オストレオコッカス(Ostreococcus)種の核ゲノムからのポリペプチドの発現
オストレオコッカス種の核ゲノムから少なくとも1つのポリペプチドを生産する方法。該方法は、オストレオコッカス種の核ゲノムに少なくとも1つの組換え核酸分子を導入することを含み、組換え核酸分子は第2のポリヌクレオチドと連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含み、第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、包括的には、緑藻類、特にオストレオコッカス種における核ゲノムからのポリペプチドの発現方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えタンパク質、特にモノクローナル抗体の生産は、重要なマーケットを示し、十分に拡大しており、2004年には1兆円(100億ドル)と評価され、2010年には3兆円(300億ドル)を超えるとされている。これらの組換えタンパク質は、健常人のための栄養補助食品として、または病気、特に癌腫および感染症の治療用治療薬として、その用途が見出されている。
【0003】
治療薬の生産のために遺伝子工学技術を使用する主な利点は、かかる方法によって大量の所望のタンパク質が生成されることである。種々の細胞の種類を使用した種々の方法がこれまでに開発された。細菌細胞に基づく技術が改良された場合でも、抗体のような複雑なタンパク質を生産するためにはかかる方法は制約を示す。真核細胞、特に昆虫細胞や哺乳動物細胞を使用する方法は、ヒトの複雑なタンパク質の生産を可能にするが、これらの系はコストが高く、これがかかる系の開発の主な制約になっていた。
【0004】
遺伝子組換え植物でのタンパク質の生産は、現在十分に台頭している代替方法となっている。これらの発現系は、ウイルスやプリオンなどの病原体を運搬せずに複雑なタンパク質を生産することを可能にする。遺伝子組換え植物の使用に関する主な問題は、特にヒト遺伝子またはアレルゲンを使用した場合の、花粉の伝播に関する汚染の危険性である。実際に、欧州の法律は、そのような危険のため、遺伝子組換え植物の使用を規制している。さらに、そのような生産が安価なものであると、植物からのタンパク質の精製は複雑で拡張的になるだろう。
【0005】
最近、緑藻類、すなわちクラミドモナス ラインハーティ(Chlamydomonas reinhardtii)が、そのプラスチド(色素体)ゲノムからヘルペスウィルス向けのモノクローナル抗体を生産するために使用されている。この藻類は、単細胞であるため、遺伝子組換え植物と比較して組換えタンパク質の精製を促進するという主な利点を与える。しかしながら、クラミドモナス ラインハーティの遺伝子コードには偏りがあるため、この発現系の主な欠点となっている。実際、遺伝子によってコードされた組換えタンパク質の正確な発現を得るためには、第3位にAまたはTを含むかかる遺伝子の各コドンを遺伝子修飾する必要がある。タンパク質の生産のためのこの必要なステップには、クラミドモナス ラインハーティにおけるこの発現系の高い生産コストを伴う。さらに、色素体での発現は、抗体などの糖タンパク質の生物活性または安定化のために必要とされることが多い該糖タンパク質のグリコシル化を行わない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、低コストで大量のタンパク質を好都合に生産および精製する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
組換えタンパク質は、オストレオコッカス種の緑藻類核ゲノムから発現させることが可能である。従って、本願発明者らは、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポ
リペプチドを生産する方法を提供する。かかる方法は、オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む。
【0008】
本願発明者らはさらに、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットを提供する。該カセットは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列を備え、該プロモータ配列はオストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する。
【0009】
本願発明者らは、以下に説明するような本発明の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクターを提供する。
【0010】
本願発明者らはさらに、以下に説明するような本発明の方法によって得ることができる細胞を提供する。
【0011】
本願発明者らはさらに、以下に説明するような本発明の方法によって得ることができ、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチドを提供する。
【0012】
本願発明者らはまた、治療組成物の調製のための少なくとも1つのポリペプチドの使用方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】関連する制限部位と、オストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータの制御下にあるG418耐性遺伝子(KanMx)と、それに続くTEFターミネータおよびルシフェラーゼ+遺伝子とを示す、PotLucベクターのマップ。
【図2A】PotLuc−PRR1ベクターを生成すべくPotLuc中のルシフェラーゼ遺伝子にオストレオコッカス タウリのPRR1遺伝子を融合するスキーム。二重線はサザンブロット分析で使用されたプローブに対応する領域を示す。
【図2B】PotLuc−HAPTベクターを生成すべくPotLuc中のルシフェラーゼ遺伝子にオストレオコッカス タウリのHAPT(高親和性リン酸トランスポーター)プロモータを融合するスキーム。
【図3】34個の異なるオストレオコッカス タウリ形質転換体から得られたタンパク質抽出物に対するルシフェラーゼルミネセンスの測定値を示す。(灰色と白色のボックス)を示す。これらの細胞は、オストレオコッカス タウリのPPP1全遺伝子に融合させたG418耐性DNAおよびルシフェラーゼ+遺伝子で形質転換した。黒色ボックス−陰性対照(DNAなし)、灰色ボックス−ルミネセンス(冷光)が陰性対照よりも2倍高かった、白色ボックス−ルミネセンスが陰性対照より2倍低かった。
【図4A】3つの異なるオストレオコッカス タウリの安定した形質転換体(PRR1−5、PRR1−7およびPRR1−15)のルシフェラーゼ活性。これらの細胞は、オストレオコッカス タウリのPPP1全遺伝子に融合させたG418耐性DNAおよびルシフェラーゼ+遺伝子で形質転換した。これらの形質転換体は、昼/夜(白色ボックス/黒色ボックス)を交互にして培養した。
【図4B】EF1α対照細胞に関して定量的RT−PCRで測定したPRR1 mRNAの発現。
【図5】G418耐性でルシフェラーゼ活性を示す10個の異なる形質転換体におけるサザンブロットによる遺伝子PRR1挿入の検出。ライン1、5および7は形質転換体PRR1−5、PRR1−7およびPRR1−15に相当する。ラインCは、形質転換されていない陰性対照に相当する。使用されたプローブは図2に記載されたPRR1遺伝子(600bp)の3’領域に相当する。
【図6A】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。浸透圧の影響を示す。
【図6B】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。パルス時間の影響を示す。
【図6C】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。電界強度の影響を示す。
【図6D】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。DNA量の影響を示す。
【図7】関連する制限部位と、オストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータの制御下にあるノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ耐性遺伝子(Nat1)と、それに続くTEFターミネータ、6×ヒスチジンタグ、マルチクローニング部位(MCS)およびリン酸トランスポータープロモータを示す、Potoxベクターのマップ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
オストレオコッカス種の核ゲノムから少なくとも1つのポリペプチドを生産する方法を開示する。該方法は、
(i)オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、
第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む。
【0015】
本願発明者らの方法によるポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、ポリペプチドまたはタンパク質複合が核ゲノムから発現でき、そのため、クラミドモナス ラインハーティの色素体発現系とは異なり、遺伝子の各コドンを修飾しなくても所望の産物を正確に発現できるという利点を有する。
【0016】
用語「ポリペプチド」は、本明細書に使用する場合、隣接するアミノ酸残基のαアミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって互いに接続された一連の直線状のアミノ酸残基を指す。
【0017】
用語「オストレオコッカス種」は、本明細書に使用する場合、プラシノ藻科の単細胞緑藻種を指す。本発明によれば、オストレオコッカス種は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択可能であり、好ましくはオストレオコッカス タウリである。
【0018】
例えば、オストレオコッカス タウリの野生型菌株0TTH0595は、フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて参照番号RCC614で、またはイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能である。そのゲノム全体が、以下のEMBLアクセッション番号で利用可能である:CR954201(Chrom1);CR954202(Chrom2);CR954203(Chrom3);CR954204(Chrom4);CR954205(Chrom5);CR954206(Chrom6);CR954207(Chrom7);CR954208(Chrom8);CR954209(Chrom9);CR954210(ChromiO);CR954211(Chrom11);CR954212(Chrom12);CR954213(Chrom13);CR954214(Chrom14);CR954215(Chrom15);CR954216(Chrom16);CR954217(Chrom17);CR954218(Chrom18);CR954219(Chrom19);CR954220(Chrom20)。本発明の本願発明者らの方法によりポリペプチドを発現するためのオストレオコッカス種の使用は、その遺伝子コードに偏りがなく、すべてのコドンが存在し、したがってポリペプチドの発現および生産が促進されるという利点を提供する。
【0019】
オストレオコッカス種に少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する方法は、当業者により、一般的知識については容易に識別される。例えば、(i)の導入工程は、エレクトロポレーションによって行なうことが可能である。
【0020】
用語「組換え核酸分子」は、本明細書に使用する場合、実験的組換えから得ることが可能なポリヌクレオチドを指す。
【0021】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書に使用する場合、リン酸ジエステル結合により互いに結合された2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を指す。そのようなものとして、用語「ポリヌクレオチド」は、RNAおよびDNAを含み、好ましくは遺伝子またはその一部であり得るDNA、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列等を含み、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、DNA/RNAハイブリッドであってもよい。さらに、本明細書に使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、細胞から分離可能な天然核酸分子と、例えば化学合成法によりまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の酵素法により調製可能な合成ポリヌクレオチドとの両方を含む。
