説明

オキシナイトライドガラス繊維およびその製造方法

【課題】新規なオキシナイトライドガラス繊維およびオキシナイトライドガラス繊維の新規な製造方法の提供。
【解決手段】下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、Siを添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量はガラス原料組成物の重量の98%〜100%であり、SiOおよびSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオキシナイトライドガラス繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂用の代表的な強化繊維として、ガラス繊維や炭素繊維が知られている。
ガラス繊維は炭素繊維に比べ、価格などは優れているが、強度、弾性率が劣り比重が大きいため、軽量構造部材としての要求特性を満たさないことがある。
そのため、弾性率を飛躍的に向上する強化繊維として、オキシナイトライドガラスからなる強化繊維(オキシナイトライドガラス繊維)がある。
【0003】
オキシナイトライドガラス繊維は、たとえば、窒素雰囲気下でガラス原料を溶融することにより、ガラスを構成する酸化物の酸素の一部を窒素に置換して、その後紡糸することにより製造されるガラス繊維である(溶融法:特許文献1〜3)。
【0004】
オキシナイトライドガラス繊維のガラス原料の溶融は、1770℃以上といった高温下において行われるところ(たとえば特許文献1および2)、かかる溶融温度を高くすることによって紡糸作業の速度が向上し、結果として当該ガラス繊維の生産効率を高めることができる。また、溶融温度を高くすることによって紡糸作業温度範囲(1000Ps温度−液相温度)をより広く保てることとなるため、紡糸作業が行いやすくなる。したがって、紡糸の効率のみを考慮した場合には、溶融温度を高く設定することは有利である。
【0005】
一方、かかる高温下における溶融には欠点も伴う。すなわち、高温にすることによって紡糸前のガラス原料を溶融貯蔵する溶融槽の耐久年数が短縮されてしまうのである。このことは溶融槽のより頻繁な交換を強いることとなるばかりでなく、オキシナイトライドガラス繊維の製造コストを増大させる原因にもなる。また、溶融を高温下において行うことにより、溶融槽炉材が混入し、最終生産物であるオキシナイトライドガラス繊維の均質性も阻害される。
したがって、従来の方法より低い温度において溶融を可能とすることは、オキシナイトライドガラス繊維の製造効率の向上、コストの低減および品質の向上に資するものである。
【0006】
ところで、ガラス原料に含まれるいくつかの成分について、溶融温度に及ぼす影響の傾向は知られている。たとえば、Mg、Ca、Yの量を多くすると、溶融温度は低下する傾向にある。しかしながら、たとえばこれら各成分の量を多くしても、所望の溶融温度が得られない場合があるばかりでなく、オキシナイトライドガラス繊維の物性が悪化する場合もある。このような理由により、かかる観点からの困難性により、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法の改変の検討はほとんどなされていないのが現状である。
【0007】
また、他方において、オキシナイトライドガラス繊維は、上記のとおり、金属酸化物からなる通常のガラス繊維より弾性率が高いが、炭素繊維の弾性率には及ばない。そのため、より優れた弾性率を具備するオキシナイトライドガラス繊維を製造することは、より機能性に優れたオキシナイトライドガラス繊維の提供およびより広範な用途の開拓に資するものである。しかしながら、かかる観点からの製造方法の改変も、これまで検討はなされていない。
【0008】
たとえば、特許文献1には高破壊靱性(耐衝撃性)、高強度を有し、しかも透明性の高い複合ガラス材料としての種々の組成からなる、窒素分を含有する繊維強化ガラスおよびその製造方法について記載されている。しかしながら、具体的なオキシナイトライドガラス繊維およびその製造方法の例は2例が開示されるに留まり、しかもガラス原料の溶融は、一方の例においては1780℃にて12時間といった、高温下における長時間にて行われている。また、他方の例においては、溶融温度は1650℃であるが、得られたオキシナイトライドガラス繊維の弾性率は105GPaといった低いものに留まっている。
【0009】
特許文献2には、耐薬品性ガラスおよびその製造方法について記載されている。しかしながら、オキシナイトライドガラス繊維の具体的な製造例について、同文献には、1770℃または1790℃といった高温下における溶融を行うことが開示されているにすぎない。
【0010】
さらに特許文献3には、高い硬度と大きな弾性を指向し、窒素濃度を高めたオキシナイトライドガラスおよびその製造方法について記載されているが、オキシナイトライドガラスの形態として製造方法も含めて具体的に記載されているのは薄片状のもののみであり、繊維のものやその製造方法については具体的に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3158504号公報
