説明

オキシム型環状金属錯体

【課題】簡便に得ることのできる、新しい分子機能を有する環状金属錯体及びその配位子を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、Mは金属イオンを示し、X及びYはそれぞれ金属Mへの配位子及び金属Mに配位していない外圏のアニオンを示し、mは0〜2、nは0〜3の数を示す)
で表されるオキシム型環状金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の反応の触媒等として有用な新規オキシム型環状金属錯体及びその配位子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属錯体を形成する有機多座環状配位子は、金属イオン捕捉剤や金属イオン検出剤としての機能を果たすとともに、種々の金属イオンを内包した金属錯体として、分子認識素子、分子変換触媒、磁性材料、光学材料、分子デバイスといった多彩な機能発現を示すことから、有用な機能性分子群として広範な分野で活用されている。その例として、クラウンエーテル、フタロシアニン、ポルフィリン、大環状ポリアミン(サイクレン、サイクラムなど)、シッフ塩基型環状配位子などが知られている。また、一般に金属錯体は、金属イオンを取り囲む配位子場のわずかな化学的環境の差異によって、その金属イオンの性質を劇的に変化させることができる。そのため、新しい金属物性・機能の発現には、新たな分子構造を有する有機多座環状配位子の開発が必要不可欠であり、そのような新たな配位子の開発が望まれている。
【0003】
一般に、これらの環状配位子の合成は手間のかかるものが多い。例えば収率の低い環化反応を含む逐次合成法や、高度希釈法による分子内環化反応、短工程金属鋳型合成法とより強い配位子を用いて金属イオンを除去する方法の組み合わせにより合成されている(非特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,96,2268(1974)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,99,2968(1977)
【非特許文献3】Inorg.Chem.,26,1391(1987)
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,112,9237(1990)
【非特許文献5】Inorg.Chem.,36,4656(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、簡便に得ることのできる、新しい分子機能を有する環状金属錯体及びその配位子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、新たな有機多座環状配位子を得るべく種々検討したところ、ジオキシム化合物に金属イオンを反応させたところ、全く意外にも、一段階反応で効率良く、触媒等種々の用途に有用な、テトラオキシム環状構造を有する金属錯体が得られ、この環状構造中に配位した金属は容易に脱離してテトラオキシム環状配位子が単離できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、Mは金属イオンを示し、X及びYはそれぞれ金属Mへの配位子及び金属Mに配位していない外圏のアニオンを示し、mは0〜2、nは0〜3の数を示す)
で表されるオキシム型環状金属錯体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、一般式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1及びR2は前記と同じ)
で表されるオキシム型環状化合物を提供するものである。
【0013】
さらに本発明は、上記一般式(1)及び(2)で表される化合物の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオキシム型環状金属錯体(1)は、酸化還元能を有する金属を内包することができることから、種々の酸化還元反応触媒等として有用である。また、ルイス酸触媒や相間移動触媒としても有用である。さらに、磁性材料、光学材料、超分子構造のビルディングブロックとしても有用である。
さらにまた、本発明の金属錯体は、一段階反応で容易に製造できることから、安価な金属錯体として広く使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明化合物を表す一般式(1)及び(2)中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は、置換基を有していてもよい)を示す。ここで、アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル等の炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。アラルキル基としては、C6-10アリール−C1-6アルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。複素環式基と
しては、インドール、ピロリジン、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、ジヒドロキノリン等が挙げられる。複素環−アルキル基としては、前記へテロ環にC1-6アルキル基が
結合した基が挙げられる。
【0016】
これらの基に置換し得る基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0017】
1及びR2の具体例としては、例えば水素原子;メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルなどのアルキル基;ベンジル、4−ヒドロキシベンジルなどのアラルキル基;ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、メルカプトメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、アミノブチル、インドール、イミダゾール、チオール、アミノ、カルボキシルなどの置換基を有するアルキル基;ベンジルオキシカルボニルメチル、2−ベンジルオキシカルボニルエチルなどのエステル基置換アルキル基などが挙げられる。このうち、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基が特に好ましい。
【0018】
一般式(1)中のMは金属イオンであり、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属イオン;チタンやバナジウム、クロム、マンガン、モリブデンなどの前周期遷移金属イオン;鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、亜鉛、カドミウム、水銀などの後周期遷移金属イオン、ランタンやセリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、イッテルビウムなどの希土類イオン等が挙げられる。このうち、ニッケル、銅、鉄、銀、パラジウム、コバルトイオンがより好ましい。X及びYはそれぞれ金属Mへの配位子及び金属Mに配位していない外圏のアニオンを示し、アニオンとしては、ClO4-、ハロゲンイオン、BF4-、PF6-、CH3COO-、CF3COO-、NO3-、CN-、NCS-、OH-、N3-、CF3SO3-等が挙げられる。配位子としてはCH3CN、水、アンモニア、アルキルアミン、アルコール、DMF、DMSO、複素環(イミダゾール、ピリジン、ピリミジン)、酸素、窒素、一酸化炭素、ClO4-、ハロゲンイオン、BF4-、PF6-、CH3COO-、CF3COO-、NO3-、CN-、NCS-、OH-、N3-、CF3SO3-等が挙げられる。mは0〜2、nは0〜3の数を示す。
【0019】
一般式(1)及び(2)の化合物は、例えば次の反応式に従って製造することができる。
【0020】
【化3】

