説明

オキシカム化合物の使用

本発明は、アルツハイマー病またはアテローム性動脈硬化症の治療または予防用医薬組成物を製造するための、生理的条件下で血液脳関門を貫通することができないシクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX-1およびCOX-2)を阻害し、アミロイド先駆体タンパク質(APP)のプロスタグランジンE誘発性誘発を減少させるロルノキシカムまたはその類縁体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な記載】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病およびアテローム性動脈硬化症の治療用医薬組成物の製造に関する。
アルツハイマー病(AD)の病因は、いまだ明らかにされていない。ADの「アミロイド仮説」によれば、アミロイド先駆体タンパク質(APP)の切断において変化が生じる。いわゆるβ-42ペプチドが沈着することにより脳プラークが形成される。また、結果として生じる低灌流ゆえに、神経変性が起こる。
ADはコリン作動性神経の実質的喪失に関与し、アセチルコリンエステラーゼインヒビターはアセチルコリンレベルを増加させるので、残っている神経が活性を維持する(興奮)ように、現在用いられている治療方法はすべて、コリン作動薬、特に、アセチルコリンエステラーゼのインヒビターの投与を含む。しかし、残念なことに、神経の進行性喪失は、この治療によって止めることはできない。
【0002】
AD療法の関連でその影響が現在議論および試験されているさらなる標的分子は、特にβ-およびγ-セクレターゼインヒビターなどのセクレターゼ調節物質、コレステロール合成のインヒビター、アミロイド凝集のインヒビター、A-βペプチドまたはこのペプチドに対する抗体などの免疫学的方法、APP発現の防止、APPクリアランスの増加、tauタンパク質のリン酸化の調節および血清アミロイドPレベルの低下である(Wolfe, Nat.Rev.Drug Discov.1 (2002) 859-866)。
【0003】
US 2002/0052407 A1, US 6,187,756 B1およびUS 6,184,248 B1には、アルツハイマー病に関連性があることが知られているアミロイド先駆体タンパク質(APP)の異常な発現を阻害するための非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む物質混合物が開示されている。インビトロおよびインビボテストによって、実施例において、本発明物質がAPPの過剰発現を阻害することを明らかにすることができた。3つの文献すべてが、アルツハイマー病の予防または可能な治療のための、シクロオキシゲナーゼ−1を阻害せずにシクロオキシゲナーゼ−2のみを阻害する非ステロイド性抗炎症薬の使用を示唆している。
さらに、これらの文献においては、全くシクロオキシゲナーゼ−2インヒビターのみがクレームされる。オキシカム、特にロルノキシカムまたは類縁体化合物はこれらの文献には開示されていない。
WO 93/24115 A1には、非ステロイド性抗炎症薬の投与による、痴呆、特にアルツハイマー病の治療方法が記載されている。多くの他の物質に加えて、オキシカム、特にピロキシカム、イソキシカムおよびスドキシカムが示唆されているが、ロルノキシカムまたは類縁体化合物は示唆されていない。
【0004】
WO 01/78721 A1には、アミロイド−β−ポリペプチド(Aβ)Aβ42の含量を低下させる物質を投与することによるアルツハイマー病の予防および/または治療方法が記載されている。Aβ42の発現率が高いことがアルツハイマー病の発症の原因であるから、このポリペプチドを減少させることによって疾患の経過に良い影響を及ぼすことができる。さらに、この文献には、2つのAβ−ポリペプチド、Aβ40およびAβ42の発現率における種々のNSAIDの影響を明らかにする試験が記載されている。この試験から、オキシカム、特に、メロキシカム、ペロキシカム、イソキシカムおよびテノキシカム(ロルノキシカムおよびその類縁体化合物はここに言及されていない)が、Aβ42の発現に影響を及ぼさず、それぞれ、その発現を増加させさえするという結果になる。したがって、この文献から、当業者は、オキシカムがAβ42を減少させるために用いられる利点をもたないことが証明されたということを導くことができた。
【0005】
US 2002/0119193 A1から、とりわけ選択的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターを含み、種々の疾患、なかでもアルツハイマー病の治療に用いられる医薬組成物が明らかである。これらの文献によれば、発明的シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターは、従来の非ステロイド性抗炎症性活性物質を超える利点を有する。したがって、この文献もまた、シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2の両方を阻害するオキシカムの使用から離れることを教示している。
しかし、これまでに記載された概念のうち、実際にアルツハイマー病(AD)の効率的な治療、とりわけ予防において飛躍的な全身を可能にしたものはない。したがって、ADに対する薬物療法および予防策が依然として緊急に必要とされている。
