オクトレオチドの放出制御製剤
【解決手段】 少なくとも2ヶ月にわたって治療的に有効な量のオクトレオチドを放出制御するオクトレオチド若しくはその薬学的に許容可能な塩の製剤が提供される。オクトレオチドの放出制御製剤を投与することによって、末端肥大症を治療し、成長ホルモンを減少させ、IGF−Iを減少させ、且つカルチノイド腫瘍及びVIP産生腫瘍に関連した病気を治療する方法が、本明細書において提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月11日付で出願された「Controlled Release Formulations of Octreotide」という表題の米国仮出願第60/660,930号(この参照により本明細書に組み込まれるものである)に対して優先権を主張するものである。
【0002】
この発明は、ホルモン障害の影響を受ける患者の治療に用いることができるオクトレオチドの薬学的組成物に関する。本発明は、好ましくは、放出制御製剤として処方されるものである。
【背景技術】
【0003】
末端肥大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(growth hormone:GH)を生産するために起こるホルモン障害である。それは通常、中年成人に影響を及ぼし、重病および早死にをもたらす。一旦発見されれば、多くの患者の末端肥大症を治療することは可能であるが、それは遅発性であり、且つ多くの場合潜行性の発症であるため、ほとんどの場合、正しく診断されない。
【0004】
本発明は、末端肥大症及び巨人症を含む様々なホルモン障害を治療するために利用することが可能である。その最も一般的な症状の1つは、手及び足の異常成長である。骨の変化は、徐々に患者の顔つきを変える。即ち、額および下顎は突き出し、鼻骨は肥大し、そして歯間は広がる。骨及び軟骨の過剰成長は、多くの場合関節炎に至る。組織が厚くなると組織が神経を止めてしまう可能性があり、手根管症候群を引き起こし、手がしびれ且つ衰弱するという特徴がある。末端肥大症の他の症状には、厚く、きめの粗い、脂性の皮膚、軟性線維腫、唇、鼻、及び舌の肥大化、副鼻腔および声帯の肥大化による音声の低音化、上気道閉塞によるいびき、多汗症および皮膚臭、疲労および衰弱、頭痛、視覚障害、女性の月経周期および時には乳分泌の異常、及び男性のインポテンスが挙げられる。肝臓、脾臓、腎臓、及び心臓を含む人体器官の肥大化の場合もある。
【0005】
末端肥大症の最も深刻な健康状態は、糖尿病、高血圧、及び循環器疾患の危険性の増加である。末端肥大症患者はまた、癌に発達し得る大腸ポリープの発生の危険性も高い。
【0006】
GH−産生腫瘍が幼年期に生じる場合、その結果生じる疾患は末端肥大症よりむしろ巨人症と呼ばれる。成人における過剰にGH産生が発達し、結果として身長の増加に繋がらないように、長骨の成長板の融合は思春期の後に起こる。成長板の融合前に長期にわたって過剰なGHに曝されると、長骨の過剰発育および身長増加が生じる。
【0007】
末端肥大症は、脳下垂体によるGHの長期にわたる過剰産生によって引き起こされる。脳下垂体は、身体機能(例えば、成長および発達、生殖、並びに代謝等)を制御するためのいくつかの重要なホルモンを産生する脳の底部にある小さい腺である。GHは、文字通り、身体の発育を調整するホルモンのカスケードの一部である。このカスケードは、脳下垂体を調整するホルモンを作る視床下部と呼ばれる脳の一部において開始する。これらの成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone−releasing hormone:GHRH)のうちの1つは、脳下垂体を刺激してGHを産生する。他の視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。脳下垂体による血流へのGHの分泌によって、肝臓において、インスリン様成長因子I(insulin−like growth factor I:IGF−I)と呼ばれる他のホルモンが産生される。IGF−Iは、骨および身体の他の組織の成長を実際にもたらす因子である。IGF−Iは次に、GH産生を減らすように脳下垂体に信号を送る。身体のGHRH、ソマトスタチン、GH、及びIGF−I濃度は、互いに、そして睡眠、運動、ストレス、摂食、及び血糖値によって厳重に調整されている。脳下垂体が正常な調節機構に左右されずにGHを作り続けると、IGF−Iの濃度は上昇し続け、骨成長および器官肥大に至る。過剰なGHはまた、糖および脂質代謝の変化を引き起こし、糖尿病を引き起こす可能性もある。
【0008】
90%以上の末端肥大症患者において、GHの過剰産生は、アデノーマと呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍に起因する。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、これらが膨張するにつれて、周囲の脳組織(例えば視神経)を圧迫する。この膨張によって、末端肥大症に頻繁に起こる症状である頭痛および視覚障害がもたらされる。その上、周囲の正常な下垂体組織を圧迫することは、他のホルモンの産生を変化させ、女性の月経および乳分泌の変化、及び男性のインポテンスに至る。
【0009】
一部の患者において、末端肥大症は、下垂体腫瘍ではなく膵臓、肺、及び副腎の腫瘍に起因する。これらの腫瘍がGH自体を産生するため、若しくは、より多くの場合には、これらの腫瘍がGHRH(下垂体を刺激してGHを作らせるホルモン)を産生するためのいずれかの理由によって、これらの腫瘍もまた過剰なGHをもたらす。これらの患者では、血中の過剰なGHRHが測定され、末端肥大症の原因が下垂体の異常に起因するものではないことが確認される。これらの非下垂体腫瘍が外科的に除去されると、GH濃度は減少し、且つ、末端肥大症の症状は改善される。
【0010】
治療計画には、成長した下垂体腫瘍が周囲の脳領域にかける圧力を軽減させるために、正常な下垂体の機能を保持させるために、及び末端肥大症の症状を反転若しくは改善させるために、GH産生を正常レベルにまで減少させることが含まれる。現在では、治療の選択肢として、腫瘍の外科的除去、薬物療法、及び下垂体の放射線療法がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
オクトレオチドは、末端肥大症を治療するために用いられる1つの薬剤である。オクトレオチドは、天然のホルモンであるソマトスタチンの薬理作用と類似した薬理作用を及ぼす。オクトレオチドは、グルカゴン及びインスリンだけでなくGH及びIGF−Iの濃度を低下させる。オクトレオチドはまた、ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)に対する黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)の反応を抑制し、内臓血流量を減少させ、且つセロトニン、ガストリン、血管活性腸管ペプチド、セクレチン、モチリン、及び膵臓ポリペプチドの放出を阻害する。多くの患者において、オクトレオチドを注射した後、GH濃度は1時間以内に減少し、また頭痛は数分で改善された。いくつかの研究によって、オクトレオチドは長期間にわたる治療に効果的であることが示された。オクトレオチドはまた、非下垂体腫瘍に起因する末端肥大症患者を治療するためにうまく用いられている。既に糖尿病に罹っている一部の末端肥大症患者において、オクトレオチドは、インスリンの必要性を減少させることができ、血糖値制御を改善することができる。
【0012】
オクトレオチドは、Sandostatin LAR(登録商標)Depotとして現在利用可能であり、それは、再構成に応じて、酢酸オクトレオチドを含むミクロスフェアの懸濁液である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、末端肥大症患者における長期にわたる維持療法に用いられる唯一の薬剤である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotはまた、転移性カルチノイド腫瘍に関連する重度の下痢および排泄の発症と、VIP分泌腫瘍に関連する激しい水様性下痢との長期治療に用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、滴定期間に続いて、4週間ごとに筋肉注射によって投与される。酢酸オクトレオチドは、即効型製剤であるSandostatin(登録商標)注射液にも利用でき、それは毎日3回注射による投与が必要であった。
【0013】
本発明は、好ましくは少なくとも約2ヵ月、より好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたって治療的に有効な量のオクトレオチドを提供する。本発明はまた、少なくとも約2ヵ月、好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年にわたってオクトレオチドの放出制御を提供する組成物を提供する。
【0014】
本発明の実施形態は、オクトレオチド、その塩、その薬学的組成物、そのプロドラッグ、若しくはその誘導体に関するものであり、これらは、これに限定されるものではないが、末端肥大症、糖尿病、カルチノイド腫瘍に関連した重度の下痢及び排泄の発症と、VIP産生腫瘍に関連する水溶性の下痢とを含む様々な疾病及び病気の効果的な治療に用いることが可能である。
【0015】
本発明の1実施形態において、ヒドロゲル及びオクトレオチドを含む組成物が提供される。前記オクトレオチドは、遊離塩基、塩、若しくは複合形態として存在しても良い。前記組成物は、患者への投与に応じて、治療される病気に対してオクトレオチドの望ましい薬物動態プロファイルを提供することが可能である。
【0016】
本発明の他の実施形態は、患者への埋め込み用のオクトレオチドを含む薬学的組成物を対象とする。1実施形態において、埋め込み可能な組成物は、患者の皮膚の下への皮下移植に際して、一貫し、所定の、且つ制御されたオクトレオチドの放出を提供するヒドロゲルを更に有しても良い。好ましくは、ヒドロゲルは、メタクリル酸系ポリマー及びポリウレタン系ポリマーを含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、長期間にわたって望ましいCssを有するオクトレオチドの薬物動態プロファイルを患者に提供するインプラントにおいて、治療的有効量のオクトレオチドを含む安定した薬学的組成物である。前記組成物は、患者内において、治療的に有効な濃度のオクトレオチドを確立し、及び、若しくは、維持するために用いられても良い。好ましくは、患者内のオクトレオチドが少なくとも約2ヵ月以上、及びより好ましくは約6ヵ月以上にわたって治療的有効濃度に達することができるように、オクトレオチドは時間とともに放出される。より好ましい実施形態において、オクトレオチドの放出の望ましくない急増若しくはピークが回避される。好ましい実施形態において、前記薬学的組成物は、ヒドロゲル内に含まれるオクトレオチド、より好ましくは酢酸オクトレオチドを有する。他の好ましい実施形態において、前記薬学的組成物は、ポリウレタン系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー内に含まれるオクトレオチド、より好ましくは酢酸オクトレオチドを有する。本発明の薬学的組成物はまた、1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を有しても良い。
【0018】
本発明の他の実施形態は、少なくとも約2ヵ月、及びより好ましくは少なくとも約6ヵ月以上の長期間にわたって、患者の血漿中のオクトレオチドの薬物動態学的放出プロフィールを提供するポリマー容器に含まれる治療的有効量のオクトレオチドを含む組成物の安定放出制御埋め込み可能製剤である。
【0019】
好ましくは、前記組成物の埋め込み可能製剤は、本発明の親水性モノマーの重合によって形成されるインプラントである。好ましい実施形態において、前記埋め込み可能製剤は、例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA)及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA)等の親水性コポリマー内に含まれる、治療的有効量のオクトレオチド(例えば、酢酸オクトレオチド)の親水性インプラントを含む。本発明のインプラント構造は、1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでも良い。更なる実施形態において、前記組成物の埋め込み可能な製剤は、ポリウレタン系ポリマーから形成されるインプラントである。
【0020】
本発明のオクトレオチド製剤は、放出制御プロフィールを提供すると共に、化学的及び物理的な安定性を前記組成物に与える。この強化された安定性は、望ましい放出制御プロフィールを維持すると共に、オクトレオチドの安定性が達成される本発明の組成物および剤形において最も顕著に観察される。具体的には、本発明の埋め込み可能製剤は、優れた吸湿耐性を示すと共に、好ましくは少なくとも2ヵ月、より好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたって、治療的有効濃度のオクトレオチドの確立を可能にするオクトレオチドの放出プロフィールを提供する。
【0021】
本発明の1実施形態において、患者において約0.1ng/ml〜約9ng/mlのインビボ平均Css、より好ましくは1ng/ml〜約2ng/mlのインビボ平均Cssのオクトレオチドを提供する、オクトレオチドを有する放出制御製剤が提供される。1実施形態において、前記製剤は、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチド、より好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含む。前記製剤は、インプラント、ポンプ、若しくは他の同様の放出制御装置から選択されても良い。好ましい実施形態において、前記製剤は、約2ヶ月〜約2年、より好ましくは約6ヵ月〜約1年、より好ましくは6ヵ月の期間にわたって治療的有効量のオクトレオチドを放出する。
【0022】
更なる実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤は、親水性コポリマーを有しても良い。好ましい親水性コポリマーは、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルを含む。1実施形態において、前記コポリマーは、約20%のメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及び約80%のメタクリル酸ヒドロキシプロピルを有する。前記製剤は、更に、ステアリン酸マグネシウムを有しても良い。他の実施形態において、前記製剤は、更に、ヒドロキシプロピルセルロースを有しても良い。
【0023】
他の実施形態において、オクトレオチドの前記放出制御製剤は、ポリウレタン系ポリマーを有しても良い。
【0024】
他の実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤を投与することを有する、患者を治療する方法が提供される。好ましい1実施形態において、前記放出制御製剤は、それを必要とする患者において、約0.1ng/ml〜約9ng/mlのオクトレオチドのインビボ平均Cssを維持する。
【0025】
本発明の他の実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤を投与することを有する、末端肥大症若しくは末端肥大症と関連する症状を治療する方法が提供される。好ましくは、前記放出制御製剤は、長期間にわたって、前記オクトレオチドの平均Cmax平均を約0.1ng/ml〜約4ng/mlに維持することが可能である。好ましくは、前記長期間は、約2ヵ月〜約2年、より好ましくは約6ヵ月である。
【0026】
更なる実施形態において、約40〜約90ミリグラム、より好ましくは約50ミリグラム、より好ましくは約83ミリグラムのオクトレオチドを有する少なくとも1つのヒドロゲルインプラントを投与する工程を有する末端肥大症若しくは末端肥大症と関連した症状を治療する方法が提供される。特定の方法において、1のヒドロゲルインプラントが投与されても良く、他の方法において、2若しくはそれ以上のヒドロゲルインプラントが投与されても良い。前記ヒドロゲルインプラントは、約2ヵ月〜約2年ごとに、好ましくは約6ヵ月ごとに投与されても良い。
【0027】
本発明の更なる実施形態は、親水性コポリマーとオクトレオチドとを有する治療用組成物である。1実施形態において、前記オクトレオチドは、少なくとも2ヵ月〜約24ヵ月にわたって、約0.1ng/ml〜約9ng/mlのCssを維持する速度で放出されても良い。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、エチレン不飽和親水性モノマーA及びエチレン不飽和親水性モノマーBの混合物を有する。1つの好ましいモノマーAは、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、約15%〜約70%、より好ましくは約20%の前記親水性コポリマーを有しても良い。1つの好ましいモノマーBは、メタクリル酸ヒドロキシプロピルである。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、約80%の前記親水性コポリマーを有しても良い。このような治療用組成物は、少なくとも2ヵ月〜約24ヵ月にわたって、約1ng/ml〜約2ng/mlのオクトレオチドのCssを維持する割合で放出され得る。
【0028】
本発明の更なる実施形態は、オクトレオチドを有する埋め込み可能なドラッグデリバリーデバイスを提供し、前記デバイスは少なくとも約2ヵ月〜約24ヵ月にわたって治療的有効量のオクトレオチドを供給する。1実施形態において、前記治療的に有効な量のオクトレオチドは、1日につき約20μg〜約800μgである。他の実施形態において、前記治療的に有効な量のオクトレオチドは、1日につき約30μg〜約300μgである。
【0029】
本発明の他の実施形態は、オクトレオチドを有する埋め込み用の放出制御製剤であり、前記製剤は、インビトロで約6ヵ月以上にわたって、1日あたり約30μg〜約250μgの速度で、より好ましくはインビトロにおいて1日あたり平均して約100μgの速度で、前記オクトレオチドの放出を可能にするのに効果的な親水性ポリマーに、オクトレオチドを含むものである。
【0030】
放出制御製剤は埋め込み用のオクトレオチドを有し、前記製剤は、約6週間後に前記製剤から約20%の前記オクトレオチドだけを、及び約6ヵ月後に前記製剤から約60%の前記オクトレオチドを、インビトロで放出可能にするのに効果的な親水性ポリマーを含む。
【0031】
本発明の他の実施形態において、オクトレオチド、HEMA、HPMAを有するインプラントが提供される。前記インプラントは、例えばヒドロキシプロピルセルロース及び/若しくはステアリン酸マグネシウムを含む薬学的に許容可能な賦形剤を更に有しても良い。
【0032】
本発明の組成物は、患者の病気の治療に用いられても良く、それを必要とする患者の治療的有効濃度のオクトレオチドを確立することを含む。前記組成物は、約6ヵ月毎に前記組成物を投与、好ましくは埋め込むことによって、患者内のオクトレオチド濃度を高めるために用いられても良く、及び/若しくは患者内のオクトレオチドの治療的有効濃度を維持するために用いられても良い。本発明の組成物は、オクトレオチドの最初の放出における大きいピークを回避するように処方されても良い。本発明の組成物は、それを必要としている患者に投与される場合に、GH若しくはIGF−Iの増加した濃度によって特徴づけられるホルモン障害を治療するために提供される。更に、本発明の組成物は、それを必要とする患者に投与される場合に、カルチノイド腫瘍及びVIP産生腫瘍に関連する症状を治療するために提供される。好ましくは、前記組成物は、オクトレオチドの治療的に有効な血漿濃度が少なくとも約2ヵ月、好ましくは少なくとも約6ヵ月、より好ましくは約12ヵ月、及び最高2年の期間にわたって患者内に維持されるように、ヒドロゲル(好ましくはメタクリル酸若しくはポリウレタン系ポリマー)に治療的に有効な量のオクトレオチドを含む安定した放出制御インプラントである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の組成物及び方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の分子、組成物、方法論、若しくはプロトコル(これらは変更されても良い)に限定されるものではないことを理解すべきである。また、発明を実施するための最良の形態において使用される用語は、特定の変形例若しくは実施形態のみを記載することを目的とするものであり、添付の請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定することを目的としないことも理解される。本明細書に用いられる用語は、当業者に認識され、且つ知られている意味を有するが、便宜上及び完全を期して、特定の用語及びそれらの意味を後述する。
【0034】
本明細書及び添付の請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が明らかに他の意味を指示する場合を除き、複数形への言及を含むことにも留意しなければならない。その他の意味を定義しない限り、本明細書に用いられるすべての技術的な及び科学的な用語は、従来技術において当業者が共通に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び物質と類似する若しくは同等のいかなる方法及び物質は、本発明の実施形態の実施若しくは試験において用いられても良いが、好ましい方法、装置、及び物質はここに記載される。本明細書に記載されるすべての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で、その参照により本明細書に組み込まれるものである。本明細書において、本発明が先行発明に基づいたこのような開示に先行する権利を有するものではないことの承認として解釈されることはない。
【0035】
本明細書で用いられる用語「約」は、それが使用される数のプラス若しくはマイナス10%の数値を意味する。例えば、約50%は45%〜55%の範囲を意味する。
【0036】
「放出制御製剤」は、所定の、治療的有効量の薬物若しくは他の活性薬剤(例えばポリペプチド若しくは合成化合物等)を、長期間にわたって一貫して放出するように設計され、その結果、望ましい治療効果を達成するのに必要な治療の回数が減少するような製剤を指す。本発明に関しては、制御製剤は、成長ホルモン濃度の減少、IGF−I濃度の減少、若しくはこれに限られるものではないが異常成長を含む末端肥大症と関連した症状の改善の点において、望ましい効果を達成するのに必要な治療の回数を減少させる。本発明の放出制御製剤は、被験者において望ましい薬物動態プロファイルを達成し、好ましくは実質的にデリバリー環境へ配置された直後に活性薬剤の放出が開始され、続いて一貫した、持続した、好ましくはゼロ次の、若しくはゼロ次に近い活性薬剤の放出が起こる。
【0037】
用語「患者」及び「被験者」は、ヒトを含むすべての動物を意味する。患者若しくは被験者の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、及びブタが挙げられる。
【0038】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、及びプロドラッグ」は、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、及びプロドラッグを指し、それらは、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などなく患者の組織との接触における使用に適したものであり、相当な利点/危険率に比例し、且つ本発明の化合物の可能性のある双性イオン形と同様にそれらの使用目的に応じて効果的である。
【0039】
用語「プロドラッグ」は、例えば、血液中の加水分解によってインビボで急速に変化する上記製剤の親化合物を産生する化合物を指す。T.Higuchi and V.Stella,"Pro−drugs as Novel Delivery Systems,"Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(いずれもこの参照により本明細書に組み込まれるものである)に詳細な議論が提供される。
【0040】
更に、本発明の化合物は、薬学的に許容可能な溶媒(例えば水、エチルアルコール等)を有する溶媒和形だけでなく非溶媒和形で存在しても良い。一般に、溶媒和形は、本発明の目的のための非溶媒和形と同等であると判断される。
