説明

オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。

【課題】高価な酸化剤を使用することなく、電池材料としての安定性に優れたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの高効率で安価な製造方法を提案する。
【解決手段】一般式:Ni1−x−yCo(OH)(xは0.005〜0.05、yは0.005〜0.05、MはCa,Mg,Znのうちの1種以上)で表される水酸化ニッケル粒子の心材と心材表面のオキシ水酸化コバルトコート層からなるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを、
反応槽に水酸化ニッケルスラリーとコバルト塩水溶液を供給するとともに、pH9.5〜10.5に保持されるようにアルカリ水溶液を供給して、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得るコーティング工程と、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのスラリーにアルカリ水溶液と空気を供給し酸化してオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得る酸化工程を有する製造方法によって得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法に関する。より詳細には、安定性に優れたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルカリ蓄電池は、ポータブル機器や電気自動車やハイブリッド自動車などの電源としてとして注目されている。このようなアルカリ蓄電池としては、様々のものが提案されているが、このうち、水酸化ニッケルを主体とした活物質からなる正極と、水素吸蔵合金を主成分とした負極と、アルカリ電解液とを備えるニッケル水素二次電池は、エネルギー密度が高く、信頼性に優れた二次電池として急速に普及している。ニッケル水素二次電池の正極は、発泡ニッケル基板の細孔内に、水酸化ニッケルを含む活物質を直接に充填して作製される。
【0003】
上記正極に使用される水酸化ニッケルは、充填密度が高く、高エネルギー密度化が容易なことが求められる。また、電池性能の向上のため、オキシ水酸化コバルトを表面にコートした水酸化ニッケルの使用が提案されている。水酸化ニッケルの粒子表面にオキシ水酸化ニッケルをコートすることで酸素発生過電圧が高くなり、発泡ニッケル基材の腐食が抑えられサイクル性能が向上すると言われている。(例えば、特許文献1)
水酸化ニッケルの表面をオキシ水酸化コバルトによりコートする方法としては、1酸化コバルトを水酸化ニッケルと混合し酸化剤で酸化して、オキシ水酸化コバルトをコートする方法が提案されている。(例えば、特許文献2)
また、水酸化ニッケルを水中に懸濁させ、可溶性のコバルト塩とアルカリを添加して水酸化ニッケル表面に水酸化コバルトをコートし、さらに次亜塩素酸ソーダや過硫酸塩などの酸化剤で上記水酸化コバルトを酸化してオキシ水酸化コバルトとするグする方法が提案されている。(例えば、特許文献3)
酸化剤を使用して水酸化コバルトや1酸化コバルトを酸化すると、添加した酸化剤が芯材である水酸化ニッケルも酸化するため、コバルトを酸化する以上の薬品を消費するとともに比較的不安定な化合物であるオキシ水酸化ニッケルが生成することから、製造後の保存時にオキシ水酸化ニッケルの分解などが発生し電池材料としての安定性を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−73463号公報
【特許文献2】特開H04−129171号公報
【特許文献3】特開2003−303590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、高価な酸化剤を使用することなく、電池材料としての安定性に優れたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの高効率で安価な製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために、オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、アルカリ性に調整した水酸化コバルトコート水酸化ニッケルスラリー中で空気を供給することで、水酸化コバルトをオキシ水酸化コバルトに酸化可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法は、一般式:Ni1−x−yCo(OH)(式中、xは、0.005〜0.05であり、yは、0.005〜0.05であり、Mは、Ca,Mg,Znのうちの1種以上)で表される水酸化ニッケル粒子の心材と、心材の表面に形成されたオキシ水酸化コバルトを含むコート層からなり、かつコート層中のコバルト含有量が心材とコート層の合計に対して3〜7質量%であるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法であって、
