説明

オストメイト用汚物流しユニット

【課題】本発明は、昇降動作を円滑に行うことができ、かつ、省スペース化が図れるオストメイト用汚物流しユニットを提供する。
【解決手段】前面に汚物流し部を設けたパネルプレートと、少なくとも一部が可撓性を有し、両端部を前記汚物流し部と外部排出口とに接続可能な排水管と、前記パネルプレートを昇降させる昇降手段と、前記パネルプレートの昇降をガイドするガイド手段と、を備え、前記外部排出口は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記昇降手段は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対して前記外部排出口とは逆の方向にオフセットした位置に設けられていることを特徴とするオストメイト用汚物流しユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工肛門や人工膀胱などの保持者であるオストメイトと呼ばれる人々のための汚物流しユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
人工肛門や人工膀胱などの保持者である「オストメイト」と呼ばれる人々は、身体の腹部に排泄物(以下、汚物という)を溜めておくための袋、いわゆるパウチを装着しており、時折、トイレにおいて溜まった汚物を廃棄したり、パウチの内面や取出し口に付着した汚物を洗い流すなどの作業を行う必要がある。
【0003】
ここで、このパウチを装着する位置や高さには個人差があり、パウチの装着高さと便器などの高さが同程度でないと前述の作業がしにくくなる。そのため、パウチの装着高さに応じてシンクを昇降させ、汚物を処理する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、処理装置の幅方向の端面付近に昇降装置が設けられている。そのため、昇降動作時に大きなモーメントが発生し、処理装置上面が傾いたり、いわゆる噛み込みなどを起こして円滑な昇降動作が行えないおそれがある。この場合、処理装置の両端面付近に昇降装置をそれぞれ設けて同時駆動をさせるようにすればこの問題を解決することができる。しかし、その場合は、処理装置の複雑化や大型化を招くという新たな問題を生ずることになる。
【特許文献1】特開2003−56018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、昇降動作を円滑に行うことができ、かつ、省スペース化が図れるオストメイト用汚物流しユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、前面に汚物流し部を設けたパネルプレートと、少なくとも一部が可撓性を有し、両端部を前記汚物流し部と外部排出口とに接続可能な排水管と、前記パネルプレートを昇降させる昇降手段と、前記パネルプレートの昇降をガイドするガイド手段と、を備え、前記外部排出口は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記昇降手段は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対して前記外部排出口とは逆の方向にオフセットした位置に設けられていることを特徴とするオストメイト用汚物流しユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、昇降動作を円滑に行うことができ、かつ、省スペース化が図れるオストメイト用汚物流しユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットの背面側を説明するための模式図である。
図1に示すように、オストメイト用汚物流しユニット1の装置本体200の内部には、昇降手段245、フラッシュバルブ250、電気温水器270、排水管400、ホース112aなどが設けられている。
【0009】
図2及び図3は、本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットの正面側を説明するための模式斜視図である。
また、図4は、このオストメイト用汚物流しユニットを側面からみた模式図である。
【0010】
これらの図に示すように、パネルプレート100の前面には、汚物流し部110、温度・流量調整用レバー131、シャワー水栓140、棚141、水石けん用タンク150、洗浄ボタン211、トイレットペーパーホルダ212などが設けられている。また、正面の左上方には、上昇操作スイッチ260、下降操作スイッチ261が設けられている。