【0021】
(反応式中、R3、R4及びR5は同一又は異なって、アルキル基又はアラルキル基を示し、R1、R2、M、X、Y、m及びnは前記と同じ)
【0022】
すなわち、ケトアルコール(4)にアルコキシアミン(NH2OR3)を反応させてケトアルコールのカルボニル基をオキシム化してオキシム化合物(5)を得、当該化合物(5)に光延反応によりヒドロキシ基をフタルイミド化して化合物(6)を得る。次に化合物(6)のフタルイミド部位をヒドラジンで脱離した後、ケトン(R4(R5)C=O)でオキシム化することにより、ジオキシム化合物(3)が得られる。このジオキシム化合物(3)に金属イオンを反応させれば本発明のオキシム型環状金属錯体(1)が得られる。さらに、この金属錯体(1)に、水、酸、塩基、又はキレート剤を反応させれば、金属イオンが容易に脱離し、オキシム型環状化合物(2)が得られる。
また、このオキシム型環状化合物(2)に金属イオンを反応させることでも本発明のオキシム型環状金属錯体(1)が得られる。
【0023】
出発原料であるケトアルコール(4)は、市販されている化合物を用いることもできるが、アミノ酸を原料として次の反応により製造することもできる。
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、Bnはベンジル基、DMFはジメチルホルムアミド、DCCはジシクロヘキシルカルボジイミド、THFはテトラヒドロフランをそれぞれ示し、R1及びR2は前記と同じ)
【0026】
すなわち、アミノ酸のα−アミノ基をヒドロキシ化し(例えばJ. Org. Chem., 66, 7303 (2001))、次いでヒドロキシ基をベンジル化し、アミド化した後グリニャール反応によりアルキル化し、次いでベンジル基を脱離させることにより、ケトアルコール(4)が得られる(例えば、Heteroatom Chem., 14, 603 (2003))。
【0027】
ケトアルコール(4)とアルコキシアミン(NH2OR3)の反応は、例えば、水溶媒中で行なわれる。
【0028】
オキシム化合物(5)の光延反応は、オキシム化合物(5)とN−ヒドロキシフタルイミド等の求核剤を、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)の存在下に反応させることにより行なわれ、化合物(6)が得られる。ここで求核剤としては、N−ヒドロキシフタルイミドの他、N−ヒドロキシスクシンイミド、オキシム等が用いられる。ここで、オキシム化合物(5)から化合物(6)への誘導は、光延反応以外にも、トリフルオロメタンスルホニル化を経由する反応、BF3等のルイス酸を用いる反応、メシルクロリドを用いる反応、塩化チオニルを用いる反応によっても行なうことができる。
【0029】
得られた化合物(6)は、E/Z混合物として得られるが、再結晶等によりE体とZ体とを分離してE体又はZ体のいずれかを次の反応に用いるのが好ましい。
【0030】
化合物(6)のフタルイミド基の脱離はヒドラジン一水和物を反応させることにより行なわれる。反応は、メタノール等のアルコール中で行なえばよい。次に、ケトン(R4(R5)C=O)を反応させて化合物(3)を得る反応は、同様にメタノール等のアルコール中で行なえばよい。
【0031】
ジオキシム化合物(3)と反応させる金属イオンとしては、金属ハロゲン化物、金属過塩素酸化物、金属アセトナト、硝酸金属塩、酢酸金属塩、トリフルオロ酢酸金属塩、テトラフルオロホウ酸金属塩、ヘキサフルオロリン酸金属塩、トリフルオロメタンスルホン酸金属塩、金属水酸化物、硫酸金属塩、金属酸化物、リン酸金属塩等を用いることができる。ジオキシム化合物と金属イオンとの反応は、アセトニトリル、アルコール、水、DMF、DMSO、ジエチルエーテル、THF等の極性溶媒中で加熱するのが好ましい。
【0032】
金属錯体(1)から金属を脱離させるには、金属錯体(1)に水、酸、塩基、又はキレート剤を反応させればよい。塩酸等の酸を反応させるのが好ましい。
【0033】
オキシム型環状化合物(2)に金属イオンを反応させて金属錯体(1)を製造する際に用いる金属イオンとしては、上記と同様のものが挙げられる。オキシム型環状化合物(2)と反応させる金属イオンとの反応は、前記ジオキシム化合物(3)から金属錯体(1)を製造する方法と同様に行うことができるが、常温下で反応させることもできる。
【0034】
反応混合物からの目的物の単離は、各種クロマトグラフィー、蒸留、再結晶、洗浄等を適宜組み合せて行なうことができる。
得られた本発明のオキシム型環状金属錯体は、酸化触媒、還元触媒、ルイス酸触媒、相間移動触媒、不斉反応触媒などの金属触媒として有用である。さらに、金属イオンを含有し、かつ良好な結晶性を有することから、磁性材料として、また発光性を有する光学材料として有用である。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
【0037】
【化5】