オーバーフロー口付きの反応槽に心材となる水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、コート層を形成するコバルト塩を含む水溶液を連続的に供給するとともに、液温を25℃にして測定した基準でpHを9.5〜10.5の範囲内の一定値に保持されるようにアルカリ水溶液を連続的に供給して、該水酸化ニッケル粒子の表面に水酸化コバルトをコーティングしながらオーバーフローさせることにより水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得るコーティング工程と、コーティング工程で得られた水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのスラリーをオーバーフロー口付きの反応槽に供給するとともにアルカリ水溶液と空気を連続的に供給し、該水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコート層に含有される水酸化コバルトを酸化しながらオーバーフローさせることにより、オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得る酸化工程を有することを特徴とする。
【0008】
上記酸化工程においては、上記コーティング工程で得られた水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを、スラリーのままの状態で該酸化工程の反応槽に供給することが好ましい。また、上記コーティング工程の反応槽のオーバーフロー口から、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのスラリーを直接、かつ連続的に上記酸化工程の反応槽に供給することが好ましい。
【0009】
上記コーティング工程においては、前記水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、前記コバルト塩を含む水溶液と、前記アルカリ水溶液を、それぞれ個別にかつ同時に供給することが好ましく、前記コバルト塩は、硫酸コバルトおよび/又は塩化コバルトであることが好ましい。
【0010】
上記コーティング工程における反応槽内のスラリー濃度は、水酸化ニッケルとして400〜1000g/lであることが好ましい。
【0011】
上記コーティング工程において、反応槽内に供給する水酸化ニッケル粒子を含むスラリーとコバルト塩を含む水溶液とアルカリ水溶液の合計流量は、該反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が60〜300の範囲の一定値に保持されるように調整されることが好ましい。
【0012】
上記コーティング工程および酸化工程において、反応槽内のスラリー温度は、40〜80℃の温度範囲で、かつ変動幅±1℃で一定温度に制御されることが好ましい。
【0013】
上記酸化工程において、前記空気の供給量は、該酸化工程へ供給する単位時間当たりのコバルト量(g/分)を基準にした下記の式(1)を満足する空気量(l/分)であることが好ましい。
空気供給量(l/分)≧
コバルト供給量/(58.93×4)×22.4/(0.21/0.2)……(1)
上記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましく、上記酸化工程におけるスラリー中の水酸化ナトリウム濃度が1g/l以上10g/l以下の濃度範囲で一定値に保持されるように、供給するスラリーと同時に水酸化ナトリウム水溶液を連続的に添加することが好ましい。
【0014】
また、上記酸化工程において供給する水酸化コバルトコート水酸化ニッケルスラリーと水酸化ナトリウム水溶液の合計流量は、該反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が120〜600の範囲の一定値に保持されるように調整されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池材料としての安定性に優れたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを、高価な酸化剤を使用することなく安価に、しかも高効率で得ることができ、工業的価値が極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法においては、酸化工程において水酸化ニッケル粒子表面に形成されたコート層中の水酸化コバルトを、アルカリ水溶液を添加したスラリー中で空気により酸化してオキシ水酸化コバルトとすることが重要である。
【0017】
オキシ水酸化コバルトは、次亜塩素酸ソーダや過硫酸塩などの酸化剤を用いて水酸化コバルトを酸化させることでも得られるが、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの水酸化コバルトに適用した場合、心材である水酸化ニッケルの一部が酸化され、比較的不安定なオキシ水酸化ニッケルが生成される。また、このような酸化剤を用いることはコスト的にも不利である。
【0018】
上記製造方法においては、酸化工程のスラリー中に含まれるOH−イオンの存在が酸化反応を促進する。したがって、上記酸化剤を用いることなく、空気を供給することで水酸化コバルトからオキシ水酸化コバルトへの酸化が可能となる。このような空気による酸化では、得られるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの電池材料としての安定性が損なわれない程度まで心材である水酸化ニッケルの酸化は抑制される。
【0019】
上記空気による酸化は、スラリー中に含まれるOH−イオン量により影響を受ける。このため、例えばアルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合、上記酸化工程におけるスラリー中の水酸化ナトリウム濃度は、1g/l以上10g/l以下の濃度範囲で一定値に保持されるように、反応槽へ供給するスラリーと同時に水酸化ナトリウム水溶液を連続的に添加することが好ましい。
