説明

オキサジアゾリノン化合物の製造方法およびその中間体

【課題】ホスゲンを用いることなくオキサジアゾリノン化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】式(1)


(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)で示される化合物と強塩基とを反応させる工程IIを含むことを特徴とする式(2)


(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)で示されるオキサジアゾリノン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、オキサジアゾリノン化合物の製造方法およびその中間体等に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサジアゾリノン化合物の製造方法としては、2−アリール置換ヒドラジンカルボン酸メチルエステルをホスゲンで処理して、2−(クロロカルボニル)−2−アリール置換ヒドラジンカルボン酸メチルエステルとした後、塩基を作用させて環化させる方法が、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−19302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたオキサジアゾリノン化合物の製造方法は、毒性が強いホスゲンを用いており、工業的な製造するためには安全上の対策を施した設備が必須である。
本発明の目的は、ホスゲンを用いることなくオキサジアゾリノン化合物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。すなわち本発明は、
<1> 式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と強塩基とを反応させる工程IIを含むことを特徴とする式(2)

(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジアゾリノン化合物の製造方法;
【0006】
<2> 式(3)

(式中、Ar’は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と
式(4)式(4)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物を反応させる工程Iを含むことを特徴とする式(1)

(式中、Ar、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物の製造方法;
【0007】
<3> 式(3)

(式中、Ar’は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と
式(4)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物を反応させる工程Iと、
前記工程Iから得られる式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物と強塩基とを反応させる工程IIとを含むことを特徴とする式(2)

(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジアゾリノン化合物の製造方法;
【0008】
<4> 強塩基が、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アミド化合物およびアルカリ金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の強塩基であることを特徴とする<1>又は<3>記載の製造方法;
<5> Arがフェニル基であり、Ar’が炭素数1〜4のアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか記載の製造方法;
<6> Arがフェニル基であり、Ar’が2−メトキシフェニル基であり、Rがメチル基であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか記載の製造方法;
【0009】
<7> 式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物;
<8> Arがフェニル基であり、Ar’が炭素数1〜4のアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする<7>記載の化合物;
<9> Arがフェニル基であり、Ar’が2−メトキシフェニル基であり、Rがメチル基であることを特徴とする<7>記載の化合物;
等である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、ホスゲンを用いることなくオキサジアゾリノン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)と強塩基とを反応させる工程II(以下、工程II)と記すことがある)を含むことを特徴とする式(2)

(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジアゾリノン化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)の製造方法である。
【0012】
化合物(1)は、工程IIによって容易に化合物(2)に変換することができる。ゆえに、化合物(1)は、化合物(2)の製造方法における中間体として有用である。
【0013】
本明細書における置換基を有しない芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有しない上記芳香族炭化水素基の水素原子は、置換基に置換されていてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6程度のシクロアルキル基;フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン原子が置換された炭素数1〜6程度のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等のハロゲン原子が置換された炭素数1〜6程度のアルコキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基等のアルコキシ基が置換された炭素数2〜6程度のアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基が置換された炭素数2〜6程度のアルコキシ基;ニトロ基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ等の炭素数3〜6程度のシクロアルキルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
Arとしては、例えば、フェニル基、例えば、4−クロロフェニル基などのハロゲン原子が置換されたフェニル基、例えば、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基などの炭素数1〜4のアルキル基が置換されたフェニル基、2−メトキシフェニル基などの炭素数1〜4のアルコキシ基が置換されたフェニル基などを挙げることができる。好ましくは、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基が置換されたフェニル基等が挙げられる。
Ar’としては、例えば、フェニル基、例えば、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基などのハロゲン原子が置換されたフェニル基、例えば、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基などの炭素数1〜4のアルキル基が置換されたフェニル基、2−メトキシフェニル基などの炭素数1〜4のアルコキシ基が置換されたフェニル基などを挙げることができる。好ましくは、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基が置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、Rは、炭素数が1〜4のアルキル基を表す。
Rで示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0016】
好ましい化合物(1)としては、例えば、式(1)においてArがフェニル基であり、Ar’が炭素数1〜4のアルコキシ基が置換されたフェニル基である化合物等を挙げることができる。
化合物(1)を具体的に例示すると、1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−クロロフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−(2−フルオロフェノキシカルボニル)−1−(2−メトキシフェニル)−2−メトキシカルボニルヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−メチルフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメチルフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(4−メチルフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(4−クロロフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(4−クロロフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(2−フルオロフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(4−ブロモフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(4−ニトロフェニル)ヒドラジン、1−エトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−フェニルヒドラジン、1−エトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−(フェノキシカルボニル)−1−(2−メトキシフェニル)−2−プロポキシカルボニルヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−フェニルヒドラジン、1−(4−クロロフェノキシカルボニル)−1−フェニル−2−メトキシカルボニルヒドラジン、1−ブトキシカルボニル−2−(2−フルオロフェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−ブトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン等が挙げられる。
好ましくは、例えば、1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン等が挙げられる。
【0017】
化合物(1)の製造方法としては、例えば、式(3)

