説明

オシレータ劣化検出装置及びオシレータ劣化検出方法

【課題】低いコストで、オシレータの劣化を手間なく検出することを可能とすること。
【解決手段】本発明にかかるオシレータ劣化検出装置90は、クロック信号を生成して出力するオシレータ91と、オシレータ91から出力されたクロック信号を分周して出力する分周回路92と、分周回路92から出力されたクロック信号に応じて現在時刻を計時するとともに現在時刻を示す現在時刻情報を出力する時計回路93と、外部基準時計部99から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに時計回路93から出力されている現在時刻情報が示す現在時刻と所定の時刻との差に応じて分周回路92の分周比を補正する補正回路94と、外部基準時計部99からの所定時信号の出力を検出したときに時計回路93から出力されている現在時刻情報と所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出する検出部95を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オシレータ劣化検出装置及びオシレータ劣化検出方法に関し、特にオシレータから出力されたクロック信号を補正しつつ、補正後のクロック信号に基づいて現在時刻を計時する装置において、オシレータの劣化を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、計時回路を内蔵する複数の情報処理装置の時刻を同期化する時刻同期化装置が開示されている。時刻同期化装置は、発信器、分周回路、時刻修正回路、時計回路、時刻情報変換回路、及び時刻差分記憶回路を有する。時計情報変換回路は、時計回路によって生成された実時刻と、時刻差分記憶回路に記憶された情報処理装置毎の時刻差分とを取得する。時計情報変換回路は、取得した実時間に、取得した情報処理装置毎の時刻差分を加算して、情報処理装置毎の時刻情報に変換して時刻情報送出回路に渡す。時刻情報送出回路は、時刻情報変換回路から取得した情報処理装置毎に異なる時刻情報を、情報処理装置のそれぞれに送出する。これによって、1台の時刻同期化装置に接続された情報処理装置毎に異なる時刻情報で同期化できるようにしている。
【0003】
また、発信器は、クロックパルスを生成する。分周回路は、発信器により生成されたクロックパルスを分周する。時刻修正回路は、外部時計から取得した外部時刻に同期化させるために分周回路に指示を行う。時計回路は、分周回路により分周されたクロックパルスに基づいて実時刻を生成する。
【0004】
特許文献2には、情報処理装置の内蔵時計が開示されている。内蔵時計は、受信回路、処理部、保持回路、分周回路、及び計時部を有する。受信回路は、通信路を介して基準時刻データを受信すると、受信通知信号を出力する。処理部は、受信通知信号が入力されると、保持回路に保持された計数値を読み出して、基準時刻データと内部時刻データとの誤差を判定する。処理部は、判定結果に応じて分周比を分周比設定回路に設定する。保持回路は、受信通知信号が入力されると、その時の分周回路の計測値を保持する。分周回路は、発信器からのクロック信号を分周比設定回路に設定された分周比で分周し、計測値が分周比設定回路に設定された値になると、カウントアップ信号を計時部に出力する。計時部は、カウントアップ信号が入力される毎に計数動作を行い、内部時刻を計時する。
【0005】
しかしながら、上述したような装置に使用されるオシレータは、一般的に、経年によって発振周波数の誤差が拡大していく。そのため、発振周波数の誤差が許容される範囲内であるか否かを確認する必要があった。しかしながら、発振周波数の誤差が許容される範囲内であるか否かを確認するためには、定期的な保守によって、わざわざ装置を停止してオシレータの発振周波数を、人手を介して測定する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−054815号公報
【特許文献2】特開平08−320734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、オシレータの劣化を検出するためには非常に手間がかかってしまっているという問題がある。その一方で、そのような問題を低コストで解消することができれば、非常に有益である。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決するために、低いコストで、オシレータの劣化を手間なく検出することが可能となるオシレータ劣化検出装置及びオシレータ劣化検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかるオシレータ劣化検出装置は、クロック信号を生成して出力するオシレータと、前記オシレータから出力されたクロック信号を分周して出力する分周回路と、前記分周回路から出力されたクロック信号に応じて現在時刻を計時するとともに、前記現在時刻の計時に応じて前記現在時刻を示す現在時刻情報を出力する時計回路と、外部基準時計部から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに前記時計回路から出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻との差に応じて前記分周回路の分周比を補正する補正回路と、前記外部基準時計部から前記補正回路への所定時信号の出力を検出したときに前記時計回路から前記補正回路に出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出する検出部と、を備えたものである。