【特許文献2】特開昭63−297238号公報
【特許文献3】特公平05−31511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、溶融紡糸法によるオキシナイトライドガラス繊維の新規な製造方法を確立することにある。具体的には、(1)従来の溶融紡糸法による製造方法より低い温度においてオキシナイトライドガラス繊維を製造するための原料の溶融が可能であるオキシナイトライドガラス繊維の製造方法、および/または、(2)より優れた弾性率を具備するオキシナイトライドガラス繊維の製造を可能ならしめる、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題に鑑み鋭意研究を重ねたところ、本発明の発明者らは、驚くべきことに、オキシナイトライドガラス繊維に通常含まれる成分の含有量をこれまでの範囲とは異なる特定の範囲に規定することによって、溶融温度を従来の方法において用いられていた温度より顕著に低下せしめることが可能であることを見出すとともに、上記のようなオキシナイトライドガラス繊維の弾性率を阻害する一因が当該ガラス中に微量に存在し得る炭素分であることを究明し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法に関する:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、金属窒化物であるSi:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、前記金属窒化物(Si)を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量はガラス原料組成物の重量の98%〜100%であり、SiOおよびSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【0014】
また、本発明は、金属窒化物(Si)を添加した前記ガラス原料組成物が実質的に上記各成分のみからなる、前記製造方法に関する。
さらに、本発明は、金属窒化物(Si)を添加した前記ガラス原料組成物中における炭素分の重量割合が1.5%以下である、前記製造方法に関する。
また、本発明は、溶融の温度が1750℃以下である、前記製造方法に関する。
またさらに、本発明は、ガラス原料組成物を調製する工程が、金属酸化物および/または金属水酸化物からなる混合物を1000〜1400℃でか焼してガラス原料組成物を得る工程を含む、前記製造方法に関する。
さらにまた、本発明は、CaOおよびYの総量が35〜55部である、前記製造方法に関する。
また、本発明は、Yの量が5〜12部である、前記製造方法に関する。
【0015】
本発明は、下記各金属をそれぞれについて下記に規定された量で含む、オキシナイトライドガラス繊維に関する:
Si:24〜34%
Al:7〜11%
Mg:4〜19%
Ca:29〜53%
Y:0〜15%
(ただし、上記%はいずれもオキシナイトライドガラス繊維中の金属分の全重量に対する各金属原子の重量を示す。また、オキシナイトライドガラス繊維の全重量に対する炭素分の重量および窒素分の重量は、それぞれ0〜1%および3〜12%である。)。
また、本発明は、YおよびCaの総重量が、ガラス中の金属分の全重量に対して35〜60%である、前記オキシナイトライドガラス繊維に関する。
さらに、本発明は、Yの重量が、金属分の全重量に対して5〜12%である、前記オキシナイトライドガラス繊維に関する。
【0016】
さらに本発明は、上記オキシナイトライドガラス繊維の製造方法であって、下記の工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法に関する:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si、Al、Mg、CaおよびYからの少なくとも1種の金属の窒化物からなる金属窒化物:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiOおよびケイ素の窒化物であるSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)
さらに本発明は、下記の工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法に関する:
下記組成を含むガラス原料を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
Si:5〜30部;および
窒素雰囲気下において、前記ガラス原料を1750℃以下の温度において溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量は、ガラス原料の重量からSiの重量を除いた重量の98%〜100%であり、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【0017】