【0022】
用語「連結されて作用する」は、本明細書に使用する場合、2つ以上の分子が、一つの単位として機能し、かつ一方又は両方の分子もしくはその組み合わせに起因する機能をもたらすように、互いに対して配置され得ることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、転写または翻訳調節要素に連結されて作用し、この場合、かかる調節要素は、ポリヌクレオチドにその調節効果を与える。これは、調節要素が、細胞中で通常関連するポリヌクレオチド配列に効果を及ぼすのと同様である。
【0023】
用語「プロモータ配列」は、本明細書に使用する場合、RNAポリメラーゼの結合部位と、転写調節タンパク質の少なくとも結合部位とを有するDNA領域を指す。当業者は、本発明に有用なプロモータ配列を、自身の一般的知識を用いて容易に識別できる。例えば、本発明に有用なプロモータ配列は、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、およびオストレオコッカス タウリ高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(
配列番号3)からなるグループから選択することが可能である。特に、本発明のプロモータ配列は、配列番号3を有し得る。
【0024】
第2のポリヌクレオチドが少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む、上記方法を行うことが可能である。用語「外因性ヌクレオチド配列」は、本明細書に使用する場合、オストレオコッカス種ゲノムでは天然に見出されないヌクレオチド配列を指す。さらに、用語「外因性ヌクレオチド配列」は、本明細書に使用する場合、天然ヌクレオチド配列、合成ヌクレオチド配列、ゲノムDNA配列、cDNA配列、およびRNA配列を含み、好ましくはDNA配列を含む。例えば、かかる方法では、少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列はマーカー遺伝子であってよい。用語「マーカー遺伝子」は、本明細書に使用する場合、検出可能な発現型を与えるポリヌクレオチドを指す。当業者は自身の一般的知識に関してマーカー遺伝子を容易に識別可能である。特に、マーカー遺伝子は、G418(例えば配列番号6により識別されるKanMx)またはノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ(例えば配列番号9により識別されるNatl)などの抗生物質への耐性を引き起こす遺伝子、および、ホタルルシフェラーゼや自身の基質であるルシフェリンおよびコエンテラジンの加水分解でルミネセンスを生じるrellila遺伝子等のレポータ遺伝子から選択され得る。特に、本発明による少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列は、治療に関連する配列であり得る。当業者は自身の一般的知識により、治療に関連する配列を容易に識別可能である。例えば、治療に関連する配列は野生型遺伝子であってよく、それは特定の病気の非機能的遺伝子、遺伝子のネガティブ変異型、遺伝子の機能的阻害剤をコードする配列であってよい。特に治療に関連する配列は、ダニアレルゲンなどのアレルゲンのような糖タンパク質をコードする遺伝子であってよい。
【0025】
第2のポリヌクレオチドが第1のポリペプチドと少なくとも1つの第2のポリペプチドとをコードする、上記方法を行うことが可能である。コードされたポリペプチドは、いずれもまたはすべて、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そのようなものとして、方法は、例えば二量体、三量体および四量体を含む機能性タンパク質複合体を生産する手段を提供し、複合体のサブユニットは同じであってもよいし異なっていてもよい。特に、第1のポリペプチドと少なくとも第2のポリペプチドは融合タンパク質であってよい。
用語「融合タンパク質」は、本明細書に使用する場合、単一の「融合された」ポリペプチドを発現すべく単一のオープンリーディングフレームの発現により生産されたペプチド結合により第1のポリペプチドドメインが第2のポリペプチドドメインに連結されて作用する、組換DNA方法により生産されたポリペプチドを指す。特に、融合タンパク質は、His−6タグ、「FLAGエピトープ」、ビオチン、またはその同等物等の、細胞での融合タンパク質の識別または発現を促進し得るペプチドタグを含んでも良い。例えば、精製タンパク質を得ることが望ましい場合、そのようなタグは、融合タンパク質の単離を促進できるという利点を提供し得る。
【0026】
特に、第1のポリペプチドは免疫グロブリンH鎖(H)またはその可変領域(VH)を含んでもよく、第2のポリペプチドは免疫グロブリン軽鎖(L)またはその可変領域(VL)を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は免疫グロブリン軽鎖と結合してオストレオコッカス種において一価抗体を形成し、2つの一価抗体がさらに結合して二価抗体を生産し得る。そのため、本方法は、抗体などの機能性タンパク質複合体を生産するための手段を提供する。
【0027】
第2のポリヌクレオチドが0.5〜10kb、好ましくは0.5〜5kb、より好ましくは0.5〜3kbからなる、上記方法を行うことが可能である。
【0028】
詳細には、第2のポリヌクレオチドは「標的シグナル」を含んでもよい。用語「標的シ
グナル」は、本明細書に使用する場合、ポリペプチドを細胞の特定の位置、例えば細胞質ゾル、核、原形質膜、小胞体、細胞外培地(つまり分泌)へ標的として向けるヌクレオチド配列を指す。詳細には、第2のポリヌクレオチドは、オストレオコッカス種での少なくとも1つのポリペプチドの分泌を許容する分泌シグナルを含む。当業者は分泌シグナルを容易に識別可能である。例えば、分泌シグナルは、オストレオコッカス タウリの予測アクアリシン/ズブチリシン分泌プロテアーゼ配列ペプチド(配列番号17に対応するMRRFLTTWLTACVSRANAF)からなるグループから選択される。本方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、オストレオコッカス種が細胞壁を備えず、したがって分泌タンパク質の生産を可能にすると共にタンパク質の精製を促進するという利点を提供する。
【0029】
上記方法は、
(ii)前記オストレオコッカス種中で発現された前記少なくとも1つのポリペプチドを採収する工程、
をさらに含んでもよい。
【0030】
用語「採収」は、本明細書に使用する場合、オストレオコッカス種からポリペプチドが分離されることを意味する。特に、少なくとも1つのポリペプチドを実質的に精製可能であるということは、それがタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、または天然で関連している他の物質が比較的存在しないこと意味する。一般に、実質的に精製されたポリペプチドは、試料の少なくとも約50パーセント、特に約約80パーセントを構成する。
【0031】
オストレオコッカス種は、バイオリアクターにて成長させることが可能である。当業者は自身の一般的知識に関してバイオリアクターを、例えばLabforslux(Infors HT社)のようにして、容易に識別可能である。
【0032】
特に、オストレオコッカス種を、オストレオコッカス種の成長を刺激する少なくとも1つの化合物を含む培地において成長させることが可能である。オストレオコッカス種の成長を刺激する化合物は、当業者には自身の一般的知識に関して容易に識別することができる。例えば、オストレオコッカス種の成長を刺激する少なくとも1つの化合物は、硝酸塩、アンモニア塩基、リン酸塩および二酸化炭素からなるグループから選択することができる。上記方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、大集団のオストレオコッカス種を成長させることができ、そのため大量の所望の産物の生産と、望ましい場合には分離とを可能にするという利点を提供する。
【0033】
オストレオコッカス種は、少なくとも1つのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを含む培地で成長させることが可能である。上記方法によりポリペプチドまたはタンパク質を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、核ゲノムからポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現させることができ、従ってクラミドモナス ラインハーティの色素体発現計とは異なり所望の産物のグリコシル化を可能にするという利点を提供する。
【0034】
さらに、いくつかのインシリコ(in silico)および免疫化学データは、オストレオコッカス種におけるタンパク質のグリコシル化が、特にβ−1,2−キシロースおよびα−1,3−フコース等の免疫原性およびアレルゲン性の残基がないという点で、高等植物におけるそれと異なることを示唆している。したがって、本発明の方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、グリコシル化がβ−1,2−キシロースやα−1,3−フコース等の免疫原性およびアレルゲン性の残基を提供せず、したがってアレルゲン性の残基なしで所望の産物をグリコシル化できるという利点を提供する。
【0035】
本願発明者らはさらに、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットを提供する。カセットは、
(a)少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列
を備え、プロモータ配列はオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する。
【0036】
用語「上流」とは、本明細書に使用する場合、DNA転写の方向とは反対方向を指し、そのため非コード鎖を5’から3’へ、またはRNA転写物上を3’から5’へ進む。
【0037】
用語「クローニング部位」は、本明細書に使用する場合、第2のポリヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチドの結合を促進するすべてのヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を指すよう広く使用される。例えば、クローニング部位は、マルチクローニング部位のような少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位およびloxP部位のような少なくとも1つのレコンビナーゼ認識部位からなるグループから選択することが可能である。
【0038】
当業者は自身の一般的知識で、プロモータ配列を、容易に識別可能である。例えば、プロモータ配列は、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、およびオストレオコッカス
タウリ高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)からなるグループから選択することが可能である。特に、プロモータ配列は配列番号3を有し得る。
【0039】
本願発明者らはさらに、本発明の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクターを提供する。ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターを含む、原核細胞または真核細胞へポリヌクレオチドを導入するのに有用なベクターであればいかなるベクターであってもよい。1実施形態では、ベクターは原核生物の複製起点をさらに含んでもよい。特に、複製起点はE.Coliの複製起点であってよい。そのため、ベクターは、オストレオコッカス種と同様に原核生物の宿主細胞中でも継代培養し、操作することができる。ベクターは、少なくとも1つのクローニング部位、1つの調節要素、少なくとも1つのマーカー遺伝子、および少なくとも1つの標的シグナルのうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0040】
用語「調節要素」は、本明細書に使用する場合、該調節要素に連結されて作用するポリヌクレオチドの転写または翻訳を調節するヌクレオチド配列を指す。
【0041】
本願発明者らはまた、上記方法によって得ることが可能な細胞を提供する。特には、細胞はオストレオコッカス種であってよい。細胞は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、R
CC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択されたオストレオコッカス種の細胞であり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である。
特には、本発明の細胞は、RCCに参照番号RCC614で登録され、またはイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS
Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリであってよい。
【0042】
本願発明者らはまた、上記方法によって得ることが可能なポリペプチドであって、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチドを提供する。1実施形態では、ポリペプチドは一本鎖抗体である。そのようなものとして、方法は、N−グリコシル化抗体された抗体などの機能性タンパク質複合体を生産するための手段を提供する。
【0043】
本願発明者らはまた、少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0044】
本願発明者らはさらに、治療組成物の調製のための少なくとも1つのポリペプチドの使用方法を提供する。特に、治療組成物は、癌、感染症、心血管疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾患、および単一遺伝子遺伝病などの遺伝子疾患からなるグループから選択された疾患の治療用の治療組成物であり得る。
【0045】
本開示の選択的な代表的態様をここで以下の非限定的な実施例により例証する。
【実施例】
【0046】
実施例1:オストレオコッカス タウリにおけるルシフェラーゼ融合タンパク質の発現
本実施例は、オストレオコッカス タウリでのルシフェラーゼ融合タンパク質の発現を実証する。
方法
オストレオコッカス タウリ コンピテント細胞の調製
【0047】
コンピテント細胞を調製するために、オストレオコッカス タウリの野生型菌株0TTH0595を使用した。かかる細胞は、フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCCMP)にて参照番号RCC614で、およびイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能である。オストレオコッカス タウリ コンピテント細胞の調製全体は、滅菌状態で行なった。オストレオコッカス タウリ(野生型菌株0TTH0595)の細胞を、3000万個/mlの細胞密度に達するまで、20℃にて青色光(30mmol量子/cm2秒)で成長させ
た。海水にSigma−Aldrich社(参照番号:K1630)のKeller培地を加えた培養培地を、0.22μmでろ過し、オートクレーブした。最終0.1%w/vになるようプルロン酸(Sigma−Aldrich社、参照番号:P7061)を添加後に、細胞を8000×g、8分、4℃で遠心分離し、50ml(Sarstedt社)の円錐形チューブ中に採収した。その後、プロトコルは氷上で実行した。1mlの1Mソルビトールで2回洗浄して(10000g、5分、4℃)塩を除去し、細胞を2〜3×1010個/mlの最終細胞濃度になるよう50μlの1Mスクロース中に再懸濁した。
プラスミドの構築
【0048】
以下の3種類の融合物を調製した:
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータへの抗生物質耐性遺伝子の融合(G418耐性遺伝子:PotLucベクターおよびclonat耐性遺伝子:pH4Nat1ベクター);
ホタルルシフェラーゼ遺伝子へのHAPTプロモータの融合(PotLuc−HAPTベクター);
ホタルルシフェラーゼ遺伝子へのオストレオコッカス タウリのPPR1(Pseudo Response Regulator 1、偽応答レギュレーター)遺伝子の融合(PotLuc−PPR1ベクター)。
【0049】
DNA操作はすべて、ほぼSambrookら(Molecular cloning. A laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)によって記載されたように実行した。オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータは2つのプライマーot−H4
Forおよびot−H4 Revの使用によりPCRにより増幅されたオストレオコッカス タウリのDNA断片に相当するot−H4 Forの配列は5’−GCG GAT
CCC ACG GAG CGC AAC GGT ACC−3’(配列番号13)であり、ot−H4 Revの配列は5’−CC AGC GCC AGC CAT GGT TTT CGA ACG−3’(配列番号14)である。
【0050】
ノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ(Clonat)耐性遺伝子(Natl)をコードするPAG25ベクターのTEFプロモータ(配列番号11)を、BamH1部位とNcol部位を使用してオストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータと置換した。
【0051】
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータを、(TEFプロモータと置換するために)PUG65からのBamHI部位とNcol部位の間でKanMxモジュールのG418抗生物質耐性遺伝子(Genbank登録番号S78175)に融合した。得られたプラスミドをPotH4KanMxと命名した。Promega社のpSP−luc+NF由来のルシフェラーゼ+遺伝子を、Xbal部位とNhel部位を使用して、PotH4KanMxに挿入した。得られたプラスミドは、Potlucと命名したが、ルシフェラーゼ+遺伝子に遺伝子を融合させることが可能である。PotlucプラスミドはE.coli(大腸菌)の複製起点と、pUC19に既に存在するアンピシリン耐性遺伝子とを有する。Potlucプラスミドは、ホタルルシフェラーゼ(配列番号10)をコードする遺伝子、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4(配列番号1)の強力なプロモータの制御下でオストレオコッカス タウリにおける選択マーカーとして使用されるG418耐性遺伝子(配列番号6)、およびそれに続くTEFターミネータ(配列番号7)とをさらに有している(図1)。
【0052】
プロモータ領域の200個のヌクレオチドを含むオストレオコッカス タウリ遺伝子PRR 1の全体(配列番号2)を、特異的プライマーTOC1fullfuRNco1およびTOC1fullFNhe1を使用して増幅し、PotLucのNhel部位とNcol部位の間でクローニングし、プラスミドPotLucPRR1を生成した(図2A)。TOC1fullfuRNco1の配列はTTTCCATGGACTTGGAGCCGTCGCGAGA(配列番号15)であり、TOC1fullFNhe1の配列はTTTGCTAGCACCTCGAGCCGGGACCAAAAA(配列番号16)である。
【0053】
ATGの上流で100bpから成るHAPTプロモータ(配列番号3)を、BgIII部位とNcol部位の間でPotlucにてクローニングし、プラスミドPotLuc−
HAPTを生成した(図2B)。
オストレオコッカス タウリ形質転換のためのDNAの調製
【0054】
4つのDNA構築物を、異なる対象遺伝子の発現を駆動するプロモータの上流を切断する正確な制限酵素を使用して線形化した:
Clonat耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ;
G418耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ;
G418耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータと、それに続くルシフェラーゼ遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ PRR1遺伝子またはHAPTプロモータ。
線形化プラスミドを、tRNA添加(最終濃度1mg/ml)(Sigma−Aldrich社、R5636)後にエタノール沈降させ、水に再懸濁して、1μg/μlの最終DNA濃度を得た。
【0055】
図6に示されるように、エレクトロポレーションによりオストレオコッカス タウリの形質転換を最適化した。ルシフェラーゼ(約6kb)に融合されたHAPTプロモータ(強いプロモータ)を含むPotLuc−HAPTプラスミド(Xmnlによる)から生じた線形化DNA構築物を、ルシフェラーゼ活性をモニタすることによりエレクトロポレーション条件を最適化するために使用した。以下に示した実験条件は、最も高い形質転換効率と、最も高い生存率を備えた条件である(ソルビトールバッファ、電界強度600V/cm、抵抗器400Ω)。ある形質転換の場合、上記のように調製された50mlのコンピテントセル(2×1010個の細胞)を、氷上で少なくとも10分間5μl DNAとインキュベートし、1mmのエレクトロポレーションキュベットに移し、約2分室温に暖める(Bridge Biosciences社)。エレクトロポレーションは、以下の電気的パラメータを用いてGeneパルサー装置(Biorad社)にて行った:電界強度600V/cm、抵抗器400Ω、コンデンサ25μF)。時定数は8〜9ミリ秒であった。エレクトロポレートされた細胞を、上記の段落0055に記載したような40mlの培地で2日間再懸濁した(発現フェーズ)。48時間後に、形質転換体を、固体培地(0.2%アガロースと適切な選択抗生物質を含むKeller培地(SIGMA−Aldrich社、参照番号K1630))中で選択した。固体培地は以下のように調製した:オートクレーブした低融点アガロース(Invitrogen社)を2.1%w/vで90度にて維持し、体積9の培養培地に対し体積11の割合で混合した。500μl〜1mlの形質転換体を10mlのこの培地と混合し、混合物をペトリ皿上に注いだ。ペトリ皿は湿式チャンバ内で先に述べたのと同じ照明条件下に配置した。
エレクトロポレーションによるオストレオコッカス細胞の形質転換の最適化
【0056】
ルシフェラーゼ+(約6kb)に融合された高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータを含む線形化DNA構築物(Xmnlによる)を種々の条件でエレクトロポレートした。HAPTの強力な同族プロモータ下でのルシフェラーゼ遺伝子の一過性発現を、エレクトロポレートした細胞にて1日後にチェックした。106個の生存細胞当た
りのルミネセンスシグナルを、種々の実験を通じて、最大シグナルのパーセンテージとして正規化する(黒色)。死亡率を、1日後にフローサイトメトリーにより評価した低い赤色蛍光を有する細胞のパーセンテージにより定義した(白色)。結果を図6A〜Dに示す。
【0057】
図6Aは浸透圧の影響を示す。細胞を1Mスクロースまたは1Mソルビトールのいずれかに再懸濁し、800V/cm、200Ωおよび400Ω(25μF)でエレクトロポレートし、時定数を増加させた。生存率はいずれの浸透圧でも等しかったが、形質転換効率
はその時定数が特に高いためにソルビトールの方が高く、したがって、これをさらなる最適化のために使用した。
【0058】
図6Bはパルス時間の影響を示す。細胞を800V/cmでエレクトロポレートし、抵抗をパルス時間(時定数)を増加させるよう調節した。形質転換効率は、5ミリ秒より大きい一定時の間に非常に改善されたが、生存率はこの実験では約80%であった。
【0059】
図6Cは電界強度の影響を示す。エレクトロポレーションは500Vではほとんど非効率であったが、600Vで最大となり、800Vまでは効率的ではあるが効率が約50%だけ減少した。上記の電圧は細胞の生存率に非常に影響を及ぼしたため、おそらく効率が減少したと考えられる。
【0060】
図6Dは、DNA量(1mg/ml濃度)の影響を示す。DNAの最適量は5μgであった。
結果:
抗生物質耐性の安定なオストレオコッカス タウリ形質転換体
【0061】
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータの制御下、G418耐性を有する線形化PotLucプラスミド(Xmnlによる)により形質転換した。4つの独立した形質転換を行なった。陽性クローンを1mg/mlのG418に基づいて選択した。DNA1μg当たり50〜1000個の形質転換体が得られた。DNAがない同じ条件下でエレクトロポレートした陰性対照では形質転換体が得られなかった。
【0062】
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータの制御下、Clonat耐性を有する線形化pH4Nat1プラスミド(Xmnlによる)により形質転換した。2つの独立した形質転換を行なった。陽性クローンを700mg/mlのClonatに基づいて選択した。DNA1μg当たり500個以下の形質転換体が得られた。
【0063】
この実施例は、オストレオコッカス タウリにおいてコドン使用に偏りなく、外因性選択遺伝子を使用することが可能であることを示している。
【0064】
オストレオコッカス タウリにおけるルシフェラーゼ組換えタンパク質の発現