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるオシレータ劣化検出方法は、オシレータが、クロック信号を生成して出力するステップと、前記オシレータから出力されたクロック信号を分周して出力するステップと、前記分周されたクロック信号に応じて現在時刻を計時するステップと、前記現在時刻の計時に応じて前記現在時刻を示す現在時刻情報を出力するステップと、外部基準時計部から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻との差に応じて前記分周における分周比を補正するステップと、前記外部基準時計部からの所定時信号の出力を検出したときに出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明の各態様によれば、低いコストで、オシレータの劣化を容易に検出することが可能となるオシレータ劣化検出装置及びオシレータ劣化検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態にかかるオシレータ劣化検出システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる時刻同期化システムの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置の時刻同期化処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置の時刻補正処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置のオシレータ劣化検出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる時刻同期化システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態.
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化システムの概要となるオシレータ劣化検出システム9について説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかるオシレータ劣化検出システム9の構成図である。
【0014】
オシレータ劣化検出システム9は、オシレータ劣化検出装置90及び外部基準時計部99を有する。オシレータ劣化検出装置90は、オシレータ91、分周回路92、時計回路93、補正回路94、及び検出部95を有する。
【0015】
オシレータ91は、クロック信号を生成して、生成したクロック信号を分周回路92に出力する。分周回路92は、オシレータ91から出力されたクロック信号を分周して、分周したクロック信号を時計回路93に出力する。時計回路93は、分周回路92から出力されたクロック信号に応じて現在時刻を計時する。時計回路93は、現在時刻の計時に応じて現在時刻を示す現在時刻情報を補正回路94及び検出部95に出力する。
【0016】
補正回路94は、外部基準時計部99から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに時計回路93から出力されている現在時刻情報を取得する。補正回路94は、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と、所定の時刻との差に応じて分周回路92の分周比を補正する。
【0017】
検出部95は、外部基準時計部99から補正回路94への所定時信号の出力を検出したときに時計回路93から補正回路94に出力されている現在時刻情報を取得する。検出部95は、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と、所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出する。
【0018】
このように、オシレータ劣化検出装置9は、オシレータ91が生成したクロック信号に基づいて計時されている現在時刻を、外部基準時計部99から通知される所定の時刻に取得して、取得した現在時刻と所定の時刻との差が大きくなっているか否かを自動で検出することができる。そのため、人手を介する必要がなくなり、手間なくオシレータの劣化を検出することが可能となる。
【0019】