なお、オキシナイトライドガラス繊維の弾性率が阻害される原因はこれまで知られていなかったところ、本発明者らは、ガラス原料中の炭素分がその一因であることを明らかにし、本発明は、炭素分の重量割合が好ましくは1.5%以下であり、特定の組成を有するガラス原料を窒素雰囲気下において溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法を得供するものである。なお、炭素分によってオキシナイトライドガラス繊維の弾性率が阻害されるメカニズム・原因は、下記(1)および(2)のとおりであると推測される。
【0018】
(1)オキシナイトライドガラス中に微量でも炭素が存在すると、以下の反応から窒素を脱離させるため、弾性率向上の阻害となる。
SiO+C→Si+CO
Si+CO→3SiO+6CO+2N
(2)ガラス中でカーバイド結合を作っていない遊離炭素粒子はSiOと、β−SiC結晶を生成させるため、弾性率の低下を引き起こす。
【0019】
したがって、ガラス原料に含まれる炭素分の量を極力減らし、炭素分の影響を排除することによって、オキシナイトライドガラス繊維の弾性率を向上せしめることができると考えられる。本発明者らは、かかる新たな知見により、オキシナイトライドガラス繊維において高い弾性率を達成することに成功したのである。
【0020】
また、ガラスの製造に用いられることが可能であるCa塩であるCaOやCa(OH)は、粉末状で取り扱いづらいうえに安全性の懸念があることから、オキシナイトライドガラス繊維の製造に直接用いられず、従来の製造方法において用いられていたCa塩はCaCOであった。これに対し、Ca塩としてCaCOではなくCaOやCa(OH)を用いれば、炭素分の量が減らされることによって、本発明のオキシナイトライドガラス繊維には高い弾性率がより容易に付与される。
【0021】
一方、本発明の製造方法においては、Ca塩としてCaOやCa(OH)を用いることは、より低い溶融温度およびより高い弾性率を達成するためには好ましいが、従来から用いられているCaCOを用いても、所定の組成を含むガラス原料組成物を調製すれば、十分に低い溶融温度および高い弾性率を達成することができるのである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法によれば、ガラス原料組成物にCaO等の酸化物成分が適量含有されるため、溶融温度が低く、紡糸作業温度範囲を広くすることができる。
また、本発明の製造方法によれば、ガラス原料の成分として従来頻用されている炭酸塩を使わなくてもよいため、得られるオキシナイトライドガラス繊維は実質的に炭素を含まないものとすることができる。そのため、原料に炭酸塩を使用したオキシナイトライドガラス繊維よりも高い弾性率を達成することができる。
【0023】
本発明の前記製造方法のうち、Siを添加したガラス原料組成物が実質的に上記各成分のみからなるものによれば、同原料組成物中の炭素分の量をより小さくすることができる。
本発明の前記製造方法のうち、Siを添加したガラス原料組成物中における炭素分の重量割合が1.5%以下であるものによれば、同原料組成物中の炭素分の量をより一層小さくすることができる。
本発明の前記製造方法のうち、窒素雰囲気下での溶融の温度が1750℃以下であるものによれば、溶融をより低温で行うことができる。
本発明の前記製造方法のうち、ガラス原料組成物を調製する工程が、金属酸化物および/または金属水酸化物からなる混合物を1000〜1400℃でか焼してガラス原料組成物を得る工程を含むものによれば、溶融・紡糸を行いやすくすることができる。
本発明の前記製造方法のうち、CaOおよびYの総量が35〜55部であるものによれば、より高い弾性率およびより低い溶融温度を達成できる。
本発明の前記製造方法のうち、Yの量が5〜12部であるものによれば、溶融温度を低下せしめる効果が高く、弾性率を向上せしめることができる。
【0024】
本発明の上記オキシナイトライドガラス繊維は、各種の金属や窒素分の重量(含有量)を適当量有し、炭素分の重量(含有量)が従来のものより少ないため、弾性率が顕著に優れる。
本発明の前記オキシナイトライドガラス繊維のうち、YおよびCaの総重量が、ガラス中の金属分の全重量に対して35〜60%であるものによれば、弾性率をより高くすることができる。
本発明の前記オキシナイトライドガラス繊維のうち、Yの重量が、金属分の全重量に対して5〜12%であるものによれば、低い溶融温度で製造することができる。
また、下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法によれば、溶融性に優れた、上記のようなオキシナイトライドガラス繊維を得ることができる。
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si、Al、Mg、CaおよびYからの少なくとも1種の金属の窒化物からなる金属窒化物:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程。
(ただし、SiOおよびケイ素の窒化物であるSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)