【0011】
略矩形形状のパネルプレート100は硬質樹脂などから成り、その前面には陶製の汚物流し部110が設けられている。また、パネルプレート100の前面であって、汚物流し部110の直上には棚141が設けられている。棚141には、汚物流し部110に洗浄水を流したりパウチを洗浄したりするためのシャワー水栓140と、温度・流量調整用レバー131と、半固定鏡151とが設けられている。棚141の左側であって、汚物流し部110の直上には水石けん用タンク150が設けられている。パネルプレート100の右側上方にはフラッシュバルブ250(図1参照)を作動させるための洗浄ボタン211が設けられ、その下方にはトイレットペーパーホルダ212が設けられている。
【0012】
また、半固定鏡151の鏡の角度は可変可能となっている。尚、鏡を凸面鏡とすれば、映し出される範囲が大きくなるので鏡も小型ですみ、また、オストメイトの目の高さ、ストーマ位置に関係無く所望の視点からストーマ及び近傍を見ることができるので、洗浄作業が更に行い易くなる。
【0013】
略クランク形状の洗浄管112の一端は、汚物流し部110の上部側面に設けられた給水口110aに接続されている。洗浄管112の他端はパネルプレート100を貫通して装置本体200の内部で、可撓性を有するホース112a(図1参照)によりフラッシュバルブ250(図1参照)と接続されている。フラッシュバルブ250(図1参照)が作動すると、洗浄管112を介して汚物流し部110に洗浄水が供給される。供給された洗浄水は、汚物流し部110の内面の上部全周に設けられたリム部の穴(図示せず)から汚物流し部110の内側面に流出して汚物が洗い流されるようになっている。
【0014】
そして、これらパネルプレート100の前面に設けられたものとパネルプレート100とが一体的に昇降可能となっている。図2は、パネルプレート100が上昇端にある場合を示し、図3及び図4は、パネルプレート100が下降端にある場合を示している。
【0015】
汚物流し部110は、汚物の洗浄がしやすいように上面が大きく開口され、リップ部111が設けられている。リップ部111は、オストメイトがこのリップ部111に腹部を押し当てて汚物処理を行うのに適した形状、すなわち、汚物処理中に汚物が漏出しても汚物が汚物流し部110の中に自然に入っていくのに適した形状となっている。また、汚物流し部110の下部に設けられた排水部110bには図示しない封水手段が設けられ、異臭の発生が防止できるようになっている。
【0016】
リップ部111は、汚物流し部110の溢れ面を形成している。ここでいう溢れ面とは、排水部が詰まった時などに、汚物流し部110の外に汚水が流れ出す面のことである。このような溢れ面が形成されていると、排水部が詰まるという異常事態が起きても、汚水は溢れ面から外に流れ出し他の部分が汚れることを抑制することができる。本実施の形態においては、汚物流し部110の上面形状が前面方向に下方傾斜しているため前面側にあるリップ部111の高さが上面では一番低くなり、リップ部111が溢れ面となる。そのため、排水部が詰まるという異常事態が起きても、汚水がパネルプレート100側に流れ出ることがなく、装置本体200の汚れを抑制することができる。
【0017】
図5は、シャワー水栓140を説明するための模式斜視図である。
図5に示すように、シャワー水栓140には、ホース142と、水栓取り付け部144と、蛇口145とが設けられている。蛇口145は、水栓取り付け部144からホース142とともに引き出して使用することができ、洗浄水を所望の位置や向きで流出させることができる。蛇口145が水栓取り付け部144に装着されている状態では、洗浄水が汚物流し部110内に落下しやすいように、蛇口145は若干前向きに傾斜して設置されている。そのため、蛇口145が水栓取り付け部144に装着されているままでもパウチ内の洗浄がしやすいようになっている。また、蛇口145を引き出すことで、オストメイトが服を脱いでストーマやストーマ周辺を洗浄したり、汚物流し部110内部を局所的に洗浄したりすることがしやすいようになっている。
【0018】
温度・流量調整用レバー131は、水道水と電気温水器270(図1参照)により加熱された水道水(湯)との混合水栓となっている。シャワー水栓140から流出する洗浄水の温度は、温度・流量調整用レバー131を左右にひねる量により調整可能となっている。また、洗浄水の流量は、温度・流量調整用レバー131の引き起こし量により調整可能となっている。
【0019】