このとき、オシレータ劣化検出装置9は、外部基準時計部99から補正回路94に出力される所定時信号を、現在時刻を取得するトリガとして利用するとともに、時計回路93から補正回路94に出力されている現在時刻情報から、現在時刻を取得するようにしている。つまり、本実施の形態によれば、補正回路94によって現在時刻の補正に使用される信号及び情報を流用して、オシレータの劣化を検出することができる。そのため、時刻補正にかかる構成の変更や、新たな構成の追加を極力抑えてオシレータの劣化を検出することが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、オシレータの劣化を検出する機構を、低コストで実装することができる。
【0020】
続いて、図2を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化システム1の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化システム1の構成図である。
【0021】
時刻同期化システム1は、時刻同期化装置10、外部基準時計20、RAS(Reliability, Availability, Serviceability)プロセッサ30、及び情報処理装置40a、40bを有する。時刻同期化装置10は、オシレータ11、分周回路12、時計回路13、時刻補正回路14、時刻情報送信部15、正時受信時刻記憶部16、制御プロセッサ17を有する。時刻同期化装置10は、外部基準時計20、RASプロセッサ30、及び情報処理装置40a、40bのそれぞれと任意の通信路を介して接続される。ここで、通信路には、必要な情報及び信号を送受信することができるものであれば、電線及び光ファイバ等の有線通信路又は無線通信路、もしくは、それらの組み合わせを任意に利用してよい。
【0022】
オシレータ11は、高精度なクロックパルスを所定の周波数で生成する。オシレータ11は、生成したクロックパルスを分周回路12に出力する。なお、オシレータ11として、例えば、水晶発振器やセラミック発振器等の任意の種類のオシレータを用いてもよい。なお、オシレータ11は、オシレータ91に対応する。
【0023】
分周回路12は、時刻補正回路14から出力された分周切り替え制御信号に応じた分周比で、オシレータ11から出力されたクロックパルスを分周する。ここで、分周切り替え制御信号は、分周回路12の分周比を制御することができる信号であれば、どのような形式の信号であってもよい。分周切り替え制御信号は、例えば、分周比を上げる又は下げることのみを指示する信号であってもよく、分周比をその値で指定する信号であってもよい。分周回路12は、分周したクロックパルスを時計回路13に出力する。なお、分周回路12は、分周回路92に対応する。
【0024】
時計回路13は、分周回路12から出力されたクロックパルスに応じて、現在時刻を計時する。時計回路13は、クロックパルスが入力される毎に所定の単位ずつ時刻を進めることで現在時刻を計時する。また、時計回路13は、現在時刻を示す時刻情報を生成して、時刻補正回路14、時刻情報送信部15、及び正常受信時刻記憶部16に出力する。つまり、時計回路13から出力される時刻情報は、現在時刻の計時に応じて、その内容が現在時刻を示すように更新されていくことになる。なお、時計回路13は、時計回路93に対応する。
【0025】
時刻補正回路14は、外部基準時計20から正時パルスが出力されたことを検出したときに時計回路13から出力されている時刻情報を取得する。よって、時刻補正回路14によって取得される時刻情報は、外部基準時計20の現在時刻を基準とした正時のタイミングにおける時計回路13の現在時刻を示す情報となる。ここで、正時パルスは、外部基準時計20における現在時刻が正時になったときに、外部基準時計20から出力されるようにする。なお、正時パルスを出力する正時として、任意の時刻を予め定めるようにする。例えば、1日(24時間)のうち、午前7時に正時パルスを出力するようにしてよい。
【0026】
時刻補正回路14は、取得した時刻情報が示す現在時刻と、正時パルスが出力される正時とを比較する。例えば、正時パルスが出力される正時を示す情報が予め格納された記憶装置を時刻同期化装置10に有するようにすることで、時刻補正回路14が、その情報を参照して、現在時刻と正時とを比較可能とする。記憶装置には、レジスタ及びメモリ等の任意の記憶装置を用いてよい。なお、時刻補正回路14は、補正回路94に対応する。
【0027】
そして、時刻補正回路14は、比較結果に基づいて、時計回路13の時刻を外部基準時計20の時刻に合わせるように分周回路12の分周比を制御する。時刻補正回路14は、分周切り替え制御信号を分周回路12に出力することによって、分周回路12の分周比を制御する。例えば、現在時刻が正時よりも遅れている場合、分周回路12における分周比を、標準の分周比よりも上げるように制御する。時刻補正回路14は、現在時刻が正時よりも進んでいる場合、分周回路12における分周比を、標準の分周比よりも下げるように制御する。現在時刻と正時との差が無い場合、分周回路12における分周比を、標準の分周比となるように制御する。このとき、現在時刻と正時との差が、一定の誤差の範囲内であれば、それらの時刻の差が無いと見なして、標準の分周比を適用するようにしてもよい。
