説明

オイル塗布部材

【課題】オイル被塗布面の性状に応じたレベルのオイル塗布を可能とするオイル塗布部材を提供する。
【解決手段】所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材1であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ、かつ該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっているオイル塗布部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル塗布部材及びそれを用いるトナー画像定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置においては、トナー画像を定着させるための定着装置が組込まれている。この定着装置は、定着ロール又はベルトと、それと接触するオイル塗布部材とからなる。
【0003】
ところで、このような定着装置に用いられるオイル塗布部材としては、これまでは、そのオイル塗布面から定着ロール等のオイル被塗布面へのオイルの移行量は、その幅方向では、実質上一定の値となっている。
【0004】
しかしながら、オイル塗布部材からオイル被塗布物へのオイル移行量が一定であるときには、オイルの不必要な個所にも多量のオイルが塗布されるとか、逆にオイルの必要な個所へのオイルの塗布が不十分になる等の問題を生じた。
【0005】
特許文献1には、シリコーンオイルを定着ローラに塗布するオイル塗布機構において、その定着ローラの軸方向に沿った2つの箇所においてオイル塗布量を異なったものにする塗布機構が提案されている。この場合のオイル塗布機構は、定着ローラにオイルを塗布するオイル塗布ローラとオイル塗布ローラに圧接するオイル供給ローラからなるもので、定着ロールへのオイル塗布量は、そのオイル供給ローラの表面上に保持されるオイル量の分布によりコントロールされる。
【0006】
しかしながら、このようなオイル塗布機構は、その構造が複雑でかつコスト的にも高くつくという問題があり、満足すべきものではない。
【特許文献1】特開平11−95594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、オイル被塗布面の性状に応じたレベルのオイル塗布を可能とするオイル塗布部材及びそれを用いるトナー画像定着装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すオイル塗布部材及びトナー画像の定着装置が提供される。
(1)所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ、かつ該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とするオイル塗布部材。
(2)該固化オイルが、多孔質物質の細孔内に保持されていることを特徴とする前記(1)に記載のオイル塗布部材。
(3)該多孔質物質が、多孔質フッ素樹脂からなることを特徴とする前記(2)に記載のオイル塗布部材。
(4)オイルを保持するオイル保持部上に、オイル塗布面を形成するオイル透過制御層を積層した構造を有し、該オイル保持部及び該オイル透過制御層にはオイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルが保持され、該オイル透過制御層に保持された固化オイルにおけるオイルゲル化剤/オイル比R1は、該オイル保持部の固化オイルにおけるオイルゲル化剤/オイル比R2よりも大きいことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(5)該オイル透過制御層が、多孔質フッ素樹脂からなること特徴とする前記(4)に記載のオイル塗布部材。
(6)該オイル保持部が、多孔質物質からなることを特徴とする前記(4)〜(5)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【0010】
(7)該オイル塗布面から該オイル被塗布物へ移行するオイルの粘度が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(8)該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(9)該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の種類が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(10)該オイルゲル化剤が、シリコーンゴムからなることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(11)ロール形状を有する前記(1)〜(10)のいずれかに記載のオイル塗布部材。
(12)オイル塗布部材と定着ロールを有するトナー画像定着装置において、該オイル塗布部材として前記(1)〜(11)のいずれかに記載のオイル塗布部材を用いることを特徴とするトナー画像定着装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオイル塗布部材によれば、被塗布物に対し、その表面性状に応じたレベルのオイル塗布量を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いるオイル(離型性オイル)は、2つの固体表面間に介在してその摩擦抵抗を低減させるものであり、従来公知の各種のものが用いられる。
【0013】
本発明で用いるオイルは、好ましくは、定着の温度に耐える耐熱性(180℃〜200℃)を有するオイルである。この離型性オイルにおいて、その粘度(25℃)は10〜60000センチストークス(cs)、好ましくは50〜10000センチストークスである。
【0014】