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリのPRR1全遺伝子に融合させたG418耐性およびルシフェラーゼ+遺伝子を有する線形化PotLuc PRR1プラスミド(Nhelによる)により形質転換した(図2A)。DNA1μg当たり1000個の形質転換体が、野生型オストレオコッカス タウリの致死量である1mg/mlのG418選択に基づいて得られた。ルミネセンスをマイクロプラークに入れた培養物に対して直接またはタンパク質抽出物に対してルシフェリンの存在下で照度計Berthold LB 360を使用して測定した(図3)。
【0065】
結果は、試験したクローンの90%よりも多くが、DNAなしで形質転換した形質転換陰性対照よりも高いルシフェラーゼレベルを有していたことを示す(2から100,000倍超)。種々の形質転換体のルシフェラーゼ活性を、細胞3×107個/mlで200
μMのルシフェリンの存在下で昼/夜を交互にインキュベートして200μlの培養細胞に対して試験した(図4A)。ルシフェラーゼの周期的発現の同様なプロフィールがこれらの種々のクローンで観察された。これらのプロフィールは、定量的RT−PCRで測定したPRR1 mRNAの発現を反映している(図4B)が、これはPRR1遺伝子が完全に挿入されていることを示唆している。10個の形質転換対のDNAを抽出し(Qia
gen社のKit Dneasy Plant mini Kit)、制限酵素Ncolにより消化し、サザンブロットに使用した。PRR1の3’コード領域の600bpに対応するプローブを使用して、オストレオコッカス タウリのゲノム構築物中の挿入物を検出した(図5)。
【0066】
結果は、野生型菌株0TTH0595(C)での内因性遺伝子PRR1の存在が4kbのハイブリダイゼーションシグナルにより検出されたことを示している。このバンドはすべての形質転換体で見出された。それより過剰のバンドは複数の挿入物に相当する(1〜3)。平均で、形質転換体による2つの組み込み事象が観察された。
【0067】
種々の形質転換体が種々のレベルの発現でルシフェラーゼを蓄積していた。形質転換体の分析は、ゲノムへの複数の組み込み事象を示し、G418耐性の細胞の90%超がPRR1遺伝子の発現を反映するルシフェラーゼの発現を示したため、導入された断片が切断されなかったことを示唆した。
【0068】
この実施例は、オストレオコッカス タウリでのルシフェラーゼ+組換えタンパク質の発現が効率的であることを示している。
実施例2:Potoxベクターの構築
【0069】
PAG25ベクターのNatlコード配列の上流のTEFプロモータを、BamH1とNcolクローニング部位間でオストレオコッカス由来のヒストンH4プロモータと置換した。合成マルチプルクローニングサイト(MCS)と、それに続く6×ヒスチジンタグをコードする配列と相補的配列(配列番号17および配列番号18)とを、続けてオストレオコッカス タウリ HAPTプロモータと共に導入し、Potoxベクターを生成した。このベクターは強力なHAPTプロモータの制御下で対象のコード配列をクローニングおよび発現することを可能にする。形質転換体は750μg/mlのCLONAT耐性に基づいて選択可能である。対象タンパク質は6×ヒスチジンTAGを使用して精製可能である。必要な場合、Xho I制限ヌクレアーゼを使用して、このTAGを削除することが可能である。
【0070】
上記に列挙したものを含む本願で参照したすべての文書は、その全体が本願に援用される。上述の実施形態に対する様々な改変は、本明細書で提供した開示から当業者には明らかである。したがって、本開示中の技術は、本開示の趣旨または実質的属性から逸脱しない他の特定の形式で具現化され得る。
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、包括的には、緑藻類、特にオストレオコッカス種における核ゲノムからのポリペプチドの発現方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えタンパク質、特にモノクローナル抗体の生産は、重要なマーケットを示し、十分に拡大しており、2004年には1兆円(100億ドル)と評価され、2010年には3兆円(300億ドル)を超えるとされている。これらの組換えタンパク質は、健常人のための栄養補助食品として、または病気、特に癌腫および感染症の治療用治療薬として、その用途が見出されている。
【0003】
治療薬の生産のために遺伝子工学技術を使用する主な利点は、かかる方法によって大量の所望のタンパク質が生成されることである。種々の細胞の種類を使用した種々の方法がこれまでに開発された。細菌細胞に基づく技術が改良された場合でも、抗体のような複雑なタンパク質を生産するためにはかかる方法は制約を示す。真核細胞、特に昆虫細胞や哺乳動物細胞を使用する方法は、ヒトの複雑なタンパク質の生産を可能にするが、これらの系はコストが高く、これがかかる系の開発の主な制約になっていた。
【0004】
遺伝子組換え植物でのタンパク質の生産は、現在十分に台頭している代替方法となっている。これらの発現系は、ウイルスやプリオンなどの病原体を運搬せずに複雑なタンパク質を生産することを可能にする。遺伝子組換え植物の使用に関する主な問題は、特にヒト遺伝子またはアレルゲンを使用した場合の、花粉の伝播に関する汚染の危険性である。実際に、欧州の法律は、そのような危険のため、遺伝子組換え植物の使用を規制している。さらに、そのような生産が安価なものであると、植物からのタンパク質の精製は複雑で拡張的になるだろう。
【0005】
最近、緑藻類、すなわちクラミドモナス ラインハーティ(Chlamydomonas reinhardtii)が、そのプラスチド(色素体)ゲノムからヘルペスウィルス向けのモノクローナル抗体を生産するために使用されている。この藻類は、単細胞であるため、遺伝子組換え植物と比較して組換えタンパク質の精製を促進するという主な利点を与える。しかしながら、クラミドモナス ラインハーティの遺伝子コードには偏りがあるため、この発現系の主な欠点となっている。実際、遺伝子によってコードされた組換えタンパク質の正確な発現を得るためには、第3位にAまたはTを含むかかる遺伝子の各コドンを遺伝子修飾する必要がある。タンパク質の生産のためのこの必要なステップには、クラミドモナス ラインハーティにおけるこの発現系の高い生産コストを伴う。さらに、色素体での発現は、抗体などの糖タンパク質の生物活性または安定化のために必要とされることが多い該糖タンパク質のグリコシル化を行わない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、低コストで大量のタンパク質を好都合に生産および精製する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
組換えタンパク質は、オストレオコッカス種の緑藻類核ゲノムから発現させることが可能である。従って、本願発明者らは、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポ
リペプチドを生産する方法を提供する。かかる方法は、オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む。
【0008】
本願発明者らはさらに、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットを提供する。該カセットは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列を備え、該プロモータ配列はオストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する。
【0009】
本願発明者らは、以下に説明するような本発明の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクターを提供する。
【0010】
本願発明者らはさらに、以下に説明するような本発明の方法によって得ることができる細胞を提供する。
【0011】
本願発明者らはさらに、以下に説明するような本発明の方法によって得ることができ、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチドを提供する。
【0012】
本願発明者らはまた、治療組成物の調製のための少なくとも1つのポリペプチドの使用方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】関連する制限部位と、オストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータの制御下にあるG418耐性遺伝子(KanMx)と、それに続くTEFターミネータおよびルシフェラーゼ+遺伝子とを示す、PotLucベクターのマップ。
【図2A】PotLuc−PRR1ベクターを生成すべくPotLuc中のルシフェラーゼ遺伝子にオストレオコッカス タウリのPRR1遺伝子を融合するスキーム。二重線はサザンブロット分析で使用されたプローブに対応する領域を示す。
【図2B】PotLuc−HAPTベクターを生成すべくPotLuc中のルシフェラーゼ遺伝子にオストレオコッカス タウリのHAPT(高親和性リン酸トランスポーター)プロモータを融合するスキーム。
【図3】34個の異なるオストレオコッカス タウリ形質転換体から得られたタンパク質抽出物に対するルシフェラーゼルミネセンスの測定値を示す。(灰色と白色のボックス)を示す。これらの細胞は、オストレオコッカス タウリのPPP1全遺伝子に融合させたG418耐性DNAおよびルシフェラーゼ+遺伝子で形質転換した。黒色ボックス−陰性対照(DNAなし)、灰色ボックス−ルミネセンス(冷光)が陰性対照よりも2倍高かった、白色ボックス−ルミネセンスが陰性対照より2倍低かった。
【図4A】3つの異なるオストレオコッカス タウリの安定した形質転換体(PRR1−5、PRR1−7およびPRR1−15)のルシフェラーゼ活性。これらの細胞は、オストレオコッカス タウリのPPP1全遺伝子に融合させたG418耐性DNAおよびルシフェラーゼ+遺伝子で形質転換した。これらの形質転換体は、昼/夜(白色ボックス/黒色ボックス)を交互にして培養した。
【図4B】EF1α対照細胞に関して定量的RT−PCRで測定したPRR1 mRNAの発現。
【図5】G418耐性でルシフェラーゼ活性を示す10個の異なる形質転換体におけるサザンブロットによる遺伝子PRR1挿入の検出。ライン1、5および7は形質転換体PRR1−5、PRR1−7およびPRR1−15に相当する。ラインCは、形質転換されていない陰性対照に相当する。使用されたプローブは図2に記載されたPRR1遺伝子(600bp)の3’領域に相当する。
【図6A】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。浸透圧の影響を示す。
【図6B】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。パルス時間の影響を示す。
【図6C】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。電界強度の影響を示す。
【図6D】種々の条件の試験によるエレクトロポレーションによるオストレオコッカス タウリ細胞の形質転換の最適化。DNA量の影響を示す。
【図7】関連する制限部位と、オストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータの制御下にあるノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ耐性遺伝子(Nat1)と、それに続くTEFターミネータ、6×ヒスチジンタグ、マルチクローニング部位(MCS)およびリン酸トランスポータープロモータを示す、Potoxベクターのマップ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
オストレオコッカス種の核ゲノムから少なくとも1つのポリペプチドを生産する方法を開示する。該方法は、
(i)オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、
第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む。
【0015】
本願発明者らの方法によるポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、ポリペプチドまたはタンパク質複合が核ゲノムから発現でき、そのため、クラミドモナス ラインハーティの色素体発現系とは異なり、遺伝子の各コドンを修飾しなくても所望の産物を正確に発現できるという利点を有する。
【0016】
用語「ポリペプチド」は、本明細書に使用する場合、隣接するアミノ酸残基のαアミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって互いに接続された一連の直線状のアミノ酸残基を指す。
【0017】
用語「オストレオコッカス種」は、本明細書に使用する場合、プラシノ藻科の単細胞緑藻種を指す。本発明によれば、オストレオコッカス種は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択可能であり、好ましくはオストレオコッカス タウリである。
【0018】