装置本体200の外壁部は、例えば、木材から成る合板を用いて形成させることができる。ただし、甲板と呼ばれる天板201には、荷物や着替え等が載せられるようにある程度強度の高い樹脂製の合板を用いることが好ましい。また、装置本体200の左側面の上部にはフック221が設けられており、帽子や衣類等を引っ掛けられるようになっている。 次に、図1に戻ってオストメイト用汚物流しユニット1の背面側、すなわち装置本体200の内部の説明をする。
【0020】
図1に示すように、装置本体200の内部には、パネルプレート100を昇降させるための昇降手段245が設けられている。昇降手段245に内蔵された昇降ロッド245aの先端にはパネルプレート取り付け部300が設けられ、パネルプレート取り付け部300を介して昇降ロッド245aとパネルプレート100とが連結されている。昇降手段245には、例えば、図示しない水圧シリンダが内蔵されており、これも図示しないピストンが水圧により押し上げられることで昇降ロッド245aが押し上げられ、パネルプレート100が上昇するようになっている。尚、水圧シリンダの水圧を減ずれば(排水すれば)、パネルプレート100が自重により下降するようになっている。
【0021】
図6は、昇降動作部分の構成を説明するための模式図である。
前述したように、昇降手段245には図示しない水圧シリンダが内蔵されており、水圧シリンダには2ポート電磁弁247aと2ポート電磁弁247bとが配管を介して接続されている。そのため、一次側水道水が2ポート電磁弁247aを介して水圧シリンダに供給できるようになっており、また、水圧シリンダからの排水も2ポート電磁弁247bを介して行えるようになっている。パネルプレート100を上昇させるための上昇操作スイッチ260と、パネルプレート100を下降させるための下降操作スイッチ261は、コントローラ262に電気的に接続されており、また、2ポート電磁弁247aと2ポート電磁弁247bもコントローラ262に電気的に接続されている。そのため、上昇操作スイッチ260または下降操作スイッチ261からの信号を受けたコントローラ262により2ポート電磁弁247aまたは2ポート電磁弁247bが操作され、水圧シリンダへの給排水を制御して昇降手段245の昇降操作が行えるようになっている。
【0022】
図7は、昇降操作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
昇降手段245の昇降操作は、正面側に設けられた上昇操作スイッチ260や下降操作スイッチ261により行う。図7に示すように、図示しない水圧シリンダは、上昇操作スイッチ260が押されている間だけ上昇し、下降操作スイッチ261を意識的に操作者が押している間だけ下降するようになっており、操作者による昇降動作中に汚物流し部110等による人体や物体の挟み込みが生じ難いようになっている。さらに、これらスイッチはタッチレススイッチであり、図示しない人体検知手段もしくは動作検知手段へ手をかざすだけで昇降を行えるようになっており衛生的である。タッチレススイッチで使用する人体検知手段もしくは動作検知手段としては赤外線、ミリ波、マイクロ波、静電容量式等を利用したものがあげられる。安全性に関しては、汚物流し部110の下方において汚物流し部110の下部、もしくは汚物流し部110の下方付近のパネルプレート100に図示しないテープスイッチ等の物体検知手段が設けられ、汚物流し部110の下方に物体を検知している間は下降しないように制御的工夫がされている。また、上昇端と下降端は図示しない検出手段で検出してもよいし、タイマーなどにより時間で制御してもよい。
【0023】
ここで、水圧シリンダは洗浄水として使用する一次側水道水の水圧をそのまま利用して昇降動作をさせるようにすることもできるが、これに限定されるわけではない。例えば、ポンプ等を用いて圧力を印加するようにしてもよいし、圧力調整弁を設けて圧力を調整するようにしてもよい。また、水圧シリンダに限られず、電動モータと減速機構を組み合わせたもの、エアシリンダ、油圧シリンダなどを用いるようにしてもよい。尚、昇降手段245の詳細は後述する。
【0024】
また、汚物流し部110からの汚物を洗浄水とともに装置本体200の外部に排出するための排水管400が設けられている。排水管400の一端は汚物流し部110の下部に設けられた排水部110b(図2参照)に接続され、他端は外部排出口Dに接続されている。尚、外部排出口Dは、装置本体200が設置される施設側に設けてもよい。
【0025】