前記オイルには、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものには、例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル及びフッ素オイル等が包含される。また、シリコーンオイルには、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、環状ポリジメチルシロキサン、フロロシリコーンオイル等が包含される。変性シリコーンオイルには、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、シリコーンポリエーテル共重合体、脂肪酸変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等が包含される。フッ素オイルには、フッ素オイル又は、フッ素に一部変性されたシリコーンオイル等が包含される。
【0015】
本発明で用いるオイルゲル化剤は、前記したオイルを、固形物にゲル化し得るものであればよく、従来公知の各種のものが用いられる。このようなものには、オイル中で三次元網状高分子を形成する三次元架橋性の低分子又は高分子物質が包含される。その具体例としては、シリコーンゴム(信越化学社製、「KE−1031」、「KE−106」、「KE−1800」等)や、シリコーンレジン、脂肪酸類、パラフィン炭化水素類等が包含される。このような三次元架橋性物質は、これをオイル中で三次元架橋させて三次元網状構造とすることにより、オイルをその三次元網状体中に取り込み、オイルの流動性を抑えてゲル化させて全体として寒天状の固形物を与える。本明細書では、このような寒天状の固形物を固化オイルと称する。
【0016】
オイルがシリコーンオイルの場合には、そのゲル化剤としては、同族系のシリコーン樹脂系ゴムを用いるのが好ましい。これにより、オイル塗布部材の分別廃棄が容易になる。
【0017】
本発明のオイル塗布部材は、被塗布物と接触したときに、その被塗布物にオイルを塗布するためのオイル塗布面を有する。本発明の場合、このオイル塗布面から被塗布物へのオイル移行量は、そのオイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする。
【0018】
本発明のオイル塗布部材におけるオイル塗布面には、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋反応させて形成した固化オイルが存在し、オイル塗布面からの被塗布物へのオイルの移行は、この固化オイルを介して行われる。
【0019】
オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋反応させた場合、そのオイルゲル化剤の割合によって得られる固化オイルの性状は変化し、オイルゲル化剤の割合が多くなるにつれて、オイル固化物はその硬さを増し、最終的には自己保形性、即ち、支持体や容器等を用いることなく、その固体形状を保持できる固化オイルとなる。
【0020】
本明細書で言う固化オイルとは、常温で固体状ないし半固体状のものを意味する。このような固化オイルは、これを中空においてもオイルが滴下することはない。しかし、この固化オイルに被塗布物が接触すると、その固化オイル中に存在するオイルはその被塗布物に移行し、その被塗布物にはオイルが塗布される。
【0021】
オイル塗布面を被塗布物に接触させたときに、そのオイル塗布面から被塗布物へのオイル移行量は、以下に示す如き各種の方法で調節することができる。
(1)オイルの粘度による方法
オイルゲル化物/オイルの比が同じであっても、そのオイルの粘度が異なると、オイル塗布面からの被塗布物へのオイル移行量は異なる。このことを利用して、オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいてそのオイル移行量が異なるオイル塗布面を形成することができる。
前記のように、オイル塗布面の少なくとも2つの部分A、Bからの被塗布物へのオイル移行量を、オイルの粘度により調節する場合、その2つの部分A、B間のオイル粘度差は、通常、50〜30000cs、好ましくは100〜10000csである。
【0022】
(2)オイルゲル化剤/オイル比Rによる方法
同じオイルを用いても、オイルゲル化剤/オイル比が異なると、オイル塗布面からの被塗布物へのオイル移行量が異なる。このことを利用して、オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいてそのオイル移行量が異なるオイル塗布面を形成することができる。
前記のように、オイル塗布面の少なくとも2つの部分A、Bからの被塗布物へのオイル移行量を、オイルゲル化剤/オイル比Rにより調節する場合、その2つの部分A、B間のオイルゲル化剤/オイル比の差は、通常、0.05〜0.99、好ましくは0.1〜0.9である。
【0023】
(3)オイルゲル化剤の種類による方法
同じオイルゲル化剤/オイル比であっても、そのオイルゲル化剤が異なると、ゲル化剤の架橋密度が異なり、ゲル化の状態が変わるため、オイル塗布面からの被塗布物へのオイル移行量が異なる。このことを利用して、オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいてそのオイル移行量が異なるオイル塗布面を形成することができる。
【0024】
本発明においては、前記のようにして、そのオイル塗布面の幅方向におけるオイル移行量が複数部分において連続的又は不連続的に変化するオイル塗布面を得ることができるが、そのオイル塗布面からのその幅方向に沿ってどの程度のオイル移行量を設定するかは、その被塗布物表面の性状等に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
また、本発明のオイル塗布部材は、前記のように、その少なくとも2つの部分A、Bからのオイル移行量が異なっているが、そのA、B間のオイル移行量の差は、特に制約されない。
【0026】
次に、本発明のオイル塗布部材の構造について詳述する。
【0027】
本発明のオイル塗布部材は、ロール状、断面円弧状(好ましくは半円弧状)の柱体、ブロック、シート、ベルト等の各種の形状であることができる。
【0028】