したがって、本発明は、アルツハイマー病またはアテローム性動脈硬化症の治療または予防用医薬組成物の製造のためのロルノキシカムまたはロルノキシカム類縁体の使用に関する。
ごく最近、末梢血小板が、脳プラークに貯蔵されるβ-42ペプチドの一次源であることが明らかにされている。この発見によれば、ADは、血管疾患として定義されるべきである。この新規な病因学的解釈は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が、ADの症状を軽減することを示す臨床的研究の結果によって支持される。これらの研究は、言い換えると、ADが脳の炎症性疾患であるという仮説に基づいたものであり、炎症症状の種々の原因が言及されている。したがって、1日当たり100〜150 mgのインドメタシンを投与することにより、認知力の劣化を6ヶ月にわたって約9%引き下げることができた。同様に、プロスタグランジンE2誘発性APP発現を減少させると同時に、APPの切断に変化を引き起こすという点において、NSAIDが、APPタンパク質の発現およびプロセシングに影響を及ぼすことが知られている。
【0006】
イブプロフェンおよびインドメタシンを用いる研究では、アミロイドβ-42ペプチドの部分が減少され、非アミロイド形成的可溶性APPの部分が増加されることが実証された。血小板がアミロイドプラーク中のタンパク質の一次源であるという事実から、アテローム性動脈硬化性疾患への関連という結果も生じる。
NSAIDが引き起こす血小板におけるAPP発現の減少、血漿A-βの減少および非アミロイド形成的可溶性APPの増加による血小板APPの切断における変化、脳血管におけるアミロイドプラークの減少および脳血管低循環の減少もまた、治療効果の基本的メカニズムである。
したがって、本発明は、散発性ADの根底にある原因が血管障害であり、β-42の脳血管貯蔵の一次源が末梢血小板であるという発想に基づく。
【0007】
本発明の使用により、血小板におけるAPPの発現が選択的に防止され、血小板APPの切断に影響が及ぶ(ここで、血漿A-β濃度は減少し、非アミロイド形成的可溶性APPは増加する)。脳血管におけるプラーク形成が減少したために、脳血管低循環が起こらず、それによって神経変性が減少する。
本発明の使用のための本質的必須条件の1つは、発明的物質、すなわち、ロルノキシカムまたはロルノキシカム類縁体が、エイコサノイド代謝の中心アイソザイム、すなわちCOX-1およびCOX-2の両方を阻害することである。特に、アイソザイムCOX-2が炎症プロセスに関連するという事実が、COX-2選択的脳で有効な薬の使用を示唆する有力な意見を支持している。しかし、上記新規な発見によれば、COX-1のみを発現している末梢血小板がプラークタンパク質の一次源であるので、本発明によれば、両方の阻害活性が効率的治療および予防薬において提供されなければならない。
【0008】
脳COX-2は、血小板の末梢的発現を目的として構成的にも発現されるので、構成的に発現された酵素の阻害は一般に生理的プロセスの阻害を引き起こし、そのことによって、薬物副作用を引き起こす可能性があるため、活性物質の脳有効性は、望ましくない点としてのみならず、むしろ不利点として考慮されなければならない。したがって、血液脳関門を通過しないという本発明に用いる作用剤の特性は、本発明の重要な特徴である。
本発明の範囲におけるロルノキシカムまたはロルノキシカム類縁体の有効性は、従来技術、特にWO 01/78721 A1において提供された発見を考慮すると、ここに記載されたオキシカム、特にメロキシカム、ペロキシカム、イソキシカムおよびテロキシカムは、Aβ42の発現に影響を及ぼすことができなかったか、またはそれらを増加すらさせたかのいずれかであるので、驚くべきことでもあった。
【0009】
しかし、本発明によれば、ロルノキシカムおよびその類縁体は、ADおよびアテローム性動脈硬化症の治療、とりわけ予防または遅延化において非常に有利であることがわかっている。本発明の範囲における「ロルノキシカム類縁体」とは、−ロルノキシカム構造から誘導された−Aβ-42に関して、ロルノキシカムと同様の末梢血小板における基本的効果またはそれらに匹敵する効果をもつすべての物質であると理解されるべきであり、その意味するところは、
シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX-1およびCOX-2)を阻害すること;
生理的条件下で血液脳関門を通過できないこと;および
アミロイド先駆体タンパク質(APP)のプロスタグランジンE2誘発性誘発を減少させること;である。
【0010】
このようなロルノキシカム類縁体の例は、6-クロロ-4-ヒドロキシ-2-メチル-N-(2-ピリジル)-2H-チエノ(2,3-e)-1,2-チアジン-3-カルボン酸アミド-1,1-ジオキシドのエノールエーテル(EP 0 313 935 A1に記載、特に、EP 0 313 935 B1にクレーム)、4-ヒドロキシ-2-メチル-3-(2-ピリジルカルバモイル)-6-トリフルオロメチル-2H-チエノ[2,3-e]-1,2-チオジン-1,1-ジオキシド(EP 0 103 142 A1に記載、特に、EP 0 103 142 B1にクレーム);一般式I:
【化1】

[ここで、Aは、チアジン環の2つの炭素原子と一緒になって、基:
【化2】

を形成し、破線は、最初および最後の例に存在する二重結合を示す、R1は、低級アルキルを表す、R2は、2-チアゾリル、4-メチル-2-チアゾリル、4,5-ジメチル-2-チアゾリル、5-メチル-1,3,4-チアジアゾリル、2-ピラジニル、2-ピリミジニル、1,2,4-トリアジン-3-イル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、3-メチル-2-ピリジル、4-メチル-2-ピリジル、5-メチル-2-ピリジル、6-メチル-2-ピリジル、4,6-ジメチル-2-ピリジル、5-イソキサゾリル、5-メチル-3-イソキサゾリル、3,4-ジメチル-5-イソキサゾリル、2,6-ジメチル-4-ピリミジニル、1,2,3,4-テトラゾール-5-イルまたはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、トリフルオロメチルまたは低級アルコキシで必要に応じて置換されたフェニル残基を表す、およびR3は、ハロゲンならびにその塩を表す;ここで、用語「低級アルキル」は、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt-ブチルなどの1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基を意味する;用語「低級アルコキシ」は、4個までの炭素原子を有する炭化水素基を意味する;および用語「ハロゲン」は、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素の4つのハロゲンを意味する;特に好ましいR3は、塩素または臭素であり、塩素が特に好ましい;好ましいR1は、メチル基である;好ましいR2は、2-チアゾリル、5-イソキサゾリルまたは2-ピリジルである;好ましいAは、基:
【化3】

である]
で示される、EP 0 001 113 A1 (B1)に記載のチエノチアジン誘導体;さらに好ましいのは、一般式(II):
【化4】

で示される[3aα, 8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ[3',2':4,5]-シクロペンタ[1,2-c]ピリジン誘導体または一般式(III):
【化5】

で示される[3aα, 8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン誘導体
[ここで、Zは、単結合またはCH2を表す;R1は、水素または過フッ化されてもよい直鎖もしくは分枝鎖の必要に応じて不飽和の低級アルキル残基であり;R2およびR3は独立して、水素、過フッ化されてもよい直鎖または分枝鎖の必要に応じて不飽和の低級アルキル残基、低級アルコキシ、低級アルキルチオまたはハロゲンである]
ならびにその光学的に純粋な鏡像異性体および医薬的に有用な塩である。
【0011】
化合物:
【化6】

[ここで、R2およびR3は、前記と同意義である]
を一般式(II)または(III)の化合物(ここで、Z=単結合およびR1=水素)に還元的に変換し、必要に応じてエナンチオマー的に純粋な1-フェニルエチル-イソシアネートと反応させて一般式(Va)または(Vb):
【化7】

で示される化合物にし、このようにして得られたジアステレオマー混合物から結晶化によって溶解度が小さいジアステレオマーを回収し、このようにして得られたジアステレオマー的に純粋な一般式(Va)または(Vb)の化合物を適当な条件下で切断して、エナンチオマー的に純粋な一般式(II)または(III)の化合物(ここで、Z=単結合およびR1=水素)にし、必要に応じてアルキル化条件下で反応させて一般式(II)または(III)の化合物(ここで、Z=CH2)にし、必要に応じて一般式(II)または(III)の化合物ならびにそのラセミ混合物を医薬的に用いうる塩に変換することによって、一般式(II)および(III)の化合物を製造することができる。ここで、用語「低級アルキル」は、メチル、エチル、n-およびi-プロピル、n-、i-およびt-ブチルなどの1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル残基を意味する;用語「低級アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n-およびi-プロポキシ、n-、i-およびt-ブトキシなどの1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルコキシ残基を意味する;用語「低級アルキルチオ」は、メチルチオ、エチルチオ、n-およびi-プロピルチオ、n-、i-およびt-ブチルチオなどの1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルチオ残基を意味する;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0012】