(式中、Ar’は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)と
式(4)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物(化合物(4)と記すことがある)を反応させる工程I(以下、工程Iと記すことがある)を含む製造方法等を挙げることができる。
【0018】
化合物(3)としては、例えば、1−メトキシカルボニル−2−フェニルヒドラジン、1−エトキシカルボニル−2−フェニルヒドラジン等の1−(C1−C4アルコキシ)カルボニル−2−フェニルヒドラジン;1−メトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−メチルフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−クロロフェニル)ヒドラジン、1−エトキシカルボニル−2−(4−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(2−フルオロフェニル)ヒドラジン、1−メトキシカルボニル−2−(4−ニトロフェニル)ヒドラジン、1−エトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン、1−(2−メトキシフェニル)−2−プロポキシカルボニルヒドラジン、1−ブトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン等の1−(C1−C4アルコキシ)カルボニル−2−[(C1−C4アルコキシ)フェニル]ヒドラジン、1−(C1−C4アルコキシ)カルボニル−2−ハロフェニルヒドラジンが挙げられる。
【0019】
化合物(3)としては、市販品を用いてよいし、特許文献1等に記載の公知の方法、すなわち、フェニルヒドラジンとClCORで示される化合物とを反応させる方法、及び該方法に準ずる方法により製造したものであってもよい。
【0020】
化合物(4)としては、例えば、フェニルクロロホーメート;(4−ニトロフェニル)クロロホーメート等の(ニトロ置換フェニル)クロロホーメート;(4−クロロフェニル)クロロホーメート、(2−フルオロフェニル)クロロホーメート等の(ハロゲン置換フェニル)クロロホーメート;(4−メチルフェニル)クロロホーメート等の(C1−C4アルキル置換フェニル)クロロホーメート;(2−メトキシフェニル)クロロホーメート等の(C1−C4アルコキシ置換フェニル)クロロホーメート;(4−トリフルオロメチルフェニル)クロロホーメート等の(C1−C4ハロアルキル置換フェニル)クロロホーメートが挙げられ、より具体的には、フェニルクロロホーメート等が挙げられる。
上記化合物(4)としては、市販品を用いてもよいし、S−メチル O-フェニルカーボンチオエートを塩化スルフリルで塩素化する方法(Tetrahedron、58、10011(2002))等の方法により製造したものであってもよい。
【0021】
工程Iにおいて、上記化合物(4)の使用量は、1モルの化合物(3)に対して、1モル以上であればよいが、例えば、1〜10モルの範囲等が挙げられ、好ましくは1〜3モルの範囲等が挙げられる。
【0022】
工程Iは、必要に応じて、塩基存在下に行うことが好ましい。該塩基を用いることにより該反応において副生する塩化水素を中和することができる。
かかる塩基としては、有機塩基および無機塩基のいずれも使用することができる。
上記有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン;ピリジン、イミダゾール等の含窒素芳香族化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;が挙げられる。
上記無機塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物;およびこれらの任意の混合物;が挙げられる。好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩である。
上記塩基の使用量は、化合物(4)1モルに対して、1モル以上であればよく、好ましくは、1〜3モルの範囲である。
【0023】
工程Iは、有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;等が挙げられる。
有機溶媒の使用量としては、1重量部の化合物(3)に対して、例えば、0.5重量部〜100重量部の範囲等を挙げることができる。
【0024】
工程Iにおける反応温度としては、例えば、−20〜200℃の範囲等が挙げられ、好ましくは0〜100℃の範囲等が挙げられる。
【0025】
工程Iにおいて、化合物(3)、有機溶媒および必要に応じて塩基を任意の順序で混合し、得られた混合物中に化合物(4)を加えることが好ましい。
【0026】
工程Iは、例えば、常圧条件下で行う。
工程Iにおける反応の進行は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により、確認することができる。
反応終了後の混合物を、例えば、晶析、ろ過、蒸留、抽出等の手段により化合物(1)を取り出すことができる。取り出された化合物(1)は、例えば、精留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段によりさらに精製されてもよい。
【0027】
次に、工程IIについて説明する。
工程IIに用いられる強塩基としては、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミドなどのアルカリ金属アミド化合物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;などが挙げられる。好ましくは、例えばアルカリ金属水素化物およびアルカリ金属水酸化物等が挙げられ、より好ましくは、例えば水素化ナトリウムおよび水酸化カリウム等が挙げられる。
強塩基の使用量としては、1モルの化合物(1)に対して、例えば、0.8モル以上等が挙げられ、好ましくは、例えば0.8〜3モルの範囲等が挙げられる。
【0028】