本発明のオイル塗布部材の好ましい形態の1つは、多層構造のものである。例えば、オイル保持部の上に、オイル透過制御層を積層した構造を有するものである。この場合、オイル保持部は、オイルを吸収保持し得る多孔質物質からなる。オイル透過制御層は、固化オイルを保持し得る多孔質物質(ゴム、プラスチック、セラミックス、布帛等)からなる。
【0029】
オイル保持部に用いられる多孔質物質としては、連通性の物であれば適用可能であるが、トナー画像密着装置に用いる場合は、100〜250℃程度の耐熱性が必要となる。このような多孔質物質の好ましい例としては、シリコーン樹脂発泡体や繊維体(不織布、織布等)の他、メラミン樹脂等の高分子発泡体等が挙げられる。
【0030】
ロール形状のオイル保持部の場合、その直径は、所望に応じて適宜決定するが、通常は、10〜40mm程度である。
【0031】
シート形状(帯状)の保持部の場合、その厚さは、所望に応じて適宜決定するが、通常は、2〜20mm程度である。
【0032】
オイル透過制御層に用いられる多孔質物質は、ゴム、プラスチック、セラミックス、布帛からなるが、連続多孔性の物であれば何でも適用可能である。このような多孔質物質の好ましい例は、多孔質フッ素樹脂シートである。この場合、この多孔質フッ素樹脂シートには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質シートや、PFA多孔質シート等が包含される。本発明では、特に、延伸多孔質PTFEシートが好ましい。
【0033】
オイル透過制御層において、その平均細孔径は0.05〜15μm、好ましくは0.1〜2μmである。その空孔率は20〜98%、好ましくは50〜90%である。その厚みは、3〜1000μm、好ましくは5〜300μmである。
【0034】
本発明による前記積層構造のオイル塗布部材の場合、そのオイル保持部及びオイル透過制御層には固化オイルを存在させるが、そのオイル透過制御層に存在させる固化オイルは自己保持性を有するか又は有しないものであることができる。一般的には、オイル透過制御層に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合(オイルゲル化剤/オイル比)R1は、オイル保持部に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合R2よりも大きく設定される。同じオイル及び同じオイルゲル化剤を用いる場合、そのR1/R2比は、1.10〜4.00、好ましくは1.20〜3.00である。また、R1は0.23〜1.00、好ましくは0.40〜1.00の範囲に設定するのがよい。また、R2は0.23〜0.95、好ましくは0.30〜0.80の範囲に設定するのがよい。
【0035】
オイル透過制御層やオイル保持部を形成する多孔質物質中に固化オイルを含有させるには、その多孔質物質中にオイルとオイルゲル化剤との混合物を含浸させ、加熱して該オイルゲル化剤を3次元架橋化させてオイルをゲル化させればよい。この場合の加熱温度は、そのオイルゲル化剤の種類により異なるが、一般的には、室温〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0036】
前記オイル塗布部材は、そのオイル透過制御層がオイル塗布面を形成し、そのオイル塗布面(オイル透過制御層)に存在する固化オイルの性状によって、そのオイル塗布面から被塗布物へのオイル移行量を調節することができる。一方、そのオイル保持部は、オイル塗布面(オイル透過制御層)へのオイルを補給する役割を果たし、オイル透過制御層中のオイルが消費された場合、オイル保持部からオイル透過制御層へオイルが補給される。
【0037】
本発明による自己保形性の固化オイルからなるオイル塗布部材の場合、その固化オイルはロール状や円筒状、断面円弧状、好ましくは半円孤状の柱体状、ブロス状、シート状、角柱状、ベルト状等であることができる。
【0038】
このオイル塗布部材において、その固化オイルの外表面がオイル塗布面を形成する。この固化オイルにおいて、そのゲル化剤/オイル比Rは、通常、0.05〜1.00、好ましくは0.10〜1.00である。
【0039】
本発明で用いる自己保形性の固化オイルは、前記したように、その内部に離型性オイルを含有するにもかかわらず、全体としては寒天状固形物である。このものは、これを中空に置いても、その内部オイルが滴下するようなことはないが、紙等のオイル濃度がその固形物中のオイル濃度よりも低い物体へは拡散移動することができる。即ち、この固化オイルを定着ロール等の固体表面に接触させると、その固化オイル中のオイルは定着ロール表面に移行し、定着ロールにオイルを塗布することができる。
【0040】
本発明による自己保形性の固形物(固化オイル)からなるオイル塗布部材において、その固化オイル硬度はアスカーC硬度計(高分子計器(株)社製)によれば、2度から98度、好ましくは10度から80度である。
【0041】
前記固化オイルは、その内部にオイルを含有し、このオイルは、その固化オイルに他の固体が接触したときに、その固化オイル表面からその固体表面へ移行し、その固体表面にオイルが塗布される。本発明で用いる固化オイルの場合、オイルの含有量は、固化オイル中、通常、5〜100%、好ましくは10〜100%の範囲である。
【0042】
本発明による前記固化オイルからなるオイル塗布部材は、その表面の少なくとも一部を多孔質フッ素樹脂シートで被覆した構造のものとすることができる。このようなオイル塗布部材は、その多孔質フッ素樹脂シートに他の固体が接触すると、固化オイル中のオイルはそのシートの多孔空間内に入り、シート表面に滲出し、その固体表面へ移行し、その固体表面にはオイルが塗布される。
【0043】
前記多孔質フッ素樹脂シートとしては、従来公知の各種のものが使用されるが、好ましくは、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート等が用いられる。本発明では、特に、延伸多孔質PTFEシートの使用が好ましい。この多孔質フッ素樹脂シートにおいて、その厚さは、通常、0.003〜1mm、好ましくは0.005〜0.3mmである。その平均細孔径は、0.05〜15μm、好ましくは0.1〜2μmである。その空孔率は、20〜98%、好ましくは50〜90%である。