【0025】
さらに、下記の工程を含む、本発明のオキシナイトライドガラス繊維の製造方法によれば、溶融を1750℃以下の温度において行うことができる:
下記組成を含むガラス原料を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
Si:5〜30部;および
窒素雰囲気下において、前記ガラス原料を1750℃以下の温度において溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量は、ガラス原料の重量からSiの重量を除いた重量の98%〜100%であり、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(定義)
本願において、「実質的に・・・のみからなる」とは、他の成分を意図的に含有させることをせず、対象となっている成分を当該組成物全体の98.0%以上の割合で含むことを意味する。
また、本願において「ガラス原料組成物」とは、他に記載がない限り、本願発明において用いられるガラスの原料の主要成分であるSiO、Al、MgO、CaO、Y、および、場合によってはその他の金属塩、ならびに不可避的に含有される他の諸成分(炭素分等)からなる、ガラス前駆体である組成物を意味する。
また、本願において「ガラス原料」とは、他に記載がない限り、窒素雰囲気下で溶融する溶融工程に付される直前のガラスの原料を意味する。
【0027】
A.本発明は、下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法に関する:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、Siを添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量はガラス原料組成物の重量の98%〜100%であり、SiOおよびSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【0028】
すなわち本発明による製造方法は、
(a)上記特定の成分・量からなる組成のガラス原料組成物を調製する工程
(b)ガラス原料組成物に上記一定量の金属窒化物を添加する工程
(c)窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
からなる。
これらの工程(a)〜(c)につき、以下に詳述する。
【0029】
(1)(a)上記特定の成分・量からなる組成のガラス原料組成物を調製する工程
同工程は、上記のとおり規定された金属酸化物を含む特定の組成物(ガラス原料組成物)を調製する工程である。
同工程において配合される成分の種類は限定されないが、製品の物性の面から、各金属の酸化物および/または水酸化物が好ましい。
【0030】
また、同工程において用いられる調製の方法は限定されず、たとえば完全に酸化した場合に上記組成になるようにガラス原料組成物の各原料成分を配合し、適宜調製した後、完全に酸化を行うことが例示される。かかる酸化の例としては、か焼が例示される。
【0031】
本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料組成物を調製する工程が、実質的に金属酸化物および/または金属水酸化物からなるガラス原料組成物を1000〜1400℃でか焼して予備的な溶融を行い、ガラス原料組成物を得る工程を含むものは好ましい。当業者に知られていることであるが、かかるか焼工程により、金属水酸化物は完全に酸化され金属酸化物となり、さらに、ガラス原料組成物の少なくとも一部がガラス化した組成物を用いることができるようになるため、後述する溶融・紡糸が行いやすくなるのである。また、ガラス原料組成物として炭素分が低く、高純度かつより均一な成分組成からなる金属酸化物組成物を得ることができるといった利点もある。
【0032】
なお、本発明の製造方法においては、金属炭酸塩を用いなくてもよいため、通常より短いか焼時間でも適切なか焼の効果が得られる。とくに、ガラス原料組成物中における炭素分の重量割合が1.5%以下であるものはとくに好ましい。
【0033】
本発明の上記製造方法のうち、溶融が窒素雰囲気下において1750℃以下で行われるものは、溶融をより低温で行うことができるため好ましい。
【0034】
ガラス原料組成物の組成は上記のとおりに規定されるが、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量はガラス原料組成物の重量の98%〜100%であるため、他の成分を2部以内の量で任意に含むことができる。他の成分としては、以下のものが例示される:
・BaO、Sb、SrO、NaO、KO、La、CeO、ZrO、TiO、B、Cr、PbO、V、SnO等の金属酸化物、
・熱分解等により上記各金属酸化物(SiO、Al、MgO、CaOおよびYを含む)となる炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、シュウ酸塩等。
【0035】