【0020】
該水酸化ナトリウム濃度が1g/l以下では、この酸化反応の促進効果が十分でなく、水酸化コバルトのオキシ水酸化コバルトへの酸化が不十分となる。また、10g/l以上では、酸化促進効果の向上が認められず、生産コストの上昇を招く。
【0021】
一方、該水酸化ナトリウム濃度が変動すると、オキシ水酸化コバルトへの酸化にばらつきが生じて電池特性に悪影響を及ぼす。このため、水酸化ナトリウム濃度は±1g、好ましくは±0.5gの幅で一定値に保持することが好ましい。また、上記酸化工程の反応槽へ供給されるスラリーによって該水酸化ナトリウム濃度は変動するため、スラリーと同時に水酸化ナトリウム水溶液を連続的に添加することが好ましい。同時に連続的に供給することにより、該水酸化ナトリウム濃度の変動を抑制して一定値に精度よく制御することが可能となる。
【0022】
本発明の製造方法の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、上記コーティング工程および酸化工程を個別に行うことも可能であるが、上記コーティング工程から該酸化工程に水酸化コバルトコート水酸化ニッケル(以下、「水酸化物コート品」と記載することがある。)を連続的に供給して酸化させることが、簡便な設備により一貫した工程で効率的であり、好ましい。このような連続法による製造方法として、例えば、次の方法を用いることができる。
【0023】
すなわち、上記コーティング工程および酸化工程の反応槽としてオーバーフロー機構、好ましくはオーバーフロー口を備えた容器を用い、該コーティング工程で得られた水酸化物コート品をオーバーフローさせ、水酸化物コート品をスラリーのままの状態で直接、かつ連続的に該酸化工程の反応槽に供給し、酸化工程の反応槽において上記コート層に含有される水酸化コバルトを酸化させてオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケル(以下、「オキシコート品」と記載することがある。)を連続的に得ることが好ましい。
【0024】
なお、上記各工程を個別に行う場合、コーティング工程で得られる水酸化物コート品をオーバーフロー機構から回収して、固液分離もしくはさらに乾燥した後、上記酸化工程に供給することも可能であるが、水酸化物コート品を上記コーティング工程で得られるスラリーのままの状態で該酸化工程の反応槽に供給することが無駄な工程を省略できて効率的であり、好ましい。
【0025】
上記コーティング工程で供給されたアルカリ分は、コバルト塩の中和によりそのほとんどが消費される。したがって、上記コーティング工程で得られる水酸化物コート品をスラリーのままの状態で該酸化工程に供給する場合においても、スラリー中に含まれるOH−イオン量を制御するため、該酸化工程においてアルカリ分、すなわちアルカリ水溶液を供給することが必要となる。
【0026】
以下、各工程を上記連続法を用いることを前提として詳細に説明するが、各工程の条件は上記個別に行う場合についても適用可能である。
【0027】
(1)コーティング工程
コーティング工程は、心材となる水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、コート層を形成するコバルト塩を含む水溶液と、アルカリ水溶液を連続的に供給し、該水酸化ニッケル粒子表面に水酸化コバルトをコーティングしながらオーバーフローさせることにより水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得る工程である。
ここで、心材として一般式:Ni1−x−yCo(OH)(式中、xは、0.005〜0.05であり、yは、0.005〜0.05であり、Mは、Ca,Mg,Znのうちの1種以上)で表される水酸化ニッケルが用いられる。
【0028】
すなわち、コバルト含有量を表す式中のxが、0.005未満ではコバルトを添加することにより達成される充電効率の向上効果が得られず、0.05を越えると、放電電圧の低下が発生し電池性能が低下する。また、添加元素を表すMの含有量を表す式中のyが0.005未満ではM元素の添加効果である充放電時の水酸化ニッケルの体積変化の低減効果が発揮されず、0.05を超えると、体積変化の低減効果以上に電池容量の低下を招き電池性能が悪化する。
【0029】
また、コート層に含有されるコバルト量は、心材とコート層の合計に対して3〜7質量%である。該コバルト量が3質量%未満では、オキシ水酸化コバルトとしてのコート量が不足し、オキシ水酸化コバルトコートの効果が十分に発揮されない。一方、7質量%を超えてオキシ水酸化コバルトのコート量を増やしても効果の向上が認められない。
【0030】
コーティング工程では、まず、反応槽に心材となる水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、コート層を形成するコバルト塩を含む水溶液と、アルカリ水溶液を連続的に供給する。
また、前記水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、前記コバルト塩を含む水溶液と、前記アルカリ水溶液は、それぞれ個別にかつ同時に供給することが好ましい。これらを混合して混合液として供給すると、混合液中で反応を起こし水酸化コバルトが水酸化ニッケル粒子に十分にコートされないことがある。また、同時に供給しない場合は、水酸化物コート品のコート量にバラつきが生じることがある。
【0031】