【0044】
この多孔質フッ素樹脂シートで表面を被覆した自己保形性の固化オイルからなるオイル塗布部材において、その多孔質フッ素樹脂シートは、固化オイルの全表面を被覆することができる他、その塗布面のみを被覆することができる。このオイル塗布部材は、その表面に多孔質フッ素樹脂シートが形成されていることから、オイル塗布部材の外部からの紙粉やトナーカス等の汚染物の付着を抑制させることができ、長期にわたって安定したオイル塗布を達成することができる。
【0045】
本発明によるオイルAをオイルゲル化剤Aによりゲル化して形成した自己保形性の固化オイルAからなり、該固化オイルAの少なくとも一部を多孔質フッ素樹脂シートで被覆した構造のオイル塗布部材において、その多孔質フッ素樹脂シートの多孔空間内は、オイルBとオイルゲル化剤Bとの混合物を充填し、その多孔空間内でオイルBをゲル化させて固化オイルBとすることができる。この場合、オイルBは、前記した固化オイルAを得るために用いたオイルAと同じもの又は異なるものであることができる。また、オイルゲル化剤Bも、前記固化オイルを得るために用いたオイルゲル化剤Aと同じもの又は異なったものであることができる。但し、オイルゲル化剤Bの使用割合は、前記オイル固形化物Aを得るために用いたオイルゲル化剤Aの使用割合よりも多くして、剛性及び表面硬度が高められたゲル化オイル(固化オイル)Bとするのがよい。これにより、オイルのシート中の拡散移動速度を低下させることができ、オイル塗布量を制御することが容易になる。オイルBに対するオイルゲル化剤Bの重量比Xと、オイルAに対するオイルゲル化剤Aの重量比Yとの比X/Yは、少なくとも1、好ましくは1〜30、より好ましくは1.5〜20の範囲になるように選定するのがよい。
【0046】
このオイル塗布部材は、その表面にゲル化オイルを含有する多孔質フッ素樹脂シートが形成されていることから、紙粉やトナーカス等の汚染物の付着を抑制することができる他、オイル塗布量の調節が容易である等の利点を有する。
【0047】
本発明のオイル塗布部材は、複写機等の画像形成装置に用いられている画像定着装置におけるオイル塗布部材として用いることができる。本発明のオイル塗布部材を用いるときには、定着ロールや定着ベルトの表面の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なった量のオイルを塗布することができる。
【実施例】
【0048】
次に本発明を実施例によりさらに詳述する。
【0049】
実施例1
(1)オイル塗布部材(図1)の作製
[1] 図1に示すように、外径が30mm、内径が8mm、長さが440mmであり、密度が330kg/m3である公知の方法で製造された連続気泡性シリコーンゴム発泡体1に、直径8mm、長さ445mmのステンレス製金属軸2を、付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1820、信越化学工業社製)を用いて挿入接着したものを用意し、膜厚30μmで空隙率80%、平均孔径0.5μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜3の裏面に付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1800、信越化学工業社製)を0.5mmφで点4状にグラビアコートしたものを、前記ロール状シリコーンゴム発泡体1の外周に、のり巻き状に1回巻き付けた後、加熱促進硬化させ積層ロール5を得た。
【0050】
[2] 上記とは別に、オイルとして、粘度1000csのジメチルシリコーンオイル(KF96−1000cs、信越化学工業社製)とオイルゲル化剤(3次元架橋剤)として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106[信越化学工業(株)製])を用意し、オイル:ゲル化剤を7:3の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図1中のaで示した領域(ロール端部より300mm域)に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Aを形成した。
【0051】
[3] さらに[2]同様のオイルとして、粘度1000csのジメチルシリコーンオイル(KF96−1000cs、信越化学工業社製)とオイルゲル化剤として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106、信越化学工業社製)を用意し、オイル:ゲル化剤を2:8の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図1中のbで示した領域(領域a域の外郭域)に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Bを形成した。
【0052】
[4] 更に、別に上記と同じシリコーンオイルと付加反応型RTVシリコーンゴムを9:1の重量比で配合して混合したものを準備し、これを上記積層ロールのシリコーンゴム発泡体1部分の横方向から注入した後、遠心力を作用させて分布せしめ、次いで100℃、30分間回転させながら加熱せしめ、固化シリコーンオイルを含むオイル保持部6を形成した。
【0053】
[5] 前記のようにして、オイル塗布面3の幅方向に、オイル被塗布物側への移行速度(移行量)の異なるオイル透過制御層A、Bを有するロール状オイル塗布部材7を得た。
【0054】
(2)オイル塗布部材の性能
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、毎分80枚/分(A4判印刷モード)の複写機(Vivace800、富士ゼロックス社製)の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0055】
[2] 該マシンにて、A4サイズ紙を上述オイル透過制御層領域Aに合致するようにA4縦送りにて、60秒毎に、20枚の印刷指示を送るプログラムにて、50,000枚までの印刷テストを行った(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)。