【0028】
時刻情報送信部15は、情報処理装置40a、40bの現在時刻を、時計回路13によって計時される時刻同期化装置10の現在時刻と同期するために、時計回路13から出力された時刻情報を情報処理装置40a、40bに送信する。ここで、時刻情報送信部15が時刻情報を送信するタイミングは、任意のタイミングとしてよい。そのタイミングは、例えば、常時としてもよく、1時間毎又は1日毎等の所定の時間間隔毎としてもよい。
【0029】
正時受信時刻記憶部16は、外部基準時計20から正時パルスが出力されたことを検出したときに時計回路13から出力されている時刻情報を取得して保持する。よって、正時受信時刻記憶部16によって取得される時刻情報は、時刻補正回路14によって取得される時刻情報と同様に、外部基準時計20の現在時刻を基準とした正時のタイミングにおける時計回路13の現在時刻を示す情報となる。正時受信時刻記憶部16は、例えば、正時パルスの出力に応じて、時計回路13から出力されている時刻情報をラッチする回路で構成される。
【0030】
制御プロセッサ17は、正常受信時刻記憶部16が保持する時刻情報を読み出し、読み出した時刻情報が示す時刻と、正時パルスが出力される正時とを比較する。例えば、時刻補正回路14が、時刻同期化装置10が有する記憶装置に格納された正時を示す情報を参照することによって、現在時刻と正時とを比較可能とする。制御プロセッサ17は、比較した時刻の差が、所定の閾値よりも大きいと判断した場合、RASプロセッサ30にアラームを通知する。この閾値は、オシレータ11によってクロックパルスが生成される周波数の誤差が、許容される誤差よりも大きくなったときに、時刻の差がその値よりも大きくなるように予め設定される。正時受信時刻記憶部16及び制御プロセッサ17は、検出部95に対応する。
【0031】
外部基準時計20は、正確な現在時刻を計時する。外部基準時計20は、自身が計時する現在時刻が正時になったときに正時パルスを時刻同期化装置10に出力する。外部基準時計20は、自身で現在時刻を計時しない構成とすることも可能である。具体的には、正確な時刻情報を受信して、受信した時刻情報が正時を示すときに、正時パルスを時刻同期化装置10に出力するようにしてもよい。具体的には、NHK−FM放送の正時の時報や、テレフォンJJYの正時の時刻情報等を受信したときに、正時パルスを出力するようにしてもよい。例えば、NHK−FM放送の午前7時の時報や、テレフォンJJYのある正時の時刻情報を正時パルスの出力タイミングとすることで、24時間に1回、正時パルスを出力するようにする。外部基準時計20は、外部基準時計部99に対応する。
【0032】
RASプロセッサ30は、制御プロセッサ17から通知されたアラームに応じた処理を行う。
【0033】
情報処理装置40a、40bのそれぞれは、現在時刻を計時する。情報処理装置40a、40bのそれぞれは、情報処理装置40a、40bのそれぞれは、それぞれが計時する現在時刻に基づいて動作する。時刻情報送信部15から送信された時刻情報が示す現在時刻で、それぞれが計時する現在時刻を同期する。
【0034】
続いて、図3〜5を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置10の処理について説明する。まず、図3を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置10の時刻同期化処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置10の時刻同期化処理を示すフローチャートである。
【0035】
オシレータ11は、クロックパルスを生成して、生成したクロックパルスを分周回路12に出力する(S1)。分周回路12は、オシレータ11から出力されたクロックパルスを分周して、分周したクロックパルスを時計回路13に出力する(S2)。時計回路13は、分周回路12から出力されたクロックパルスに応じて、現在時刻を計時する(S3)。また、時計回路13は、現在時刻情報を時刻補正回路14、時刻情報送信部15、及び正常受信時刻記憶部16に出力する。
【0036】
時刻情報送信部15は、現在時刻が時刻同期タイミングとなったか否かを判定する(S4)。現在時刻が時刻同期タイミングとなっていない場合(S4:No)、時刻情報送信部15は、時計回路13から送信された時刻情報を情報処理装置40a、40bに送信しない。一方、現在時刻が時刻同期タイミングとなった場合(S4:Yes)、時計回路13から送信された時刻情報を情報処理装置40a、40bに送信する。ここで、時刻情報を常時送信するようにしている場合、ここでの判定は行わないようにしてもよい。一方、時刻情報を所定の間隔毎に送信するようにしている場合、時刻情報送信部15は、例えば、時計回路13から送信された時刻情報が時刻同期タイミングとなる時刻を示しているときに時刻情報を送信するようにする。
【0037】