排水管400は、少なくとも一部がいわゆる蛇腹タイプなどの可撓性を有する管で構成され、汚物流し部110が上昇端位置と下降端位置との間のいかなる位置にあっても、汚物を洗浄水とともに確実に排出できるようになっている。尚、排水管としては、昇降動作に追従できるものであればよく、図8に例示するような全体が蛇腹タイプの排水管400a、図9に例示するような複数の蛇腹タイプの排水管400bを直管からなる接続管などで連結したもの、テレスコープタイプのもの、テレスコープタイプと蛇腹タイプの複合型のものであってもよい。尚、全体が蛇腹タイプの排水管400aを用いるものとすれば可撓性に優れた昇降動作をさせることができる。複数の蛇腹タイプの排水管400bを直管からなる接続管などで連結したものを用いるものとすれば、破損時には破損部分のみを交換すればたり、また、施設側の外部排出口Dの位置に合わせて排水管400bの長さを調整する場合も簡単に対応することが可能となる。
【0026】
装置本体200の内部の排水管400の上方には、電気温水器270が設けられている。電気温水器270は、冬場の身体洗浄という観点や汚物の洗浄性という観点からも設けられていた方が好ましい。電気温水器270は、昇降手段245の上方に設けることもできるが、昇降ロッド245aの上昇により残余のスペースが少なくなること、少ないスペースでの配管や配線が煩雑となり、また、配管・配線の作業性も悪いことなどを考慮すれば、排水管400(外部排出口D側)の上方に設けるようにすることが好ましい。この場合、パネルプレート100の昇降時に排水管400が動くので、これと干渉しない位置に電気温水器を設けるようにする。
【0027】
また、排水管400(外部排出口D側)の上方に電気温水器270を設けるようにすれば、空きスペースの有効活用となり、オストメイト用汚物流しユニット1の小型化にも寄与できる。
また、装置本体200に設けられる電気温水器270は、パネルプレート100の昇降動作に追従できるように、可撓性を有するホースで温度・流量調整用レバー131と接続されている。
【0028】
また、電気温水器270の膨張水の排出方法として、装置本体200の内部に吐水口空間を設け、トラップを介して膨張水の排出管を排水管400に接続させるようにすることもできる。そのようにすれば、汚物流し部110に膨張水の排出管を別途設ける必要がなくなり、洗浄用途の水栓との混同をも防止することができる。この場合、排水管400(外部排出口D側)の上方に電気温水器270を設けるようにすれば、膨張水の配管経路が簡素化できる。
【0029】
装置本体200の内部の右上方部にはフラッシュバルブ250が設けられており、フラッシュバルブ250には、図示しないバキュームブレーカが設けられている。フラッシュバルブ250は、汚物流し部110に付着した汚物を一次側水道水の水圧を利用して一気に洗い流すためのものであり、洗浄ボタン211を押すことで、洗浄水が洗浄管112を介して汚物流し部110の内面上部全周に形成されたリム部の穴(図示せず)から汚物流し部110の内側面全体にわたって一定時間流出するようになっている。ここで、洗浄管112とフラッシュバルブ250(図1参照)とが可撓性を有するホース112a(図1参照)で接続されているため、パネルプレート100が昇降してもホース112a(図1参照)が撓みその接続を維持することができるようになっている。このようにすれば、フラッシュバルブ250を装置本体200内に固定することができるようになり、パネルプレート100の昇降動作に関わらず一次側水道水の配管252を固定管(例えば、硬質樹脂製の管)とすることができ、常に水圧がかかる一次側水道水の配管252の信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、バキュームブレーカは、汚物流し部110が上昇端位置にあるときに汚物流し部110のリップ部111よりも上方に位置するように設けられている。そのため、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、上流側(水道水側)が汚水で汚されたりすることを確実に防ぐことができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。
【0031】
また、装置本体200の内部には、一次側水道水の配管を温度・流量調整用レバー131などと接続するための可撓性を有するホース(図示せず)や、その他の配管・配線部材などが収容されている。
【0032】
次に、昇降手段の詳細を説明する。
図10は、昇降手段を説明するための模式図である。
図10(a)、(b)において、左側の図は昇降ロッドが下降した状態、右側の図は昇降ロッドが上昇した状態を示している。
【0033】
図10(a)は、水圧シリンダが内蔵されている昇降手段を説明するための模式図であり、図10(b)は、図10(a)におけるA−A方向から見た断面を説明するための模式断面図である。また、図10(c)は、電動モータと減速機構などが内蔵されている昇降手段を説明するための模式図である。