【0038】
O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(1.74g,20.9mmol)の水溶液(1.5mL)に炭酸ナトリウム十水和物(3.07g,10.7mmol)の水溶液(3mL)を加え、塩化ナトリウム−氷浴中で撹拌しながら、ヒドロキシアセトン(1.51g,20.3mmol)の水溶液(1.5mL)を加えた。氷浴から上げて、そのまま室温で3時間撹拌した。反応の終了を確認し、反応溶液に塩化ナトリウムを飽和になるまで加えた。これをジエチルエーテル(25mL×5)で抽出し、有機相を合わせて塩化カルシウムで乾燥した。ろ過し、減圧下溶媒を留去することで、化合物(5−1)(2.07g,20.1mmol,99%,ただしE/Z混合物)を無色透明オイルとして得た。
【0039】
実施例2
【0040】
【化6】

【0041】
反応に用いたガラス器具は全てドライアップしたものを用いた。窒素雰囲気下、化合物(5−1)(6.02g,58.3mmol)とN−ヒドロキシフタルイミド(9.50g,58.2mmol)、トリフェニルホスフィン(15.2g,58.1mmol)を反応容器に加え、脱水テトラヒドロフラン(150mL)を加えて氷浴下撹拌した。そこにアゾジカルボン酸ジエチル(40%トルエン溶液,29.0mL,63.8mmol)を滴下し、氷浴から上げ、そのまま室温で3時間撹拌した。反応の終了を確認し、ジクロロメタン(350mL)を加え、蒸留水(200mL×6)で洗浄した。有機相は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後に減圧下溶媒を留去し、粗製品を淡黄色オイルとして得た。粗製品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)によって精製することで、化合物(6−1)(9.1g,37mmol,63%,ただしE/Z混合物)を白色固体として得た。
【0042】
実施例3
(化合物(6−1)のE体の単離)
化合物(6−1)(9.1g,37mmol)をヘキサン:酢酸エチル=5:1(200mL)に加熱溶解させて、熱時ろ過したのちに室温で終夜放置し、一番晶として化合物(6−1)(E)(4.88g,19.7mmol,53%)を無色透明結晶として得た。ろ液は減圧下溶媒を留去し、化合物(6−1)(4.2g,17mmol)を得た。これを再結晶することで、二番晶を得た後、再び再結晶を行なうことで化合物(6−1)(E)(1.49g,6.00mmol,16%)を無色透明結晶として得た。化合物(6−1)のE体の合計収量6.37g,25.7mmol,70%。
【0043】
実施例4
【0044】
【化7】

【0045】
反応容器に化合物(6−1)(E)(2.00g,8.06mmol)を加え、メタノール(40mL)を加えて溶解させ、ヒドラジン一水和物(388mg,7.76mmol)を加えてそのまま室温で撹拌した。反応の終了を確認し、白色固体が懸濁した反応溶液を吸引ろ過し、ろ液を減圧下溶媒留去したのち、クロロホルム(200mL)を加えた。1M炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、有機相は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後に減圧下溶媒を留去した。ここにメタノール(40mL)を加えたのち、アセトン(10mL)を加えた。そのまま室温で30分撹拌し、反応の終了を確認した後、反応溶液を減圧下溶媒留去することで粗製品を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することで、化合物(3−1)(1.20g,7.59mmol,94%)を無色透明オイルとして得た。
【0046】
実施例5
【0047】
【化8】