【0041】
用語「塩」は、本発明の化合物の、比較的に無毒性の無機および有機酸性付加塩を指す。これらの塩は、前記化合物の最終的な単離および精製の間に、若しくは遊離塩基形の精製された化合物を適切な有機又は無機酸と別々に反応させ、上記のような形の塩を単離することによって、本来の状態で用意されても良い。代表的な塩としては、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸剤、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩メシラート、グルコヘプトン酸、ラクトビオン酸、及びラウリルスルホン酸等が挙げられる。これらは、無毒性アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等と同様に、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ及びアルカリ土類金属に基づく陽イオンを含んでも良い(例えば、S.M.Barge et al.,"Pharmaceutical Salts,"J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19(この参照により本明細書に組み込まれるものである)を参照)。
【0042】
「治療」は、患者に対する薬剤の投与若しくは医療処置の実行を指し、いずれも予防法(防止)、若しくは患者が被る事例における病気又は疾病を治癒することを指す。
【0043】
「治療的有効量」は、病状と関連した症状を減少させ、予防し、若しくは改善するのに十分な量である。ホルモン療法の文脈において、それはまた、疾病又は疾患における身体機能若しくはホルモン濃度を正常化することを意味しても良い。例えば、オクトレオチドの放出制御製剤の治療的に有効な量は、例えば患者の成長ホルモン若しくはIGF−I濃度を効果的に低下させるように、望ましい効果を達成するために算出される所定の量である。
【0044】
オクトレオチドは、以下のアミノ酸配列を有するオクタペプチドである。L−システインアミド,D−フェニルアラニル−L−システイニル−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−(R*,R*)]。オクトレオチドの構造を以下に示す。
【0045】
【化1】
【0046】
化学式はC49H66Ni0O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その薬効分類は、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば遊離形、塩の形、若しくはそれらの複合体の形で存在しても良い。酸付加塩は、例えば有機酸、ポリマー酸、及び無機酸で形成されても良い。酸付加塩には、例えば塩酸塩、及び酢酸塩が含まれる。複合体は、例えば、オクトレオチドに、無機物(例えば無機塩)、若しくは水酸化物(Ca及びZnの塩)を添加することにより、及び/若しくは有機高分子物質を添加することにより形成される。前記酢酸塩は、本発明の製剤の好ましい塩である。
【0047】
本発明の実施形態は、以下の目的を達成することができるドラッグデリバリーデバイスを提供する。治療効果を最大にして、不必要な副作用を最小化する放出制御速度(ゼロ次放出速度)。治療を終えるために必要である場合に、前記装置を回収する簡単な方法。吸収の変動が少なく、且つ初回通過代謝がないバイオアベイラビリティの増加。
【0048】
本発明の1つの観点は、放出制御ヒドロゲル装置に酢酸オクトレオチドを含む放出制御の薬学的組成物である。本発明の組成物は、患者への投与に応じて、少なくとも2ヵ月、好ましくは少なくとも約6ヵ月以上、最高約2年にわたって、オクトレオチドの放出プロフィールを提供することができる。好ましくは、オクトレオチドはヒドロゲルの中に含まれ、前記製剤は長期間にわたって治療的有効量のオクトレオチドを放出する。他の好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルは、メタクリル酸系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーを有する。治療的有効量は、患者若しくは被験者に投与される場合に、末端肥大症の症状を改善するオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。好ましい実施形態において、前記製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を更に含んでも良い。
【0049】
本発明の組成物が患者に投与されるとき、患者の血漿中のオクトレオチド濃度は、時間とともに(放出プロフィール)、少なくとも2ヵ月、好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたる。前記組成物は、ヒト患者におけるオクトレオチドの定常状態で、約0.1〜約9ng/ml、好ましくは約1〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2〜約1.6ng/mlの平均血漿濃度を提供する可能性がある。定常状態とは、投薬間隔にわたって投与される薬剤の量が、その同じ期間にわたって除去される薬剤の量と等しくなる点である。
【0050】
前記ヒドロゲルは、エチレン不飽和モノマーA及びエチレン不飽和モノマーB(例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA)及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA))の混合物の重合によって形成される所定の平衡含水量(equilibrium water content:EWC)値を有する均一なホモポリマー若しくはコポリマーであっても良い。所定のEWCは、親水性モノマーA(ホモポリマーA)のヒドロゲルホモポリマーと親水性モノマーB(ホモポリマーB)のヒドロゲルホモポリマーとのEWC値を決定する工程、均一なコポリマーABのEWC値とそのコポリマーABの化学組成との関係を決定する工程、対象のEWC値を選択して、その対象のEWC値を有するコポリマーABの化学組成を決定する工程、前記対象のEWC値を有するコポリマーABを得るのに十分な量で、モノマーA及びモノマーBの重合可能な混合物を形成する工程、及び前記対象のEWC値によって特徴づけられるコポリマーABを得るように、重合反応を遂行する工程によって算出されても良い。
【0051】
語句「コポリマーAB」若しくは「コポリマーABは、基本的にモノマーA単位及びモノマーB単位から成る」は、モノマーA及びモノマーBの付加共重合が、前記モノマーの重合可能なエチレン結合によって遂行されることを意味する。例として、モノマーAがメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位及び繰り返しモノマーB単位を含む。
【0052】
文脈が他の意味を指し示さない限り、用語「コポリマー」は、少なくとも2つのエチレン不飽和モノマーの混合物を重合させることによって作られるポリマーを含む。
【0053】
用語「HEMA単位」は、以下の構造を意味する。
【0054】
【化2】
【0055】
この構造は、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(「2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA」)を含む親水性材料を重合させることによって得られるポリマー中に繰り返される。
【0056】
用語「HPMA単位」は、以下の構造を意味する。
【0057】
【化3】
【0058】
この構造は、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(「hydroxypropyl methacrylate:HPMA」)を含む親水性材料を重合させることによって得られるものである。
【0059】
親水性製品に有用な液体の重合可能な材料としては、多種多様な重合可能な親水性のエチレン不飽和化合物、特に、エステル化可能な水酸基と、メタクリル酸及びアクリル酸(例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸塩、メタクリル酸ジエチレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸プロピレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸ジプロピレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸グリシジル及びアクリル酸塩、メタクリル酸グリセリル及びアクリル酸塩等)のモノアルキレン及びポリアルキレンポリオール等の少なくとも1つの付加的な水酸基とを有するポリヒドロキシ化合物を有するアクリル酸若しくはメタクリル酸のモノエステル等の親水性モノマー、2−アルケンアミド(例えばアクリルアミド、メタクリルアミド等)、N−アルキル及びN,N−ジアルキル置換アクリルアミド及びメタクリルアミド(例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等)、N−ビニルピロリドン、アルキル置換N−ビニルピロリドン(例えばメチル置換N−ビニルピロリドン等)、N−ビニルカプロラクタム、アルキル置換N−ビニルカプロラクタム(例えばN−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタム等)が挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸はまた、これらの製剤に有用である場合がある。
【0060】
重合反応において、親水性モノマーの混合物を使用した。モノマーの型及び比率については、意図した用途若しくは使用のための望ましいEWC値を水和において所有する均一なポリマー、好ましくは架橋した均一なポリマーを得るように選択した。この値は、例えばHEMA及びHPMAの混合物の比率を変化させて、異なるモノマー比率を用いる一連のコポリマーを準備する工程、前記コポリマーのEWC値を確認する工程、HPMA/HEMAコポリマーにおける%HPMA(若しくは%HEMA)単位と前記コポリマーの重量パーセントEWCとの関係をプロットする工程によって予め決めることができる(図1を参照)。
【0061】
1実施形態において、キセロゲルとしての前記親水性インプラントは、容易に水を吸収する。水和状態において、それはヒドロゲルと呼ばれる。いずれの形においても、それは宿主に対して生物学的適合性を有し、且つ非毒性であり、生物分解性ではない。当然ながら、それは水膨潤性であり、且つ水不溶性である。ヒドロゲルが水和の最大レベルに到達するとき、そのヒドロゲルの含水量を「平衡含水量」と呼ぶ。前記ヒドロゲル(いずれの水和状態でも)のパーセント含水量は、以下のように決定される。
【0062】
【数1】
【0063】
一部の例において、特定の親水性モノマー混合物の重合は、水性媒体において、様々な範囲まで溶解する均一な親水性コポリマーをもたらす可能性がある。そのような場合、例えば最高3パーセントの少量の共重合性ポリエチレン不飽和架橋剤は、水膨潤性であり且つ水不溶性の、均一な架橋コポリマーを得るために、前記モノマー混合に含まれ得る。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、約38%のEWC値を有する。HEMA及びHPMAの架橋コポリマーは、38%以下のEWC値を有する。一方、HEMA及びアクリルアミドの架橋コポリマーは、例えば約75重量%、及びそれ以上に向けて、約38w/v%以上のEWC値を示す。従って、特定の用途のためのヒドロゲルデリバリーシステムに必要とされる、活性化合物(例えば薬剤)の有用な若しくは有効な溶出速度に依存して、当業者は、本明細書に開示される教示に従って、求められる速度で前記薬剤を溶出させるコポリマーヒドロゲル膜を目的に応じて作ることができる。好ましいコポリマーは、約15%〜約70重量%のHEMA単位と、約85〜30重量%の第2のエチレンモノマーの単位とを含み、約20%〜約75%、好ましくは約25%の範囲の所定のEWC値を有する。非常に好ましい均一なコポリマーは、約80重量%のHPMAと、約20重量%のHEMAとを含む親水性モノマー混合物から作られる。更なる実施形態において、前記混合物は、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート(「trimethylolpropane trimethacrylate:TMPTMA」)等の少量のポリエチレン不飽和架橋剤を更に含んでも良い。
【0064】
本発明の様々な観点は、均一なポリマー構造が上述の親水性モノマーの混合物の重合を介して形成される均一な親水性コポリマーと、デリバリーシステムにおける均一なポリマーカートリッジを利用するドラッグデリバリーデバイスとを含む。親水性モノマー及び疎水性モノマーの混合物の重合は、不均一なポリマーを作り出す。疎水性セグメントが前記ポリマーに存在する場合、界面自由エネルギーは増加し、従って、動物への埋め込み後のタンパク質吸着及び鉱化が強化される。ポリHEMAのヒドロゲルを、ゼロに近い界面自由エネルギーを有するように測定した。前記界面自由エネルギーの解釈によれば、完全に親水性成分であるヒドロゲルは、身体組織との生物学的適合性を有するように強く見える。わずかに架橋したポリHEMAは、(比較的少量の重合架橋剤を無視する)比較的一定の特徴若しくは値の均一な親水性「ホモポリマー」である。付加的な特徴若しくは特性を与えるために「ホモポリマー」ポリHEMAを変える技術は困難であり、時間がかかり、多くの場合、一定しない特性挙動をもたらす。一方で、HEMAと様々な多量の他の重合可能な親水性コモノマーとの混合物は、重合化により(所定の)目的に応じて作られた特性を有する予測可能な均一な親水性コポリマーを与えることが可能である。
【0065】
重合可能な反応媒体に含まれ得る有用な架橋剤は、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン不飽和化合物(例えばジ−、トリ−、及びテトラ−エチレン不飽和化合物)、特に、例えば、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコール及びジアクリル酸塩、ジメタクリル酸プロピレングリコール及びジアクリル酸塩の二不飽和架橋化合物を含む、又は含まない三不飽和架橋剤、及び以下のポリオール、すなわちトリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,1,1―トリメチロールプロパン、及び他のポリオールのジ−、トリ−、及びテトラ−アクリル酸塩若しくはメタクリル酸エステルを含む。
【0066】
重合反応は、大量に若しくは不活性溶媒によって実行することが可能である。適した溶媒には、水、多価アルコール(例えばグリコール、グリセリン、ジオキサン等)に加えて水溶性の低脂肪族の一価アルコール等の有機溶媒、及びそれらの混合物が含まれる。
【0067】
重合可能なエチレン不飽和化合物の触媒作用に有用な化合物は、フリーラジカル化合物、及び/若しくは、例えば有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、及びアルカリ金属硫酸塩等のビニル重合において一般的に用いられる型の開始剤を含む。実例としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)過酸化二炭素酸塩、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイル過酸化物、過酸化アセチル、ジ−n−プロピル過酸化二炭素酸塩、ジ−t−ブチル過酸化物、ジ−sec−ブチル過酸化二炭素酸塩、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムが挙げられる。好ましい触媒は、例えば、tert−ブチルperoctoate、過酸化ベンゾイル、及びジ(secブチル)過酸化二炭素酸塩等の、例えば約20〜80℃の適度に低温で効果的であるものである。従来の酸化還元重合触媒を使用しても良い。好ましくは、エチレン化合物の重合は、例えば紫外線、X線、ガンマ放射線、マイクロ波、若しくは他のよく知られた形の放射線等の放射線を用いて遂行することができる。紫外線治療のための好ましい触媒は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒及び/若しくは開始剤及び/若しくは放射線は、重合反応を最適化するように、触媒的有効量で用いられる。
【0068】
生物学的に活性な化合物を長期にわたって制御された速度で届けるような埋め込み型薬剤デバイスを作るために、本発明は、ポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質、若しくは熱硬化性物質の用途に焦点を合わせている。ポリウレタンポリマーは、使用するポリウレタンの型に応じて、好ましくは、押出成型、(反応)射出成形、圧縮成形、若しくは回転成形によって1若しくは2の開放端を有するシリンダー状の中空管に作られる(例えば米国特許第5,266,325号及び第5,292,515号を参照。この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。
【0069】
熱可塑性ポリウレタンは、押出成型、射出成形、若しくは圧縮成形で処理され得る。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形、若しくは回転成形で処理され得る。前記シリンダー状の中空管の寸法は、非常に決定的であり、できるだけ正確であることを必要とする。
【0070】
ポリウレタン系ポリマーは、多機能ポリオール、イソシアン酸塩、及び連鎖延長剤から合成される。各ポリウレタンの特徴は、その構造に起因する可能性がある。
【0071】
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアナート、及び二官能基連鎖延長剤から作られる(例えば、米国特許第4,523,005号及び第5,254,662号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。マクロジオールは、柔らかい領域を形成する。ジイソシアナート及び連鎖延長剤は、固い領域を形成する。その固い領域は、前記ポリマーの物理的な架橋部位として役立つ。これらの2つの領域の比率を変化させることによって、前記ポリウレタンの物理的な特徴を変えることができる。
【0072】
熱硬化性ポリウレタンは、(二機能より大きい)多機能ポリオール及び/若しくはイソシアン酸塩及び/若しくは連鎖延長剤で作られ得る(例えば、米国特許第4,386,039号及び第4,131,604号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。熱硬化性ポリウレタンはまた、化学的に架橋するためのポリマー鎖及び適切な架橋剤及び/若しくは開始剤における不飽和結合を誘導することによっても作られ得る(例えば、米国特許第4,751,133号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。架橋部位の量及びそれらを分布する方法を制御することによって、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0073】
要求される特性に応じたポリオールの主鎖を変更させることによって、様々な官能基をポリウレタンポリマー鎖にもたらすことが可能である。前記装置が水溶性の薬剤のデリバリーのために用いられる場合、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、及びヒドロキシ基等の親水性ペンダント基は、前記ポリマーの親水性を増加させるために、ポリオールに組み込まれる(例えば、米国特許第4,743,673号及び第5,354,835号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。前記装置が疎水性薬剤のデリバリーのために用いられる場合、アルキル基、シロキサン基等の疎水性ペンダント基は、ポリマーの疎水性を増加させるために、ポリオールに組み込まれる(例えば、米国特許第6,313,254号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。前記活性物質の放出速度はまた、前記ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性によっても制御され得る。
【0074】
好ましい実施形態において、シリンダー状の形状のインプラントは、その中心にオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドと、選択的に薬学的に許容可能な担体とを含む。前記インプラントの膜の厚さ(内部と外部表面との間)は実質的に均一であって、含有物質を放出するための律速障壁として役立つものである。このようなインプラントは可塑化あるいは水和されても良く、様々な医療用途に使用するための他の幾何学的形状の物品に再形成されても良い。
【0075】
移植可能な製剤の製造では幾つかの因子が考慮される。放出特性(遅延時間、放出速度、及び期間)が決定され、親水性ポリマー物質が同定され、膜(律速膜として)を介した活性剤の拡散が測定される。所定の活性剤に対する律速膜の水和特性は、選択ポリマーのフィルムを調製し、当該技術分野で周知の2区画垂直ガラスセル(two compartment vertical glass cell)を用いて拡散試験を行うことにより、容易に測定可能である。
【0076】
拡散開始時における拡散係数及び含水量(すなわち、この値以下では実質的に拡散は起こらないものである。以下「%Hd」)を測定する。様々なポリマーから一連の膜が調製される。この膜はその後、限界容量まで水和し、平衡含水量を測定する。完全に水和した膜を前記2区画垂直ガラスセル中に入れ、様々な平衡含水量における膜物質を介した高分子組成物の拡散を測定してプロットする。最大限に水和した膜では拡散は検出されないものであり(すなわち、活性剤は受容体セルに全く拡散しない)、この膜の平衡含水量が試験システムの%Haとなる。これは、透過性に対する平衡含水量の曲線をプロットすることにより達成される。
【0077】
前記透過性の結果(拡散係数)は、拡散に関するフィックの第一法則に従って以下の方程式を用いて得られる。
【0078】
【数2】
【0079】
式中、dQ/dtは膜物質を介した流量であり(ju,g/hr)、累積輸送に対する時間の曲線の直線部分の勾配として測定されるものであり、Aは膜面積(cm2)であり、Pは膜の透過係数(cm2/hr)又はDKdであって、Dは膜の拡散(cm2/hr)であり、Kdは膜/供与体溶液の分配係数であり、lは実験の終点で測定される膜の厚さ(cm)であり、Cdは供与体溶液の濃度(μg/cm3)である。
【0080】
その後、遅延放出特性を測定する。別の一連のポリマー膜を調製し、架橋剤及びモノマーの量を再び変化させることが可能である。これらの膜をその後水和させるが、部分的に、すなわち%Hd以下の含水量に水和させる。この部分的に水和させた膜を2区画垂直ガラスセルに入れ、膜を介した活性化合物の分散を測定し、時間に対してプロットする。供与体及び受容体セルのための緩衝溶液を選択し、前記部分的に水和させた膜に接触させて、更に、送達環境下において水和させる場合と殆ど同じ速度で水和させる。拡散試験の開始時、すなわち活性剤を供与セルに加えた時点と、前記受容体セル中の前記活性剤の薬学的有効濃度を検出した時点との間の時間が、ポリマーと初期水和率とを組み合わせた放出遅延時間である。
【0081】
シリンダー状のデバイスの物理的な寸法を決定するためには、輸送される活性剤の全量を測定しなければならない。これが目的とする1日投与量及び輸送期間を有する生成物である。好ましい実施形態において、前記輸送期間は少なくとも約2ヶ月であり、より好ましくは約6ヶ月であり、最大約2年である。前記目的とする1日投与量は、たとえば1日あたり約10〜約1000μgのオクトレオチドであり、好ましくは1日あたり約20〜約800μgのオクトレオチドであり、より好ましくは1日あたり約30〜300μgのオクトレオチドである。
【0082】
シリンダー状デバイスのシリンダー状貯留層(中心)の容量は、IIri2hと同量であり、ここで、riは前記貯留層の半径であり、hはその高さである。シリンダーからの定常状態放出の式は、以下の通りである。
【0083】
【数3】
【0084】
式中、r0は前記シリンダー状デバイスの外径であり、Cdは供与体溶液、すなわち担体中の薬物濃度である。定常状態放出は、Cdが飽和で維持されているときに得られる。目的とする持続放出に必要な膜の厚さは、ro−riである。
【0085】