工程IIを具体的に説明すると、例えば、化合物(1)と有機溶媒とを混合し、得られた混合物中に強塩基を加える工程;強塩基と有機溶媒とを混合し、得られた混合物中に化合物(1)を加える工程;化合物(1)と強塩基とを有機溶媒に同時に加える工程等を挙げることができ、好ましくは、強塩基と有機溶媒とを混合し、得られた混合物中に化合物(1)を加える工程であることが好ましい。
【0029】
工程IIは、有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。該有機溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;等が挙げられる。有機溶媒の使用量としては、1重量部の化合物(1)に対して、例えば、0.5重量部〜100重量部の範囲等を挙げることができる。
【0030】
工程IIにおける反応温度としては、例えば、−20〜100℃の範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、−20〜50℃の範囲等が挙げられる。
【0031】
工程IIは、常圧条件下で行うことが好ましい。
工程IIにおける反応の進行は、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0032】
工程IIの終了後、得られた混合物を、例えば、晶析、ろ過、蒸留、抽出等の手段をさらに行うことにより化合物(2)を取り出すことができる。取り出された化合物(2)は、例えば、精留、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段によりさらに精製されてもよい。
【0033】
かくして得られる化合物(2)としては、例えば、5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−エトキシ−3−フェニル−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−メトキシ−3−(4−メチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−メトキシ−3−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−エトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−メトキシ−3−(2−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−メトキシ−3−(4−ブロモフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン、5−メトキシ−3−(4−ニトロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オンなどが挙げられ、好ましくは、例えば、5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン等である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
(工程I−1:化合物(1)の調製)
窒素置換した100mlフラスコに、1−メトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン2.0g、炭酸カリウム7.0gおよびアセトニトリル50gを仕込み、室温で攪拌下に、フェニルクロロホーメート8.0gを1時間で滴下後、同温度で7時間攪拌した。得られた反応混合物から析出している無機塩をろ過後、アセトニトリルを留去した。残渣に酢酸エチル5gとn−へキサン10gを加えると、結晶が析出した。析出した結晶をろ過、乾燥し、淡黄色結晶3.0gを得た。
H−NMRにより分析したところ、該結晶は1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジンと同定された。収率:93%。
H−NMR(δppm、CDCl、TMS基準):3.74(s,3H)、3.88(s,3H)、6.9−7.42(m,9H)、7.65(bs,1H)
【0035】
(工程II−1:化合物(2)の調製)
窒素置換した50mlフラスコに、工程I−1で調製された1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン92mgおよびアセトニトリル2gを仕込み、0℃に冷却し、攪拌下に、水素化ナトリウム(パラフィンウェット60%品)14mgを加えた後、同温度で1時間攪拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチル10gと水10gを加え、有機層をガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オンの収率は46%であった。
【0036】
<実施例2>
(工程I−2:化合物(1)の調製)
窒素置換した100mlフラスコに、1−メトキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン5.0g、トリエチルアミン3.9gおよびテトラヒドロフラン15gを仕込み、室温で攪拌下に、フェニルクロロホーメート6.0gを1時間で滴下後、同温度で2時間攪拌した。得られた反応混合物にトルエン15gと5%塩酸水15gを加え攪拌後、静置すると2層に分液したので、下層の水層を分離した。同様に5%塩酸水15gで1回、水15gで1回、油層を洗浄後、濃縮し、残渣に酢酸エチル10gとn−へキサン20gを加えると、結晶が析出した。析出した結晶をろ過、乾燥し、淡黄色結晶7.7gを得た。H−NMRにより分析したところ、該結晶は1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジンと同定された。収率:96%。
【0037】
(工程II−2:化合物(2)の調製)
窒素置換した50mlフラスコに、水素化ナトリウム(パラフィンウェット60%品)200mgおよびアセトニトリル5gを仕込み、0℃に冷却した。同温度で攪拌下、この混合液に、工程I−2調製された1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン1gを50mgずつ分割して30分で加えた後、同温度で30分間攪拌した。得られた反応混合物に、トルエン10gと水10gを加え、有機層をガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オンの収率は28%であった。原料の1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジンが72%残存していた。