本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料組成物が実質的に上記各成分のみからなるものは、同原料組成物中の炭素分の量がより小さくなるため好ましい。
【0036】
Yは、とくに溶融温度を低下せしめる効果が高く、弾性率を向上せしめる作用も有している。したがって、本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料組成物がYを含むものは好ましく、Yの量が5〜12部であるものはより好ましく、7〜11部であるものは、さらに好ましい。
【0037】
本発明の上記製造方法において、Y以外の上記各酸化物成分の好ましい量は以下のとおりである:
SiO:好ましくは10〜20部であり、より好ましくは12〜18部である。
Al:好ましくは8〜13部であり、より好ましくは9〜12部である。
MgO:好ましくは4〜20部であり、より好ましくは4.5〜19部である。
CaO:好ましくは25〜48部であり、より好ましくは26〜45部である。
【0038】
また、CaOおよびYの総量が33〜55部である本発明の上記製造方法も、より高い弾性率およびより低い溶融温度を達成できるため好ましい。より好ましいCaOおよびYの総量は34〜53部であり、より好ましくは35〜50部である。
【0039】
(2)(b)ガラス原料組成物に上記一定量の金属窒化物を添加する工程
同工程は、オキシナイトライドガラス繊維の必須成分である金属窒化物として、Siを添加し、ガラス原料を得る工程である。かかる金属窒化物を添加することにより、弾性率が向上するといった効果が奏される。
同添加工程は、任意の方法で行うことができる。たとえば、ガラス原料組成物にSiをそのまま添加・配合すればよい。ここで、添加・配合に先立ちガラス原料組成物を粉砕する工程を含めたり、添加・配合後に粉砕する工程を含む製造方法は、ガラス原料がより均一になり、後述する溶融・紡糸が行いやすくなるため好ましい。
なお、本発明において用いられる金属窒化物は、とくに限定されず、Si、AlN、Mg、Ca、YN等を用いることができる。これらの金属窒化物のうち、Siが好ましい。Siを用いる場合、SiOおよびSiの総量は上記のとおり30〜40部である。より好ましいSiOおよびSiの総量は32〜39部であり、より好ましくは33〜38部である。
【0040】
(3)(c)窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
同工程は、オキシナイトライドガラス繊維を調製する最終工程である。
同工程は従来の方法で行うことが可能であるところ、本発明による上記製造方法においては、溶融を1750℃以下といった、従来の製造方法において用いられる温度より低い温度、かつより短い時間にて行うことができる。すなわち、同工程を行う温度は、好ましくは1690℃〜1750℃であり、より好ましくは1700℃〜1740℃である。
【0041】
溶融の時間は限定されず、たとえば4時間〜11時間であり、好ましくは5時間〜9時間であり、より好ましくは6時間〜8時間である。
【0042】
溶融の方法は限定されず、たとえば窒素雰囲気下において、高温窒素置換型の炉で加熱溶融することにより行うことができる。
紡糸工程は脱酸素雰囲気下にて行われる。脱酸素雰囲気の条件は限定されないが、窒素雰囲気下が好ましい。
【0043】
上記以外の工程・操作については、本技術分野における通常の方法をそれぞれ用いることができる。
【0044】
B.本発明はまた、下記各金属をそれぞれについて下記に規定された量で含む、オキシナイトライドガラス繊維に関する:
下記各金属をそれぞれについて下記に規定された量で含む、オキシナイトライドガラス繊維:
Si:24〜34%
Al:7〜11%
Mg:4〜19%
Ca:29〜53%
Y:0〜15%
(ただし、上記%はいずれもオキシナイトライドガラス繊維中の金属分の全重量に対する各金属原子の重量を示す。また、オキシナイトライドガラス繊維の全重量に対する炭素分の重量および窒素分の重量は、それぞれ0〜1%および3〜12%である。)。
【0045】
本発明によるオキシナイトライドガラス繊維は、炭素分の重量(含有量)が従来のものより少ないため、弾性率が顕著に優れるといった効果を奏する。
【0046】
本発明によるオキシナイトライドガラス繊維において、好ましい炭素分の重量は0〜1%であり、より好ましくは0〜0.8%である。
また、本発明によるオキシナイトライドガラス繊維において、好ましい窒素分の重量は5〜12%であり、より好ましくは8〜11%である。
【0047】
本発明のオキシナイトライドガラス繊維において、好ましい上記各成分の量は以下のとおりである:
Si:好ましくは27〜33%であり、より好ましくは29〜32%である。
Al:好ましくは8〜10%であり、より好ましくは8.5〜9.5%である。
Mg:好ましくは4〜10%であり、より好ましくは6〜8%である。
Ca:好ましくは5〜12%であり、より好ましくは7〜10%である。
【0048】