【0056】
[3] オイル塗布量として、10,000枚印字毎にオイル塗布部材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0057】
[4] また、10,000枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も併せて観察した。
【0058】
[5] また更に、A3サイズ紙を用いて、上述オイル透過制御域Bも含む、A3縦送りにて1枚印刷テストを行い、そのテスト使用紙上へのオイル転写状態を観察した(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)。
【0059】
[6] 上記の結果を表1に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。また、10,000枚通紙後の領域bおよびA3通紙テスト使用紙上に特に目立ったオイル汚染は見られなかった。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1
(1)オイル塗布部材(図2)の作製
[1] 図2に示すように、外径が30mm、内径が8mm、長さが440mmであり、密度が330kg/m3である公知の方法で製造された連続気泡性シリコーンゴム発泡体8に、直径8mm、長さ445mmのステンレス製金属軸9を、付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1820、信越化学工業社製)を用いて挿入接着したものを用意し、膜厚30μmで空隙率80%、平均孔径0.5μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜10の裏面に付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1800、信越化学工業社製)を0.5mmφで点11状にグラビアコートしたものを、前記ロール状シリコーンゴム発泡体の外周に、のり巻き状に1回巻き付けた後、加熱促進硬化させ積層ロール12を実施例1と同様に得た。
【0062】
[2] 上記とは別に、オイルとして、粘度1000csのジメチルシリコーンオイル(KF96−1000cs、信越化学工業社製)とオイルゲル化剤として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106、信越化学工業社製)を用意し、オイル:ゲル化剤を3:7の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図2中のcで示した領域に均等に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロールにオイル透過制御層Cを形成した。
【0063】
[3] 更に、別に上記と同じシリコーンオイルと付加反応型RTVシリコーンゴムを9:1の重量比で配合して混合したものを準備し、これを上記積層ロールのシリコーンゴム発泡体部分の横方向から注入した後、遠心力を作用させて分布せしめ、次いで100℃、30分間回転させながら加熱せしめ、固化オイルを含むオイル保持部13を形成した。
【0064】
[4] 前記のようにして、オイル透過制御層Cを有するオイル塗布部材14を得た。
【0065】
(2)オイル塗布部材の性能評価
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、実施例1同様に毎分80枚/分(A4判印刷モード)の複写機(Vivace800、富士ゼロックス社製)の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0066】
[2] 該マシンにて、A4サイズ紙をA4縦送りにて、60秒毎に、20枚の印刷指示を送るプログラムにて、50,000枚までの印刷テストを実施例1と同様に行った。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0067】
[3] オイル塗布量として、10,000枚印字毎にオイル塗布材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0068】
[4] また、10,000枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も施例1と同様に併せて観察した。
【0069】
[5] また更に、A3サイズ紙を用いて、A3縦送りにて1枚印刷テストを行い、そのテスト使用紙上へのオイル転写状態を実施例1と同様に観察した。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0070】
[6] 上記の結果を表2に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。
【0071】
しかしながら、10,000枚通紙後のA4紙非通紙部(実施例1のところの領域b)の定着ロール上にオイル滴およびA3通紙テスト使用紙上の先端部にオイル筋と思われるオイル汚染が見られた。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例2
(1)オイル塗布部材(図3)の作製
[1] 図3に示す外径6mm、長さ315mmのステンレス製金属軸15を中心に配置された、内径22mm、外径28mm、長さ350mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製円筒を用意し、片端閉塞した方を下にして該円筒を垂直に立てた。
【0074】
[2] ジメチルシリコーンオイル(KF96−10000CS、信越化学工業社製)とオイルゲル化剤としてシリコーンゴム(KE−1800、信越化学工業社製)を用いて、オイルとゲル化剤の重量比6:4で配合したもの20ccを上記[1]で設置した円筒に流し込んだ。その後、100℃/30minにて寒天状固化オイルとした。その後フッ素樹脂円筒から該固化オイルを取り去り、オイル塗布体幅が閉塞端側より45mmの地点で垂直に切断し、図3に示すような外径22mm、長さ45mmの寒天状の固化オイルDを得た。この固化オイルDを更に上述のPTFE製円筒に戻し、片端閉塞した方を下にして該円筒を垂直に立てた。