【0034】
図10(a)に示す昇降手段245には、図示しない水圧シリンダが内蔵されており、加圧された水が水圧シリンダに供給されると図示しないピストンが押し上げられ、それに連結されている昇降ロッド245aが押し上げられるようになっている。昇降ロッド245aの上面には、例えば、ねじ穴のような固定手段が設けられ、パネルプレート取り付け部300を取り付けられるようになっている。
【0035】
図10(b)に示すように、昇降ロッド245aの断面形状は矩形であり、昇降ロッド245aが挿入されている穴部245bの断面形状もこれよりわずかに寸法が大きい矩形をしている。そのため、穴部245bがガイドの役割を果たし、本実施の形態においては、ガイド手段と昇降手段245とが一体化されていることになる。
【0036】
このガイド手段(穴部245b)により、昇降ロッド245aの回転方向と倒れ方向の動きが抑えられ、パネルプレート100をほぼ直線的に昇降させることができるようになる。尚、昇降ロッド245aの断面形状は矩形に限られるものではなく、円形以外の形状、例えば、三角形や六角形などの多角形や楕円などであってもよい。また、基礎となる断面形状が円形であっても、その外周面に延在する凸部や凹部を設けて、ガイドの役割を果たさせるようにしたものであってもよい。
【0037】
また、例えば、パネルプレート100の幅方向の両端面部付近などに補助的にガイドを設けるようにすることもできる。本実施の形態によれば、穴部245bの有するガイド作用により、この端面部付近のガイドにおける、いわゆる噛み込みを抑制することができ円滑な昇降動作をさせることができる。
【0038】
図10(c)に示す昇降手段246には、図示しない電動モータと減速機構などが内蔵されており、電動モータの回転運動を直線運動に変換して昇降ロッド246aを押し上げるようになっている。昇降ロッド246aの上面には、例えば、ねじ穴のような固定手段が設けられ、パネルプレート取り付け部300を取り付けられるようになっている。昇降ロッド246aの断面形状は円形であり、昇降ロッド246aが挿入されている昇降手段246の穴部の断面形状もこれよりわずかに寸法が大きい円形をしている。そのため、穴部が昇降ロッド246aの倒れを抑制するガイドの役割を果たし、本実施の形態においては、昇降ロッド246aの倒れを抑制するガイド手段と昇降手段245とが一体化されていることになる。
【0039】
このガイド手段(穴部)により、昇降ロッド246aの倒れ方向の動きが抑えられ、パネルプレート100をほぼ直線的に昇降させることができるようになる。ただし、昇降方向に対して平行な軸を中心とする昇降ロッド246aの回転方向の動きを抑えるために、回転方向のガイド(いわゆる回り止め)を別途設ける必要がある。この回転方向のガイドは昇降手段246の付近に設けることもできるが、例えば、パネルプレート100の幅方向の両端面部付近に設けるようにすることもできる。ただし、後述するように、汚物流し部110の幅方向の中心軸に合わせるようにして昇降手段246を設けることができないような場合には、昇降手段246の付近に回転方向のガイドを設けるようにすることが好ましい。尚、前述したもののように、昇降ロッド246aの断面形状を矩形などとすれば回転方向のガイドを別途設ける必要はなくなる。
【0040】
また、昇降手段245の穴部245b、昇降手段246の穴部の他にも別途ガイド手段を設けるようにすることもできる。このような場合においても、穴部245b・穴部の有するガイド作用により、別途設けたガイド部分における、いわゆる噛み込みを抑制することができ円滑な昇降動作をさせることができる。
【0041】
次に、昇降手段と排水管の配置について説明をする。
尚、説明の便宜上、前述の昇降手段245を例にとり説明をすることにする。
オストメイト用汚物流しユニット1は、駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置される関係上、省スペースが重要な要件となる。
【0042】
ここで、オストメイトがパウチを装着する高さには大きな個人差があるため、汚物流し部110の昇降寸法も通常の高さ調整式の便器などと比べてかなり大きなものとなる。そして、このような汚物流し部110の昇降寸法に対応させるため、昇降手段245の昇降ストロークが大きくなる一方、昇降手段245自体の寸法も大きくなる。また、このような汚物流し部110の昇降寸法に対応させるため、排水管400の長さや昇降時の移動範囲も大きなものとなる。その結果、昇降手段245と排水管400とをどのように収納させるかによってオストメイト用汚物流しユニット1の外形寸法が大きく変わることになる。