使用する活性剤の量は、目的とする1日投与量によってのみだけでなく、投与レベルが持続される日数にも依存する。この量は実験的に算出されるが、実際に送達される投与量は、前記デバイスにおいて使用される場合、物質と担体との任意の相互作用による機能でもある。
【0086】
一旦、適切なポリウレタンポリマーが選択されると、次の工程は、シリンダー状のインプラントを作る最適な方法を決定する工程である。
【0087】
熱可塑性のポリウレタンに対しては、一貫した物理的寸法を有する2つの開放末端がある中空管を形成するために、精密押出成形及び射出成形を選択することが好ましい。この貯留層は、活性剤及び担体含む適切な製剤を自由に充填すること、或いは活性剤の充填を最大限にするために事前に作製したペレットで満たされることが可能である。前記製剤を前記中空管に充填する前に、1つの開放末端を密閉する必要がある。前記2つの開放末端を密閉するために、事前に作製した2つの末端プラグを使用しても良い。この密閉する工程は、熱又は溶媒、或いは他の別の方法を適用させて達成可能であり、前記末端は好ましくは永久的に密閉される。
【0088】
熱硬化性ポリウレタンに対しては、硬化機構に応じて、精密反応射出成形又は回転成形を選択することが好ましい。前記硬化機構が熱を介して実施された場合には反応射出成形が使用され、前記硬化機構が光及び/又は熱を介して実施された場合には回転成形が用いられる。好ましくは、1つの開放末端を有する中空管は回転成形によって作られる。好ましくは、2つの開放末端を有する中空管は反応射出成形によって作られる。この貯留層は、熱可塑性ポリウレタンと同様の方法によって充填される。
【0089】
好ましくは、開放末端を密閉するためには、適切な光及び/又は熱開始熱硬化ポリウレタン製剤を用いて前記開放末端を充填し、前記製剤を光及び/又は熱によって硬化する。より好ましくは、事前に作製した末端プラグを使用して前記開放末端を密閉しても良く、光及び/又は熱開始熱硬化ポリウレタン製剤を前記事前に作製した末端プラグと前記開放末端との間の表面に適用させて、光及び/又は熱、或いは別の任意の方法を用いて前記製剤を好ましくは永久的に硬化させても良い。
【0090】
最終工程は、活性剤に必要な送達速度を達成するために、インプラントを調整及び刺激する工程を含む。活性成分の種類によって、親水性又は疎水性の適切な調整及び刺激媒体を選択する。親水性活性剤に対しては水をベースにした媒体が好ましく、疎水性活性剤に対しては油をベースにした媒体が好ましい。
【0091】
当該デバイスの形状をできる限り精密に保持するために、前記シリンダー状のデバイスは、好ましくは熱可塑性ポリウレタンポリマーのための精密押出成形又は精密成形、及び熱硬化性ポリウレタンポリマーのための反応射出成形又は回転成形によって製造される。
【0092】
カートリッジは、1つの末端を閉じるか、或いは両末端を開放させて作製可能である。前記開放末端は、滑らかであって且つ確実に密閉された末端を確保するために、事前に製造した末端プラグで穴が閉じられていてもよい。前記活性物質を最大限に充填するために、前記固体活性剤及び担体はペレット形状に圧縮されていてもよい。
【0093】
当該インプラントの位置を特定するために、放射線不透過性物質を前記貯留層に挿入するか、或いは前記放射線不透過性物質を前記カートリッジを密閉するために使用した末端プラグに作り替えることによって、前記放射線不透過性物質を前記送達デバイスに組み込むことができる。
【0094】
様々な実施形態において、本発明の新規な製剤は、これらに限らないが、懸濁媒体、溶媒、水溶液系、及び固体基質又はマトリックスを含む。
【0095】
前記担体として有用な懸濁媒体及び溶媒は、例えば、シリコン油(特に医療グレードのもの)、コーン油、ヒマシ油、ピーナッツ油、及びゴマ油などの油、ヒマシ油とエチレンオキシドとの凝縮生成物、低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル、低級アルカノール、グリコール、及びポリアルキレングリコールなどを含む。
【0096】
前記水溶液系は、例えば、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水又は生理食塩水中のデキストロースなどを含む。前記水溶液系における電解質の存在は、その水溶液系における高分子薬剤の溶解度を低下させる傾向がある。
【0097】
前記固体基質又はマトリックスは、例えば、デンプン、ゼラチン、糖(例えばグルコース)、天然ゴム(例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)などを含む。好ましい実施形態において、当該薬学製剤は、更に、約2%〜約20%、より好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0098】
前記担体はまた、保存剤、安定剤、湿潤剤などのアジュバントも含むものであってもよい。
【0099】
本発明を実施する上で有用な水和液体は、一般的に、例えば体液、滅菌水、涙液、生理食塩水、リン酸緩衝液など、活性化合物が放出される環境を想定した液体である。水以外の液体が水和液体として有用であるが、親水性の膜が水和されている度合いは、膜の「水分含量」と称される。
【0100】
一旦、貯留層が充填された状態でカートリッジの両端が密閉されると、このカートリッジは、一定の送達速度を確保にするために、適切な期間、調整及び刺激される。
【0101】
前記薬物送達デバイスの調整及び刺激は、前記貯留層を取り囲むポリマーの中に活性剤(薬物)を充填する工程を含み、これによって実際にインプラントが使用される前の前記活性剤の損失を防がれる。前記調整及び刺激工程に使用する条件は、活性剤、及びそれらの工程が実施される温度と媒体によって異なる。前記調整及び刺激の条件は、幾つかの例においては同じである場合がある。
【0102】
前記薬物送達デバイスの調製方法における調整及び刺激工程は、特定の薬物の決められた放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含む前記インプラントを調整及び刺激する工程は、好ましくは水溶性媒体中、より好ましくは生理食塩溶液中で行われる。疎水性薬物に対しては、前記媒体は、血漿のような媒体であっても良く、これに限らないが、シクロデキストリンを含む。前記調整及び刺激工程は、3つの特定要因、すなわち温度、培体、及び時間を制御することにより実施される。
【0103】
前記薬物送達デバイスの調整及び刺激工程は、前記デバイスが設置される媒体により影響を受けることが当業者によって理解される。例えば、ヒストレリン及びナルトレキソンインプラントは、食塩溶液中で調整及び刺激されるものであり、より具体的には0.9%ナトリウム含有生理食塩水中で調整され、1.8%塩化ナトリウム含有生理食塩水中で刺激される。
【0104】
前記薬物送達デバイスを調整及び刺激するために使用される温度は、広い温度範囲にわたって変化させることが可能であるが、いくつかの例においては37℃が好ましい使用となっている。
【0105】
前記薬物送達デバイスを調整及び刺激するために使用される時間は、具体的なインプラント又は薬物の望ましい放出速度に依存して、1日から数週間まで様々であっても良い。
【0106】
インプラントを調整及び刺激する工程は、インプラント内に含まれる薬物の放出速度を最適化することであることが当業者によって理解される。このようなものとして、薬物送達デバイスの調整及び刺激に費やす時間を短くすると、より長い調整及び刺激工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して、前記薬物の放出速度が遅くなる。
【0107】
前記調整及び刺激工程における温度もまた前記放出速度に影響を与えるものであり、低温では、より高い温度で処理を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して前記薬物送達デバイスに含まれる薬物の放出速度が遅くなる。
【0108】
同様に、水溶液の場合、一部の例ではこの水溶液は好ましくは生理食塩溶液であるが、前記溶液に含まれる塩化ナトリウム含有量もまた、前記薬物送達デバイスから得られる放出速度の種類を決定する。より具体的には、塩化ナトリウム含有量が低いと、高い塩化ナトリウム含有量で調整及び刺激を受けた薬物送達デバイスと比較して、より速い放出速度をもたらすものである。
【0109】
一実施形態において、本発明の薬学的製剤は、好ましくは約20%のHEMA及び約80%のHPMAであるHEMA及びHPMAのコポリマー混合物内に酢酸オクトレオチド製剤を含む。好ましい実施形態において、前記薬学的製剤は、約20〜約150ミリグラム、好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含む。前記製剤は、更に、約2〜約20%の賦形剤を含むものであっても良い。好ましい一実施形態において、前記製剤は、好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。別の好ましい実施形態において、前記製剤は、約2%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0110】
別の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、HEMA及びHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMA及び約80%のHPMAのコポリマー混合物中に、約50ミリグラムのオクトレオチド製剤を含む。更なる実施形態において、前記製剤は、更に、前記酢酸オクトレオチドと共に、約10%のヒドロキシプロピルセルロースと、2%ステアリン酸マグネシウムとを含む。
【0111】
別の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、HEMA及びHPMAのコポリマー、好ましくは約40%のHEMA及び約60%のHPMAのコポリマー混合物中に、約83mgのオクトレオチド製剤を含む。更なる実施形態において、前記製剤は、更に、前記酢酸オクトレオチドと共に約10%のヒドロキシプロピルセルロースと2%のステアリン酸マグネシウムとを含む。
【0112】
更なる実施形態において、本発明の薬学的製剤は、ポリウレタン系ポリマー中、約20ミリグラム〜約150ミリグラム、より好ましくは約40ミリグラム〜約90ミリグラムのオクトレオチド製剤を含む。
【0113】
ホルモン障害に関連した疾患を治療する方法もまた提供される。前記方法は、オクトレオチドを投与する工程と、長期にわたって、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月間から最大約2年間、定常状態におけるオクトレオチドの血漿濃度を約0.1ng/ml〜約9ng/mlに維持する工程とを含む。好ましい実施形態において、前記定常状態におけるオクトレオチドの血漿濃度は、長期間、約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2ng/ml〜約1.6ng/mlに維持する。このようなホルモン障害は末端肥大症などを含む。
【0114】
一実施形態は、オクトレオチドを投与し、また長期にわたり、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、オクトレオチドの定常血漿濃度を約0.1ng/ml〜9ng/ml、好ましくは約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2〜約1.6ng/mlに維持することによって、GH値を低下させる方法である。
【0115】
別の実施形態は、オクトレオチドを投与し、また長期にわたって、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、オクトレオチドの血漿濃度を約0.1ng/ml〜約9ng/ml、好ましくは約1ng〜約2ng/ml、より好ましくは1.2〜約1.6ng/mlに維持することにより、IGF−I値を低下させる方法である。
【0116】
別の実施形態は、本発明のインプラントを少なくとも1つ、好ましくは本発明のインプラントを2つ投与する工程を有する末端肥大症を治療する方法である。この方法において、各インプラントは、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチド、好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチド、より好ましくは約50ミリグラムのオクトレオチドを含んでいても良く、少なくとも2ヶ月間、好ましくは約6ヶ月から最大約2ヶ月間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出させても良い。
【0117】
別の実施形態は、カルチノイド腫瘍及びVIP産生腫瘍と関連する症状を治療する方法である。一実施形態は、少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出するオクトレオチドインプラント製剤の投与により、カルチノイド腫瘍に関連した重度の下痢及び顔面紅潮の症状を治療する方法である。別の実施形態は、少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出する移植可能オクトレオチド製剤を投与することにより、VIP産生腫瘍に関連した水様性の下痢を治療する方法である。
【0118】
別の態様は、ヒドロゲル及びオクトレオチドの治療用組成物であり、この組成物を移植する場合、前記オクトレオチドは、約0.1ng/ml〜約9ng/ml、好ましくは約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2ng/ml〜約1.6ng/mlのCssをもたらす及び/又は維持する速度において放出される。更なる実施形態は、ヒドロゲル及びオクトレオチドの治療用組成物であり、この組成物を移植する場合、前記オクトレオチドは、長期にわたり1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは1日あたり約20μg〜約800μg、より好ましくは1日あたり約30μg〜300μgの速度で放出される。より好ましい実施形態において、前記オクトレオチドは、少なくとも約2ヶ月以上、より好ましくは約6ヶ月〜約2年間放出される。前記ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマー、又はポリウレタン系ポリマーを含んでいても良い。
【0119】
別の実施形態は、オクトレオチドと親水性ポリマーとを含む制御放出製剤であり、インビトロにおいて少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、1日あたり約30μg〜約250μgの、より好ましくは1日あたり約100μg〜約130μgの速度でオクトレオチドを放出することが可能である。更なる実施形態において、前記親水性ポリマー製剤は、インビトロで1日あたり約100μgの平均速度でオクトレオチドを放出することが可能である。好ましくは、前記親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマー及びメタクリレート系ポリマーから選択されるものである。
【0120】
本発明の更なる実施形態は、移植のためのオクトレオチドを含む制御放出製剤であり、この製剤は、インビトロにて、約6週間後に約20%未満の前記オクトレオチドが前記製剤から放出され、約6ヵ月後には約60%の前記オクトレオチドが前記製剤から放出されるように、前記オクトレオチドが親水性ポリマー中に含まれている。
【0121】
本発明の薬学的組成物中に含まれる薬学的に許容可能なオクトレオチド、その塩、溶媒和されたもの、又はそのプロドラッグの量は、例えば使用される具体的なオクトレオチド、目的とする投与量レベル、使用されるヒドロゲルの量、及び前記組成物中に含まれる更なる物質の種類と量などを含む様々な要因によって変化する。前記組成物中のオクトレオチド又はその誘導体の量は、効果的な薬物送達に対して望ましい前記化合物の投与量、分子量、及び活性によって変化する。使用薬物の実際の量は、患者の年齢、体重、性別、病状、疾患、又は任意の他の医療上の基準に依存する可能性がある。実際の薬物量は、当技術分野の技術者によって、目的の医学用途に従って決定される。本発明に従って製剤化される薬学的投与量は、主治医によっておよそ6ヶ月に1回投与されるように決定される場合がある。
【0122】
一般的に、当該オクトレオチドは、インプラント又は他の薬学的組成物中、約20ミリグラム〜約150ミリグラム、好ましくは約40〜約90ミリグラム、より好ましくは約50〜約85ミリグラムのオクトレオチドの量で製剤化される。末端肥大症の治療に用いる成人における1日の用量は、一般的に、1日あたり約300〜約600μgの即時放出オクトレオチドである(サンドスタチン(登録商標)は100又は200μgを1日3回)。好ましくは、前記組成物中のオクトレオチドの量は、長期にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは1日あたり約20μg〜約800μg、より好ましくは1日あたり約30μg〜約300μg放出するように製剤化される。そのような放出速度は、患者の望ましい治療的血中レベルを長時間約0.1〜約9ng/mlに維持するものである。
【0123】
オクトレオチドを含むヒドロゲルデバイスは、オクトレオチドを患者の血漿中に制御放出するものである。本発明の薬学的組成物に使用されるオクトレオチドの放出速度を制御するのに適したヒドロゲルは、これらに限らないが、HPMA、HEMAなどを含む親水性モノマーのポリマーを含む。そのようなヒドロゲルはまた、当該組成物からのオクトレオチドの分解及び損失を阻止することも可能である。
【0124】
一実施形態において、本発明の薬学的製剤は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマー内に含まれる酢酸オクトレオチドを含む。好ましい実施形態において、前記薬学的製剤のコポリマーは、約20%のHEMA及び約80%のHPMAを含む。別の好ましい実施形態において、前記薬学的製剤のコポリマーは、約40%のHEMA及び約60%のHPMAを含む。
【0125】
更なる実施形態において、前記ヒドロゲルは、ポリウレタン系ポリマーを含む。
【0126】
本発明の薬学的組成物に含まれるヒドロゲルの量は、例えば、使用した具体的なマトリックス、ヒドロゲルの分子量、ヒドロゲルの親水性、使用するオクトレオチドの種類と量、及び前記組成物中に含まれる更なる物質の存在、及び種類と量などを含む様々な因子によって変化する。
【0127】
当該インプラントの大きさ、形、及び表面積は、そのインプラントからのオクトレオチドの放出速度を増進又は低下させるために変化させても良い。
【0128】
本発明の製剤は、副作用を最小限にしながら治療効果を最大限にする具体的且つ望ましい放出特性を示す。前記望ましい放出特性は、前記薬物又は活性剤の最大血漿濃度(Cmax)及び定常状態における薬物又は活性剤の血漿濃度(Css)の観点から説明されても良い。
【0129】
本発明の薬学的組成物は、例えば流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温溶融結合剤を含む結合剤、崩壊剤、及び/又は潤滑剤などの助剤又は賦形剤を含んでいても良い。溶解剤は投与製剤からのオクトレオチドの溶解速度を増加させるものであって、オクトレオチドの溶解性を増加させる機能を有する。適切な溶解剤は、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、及びアジピン酸などの有機酸を単独で或いは組み合わせて含む。これらの物質は、緩衝系を作り出すために、例えばクエン酸とクエン酸ナトリウムなどのように、酸の塩と組み合わせても良い。
【0130】
治療上有効な血漿濃度特性のオクトレオチドの溶解及び確立における微環境のpHを変化さることが可能な他の物質は、無機酸の塩及び水酸化マグネシウムを含む。他の使用可能な物質は、表面活性剤、及び他の可溶化物質であっても良い。本発明の薬学的組成物の使用に適した表面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、及びソルビタン脂肪酸エステルを含む。
【0131】
本発明の薬学的組成物の使用に適した希釈剤は、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、ショ糖、フルクトース、グルコース、デキストロース、又は他の糖、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、又は他の糖アルコール、乾燥デンプン、サッカリド、デキトリン、マルトデキストリン、又は他のポリサッカリド、イノシトール、又はその混合物など、薬学的に許容可能な不活性充填剤を含む。前記希釈剤は、好ましくは水溶性希釈剤である。好ましい希釈剤の例は、例えば、FMC社から市販されているAvicel PH1 12、Avicel PH101、及びAvicel PH102などの微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、Pharmatose DCL21などのラクトース、Penwestファーマシューティカルズ社から市販されているEmcompressなどの第二リン酸カルシウム、マンニトール、デンプン、ソルビトール、ショ糖、及びグルコースを含む。希釈剤は、圧縮特性に注意を払って、具体的な当該組成物が適合するように慎重に選択される。前記希釈剤は好ましくは、制御放出組成物の約2重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で使用される。
【0132】
流動促進剤は処理中の成分の流動及び圧縮率を改善するために使用される。適切な流動促進剤は、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の気相加水分解などによって調製されるコロイド二酸化ケイ素、サブミクロンヒュームドシリカなどを含む。コロイド二酸化ケイ素は、Cabot社(商標名Cab−O−Sil)、Degussa社(商標名Aerosil)、及びE.I.DuPont社を含む多くの供給元から市販されているサブミクロンの非晶質粉末である。コロイド二酸化ケイ素はまた、とりわけ、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸、及びヒュームド二酸化ケイ素として既知である。一実施形態において、前記流動促進剤は、Aerosil200を含む。
【0133】
表面活性剤、溶解剤、及びその他の可溶化剤などの別の物質が使用されても良い。本発明の薬学的組成物の使用に適した表面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、及びソルビタン脂肪酸エステルを含む。溶解剤は、オクトレオチドの溶解性を増加させることによって、オクトレオチドの溶解速度と機能を増強する。適切な溶解剤は、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸を含み、それらは単独で或いは組み合わせて使用することが可能である。これらの物質は、緩衝系を作るために、例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸などのように、前記酸の塩と組み合わせても良い。溶解物の微環境のpHを変化させるために使用される他の物質は、無機酸の塩、及び水酸化マグネシウムを含む。
【0134】
本発明の薬学的組成物の使用に適した崩壊剤は、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドン、クロスカルメロース、微結晶性セルロース、低置換度ヒドロキシプロプルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリビニルアルコール、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、ベータシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、粘土、ベントナイト、及びそれらの混合物を含む。
【0135】
本発明の活性成分は、薬学的に許容可能であって更に活性成分と適合する賦形剤と共に、本願明細書に記載した治療方法の使用に適した量で混合されても良い。当業者が周知のように、様々な賦形剤が本発明のオクトレオチドと均一に混合されても良い。例えば、オクトレオチドは、これらに限らないが、微結晶性セルロース、コロイド二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリン、及びこれらの組み合わせなどの賦形剤と混合又は組み合わせても良い。
【0136】