【0075】
[3] [2]と粘度の異なるジメチルシリコーンオイル(KF96−1000CS、信越化学工業社製)とゲル化剤としてシリコーンゴム(KE−1800、信越化学工業社製)を用いて、オイルとゲル化剤の重量比6:4で配合したもの85ccを上記[2]で設置した円筒に更に流し込んだ。その後、100℃/30minにて寒天状固化オイルとした。その後フッ素樹脂円筒から該固化オイルを取り去り、閉塞端側より45mm地点から幅210mmに至る地点で垂直に切断し、図3に示すような外径22mm長さ210mmの寒天状の固化オイルEを更に得た。この固化オイルEを更に上述のPTFE製円筒に戻し、片端閉塞した方を下にして該円筒を垂直に立てた。
【0076】
[4] [2]と同様のジメチルシリコーンオイル(KF96−10000CS、信越化学工業社製)とゲル化剤としてシリコーンゴム(KE−1800、信越化学工業社製)を用いて、オイルとゲル化剤の重量比6:4で配合したもの20ccを上記[3]で設置した円筒に更に流し込んだ。その後、100℃/30minにて寒天状固化オイルとした。その後フッ素樹脂円筒から該固化オイルを取り去り、閉塞端側より255mm地点から幅45mmに至る地点で垂直に切断し、図3に示すような外径22mm、長さ45mmの寒天状の固化オイルD’を更に得た。
【0077】
[5] 前記のようにして、オイル被塗布面の幅方向において移行速度の異なるロール状オイル塗布部材16を得た。
【0078】
(2)オイル塗布部材の性能評価
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、毎分20枚/分(A4判印刷モード)の複写機の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0079】
[2] 該マシンにて、A4サイズ紙を上述使用オイルが1000csを用いた固化オイルの中央領域に合致するようにA4横送りにて60秒毎に、5枚の印刷指示を送るプログラムにて、10,000枚までの印刷テストを行った。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0080】
[3] オイル塗布量として、2,500枚印字毎にオイル塗布部材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0081】
[4] また、2,500枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も併せて観察した。
【0082】
[5] また更に、上述使用オイルが1000csの外郭領域も含む、A4縦送りにて1枚印刷テストを行い、そのテスト使用紙上へのオイル転写状態を観察した。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0083】
[6] 上記の結果を表3に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。また、2,500枚通紙後の外郭領域およびA4縦送り通紙テスト使用紙上に特に目立ったオイル汚染は見られなかった。
【0084】
【表3】

【0085】
比較例2
(1)オイル塗布部材(図4)の作製
[1] 実施例2と同様に、図4に示す外径6mm、長さ315mmのステンレス製金属軸17を中心に配置された、内径22mm、外径28mm、長さ350mmのPTFE製円筒を用意し、片端閉塞した方を下にして該円筒を垂直に立てた。
【0086】
[2] ジメチルシリコーンオイル(KF96−1000CS、信越化学工業社製)とゲル化剤としてシリコーンゴム(KE−1800、信越化学工業社製)を用いて、オイルとゲル化剤の重量比6:4で配合したもの110ccを上記[1]で設置した円筒に流し込んだ。その後、100℃/30minにて寒天状固化オイルとした。 その後フッ素樹脂円筒から該固化オイルを取り去り、オイル塗布体幅が閉塞端側より300mm地点で垂直に切断し、図4に示すような外径22mm、長さ300mmの寒天状の固化オイルFを得た。
【0087】
[3] 前記のようにして、被塗布物への幅方向にわたってオイル移行速度の等しいロール状オイル塗布部材18を得た。
【0088】
(2)塗布部材の評価
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、実施例2と同様に毎分20枚/分(A4判印刷モード)の複写機の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0089】
[2] 該マシンにて、A4サイズ紙を実施例2と同様の評価の如くA4横送りにて60秒毎に、5枚の印刷指示を送るプログラムにて、10,000枚までの印刷テストを行った。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0090】
[3] オイル塗布量として、2,500枚印字毎にオイル塗布材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0091】
[4] また、2,500枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も併せて観察した。
【0092】
[5] また更に、オイル塗布材の外郭領域も含む、A4縦送りにて1枚印刷テストを行い、そのテスト使用紙上へのオイル転写状態を観察した。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0093】
[6] 上記の結果を表4に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。しかしながら、2,500枚通紙後の外郭領域の定着ロール上にオイル滴およびA3通紙テスト使用紙上の先端部にオイル筋と思われるオイル汚染が見られた。
【0094】
【表4】

【0095】
実施例3