情報処理装置40a、40bのそれぞれは、時刻情報送信部15から送信された時刻情報が示す時刻で、それぞれの現在時刻を同期する(S5)。これによって、情報処理装置40a、40bの現在時刻が、時刻同期化装置1の現在時刻と同期される。なお、図1では、情報処理装置40a、40bの2つのみを例示しているが、情報処理装置の数は、これに限られない。情報処理装置は、1つ以上であれば、任意の数を時刻同期化装置10と接続され、その現在時刻が同期されるようにしてよい。
【0038】
続いて、図4を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置の時刻補正処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置の時刻補正処理を示すフローチャートである。
【0039】
時刻補正回路14は、外部基準時計20からの正時パルスの出力をチェックする(S6)。正時パルスの出力を検出していない場合(S6:No)、時刻補正回路14は、正時パルスのチェックを繰り返す(S6)。正時パルスが出力されたことを検出した場合(S6:Yes)、時刻補正回路14は、そのときに時計回路13から出力されている時刻情報を取得する(S7)。時刻補正回路14は、取得した時刻情報が示す現在時刻と、正時パルスが出力される正時とを比較する(S8)。時刻補正回路14は、比較結果に基づいて、分周回路12の分周比を調整する(S9)。そして、時刻補正回路14は、ステップS6に戻る。
【0040】
続いて、図5を参照して、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置のオシレータ劣化検出処理について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる時刻同期化装置のオシレータ劣化検出処理を示すフローチャートである。
【0041】
正常受信時刻記憶部16は、外部基準時計20からの正時パルスの出力をチェックする(S10)。正時パルスが出力されていない場合(S10:No)、正常受信時刻記憶部16は、正時パルスのチェックを繰り返す(S10)。正時パルスが出力されたことを検出した場合(S10:Yes)、正常受信時刻記憶部16は、そのときに時計回路13から出力されている時刻情報を取得して保持する(S11)。
【0042】
制御プロセッサ17は、正常受信時刻記憶部16に保持されている時刻情報を取得する。ここでの時刻情報の取得タイミングは、任意のタイミングとしてよい。例えば、正時パルスの検出に応じて正常受信時刻記憶部16に時刻情報が保持されたときに、制御プロセッサ17が即時取得するようにしてもよい。また、時刻補正回路14から分周比の調整(S9)の終了時に割り込み信号を制御プロセッサ17に出力するようにして、制御プロセッサ17がその割り込み信号に応じて取得するようにしてもよい。
【0043】
制御プロセッサ17は、取得した時刻情報が示す現在時刻と、正時パルスが出力される正時とを比較して(S12)、それらの時刻の差が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(S13)。時刻の差が所定の閾値よりも大きい場合(S13:Yes)、制御プロセッサ17は、アラームをRASプロセッサ30に通知する(S14)。時刻の差が所定の閾値よりも大きい場合(S13:No)、制御プロセッサ17は、アラームは通知しない。一方、正常受信時刻記憶部16は、再びステップS10を繰り返す。
【0044】
以上に説明した処理によれば、制御プロセッサ17によって、正時から正時までの間に、現在時刻の誤差がどの位発生したかを容易に計算し、オシレータ11の劣化を検出することができる。ここで、正時受信時刻記憶部16が正時パルスを検出してから時刻情報を保持するまでに遅延が発生する場合は、誤差を計算する際にその遅延時間を考慮するようにしてもよい。例えば、正時受信時刻記憶部16によって正時パルスが検出されてからある時間経過後の時刻情報が保持される場合には、時刻情報が示す現在時刻をその経過時間分さかのぼった時刻に補正して計算をするようにしてもよい。
【0045】
ここで、通常、高精度と言われているオシレータは、±10〜±30ppmの精度を有している。さらに高精度なオシレータも製品化されており、そのオシレータは、±3〜±5ppmの精度を有している。これらのオシレータの経年変化は、およそ±1ppm/年である。時刻同期化装置のように高精度が要求される装置では、高精度なオシレータが使用されている。±3ppmのオシレータを使用した場合、24時間での誤差は、およそ±250ms以内となる。そのため、この場合には、制御プロセッサ17によって計算した誤差が±250msを越えているときは、オシレータ11の精度が期待値よりも劣化していることになるため、RASプロセッサ30にアラームを通知するようにする。
【0046】
また、本実施の形態では、時刻補正回路14による現在時刻の補正に利用される正時パルスと時刻情報をそのまま、オシレータ11の劣化の検出に利用するようにしている。つまり、本実施の形態によれば、時刻補正機能を利用して、多くの機能追加無しにオシレータ11の劣化を検出することが可能となる。よって、低いコストで、オシレータの劣化を容易に検出することが可能となる。
【0047】
本発明の他の実施の形態.