本発明の薬学的組成物の使用に適した潤滑剤は、これらに限らないが、Aerosil 200、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリルなど、圧縮された粉末の流動性に作用する物質を含む。
【0137】
本発明の別の観点によると、安定な制御放出移植可能投与製剤が提供され、この製剤は、ヒドロゲル中に有効量のオクトレオチドを含み、更に患者への投与又は治療の投薬計画の一部として、少なくとも2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、放出特性(治療上有効なオクトレオチドの血漿値)を提供するものである。
【0138】
本発明の投与製剤はまた、1若しくはそれ以上の上述の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいても良い。好ましい実施形態において、前記投与製剤は、オクトレオチドの単位用量及び速度制御ポリマーに加えて、希釈剤及び潤滑剤を含む。特に好ましい賦形剤は、ステアリン酸マグネシウムである。これらの物質の使用において、ステアリン酸マグネシウム成分は、好ましくは、前記投与製剤の約0.5〜約5w/w%、より好ましくは約2%含まれ、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0139】
別の好ましい賦形剤はヒドロキシプロピルセルロースである。前記ヒドロキシプロピルセルロースが使用される場合、このヒドロキシプロピルセルロース成分は、好ましくは前記投与製剤の約0.5%〜約20w/w%、より好ましくは約10%含まれ、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0140】
好ましい実施形態において、前記製剤は、ステアリン酸マグネシウム及びヒドロキシプロピルセルロースの両方を含み、好ましくは約2%のステアリン酸マグネシウム及び約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0141】
本願明細書において使用される「制御放出」の用語は、活性剤が毒性以下の濃度でその治療的有効な血中濃度を少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月以上の間にわたり維持されるような速度で、投与製剤からの前記活性剤の、所定の一貫した放出を含む。好ましくは、当該移植可能な製剤中の前記活性剤の量は、少なくとも約2ヶ月毎、好ましくは約6ヶ月から最大約2年毎に前記薬学成分を投与することにより、治療上有用な血漿濃度を確立する。
【0142】
本発明の組成物は、GH及びIGF−I値の上昇により特徴付けられるホルモン病の治療のために、本発明の移植可能な組成物を患者に投与することにより使用可能である。好ましくは、当該インプラントは約6ヶ月毎に投与され、治療的有効量のオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドを放出する。前記移植可能な組成物は、患者に対して、ホルモン病を改善するための最低治療有効値で、しかし患者が日中にゆっくりできる期間を向上させるための最大濃度と比較すると比較的低い値のオクトレオチド濃度を放出する。前記組成物は、対象がいかなる悪影響も示すことなく、与えられた投与量を許容することが可能な投与量と期間において前記対象に投与されても良く、必要に応じて、投与の後すぐに前記活性剤の投与量を増加させて、対象において治療用量が達成されるまで選択した時間間隔で投与されても良い。例えば、前記活性剤は好ましくはオクトレオチドを1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは約20μg〜約800μg、より好ましくは30μg〜約300μgの投与量で少なくとも約2ヶ月、より好ましくは約6ヶ月から最大2年間投与される。
【0143】
オクトレオチドが酢酸オクトレオチドである本発明の組成物は、特に、GH及びIGFの値が上昇することにより特徴付けられるホルモン病の治療、とりわけ末端肥大症の治療における使用に適している。本発明の酢酸オクトレオチド剤はまた、カルチノイド症候群及びVIP産生腫瘍と関連する症状の治療にも適している。
【0144】
上述したように、移植可能な製剤は、移植の前に水和されているか、或いは所定期間「刺激(primed)」されている。適切な水和剤は、これらに限らないが、水、及び生理食塩水などの、これらに限らず水をベースとした他の溶液を含む。前記移植可能な製剤は、1日未満〜数ヶ月まで、或いはそれより長い間、刺激されていても良い。前記刺激工程は、移植における活性成分の放出に影響を与えることが観察されている。例えば、刺激工程によって、活性成分によるヒドロゲルの壁の浸潤及び飽和が開始され、前記インプラントが刺激される時間の長さによっては、移植前に前記ヒドロゲルから進出し始める可能性がある。刺激されたインプラントは、実質的に移植した際に活性成分の放出が開始され、移植直後に薬物放出が最高に達する可能性がある。一方、わずかな刺激を与えるか又は全く刺激をしないと、移植した際に、インプラントが水和され前記活性成分の放出が開始するまで、しばらくの間、実質的に放出されない場合がある。
【0145】
一実施形態において、制御放出されるオクトレオチド製剤を投与する方法は、本発明のオクトレオチド製剤を1ヶ月以下、好ましくは1週間以下の間水和する工程と、患者に移植する工程とを有する。
【0146】
更なる実施形態において、制御放出されるオクトレオチド製剤を投与する方法は、本発明の脱水オクトレオチド製剤を患者に移植する工程を有する。
【0147】
本発明の更なる特徴及び実施形態は、以下の限定されない実施形態によって説明される。
【実施例1】
【0148】
インビトロのオクトレオチド放出速度
この実施例は、本発明の移植可能なオクトレオチド製剤の調製、及びその製剤のインビトロのオクトレオチド放出について説明する。本研究における一連のインプラントについて、安定性、及びインビトロにおける約22週間(第146番)、28週間(第136番)、及び33週間(他の製剤すべて)にわたるヒドロゲル製剤からのオクトレオチドの放出特性を決定するために試験した。各インプラントは約50ミリグラムの酢酸オクトレオチド及び約2%のステアリン酸を含むが、ポリマーカートリッジは異なる量のHEMA及びHPMAを含み、従って、表1に示したように異なるEWCs%を示した。
【0149】
【表1】
【0150】
図2、3、及び4は、上述した各製剤における前記インプラントからの1日あたりのオクトレオチドの放出を示す。図2に示したように、第136番の製剤は、初期放出は比較的速く、更に比較的急速に減少する。図3に示したように、第146番の製剤の初期放出速度は比較的低い。図4は第145番、第147番、第133番、第144番、第143番、及び第142番の製剤の放出特性を示す。図4に示したように、初期放出速度は、EWC%と良く関連しており、22.9〜27.6%のEWCs%に対して1日あたり20〜450μgの範囲であった。しかしながら、インプラント及び溶出媒体内における浸透圧差に関する問題に直面した。従って、前記オクトレオチド製剤を安定化させるために、多くの実施例において「選択的水和」の原則に基づいて、より良い安定性を提供する賦形剤を使用するように設計した。
【実施例2】
【0151】
仔ウシ血清中における製剤研究
膨潤問題に対する浸透圧の効果を測定するために、製剤第136番及び第143番に相当する本発明の2つのインプラントを仔ウシ血清中に溶出した。特に、約40%のHEMAと60%のHPMAとから構成されており、2%のステアリン酸と共に酢酸オクトレオチドを含む製剤番号第136番、及び約30%のHEMAと70%のHPMAとから構成されており、20%のPEG3300、及び80%の酢酸オクトレオチドを含む製剤番号第143番について試験した。3ヶ月後、前記インプラントの外観は正常であり、比較的直線状でわずかに膨潤していたのみであった。
【実施例3】
【0152】
製剤研究
浸透圧差のため、実施例1に記載したインプラントは最終的には著しい膨潤が見られ、このインプラントは破裂した。本実施例では、オクトレオチドインプラントを安定化させるのに有用な物質を選別するように設計された製剤について説明する。本研究において、インプラントの形状と耐久性に与える賦形剤の効果を測定するために一連のインプラントを観察した。各ポリマーカートリッジは約28%のHEMA、約66.5%のHPMA、及び5%のグリセリンから構成した。前記含有物には、表2に示したように、様々な賦形剤と共に酢酸オクトレオチドを含ませた。
【0153】
【表2】
【0154】
ゴマ油及びMCCなどの疎水性物質は、製剤中で分離し、「選択的水和」を与えず、本発明においてはあまり好ましくはないものであった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を促進した。マンニトール及びグリコール酸のような低分子量の添加剤は安定効果を与えず、完全性を減少させた。これらの物質はいずれもオクトレオチド製剤に対して十分な安定性を与えるものではなかった。従って、実施例4に示す第二の研究に着手した。
【実施例4】
【0155】
製剤研究とインビトロのオクトレオチド放出速度
本研究は、表3に示すように様々な賦形剤を用いてヒドロゲルインプラント中のオクトレオチドの安定性を評価した。前記賦形剤は、高分子量であり、ある程度水溶性の性質を有するものを選択した。各インプラントは、約20%のHEMAと約80%のHPMAから構成されるポリマーカートリッジから作製した。生理食塩水中の前記インプラントの外観を、9週にわたって監視して評価した。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
図5に示したように、デキストランを含む製剤が最も溶出速度が速かった。ペクチン、AcDiSol、及びCarbopolを含む製剤は、2週間後に水和し、9週間後に溶出したが、十分な放出を示さなかった。従って、良好な溶出と外観との組み合わせた優れた安定効果を有する好ましい実施形態は、ヒドロキシプロピルセルロースによって達成された。
【実施例5】
【0158】
健常なイヌにおける1ヶ月の移植試験
この実施例は、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的許容可能なその塩の放出について説明する。本発明のオクトレオチド皮下インプラントの1つを健常なイヌに移植した。前記オクトレオチド皮下移植製剤は、26.6%の含水量であり、44mgの酢酸オクトレオチドを含むものであった。インビトロ放出速度は、1週後に約500μg/日、4週後に約300μg/日に減少し、本試験期間中のオクトレオチドの全放出は約10mgであると推定された。前記インプラントを移植28日後に除去した。本試験に使用した前記インプラントは約3.5cmの長さであった。酢酸オクトレオチド、IGF−I、及びGHの血清濃度を得るための血液サンプル(1.5ml)を、麻酔と絶食をせずに頸静脈穿刺によって0、1〜7、11、14、18、21、25、及び28日目に採取した。
【0159】
前記オクトレオチド移植製剤が十分に許容できるか、食餌摂取は正常であるか、並びに異常な行動はないかを含む臨床的観察に留意した。
【0160】
血清分析では、4日目に酢酸オクトレオチドのピークが見られ、すべての間隔において検出可能な酢酸オクトレオチドの量を測定した。IGF−I濃度は移植後4日目まで減少し、その後25日目までに投与前の値まで戻った。IGF−I値は、図6で見られるように、移植前の値の40〜90%まで減少した。
【実施例6】
【0161】
6匹の健常なイヌにおける6ヶ月の移植試験
この実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的許容可能なその塩の放出について説明する。6匹の健常なイヌを2つのグループに分け、1若しくは2つの本発明のオクトレオチド皮下インプラントをそれぞれ移植した。前記オクトレオチド皮下インプラントは約25.2%の含水量を有しており、約60mgの酢酸オクトレオチドを含むものであった。前記インプラントを移植6ヶ月後に除去した。酢酸オクトレオチド、IGF−I、及びGHの血清濃度を得るための血液サンプル(10ml)を1日1回移植後7日間採取した後、1週間に2回で3週間採取した後、更に1週間に1回で6ヶ月間の終結に至るまで採取した。移植前4日間、対照として基準血清サンプルを採取した。
【0162】
結果は、1つのインプラントを受入れたイヌにおいて200〜700pg/ml、2つのインプラントを受入れたイヌにおいて400〜1000pg/mlの範囲のオクトレオチド血清値を示した。IGF−I値は、図7及び8において見られるように、両処置群において90%まで減少した。血清GH値の測定は、健常動物における値が更なる減少を検出するには非常に低かったため、本試験のおよそ1ヶ月後に中止した。オクトレオチド移植製剤を含む臨床観察は十分に許容できるものであり、食餌摂取は正常であり、異常な行動は見られなかった。
【実施例7】
【0163】
ヒトにおける6ヶ月移植試験
本実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的に許容可能なその塩の放出について説明する。6ヶ月試験は末端肥大症を患った11人の患者において実施した。末端肥大症を患っており、以前に市販のオクトレオチドLAR製剤で処置した11人の患者において、1若しくは2つの本発明のインプラントを皮下移植した。GH及びIGF−I値はベースラインで測定した後、6ヶ月間1ヶ月毎に測定した。各インプラントは、20%のHEMA及び79.5%のHPMAのコポリマー中、約25.2%のEWCと共に約60mgの酢酸オクトレオチド含むものであった。本試験に使用した前記インプラントは、乾燥状態で約44mmの長さであり、水和状態で50mmの長さであった。前記インプラントの直径は、乾燥状態で約2.8mmであり、水和状態で約3.5〜約3.6mmであった。前記インプラントを移植約1週間前に水和させた。
【0164】
GHの参照範囲は年齢には依存せずに2.5mg/mL以下であった。以下の表4は、本発明のオクトレオチドインプラントを移植後、6ヶ月にわたるGHの基準値をmg/Lで示している。第11番の患者は、スクリーニング基準に適合しなかったため、本試験に参加しなかった。
【0165】
【表4】
【0166】
上記のように、6ヶ月までに89%の対象者が正常な成長ホルモン値を示した。
【0167】
IGF−Iの参照範囲は以下とした。(i)17〜24歳は約180〜780ng/mL、(ii)25〜39歳は114〜440ng/mL、(iii)40〜54歳は約90〜360ng/mL、及び(iv)54歳より上は70〜290ng/mL。以下の表5は、本発明のオクトレオチドインプラントを移植後、6ヶ月にわたるIGF−Iの基準値をng/mlで表したものである。
【0168】
【表5】
【0169】
上記のように、6ヶ月までに22%の対象者が正常なIGF−I値を示した。
【0170】
図9A及び9Bは、本発明のオクトレオチドインプラントと市販の酢酸オクトレオチド製剤との比較を示し、前記インプラントの効果は市販のオクトレオチドLAR製剤と少なくとも同程度であると思われた。これらのインプラントの治療効果は、本試験期間の全6ヶ月間十分に持続した。
【0171】
IGF−I値はすべての患者で低下し、2人の患者で正常化した。この減少は治療から1ヶ月の時点ですでに観察され、平均IGF−I値はその後5ヶ月間安定していた。同じ患者が以前に市販のオクトレオチドLAR製剤で治療した期間中に観察された減少との比較は、9人中8人の患者で可能であった。前記8人の患者中6人の患者において、移植期間中のIGF−Iの低下率は、市販のオクトレオチドLAR製剤の場合よりも大きかったが、8人中2人は少なかった。移植治療6ヵ月後、3人の患者のGH値は1ng/ml以下であり、他の5人は2.5ng/ml以下であった。これは、GH値がわずか2人の患者で1ng/ml以下であり、更に他の2人は2.5ng/ml以下であった市販のオクトレオチドLAR製剤の結果より勝っていた。
【0172】
患者の血清中のオクトレオチド値もまた測定し、以下の表6に示した。
【0173】
【表6】
【0174】
1若しくは2つのインプラントによって得られたオクトレオチド値の比較を図10のグラフに示した。
【0175】
全体的に、末端肥大症を患った患者におけるGH値及びIGF−I値の低下において、本発明のオクトレオチドインプラントは、少なくとも市販の酢酸オクトレオチドLAR製剤と同程度に効果的であるという結果を示していた。
【実施例8】
【0176】
この実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的に許容可能なその塩の放出について説明する。2匹の健常なイヌに1つの本発明のオクトレオチド皮下インプラントを移植した。前記インプラントは移植前に水和させなかった。前記オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMA及び約40%のHEMAから構成されており、約27.6%の平衡含水量を有するものであった。前記インプラントは約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含むものであった。前記インプラントを移植6ヶ月後に除去した。酢酸オクトレオチド及びIGF−Iの血清濃度を得るための血液サンプル(10ml)を、移植後最初の4週間は1日おきに1回ずつ採取し、その後4週間は1週間に2回サンプリングし、その後6ヶ月間の終結まで1週間に1回サンプリングした。移植2日前に、基準血清サンプルを対照として採取した。
【0177】
図11はイヌの血清中のオクトレオチド値を示し、図12はイヌのIGF−I値を示す。
【0178】
本発明は特定の好ましい実施形態に関してかなり詳細に記載したが、他の変形例が可能である。従って、添付の請求項の要旨は、本明細書に含まれた説明及び好ましい変形例に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、平衡含水量と、最大水和状態での架橋HEMA/HPMAポリマーにおけるメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA)単位の量の重量パーセントとの間の比例関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の6つの異なるインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の異なるインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ健康なイヌにおけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図7】図7は、6ヵ月にわたって本発明の1つのオクトレオチドインプラント製剤を埋め込んだ3匹の健康なイヌの群におけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図8】図8は、6ヵ月にわたって本発明の2つのオクトレオチドインプラント製剤を埋め込んだ3匹の健康なイヌの群におけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図9】図9A及び9Bは、それぞれ、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ末端肥大症を有する11人の被験者におけるIGF−I血清濃度及びパーセント変化を表すグラフである。
【図10】図10は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ末端肥大症を有する11人の被験者におけるオクトレオチド血清濃度を表すグラフである。
【図11】図11は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ2匹のイヌのオクトレオチド血清濃度を表すグラフである。
【図12】図12は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ2匹のイヌのIGF−I血清濃度を表すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月11日付で出願された「Controlled Release Formulations of Octreotide」という表題の米国仮出願第60/660,930号(この参照により本明細書に組み込まれるものである)に対して優先権を主張するものである。
【0002】
この発明は、ホルモン障害の影響を受ける患者の治療に用いることができるオクトレオチドの薬学的組成物に関する。本発明は、好ましくは、放出制御製剤として処方されるものである。
【背景技術】
【0003】
末端肥大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(growth hormone:GH)を生産するために起こるホルモン障害である。それは通常、中年成人に影響を及ぼし、重病および早死にをもたらす。一旦発見されれば、多くの患者の末端肥大症を治療することは可能であるが、それは遅発性であり、且つ多くの場合潜行性の発症であるため、ほとんどの場合、正しく診断されない。
【0004】
本発明は、末端肥大症及び巨人症を含む様々なホルモン障害を治療するために利用することが可能である。その最も一般的な症状の1つは、手及び足の異常成長である。骨の変化は、徐々に患者の顔つきを変える。即ち、額および下顎は突き出し、鼻骨は肥大し、そして歯間は広がる。骨及び軟骨の過剰成長は、多くの場合関節炎に至る。組織が厚くなると組織が神経を止めてしまう可能性があり、手根管症候群を引き起こし、手がしびれ且つ衰弱するという特徴がある。末端肥大症の他の症状には、厚く、きめの粗い、脂性の皮膚、軟性線維腫、唇、鼻、及び舌の肥大化、副鼻腔および声帯の肥大化による音声の低音化、上気道閉塞によるいびき、多汗症および皮膚臭、疲労および衰弱、頭痛、視覚障害、女性の月経周期および時には乳分泌の異常、及び男性のインポテンスが挙げられる。肝臓、脾臓、腎臓、及び心臓を含む人体器官の肥大化の場合もある。
【0005】
末端肥大症の最も深刻な健康状態は、糖尿病、高血圧、及び循環器疾患の危険性の増加である。末端肥大症患者はまた、癌に発達し得る大腸ポリープの発生の危険性も高い。
【0006】
GH−産生腫瘍が幼年期に生じる場合、その結果生じる疾患は末端肥大症よりむしろ巨人症と呼ばれる。成人における過剰にGH産生が発達し、結果として身長の増加に繋がらないように、長骨の成長板の融合は思春期の後に起こる。成長板の融合前に長期にわたって過剰なGHに曝されると、長骨の過剰発育および身長増加が生じる。
【0007】
末端肥大症は、脳下垂体によるGHの長期にわたる過剰産生によって引き起こされる。脳下垂体は、身体機能(例えば、成長および発達、生殖、並びに代謝等)を制御するためのいくつかの重要なホルモンを産生する脳の底部にある小さい腺である。GHは、文字通り、身体の発育を調整するホルモンのカスケードの一部である。このカスケードは、脳下垂体を調整するホルモンを作る視床下部と呼ばれる脳の一部において開始する。これらの成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone−releasing hormone:GHRH)のうちの1つは、脳下垂体を刺激してGHを産生する。他の視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。脳下垂体による血流へのGHの分泌によって、肝臓において、インスリン様成長因子I(insulin−like growth factor I:IGF−I)と呼ばれる他のホルモンが産生される。IGF−Iは、骨および身体の他の組織の成長を実際にもたらす因子である。IGF−Iは次に、GH産生を減らすように脳下垂体に信号を送る。身体のGHRH、ソマトスタチン、GH、及びIGF−I濃度は、互いに、そして睡眠、運動、ストレス、摂食、及び血糖値によって厳重に調整されている。脳下垂体が正常な調節機構に左右されずにGHを作り続けると、IGF−Iの濃度は上昇し続け、骨成長および器官肥大に至る。過剰なGHはまた、糖および脂質代謝の変化を引き起こし、糖尿病を引き起こす可能性もある。
【0008】
90%以上の末端肥大症患者において、GHの過剰産生は、アデノーマと呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍に起因する。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、これらが膨張するにつれて、周囲の脳組織(例えば視神経)を圧迫する。この膨張によって、末端肥大症に頻繁に起こる症状である頭痛および視覚障害がもたらされる。その上、周囲の正常な下垂体組織を圧迫することは、他のホルモンの産生を変化させ、女性の月経および乳分泌の変化、及び男性のインポテンスに至る。
【0009】