例えば、オストレオコッカス タウリの野生型菌株0TTH0595は、フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて参照番号RCC614で、またはイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能である。そのゲノム全体が、以下のEMBLアクセッション番号で利用可能である:CR954201(Chrom1);CR954202(Chrom2);CR954203(Chrom3);CR954204(Chrom4);CR954205(Chrom5);CR954206(Chrom6);CR954207(Chrom7);CR954208(Chrom8);CR954209(Chrom9);CR954210(ChromiO);CR954211(Chrom11);CR954212(Chrom12);CR954213(Chrom13);CR954214(Chrom14);CR954215(Chrom15);CR954216(Chrom16);CR954217(Chrom17);CR954218(Chrom18);CR954219(Chrom19);CR954220(Chrom20)。本発明の本願発明者らの方法によりポリペプチドを発現するためのオストレオコッカス種の使用は、その遺伝子コードに偏りがなく、すべてのコドンが存在し、したがってポリペプチドの発現および生産が促進されるという利点を提供する。
【0019】
オストレオコッカス種に少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する方法は、当業者により、一般的知識については容易に識別される。例えば、(i)の導入工程は、エレクトロポレーションによって行なうことが可能である。
【0020】
用語「組換え核酸分子」は、本明細書に使用する場合、実験的組換えから得ることが可能なポリヌクレオチドを指す。
【0021】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書に使用する場合、リン酸ジエステル結合により互いに結合された2つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を指す。そのようなものとして、用語「ポリヌクレオチド」は、RNAおよびDNAを含み、好ましくは遺伝子またはその一部であり得るDNA、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列等を含み、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、DNA/RNAハイブリッドであってもよい。さらに、本明細書に使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、細胞から分離可能な天然核酸分子と、例えば化学合成法によりまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の酵素法により調製可能な合成ポリヌクレオチドとの両方を含む。
【0022】
用語「連結されて作用する」は、本明細書に使用する場合、2つ以上の分子が、一つの単位として機能し、かつ一方又は両方の分子もしくはその組み合わせに起因する機能をもたらすように、互いに対して配置され得ることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、転写または翻訳調節要素に連結されて作用し、この場合、かかる調節要素は、ポリヌクレオチドにその調節効果を与える。これは、調節要素が、細胞中で通常関連するポリヌクレオチド配列に効果を及ぼすのと同様である。
【0023】
用語「プロモータ配列」は、本明細書に使用する場合、RNAポリメラーゼの結合部位と、転写調節タンパク質の少なくとも結合部位とを有するDNA領域を指す。当業者は、本発明に有用なプロモータ配列を、自身の一般的知識を用いて容易に識別できる。例えば、本発明に有用なプロモータ配列は、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、およびオストレオコッカス タウリ高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(
配列番号3)からなるグループから選択することが可能である。特に、本発明のプロモータ配列は、配列番号3を有し得る。
【0024】
第2のポリヌクレオチドが少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む、上記方法を行うことが可能である。用語「外因性ヌクレオチド配列」は、本明細書に使用する場合、オストレオコッカス種ゲノムでは天然に見出されないヌクレオチド配列を指す。さらに、用語「外因性ヌクレオチド配列」は、本明細書に使用する場合、天然ヌクレオチド配列、合成ヌクレオチド配列、ゲノムDNA配列、cDNA配列、およびRNA配列を含み、好ましくはDNA配列を含む。例えば、かかる方法では、少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列はマーカー遺伝子であってよい。用語「マーカー遺伝子」は、本明細書に使用する場合、検出可能な発現型を与えるポリヌクレオチドを指す。当業者は自身の一般的知識に関してマーカー遺伝子を容易に識別可能である。特に、マーカー遺伝子は、G418(例えば配列番号6により識別されるKanMx)またはノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ(例えば配列番号9により識別されるNatl)などの抗生物質への耐性を引き起こす遺伝子、および、ホタルルシフェラーゼや自身の基質であるルシフェリンおよびコエンテラジンの加水分解でルミネセンスを生じるrellila遺伝子等のレポータ遺伝子から選択され得る。特に、本発明による少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列は、治療に関連する配列であり得る。当業者は自身の一般的知識により、治療に関連する配列を容易に識別可能である。例えば、治療に関連する配列は野生型遺伝子であってよく、それは特定の病気の非機能的遺伝子、遺伝子のネガティブ変異型、遺伝子の機能的阻害剤をコードする配列であってよい。特に治療に関連する配列は、ダニアレルゲンなどのアレルゲンのような糖タンパク質をコードする遺伝子であってよい。
【0025】
第2のポリヌクレオチドが第1のポリペプチドと少なくとも1つの第2のポリペプチドとをコードする、上記方法を行うことが可能である。コードされたポリペプチドは、いずれもまたはすべて、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そのようなものとして、方法は、例えば二量体、三量体および四量体を含む機能性タンパク質複合体を生産する手段を提供し、複合体のサブユニットは同じであってもよいし異なっていてもよい。特に、第1のポリペプチドと少なくとも第2のポリペプチドは融合タンパク質であってよい。
用語「融合タンパク質」は、本明細書に使用する場合、単一の「融合された」ポリペプチドを発現すべく単一のオープンリーディングフレームの発現により生産されたペプチド結合により第1のポリペプチドドメインが第2のポリペプチドドメインに連結されて作用する、組換DNA方法により生産されたポリペプチドを指す。特に、融合タンパク質は、His−6タグ、「FLAGエピトープ」、ビオチン、またはその同等物等の、細胞での融合タンパク質の識別または発現を促進し得るペプチドタグを含んでも良い。例えば、精製タンパク質を得ることが望ましい場合、そのようなタグは、融合タンパク質の単離を促進できるという利点を提供し得る。
【0026】
特に、第1のポリペプチドは免疫グロブリンH鎖(H)またはその可変領域(VH)を含んでもよく、第2のポリペプチドは免疫グロブリン軽鎖(L)またはその可変領域(VL)を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は免疫グロブリン軽鎖と結合してオストレオコッカス種において一価抗体を形成し、2つの一価抗体がさらに結合して二価抗体を生産し得る。そのため、本方法は、抗体などの機能性タンパク質複合体を生産するための手段を提供する。
【0027】
第2のポリヌクレオチドが0.5〜10kb、好ましくは0.5〜5kb、より好ましくは0.5〜3kbからなる、上記方法を行うことが可能である。
【0028】
詳細には、第2のポリヌクレオチドは「標的シグナル」を含んでもよい。用語「標的シ
グナル」は、本明細書に使用する場合、ポリペプチドを細胞の特定の位置、例えば細胞質ゾル、核、原形質膜、小胞体、細胞外培地(つまり分泌)へ標的として向けるヌクレオチド配列を指す。詳細には、第2のポリヌクレオチドは、オストレオコッカス種での少なくとも1つのポリペプチドの分泌を許容する分泌シグナルを含む。当業者は分泌シグナルを容易に識別可能である。例えば、分泌シグナルは、オストレオコッカス タウリの予測アクアリシン/ズブチリシン分泌プロテアーゼ配列ペプチド(配列番号17に対応するMRRFLTTWLTACVSRANAF)からなるグループから選択される。本方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、オストレオコッカス種が細胞壁を備えず、したがって分泌タンパク質の生産を可能にすると共にタンパク質の精製を促進するという利点を提供する。
【0029】
上記方法は、
(ii)前記オストレオコッカス種中で発現された前記少なくとも1つのポリペプチドを採収する工程、
をさらに含んでもよい。
【0030】
用語「採収」は、本明細書に使用する場合、オストレオコッカス種からポリペプチドが分離されることを意味する。特に、少なくとも1つのポリペプチドを実質的に精製可能であるということは、それがタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、または天然で関連している他の物質が比較的存在しないこと意味する。一般に、実質的に精製されたポリペプチドは、試料の少なくとも約50パーセント、特に約約80パーセントを構成する。
【0031】
オストレオコッカス種は、バイオリアクターにて成長させることが可能である。当業者は自身の一般的知識に関してバイオリアクターを、例えばLabforslux(Infors HT社)のようにして、容易に識別可能である。
【0032】
特に、オストレオコッカス種を、オストレオコッカス種の成長を刺激する少なくとも1つの化合物を含む培地において成長させることが可能である。オストレオコッカス種の成長を刺激する化合物は、当業者には自身の一般的知識に関して容易に識別することができる。例えば、オストレオコッカス種の成長を刺激する少なくとも1つの化合物は、硝酸塩、アンモニア塩基、リン酸塩および二酸化炭素からなるグループから選択することができる。上記方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、大集団のオストレオコッカス種を成長させることができ、そのため大量の所望の産物の生産と、望ましい場合には分離とを可能にするという利点を提供する。
【0033】
オストレオコッカス種は、少なくとも1つのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを含む培地で成長させることが可能である。上記方法によりポリペプチドまたはタンパク質を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、核ゲノムからポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現させることができ、従ってクラミドモナス ラインハーティの色素体発現計とは異なり所望の産物のグリコシル化を可能にするという利点を提供する。
【0034】
さらに、いくつかのインシリコ(in silico)および免疫化学データは、オストレオコッカス種におけるタンパク質のグリコシル化が、特にβ−1,2−キシロースおよびα−1,3−フコース等の免疫原性およびアレルゲン性の残基がないという点で、高等植物におけるそれと異なることを示唆している。したがって、本発明の方法によりポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するためのオストレオコッカス種の使用は、グリコシル化がβ−1,2−キシロースやα−1,3−フコース等の免疫原性およびアレルゲン性の残基を提供せず、したがってアレルゲン性の残基なしで所望の産物をグリコシル化できるという利点を提供する。
【0035】
本願発明者らはさらに、オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットを提供する。カセットは、
(a)少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列
を備え、プロモータ配列はオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する。
【0036】
用語「上流」とは、本明細書に使用する場合、DNA転写の方向とは反対方向を指し、そのため非コード鎖を5’から3’へ、またはRNA転写物上を3’から5’へ進む。
【0037】