本発明の反応は、一般式(IVa)または(IVb)の化合物をたとえば、酢酸エチルエステル、ジオキサン、エタノールまたはメタノールなどの極性溶媒に溶解し、たとえば、W2-ラニー・ニッケルまたはラニー・コバルトなどの1〜5当量の適当な触媒を混合し、次いで、40〜70℃にて科学量論的水素取り込みに至るまで加熱することによって最良に行われる。エナンチオマーの分離のために、たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはアセトンなどの不活性溶媒中、このようにして得られた一般式(II)または(III)のラセミ化合物(ここで、Z=単結合およびR1=水素)を1当量の(+)または(-) 1-フェニルエチルイソシアネートと反応させて、一般式(Va)または(Vb)の化合物を得ることができ、このようにして得られたジアステレオマー混合物から、結晶化によって、溶解度が小さいジアステレオマーを回収することができる。このようにして得られたジアステレオマー的に純粋な一般式(IVa)または(IVb)の化合物を、たとえば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、グリコールまたはその水性混合物などの高沸点アルコールに溶解し、5〜20当量のプロパノール酸-、ブタノール酸-、ペンタノール酸-ナトリウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基とともに1〜24時間沸騰させる。このようにして得られたエナンチオマー的に純粋な一般式(II)または(III)の化合物(ここで、Z=単結合およびR1=水素)ならびにそのラセミ体を、必要に応じてアルキル化のために、たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒に溶解し、1〜20当量の式:R1-CHO (VI)の化合物(ここで、R1は前記と同意義)および1.5〜4当量のたとえば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤と混合し、次いで、−20℃〜100℃にて約1〜24時間反応させる。この反応において得られた一般式(II)または(III)の化合物は塩基性化合物であり、無機または有機酸を用いる慣例の方法においてその医薬的に適合する塩に変換することができる。塩の形成は、たとえば、たとえば、水、低級脂肪族アルコール、THF、ジオキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、DMFまたはDMSOなどの適当な溶媒に式(II)または(III)の化合物を溶解し、十分に攪拌しながら当量の所望の酸と混合し、塩形成完了時に溶媒を減圧除去することによって達成することができる。必要に応じて、単離後に塩を再結晶することができる。
【0013】
さらに、本発明ロルノキシカムおよびロルノキシカム類縁体の好ましい例は、AT 400 567 BおよびAT 400 437 Bの内容、特に、AT 400 567 Bの請求項2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12およびAT 400 437 Bの請求項2、3または4である。さらなる好ましい本発明のロルノキシカム類縁体が、EP 0 657 459 A1、特に、その請求項2、3および4に開示されている。
医薬的に使用可能な塩は、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸などの無機強酸の塩、ならびにたとえば、フマル酸、クエン酸、セバシン酸などの有機酸の塩である。
【0014】
好ましくは、物質の投与が重篤な望ましくない事態を引き起こすべきではなく、すなわち、副作用があってはならない。このことによって、ADまたはアテローム性動脈硬化症を予防するためのこの物質の予防的摂取が、患者を望ましくない副作用に直面させることがないことが可能になる。予防的処置は、遺伝学的に引き起こされた状況(このような疾患の家族性集積)または他のパラメーターによりADまたはアテローム性動脈硬化症の高リスクをもつ個人に、最初に適用される。本発明による副作用からの開放を定義するために、関連する医薬テキストブックおよび標準的文献において提供される定義を援用することもできる。たとえば、処置の観察中に見出される副作用は、1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下であるべきである。必要に応じて、本発明物質をさらなる薬物、特に、たとえば、胃粘膜起動特性(たとえば、制酸薬、H2受容体アンタゴニスト、プロトンポンプインヒビターなど)などの可能性のある悪影響に対抗する薬物と合わせることができる。これは、長期適用の場合、最初に考慮されなければならない。
【0015】
ロルノキシカムに加えて、本発明において用いるのに特に好ましい物質は、第1に、
6-クロロ-4-(1-(エトキシカルバモイルオキシ)-エトキシ)-2-メチル-N-(2-ピリジル)-2H-チエノ-(2,3-e)-1,2-チアジン-3-カルボン酸アミド-1,1-ジオキシド;
6-クロロ-4-ヒドロキシ-2-メチル-3-(2-ピリジル-カルバモイル)-2H-チエノ[3,2-e]1,2-チアジン-1,1-ジオキシド;