【0043】
ここで、昇降対象物を円滑に昇降させるためには、昇降対象物の重心に向かって昇降手段245からの力を作用させることが好ましい。しかし実際には、種々の制約により重心に向かう力を作用させることは難しく、重心になるべく近いところに力を作用させることになる。図1のオストメイト用汚物流しユニット1でいえば、最も重量の重い汚物流し部110の幅方向の中心軸C1と、昇降手段245の中心軸C2とが重なる位置に昇降手段245を配置することが好ましいことになる。
【0044】
しかしながら、汚物流し部110の幅方向の中心位置には排水管400が設けられている。そのため、少なくとも汚物流し部110の幅方向の中心軸C1の下方部分には昇降手段245を設けることはできない。この場合、汚物流し部110の幅方向の中心軸C1の上方部分に昇降手段245を設けるようにすることもできるが、その場合は、オストメイト用汚物流しユニット1の高さが高くなりすぎてしまう。また、汚物流し部110の幅方向の中心軸C1から等距離の位置にそれぞれ昇降手段245を設けるようにすることもできるが、その場合は、オストメイト用汚物流しユニット1の幅寸法が大きくなるのみならず、機構が複雑となってしまう。
【0045】
また、汚物流し部110が下降端にあるときには、下方のスペースが少なくなりすぎるので排水管400を汚物流し部110の鉛直下方に延在させることは困難である。また、オストメイト用汚物流しユニット1の背面方向(奥行き方向)に向けて排水管400を延在させるようにすれば、オストメイト用汚物流しユニット1の奥行き寸法が大きくなってしまう。
【0046】
本発明者は検討の結果、以下のようにすれば、昇降手段245と排水管400とを効率よく収納することができ、かつ、昇降動作も円滑に行えるとの知見を得た。
【0047】
図1に示すように、まず、汚物流し部110の幅方向の中心軸C1から左右方向(汚物流し部110の幅方向)のいずれかにオフセットした位置(図1では右側にオフセットさせた)に外部排出口Dを設けるようにする。この際、外部排出口Dは、装置本体200が設置される施設側に設けてもよい。このようにすれば、昇降動作時の排水管400の伸縮や撓みを少なくすることができるので、排水管400にかかる負担を最小限とすることができる。また、オストメイト用汚物流しユニット1の幅方向のスペースを有効に使えることができるので、オストメイト用汚物流しユニット1の外形寸法を最小限とすることができる。尚、汚物流し部110が下降端にあるときには、排水管400は、外部排出口Dに向けて下がるように傾斜していることが好ましい。汚物の排出を容易にするとともに、汚物が残留するのを抑制するためである。
【0048】
次に、排水管400のオフセット方向と反対方向にオフセットさせて(図1では左側にオフセットさせた)昇降手段245を設けるようにする。この際、汚物流し部110の幅方向の中心軸C1になるべく近く、かつ、昇降動作時に排水管400が動いても当たらない位置に昇降手段245を設けるようにする。この場合、昇降をガイドする部分でいわゆる噛み込みが起こらないように、昇降手段の中心軸C2からなるべく近い位置で、かつ、中心軸C2に対して対称にガイドを設けるようにすることが好ましい。
【0049】
ここで、前述したように、昇降手段245においては穴部245bがガイドの役割を果たす。そのため、昇降手段245の中心軸C2のすぐ近くで、かつ、中心軸C2に対して対称に(同軸に)ガイドを設けたことになり、噛み込みのない円滑な昇降動作を行うことができる。また、このような構成は、省スペースや機構の簡素化の観点からも好ましい。そして、例えば、パネルプレート100の幅方向の両端面部付近に補助的にガイドを設けるような場合においても、この端面部付近のガイドにおけるいわゆる噛み込みを抑制することもできる。尚、昇降手段246においても同様の構成を取ることは可能である。
【0050】
次に、オストメイト用汚物流しユニット1の作用について説明をする。オストメイト用汚物流しユニット1は駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置され、不特定のオストメイトに利用されるものである。
【0051】
本実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットにおいては、前述した排水管と昇降手段の配置により、比較的狭いスペースしか確保できないような場所にも設置が可能となる。