用語「クローニング部位」は、本明細書に使用する場合、第2のポリヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチドの結合を促進するすべてのヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列を指すよう広く使用される。例えば、クローニング部位は、マルチクローニング部位のような少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位およびloxP部位のような少なくとも1つのレコンビナーゼ認識部位からなるグループから選択することが可能である。
【0038】
当業者は自身の一般的知識で、プロモータ配列を、容易に識別可能である。例えば、プロモータ配列は、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、およびオストレオコッカス
タウリ高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)からなるグループから選択することが可能である。特に、プロモータ配列は配列番号3を有し得る。
【0039】
本願発明者らはさらに、本発明の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクターを提供する。ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターを含む、原核細胞または真核細胞へポリヌクレオチドを導入するのに有用なベクターであればいかなるベクターであってもよい。1実施形態では、ベクターは原核生物の複製起点をさらに含んでもよい。特に、複製起点はE.Coliの複製起点であってよい。そのため、ベクターは、オストレオコッカス種と同様に原核生物の宿主細胞中でも継代培養し、操作することができる。ベクターは、少なくとも1つのクローニング部位、1つの調節要素、少なくとも1つのマーカー遺伝子、および少なくとも1つの標的シグナルのうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0040】
用語「調節要素」は、本明細書に使用する場合、該調節要素に連結されて作用するポリヌクレオチドの転写または翻訳を調節するヌクレオチド配列を指す。
【0041】
本願発明者らはまた、上記方法によって得ることが可能な細胞を提供する。特には、細胞はオストレオコッカス種であってよい。細胞は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、R
CC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択されたオストレオコッカス種の細胞であり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である。
特には、本発明の細胞は、RCCに参照番号RCC614で登録され、またはイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS
Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリであってよい。
【0042】
本願発明者らはまた、上記方法によって得ることが可能なポリペプチドであって、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチドを提供する。1実施形態では、ポリペプチドは一本鎖抗体である。そのようなものとして、方法は、N−グリコシル化抗体された抗体などの機能性タンパク質複合体を生産するための手段を提供する。
【0043】
本願発明者らはまた、少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0044】
本願発明者らはさらに、治療組成物の調製のための少なくとも1つのポリペプチドの使用方法を提供する。特に、治療組成物は、癌、感染症、心血管疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾患、および単一遺伝子遺伝病などの遺伝子疾患からなるグループから選択された疾患の治療用の治療組成物であり得る。
【0045】
本開示の選択的な代表的態様をここで以下の非限定的な実施例により例証する。
【実施例】
【0046】
実施例1:オストレオコッカス タウリにおけるルシフェラーゼ融合タンパク質の発現
本実施例は、オストレオコッカス タウリでのルシフェラーゼ融合タンパク質の発現を実証する。
方法
オストレオコッカス タウリ コンピテント細胞の調製
【0047】
コンピテント細胞を調製するために、オストレオコッカス タウリの野生型菌株0TTH0595を使用した。かかる細胞は、フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCCMP)にて参照番号RCC614で、およびイギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号157/1で入手可能である。オストレオコッカス タウリ コンピテント細胞の調製全体は、滅菌状態で行なった。オストレオコッカス タウリ(野生型菌株0TTH0595)の細胞を、3000万個/mlの細胞密度に達するまで、20℃にて青色光(30mmol量子/cm2秒)で成長させ
た。海水にSigma−Aldrich社(参照番号:K1630)のKeller培地を加えた培養培地を、0.22μmでろ過し、オートクレーブした。最終0.1%w/vになるようプルロン酸(Sigma−Aldrich社、参照番号:P7061)を添加後に、細胞を8000×g、8分、4℃で遠心分離し、50ml(Sarstedt社)の円錐形チューブ中に採収した。その後、プロトコルは氷上で実行した。1mlの1Mソルビトールで2回洗浄して(10000g、5分、4℃)塩を除去し、細胞を2〜3×1010個/mlの最終細胞濃度になるよう50μlの1Mスクロース中に再懸濁した。
プラスミドの構築
【0048】
以下の3種類の融合物を調製した:
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータへの抗生物質耐性遺伝子の融合(G418耐性遺伝子:PotLucベクターおよびclonat耐性遺伝子:pH4Nat1ベクター);
ホタルルシフェラーゼ遺伝子へのHAPTプロモータの融合(PotLuc−HAPTベクター);
ホタルルシフェラーゼ遺伝子へのオストレオコッカス タウリのPPR1(Pseudo Response Regulator 1、偽応答レギュレーター)遺伝子の融合(PotLuc−PPR1ベクター)。
【0049】
DNA操作はすべて、ほぼSambrookら(Molecular cloning. A laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)によって記載されたように実行した。オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータは2つのプライマーot−H4
Forおよびot−H4 Revの使用によりPCRにより増幅されたオストレオコッカス タウリのDNA断片に相当するot−H4 Forの配列は5’−GCG GAT
CCC ACG GAG CGC AAC GGT ACC−3’(配列番号13)であり、ot−H4 Revの配列は5’−CC AGC GCC AGC CAT GGT TTT CGA ACG−3’(配列番号14)である。
【0050】
ノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼ(Clonat)耐性遺伝子(Natl)をコードするPAG25ベクターのTEFプロモータ(配列番号11)を、BamH1部位とNcol部位を使用してオストレオコッカス タウリのヒストンH4プロモータと置換した。
【0051】
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータを、(TEFプロモータと置換するために)PUG65からのBamHI部位とNcol部位の間でKanMxモジュールのG418抗生物質耐性遺伝子(Genbank登録番号S78175)に融合した。得られたプラスミドをPotH4KanMxと命名した。Promega社のpSP−luc+NF由来のルシフェラーゼ+遺伝子を、Xbal部位とNhel部位を使用して、PotH4KanMxに挿入した。得られたプラスミドは、Potlucと命名したが、ルシフェラーゼ+遺伝子に遺伝子を融合させることが可能である。PotlucプラスミドはE.coli(大腸菌)の複製起点と、pUC19に既に存在するアンピシリン耐性遺伝子とを有する。Potlucプラスミドは、ホタルルシフェラーゼ(配列番号10)をコードする遺伝子、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4(配列番号1)の強力なプロモータの制御下でオストレオコッカス タウリにおける選択マーカーとして使用されるG418耐性遺伝子(配列番号6)、およびそれに続くTEFターミネータ(配列番号7)とをさらに有している(図1)。
【0052】
プロモータ領域の200個のヌクレオチドを含むオストレオコッカス タウリ遺伝子PRR 1の全体(配列番号2)を、特異的プライマーTOC1fullfuRNco1およびTOC1fullFNhe1を使用して増幅し、PotLucのNhel部位とNcol部位の間でクローニングし、プラスミドPotLucPRR1を生成した(図2A)。TOC1fullfuRNco1の配列はTTTCCATGGACTTGGAGCCGTCGCGAGA(配列番号15)であり、TOC1fullFNhe1の配列はTTTGCTAGCACCTCGAGCCGGGACCAAAAA(配列番号16)である。
【0053】
ATGの上流で100bpから成るHAPTプロモータ(配列番号3)を、BgIII部位とNcol部位の間でPotlucにてクローニングし、プラスミドPotLuc−
HAPTを生成した(図2B)。
オストレオコッカス タウリ形質転換のためのDNAの調製
【0054】
4つのDNA構築物を、異なる対象遺伝子の発現を駆動するプロモータの上流を切断する正確な制限酵素を使用して線形化した:
Clonat耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ;
G418耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ;
G418耐性遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータと、それに続くルシフェラーゼ遺伝子に融合されたオストレオコッカス タウリ PRR1遺伝子またはHAPTプロモータ。
線形化プラスミドを、tRNA添加(最終濃度1mg/ml)(Sigma−Aldrich社、R5636)後にエタノール沈降させ、水に再懸濁して、1μg/μlの最終DNA濃度を得た。
【0055】
図6に示されるように、エレクトロポレーションによりオストレオコッカス タウリの形質転換を最適化した。ルシフェラーゼ(約6kb)に融合されたHAPTプロモータ(強いプロモータ)を含むPotLuc−HAPTプラスミド(Xmnlによる)から生じた線形化DNA構築物を、ルシフェラーゼ活性をモニタすることによりエレクトロポレーション条件を最適化するために使用した。以下に示した実験条件は、最も高い形質転換効率と、最も高い生存率を備えた条件である(ソルビトールバッファ、電界強度600V/cm、抵抗器400Ω)。ある形質転換の場合、上記のように調製された50mlのコンピテントセル(2×1010個の細胞)を、氷上で少なくとも10分間5μl DNAとインキュベートし、1mmのエレクトロポレーションキュベットに移し、約2分室温に暖める(Bridge Biosciences社)。エレクトロポレーションは、以下の電気的パラメータを用いてGeneパルサー装置(Biorad社)にて行った:電界強度600V/cm、抵抗器400Ω、コンデンサ25μF)。時定数は8〜9ミリ秒であった。エレクトロポレートされた細胞を、上記の段落0055に記載したような40mlの培地で2日間再懸濁した(発現フェーズ)。48時間後に、形質転換体を、固体培地(0.2%アガロースと適切な選択抗生物質を含むKeller培地(SIGMA−Aldrich社、参照番号K1630))中で選択した。固体培地は以下のように調製した:オートクレーブした低融点アガロース(Invitrogen社)を2.1%w/vで90度にて維持し、体積9の培養培地に対し体積11の割合で混合した。500μl〜1mlの形質転換体を10mlのこの培地と混合し、混合物をペトリ皿上に注いだ。ペトリ皿は湿式チャンバ内で先に述べたのと同じ照明条件下に配置した。
エレクトロポレーションによるオストレオコッカス細胞の形質転換の最適化
【0056】
ルシフェラーゼ+(約6kb)に融合された高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータを含む線形化DNA構築物(Xmnlによる)を種々の条件でエレクトロポレートした。HAPTの強力な同族プロモータ下でのルシフェラーゼ遺伝子の一過性発現を、エレクトロポレートした細胞にて1日後にチェックした。106個の生存細胞当た