一部の患者において、末端肥大症は、下垂体腫瘍ではなく膵臓、肺、及び副腎の腫瘍に起因する。これらの腫瘍がGH自体を産生するため、若しくは、より多くの場合には、これらの腫瘍がGHRH(下垂体を刺激してGHを作らせるホルモン)を産生するためのいずれかの理由によって、これらの腫瘍もまた過剰なGHをもたらす。これらの患者では、血中の過剰なGHRHが測定され、末端肥大症の原因が下垂体の異常に起因するものではないことが確認される。これらの非下垂体腫瘍が外科的に除去されると、GH濃度は減少し、且つ、末端肥大症の症状は改善される。
【0010】
治療計画には、成長した下垂体腫瘍が周囲の脳領域にかける圧力を軽減させるために、正常な下垂体の機能を保持させるために、及び末端肥大症の症状を反転若しくは改善させるために、GH産生を正常レベルにまで減少させることが含まれる。現在では、治療の選択肢として、腫瘍の外科的除去、薬物療法、及び下垂体の放射線療法がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
オクトレオチドは、末端肥大症を治療するために用いられる1つの薬剤である。オクトレオチドは、天然のホルモンであるソマトスタチンの薬理作用と類似した薬理作用を及ぼす。オクトレオチドは、グルカゴン及びインスリンだけでなくGH及びIGF−Iの濃度を低下させる。オクトレオチドはまた、ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone:GnRH)に対する黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)の反応を抑制し、内臓血流量を減少させ、且つセロトニン、ガストリン、血管活性腸管ペプチド、セクレチン、モチリン、及び膵臓ポリペプチドの放出を阻害する。多くの患者において、オクトレオチドを注射した後、GH濃度は1時間以内に減少し、また頭痛は数分で改善された。いくつかの研究によって、オクトレオチドは長期間にわたる治療に効果的であることが示された。オクトレオチドはまた、非下垂体腫瘍に起因する末端肥大症患者を治療するためにうまく用いられている。既に糖尿病に罹っている一部の末端肥大症患者において、オクトレオチドは、インスリンの必要性を減少させることができ、血糖値制御を改善することができる。
【0012】
オクトレオチドは、Sandostatin LAR(登録商標)Depotとして現在利用可能であり、それは、再構成に応じて、酢酸オクトレオチドを含むミクロスフェアの懸濁液である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、末端肥大症患者における長期にわたる維持療法に用いられる唯一の薬剤である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotはまた、転移性カルチノイド腫瘍に関連する重度の下痢および排泄の発症と、VIP分泌腫瘍に関連する激しい水様性下痢との長期治療に用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、滴定期間に続いて、4週間ごとに筋肉注射によって投与される。酢酸オクトレオチドは、即効型製剤であるSandostatin(登録商標)注射液にも利用でき、それは毎日3回注射による投与が必要であった。
【0013】
本発明は、好ましくは少なくとも約2ヵ月、より好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたって治療的に有効な量のオクトレオチドを提供する。本発明はまた、少なくとも約2ヵ月、好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年にわたってオクトレオチドの放出制御を提供する組成物を提供する。
【0014】
本発明の実施形態は、オクトレオチド、その塩、その薬学的組成物、そのプロドラッグ、若しくはその誘導体に関するものであり、これらは、これに限定されるものではないが、末端肥大症、糖尿病、カルチノイド腫瘍に関連した重度の下痢及び排泄の発症と、VIP産生腫瘍に関連する水溶性の下痢とを含む様々な疾病及び病気の効果的な治療に用いることが可能である。
【0015】
本発明の1実施形態において、ヒドロゲル及びオクトレオチドを含む組成物が提供される。前記オクトレオチドは、遊離塩基、塩、若しくは複合形態として存在しても良い。前記組成物は、患者への投与に応じて、治療される病気に対してオクトレオチドの望ましい薬物動態プロファイルを提供することが可能である。
【0016】
本発明の他の実施形態は、患者への埋め込み用のオクトレオチドを含む薬学的組成物を対象とする。1実施形態において、埋め込み可能な組成物は、患者の皮膚の下への皮下移植に際して、一貫し、所定の、且つ制御されたオクトレオチドの放出を提供するヒドロゲルを更に有しても良い。好ましくは、ヒドロゲルは、メタクリル酸系ポリマー及びポリウレタン系ポリマーを含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、長期間にわたって望ましいCssを有するオクトレオチドの薬物動態プロファイルを患者に提供するインプラントにおいて、治療的有効量のオクトレオチドを含む安定した薬学的組成物である。前記組成物は、患者内において、治療的に有効な濃度のオクトレオチドを確立し、及び、若しくは、維持するために用いられても良い。好ましくは、患者内のオクトレオチドが少なくとも約2ヵ月以上、及びより好ましくは約6ヵ月以上にわたって治療的有効濃度に達することができるように、オクトレオチドは時間とともに放出される。より好ましい実施形態において、オクトレオチドの放出の望ましくない急増若しくはピークが回避される。好ましい実施形態において、前記薬学的組成物は、ヒドロゲル内に含まれるオクトレオチド、より好ましくは酢酸オクトレオチドを有する。他の好ましい実施形態において、前記薬学的組成物は、ポリウレタン系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー内に含まれるオクトレオチド、より好ましくは酢酸オクトレオチドを有する。本発明の薬学的組成物はまた、1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を有しても良い。
【0018】
本発明の他の実施形態は、少なくとも約2ヵ月、及びより好ましくは少なくとも約6ヵ月以上の長期間にわたって、患者の血漿中のオクトレオチドの薬物動態学的放出プロフィールを提供するポリマー容器に含まれる治療的有効量のオクトレオチドを含む組成物の安定放出制御埋め込み可能製剤である。
【0019】
好ましくは、前記組成物の埋め込み可能製剤は、本発明の親水性モノマーの重合によって形成されるインプラントである。好ましい実施形態において、前記埋め込み可能製剤は、例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA)及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA)等の親水性コポリマー内に含まれる、治療的有効量のオクトレオチド(例えば、酢酸オクトレオチド)の親水性インプラントを含む。本発明のインプラント構造は、1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでも良い。更なる実施形態において、前記組成物の埋め込み可能な製剤は、ポリウレタン系ポリマーから形成されるインプラントである。
【0020】
本発明のオクトレオチド製剤は、放出制御プロフィールを提供すると共に、化学的及び物理的な安定性を前記組成物に与える。この強化された安定性は、望ましい放出制御プロフィールを維持すると共に、オクトレオチドの安定性が達成される本発明の組成物および剤形において最も顕著に観察される。具体的には、本発明の埋め込み可能製剤は、優れた吸湿耐性を示すと共に、好ましくは少なくとも2ヵ月、より好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたって、治療的有効濃度のオクトレオチドの確立を可能にするオクトレオチドの放出プロフィールを提供する。
【0021】
本発明の1実施形態において、患者において約0.1ng/ml〜約9ng/mlのインビボ平均Css、より好ましくは1ng/ml〜約2ng/mlのインビボ平均Cssのオクトレオチドを提供する、オクトレオチドを有する放出制御製剤が提供される。1実施形態において、前記製剤は、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチド、より好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含む。前記製剤は、インプラント、ポンプ、若しくは他の同様の放出制御装置から選択されても良い。好ましい実施形態において、前記製剤は、約2ヶ月〜約2年、より好ましくは約6ヵ月〜約1年、より好ましくは6ヵ月の期間にわたって治療的有効量のオクトレオチドを放出する。
【0022】
更なる実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤は、親水性コポリマーを有しても良い。好ましい親水性コポリマーは、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルを含む。1実施形態において、前記コポリマーは、約20%のメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及び約80%のメタクリル酸ヒドロキシプロピルを有する。前記製剤は、更に、ステアリン酸マグネシウムを有しても良い。他の実施形態において、前記製剤は、更に、ヒドロキシプロピルセルロースを有しても良い。
【0023】
他の実施形態において、オクトレオチドの前記放出制御製剤は、ポリウレタン系ポリマーを有しても良い。
【0024】
他の実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤を投与することを有する、患者を治療する方法が提供される。好ましい1実施形態において、前記放出制御製剤は、それを必要とする患者において、約0.1ng/ml〜約9ng/mlのオクトレオチドのインビボ平均Cssを維持する。
【0025】
本発明の他の実施形態において、オクトレオチドの放出制御製剤を投与することを有する、末端肥大症若しくは末端肥大症と関連する症状を治療する方法が提供される。好ましくは、前記放出制御製剤は、長期間にわたって、前記オクトレオチドの平均Cmax平均を約0.1ng/ml〜約4ng/mlに維持することが可能である。好ましくは、前記長期間は、約2ヵ月〜約2年、より好ましくは約6ヵ月である。
【0026】
更なる実施形態において、約40〜約90ミリグラム、より好ましくは約50ミリグラム、より好ましくは約83ミリグラムのオクトレオチドを有する少なくとも1つのヒドロゲルインプラントを投与する工程を有する末端肥大症若しくは末端肥大症と関連した症状を治療する方法が提供される。特定の方法において、1のヒドロゲルインプラントが投与されても良く、他の方法において、2若しくはそれ以上のヒドロゲルインプラントが投与されても良い。前記ヒドロゲルインプラントは、約2ヵ月〜約2年ごとに、好ましくは約6ヵ月ごとに投与されても良い。
【0027】
本発明の更なる実施形態は、親水性コポリマーとオクトレオチドとを有する治療用組成物である。1実施形態において、前記オクトレオチドは、少なくとも2ヵ月〜約24ヵ月にわたって、約0.1ng/ml〜約9ng/mlのCssを維持する速度で放出されても良い。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、エチレン不飽和親水性モノマーA及びエチレン不飽和親水性モノマーBの混合物を有する。1つの好ましいモノマーAは、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、約15%〜約70%、より好ましくは約20%の前記親水性コポリマーを有しても良い。1つの好ましいモノマーBは、メタクリル酸ヒドロキシプロピルである。1実施形態において、前記親水性コポリマーは、約80%の前記親水性コポリマーを有しても良い。このような治療用組成物は、少なくとも2ヵ月〜約24ヵ月にわたって、約1ng/ml〜約2ng/mlのオクトレオチドのCssを維持する割合で放出され得る。
【0028】
本発明の更なる実施形態は、オクトレオチドを有する埋め込み可能なドラッグデリバリーデバイスを提供し、前記デバイスは少なくとも約2ヵ月〜約24ヵ月にわたって治療的有効量のオクトレオチドを供給する。1実施形態において、前記治療的に有効な量のオクトレオチドは、1日につき約20μg〜約800μgである。他の実施形態において、前記治療的に有効な量のオクトレオチドは、1日につき約30μg〜約300μgである。
【0029】
本発明の他の実施形態は、オクトレオチドを有する埋め込み用の放出制御製剤であり、前記製剤は、インビトロで約6ヵ月以上にわたって、1日あたり約30μg〜約250μgの速度で、より好ましくはインビトロにおいて1日あたり平均して約100μgの速度で、前記オクトレオチドの放出を可能にするのに効果的な親水性ポリマーに、オクトレオチドを含むものである。
【0030】
放出制御製剤は埋め込み用のオクトレオチドを有し、前記製剤は、約6週間後に前記製剤から約20%の前記オクトレオチドだけを、及び約6ヵ月後に前記製剤から約60%の前記オクトレオチドを、インビトロで放出可能にするのに効果的な親水性ポリマーを含む。
【0031】
本発明の他の実施形態において、オクトレオチド、HEMA、HPMAを有するインプラントが提供される。前記インプラントは、例えばヒドロキシプロピルセルロース及び/若しくはステアリン酸マグネシウムを含む薬学的に許容可能な賦形剤を更に有しても良い。
【0032】
本発明の組成物は、患者の病気の治療に用いられても良く、それを必要とする患者の治療的有効濃度のオクトレオチドを確立することを含む。前記組成物は、約6ヵ月毎に前記組成物を投与、好ましくは埋め込むことによって、患者内のオクトレオチド濃度を高めるために用いられても良く、及び/若しくは患者内のオクトレオチドの治療的有効濃度を維持するために用いられても良い。本発明の組成物は、オクトレオチドの最初の放出における大きいピークを回避するように処方されても良い。本発明の組成物は、それを必要としている患者に投与される場合に、GH若しくはIGF−Iの増加した濃度によって特徴づけられるホルモン障害を治療するために提供される。更に、本発明の組成物は、それを必要とする患者に投与される場合に、カルチノイド腫瘍及びVIP産生腫瘍に関連する症状を治療するために提供される。好ましくは、前記組成物は、オクトレオチドの治療的に有効な血漿濃度が少なくとも約2ヵ月、好ましくは少なくとも約6ヵ月、より好ましくは約12ヵ月、及び最高2年の期間にわたって患者内に維持されるように、ヒドロゲル(好ましくはメタクリル酸若しくはポリウレタン系ポリマー)に治療的に有効な量のオクトレオチドを含む安定した放出制御インプラントである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の組成物及び方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の分子、組成物、方法論、若しくはプロトコル(これらは変更されても良い)に限定されるものではないことを理解すべきである。また、発明を実施するための最良の形態において使用される用語は、特定の変形例若しくは実施形態のみを記載することを目的とするものであり、添付の請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定することを目的としないことも理解される。本明細書に用いられる用語は、当業者に認識され、且つ知られている意味を有するが、便宜上及び完全を期して、特定の用語及びそれらの意味を後述する。
【0034】
本明細書及び添付の請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、その文脈が明らかに他の意味を指示する場合を除き、複数形への言及を含むことにも留意しなければならない。その他の意味を定義しない限り、本明細書に用いられるすべての技術的な及び科学的な用語は、従来技術において当業者が共通に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び物質と類似する若しくは同等のいかなる方法及び物質は、本発明の実施形態の実施若しくは試験において用いられても良いが、好ましい方法、装置、及び物質はここに記載される。本明細書に記載されるすべての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で、その参照により本明細書に組み込まれるものである。本明細書において、本発明が先行発明に基づいたこのような開示に先行する権利を有するものではないことの承認として解釈されることはない。
【0035】
本明細書で用いられる用語「約」は、それが使用される数のプラス若しくはマイナス10%の数値を意味する。例えば、約50%は45%〜55%の範囲を意味する。
【0036】
「放出制御製剤」は、所定の、治療的有効量の薬物若しくは他の活性薬剤(例えばポリペプチド若しくは合成化合物等)を、長期間にわたって一貫して放出するように設計され、その結果、望ましい治療効果を達成するのに必要な治療の回数が減少するような製剤を指す。本発明に関しては、制御製剤は、成長ホルモン濃度の減少、IGF−I濃度の減少、若しくはこれに限られるものではないが異常成長を含む末端肥大症と関連した症状の改善の点において、望ましい効果を達成するのに必要な治療の回数を減少させる。本発明の放出制御製剤は、被験者において望ましい薬物動態プロファイルを達成し、好ましくは実質的にデリバリー環境へ配置された直後に活性薬剤の放出が開始され、続いて一貫した、持続した、好ましくはゼロ次の、若しくはゼロ次に近い活性薬剤の放出が起こる。
【0037】
用語「患者」及び「被験者」は、ヒトを含むすべての動物を意味する。患者若しくは被験者の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、及びブタが挙げられる。
【0038】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、及びプロドラッグ」は、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、及びプロドラッグを指し、それらは、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などなく患者の組織との接触における使用に適したものであり、相当な利点/危険率に比例し、且つ本発明の化合物の可能性のある双性イオン形と同様にそれらの使用目的に応じて効果的である。
【0039】
用語「プロドラッグ」は、例えば、血液中の加水分解によってインビボで急速に変化する上記製剤の親化合物を産生する化合物を指す。T.Higuchi and V.Stella,"Pro−drugs as Novel Delivery Systems,"Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(いずれもこの参照により本明細書に組み込まれるものである)に詳細な議論が提供される。
【0040】
更に、本発明の化合物は、薬学的に許容可能な溶媒(例えば水、エチルアルコール等)を有する溶媒和形だけでなく非溶媒和形で存在しても良い。一般に、溶媒和形は、本発明の目的のための非溶媒和形と同等であると判断される。
【0041】
用語「塩」は、本発明の化合物の、比較的に無毒性の無機および有機酸性付加塩を指す。これらの塩は、前記化合物の最終的な単離および精製の間に、若しくは遊離塩基形の精製された化合物を適切な有機又は無機酸と別々に反応させ、上記のような形の塩を単離することによって、本来の状態で用意されても良い。代表的な塩としては、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸剤、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩メシラート、グルコヘプトン酸、ラクトビオン酸、及びラウリルスルホン酸等が挙げられる。これらは、無毒性アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等と同様に、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ及びアルカリ土類金属に基づく陽イオンを含んでも良い(例えば、S.M.Barge et al.,"Pharmaceutical Salts,"J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19(この参照により本明細書に組み込まれるものである)を参照)。
【0042】
「治療」は、患者に対する薬剤の投与若しくは医療処置の実行を指し、いずれも予防法(防止)、若しくは患者が被る事例における病気又は疾病を治癒することを指す。
【0043】
「治療的有効量」は、病状と関連した症状を減少させ、予防し、若しくは改善するのに十分な量である。ホルモン療法の文脈において、それはまた、疾病又は疾患における身体機能若しくはホルモン濃度を正常化することを意味しても良い。例えば、オクトレオチドの放出制御製剤の治療的に有効な量は、例えば患者の成長ホルモン若しくはIGF−I濃度を効果的に低下させるように、望ましい効果を達成するために算出される所定の量である。
【0044】
オクトレオチドは、以下のアミノ酸配列を有するオクタペプチドである。L−システインアミド,D−フェニルアラニル−L−システイニル−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−(R*,R*)]。オクトレオチドの構造を以下に示す。
【0045】
【化1】
【0046】
化学式はC49H66Ni0O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その薬効分類は、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば遊離形、塩の形、若しくはそれらの複合体の形で存在しても良い。酸付加塩は、例えば有機酸、ポリマー酸、及び無機酸で形成されても良い。酸付加塩には、例えば塩酸塩、及び酢酸塩が含まれる。複合体は、例えば、オクトレオチドに、無機物(例えば無機塩)、若しくは水酸化物(Ca及びZnの塩)を添加することにより、及び/若しくは有機高分子物質を添加することにより形成される。前記酢酸塩は、本発明の製剤の好ましい塩である。
【0047】
本発明の実施形態は、以下の目的を達成することができるドラッグデリバリーデバイスを提供する。治療効果を最大にして、不必要な副作用を最小化する放出制御速度(ゼロ次放出速度)。治療を終えるために必要である場合に、前記装置を回収する簡単な方法。吸収の変動が少なく、且つ初回通過代謝がないバイオアベイラビリティの増加。
【0048】
本発明の1つの観点は、放出制御ヒドロゲル装置に酢酸オクトレオチドを含む放出制御の薬学的組成物である。本発明の組成物は、患者への投与に応じて、少なくとも2ヵ月、好ましくは少なくとも約6ヵ月以上、最高約2年にわたって、オクトレオチドの放出プロフィールを提供することができる。好ましくは、オクトレオチドはヒドロゲルの中に含まれ、前記製剤は長期間にわたって治療的有効量のオクトレオチドを放出する。他の好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルは、メタクリル酸系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーを有する。治療的有効量は、患者若しくは被験者に投与される場合に、末端肥大症の症状を改善するオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。好ましい実施形態において、前記製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を更に含んでも良い。
【0049】
本発明の組成物が患者に投与されるとき、患者の血漿中のオクトレオチド濃度は、時間とともに(放出プロフィール)、少なくとも2ヵ月、好ましくは約6ヵ月、及び最高約2年の長期間にわたる。前記組成物は、ヒト患者におけるオクトレオチドの定常状態で、約0.1〜約9ng/ml、好ましくは約1〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2〜約1.6ng/mlの平均血漿濃度を提供する可能性がある。定常状態とは、投薬間隔にわたって投与される薬剤の量が、その同じ期間にわたって除去される薬剤の量と等しくなる点である。
【0050】