このオストメイト用汚物流しユニット1をオストメイトが使用する際には、ジャケットなどの衣類をフック221に引っ掛けるとともに、荷物や着替えをユニット上面の天板201上に載せておくことができる。
【0052】
まず、昇降手段245により汚物流し部110を昇降させて、リップ部111の高さが適切となるように汚物流し部110の高さを調整する。例えば、オストメイトのストーマのすぐ下にリップ部111がくるように汚物流し部110の高さを調整する。
尚、汚物流し部110の高さの調整は、図示しない操作スイッチなどを操作することにより行う。
【0053】
本実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットにおいては、前述した昇降手段の作用により円滑な昇降を行うことができる。
オストメイトは、汚物流し部110を最適な高さまで昇降させた後に、身体に装着していたパウチを外して、図5に示したようにシャワー水栓140からの洗浄水でこのパウチの内部を洗浄したり、ストーマ及びその周辺を洗浄したりする。この際、半固定鏡151を用いてストーマ及びその周辺を見ながら洗浄を行うことができるし、冬場などにおいては、シャワー水栓140から所望の温度の洗浄水を流すこともできる。また、水石けん用タンク150から水石けんを出して、手やパウチなどの洗浄を行うこともできるので、衛生上の観点からも好ましい。
【0054】
また、前述したように、蛇口145を引き出さない状態での吐水方向が、汚物流し部110の内壁部に向かうようになっているため、汚物流し部110の内壁部が常に洗い流され衛生上の観点からも好ましい。
【0055】
こうした汚物処理動作を行っている最中に、例えば、汚物がストーマから勢い良く飛び出したり、パウチ内やストーマ廻りの汚物の量、状態、洗い方などによっては汚物が周囲に飛び散ったりして、不本意にも周辺を汚してしまうことがあるが、シャワー水栓140は汚物流し部110より上方に配置されているので、このような場合であっても汚物がシャワー水栓140に付着することはなく、衛生性を確保することができる。
【0056】
次に、シャワー水栓140を用いてストーマ及びその周辺を洗った後、トイレットペーパーなどでストーマやその周辺に付いた洗浄水を拭き取り、新しいパウチをストーマに装着する。
次に、洗浄水をシャワー水栓140から流出させると同時に、または、その後に、洗浄ボタン211を押してフラッシュバルブ250を作動させて汚物流し部110の内壁面を洗い流すとともに、排水管400を介して汚物をユニットの外部に一気に排出させる。
【0057】
尚、これら一連の作業において必要となるもの、例えば、温度・流量調整用レバー131、シャワー水栓140、水石けん用タンク150、半固定鏡151、洗浄ボタン211、トイレットペーパーホルダ212なども汚物流し部110と共に昇降するため、オストメイトにとって使い易いシステムとなっている。
【0058】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前述の具体例に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0059】
例えば、オストメイト用汚物流しユニット1、パネルプレート100、汚物流し部110、給水口110a、排水部110b、リップ部111、洗浄管112、ホース112a、温度・流量調整用レバー131、シャワー水栓140、棚141、ホース142、水栓取り付け部144、蛇口145、水石けん用タンク150、半固定鏡151、装置本体200、天板201、洗浄ボタン211、トイレットペーパーホルダ212、フック221、昇降手段245、昇降ロッド245a、穴部245b、2ポート電磁弁247a、2ポート電磁弁247b、フラッシュバルブ250、配管252、昇降手段246、昇降ロッド246a、上昇操作スイッチ260、下降操作スイッチ261、コントローラ262、電気温水器270、排水管400、排水管400aなどの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。具体的には、例えば、汚物流し部110の材質は陶製の代わりに硬質樹脂等であってもよい。
【0060】
また、外部排出口Dの位置も例示したものに限定されるわけではなくオストメイト用汚物流しユニットが設置される施設に合わせて適宜変更することができる。
また、外部排出口Dと昇降手段との相対的な位置関係も例示したものに限定されるわけではなく、例えば、外部排出口Dを左側、昇降手段を右側に設けるようにしてもよい。
また、パネルプレート100は厳密な意味で垂直方向に昇降する必要はなく、垂直に近い斜め方向に昇降してもよい。