ここで、上記原料を連続的に供給して、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得ることから、反応槽にはオーバーフロー機構付きのものを用いる。生成した水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に反応槽から取り出せる構造を有する反応槽であれば特に限定されないが、生成物を安定して取り出せ、構造も簡易であることからオーバーフロー口を有する反応槽が特に好ましい。また、水酸化ニッケル粒子に均一なコートを行うため、液温調整機構と、撹拌装置を有するものであればよい。
【0032】
上記心材となる水酸化ニッケル粒子は、公知の技術によって得られた上記一般式で表される組成を有するものが用いられるが、電池の正極材として用いられたときに良好な電池特性を得るため、平均粒径を8〜12μmとすることが好ましい。該水酸化ニッケル粒子のスラリーは、不純物の混入を防止するため、純水等に粒子を分散させたものでよく、スラリー濃度は水酸化ニッケルとして400〜1000g/lであることが好ましい。該スラリー濃度が400g/l未満では、水酸化コバルトの析出ポイントとなる水酸化ニッケル粒子表面の活性点の濃度が足りず、水酸化ニッケル粒子表面以外の液中で水酸化コバルトが生成し、水酸化ニッケル粒子を完全にコートできないことがある。一方、該スラリー濃度が1000g/lを越えると、反応槽内の全スラリーの粘度が上昇し攪拌が十分行えなくなり、水酸化コバルトのコートが不均一になることがある。
【0033】
上記コバルト塩は、特に限定されるものではないが、pH制御により水酸化コバルトが生成される水溶性のコバルト化合物であればよく、硫酸コバルトおよび/または塩化コバルトが好ましく、ハロゲンによる汚染のない硫酸コバルトがより好ましい。
【0034】
上記アルカリは、特に限定されるものではないが、水溶性の塩が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示され、コストの観点から水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0035】
上記コバルト塩およびアルカリ水溶液は、純水等に溶解したものが好ましく、該濃度は、所望の濃度のものが用いられ、装置の配管等に再析出せず、上記水酸化ニッケル粒子スラリーの濃度変化に支障のない程度に抑制できる範囲であればよい。
【0036】
上記反応槽内のスラリー温度としては、特に限定されるものではないが、40〜80℃の温度範囲で、かつ変動幅±1℃で一定温度に制御されることが好ましい。すなわち、該温度が40℃未満では、生成する水酸化コバルト中への陰イオンの残留量が多くなる。一方、温度が80℃を超えると、反応槽からの水の蒸発が激しくなりイオン濃度の増加により水酸化コバルト中の不純物濃度が高くなる。また、上記変動幅を越えて温度が制御された場合、水酸化コバルト中の不純物濃度にも変動が生じるため、電池に用いられたときに特性が安定しない虞がある。
【0037】
上記反応槽内のスラリーのpHは、反応槽内のスラリーを定期的に抜き取り、この温度を25℃にして測定する方法で、9.5〜10.5の範囲の一定値に保持する。すなわち、pHが9.5未満では、添加したコバルト塩がスラリーの液中に残るため、水酸化コバルトのコート量が変動する。一方、pHが10.5を越えると、スラリーの液中からの水酸化コバルトの析出速度が速すぎ、水酸化コバルト単独で該液中から析出する量が増えるため、水酸化コバルトによるコートが十分に行えない。また、一定値として変動幅±0.1の範囲で制御されることが好ましい。該変動幅が上記範囲を超えると、水酸化コバルトによるコート量が変動する虞がある。
【0038】
ここで、上記スラリーのpHは、例えば、ガラス電極法を用いたpHコントローラーで連続測定され、pHが上記変動幅で一定となるようにアルカリ水溶液の流量が連続的にpHコントローラーによりフィードバック制御される。しかしながら、一般に、ガラス電極法を用いる場合、アルカリ溶液中に長時間浸漬されることによって、アルカリ誤差と呼ばれる誤差が徐々に発生する。そのため、アルカリ誤差を取り除くために、反応槽内のスラリーからサンプリング液を採取し、該サンプリング液を25℃に保持した恒温水槽に浸漬してサンプリング液の液温が25℃となったところでpHを測定し、所定値に維持されているかを確認することが好ましい。なお、アルカリ誤差の発生により所定のpHに維持されていない場合には、該スラリーのpHを制御しているpHコントローラーの設定値を25℃で測定した値が所定のpHとなるように調整する必要がある。
【0039】
上記反応槽内へ供給する水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、コバルト塩を含む水溶液と、アルカリ水溶液との合計流量は、特に限定されるものではないが、該反応槽の容積(l)を1分当たりの該合計流量(l)で除した値が60〜300の範囲の一定値に保持されるように調整されることが好ましい。すなわち、反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が60未満では、反応時間が十分でないので水酸化ニッケル粒子表面の水酸化コバルトコートが完結せず十分にコートされないことがある。一方、この値が300を超えると、該スラリーの供給速度が遅くなり生産性が悪化するため、好ましくない。
【0040】
(2)酸化工程
上記酸化工程は、上記コーティング工程で得られた水酸化物コート品のスラリーを反応槽に供給するとともにアルカリ水溶液と空気を連続的に供給し、該水酸化物コート品のコート層に含有される水酸化コバルトを酸化させ、オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得るものである。