【0048】
ジオキシム(3−1)(93.1mg,0.588mmol)とNi(ClO42・6H2O(251mg,0.687mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解した。1時間加熱還流したのち溶媒を約1mLになるまで留去した。そのまま室温で終夜放置することによって析出した紫色プリズム型結晶を冷アセトニトリルで洗浄して、[Ni(1)(H2O)2](ClO42(式(1−1)のM=Ni2+,X=H2O,Y=ClO4-,m=2,n=2の錯体)(36.4mg,0.076mmol)を収率52%で得た。
【0049】
金属イオンとして、Ni(ClO4)・6H2Oに代えて、Cu(ClO42・6H2O、Fe(ClO43・6H2O、AgClO4を用い、[Cu(1)(ClO42](式(1−1)中のM=Cu2+、X=ClO4-、m=2、n=0の錯体)、[Fe(1)(CH3CN)2](ClO42(式(1−1)中のM=Fe2+、X=CH3CN,Y=ClO4-,m=2,n=2の錯体)、[Ag(1)(ClO4)](式(1−1)中のM=Ag+、X=ClO4-,m=1,n=0の錯体)を得た。
得られた環状錯体は、ESI−TOF mass測定、UV−vis測定などの各種分光測定から、その溶液構造が示唆された。さらに単結晶X線結晶構造解析によって、テトラオキシム型環状金属錯体の詳細な分子構造を明らかにした。
【0050】
実施例6
【0051】
【化9】

【0052】
ジオキシム(3−1)(93mg,0.588mmol)とFe(ClO43・6H2O(68mg,0.147mmol)を、窒素バブリングによって脱気した脱水アセトニトリル(0.6mL)に溶解した。窒素下70℃で1日加熱撹拌したのち溶媒を留去し、化合物(1−1)を得た。ここに水を加え、1N HClを加えたのち塩化メチレンで抽出した後、溶媒を留去して粗製品を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1→1:1)で精製したのち、得られた固体をヘキサンで洗浄することによって、白色固体の化合物(2−1)(7mg,0.025mmol)を収率17%で得た。
【0053】
実施例7
ジオキシム(3−1)(28mg,0.18mmol)とFe(ClO42・6H2O(15mg,0.041mmol)を、窒素バブリングによって脱気した脱水アセトニトリル(0.35mL)に溶解した。窒素下60℃で1日加熱撹拌したのち溶媒を留去し、化合物(1−1)を得た。ここに水を加え、塩化メチレンで抽出した後、溶媒を留去して粗製品を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製することによって、白色固体の化合物(2−1)(11mg,0.037mmol)を収率90%で得た。
【0054】
実施例8
実施例7で得られたオキシム型環状化合物(2−1)(0.65mg,2.3μmol)と、Pd(BF42・4CH3CN(1.3mg,2.9μmol)を、アセトニトリル(0.5mL)存在下で混合し、室温で1〜2日静置することによって、[Pd(1)](BF42(式(1−1)中のM=Pd2+、Y=BF4-,m=0,n=2の錯体)の単結晶を得た。
【0055】
金属イオンとして、Pd(BF42・4CH3CNに代えてCo(ClO42・6H2Oを用い、[Co(1)(H2O)2](ClO42(式(1−1)中のM=Co2+、X=H2O,Y=ClO4-,m=2,n=2の錯体)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、Mは金属イオンを示し、X及びYはそれぞれ金属Mへの配位子及び金属Mに配位していない外圏のアニオンを示し、mは0〜2、nは0〜3の数を示す)
で表されるオキシム型環状金属錯体。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示す。)
で表されるオキシム型環状化合物。
【請求項3】
一般式(3)
【化3】

(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、R3、R4及びR5は同一又は異なって、アルキル基又はアラルキル基を示す)
で表されるジオキシム化合物に金属イオンを反応させることを特徴とする請求項1記載のオキシム型環状金属錯体の製造法。
【請求項4】
請求項1記載のオキシム型環状金属錯体に水、酸、塩基、又はキレート剤を反応させることを特徴とする請求項2記載のオキシム型環状化合物の製造法。
【請求項5】
請求項2記載のオキシム型環状化合物に金属イオンを反応させることを特徴とする請求項1記載のオキシム型環状金属錯体の製造法。
【請求項6】
一般式(3)
【化4】

(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環式基、複素環−アルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し、R3、R4及びR5は同一又は異なって、アルキル基又はアラルキル基を示す)
で表されるジオキシム化合物。

【公開番号】特開2010−65019(P2010−65019A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14910(P2009−14910)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月12日 国立大学法人東京大学大学院理学系研究科化学専攻事務室発行の「平成19年度修士論文要旨(修士課程業績報告会要旨)」に発表 平成20年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第88春季年会講演予稿集」に発表 平成20年5月28日 第3回ホスト・ゲスト化学シンポジウム実行委員会発行の「第3回ホスト・ゲスト化学シンポジウム講演要旨集」に発表 平成20年6月1日 ホスト‐ゲスト・超分子化学研究会主催の「第3回ホスト・ゲスト化学シンポジウム」に文書をもって発表
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】