本発明のオキシナイトライドガラス繊維のうち、YおよびCaの総重量が、ガラス中の金属分の全重量に対して35〜60%であるものは弾性率をより高くすることができるため好ましく、同総重量が40〜55%であるものはより好ましい。
【0049】
本発明のオキシナイトライドガラス繊維のうち、Yの重量が、金属分の全重量に対して5〜12%であるものは低い溶融温度で製造することができるため好ましく、同重量が7〜10%であるものはより好ましい。
【0050】
本発明のオキシナイトライドガラス繊維のうち、弾性率が、120.0GPa以上であるものは好ましく、123.0GPa以上であるものはより好ましく、125.0GPa以上であるものはさらにより好ましい。
このような、比較的ガラスの溶融性に優れ、優れた物性を備えたオキシナイトライドガラス繊維は、たとえば下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法により好適に得ることができる:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、金属窒化物であるSiを必須とし、場合によってはAl、Mg、CaおよびYからの少なくとも1種の金属の窒化物からなる金属窒化物も更に含有し、これらの金属窒化物の合計:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiOおよびケイ素の窒化物であるSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)
なお、作業性の観点から、金属窒化物としては、Siのみであることが好ましい。SiOおよびSiの総量は上記のとおり30〜40部である。より好ましいSiOおよびSiの総量は32〜39部であり、より好ましくは33〜38部である。
【0051】
C.本発明はまた、下記の工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維を製造する方法に関する:
下記組成を含むガラス原料を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
金属の窒化物としてSi:5〜30部;および
窒素雰囲気下において、前記ガラス原料を1750℃以下の温度において溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
(ただし、ガラス原料中のSiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量は、ガラス原料の重量から前記金属の窒化物(Si)の重量を除いた重量の98%〜100%であり、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【0052】
かかる製造方法によれば、ガラス原料中の炭素分の量が従来の方法より小さいため、1750℃以下といったより低い温度において溶融を行い、オキシナイトライドガラス繊維を得ることができる。
同製造方法においては、上記において規定される金属の窒化物の添加は、必ずしも他の成分を混合した後に加える必要はない。たとえば、金属の窒化物に、上記各金属酸化物を個別に順次加えてもよいし、上記各金属酸化物の部分的な混合物を逐次加えてもよい。
上記ガラス原料を調製する工程は、上記のとおり規定された金属酸化物を含む特定の組成物を調製する工程である。かかる工程において採用される方法は限定されず、たとえば完全に酸化した場合に上記組成になるようにガラス原料を調製して配合した後、酸化を行うことが例示される。したがって、配合される成分は限定されないが、製造される物性の面から、各金属の酸化物および/または水酸化物が好ましい。
【0053】
本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料として炭素分が低く、高純度かつより均一な成分組成からなる金属酸化物組成物を得ることができるといった利点もある。ガラス原料中における炭素分の重量割合が1.5%以下であるものはとくに好ましい。
【0054】
本発明の上記製造方法のうち、溶融が1690℃〜1750℃で行われるものは好ましく、1700℃〜1740℃で溶融が行われるものはより好ましい。
本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料が実質的に上記各成分のみからなるものは好ましい。
【0055】
Yは、とくに溶融温度を低下せしめる効果が高く、弾性率を向上せしめる作用も有している。したがって、本発明の上記製造方法のうち、ガラス原料がYを含むものは好ましく、Yの量が5〜12部であるものはより好ましく、7〜10部であるものは、さらに好ましい。
【0056】
本発明の上記製造方法において、Y以外の上記各酸化物成分の好ましい量は以下のとおりである:
SiO:好ましくは10〜20部であり、より好ましくは13〜18部である。
Al:好ましくは8〜13部であり、より好ましくは9〜12部である。
MgO:好ましくは4〜20部であり、より好ましくは4.5〜19部である。
CaO:好ましくは25〜48部であり、より好ましくは26〜45部である。
【0057】