【0041】
酸化工程においても、上記コーティング工程と同様に反応槽としてオーバーフロー口付きのものを用い、得られたオキシコート品を連続的にオーバーフローさせて回収することが好ましい。上記空気の供給量としては、特に限定されるものではなく、供給される水酸化物コート品に含有される位時間当たりのコバルト量(g/分)を基準にした下記の式(1)を満足する量をスラリー中に連続的にかつ定量的に添加することが好ましい。
【0042】
式(1)を満足しない空気量では、水酸化物コート品のコート層に含有される水酸化コバルトをオキシ水酸化コバルトに酸化するために必要な空気が不足して、十分に酸化されたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルが得られないことがある。上記空気に替えて酸素と任意の比率で混合された酸素と不活性ガスの混合ガスを用いることも可能であるが、コスト面から空気を用いることが好ましい。なお、空気以外のガスを用いる場合においても、空気中に含有される酸素量を基準として式を変換することで、式(1)を適用することができる。
空気供給量(l/分)≧
コバルト供給量/(58.93×4)×22.4/(0.21×0.2)……(1)
上記反応槽内のスラリーの温度は、特に限定されるものではないが、上記コーティング工程と同様に40〜80℃の温度範囲で、かつ変動幅±1℃に制御することが好ましい。すなわち、該温度が40℃未満では、水酸化コバルトのオキシ水酸化コバルトへの酸化速度が遅く酸化が不十分となることがある。また、該温度が80℃以上では水分の蒸発が激しくなりスラリー中のイオン濃度が上がることで、得られるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケル中の不純物濃度が高くなる。一方、該温度の変動幅が上記範囲を超えると、酸化速度の変動が大きくなるため、水酸化コバルトの酸化状態にばらつきが生じることがある。なお、上記スラリー温度は、上記コーティング工程と同条件で制御することが容易であり、温度を安定させることができるため好ましい。
【0043】
上記反応槽内へ供給する水酸化コート品スラリーと水酸化ナトリウム水溶液の合計流量は、特に限定されるものではないが、該反応槽の容積(l)を1分当たりの該合計流量(l)で除した値が120〜600の範囲の一定値に保持されるように調整されることが好ましい。すなわち、反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が120未満では、水酸化コバルトの酸化に必要な滞留時間が取れず、十分にオキシ水酸化コバルトが生成されないことがある。一方、この値が600を越えると、酸化に必要な時間以上に水酸化コート品が反応槽内で滞留するために生産性が悪化する。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、コバルトの分布の確認評価方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)コバルトの分布:EPMA面分析法で行なった。
(3)コバルト価数の分析:塩化第二鉄溶液を使用し、ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として、二クロム酸カリウム溶液で滴定する方法(「コバルト酸化物中の金属コバルト、コバルト(2価)及びコバルト(3価)の分別定量」,並木美智子,広川吉之助:分析化学,30,143(1981)参照)でオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケル中のコバルトの価数を分析した。分析により得られたコバルト価数は、芯材中に含まれるコバルトも含めた価数であるため、芯材中のコバルト価数はすべて2価として補正して、コバルトコート層中のコバルトの価数を算出した。
【0045】
(実施例1)
まず、下記1.〜3.の方法によって水酸化ニッケルスラリー液(A)、硫酸コバルト溶液(B)、水酸化ナトリウム溶液(C)を作製した。
【0046】
1)水酸化ニッケルスラリー液(A)
下記の混合ニッケル水溶液及び(B)水酸化ナトリウム水溶液を作製した。
・混合ニッケル水溶液:工業用硫酸ニッケル6水和物134.3kgと工業用硫酸コバルト7水和物4.6kgと硫酸マグネシウム4.0Kgを水に溶解した後、全量を300lに調整して、混合ニッケル水溶液を得た。
・水酸化ナトリウム水溶液:48質量%工業用水酸化ナトリウム溶液100lを水で希釈し全量を200lとした。
次いで、オーバーフロー口までの容量が9lである反応槽に水を張った後、50℃に調整した恒温水槽の中に反応槽を入れ保温した。さらに、反応槽内を攪拌しながら、上記(A)混合ニッケル水溶液、及び工業用アンモニア水(濃度25質量%)を連続的に反応槽内へ供給するとともに上記水酸化ナトリウム溶液で反応液のpHをpHコントローラーを用いてpH11.8に制御した。
反応槽内の反応液のpH、温度、アンモニウムイオン濃度及びスラリー濃度が一定値になるまで操作を続け、その後オーバーフロー口から生成物を回収した。さらに回収物を水洗して付着陰イオン等の不純物を除去し、乾燥させて芯材となる水酸化ニッケル(Ni0.94Co0.03Mg0.03(OH))を得た。
得られた水酸化ニッケルを水に分散させ、水酸化ニッケルの固形分濃度で1000g/lの水酸化ニッケルスラリー液を得た。
【0047】
2)コバルト水溶液(B):工業用硫酸コバルト7水和物4.8kgを水に溶解した後、全量を10lに調整して硫酸コバルト水溶液を得た。