前記ヒドロゲルは、エチレン不飽和モノマーA及びエチレン不飽和モノマーB(例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA)及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA))の混合物の重合によって形成される所定の平衡含水量(equilibrium water content:EWC)値を有する均一なホモポリマー若しくはコポリマーであっても良い。所定のEWCは、親水性モノマーA(ホモポリマーA)のヒドロゲルホモポリマーと親水性モノマーB(ホモポリマーB)のヒドロゲルホモポリマーとのEWC値を決定する工程、均一なコポリマーABのEWC値とそのコポリマーABの化学組成との関係を決定する工程、対象のEWC値を選択して、その対象のEWC値を有するコポリマーABの化学組成を決定する工程、前記対象のEWC値を有するコポリマーABを得るのに十分な量で、モノマーA及びモノマーBの重合可能な混合物を形成する工程、及び前記対象のEWC値によって特徴づけられるコポリマーABを得るように、重合反応を遂行する工程によって算出されても良い。
【0051】
語句「コポリマーAB」若しくは「コポリマーABは、基本的にモノマーA単位及びモノマーB単位から成る」は、モノマーA及びモノマーBの付加共重合が、前記モノマーの重合可能なエチレン結合によって遂行されることを意味する。例として、モノマーAがメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位及び繰り返しモノマーB単位を含む。
【0052】
文脈が他の意味を指し示さない限り、用語「コポリマー」は、少なくとも2つのエチレン不飽和モノマーの混合物を重合させることによって作られるポリマーを含む。
【0053】
用語「HEMA単位」は、以下の構造を意味する。
【0054】
【化2】
【0055】
この構造は、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(「2−hydroxyethyl methacrylate:HEMA」)を含む親水性材料を重合させることによって得られるポリマー中に繰り返される。
【0056】
用語「HPMA単位」は、以下の構造を意味する。
【0057】
【化3】
【0058】
この構造は、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(「hydroxypropyl methacrylate:HPMA」)を含む親水性材料を重合させることによって得られるものである。
【0059】
親水性製品に有用な液体の重合可能な材料としては、多種多様な重合可能な親水性のエチレン不飽和化合物、特に、エステル化可能な水酸基と、メタクリル酸及びアクリル酸(例えばメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸塩、メタクリル酸ジエチレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸プロピレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸ジプロピレングリコール及びアクリル酸塩、メタクリル酸グリシジル及びアクリル酸塩、メタクリル酸グリセリル及びアクリル酸塩等)のモノアルキレン及びポリアルキレンポリオール等の少なくとも1つの付加的な水酸基とを有するポリヒドロキシ化合物を有するアクリル酸若しくはメタクリル酸のモノエステル等の親水性モノマー、2−アルケンアミド(例えばアクリルアミド、メタクリルアミド等)、N−アルキル及びN,N−ジアルキル置換アクリルアミド及びメタクリルアミド(例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等)、N−ビニルピロリドン、アルキル置換N−ビニルピロリドン(例えばメチル置換N−ビニルピロリドン等)、N−ビニルカプロラクタム、アルキル置換N−ビニルカプロラクタム(例えばN−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタム等)が挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸はまた、これらの製剤に有用である場合がある。
【0060】
重合反応において、親水性モノマーの混合物を使用した。モノマーの型及び比率については、意図した用途若しくは使用のための望ましいEWC値を水和において所有する均一なポリマー、好ましくは架橋した均一なポリマーを得るように選択した。この値は、例えばHEMA及びHPMAの混合物の比率を変化させて、異なるモノマー比率を用いる一連のコポリマーを準備する工程、前記コポリマーのEWC値を確認する工程、HPMA/HEMAコポリマーにおける%HPMA(若しくは%HEMA)単位と前記コポリマーの重量パーセントEWCとの関係をプロットする工程によって予め決めることができる(図1を参照)。
【0061】
1実施形態において、キセロゲルとしての前記親水性インプラントは、容易に水を吸収する。水和状態において、それはヒドロゲルと呼ばれる。いずれの形においても、それは宿主に対して生物学的適合性を有し、且つ非毒性であり、生物分解性ではない。当然ながら、それは水膨潤性であり、且つ水不溶性である。ヒドロゲルが水和の最大レベルに到達するとき、そのヒドロゲルの含水量を「平衡含水量」と呼ぶ。前記ヒドロゲル(いずれの水和状態でも)のパーセント含水量は、以下のように決定される。
【0062】
【数1】
【0063】
一部の例において、特定の親水性モノマー混合物の重合は、水性媒体において、様々な範囲まで溶解する均一な親水性コポリマーをもたらす可能性がある。そのような場合、例えば最高3パーセントの少量の共重合性ポリエチレン不飽和架橋剤は、水膨潤性であり且つ水不溶性の、均一な架橋コポリマーを得るために、前記モノマー混合に含まれ得る。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、約38%のEWC値を有する。HEMA及びHPMAの架橋コポリマーは、38%以下のEWC値を有する。一方、HEMA及びアクリルアミドの架橋コポリマーは、例えば約75重量%、及びそれ以上に向けて、約38w/v%以上のEWC値を示す。従って、特定の用途のためのヒドロゲルデリバリーシステムに必要とされる、活性化合物(例えば薬剤)の有用な若しくは有効な溶出速度に依存して、当業者は、本明細書に開示される教示に従って、求められる速度で前記薬剤を溶出させるコポリマーヒドロゲル膜を目的に応じて作ることができる。好ましいコポリマーは、約15%〜約70重量%のHEMA単位と、約85〜30重量%の第2のエチレンモノマーの単位とを含み、約20%〜約75%、好ましくは約25%の範囲の所定のEWC値を有する。非常に好ましい均一なコポリマーは、約80重量%のHPMAと、約20重量%のHEMAとを含む親水性モノマー混合物から作られる。更なる実施形態において、前記混合物は、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート(「trimethylolpropane trimethacrylate:TMPTMA」)等の少量のポリエチレン不飽和架橋剤を更に含んでも良い。
【0064】
本発明の様々な観点は、均一なポリマー構造が上述の親水性モノマーの混合物の重合を介して形成される均一な親水性コポリマーと、デリバリーシステムにおける均一なポリマーカートリッジを利用するドラッグデリバリーデバイスとを含む。親水性モノマー及び疎水性モノマーの混合物の重合は、不均一なポリマーを作り出す。疎水性セグメントが前記ポリマーに存在する場合、界面自由エネルギーは増加し、従って、動物への埋め込み後のタンパク質吸着及び鉱化が強化される。ポリHEMAのヒドロゲルを、ゼロに近い界面自由エネルギーを有するように測定した。前記界面自由エネルギーの解釈によれば、完全に親水性成分であるヒドロゲルは、身体組織との生物学的適合性を有するように強く見える。わずかに架橋したポリHEMAは、(比較的少量の重合架橋剤を無視する)比較的一定の特徴若しくは値の均一な親水性「ホモポリマー」である。付加的な特徴若しくは特性を与えるために「ホモポリマー」ポリHEMAを変える技術は困難であり、時間がかかり、多くの場合、一定しない特性挙動をもたらす。一方で、HEMAと様々な多量の他の重合可能な親水性コモノマーとの混合物は、重合化により(所定の)目的に応じて作られた特性を有する予測可能な均一な親水性コポリマーを与えることが可能である。
【0065】
重合可能な反応媒体に含まれ得る有用な架橋剤は、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン不飽和化合物(例えばジ−、トリ−、及びテトラ−エチレン不飽和化合物)、特に、例えば、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコール及びジアクリル酸塩、ジメタクリル酸プロピレングリコール及びジアクリル酸塩の二不飽和架橋化合物を含む、又は含まない三不飽和架橋剤、及び以下のポリオール、すなわちトリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,1,1―トリメチロールプロパン、及び他のポリオールのジ−、トリ−、及びテトラ−アクリル酸塩若しくはメタクリル酸エステルを含む。
【0066】
重合反応は、大量に若しくは不活性溶媒によって実行することが可能である。適した溶媒には、水、多価アルコール(例えばグリコール、グリセリン、ジオキサン等)に加えて水溶性の低脂肪族の一価アルコール等の有機溶媒、及びそれらの混合物が含まれる。
【0067】
重合可能なエチレン不飽和化合物の触媒作用に有用な化合物は、フリーラジカル化合物、及び/若しくは、例えば有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、及びアルカリ金属硫酸塩等のビニル重合において一般的に用いられる型の開始剤を含む。実例としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)過酸化二炭素酸塩、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイル過酸化物、過酸化アセチル、ジ−n−プロピル過酸化二炭素酸塩、ジ−t−ブチル過酸化物、ジ−sec−ブチル過酸化二炭素酸塩、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムが挙げられる。好ましい触媒は、例えば、tert−ブチルperoctoate、過酸化ベンゾイル、及びジ(secブチル)過酸化二炭素酸塩等の、例えば約20〜80℃の適度に低温で効果的であるものである。従来の酸化還元重合触媒を使用しても良い。好ましくは、エチレン化合物の重合は、例えば紫外線、X線、ガンマ放射線、マイクロ波、若しくは他のよく知られた形の放射線等の放射線を用いて遂行することができる。紫外線治療のための好ましい触媒は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒及び/若しくは開始剤及び/若しくは放射線は、重合反応を最適化するように、触媒的有効量で用いられる。
【0068】
生物学的に活性な化合物を長期にわたって制御された速度で届けるような埋め込み型薬剤デバイスを作るために、本発明は、ポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質、若しくは熱硬化性物質の用途に焦点を合わせている。ポリウレタンポリマーは、使用するポリウレタンの型に応じて、好ましくは、押出成型、(反応)射出成形、圧縮成形、若しくは回転成形によって1若しくは2の開放端を有するシリンダー状の中空管に作られる(例えば米国特許第5,266,325号及び第5,292,515号を参照。この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。
【0069】
熱可塑性ポリウレタンは、押出成型、射出成形、若しくは圧縮成形で処理され得る。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形、若しくは回転成形で処理され得る。前記シリンダー状の中空管の寸法は、非常に決定的であり、できるだけ正確であることを必要とする。
【0070】
ポリウレタン系ポリマーは、多機能ポリオール、イソシアン酸塩、及び連鎖延長剤から合成される。各ポリウレタンの特徴は、その構造に起因する可能性がある。
【0071】
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアナート、及び二官能基連鎖延長剤から作られる(例えば、米国特許第4,523,005号及び第5,254,662号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。マクロジオールは、柔らかい領域を形成する。ジイソシアナート及び連鎖延長剤は、固い領域を形成する。その固い領域は、前記ポリマーの物理的な架橋部位として役立つ。これらの2つの領域の比率を変化させることによって、前記ポリウレタンの物理的な特徴を変えることができる。
【0072】
熱硬化性ポリウレタンは、(二機能より大きい)多機能ポリオール及び/若しくはイソシアン酸塩及び/若しくは連鎖延長剤で作られ得る(例えば、米国特許第4,386,039号及び第4,131,604号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。熱硬化性ポリウレタンはまた、化学的に架橋するためのポリマー鎖及び適切な架橋剤及び/若しくは開始剤における不飽和結合を誘導することによっても作られ得る(例えば、米国特許第4,751,133号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。架橋部位の量及びそれらを分布する方法を制御することによって、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0073】
要求される特性に応じたポリオールの主鎖を変更させることによって、様々な官能基をポリウレタンポリマー鎖にもたらすことが可能である。前記装置が水溶性の薬剤のデリバリーのために用いられる場合、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、及びヒドロキシ基等の親水性ペンダント基は、前記ポリマーの親水性を増加させるために、ポリオールに組み込まれる(例えば、米国特許第4,743,673号及び第5,354,835号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。前記装置が疎水性薬剤のデリバリーのために用いられる場合、アルキル基、シロキサン基等の疎水性ペンダント基は、ポリマーの疎水性を増加させるために、ポリオールに組み込まれる(例えば、米国特許第6,313,254号、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)。前記活性物質の放出速度はまた、前記ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性によっても制御され得る。
【0074】
好ましい実施形態において、シリンダー状の形状のインプラントは、その中心にオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドと、選択的に薬学的に許容可能な担体とを含む。前記インプラントの膜の厚さ(内部と外部表面との間)は実質的に均一であって、含有物質を放出するための律速障壁として役立つものである。このようなインプラントは可塑化あるいは水和されても良く、様々な医療用途に使用するための他の幾何学的形状の物品に再形成されても良い。
【0075】
移植可能な製剤の製造では幾つかの因子が考慮される。放出特性(遅延時間、放出速度、及び期間)が決定され、親水性ポリマー物質が同定され、膜(律速膜として)を介した活性剤の拡散が測定される。所定の活性剤に対する律速膜の水和特性は、選択ポリマーのフィルムを調製し、当該技術分野で周知の2区画垂直ガラスセル(two compartment vertical glass cell)を用いて拡散試験を行うことにより、容易に測定可能である。
【0076】
拡散開始時における拡散係数及び含水量(すなわち、この値以下では実質的に拡散は起こらないものである。以下「%Hd」)を測定する。様々なポリマーから一連の膜が調製される。この膜はその後、限界容量まで水和し、平衡含水量を測定する。完全に水和した膜を前記2区画垂直ガラスセル中に入れ、様々な平衡含水量における膜物質を介した高分子組成物の拡散を測定してプロットする。最大限に水和した膜では拡散は検出されないものであり(すなわち、活性剤は受容体セルに全く拡散しない)、この膜の平衡含水量が試験システムの%Haとなる。これは、透過性に対する平衡含水量の曲線をプロットすることにより達成される。
【0077】
前記透過性の結果(拡散係数)は、拡散に関するフィックの第一法則に従って以下の方程式を用いて得られる。
【0078】
【数2】
【0079】
式中、dQ/dtは膜物質を介した流量であり(ju,g/hr)、累積輸送に対する時間の曲線の直線部分の勾配として測定されるものであり、Aは膜面積(cm2)であり、Pは膜の透過係数(cm2/hr)又はDKdであって、Dは膜の拡散(cm2/hr)であり、Kdは膜/供与体溶液の分配係数であり、lは実験の終点で測定される膜の厚さ(cm)であり、Cdは供与体溶液の濃度(μg/cm3)である。
【0080】
その後、遅延放出特性を測定する。別の一連のポリマー膜を調製し、架橋剤及びモノマーの量を再び変化させることが可能である。これらの膜をその後水和させるが、部分的に、すなわち%Hd以下の含水量に水和させる。この部分的に水和させた膜を2区画垂直ガラスセルに入れ、膜を介した活性化合物の分散を測定し、時間に対してプロットする。供与体及び受容体セルのための緩衝溶液を選択し、前記部分的に水和させた膜に接触させて、更に、送達環境下において水和させる場合と殆ど同じ速度で水和させる。拡散試験の開始時、すなわち活性剤を供与セルに加えた時点と、前記受容体セル中の前記活性剤の薬学的有効濃度を検出した時点との間の時間が、ポリマーと初期水和率とを組み合わせた放出遅延時間である。
【0081】
シリンダー状のデバイスの物理的な寸法を決定するためには、輸送される活性剤の全量を測定しなければならない。これが目的とする1日投与量及び輸送期間を有する生成物である。好ましい実施形態において、前記輸送期間は少なくとも約2ヶ月であり、より好ましくは約6ヶ月であり、最大約2年である。前記目的とする1日投与量は、たとえば1日あたり約10〜約1000μgのオクトレオチドであり、好ましくは1日あたり約20〜約800μgのオクトレオチドであり、より好ましくは1日あたり約30〜300μgのオクトレオチドである。
【0082】
シリンダー状デバイスのシリンダー状貯留層(中心)の容量は、IIri2hと同量であり、ここで、riは前記貯留層の半径であり、hはその高さである。シリンダーからの定常状態放出の式は、以下の通りである。
【0083】
【数3】
【0084】
式中、r0は前記シリンダー状デバイスの外径であり、Cdは供与体溶液、すなわち担体中の薬物濃度である。定常状態放出は、Cdが飽和で維持されているときに得られる。目的とする持続放出に必要な膜の厚さは、ro−riである。
【0085】
使用する活性剤の量は、目的とする1日投与量によってのみだけでなく、投与レベルが持続される日数にも依存する。この量は実験的に算出されるが、実際に送達される投与量は、前記デバイスにおいて使用される場合、物質と担体との任意の相互作用による機能でもある。
【0086】
一旦、適切なポリウレタンポリマーが選択されると、次の工程は、シリンダー状のインプラントを作る最適な方法を決定する工程である。
【0087】
熱可塑性のポリウレタンに対しては、一貫した物理的寸法を有する2つの開放末端がある中空管を形成するために、精密押出成形及び射出成形を選択することが好ましい。この貯留層は、活性剤及び担体含む適切な製剤を自由に充填すること、或いは活性剤の充填を最大限にするために事前に作製したペレットで満たされることが可能である。前記製剤を前記中空管に充填する前に、1つの開放末端を密閉する必要がある。前記2つの開放末端を密閉するために、事前に作製した2つの末端プラグを使用しても良い。この密閉する工程は、熱又は溶媒、或いは他の別の方法を適用させて達成可能であり、前記末端は好ましくは永久的に密閉される。
【0088】
熱硬化性ポリウレタンに対しては、硬化機構に応じて、精密反応射出成形又は回転成形を選択することが好ましい。前記硬化機構が熱を介して実施された場合には反応射出成形が使用され、前記硬化機構が光及び/又は熱を介して実施された場合には回転成形が用いられる。好ましくは、1つの開放末端を有する中空管は回転成形によって作られる。好ましくは、2つの開放末端を有する中空管は反応射出成形によって作られる。この貯留層は、熱可塑性ポリウレタンと同様の方法によって充填される。
【0089】
好ましくは、開放末端を密閉するためには、適切な光及び/又は熱開始熱硬化ポリウレタン製剤を用いて前記開放末端を充填し、前記製剤を光及び/又は熱によって硬化する。より好ましくは、事前に作製した末端プラグを使用して前記開放末端を密閉しても良く、光及び/又は熱開始熱硬化ポリウレタン製剤を前記事前に作製した末端プラグと前記開放末端との間の表面に適用させて、光及び/又は熱、或いは別の任意の方法を用いて前記製剤を好ましくは永久的に硬化させても良い。
【0090】
最終工程は、活性剤に必要な送達速度を達成するために、インプラントを調整及び刺激する工程を含む。活性成分の種類によって、親水性又は疎水性の適切な調整及び刺激媒体を選択する。親水性活性剤に対しては水をベースにした媒体が好ましく、疎水性活性剤に対しては油をベースにした媒体が好ましい。
【0091】
当該デバイスの形状をできる限り精密に保持するために、前記シリンダー状のデバイスは、好ましくは熱可塑性ポリウレタンポリマーのための精密押出成形又は精密成形、及び熱硬化性ポリウレタンポリマーのための反応射出成形又は回転成形によって製造される。
【0092】
カートリッジは、1つの末端を閉じるか、或いは両末端を開放させて作製可能である。前記開放末端は、滑らかであって且つ確実に密閉された末端を確保するために、事前に製造した末端プラグで穴が閉じられていてもよい。前記活性物質を最大限に充填するために、前記固体活性剤及び担体はペレット形状に圧縮されていてもよい。
【0093】
当該インプラントの位置を特定するために、放射線不透過性物質を前記貯留層に挿入するか、或いは前記放射線不透過性物質を前記カートリッジを密閉するために使用した末端プラグに作り替えることによって、前記放射線不透過性物質を前記送達デバイスに組み込むことができる。
【0094】
様々な実施形態において、本発明の新規な製剤は、これらに限らないが、懸濁媒体、溶媒、水溶液系、及び固体基質又はマトリックスを含む。
【0095】
前記担体として有用な懸濁媒体及び溶媒は、例えば、シリコン油(特に医療グレードのもの)、コーン油、ヒマシ油、ピーナッツ油、及びゴマ油などの油、ヒマシ油とエチレンオキシドとの凝縮生成物、低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル、低級アルカノール、グリコール、及びポリアルキレングリコールなどを含む。
【0096】
前記水溶液系は、例えば、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水又は生理食塩水中のデキストロースなどを含む。前記水溶液系における電解質の存在は、その水溶液系における高分子薬剤の溶解度を低下させる傾向がある。
【0097】
前記固体基質又はマトリックスは、例えば、デンプン、ゼラチン、糖(例えばグルコース)、天然ゴム(例えばアカシア、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)などを含む。好ましい実施形態において、当該薬学製剤は、更に、約2%〜約20%、より好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0098】
前記担体はまた、保存剤、安定剤、湿潤剤などのアジュバントも含むものであってもよい。
【0099】
本発明を実施する上で有用な水和液体は、一般的に、例えば体液、滅菌水、涙液、生理食塩水、リン酸緩衝液など、活性化合物が放出される環境を想定した液体である。水以外の液体が水和液体として有用であるが、親水性の膜が水和されている度合いは、膜の「水分含量」と称される。
【0100】
一旦、貯留層が充填された状態でカートリッジの両端が密閉されると、このカートリッジは、一定の送達速度を確保にするために、適切な期間、調整及び刺激される。
【0101】
前記薬物送達デバイスの調整及び刺激は、前記貯留層を取り囲むポリマーの中に活性剤(薬物)を充填する工程を含み、これによって実際にインプラントが使用される前の前記活性剤の損失を防がれる。前記調整及び刺激工程に使用する条件は、活性剤、及びそれらの工程が実施される温度と媒体によって異なる。前記調整及び刺激の条件は、幾つかの例においては同じである場合がある。