また、CaOおよびYの総量が33〜55部である本発明の上記製造方法も、より高い弾性率およびより低い溶融温度を達成できるため好ましい。より好ましいCaOおよびYの総量は34〜53部であり、より好ましくは35〜50部である。
【0058】
窒素雰囲気下において、前記窒化物を添加した前記ガラス原料を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程は、オキシナイトライドガラス繊維を調製する最終工程である。
同工程は従来の方法で行うことが可能であるところ、本発明による上記製造方法においては、溶融を1750℃以下といった、従来の製造方法より低い温度、かつより短い時間にて行うことができる。同工程を行う温度は、好ましくは1690℃〜1750℃であり、より好ましくは1700℃〜1740℃である。
【0059】
溶融の時間は限定されず、たとえば4時間〜11時間であり、好ましくは5時間〜9時間であり、より好ましくは6時間〜8時間である。
【0060】
溶融の方法は限定されず、たとえば窒素雰囲気下において、高温窒素置換型の炉で加熱溶融することにより行うことができる。
紡糸工程は脱酸素雰囲気下にて行われる。脱酸素雰囲気の条件は限定されないが、窒素雰囲気下が好ましい。
【0061】
上記以外の工程・操作については、本技術分野における通常の方法をそれぞれ用いることができる。
【0062】
本製造方法における工程・操作については、本技術分野における通常の方法をそれぞれ用いることができる。
【0063】
(例)
以下に本発明の例を具体的に示すが、かかる例はあくまで例示の目的でのみなされるものであって、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
また、各例中、「部」は他に指定しない限り重量部を、「%」は重量%を示す。
【0064】
(例1〜16)
(方法)
表1に示す重量部になるように、SiO、Al、MgO、Y、および表1の「Ca塩原料」に示すCa塩(Ca(OH)、またはCaCO)を投入し、1400℃で6時間か焼して、6時間放置して冷却後粉砕することによりガラス原料組成物(ガラス前駆体)を得た。それぞれの投入量はガラス原料組成物完全に酸化された場合、表1に示す重量部になるように行った。このガラス原料組成物にSiを表1に示す重量部添加し、全量を100部とし、ガラス原料を得た。
このガラス原料を窒素雰囲気下で1700℃にて6時間加熱してガラス原料を溶融し、窒素雰囲気下で紡糸を行い、フィラメント直径11μmのガラス繊維を得た。なお、1700℃における溶融が明らかに不十分な例については、さらに1780℃〜1800℃における溶融を行った。
【0065】
<ガラス原料組成物中の金属酸化物の含有量の測定方法>
EPMA(X線プローブマイクロアナライザ)(EPMA−1610、株式会社島津製作所製)にて組成分析を行った。
【0066】
<製品中の各金属成分/総金属量の測定方法>
EPMA(X線プローブマイクロアナライザ)(EPMA−1610、株式会社島津製作所製)にて組成分析を行った。
【0067】
<溶融性の評価方法>
窒素雰囲気下で6時間溶融し、冷却後のガラスの塊について、下記の指標による目視判定を行った。
○:1700℃でガラス化し、失透なし
△:1700℃でガラス化するが、失透が認められる
×:1800℃でガラス化しない
【0068】
<引張弾性率の測定方法>
オキシナイトライドガラスのフィラメントを作製し、万能試験機(テンシロン万能試験機、株式会社エーアンドディー製)にて測定した。
【0069】
<ガラス製品中のC量測定>
EPMA(X線プローブマイクロアナライザ)(EPMA−1610、株式会社島津製作所製)にて組成分析を行った。
【0070】
<ガラス製品中のN量測定>
ケルダール法による逆滴定法にて測定を行った。
【0071】
(結果)
表1〜4に示すとおりであった。なお、各表中、記号「−」は未測定であることを示す。
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
上記に示すとおり、本願発明の製造方法によれば、ガラス原料組成物を1700℃で溶融することができた(例1〜4、6〜9、13および16)。また、溶融性の点で、これらには若干劣るが、例14、15においても溶融性が優れていた。すなわち、本願発明の製造方法によれば、ガラス原料の高い溶融性が得られた。とくに例2においては、高い溶融性とともに極めて高い弾性率が達成された。
【0076】
これに対し、本願発明の製造方法に包含されない製造方法を用いた場合(例5、10〜12)においては、ガラス原料の溶融性は、本願発明の製造法の場合に比べ劣っていた。
また、投入されたCa塩の種類(Ca(OH)およびCaCO)のみが異なる例2と例1とを比較すると、例2においてはガラス繊維の引張強度、引張弾性率が例1より優れていた。これは、例2においては、Ca塩原料として炭素分を含むCaCOを用いなかったため、ガラス繊維中の炭素分の量がより少なかったためであると考えられる。