【0048】
3)水酸化ナトリウム水溶液(C):水酸化ナトリウム水溶液:48%工業用水酸化ナトリウム溶液10lを水で希釈し全量を20lとした。
【0049】
オーバーフロー口までの容量が2lであるコーティング工程の反応槽(a)とオーバーフロー口までの容量が5lである酸化工程の反応槽(b)を、反応槽(a)のオーバーフロー口が反応槽(b)に入るようにカスケード接続した。上記カスケード接続した2つの反応槽に水を張った後、50℃に調整した恒温水槽の中に2つの反応槽を入れ保温した。
【0050】
(1)コーティング工程
反応槽(a)を攪拌しながら、上記ニッケルスラリー液(A)及びコバルト水溶液(B)を連続的に供給した。ここで、供給流量は、ニッケルスラリー液(A)13ml/分及びコバルト水溶液(B)5ml/分であった。また、上記水酸化ナトリウム水溶液(C)を供給した。ここで、反応槽内の反応液のpHは、反応槽内に設置したpH電極でpHを測定し、pHコントローラーを用いて、上記水酸化ナトリウム水溶液(C)の供給流量を調整してpHを制御した。上記コントローラーによるpHの制御の精度は、±0.1であった。
【0051】
この後、反応槽内の反応液のpH、温度及びスラリー濃度が一定値になるまで、この状態で48時間運転した。なお、反応槽(a)内のpHは、12時間ごとに反応槽内のスラリーをサンプリングし、25℃で測定した際のpHが、9.5となるように調整した。反応槽に添加した水酸化ナトリウム水溶液(C)の平均流量は、2.5ml/分であり、反応槽の容積を、水酸化ニッケルスラリー液(A)、コバルト水溶液(B)及び水酸化ナトリウム水溶液の合計流量で除した値は97.5であった。
【0052】
(2)酸化工程
反応槽(b)にコーティング工程からカスケード接続により水酸化コバルトコート水酸化ニッケルスラリーと水酸化ナトリウム水溶液を0.4ml/分の流量で連続的に供給した。また、空気を反応槽の底から2l/分供給してバブリングした。
反応槽(b)への上記スラリーの供給量は、ニッケルスラリー液(A)とコバルト水溶液(B)と反応槽(b)に供給した水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計であり、反応槽(b)に供給されたスラリーと水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で反応槽(b)の容積を除した値は239であった。なお、反応槽(b)内のスラリー中の水酸化ナトリウム濃度は、8g/lであり、ほぼ変動はなく一定であった。
【0053】
反応槽(a)への原料の供給開始から48時間後から72時間後まで、反応槽(b)のオーバーフロー口からの排液を回収した。この間、反応槽(a)および反応槽(b)内のスラリーは50±0.5℃に保持されていた。オーバーフロー口から得られた湿潤オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、16.8kgであった。得られた湿潤オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを、30lの水中へ分散させた水洗−ろ過の操作を3回繰り返した後、100℃に設定した大気乾燥機を用いて24時間乾燥してオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得た。
【0054】
得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、芯材のコバルト品位が1.9質量%で、コート層中のコバルト量は4.0質量%であり、コバルト価数は2.9でコート層の水酸化コバルトがオキシ水酸化コバルトに酸化されていることが確認された。
また、得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコバルトのコート状態をEPMA面分析法で確認したところ、芯材である水酸化ニッケル粒子の周りに全量のコバルトがコートされた状態であった。
【0055】
(実施例2)
コーティング工程における反応槽(a)への供給量をニッケルスラリー液(A)6.5ml/分、コバルト水溶液(B)3ml/分とし、(2)酸化工程における反応槽(b)への水酸化ナトリウム水溶液(C)供給量を0.7ml/分として、それぞれ連続的に供給したこと、反応槽(b)への空気の供給量を2l/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得た。
なお、反応槽(a)内のpHは、12時間ごとに反応槽内のスラリーをサンプリングし、25℃で測定した際のpHが9.8となるように調整した。反応槽(a)に添加した水酸化ナトリウム水溶液の平均流量は、1.5ml/分であり、反応槽(a)の容積を、水酸化ニッケルスラリー液(A)、コバルト水溶液(B)及び水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で割った値は181であった。
【0056】
また、反応槽(b)へ供給されたスラリーと水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で反応槽(b)の容積を除した値は438であった。反応槽(b)内のスラリー中の水酸化ナトリウム濃度は5g/lであり、ほぼ変動はなく一定であった。
反応槽(b)のオーバーフロー口から得られた湿潤オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは11.8kgであり、実施例1と同様に水洗および乾燥してオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得て評価した。オーバーフロー口から回収中の反応槽(a)および反応槽(b)内のスラリーは50±0.5℃に保持されていた。