(1)オイル塗布部材(図5)の作製
[1] 図5に示すように、外径が22mm、内径が6mm、長さが300mmであり、密度が330kg/m3である公知の方法で製造された連続気泡性シリコーンゴム発泡体19に、直径6mm、長さ330mmのステンレス製金属軸20を、付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1820、信越化学工業社製)を用いて挿入接着したものを用意し、膜厚30μmで空隙率80%、平均孔径0.5μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜21の裏面に付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1800、信越化学工業社製)を0.5mmφで点22状にグラビアコートしたものを、前記ロール状シリコーンゴム発泡体の外周に、のり巻き状に1回巻き付けた後、加熱、硬化させ積層ロール23を得た。
【0096】
[2] 上記とは別に、オイルとして、粘度100csのジメチルシリコーンオイル(KF96−100cs、信越化学工業社製)とゲル化剤として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106、信越化学工業社製)を用意し、オイル:ゲル化剤を2:8の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図5中のgで示した領域(被塗布部材に接触している分離爪及び熱感知センサーに相当する領域)に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Gを形成した。
【0097】
[3] さらに[2]同様のオイルとして、粘度100csのジメチルシリコーンオイル(KF96−100cs、信越化学工業社製)とゲル化剤として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106、信越化学工業社製)を用意し、オイル:ゲル化剤を7:3の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図2中のhで示した領域(領域g以外の領域)に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Hを形成した。
【0098】
[4] 更に、別に上記と同じシリコーンオイルと付加反応型RTVシリコーンゴムを9:1の重量比で配合して混合したものを準備し、これを上記積層ロールのシリコーンゴム発泡体部分の横方向から注入した後、遠心力を作用させて分布せしめ、次いで100℃、30分間回転させながら加熱せしめ、固化オイルを含むオイル保持部24を形成した。
【0099】
[5] 前記のように、オイル被塗布材への幅方向にわたってオイル移行速度の異なるオイル透過制御層を有するロール状オイル塗布部材25を得た。
【0100】
(2)オイル塗布部材の性能評価
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、毎分20枚/分(A4判印刷モード)の複写機の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0101】
[2] 該マシンにて、領域gが当接する定着ロールに接触している分離爪及び熱感知センサーに合致するようにA4横送りにて60秒毎に、5枚の印刷指示を送るプログラムにて、10,000枚までの印刷テストを行った(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)。
【0102】
[3] オイル塗布量として、2,500枚印字毎にオイル塗布材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0103】
[4] また、2,500枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も併せて観察した。
【0104】
[5] 上記結果を表5に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。また、当接する定着ロールに接触している分離爪及び熱感知センサー付近の摩耗は特に見られなかった。
【0105】
【表5】

【0106】
比較例3
(1)オイル塗布部材(図6)の作製
[1] 図6に示すように、外径が22mm、内径が6mm、長さが300mmであり、密度が330kg/m3である公知の方法で製造された連続気泡性シリコーンゴム発泡体26に、直径6mm、長さ330mmのステンレス製金属軸27を、付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1820、信越化学工業社製)を用いて挿入接着したものを用意し、膜厚30μmで空隙率80%、平均孔径0.5μmの延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜28の裏面に付加反応型RTVシリコーンゴム接着剤(KE−1800、信越化学工業社製)を0.5mmφで点29状にグラビアコートしたものを、前記ロール状シリコーンゴム発泡体の外周に、のり巻き状に1回巻き付けた後、加熱、硬化させ積層ロール30を実施例3と同様に得た。
【0107】
[2] 上記とは別に、オイルとして、粘度100csのジメチルシリコーンオイル(KF96−100cs、信越化学工業社製)とゲル化剤として付加反応型RTVシリコーンゴム(KE−106、信越化学工業社製)を用意し、オイル:ゲル化剤を7:3の重量比で混合したものを準備し、これを上記した延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン焼成膜の図6中のiで示した領域に塗布含浸させてからその過剰分をかき落とした後、100℃30分間加熱せしめ、前記ロール中央部に固化オイルを含むオイル透過制御層Iを形成した。
【0108】