(+)-[3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ[2',3':3,4]シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[3',2':4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[3aR-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[3',2':4,5]-シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[3aα,8bα]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[3',2':4,5]-シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aα,8bα]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[3',2':4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
である。
【0016】
ロルノキシカムおよびロルノキシカム類縁体の適用の本発明による際立った利点は、この活性物質の薬力学的および薬物動態学的特性の特に有利な組み合わせに起因する。
本発明によれば、本発明をもたらすロルノキシカムまたはロルノキシカム類縁体の薬力学的特殊性は、以下の通りである。
ロルノキシカムの特別の発明適合性を引き起こす1つの特に重要な特性は、この物質がエイコサノイド代謝の中心的アイソザイム、すなわち、COX-1およびCOX-2の両方を阻害するという事実に存在する。COX-1のみを発現している末梢血小板が、プラークタンパク質の一次源であるという、今後は創立された事実が、COX-1を有意に阻害するロルノキシカムおよびその類縁体それぞれの発明的適用の優秀さの理由である。
さらに、ロルノキシカムは、特に高い固有活性をもつ活性物質である。ADおよびアテローム性動脈硬化症それぞれの予防のための療法は、長期間にわたって持続しなければならないので、身体に適用する活性物質の量が少ないということが、さらなる利点を構成する。
【0017】
さらに、ロルノキシカムは、血液脳関門を通過する能力がない(Prussら, 3.Interscience World Conference on Inflammation, Monte Carlo (1989), Abstract 41)。
ロルノキシカムを用いるADの予防療法が長期型であるゆえに、ロルノキシカムの血漿半減期が短いことは、このことによって血液中の蓄積が生じないので特別な利点である。同様に、活性物質の胃腸およびその他における寛容性が良好であることは周知であるが、非常に重要なものである。したがって、百万もの処方箋の中で、重篤な望ましくない事態が報告されているのは10例以下であり、使用法の観察中に見出された副作用は、0.05%をはるかに下回っている(これまでのところ、すべての副作用は再び治療することができた)。
ADおよびアテローム性動脈硬化症の治療のために特に好ましい一群における活性物質ロルノキシカムの薬力学的および薬物動態学的特性のこのような組み合わせは、他の今までに公知の物質のいずれにおいても同等の程度では見出されていない。
後記実施例ならびに図面を用いて本発明をより詳しく説明するが、それらによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
実施例1:インビトロおよびインビボでのAPPプロセシングにおけるロルノキシカムの効果
1.1.:インビトロでのAPP切断における特異的影響の特徴決定
1.1.1.:神経細胞系(SH-SY5Y)でのAPPプロセシングにおけるロルノキシカムの影響
アミロイドβ-42ペプチドの放出(NSAIDにより減少)
非アミロイドsAPPαタンパク質の放出(NSAIDにより増加)
APPホロタンパク質の発現(NSAIDにより減少)
【0019】
1.2.:神経細胞におけるロルノキシカムの効果のための末梢モデルとしてのヒト血小板の特徴決定
アルツハイマー病を患っている患者の末梢血小板において、非アミロイドsAPPαタンパク質が低い量で生産されることも実証されている(Colciaghi ら, Mol. Med. 8 (2002), 67-74)。NSAIDによって、非アミロイドsAPPαタンパク質の発現を、神経細胞において増加することができる(Avramovichら, J. Biol. Chem. 277 (2002), 31466-73)。これらの2つの研究の結果から、ロルノキシカムの特異的活性を末梢部で観察するのに非アミロイドsAPPαタンパク質が非常に適しているということが予想される。
1.2.1.:インビトロでのヒト血小板でのAPPプロセシングにおけるロルノキシカムの影響
*活性化血小板の非アミロイドsAPPαタンパク質の放出
1.2.2.:インビボでのアルツハイマー病患者のヒト血小板のAPP発現におけるロルノキシカムの影響
*APPホロタンパク質の発現
(このパラメーターは、前頭皮質におけるAPPホロタンパク質の発現量が増加し(Goldeら, Nueron 4 (1990), 253-267)、NSAIDがその発現を低下させることができるので、ロルノキシカムがAPPプロセシングにおいて特異的影響をもたない場合に意味がある。進行中の研究において、アルツハイマー病患者の血小板においてAPPホロタンパク質の発現が増加することも実証されている。)
*ロルノキシカムの処置の前および後における、アルツハイマー病患者の血小板のAPP比
*活性化血小板の非アミロイドsAPPαタンパク質の放出