【0038】
<実施例3>
(工程II−3:化合物(2)の調製)
窒素置換した50mlフラスコに、実施例1の工程I−1で調製された1−メトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジン300mgおよびアセトニトリル10gを仕込み、0℃に冷却し、攪拌下に、水酸化カリウム粉末64mgを加えた後、同温度で1時間攪拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチル10gと水10gを加え、有機層をガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オンの収率は26%であった。
原料の1−メトキシカルボニル−2−(フェノキシカルボニル)−2−(2−メトキシフェニル)ヒドラジンが30%回収された。
【0039】
<実施例4>
(工程I−4:化合物(1)の調製)
窒素置換した100mlフラスコに、1−エトキシカルボニル−2−フェニルヒドラジン500mg、トリエチルアミン420mgおよびテトラヒドロフラン5gを仕込み、室温で攪拌下に、フェニルクロロホーメート650mgを30分間で滴下後、同温度で2時間攪拌した。得られた反応混合物にトルエン10gと5%塩酸水5gを加え攪拌後、静置すると2層に分液したので、下層の水層を分離した。同様に5%塩酸水5gで1回、水5gで1回、油層を洗浄後、濃縮し、残渣に酢酸エチル3gとn−へキサン5gを加えると、結晶が析出した。析出した結晶をろ過、乾燥し、淡黄色結晶410mgを得た。H−NMRにより分析したところ、該結晶は1−エトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−フェニルヒドラジンと同定された。収率:50%。
H−NMR(δppm、CDCl、TMS基準):1.29(t,3H)、4.22(q,2H)、7.0−7.42(m,10H)
【0040】
(工程II−4:化合物(2)の調製)
窒素置換した50mlフラスコに、工程I−4で調製された1−エトキシカルボニル−2−フェノキシカルボニル−2−フェニルヒドラジン100mgおよびアセトニトリル2gを仕込み、0℃に冷却し、攪拌下に、水素化ナトリウム(パラフィンウェット60%品)20mgを加えた後、同温度で1時間攪拌した。得られた反応混合物に、酢酸エチル10gと水10gを加え、有機層をガスクロマトグラフィにて分析し、5−エトキシ−3−フェニル−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オンの生成を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の製造方法によれば、ホスゲンを用いることなくオキサジアゾリノン化合物を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と強塩基とを反応させる工程IIを含むことを特徴とする式(2)

(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジアゾリノン化合物の製造方法。
【請求項2】
式(3)

(式中、Ar’は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と
式(4)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物を反応させる工程Iを含むことを特徴とする式(1)

(式中、Ar、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項3】
式(3)

(式中、Ar’は、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物と
式(4)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される化合物を反応させる工程Iと、
前記工程Iから得られる式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物と強塩基とを反応させる工程IIとを含むことを特徴とする式(2)

(式中、Ar’およびRは前記と同じ意味を表す。)
で示されるオキサジアゾリノン化合物の製造方法。
【請求項4】
強塩基が、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アミド化合物およびアルカリ金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の強塩基であることを特徴とする請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項5】
Arがフェニル基であり、Ar’が炭素数1〜4のアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
Arがフェニル基であり、Ar’が2−メトキシフェニル基であり、Rがメチル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
式(1)

(式中、ArおよびAr’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、Rは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。)
で示される化合物。
【請求項8】
Arがフェニル基であり、Ar’が炭素数1〜4のアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Arがフェニル基であり、Ar’が2−メトキシフェニル基であり、Rがメチル基であることを特徴とする請求項7記載の化合物。

【公開番号】特開2010−120927(P2010−120927A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240164(P2009−240164)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】