[3] 更に、別に上記と同じシリコーンオイルと付加反応型RTVシリコーンゴムを9:1の重量比で配合して混合したものを準備し、これを上記積層ロールのシリコーンゴム発泡体部分の横方向から注入した後、遠心力を作用させて分布せしめ、次いで100℃、30分間回転させながら加熱せしめ、固化オイルを含むオイル保持部31を形成した。
【0109】
[4] 前記のようにして、オイル被塗布部材への幅方向にわたってのオイル移行速度の異なるオイル透過制御層を有するロール状オイル塗布部材32を得た。
【0110】
(2)オイル塗布部材の性能評価
[1] 上記(1)で得たオイル塗布部材を、実施例3と同様に毎分20枚/分(A4判印刷モード)の複写機の定着部の定着ロールに当接セットした。
【0111】
[2] 該マシンにて、領域iが当接する定着ロールに接触している分離爪及び熱感知センサーも含むようにA4横送りにて60秒毎に、5枚の印刷指示を送るプログラムにて、10,000枚までの印刷テストを行った。(印刷画像は、5%文字画像のモノクロチャートを使用)
【0112】
[3] オイル塗布量として、2,500枚印字毎にオイル塗布材の重量減量値を計り、1枚当たりの平均オイル塗布量を算出した。
【0113】
[4] また2,500枚印字毎の重量測定時に、被オイル塗布側である定着ロールの表面も併せて観察した。
【0114】
[5] 上記結果を表6に示す。この結果から、安定した良好なオイル塗布量が得られ、安定したオイル塗布をしていることが確認できた。しかしながら、当接する定着ロールに接触している分離爪及び熱感知センサー付近の摩耗が評価終了時点で見受けられた。
【0115】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明によるオイル塗布部材の1つの実施例についての説明図を示す。
【図2】比較用の1つのオイル塗布部材の説明図を示す。
【図3】本発明によるオイル塗布部材の他の実施例についての説明図を示す。
【図4】比較用の他のオイル塗布部材の説明図を示す。
【図5】本発明によるオイル塗布部材のさらに他の実施例についての説明図を示す。
【図6】比較用のさらに他のオイル塗布部材の説明図を示す。
【符号の説明】
【0117】
2、9、15、17、20、27 金属軸
6、13、24、31 オイル保持部
3、10、21、28 多孔質焼成膜
7、14、16、18、25、32 オイル塗布部材
A、B、C、G、H オイル透過制御層
D、E、D’ 固化オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅の連続したオイル塗布面を有し、該オイル塗布面に接触するオイル被塗布物に該オイル塗布面からオイルを移行させるオイル塗布部材であって、該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイルの移行が、オイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルを介して行われ、かつ該オイル塗布面から該オイル被塗布物へのオイル移行量が該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とするオイル塗布部材。
【請求項2】
該固化オイルが、多孔質性物質の細孔内に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のオイル塗布部材。
【請求項3】
該多孔質物質が、多孔質フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載のオイル塗布部材。
【請求項4】
オイルを保持するオイル保持部上に、オイル塗布面を形成するオイル透過制御層を積層した構造を有し、該オイル保持部及び該オイル透過制御層にはオイルゲル化剤をオイル中で3次元架橋化して形成した固化オイルが保持され、該オイル透過制御層に保持された固化オイルにおけるオイルゲル化剤/オイル比R1は、該オイル保持部の固化オイルにおけるオイルゲル化剤/オイル比R2よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項5】
該オイル透過制御層が、多孔質フッ素樹脂からなること特徴とする請求項4に記載のオイル塗布部材。
【請求項6】
該オイル保持部が、多孔質物質からなることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項7】
該オイル塗布面から該オイル被塗布物へ移行するオイルの粘度が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項8】
該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の割合が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項9】
該オイル塗布面に存在する固化オイル中のオイルゲル化剤の種類が、該オイル塗布面の幅方向の少なくとも2つの部分A、Bにおいて異なっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項10】
該オイルゲル化剤が、シリコーンゴムからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項11】
ロール形状を有する請求項1〜10のいずれかに記載のオイル塗布部材。
【請求項12】
オイル塗布部材と定着ロールを有するトナー画像定着装置において、該オイル塗布部材として請求項1〜11のいずれかに記載のオイル塗布部材を用いることを特徴とするトナー画像定着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−146048(P2008−146048A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299731(P2007−299731)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【分割の表示】特願2002−14721(P2002−14721)の分割
【原出願日】平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】