これらの研究は、神経細胞におけるロルノキシカムの仮定効果についての末梢血血小板でのインビボモニタリングを目的とする。
【0020】
2.2.:ロルノキシカムのインビボ投与後のヒト血小板のタンパク質プロファイリング(プロテオミクス)
ロルノキシカム療法の前後におけるアルツハイマー病患者と健康な個人との血小板プロテオームの比較
これらの研究は、ヒト血小板におけるロルノキシカムの効果のインビボタンパク質プロファイリングを目的とした。
【0021】
2.3.:インビトロでのヒト血小板のファルマコプロテオミクスにおけるロルノキシカムの影響:ロルノキシカムとのインビトロインキュベーション後のヒト血小板のタンパク質プロファイリング(プロテオミクス)
ロルノキシカム処置血小板と非処置コントロール血小板との血小板プロテオームの比較
この実施例は、シクロオキシゲナーゼインヒビターであるロルノキシカムによって直接影響を受ける血小板タンパク質の特徴決定を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アラキドン酸経路とCOX-1およびCOX-2との相関関係を示す。
【図2】アラキドン酸経路とCOX-1およびCOX-2との相関関係を示す。
【図3】アラキドン酸経路とCOX-1およびCOX-2との相関関係を示す。
【図4】幾つかの物質のCOX阻害効果を示す。
【図5】健康な若いボランティアにおける経口単回投与後のロルノキシカムの薬物動態を示す。
【図6】ロルノキシカムによる凝固中の全血からのCOX-1誘導TXB2の阻害を示す。
【図7】ロルノキシカムによるHEL細胞(COX-1)およびLPS刺激MonoMac6細胞(COX-2)におけるエイコサノイド形成の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルツハイマー病(AD)またはアテローム性動脈硬化症の治療または予防用医薬組成物を製造するための、
シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX-1およびCOX-2)を阻害し;
生理的条件下で血液脳関門を通過できず;および
アミロイド先駆体タンパク質(APP)のプロスタグランジンE2誘発性誘発を減少させる;ロルノキシカムおよびロルノキシカム類縁体の使用。
【請求項2】
物質の投与が、重篤な望ましくない事態を引き起こさないことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ロルノキシカム類縁体が、以下のグループから選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の使用:
6-クロロ-4-(1-(エトキシカルバモイルオキシ)-エトキシ)-2-メチル-N-(2-ピリジル)-2H-チエノ-(2,3-e)-1,2-チアジン-3-カルボン酸アミド-1,1-ジオキシド;
6-クロロ-4-ヒドロキシ-2-メチル-3-(2-ピリジル-カルバモイル)-2H-チエノ[3,2-e]1,2-チアジン-1,1-ジオキシド;
(+)-[3aα,8bα]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ[2',3':3,4]シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[3',2':4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[3aR-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[3',2':4,5]-シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[3aα,8bα]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(-)-[(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[3',2':4,5]-シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;
(+)-[3aα,8bα]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[2',3':3,4]-シクロペンタ[1,2-b]ピリジン-ジヒドロキシクロリド;および(+)-[3aS-(3aα,8bα)]-1,2,3,3a,4,8b-ヘキサヒドロ-1-メチル-ピロロ-[3',2':4,5]シクロペンタ[1,2-c]ピリジン-ジヒドロキシクロリド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−528206(P2006−528206A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529424(P2006−529424)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000185
【国際公開番号】WO2004/105766
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505438904)
【氏名又は名称原語表記】Eva BINDER
【Fターム(参考)】