本発明の他の実施の形態として、RASプロセッサ30を管理端末31が有するプロセッサとし、情報処理装置40a、40bを運用系のサーバ41a及びその待機系のサーバ41bとして構成することも可能である。
【0048】
管理端末31は、RASプロセッサ30の他に、任意の情報を表示する表示装置(図示せず)を有する。そして、RASプロセッサ30は、制御プロセッサ17から送信されたアラームに応じて、オシレータ11が劣化している旨を通知する表示を表示装置に表示する。ここで、アラームの内容及び表示装置に表示される内容は、制御プロセッサ17で比較した時刻の差が閾値を超えていると検出した結果を示すものであれば、どのような情報であってもよい。例えば、単純に、比較した時刻の差が閾値を超えたことのみを通知する内容であってもよく、さらに時刻の差の値も含まれていてもよい。
【0049】
サーバ41a、41bのそれぞれは、少なくとも1つの情報処理装置と接続される。それらの情報処理装置は、例えば、PC(Personal Computer)である。それらの情報処理装置は、サーバ41a、41bのクライアントとして機能し、サーバ41a、41bから任意のサービスの提供を受ける。なお、厳密には、情報処理装置は、運用系のサーバ41aのみからサービスの提供を受ける。運用系のサーバ41aに異常が発生した場合、待機系のサーバ41bが、運用系のサーバ41aに代わって、運用系としてサーバ41aの動作を引き継ぎ、情報処理装置へのサービスの提供を継続する。時刻同期化装置10は、このようにサーバ41a、41bの運用系と待機系が切り替わったときにも、現在時刻に基づいた処理の整合性が保たれるように、サーバ41a、41bの現在時刻を同一の時刻に同期するように動作している。
【0050】
上述したように、本実施の形態では、オシレータの誤差を検出する手段を実装することにより、オシレータの経年変化を自動で検出することができる。そして、検出した経年変化をアラームとして通知して、オシレータ11の交換を要求することで時刻同期化装置10の現在時刻の精度を維持することができる。
【0051】
これによれば、サーバ41a、41bが現在時刻のズレにシビアなサービスを提供するサーバであったとしても、オシレータ11が許容範囲を上回る程度に劣化した時点で、それを検出して通知することができる。そのため、オシレータ11の劣化に気付かないまま運用を継続するような事態を防止することができ、サーバ41a、41bが提供するサービスの品質を向上することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0053】
本実施の形態では、本発明を、情報処理装置の時刻を同期化する時刻同期化装置に適用した場合について例示したが、本発明の適用対象は、オシレータが生成したクロックパルスに基づいて現在時刻を計時する装置であれば、これに限られない。つまり、本発明の適用対象は、他装置に現在時刻を同期する装置でなくてもよい。例えば、オシレータ及び時計回路を有し、その時計回路が計時する現在時刻に基づいて動作する装置に適用するようにしてもよい。
【0054】
本実施の形態では、正時に出力される正時パルスの出力を検出したときに、時刻補正回路14及び正時受信時刻記憶部16のそれぞれが、分周比の調整及び時刻情報の保持のそれぞれを行うようにしているが、それぞれの動作を行うタイミングは、これに限られない。つまり、正時ではなく、所定の時刻に出力されるパルスの出力を検出したときに、それぞれの動作を行うようにしてもよい。例えば、午前7時といった正時ではなく、午後7時7分7秒といった正時以外の時刻を動作タイミングとしてもよい。
【0055】
本実施の形態では、正時パルスの出力を検出したときに、時刻補正回路14及び正時受信時刻記憶部16のそれぞれが、分周比の調整及び時刻情報の保持のそれぞれを行うようにしているが、それぞれの動作のトリガとするものは、これに限られない。例えば、外部基準時計20から正確な現在時刻を示す時刻情報を出力するようにし、時刻補正回路14及び正時受信時刻記憶部16のそれぞれが、その時刻情報が示す現在時刻が正時であることを検出したときに、分周比の調整及び時刻情報の保持のそれぞれを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、2 時刻同期化システム
9 オシレータ劣化検出システム
10 時刻同期化装置
11、91 オシレータ