りのルミネセンスシグナルを、種々の実験を通じて、最大シグナルのパーセンテージとして正規化する(黒色)。死亡率を、1日後にフローサイトメトリーにより評価した低い赤色蛍光を有する細胞のパーセンテージにより定義した(白色)。結果を図6A〜Dに示す。
【0057】
図6Aは浸透圧の影響を示す。細胞を1Mスクロースまたは1Mソルビトールのいずれかに再懸濁し、800V/cm、200Ωおよび400Ω(25μF)でエレクトロポレートし、時定数を増加させた。生存率はいずれの浸透圧でも等しかったが、形質転換効率
はその時定数が特に高いためにソルビトールの方が高く、したがって、これをさらなる最適化のために使用した。
【0058】
図6Bはパルス時間の影響を示す。細胞を800V/cmでエレクトロポレートし、抵抗をパルス時間(時定数)を増加させるよう調節した。形質転換効率は、5ミリ秒より大きい一定時の間に非常に改善されたが、生存率はこの実験では約80%であった。
【0059】
図6Cは電界強度の影響を示す。エレクトロポレーションは500Vではほとんど非効率であったが、600Vで最大となり、800Vまでは効率的ではあるが効率が約50%だけ減少した。上記の電圧は細胞の生存率に非常に影響を及ぼしたため、おそらく効率が減少したと考えられる。
【0060】
図6Dは、DNA量(1mg/ml濃度)の影響を示す。DNAの最適量は5μgであった。
結果:
抗生物質耐性の安定なオストレオコッカス タウリ形質転換体
【0061】
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータの制御下、G418耐性を有する線形化PotLucプラスミド(Xmnlによる)により形質転換した。4つの独立した形質転換を行なった。陽性クローンを1mg/mlのG418に基づいて選択した。DNA1μg当たり50〜1000個の形質転換体が得られた。DNAがない同じ条件下でエレクトロポレートした陰性対照では形質転換体が得られなかった。
【0062】
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータの制御下、Clonat耐性を有する線形化pH4Nat1プラスミド(Xmnlによる)により形質転換した。2つの独立した形質転換を行なった。陽性クローンを700mg/mlのClonatに基づいて選択した。DNA1μg当たり500個以下の形質転換体が得られた。
【0063】
この実施例は、オストレオコッカス タウリにおいてコドン使用に偏りなく、外因性選択遺伝子を使用することが可能であることを示している。
【0064】
オストレオコッカス タウリにおけるルシフェラーゼ組換えタンパク質の発現
オストレオコッカス タウリ細胞を、オストレオコッカス タウリのPRR1全遺伝子に融合させたG418耐性およびルシフェラーゼ+遺伝子を有する線形化PotLuc PRR1プラスミド(Nhelによる)により形質転換した(図2A)。DNA1μg当たり1000個の形質転換体が、野生型オストレオコッカス タウリの致死量である1mg/mlのG418選択に基づいて得られた。ルミネセンスをマイクロプラークに入れた培養物に対して直接またはタンパク質抽出物に対してルシフェリンの存在下で照度計Berthold LB 360を使用して測定した(図3)。
【0065】
結果は、試験したクローンの90%よりも多くが、DNAなしで形質転換した形質転換陰性対照よりも高いルシフェラーゼレベルを有していたことを示す(2から100,000倍超)。種々の形質転換体のルシフェラーゼ活性を、細胞3×107個/mlで200
μMのルシフェリンの存在下で昼/夜を交互にインキュベートして200μlの培養細胞に対して試験した(図4A)。ルシフェラーゼの周期的発現の同様なプロフィールがこれらの種々のクローンで観察された。これらのプロフィールは、定量的RT−PCRで測定したPRR1 mRNAの発現を反映している(図4B)が、これはPRR1遺伝子が完全に挿入されていることを示唆している。10個の形質転換対のDNAを抽出し(Qia
gen社のKit Dneasy Plant mini Kit)、制限酵素Ncolにより消化し、サザンブロットに使用した。PRR1の3’コード領域の600bpに対応するプローブを使用して、オストレオコッカス タウリのゲノム構築物中の挿入物を検出した(図5)。
【0066】
結果は、野生型菌株0TTH0595(C)での内因性遺伝子PRR1の存在が4kbのハイブリダイゼーションシグナルにより検出されたことを示している。このバンドはすべての形質転換体で見出された。それより過剰のバンドは複数の挿入物に相当する(1〜3)。平均で、形質転換体による2つの組み込み事象が観察された。
【0067】
種々の形質転換体が種々のレベルの発現でルシフェラーゼを蓄積していた。形質転換体の分析は、ゲノムへの複数の組み込み事象を示し、G418耐性の細胞の90%超がPRR1遺伝子の発現を反映するルシフェラーゼの発現を示したため、導入された断片が切断されなかったことを示唆した。
【0068】
この実施例は、オストレオコッカス タウリでのルシフェラーゼ+組換えタンパク質の発現が効率的であることを示している。
実施例2:Potoxベクターの構築
【0069】
PAG25ベクターのNatlコード配列の上流のTEFプロモータを、BamH1とNcolクローニング部位間でオストレオコッカス由来のヒストンH4プロモータと置換した。合成マルチプルクローニングサイト(MCS)と、それに続く6×ヒスチジンタグをコードする配列と相補的配列(配列番号17および配列番号18)とを、続けてオストレオコッカス タウリ HAPTプロモータと共に導入し、Potoxベクターを生成した。このベクターは強力なHAPTプロモータの制御下で対象のコード配列をクローニングおよび発現することを可能にする。形質転換体は750μg/mlのCLONAT耐性に基づいて選択可能である。対象タンパク質は6×ヒスチジンTAGを使用して精製可能である。必要な場合、Xho I制限ヌクレアーゼを使用して、このTAGを削除することが可能である。
【0070】
上記に列挙したものを含む本願で参照したすべての文書は、その全体が本願に援用される。上述の実施形態に対する様々な改変は、本明細書で提供した開示から当業者には明らかである。したがって、本開示中の技術は、本開示の趣旨または実質的属性から逸脱しない他の特定の形式で具現化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オストレオコッカス種の核ゲノムから少なくとも1つのポリペプチドを生産する方法であって、
(i) オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、
第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む、方法。
【請求項2】
前記オストレオコッカス種は、
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種、および
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)
からなるグループから選択された少なくとも1つであり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オストレオコッカス種は、イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロモータ配列は、
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、
オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、
オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、
オストレオコッカス タウリ 高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)
からなるグループから選択された少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロモータ配列は配列番号3を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、
G418またはノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼなどの抗生物質への耐性を引き起こす遺伝子、および
ルシフェラーゼ遺伝子などのレポータ遺伝子
からなるグループから選択されたマーカー遺伝子である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、治療に関連する配列である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のポリヌクレオチドが、第1のポリペプチドと、少なくとも第2のポリペプチドとをコードする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のポリペプチドと前記少なくとも第2のポリペプチドとが融合タンパク質である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のポリペプチドは免疫グロブリンのH鎖またはその可変領域を含み、第2のポリペプチドは免疫グロブリンの軽鎖またはその可変領域を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のポリヌクレオチドは、0.5〜10kb、好ましくは0.5〜5kb、より好ましくは0.5〜3kbからなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のポリヌクレオチドは、オストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの分泌を許容する分泌シグナルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分泌シグナルは、オストレオコッカス タウリの予測アクアリシン/ズブチリシン分泌プロテアーゼ配列ペプチド(配列番号17)からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記(i)の導入する工程は、エレクトロポレーションからなるグループから選択された方法によって実行される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(ii)前記オストレオコッカス種中で発現された前記少なくとも1つのポリペプチドを採収する工程、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記オストレオコッカス種をバイオリアクターにて成長させる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記オストレオコッカス種をオストレオコッカス種の成長を刺激する硝酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩、および二酸化炭素からなるグループから選択された少なくとも1つである少なくとも1つの化合物を含む培地において成長させる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットであって、
(a)少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列
を備え、該プロモータ配列はオストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する、発現カセット。
【請求項20】
前記プロモータ配列は、
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、
オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、
オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、
オストレオコッカス タウリ 高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)
からなるグループから選択された少なくとも1つであり、
特に、前記プロモータ配列は配列番号3を有する請求項19に記載の発現カセット。
【請求項21】
プロモータ配列は配列番号3を有する請求項19に記載の発現カセット。
【請求項22】
前記クローニング部位は、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位および少なくとも1つのレコンビナーゼ認識部位からなるグループから選択される請求項19に記載の発現カセット。
【請求項23】
請求項19に記載の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクター。
【請求項24】
原核生物の複製起点を含む請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記複製起点はE.Coliの複製起点である請求項23に記載のベクター。