【0102】
前記薬物送達デバイスの調製方法における調整及び刺激工程は、特定の薬物の決められた放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含む前記インプラントを調整及び刺激する工程は、好ましくは水溶性媒体中、より好ましくは生理食塩溶液中で行われる。疎水性薬物に対しては、前記媒体は、血漿のような媒体であっても良く、これに限らないが、シクロデキストリンを含む。前記調整及び刺激工程は、3つの特定要因、すなわち温度、培体、及び時間を制御することにより実施される。
【0103】
前記薬物送達デバイスの調整及び刺激工程は、前記デバイスが設置される媒体により影響を受けることが当業者によって理解される。例えば、ヒストレリン及びナルトレキソンインプラントは、食塩溶液中で調整及び刺激されるものであり、より具体的には0.9%ナトリウム含有生理食塩水中で調整され、1.8%塩化ナトリウム含有生理食塩水中で刺激される。
【0104】
前記薬物送達デバイスを調整及び刺激するために使用される温度は、広い温度範囲にわたって変化させることが可能であるが、いくつかの例においては37℃が好ましい使用となっている。
【0105】
前記薬物送達デバイスを調整及び刺激するために使用される時間は、具体的なインプラント又は薬物の望ましい放出速度に依存して、1日から数週間まで様々であっても良い。
【0106】
インプラントを調整及び刺激する工程は、インプラント内に含まれる薬物の放出速度を最適化することであることが当業者によって理解される。このようなものとして、薬物送達デバイスの調整及び刺激に費やす時間を短くすると、より長い調整及び刺激工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して、前記薬物の放出速度が遅くなる。
【0107】
前記調整及び刺激工程における温度もまた前記放出速度に影響を与えるものであり、低温では、より高い温度で処理を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して前記薬物送達デバイスに含まれる薬物の放出速度が遅くなる。
【0108】
同様に、水溶液の場合、一部の例ではこの水溶液は好ましくは生理食塩溶液であるが、前記溶液に含まれる塩化ナトリウム含有量もまた、前記薬物送達デバイスから得られる放出速度の種類を決定する。より具体的には、塩化ナトリウム含有量が低いと、高い塩化ナトリウム含有量で調整及び刺激を受けた薬物送達デバイスと比較して、より速い放出速度をもたらすものである。
【0109】
一実施形態において、本発明の薬学的製剤は、好ましくは約20%のHEMA及び約80%のHPMAであるHEMA及びHPMAのコポリマー混合物内に酢酸オクトレオチド製剤を含む。好ましい実施形態において、前記薬学的製剤は、約20〜約150ミリグラム、好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含む。前記製剤は、更に、約2〜約20%の賦形剤を含むものであっても良い。好ましい一実施形態において、前記製剤は、好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含む。別の好ましい実施形態において、前記製剤は、約2%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0110】
別の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、HEMA及びHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMA及び約80%のHPMAのコポリマー混合物中に、約50ミリグラムのオクトレオチド製剤を含む。更なる実施形態において、前記製剤は、更に、前記酢酸オクトレオチドと共に、約10%のヒドロキシプロピルセルロースと、2%ステアリン酸マグネシウムとを含む。
【0111】
別の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、HEMA及びHPMAのコポリマー、好ましくは約40%のHEMA及び約60%のHPMAのコポリマー混合物中に、約83mgのオクトレオチド製剤を含む。更なる実施形態において、前記製剤は、更に、前記酢酸オクトレオチドと共に約10%のヒドロキシプロピルセルロースと2%のステアリン酸マグネシウムとを含む。
【0112】
更なる実施形態において、本発明の薬学的製剤は、ポリウレタン系ポリマー中、約20ミリグラム〜約150ミリグラム、より好ましくは約40ミリグラム〜約90ミリグラムのオクトレオチド製剤を含む。
【0113】
ホルモン障害に関連した疾患を治療する方法もまた提供される。前記方法は、オクトレオチドを投与する工程と、長期にわたって、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月間から最大約2年間、定常状態におけるオクトレオチドの血漿濃度を約0.1ng/ml〜約9ng/mlに維持する工程とを含む。好ましい実施形態において、前記定常状態におけるオクトレオチドの血漿濃度は、長期間、約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2ng/ml〜約1.6ng/mlに維持する。このようなホルモン障害は末端肥大症などを含む。
【0114】
一実施形態は、オクトレオチドを投与し、また長期にわたり、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、オクトレオチドの定常血漿濃度を約0.1ng/ml〜9ng/ml、好ましくは約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2〜約1.6ng/mlに維持することによって、GH値を低下させる方法である。
【0115】
別の実施形態は、オクトレオチドを投与し、また長期にわたって、好ましくは少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、オクトレオチドの血漿濃度を約0.1ng/ml〜約9ng/ml、好ましくは約1ng〜約2ng/ml、より好ましくは1.2〜約1.6ng/mlに維持することにより、IGF−I値を低下させる方法である。
【0116】
別の実施形態は、本発明のインプラントを少なくとも1つ、好ましくは本発明のインプラントを2つ投与する工程を有する末端肥大症を治療する方法である。この方法において、各インプラントは、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチド、好ましくは約40〜約90ミリグラムのオクトレオチド、より好ましくは約50ミリグラムのオクトレオチドを含んでいても良く、少なくとも2ヶ月間、好ましくは約6ヶ月から最大約2ヶ月間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出させても良い。
【0117】
別の実施形態は、カルチノイド腫瘍及びVIP産生腫瘍と関連する症状を治療する方法である。一実施形態は、少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出するオクトレオチドインプラント製剤の投与により、カルチノイド腫瘍に関連した重度の下痢及び顔面紅潮の症状を治療する方法である。別の実施形態は、少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、治療的有効量のオクトレオチドを放出する移植可能オクトレオチド製剤を投与することにより、VIP産生腫瘍に関連した水様性の下痢を治療する方法である。
【0118】
別の態様は、ヒドロゲル及びオクトレオチドの治療用組成物であり、この組成物を移植する場合、前記オクトレオチドは、約0.1ng/ml〜約9ng/ml、好ましくは約1ng/ml〜約2ng/ml、より好ましくは約1.2ng/ml〜約1.6ng/mlのCssをもたらす及び/又は維持する速度において放出される。更なる実施形態は、ヒドロゲル及びオクトレオチドの治療用組成物であり、この組成物を移植する場合、前記オクトレオチドは、長期にわたり1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは1日あたり約20μg〜約800μg、より好ましくは1日あたり約30μg〜300μgの速度で放出される。より好ましい実施形態において、前記オクトレオチドは、少なくとも約2ヶ月以上、より好ましくは約6ヶ月〜約2年間放出される。前記ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマー、又はポリウレタン系ポリマーを含んでいても良い。
【0119】
別の実施形態は、オクトレオチドと親水性ポリマーとを含む制御放出製剤であり、インビトロにおいて少なくとも約2ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、1日あたり約30μg〜約250μgの、より好ましくは1日あたり約100μg〜約130μgの速度でオクトレオチドを放出することが可能である。更なる実施形態において、前記親水性ポリマー製剤は、インビトロで1日あたり約100μgの平均速度でオクトレオチドを放出することが可能である。好ましくは、前記親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマー及びメタクリレート系ポリマーから選択されるものである。
【0120】
本発明の更なる実施形態は、移植のためのオクトレオチドを含む制御放出製剤であり、この製剤は、インビトロにて、約6週間後に約20%未満の前記オクトレオチドが前記製剤から放出され、約6ヵ月後には約60%の前記オクトレオチドが前記製剤から放出されるように、前記オクトレオチドが親水性ポリマー中に含まれている。
【0121】
本発明の薬学的組成物中に含まれる薬学的に許容可能なオクトレオチド、その塩、溶媒和されたもの、又はそのプロドラッグの量は、例えば使用される具体的なオクトレオチド、目的とする投与量レベル、使用されるヒドロゲルの量、及び前記組成物中に含まれる更なる物質の種類と量などを含む様々な要因によって変化する。前記組成物中のオクトレオチド又はその誘導体の量は、効果的な薬物送達に対して望ましい前記化合物の投与量、分子量、及び活性によって変化する。使用薬物の実際の量は、患者の年齢、体重、性別、病状、疾患、又は任意の他の医療上の基準に依存する可能性がある。実際の薬物量は、当技術分野の技術者によって、目的の医学用途に従って決定される。本発明に従って製剤化される薬学的投与量は、主治医によっておよそ6ヶ月に1回投与されるように決定される場合がある。
【0122】
一般的に、当該オクトレオチドは、インプラント又は他の薬学的組成物中、約20ミリグラム〜約150ミリグラム、好ましくは約40〜約90ミリグラム、より好ましくは約50〜約85ミリグラムのオクトレオチドの量で製剤化される。末端肥大症の治療に用いる成人における1日の用量は、一般的に、1日あたり約300〜約600μgの即時放出オクトレオチドである(サンドスタチン(登録商標)は100又は200μgを1日3回)。好ましくは、前記組成物中のオクトレオチドの量は、長期にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは1日あたり約20μg〜約800μg、より好ましくは1日あたり約30μg〜約300μg放出するように製剤化される。そのような放出速度は、患者の望ましい治療的血中レベルを長時間約0.1〜約9ng/mlに維持するものである。
【0123】
オクトレオチドを含むヒドロゲルデバイスは、オクトレオチドを患者の血漿中に制御放出するものである。本発明の薬学的組成物に使用されるオクトレオチドの放出速度を制御するのに適したヒドロゲルは、これらに限らないが、HPMA、HEMAなどを含む親水性モノマーのポリマーを含む。そのようなヒドロゲルはまた、当該組成物からのオクトレオチドの分解及び損失を阻止することも可能である。
【0124】
一実施形態において、本発明の薬学的製剤は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマー内に含まれる酢酸オクトレオチドを含む。好ましい実施形態において、前記薬学的製剤のコポリマーは、約20%のHEMA及び約80%のHPMAを含む。別の好ましい実施形態において、前記薬学的製剤のコポリマーは、約40%のHEMA及び約60%のHPMAを含む。
【0125】
更なる実施形態において、前記ヒドロゲルは、ポリウレタン系ポリマーを含む。
【0126】
本発明の薬学的組成物に含まれるヒドロゲルの量は、例えば、使用した具体的なマトリックス、ヒドロゲルの分子量、ヒドロゲルの親水性、使用するオクトレオチドの種類と量、及び前記組成物中に含まれる更なる物質の存在、及び種類と量などを含む様々な因子によって変化する。
【0127】
当該インプラントの大きさ、形、及び表面積は、そのインプラントからのオクトレオチドの放出速度を増進又は低下させるために変化させても良い。
【0128】
本発明の製剤は、副作用を最小限にしながら治療効果を最大限にする具体的且つ望ましい放出特性を示す。前記望ましい放出特性は、前記薬物又は活性剤の最大血漿濃度(Cmax)及び定常状態における薬物又は活性剤の血漿濃度(Css)の観点から説明されても良い。
【0129】
本発明の薬学的組成物は、例えば流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温溶融結合剤を含む結合剤、崩壊剤、及び/又は潤滑剤などの助剤又は賦形剤を含んでいても良い。溶解剤は投与製剤からのオクトレオチドの溶解速度を増加させるものであって、オクトレオチドの溶解性を増加させる機能を有する。適切な溶解剤は、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、及びアジピン酸などの有機酸を単独で或いは組み合わせて含む。これらの物質は、緩衝系を作り出すために、例えばクエン酸とクエン酸ナトリウムなどのように、酸の塩と組み合わせても良い。
【0130】
治療上有効な血漿濃度特性のオクトレオチドの溶解及び確立における微環境のpHを変化さることが可能な他の物質は、無機酸の塩及び水酸化マグネシウムを含む。他の使用可能な物質は、表面活性剤、及び他の可溶化物質であっても良い。本発明の薬学的組成物の使用に適した表面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、及びソルビタン脂肪酸エステルを含む。
【0131】
本発明の薬学的組成物の使用に適した希釈剤は、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、ショ糖、フルクトース、グルコース、デキストロース、又は他の糖、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、又は他の糖アルコール、乾燥デンプン、サッカリド、デキトリン、マルトデキストリン、又は他のポリサッカリド、イノシトール、又はその混合物など、薬学的に許容可能な不活性充填剤を含む。前記希釈剤は、好ましくは水溶性希釈剤である。好ましい希釈剤の例は、例えば、FMC社から市販されているAvicel PH1 12、Avicel PH101、及びAvicel PH102などの微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、Pharmatose DCL21などのラクトース、Penwestファーマシューティカルズ社から市販されているEmcompressなどの第二リン酸カルシウム、マンニトール、デンプン、ソルビトール、ショ糖、及びグルコースを含む。希釈剤は、圧縮特性に注意を払って、具体的な当該組成物が適合するように慎重に選択される。前記希釈剤は好ましくは、制御放出組成物の約2重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で使用される。
【0132】
流動促進剤は処理中の成分の流動及び圧縮率を改善するために使用される。適切な流動促進剤は、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の気相加水分解などによって調製されるコロイド二酸化ケイ素、サブミクロンヒュームドシリカなどを含む。コロイド二酸化ケイ素は、Cabot社(商標名Cab−O−Sil)、Degussa社(商標名Aerosil)、及びE.I.DuPont社を含む多くの供給元から市販されているサブミクロンの非晶質粉末である。コロイド二酸化ケイ素はまた、とりわけ、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸、及びヒュームド二酸化ケイ素として既知である。一実施形態において、前記流動促進剤は、Aerosil200を含む。
【0133】
表面活性剤、溶解剤、及びその他の可溶化剤などの別の物質が使用されても良い。本発明の薬学的組成物の使用に適した表面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、及びソルビタン脂肪酸エステルを含む。溶解剤は、オクトレオチドの溶解性を増加させることによって、オクトレオチドの溶解速度と機能を増強する。適切な溶解剤は、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸を含み、それらは単独で或いは組み合わせて使用することが可能である。これらの物質は、緩衝系を作るために、例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸などのように、前記酸の塩と組み合わせても良い。溶解物の微環境のpHを変化させるために使用される他の物質は、無機酸の塩、及び水酸化マグネシウムを含む。
【0134】
本発明の薬学的組成物の使用に適した崩壊剤は、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドン、クロスカルメロース、微結晶性セルロース、低置換度ヒドロキシプロプルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリビニルアルコール、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、ベータシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、粘土、ベントナイト、及びそれらの混合物を含む。
【0135】
本発明の活性成分は、薬学的に許容可能であって更に活性成分と適合する賦形剤と共に、本願明細書に記載した治療方法の使用に適した量で混合されても良い。当業者が周知のように、様々な賦形剤が本発明のオクトレオチドと均一に混合されても良い。例えば、オクトレオチドは、これらに限らないが、微結晶性セルロース、コロイド二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリン、及びこれらの組み合わせなどの賦形剤と混合又は組み合わせても良い。
【0136】
本発明の薬学的組成物の使用に適した潤滑剤は、これらに限らないが、Aerosil 200、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセリルなど、圧縮された粉末の流動性に作用する物質を含む。
【0137】
本発明の別の観点によると、安定な制御放出移植可能投与製剤が提供され、この製剤は、ヒドロゲル中に有効量のオクトレオチドを含み、更に患者への投与又は治療の投薬計画の一部として、少なくとも2ヶ月、好ましくは約6ヶ月から最大約2年間にわたり、放出特性(治療上有効なオクトレオチドの血漿値)を提供するものである。
【0138】
本発明の投与製剤はまた、1若しくはそれ以上の上述の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいても良い。好ましい実施形態において、前記投与製剤は、オクトレオチドの単位用量及び速度制御ポリマーに加えて、希釈剤及び潤滑剤を含む。特に好ましい賦形剤は、ステアリン酸マグネシウムである。これらの物質の使用において、ステアリン酸マグネシウム成分は、好ましくは、前記投与製剤の約0.5〜約5w/w%、より好ましくは約2%含まれ、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0139】
別の好ましい賦形剤はヒドロキシプロピルセルロースである。前記ヒドロキシプロピルセルロースが使用される場合、このヒドロキシプロピルセルロース成分は、好ましくは前記投与製剤の約0.5%〜約20w/w%、より好ましくは約10%含まれ、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0140】
好ましい実施形態において、前記製剤は、ステアリン酸マグネシウム及びヒドロキシプロピルセルロースの両方を含み、好ましくは約2%のステアリン酸マグネシウム及び約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロゲル及びオクトレオチドは前記製剤のバランスを含む。
【0141】
本願明細書において使用される「制御放出」の用語は、活性剤が毒性以下の濃度でその治療的有効な血中濃度を少なくとも約2ヶ月、好ましくは約6ヶ月以上の間にわたり維持されるような速度で、投与製剤からの前記活性剤の、所定の一貫した放出を含む。好ましくは、当該移植可能な製剤中の前記活性剤の量は、少なくとも約2ヶ月毎、好ましくは約6ヶ月から最大約2年毎に前記薬学成分を投与することにより、治療上有用な血漿濃度を確立する。
【0142】
本発明の組成物は、GH及びIGF−I値の上昇により特徴付けられるホルモン病の治療のために、本発明の移植可能な組成物を患者に投与することにより使用可能である。好ましくは、当該インプラントは約6ヶ月毎に投与され、治療的有効量のオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドを放出する。前記移植可能な組成物は、患者に対して、ホルモン病を改善するための最低治療有効値で、しかし患者が日中にゆっくりできる期間を向上させるための最大濃度と比較すると比較的低い値のオクトレオチド濃度を放出する。前記組成物は、対象がいかなる悪影響も示すことなく、与えられた投与量を許容することが可能な投与量と期間において前記対象に投与されても良く、必要に応じて、投与の後すぐに前記活性剤の投与量を増加させて、対象において治療用量が達成されるまで選択した時間間隔で投与されても良い。例えば、前記活性剤は好ましくはオクトレオチドを1日あたり約10μg〜約1000μg、好ましくは約20μg〜約800μg、より好ましくは30μg〜約300μgの投与量で少なくとも約2ヶ月、より好ましくは約6ヶ月から最大2年間投与される。
【0143】
オクトレオチドが酢酸オクトレオチドである本発明の組成物は、特に、GH及びIGFの値が上昇することにより特徴付けられるホルモン病の治療、とりわけ末端肥大症の治療における使用に適している。本発明の酢酸オクトレオチド剤はまた、カルチノイド症候群及びVIP産生腫瘍と関連する症状の治療にも適している。
【0144】
上述したように、移植可能な製剤は、移植の前に水和されているか、或いは所定期間「刺激(primed)」されている。適切な水和剤は、これらに限らないが、水、及び生理食塩水などの、これらに限らず水をベースとした他の溶液を含む。前記移植可能な製剤は、1日未満〜数ヶ月まで、或いはそれより長い間、刺激されていても良い。前記刺激工程は、移植における活性成分の放出に影響を与えることが観察されている。例えば、刺激工程によって、活性成分によるヒドロゲルの壁の浸潤及び飽和が開始され、前記インプラントが刺激される時間の長さによっては、移植前に前記ヒドロゲルから進出し始める可能性がある。刺激されたインプラントは、実質的に移植した際に活性成分の放出が開始され、移植直後に薬物放出が最高に達する可能性がある。一方、わずかな刺激を与えるか又は全く刺激をしないと、移植した際に、インプラントが水和され前記活性成分の放出が開始するまで、しばらくの間、実質的に放出されない場合がある。
【0145】
一実施形態において、制御放出されるオクトレオチド製剤を投与する方法は、本発明のオクトレオチド製剤を1ヶ月以下、好ましくは1週間以下の間水和する工程と、患者に移植する工程とを有する。
【0146】
更なる実施形態において、制御放出されるオクトレオチド製剤を投与する方法は、本発明の脱水オクトレオチド製剤を患者に移植する工程を有する。
【0147】
本発明の更なる特徴及び実施形態は、以下の限定されない実施形態によって説明される。
【実施例1】
【0148】
インビトロのオクトレオチド放出速度