【0061】
また、オストメイト用汚物流しユニット1にシャワー水栓140以外の固定水栓を設けるようにしてもよい。
また、前述した各具体例が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットの背面側を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットの正面側を説明するための模式斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しユニットの正面側を説明するための模式斜視図である。
【図4】本実施形態に係るオストメイト用汚物流しユニットを側面からみた模式図である。
【図5】シャワー水栓を説明するための模式斜視図である。
【図6】昇降動作部分の構成を説明するための模式図である。
【図7】昇降操作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図8】全体が蛇腹タイプの排水管を例示する模式図である。
【図9】複数の蛇腹タイプの排水管を連結した排水管を例示するための模式斜視図である。
【図10】昇降手段を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0063】
100 パネルプレート、110 汚物流し部、110a 給水口、110b 排水部、111 リップ部、112 洗浄管、112a ホース、131 流量調整用レバー、140 シャワー水栓、141 棚、142 ホース、144 水洗取り付け部、145 蛇口、150 用タンク、151 半固定鏡、200 装置本体、201 天板、211 洗浄ボタン、212 トイレットペーパーホルダ、221 フック、245 昇降手段、245a 昇降ロッド、245b 穴部、246 昇降手段、246a 昇降ロッド、250 フラッシュバルブ、252 配管、270 電気温水器、300 部、400 排水管、400a 排水管、C1、C2 中心軸、D 外部排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に汚物流し部を設けたパネルプレートと、
少なくとも一部が可撓性を有し、一端が前記汚物流し部に接続され他端が外部排出口に接続される排水管と、
前記パネルプレートを昇降させる昇降手段と、
前記パネルプレートの昇降をガイドするガイド手段と、
を備え、
前記外部排出口は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、
前記昇降手段は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸に対して前記外部排出口とは逆の方向にオフセットした位置に設けられていることを特徴とするオストメイト用汚物流しユニット。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記汚物流し部の幅方向の中心軸の近傍で、かつ、前記パネルプレートの昇降時に前記排水管と干渉しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のオストメイト用汚物流しユニット。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記昇降手段の中心軸に対して対称で、かつ、前記パネルプレートの昇降時に前記排水管と干渉しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のオストメイト用汚物流しユニット。
【請求項4】
前記汚物流し部に接続され洗浄水を供給する洗浄管と、前記洗浄管への前記洗浄水の供給を制御するフラッシュバルブと、が可撓性を有するホースで接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のオストメイト用汚物流しユニット。
【請求項5】
前記昇降手段には、水圧シリンダが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のオストメイト用汚物流しユニット。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−111230(P2008−111230A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293315(P2006−293315)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】