【0057】
得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、芯材のコバルト品位が1.9質量%で、コート層中のコバルト量は4.5質量%であり、コバルト価数は3.0であり、コート層の水酸化コバルトがオキシ水酸化コバルトに酸化されていることが確認された。
また、得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコート状態を確認したところ、芯材である水酸化ニッケルの周りに全量のコバルトがコートされた状態であった。
【0058】
(比較例1)
酸化工程における反応槽(b)に水酸化ナトリウム水溶液(C)を供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得た。
なお、反応槽(a)内のpHは、12時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが、9.5となるように調整した。反応槽(a)に添加した水酸化ナトリウム水溶液の平均流量は、2.5ml/分であり、反応槽(a)の容積を、水酸化ニッケルスラリー液(A)、コバルト水溶液(B)及び水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で割った値は97.5であった。
【0059】
また、反応槽(b)へ供給されたスラリーと水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で反応槽(b)の容積を除した値は243であった。反応槽(b)内のスラリー中の水酸化ナトリウム濃度は、0.4g/lとなった。
【0060】
反応槽(b)のオーバーフロー口から得られた湿潤オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは16.5kgであり、実施例1と同様に水洗および乾燥してオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得て評価した。オーバーフロー口から回収中の反応槽(a)および反応槽(b)内のスラリーは50±0.5℃に保持されていた。
得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、芯材のコバルト品位が1.9質量%で、コート層中のコバルト量は4.0質量%であり、コバルト価数は2.2であり、コートされた水酸化コバルトが酸化されず水酸化コバルトのままであった。
一方、得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコート状態を確認したところ、芯材である水酸化ニッケルの周りに全量のコバルトがコートされた状態であった。
【0061】
(比較例2)
コーティング工程における反応槽(a)のpHを10.8に制御したこと以外は、実施例1と同様にしてオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得た。
なお、反応槽(a)内のpHは、12時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが10.8となるように調整した。反応槽(a)に添加した水酸化ナトリウム水溶液の平均流量は、3.0ml/分であり、反応槽(a)の容積を、水酸化ニッケルスラリー液(A)、コバルト水溶液(B)及び水酸化ナトリウム水溶液の合計流量で割った値は167であった。
また、反応槽(b)へ供給されたスラリーと水酸化ナトリウム水溶液(C)の合計流量で反応槽(b)の容積を除した値は、232であった。反応槽(b)内のスラリー中の水酸化ナトリウム濃度は、1.2g/lとなった。
【0062】
反応槽(b)のオーバーフロー口から得られた湿潤オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは17.3kgであり、実施例1と同様に水洗および乾燥してオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを得て評価した。オーバーフロー口から回収中の反応槽(a)および反応槽(b)内のスラリーは50±0.5℃に保持されていた。
得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、芯材のコバルト品位が1.9質量%で、全量がコートされたと仮定してコート層中のコバルト量は4.0質量%であり、コバルト価数は2.9であった。
【0063】
一方、得られたオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコート状態を確認したところ、芯材である水酸化ニッケルの周りにコバルトが十分コートされておらず、コバルトの単独粒子が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により得られるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルは、電池材料としての安定性に優れ、ポータブル機器や電気自動車、ハイブリッド自動車などに用いられるアルカリ蓄電池用の正極材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Ni1−x−yCo(OH)(式中、xは、0.005〜0.05であり、yは、0.005〜0.05であり、Mは、Ca,Mg,Znのうちの1種以上)で表される水酸化ニッケル粒子の心材と、心材の表面に形成されたオキシ水酸化コバルトを含むコート層からなり、かつコート層中のるコバルト含有量が心材とコート層の合計に対して3〜7質量%であるオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法であって、