この実施例は、本発明の移植可能なオクトレオチド製剤の調製、及びその製剤のインビトロのオクトレオチド放出について説明する。本研究における一連のインプラントについて、安定性、及びインビトロにおける約22週間(第146番)、28週間(第136番)、及び33週間(他の製剤すべて)にわたるヒドロゲル製剤からのオクトレオチドの放出特性を決定するために試験した。各インプラントは約50ミリグラムの酢酸オクトレオチド及び約2%のステアリン酸を含むが、ポリマーカートリッジは異なる量のHEMA及びHPMAを含み、従って、表1に示したように異なるEWCs%を示した。
【0149】
【表1】
【0150】
図2、3、及び4は、上述した各製剤における前記インプラントからの1日あたりのオクトレオチドの放出を示す。図2に示したように、第136番の製剤は、初期放出は比較的速く、更に比較的急速に減少する。図3に示したように、第146番の製剤の初期放出速度は比較的低い。図4は第145番、第147番、第133番、第144番、第143番、及び第142番の製剤の放出特性を示す。図4に示したように、初期放出速度は、EWC%と良く関連しており、22.9〜27.6%のEWCs%に対して1日あたり20〜450μgの範囲であった。しかしながら、インプラント及び溶出媒体内における浸透圧差に関する問題に直面した。従って、前記オクトレオチド製剤を安定化させるために、多くの実施例において「選択的水和」の原則に基づいて、より良い安定性を提供する賦形剤を使用するように設計した。
【実施例2】
【0151】
仔ウシ血清中における製剤研究
膨潤問題に対する浸透圧の効果を測定するために、製剤第136番及び第143番に相当する本発明の2つのインプラントを仔ウシ血清中に溶出した。特に、約40%のHEMAと60%のHPMAとから構成されており、2%のステアリン酸と共に酢酸オクトレオチドを含む製剤番号第136番、及び約30%のHEMAと70%のHPMAとから構成されており、20%のPEG3300、及び80%の酢酸オクトレオチドを含む製剤番号第143番について試験した。3ヶ月後、前記インプラントの外観は正常であり、比較的直線状でわずかに膨潤していたのみであった。
【実施例3】
【0152】
製剤研究
浸透圧差のため、実施例1に記載したインプラントは最終的には著しい膨潤が見られ、このインプラントは破裂した。本実施例では、オクトレオチドインプラントを安定化させるのに有用な物質を選別するように設計された製剤について説明する。本研究において、インプラントの形状と耐久性に与える賦形剤の効果を測定するために一連のインプラントを観察した。各ポリマーカートリッジは約28%のHEMA、約66.5%のHPMA、及び5%のグリセリンから構成した。前記含有物には、表2に示したように、様々な賦形剤と共に酢酸オクトレオチドを含ませた。
【0153】
【表2】
【0154】
ゴマ油及びMCCなどの疎水性物質は、製剤中で分離し、「選択的水和」を与えず、本発明においてはあまり好ましくはないものであった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を促進した。マンニトール及びグリコール酸のような低分子量の添加剤は安定効果を与えず、完全性を減少させた。これらの物質はいずれもオクトレオチド製剤に対して十分な安定性を与えるものではなかった。従って、実施例4に示す第二の研究に着手した。
【実施例4】
【0155】
製剤研究とインビトロのオクトレオチド放出速度
本研究は、表3に示すように様々な賦形剤を用いてヒドロゲルインプラント中のオクトレオチドの安定性を評価した。前記賦形剤は、高分子量であり、ある程度水溶性の性質を有するものを選択した。各インプラントは、約20%のHEMAと約80%のHPMAから構成されるポリマーカートリッジから作製した。生理食塩水中の前記インプラントの外観を、9週にわたって監視して評価した。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
図5に示したように、デキストランを含む製剤が最も溶出速度が速かった。ペクチン、AcDiSol、及びCarbopolを含む製剤は、2週間後に水和し、9週間後に溶出したが、十分な放出を示さなかった。従って、良好な溶出と外観との組み合わせた優れた安定効果を有する好ましい実施形態は、ヒドロキシプロピルセルロースによって達成された。
【実施例5】
【0158】
健常なイヌにおける1ヶ月の移植試験
この実施例は、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的許容可能なその塩の放出について説明する。本発明のオクトレオチド皮下インプラントの1つを健常なイヌに移植した。前記オクトレオチド皮下移植製剤は、26.6%の含水量であり、44mgの酢酸オクトレオチドを含むものであった。インビトロ放出速度は、1週後に約500μg/日、4週後に約300μg/日に減少し、本試験期間中のオクトレオチドの全放出は約10mgであると推定された。前記インプラントを移植28日後に除去した。本試験に使用した前記インプラントは約3.5cmの長さであった。酢酸オクトレオチド、IGF−I、及びGHの血清濃度を得るための血液サンプル(1.5ml)を、麻酔と絶食をせずに頸静脈穿刺によって0、1〜7、11、14、18、21、25、及び28日目に採取した。
【0159】
前記オクトレオチド移植製剤が十分に許容できるか、食餌摂取は正常であるか、並びに異常な行動はないかを含む臨床的観察に留意した。
【0160】
血清分析では、4日目に酢酸オクトレオチドのピークが見られ、すべての間隔において検出可能な酢酸オクトレオチドの量を測定した。IGF−I濃度は移植後4日目まで減少し、その後25日目までに投与前の値まで戻った。IGF−I値は、図6で見られるように、移植前の値の40〜90%まで減少した。
【実施例6】
【0161】
6匹の健常なイヌにおける6ヶ月の移植試験
この実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的許容可能なその塩の放出について説明する。6匹の健常なイヌを2つのグループに分け、1若しくは2つの本発明のオクトレオチド皮下インプラントをそれぞれ移植した。前記オクトレオチド皮下インプラントは約25.2%の含水量を有しており、約60mgの酢酸オクトレオチドを含むものであった。前記インプラントを移植6ヶ月後に除去した。酢酸オクトレオチド、IGF−I、及びGHの血清濃度を得るための血液サンプル(10ml)を1日1回移植後7日間採取した後、1週間に2回で3週間採取した後、更に1週間に1回で6ヶ月間の終結に至るまで採取した。移植前4日間、対照として基準血清サンプルを採取した。
【0162】
結果は、1つのインプラントを受入れたイヌにおいて200〜700pg/ml、2つのインプラントを受入れたイヌにおいて400〜1000pg/mlの範囲のオクトレオチド血清値を示した。IGF−I値は、図7及び8において見られるように、両処置群において90%まで減少した。血清GH値の測定は、健常動物における値が更なる減少を検出するには非常に低かったため、本試験のおよそ1ヶ月後に中止した。オクトレオチド移植製剤を含む臨床観察は十分に許容できるものであり、食餌摂取は正常であり、異常な行動は見られなかった。
【実施例7】
【0163】
ヒトにおける6ヶ月移植試験
本実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的に許容可能なその塩の放出について説明する。6ヶ月試験は末端肥大症を患った11人の患者において実施した。末端肥大症を患っており、以前に市販のオクトレオチドLAR製剤で処置した11人の患者において、1若しくは2つの本発明のインプラントを皮下移植した。GH及びIGF−I値はベースラインで測定した後、6ヶ月間1ヶ月毎に測定した。各インプラントは、20%のHEMA及び79.5%のHPMAのコポリマー中、約25.2%のEWCと共に約60mgの酢酸オクトレオチド含むものであった。本試験に使用した前記インプラントは、乾燥状態で約44mmの長さであり、水和状態で50mmの長さであった。前記インプラントの直径は、乾燥状態で約2.8mmであり、水和状態で約3.5〜約3.6mmであった。前記インプラントを移植約1週間前に水和させた。
【0164】
GHの参照範囲は年齢には依存せずに2.5mg/mL以下であった。以下の表4は、本発明のオクトレオチドインプラントを移植後、6ヶ月にわたるGHの基準値をmg/Lで示している。第11番の患者は、スクリーニング基準に適合しなかったため、本試験に参加しなかった。
【0165】
【表4】
【0166】
上記のように、6ヶ月までに89%の対象者が正常な成長ホルモン値を示した。
【0167】
IGF−Iの参照範囲は以下とした。(i)17〜24歳は約180〜780ng/mL、(ii)25〜39歳は114〜440ng/mL、(iii)40〜54歳は約90〜360ng/mL、及び(iv)54歳より上は70〜290ng/mL。以下の表5は、本発明のオクトレオチドインプラントを移植後、6ヶ月にわたるIGF−Iの基準値をng/mlで表したものである。
【0168】
【表5】
【0169】
上記のように、6ヶ月までに22%の対象者が正常なIGF−I値を示した。
【0170】
図9A及び9Bは、本発明のオクトレオチドインプラントと市販の酢酸オクトレオチド製剤との比較を示し、前記インプラントの効果は市販のオクトレオチドLAR製剤と少なくとも同程度であると思われた。これらのインプラントの治療効果は、本試験期間の全6ヶ月間十分に持続した。
【0171】
IGF−I値はすべての患者で低下し、2人の患者で正常化した。この減少は治療から1ヶ月の時点ですでに観察され、平均IGF−I値はその後5ヶ月間安定していた。同じ患者が以前に市販のオクトレオチドLAR製剤で治療した期間中に観察された減少との比較は、9人中8人の患者で可能であった。前記8人の患者中6人の患者において、移植期間中のIGF−Iの低下率は、市販のオクトレオチドLAR製剤の場合よりも大きかったが、8人中2人は少なかった。移植治療6ヵ月後、3人の患者のGH値は1ng/ml以下であり、他の5人は2.5ng/ml以下であった。これは、GH値がわずか2人の患者で1ng/ml以下であり、更に他の2人は2.5ng/ml以下であった市販のオクトレオチドLAR製剤の結果より勝っていた。
【0172】
患者の血清中のオクトレオチド値もまた測定し、以下の表6に示した。
【0173】
【表6】
【0174】
1若しくは2つのインプラントによって得られたオクトレオチド値の比較を図10のグラフに示した。
【0175】
全体的に、末端肥大症を患った患者におけるGH値及びIGF−I値の低下において、本発明のオクトレオチドインプラントは、少なくとも市販の酢酸オクトレオチドLAR製剤と同程度に効果的であるという結果を示していた。
【実施例8】
【0176】
この実施例では、本発明の製剤の調製、及びオクトレオチド又は薬学的に許容可能なその塩の放出について説明する。2匹の健常なイヌに1つの本発明のオクトレオチド皮下インプラントを移植した。前記インプラントは移植前に水和させなかった。前記オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMA及び約40%のHEMAから構成されており、約27.6%の平衡含水量を有するものであった。前記インプラントは約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含むものであった。前記インプラントを移植6ヶ月後に除去した。酢酸オクトレオチド及びIGF−Iの血清濃度を得るための血液サンプル(10ml)を、移植後最初の4週間は1日おきに1回ずつ採取し、その後4週間は1週間に2回サンプリングし、その後6ヶ月間の終結まで1週間に1回サンプリングした。移植2日前に、基準血清サンプルを対照として採取した。
【0177】
図11はイヌの血清中のオクトレオチド値を示し、図12はイヌのIGF−I値を示す。
【0178】
本発明は特定の好ましい実施形態に関してかなり詳細に記載したが、他の変形例が可能である。従って、添付の請求項の要旨は、本明細書に含まれた説明及び好ましい変形例に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、平衡含水量と、最大水和状態での架橋HEMA/HPMAポリマーにおけるメタクリル酸ヒドロキシプロピル(hydroxypropyl methacrylate:HPMA)単位の量の重量パーセントとの間の比例関係を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の6つの異なるインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の異なるインプラント製剤からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ健康なイヌにおけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図7】図7は、6ヵ月にわたって本発明の1つのオクトレオチドインプラント製剤を埋め込んだ3匹の健康なイヌの群におけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図8】図8は、6ヵ月にわたって本発明の2つのオクトレオチドインプラント製剤を埋め込んだ3匹の健康なイヌの群におけるオクトレオチド及びIGF−I血清濃度を示すグラフである。
【図9】図9A及び9Bは、それぞれ、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ末端肥大症を有する11人の被験者におけるIGF−I血清濃度及びパーセント変化を表すグラフである。
【図10】図10は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ末端肥大症を有する11人の被験者におけるオクトレオチド血清濃度を表すグラフである。
【図11】図11は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ2匹のイヌのオクトレオチド血清濃度を表すグラフである。
【図12】図12は、6ヵ月にわたって本発明のオクトレオチド製剤を埋め込んだ2匹のイヌのIGF−I血清濃度を表すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オクトレオチドを含む放出制御製剤であって、前記製剤は、患者においてインビボ平均Cssが約0.1ng/ml〜約9ng/mlのオクトレオチドを提供するものである放出制御製剤。
【請求項2】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチドを含むものである。
【請求項3】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含むものである。
【請求項4】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記オクトレオチドは、酢酸オクトレオチドである。
【請求項5】
請求項4記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約50ミリグラムの酢酸オクトレオチドを含むものである。
【請求項6】
請求項4記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約80ミリグラムの酢酸オクトレオチドを含むものである。
【請求項7】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記放出制御製剤は、インプラント型のものである。
【請求項8】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、患者においてインビボ平均Cssが約1ng/ml〜約2ng/mlのオクトレオチドを示すものである。
【請求項9】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約2ヶ月〜約2年の期間にわたって、治療的有効量のオクトレオチドを放出するものである。
【請求項10】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約6ヶ月にわたって、治療的有効量のオクトレオチドを放出するものである。
【請求項11】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
親水性コポリマーを有するものである。
【請求項12】
請求項11記載の放出制御製剤において、前記親水性コポリマーは、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物を有するものである。
【請求項13】
請求項12記載の放出制御製剤において、前記コポリマーは、約20%のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル及び約80%のメタクリル酸ヒドロキシプロピルを有するものである。
【請求項14】
請求項13記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ステアリン酸マグネシウムを有するものである。
【請求項15】
請求項13記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ヒドロキシプロピルセルロースを有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ポリウレタン系ポリマーを有するものである。
【請求項17】
末端肥大症、若しくは末端肥大症に関連した症状を治療する方法であって、
約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを有する、少なくとも1つのヒドロゲルインプラントを投与する工程
を有する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記少なくとも1つのヒドロゲルインプラントは、約50ミリグラムのオクトレオチドを有するものである。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記少なくとも1つのヒドロゲルインプラントは、約80ミリグラムのオクトレオチドを有するものである。
【請求項20】
請求項17記載の方法であって、2若しくはそれ以上のヒドロゲルインプラントが投与されるものである。
【請求項21】
請求項17記載の方法において、前記ヒドロゲルインプラントは、約6ヶ月毎に投与されるものである。
【請求項22】
埋め込み用のオクトレオチドを有する放出制御製剤であって、
前記製剤は、インビトロで約6ヶ月にわたって1日あたり約30μg〜約250μgの速度で前記オクトレオチドの放出を可能にするのに効果的な親水性ポリマーに、オクトレオチドを含むものである。
【請求項23】
請求項22記載の放出制御製剤において、前記製剤は、インビトロで平均して1日あたり約100μgの速度で前記オクトレオチドの放出を可能にするものである。
【請求項1】
オクトレオチドを含む放出制御製剤であって、前記製剤は、患者においてインビボ平均Cssが約0.1ng/ml〜約9ng/mlのオクトレオチドを提供するものである放出制御製剤。
【請求項2】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約20〜約150ミリグラムのオクトレオチドを含むものである。
【請求項3】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを含むものである。
【請求項4】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記オクトレオチドは、酢酸オクトレオチドである。
【請求項5】
請求項4記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約50ミリグラムの酢酸オクトレオチドを含むものである。
【請求項6】
請求項4記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約80ミリグラムの酢酸オクトレオチドを含むものである。
【請求項7】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記放出制御製剤は、インプラント型のものである。
【請求項8】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、患者においてインビボ平均Cssが約1ng/ml〜約2ng/mlのオクトレオチドを示すものである。
【請求項9】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約2ヶ月〜約2年の期間にわたって、治療的有効量のオクトレオチドを放出するものである。
【請求項10】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、約6ヶ月にわたって、治療的有効量のオクトレオチドを放出するものである。
【請求項11】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
親水性コポリマーを有するものである。
【請求項12】
請求項11記載の放出制御製剤において、前記親水性コポリマーは、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物を有するものである。
【請求項13】
請求項12記載の放出制御製剤において、前記コポリマーは、約20%のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル及び約80%のメタクリル酸ヒドロキシプロピルを有するものである。
【請求項14】
請求項13記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ステアリン酸マグネシウムを有するものである。
【請求項15】
請求項13記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ヒドロキシプロピルセルロースを有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の放出制御製剤において、前記製剤は、更に、
ポリウレタン系ポリマーを有するものである。
【請求項17】
末端肥大症、若しくは末端肥大症に関連した症状を治療する方法であって、
約40〜約90ミリグラムのオクトレオチドを有する、少なくとも1つのヒドロゲルインプラントを投与する工程
を有する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記少なくとも1つのヒドロゲルインプラントは、約50ミリグラムのオクトレオチドを有するものである。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記少なくとも1つのヒドロゲルインプラントは、約80ミリグラムのオクトレオチドを有するものである。
【請求項20】
請求項17記載の方法であって、2若しくはそれ以上のヒドロゲルインプラントが投与されるものである。
【請求項21】
請求項17記載の方法において、前記ヒドロゲルインプラントは、約6ヶ月毎に投与されるものである。
【請求項22】
埋め込み用のオクトレオチドを有する放出制御製剤であって、
前記製剤は、インビトロで約6ヶ月にわたって1日あたり約30μg〜約250μgの速度で前記オクトレオチドの放出を可能にするのに効果的な親水性ポリマーに、オクトレオチドを含むものである。
【請求項23】
請求項22記載の放出制御製剤において、前記製剤は、インビトロで平均して1日あたり約100μgの速度で前記オクトレオチドの放出を可能にするものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−533046(P2008−533046A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501025(P2008−501025)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008891
【国際公開番号】WO2006/099288
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507304454)インデバス ファーマシューティカルズ、インク. (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/008891
【国際公開番号】WO2006/099288
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507304454)インデバス ファーマシューティカルズ、インク. (2)
【Fターム(参考)】
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