未測定ではあるが、投入されたCa塩の種類(Ca(OH)およびCaCO)のみが異なる、例3と例4、例6と例7、例8と例9、との関係においても同様の傾向にあると推測できる。また、投入されたCa塩の種類としてCaCOを用いた他の例(例11〜16)においても、投入されたCa塩の種類をCaCOに換えてCa(OH)やCaOを用いて、ガラス繊維を得たならば、ガラス繊維中の炭素分の量をより少なくすることができ、引張強度、および引張弾性率をそれぞれ向上することができたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本願発明によれば、新規なオキシナイトライドガラス繊維およびオキシナイトライドガラス繊維の新規な製造方法が提供される。したがって、本願発明は、オキシナイトライドガラス繊維関連産業の発展に寄与するところ大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の各工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、Siを添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量はガラス原料組成物の重量の98%〜100%であり、SiOおよびSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)。
【請求項2】
Siを添加した前記ガラス原料組成物が実質的に請求項1に記載の各成分のみからなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Siを添加した前記ガラス原料組成物中における炭素分の重量割合が1.5%以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
窒素雰囲気下での溶融温度が1750℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ガラス原料組成物を調製する工程が、金属酸化物および/または金属水酸化物からなる混合物を1000〜1400℃でか焼してガラス原料組成物を得る工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
CaOおよびYの総量が35〜55部である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
の量が5〜12部である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
下記各金属をそれぞれについて下記に規定された量で含む、オキシナイトライドガラス繊維:
Si:24〜34%
Al:7〜11%
Mg:4〜19%
Ca:29〜53%
Y:0〜15%
(ただし、上記%はいずれもオキシナイトライドガラス繊維中の金属分の全重量に対する各金属原子の重量を示す。また、オキシナイトライドガラス繊維の全重量に対する炭素分の重量および窒素分の重量は、それぞれ0〜1%および3〜12%である。)。
【請求項9】
YおよびCaの総重量が、ガラス中の金属分の全重量に対して35〜60%である、請求項8に記載のオキシナイトライドガラス繊維。
【請求項10】
Yの重量が、金属分の全重量に対して5〜12%である、請求項8または9に記載のオキシナイトライドガラス繊維。
【請求項11】
下記の各工程を含む、請求項8〜10のいずれかに記載のオキシナイトライドガラス繊維の製造方法:
下記組成を含むガラス原料組成物を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
前記ガラス原料組成物に、Si、Al、Mg、CaおよびYからの少なくとも1種の金属の窒化物からなる金属窒化物:5〜30部を、総量が100部になるように添加する工程;および
窒素雰囲気下において、前記金属窒化物を添加した前記ガラス原料組成物を溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程(ただし、SiOおよびケイ素の窒化物であるSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)
【請求項12】
下記の工程を含む、オキシナイトライドガラス繊維の製造方法:
下記組成を含むガラス原料を調製する工程;
SiO:0〜25部
Al:5〜15部
MgO :3〜23部
CaO :25〜50部
:0〜15部;
Si:5〜30部;および
窒素雰囲気下において、前記ガラス原料を1750℃以下の温度において溶融し、紡糸してオキシナイトライドガラス繊維を得る工程
(ただし、SiO、Al、MgO、CaOおよびYの全重量は、ガラス原料の重量からSiの重量を除いた重量の98%〜100%であり、SiOおよびSiの総量は30〜40部である。また、部はそれぞれ重量部を示す。)。

【公開番号】特開2011−6277(P2011−6277A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150679(P2009−150679)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】