オーバーフロー口付きの反応槽に心材となる水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、コート層を形成するコバルト塩を含む水溶液を連続的に供給するとともに、液温を25℃にして測定した基準でpHを9.5〜10.5の範囲内の一定値に保持されるようにアルカリ水溶液を連続的に供給して、該水酸化ニッケル粒子表面に水酸化コバルトをコーティングしながらオーバーフローさせることにより水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得るコーティング工程と、コーティング工程で得られた水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのスラリーをオーバーフロー口付きの反応槽に供給するとともにアルカリ水溶液と空気を連続的に供給し、該水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのコート層に含有される水酸化コバルトを酸化しながらオーバーフローさせることにより、オキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルを連続的に得る酸化工程を有することを特徴とするオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項2】
上記酸化工程において上記コーティング工程で得られた水酸化コバルトコート水酸化ニッケルをスラリーのままの状態で該酸化工程の反応槽に供給すること特徴とする請求項1に記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項3】
上記コーティング工程の反応槽のオーバーフロー口から、水酸化コバルトコート水酸化ニッケルのスラリーを直接、かつ連続的に上記酸化工程の反応槽に供給すること特徴とする請求項2に記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項4】
上記コーティング工程において前記水酸化ニッケル粒子を含むスラリーと、前記コバルト塩を含む水溶液と、前記アルカリ水溶液を、それぞれ個別にかつ同時に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項5】
前記コバルト塩は、硫酸コバルトおよび/又は塩化コバルトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項6】
上記コーティング工程における反応槽内のスラリー濃度は、水酸化ニッケルとして400〜1000g/lであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項7】
上記コーティング工程において反応槽内に供給する水酸化ニッケル粒子を含むスラリーとコバルト塩を含む水溶液とアルカリ水溶液の合計流量は、該反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が60〜300の範囲の一定値に保持されるように調整されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項8】
上記コーティング工程および酸化工程において、反応槽内のスラリー温度は、40〜80℃の温度範囲で、かつ変動幅±1℃の温度範囲で一定温度に制御されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項9】
上記酸化工程において、前記空気の供給量は、該酸化工程へ供給する単位時間当たりのコバルト量(g/分)を基準にした下記の式(1)を満足する空気量(l/分)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
空気供給量(l/分)≧
コバルト供給量/(58.93×4)×22.4/(0.21×0.2)……(1)
【請求項10】
上記アルカリ水溶液は水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項11】
上記酸化工程におけるスラリー中の水酸化ナトリウム濃度が1g/l以上10g/l以下の濃度範囲で一定値に保持されるように、供給するスラリーと同時に水酸化ナトリウム水溶液を連続的に添加することを特徴とする請求項10に記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。
【請求項12】
上記酸化工程において供給する水酸化コバルトコート水酸化ニッケルスラリーと水酸化ナトリウム水溶液の合計流量は、該反応槽の容積を1分当たりの該合計流量で除した値が120〜600の範囲の一定値に保持されるように調整されることを特徴とする請求項10または11に記載のオキシ水酸化コバルトコート水酸化ニッケルの製造方法。

【公開番号】特開2012−91955(P2012−91955A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239675(P2010−239675)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】