【請求項26】
請求項1に記載の方法によって得られた細胞。
【請求項27】
前記細胞は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択されたオストレオコッカス種の細胞であり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス
タウリ(Ostreococcus tauri)の細胞である請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
請求項1に記載の方法によって得ることが可能なポリペプチドであって、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチド。
【請求項30】
一本鎖抗体である請求項29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
請求項29に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項32】
治療組成物の調製のための請求項29に記載の少なくとも1つのポリペプチドの使用方法。
【請求項33】
治療組成物は、癌、感染症、心血管疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの
神経変性疾患、および単一遺伝子遺伝病などの遺伝子疾患からなるグループから選択された少なくとも1つの疾患の治療用の治療組成物である請求項32に記載の使用方法。
【請求項1】
オストレオコッカス種の核ゲノムから少なくとも1つのポリペプチドを生産する方法であって、
(i) オストレオコッカス種の核ゲノムに、第2のポリヌクレオチドに連結されて作用する第1のポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの組換え核酸分子を導入する工程を含み、
第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードし、第1のポリヌクレオチドはオストレオコッカス種での該少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容するプロモータ配列を含む、方法。
【請求項2】
前記オストレオコッカス種は、
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種、および
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)
からなるグループから選択された少なくとも1つであり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オストレオコッカス種は、イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロモータ配列は、
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、
オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、
オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、
オストレオコッカス タウリ 高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)
からなるグループから選択された少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロモータ配列は配列番号3を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のポリヌクレオチドは少なくとも1つのポリペプチドをコードする少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、
G418またはノーセオスリシンアセチルトランスフェラーゼなどの抗生物質への耐性を引き起こす遺伝子、および
ルシフェラーゼ遺伝子などのレポータ遺伝子
からなるグループから選択されたマーカー遺伝子である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの外因性ヌクレオチド配列が、治療に関連する配列である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のポリヌクレオチドが、第1のポリペプチドと、少なくとも第2のポリペプチドとをコードする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のポリペプチドと前記少なくとも第2のポリペプチドとが融合タンパク質である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のポリペプチドは免疫グロブリンのH鎖またはその可変領域を含み、第2のポリペプチドは免疫グロブリンの軽鎖またはその可変領域を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のポリヌクレオチドは、0.5〜10kb、好ましくは0.5〜5kb、より好ましくは0.5〜3kbからなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のポリヌクレオチドは、オストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの分泌を許容する分泌シグナルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分泌シグナルは、オストレオコッカス タウリの予測アクアリシン/ズブチリシン分泌プロテアーゼ配列ペプチド(配列番号17)からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記(i)の導入する工程は、エレクトロポレーションからなるグループから選択された方法によって実行される請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(ii)前記オストレオコッカス種中で発現された前記少なくとも1つのポリペプチドを採収する工程、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記オストレオコッカス種をバイオリアクターにて成長させる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記オストレオコッカス種をオストレオコッカス種の成長を刺激する硝酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩、および二酸化炭素からなるグループから選択された少なくとも1つである少なくとも1つの化合物を含む培地において成長させる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
オストレオコッカス種において少なくとも1つのポリペプチドを発現させるための発現カセットであって、
(a)少なくとも1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するためのクローニング部位に連結されて作用し、かつ該クローニング部位よりも上流に配置されたプロモータ配列
を備え、該プロモータ配列はオストレオコッカス種での前記少なくとも1つのポリペプチドの発現を許容する、発現カセット。
【請求項20】
前記プロモータ配列は、
オストレオコッカス タウリ ヒストンH4プロモータ配列(配列番号1)、
オストレオコッカス タウリ cpxプロモータ配列(配列番号5)、
オストレオコッカス タウリ crd1プロモータ配列(配列番号4)、
オストレオコッカス タウリ 高親和性リン酸トランスポーター(HAPT)プロモータ(配列番号3)
からなるグループから選択された少なくとも1つであり、
特に、前記プロモータ配列は配列番号3を有する請求項19に記載の発現カセット。
【請求項21】
プロモータ配列は配列番号3を有する請求項19に記載の発現カセット。
【請求項22】
前記クローニング部位は、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位および少なくとも1つのレコンビナーゼ認識部位からなるグループから選択される請求項19に記載の発現カセット。
【請求項23】
請求項19に記載の少なくとも1つの発現カセットを備えたベクター。
【請求項24】
原核生物の複製起点を含む請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記複製起点はE.Coliの複製起点である請求項23に記載のベクター。
【請求項26】
請求項1に記載の方法によって得られた細胞。
【請求項27】
前記細胞は、
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)、
オストレオコッカス オセアニカ(Ostreococcus oceanica)、および
フランス国ロスコフ(Roscoff)所在の海洋プランクトンのロスコフカルチャーコレクション(RCC)にて、参照番号RCC141、RCC143、RCC343、RCC344、RCC356、RCC371、RCC371、RCC393、RCC410、RCC420およびRCC501で入手可能なオストレオコッカス種
からなるグループから選択されたオストレオコッカス種の細胞であり、
好ましくはオストレオコッカス タウリ(Ostreococcus tauri)である請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
イギリス国の藻類および原虫類カルチャーコレクション(スコットランド、PA37 IQA、アーガイル(Argyll)、オーバン(Oban)、SAMS研究サービス社(SAMS Research Services Ltd.))(CCAP)にて、国際寄託機関CCAPから与えられた受託番号が157/1で入手可能なオストレオコッカス
タウリ(Ostreococcus tauri)の細胞である請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
請求項1に記載の方法によって得ることが可能なポリペプチドであって、N−グリコシル化炭水化物鎖を有するポリペプチド。
【請求項30】
一本鎖抗体である請求項29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
請求項29に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項32】
治療組成物の調製のための請求項29に記載の少なくとも1つのポリペプチドの使用方法。
【請求項33】
治療組成物は、癌、感染症、心血管疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病などの
神経変性疾患、および単一遺伝子遺伝病などの遺伝子疾患からなるグループから選択された少なくとも1つの疾患の治療用の治療組成物である請求項32に記載の使用方法。
【図3】
【図5】
【図6A】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図5】
【図6A】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図4A】
【図4B】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【公表番号】特表2010−517558(P2010−517558A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548763(P2009−548763)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000281
【国際公開番号】WO2008/096250
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(509124146)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー−パリ シズィエム (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE−PARIS 6
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000281
【国際公開番号】WO2008/096250
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(509124146)ユニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー−パリ シズィエム (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE−PARIS 6
【Fターム(参考)】
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