着装置40に通紙して弾性環体8のオイル保持層7への保持状態を観察した。その結果を図14に示す。図14の結果から明らかなように、オイル保持層の端部に形成された小径部7aに弾性環体8を装着したオイル塗布ローラでは、500K枚の通紙で弾性環体8のずれの発生が認められるのに対し、サンプル10で示す溝部9内に弾性環体8を装着したオイル塗布ローラ3では、600K枚の通紙でも弾性環体8は、稼動中のずれ、脱落が生じないことが明である。また、600K枚の通紙時点では、オイル塗布ローラ3内部からのシリコーンオイル供給能力の上限を超えており、弾性環体8は必要、十分な寿命を持つといえる。
【0018】
以上のように、本実施例におけるオイル塗布ローラにおいては、オイル保持層7の軸方向端部の外周に、オイル保持層7とともに回転するオイル保持層より硬質の弾性環体8を装着するので、定着装置の待機中の定着ローラ41との圧接においても、弾性環体8と定着ローラ41とが圧接してオイル塗布ローラ3が定着ローラと安定して連れ回りを継続することが可能となり、浸透制御膜6の損傷、汚染を良好に防止することができる。
なお、本実施例においては、オイル塗布ローラ3を定着ローラ41の表面に圧接させたが、加圧ローラ42に圧接させても同様の効果を得ることができる。
また、オイル塗布ローラによって離型性オイルが塗布される被塗布物として定着ローラ41及ぶ加圧ローラ42を例示したが、定着装置の未定着トナー像を加熱する加熱手段やとしては、加圧手段としては、定着ローラや加圧ローラに限らず無端状のベルトやシートからなる加熱手段や加圧手段であっても有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面摸式図である。
【図2】本発明による一実施形態の定着装置の概略構成を示す断面模式図である。
【図3】図2の上面図である。
【図4】図3のA−A線上で切断した断面図である。
【図5】本発明による実施例1のオイル塗布ローラで使用されるオイル保持層を示す平面図である。
【図6】図3のB−B線上で切断した断面図である。
【図7】本発明による実施例1で使用される弾性環体の構造と定着装置の停止時間との関係を示す試験結果の図である。
【図8】本発明による実施例1で使用される弾性環体の材質と耐久性との関係を示す試験結果の図である。
【図9】本発明による実施例2で使用される弾性環体の構造と定着ローラの表面状態との関係を示す試験結果の図である。
【図10】本発明による実施例3で使用される弾性環体の形状とオイル保持層の小径部の外径との組み合わせの関係を示す図である。
【図11】本発明による実施例3で使用される弾性環体と弾性環体の保持状態を示す試験結果の図である。
【図12】本発明による実施例4のオイル塗布ローラで使用されるオイル保持層を示す平面図である。
【図13】本発明による実施例4のオイル塗布ローラを示す平面図である。
【図14】本発明による実施例1から4で使用されるオイル塗布ローラと弾性環体の保持状態を示す試験結果の図である。
【符号の説明】
【0020】
1 画像形成装置本体、3 オイル塗布ローラ、4 芯金、5 多孔質弾性体、6 浸透制御膜、7 オイル保持層、7a 小径部、8 弾性環体、9 溝部、30 画像形成部、31 感光体、32 帯電手段、33 現像手段、34 露光手段、40 定着装置、41 定着ローラ、42 加圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周部に形成された多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させたオイル保持層を回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラにおいて、
前記オイル保持層の軸方向端部の外周に、前記オイル保持層と共に回転し且つ前記オイル保持層より硬質の弾性環体を設けたことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項2】
請求項1記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向の両端に設けられていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、フッ化シリコーンゴムで構成されていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体が配置された前記塗布ローラの外径と、前記弾性環体が配置されていない前記塗布ローラの外径とが略同一であることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向における定着領域外の領域に配置されていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体の厚みを3mm以上としたことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記オイル保持層の軸方向端部に環状の溝部を形成し、当該溝部内に前記弾性環体を配置したことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項8】
回転可能に取り付けられ、転写材に形成された未定着トナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対して前記転写材を介して押圧する加圧手段と、前記加熱手段又は加圧手段の少なくとも一方の表面に当接して離型性オイルを供給するオイル塗布ローラを備えた定着装置において、
前記オイル塗布ローラは、請求項1乃至7のいずれか1項記載のオイル塗布ローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
感光体と、感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、該露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、感光体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、該転写手段によって転写材表面に転写されたトナー像を加熱、加圧して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、
前記定着装置は、請求項8記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
芯金の外周部に形成された多孔質弾性層の孔部内に離型性オイルを含浸させたオイル保持層を回転する被塗布部材と圧接させて当該被塗布部材表面に前記離型性オイルを塗布するオイル塗布ローラにおいて、
前記オイル保持層の軸方向端部の外周に、前記オイル保持層と共に回転し且つ前記オイル保持層より硬質の弾性環体を設けたことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項2】
請求項1記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向の両端に設けられていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、フッ化シリコーンゴムで構成されていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体が配置された前記塗布ローラの外径と、前記弾性環体が配置されていない前記塗布ローラの外径とが略同一であることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体は、前記オイル保持層の軸方向における定着領域外の領域に配置されていることを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記弾性環体の厚みを3mm以上としたことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のオイル塗布ローラにおいて、
前記オイル保持層の軸方向端部に環状の溝部を形成し、当該溝部内に前記弾性環体を配置したことを特徴とするオイル塗布ローラ。
【請求項8】
回転可能に取り付けられ、転写材に形成された未定着トナー像を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対して前記転写材を介して押圧する加圧手段と、前記加熱手段又は加圧手段の少なくとも一方の表面に当接して離型性オイルを供給するオイル塗布ローラを備えた定着装置において、
前記オイル塗布ローラは、請求項1乃至7のいずれか1項記載のオイル塗布ローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
感光体と、感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、該露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、感光体表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写手段と、該転写手段によって転写材表面に転写されたトナー像を加熱、加圧して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、
前記定着装置は、請求項8記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−98208(P2009−98208A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266988(P2007−266988)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]