12、92 分周回路
13、93 時計回路
14 時刻補正回路
15 時刻情報送信部
16 正時受信時刻記憶部
17 制御プロセッサ
20 外部基準時計
30 RASプロセッサ
31 管理端末
40a、40b 情報処理装置
41a、41b サーバ
90 オシレータ劣化検出装置
94 補正回路
95 検出部
99 外部基準時計部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を生成して出力するオシレータと、
前記オシレータから出力されたクロック信号を分周して出力する分周回路と、
前記分周回路から出力されたクロック信号に応じて現在時刻を計時するとともに、前記現在時刻の計時に応じて前記現在時刻を示す現在時刻情報を出力する時計回路と、
外部基準時計部から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに前記時計回路から出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻との差に応じて前記分周回路の分周比を補正する補正回路と、
前記外部基準時計部から前記補正回路への所定時信号の出力を検出したときに前記時計回路から前記補正回路に出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出する検出部と、
を備えたオシレータ劣化検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出した場合に、当該検出結果を外部に通知する請求項1に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項3】
前記オシレータ劣化検出装置は、少なくとも1つの情報処理装置の現在時刻を、前記時計回路の現在時刻と同期させるために、前記現在時刻情報を前記少なくとも1つの情報処理装置に送信する時刻同期化装置である請求項1又は2に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検出結果を示す検出結果情報の受信に応じて当該検出結果を表示する検出結果表示装置に、前記検出結果情報を送信する請求項2に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、サーバである請求項3に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項6】
前記オシレータ劣化検出装置は、2つ以上の前記サーバの現在時刻を、前記時計回路の現在時刻と同期させるものであって、
前記2つ以上のサーバは、運用系サーバと待機系サーバとを含む、
請求項5に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項7】
前記所定時信号は、所定の正時に出力される正時パルスである請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオシレータ劣化検出装置。
【請求項8】
オシレータが、クロック信号を生成して出力するステップと、
前記オシレータから出力されたクロック信号を分周して出力するステップと、
前記分周されたクロック信号に応じて現在時刻を計時するステップと、
前記現在時刻の計時に応じて前記現在時刻を示す現在時刻情報を出力するステップと、
外部基準時計部から所定の時刻に出力される所定時信号の出力を検出したときに出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻との差に応じて前記分周における分周比を補正するステップと、
前記外部基準時計部からの所定時信号の出力を検出したときに出力されている現在時刻情報を取得して、取得した現在時刻情報が示す現在時刻と前記所定の時刻とを比較して、それらの時刻の差が所定の閾値を超えていることを検出するステップと、
を備えたオシレータ劣化検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40840(P2013−40840A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177553(P2011−177553)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】