説明

オス型シャントキャップ及び体外循環回路

【課題】プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能なオス型シャントキャップを提供する。
【解決手段】内部に貫通孔が形成された管状の本体部110と、本体部110の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部120と、嵌合部120の開口した部分を閉塞する栓部140とを備えるオス型シャントキャップ100。嵌合部120は、本体部110の貫通孔に連通する貫通孔が内部に形成された管状の内側筒部122と、内側筒部122の外面を囲むように、内側筒部122の外面との間に所定の間隔を設けて配置された外側筒部128とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オス型シャントキャップ及び体外循環回路に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析等に用いられる体外循環回路は、通常、使用するごとに体外循環回路内にプライミング液(例えば生理食塩水)を導入・充填し、体外循環回路内の異物及び空気を除去する処理(いわゆるプライミング処理)を行っている。
体外循環回路をプライミング処理する際に用いられるシャントキャップとして、従来、シャントキャップ同士の接続部分がオス−メス嵌合可能に構成されたシャントキャップが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図20は、従来のシャントキャップ800,900を説明するために示す図である。図20(a)はシャントキャップ800,900同士が接続されていない状態を示す図であり、図20(b)はシャントキャップ800,900同士が接続された状態を示す図である。
従来のシャントキャップ800,900は、図20に示すように、内部に貫通孔が形成された管状の本体部810,910と、本体部810,910の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部820,920と、嵌合部820,920の開口した部分を閉塞する栓部840,940とを備える。嵌合部820,920は、シャントキャップ800,900同士の接続部分となる管状体であって、一方側のシャントキャップ800の嵌合部820は、他方側のシャントキャップ900の嵌合部920に比べて径が小さくなるように構成されている。すなわち、嵌合部820と嵌合部920とがオス−メス嵌合可能に構成されている。この場合、径の小さな方の嵌合部820を備えるシャントキャップ800がオス型シャントキャップであり、径の大きな方の嵌合部920を備えるシャントキャップ900がメス型シャントキャップである。
【0004】
従来のシャントキャップ800,900によれば、嵌合部820,920がオス−メス嵌合可能に構成されているため、オス型シャントキャップ800の嵌合部820とメス型シャントキャップ900の嵌合部920とを接続することにより、体外循環回路を比較的容易にプライミング処理することが可能となる。また、各シャントキャップ800,900には栓部840,940が設けられているため、メス型シャントキャップの嵌合部に体外循環回路のコネクタ部を直接接続する場合(例えば特許文献2参照。)に比べて、接続部分が雑菌で汚染されるのを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3054661号公報
【特許文献2】特開平10−328298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような体外循環回路を扱う業界においては、プライミング処理時の雑菌汚染の発生をさらに抑制したいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能なオス型シャントキャップ及び体外循環回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明のオス型シャントキャップ(100)は、内部に貫通孔(112)が形成された管状の本体部(110)と、前記本体部(110)の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部(120)と、前記嵌合部(120)の前記開口した部分を閉塞する栓部(140)とを備え、前記嵌合部(120)は、前記本体部(110)の前記貫通孔(112)に連通する貫通孔(123)が内部に形成された管状の内側筒部(122)と、前記内側筒部(122)の外面(125)を囲むように、前記内側筒部(122)の外面(125)との間に所定の間隔を設けて配置された外側筒部(128)とを有することを特徴とする。
【0009】
このため、本発明のオス型シャントキャップによれば、上記した栓部を備えているため、必要時まで嵌合部の開口部分を栓部で閉塞しておくことが可能となる。その結果、メス型シャントキャップとの接続部分となる嵌合部が雑菌で汚染されるのを抑制することが可能となる。
また、本発明のオス型シャントキャップによれば、内側筒部の外面を囲むようにして外側筒部が設けられているため、内側筒部の外面が外側筒部でカバーされることとなる。この内側筒部の外面は、メス型シャントキャップとの接続時においてメス型シャントキャップの嵌合部内面と接する部分であることから、内側筒部の外面が外側筒部でカバーされた構成とすることにより、結果として、雑菌汚染の発生をさらに抑制することが可能となる。
したがって、本発明のオス型シャントキャップは、プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能なオス型シャントキャップとなる。
【0010】
[2]上記[1]に記載のオス型シャントキャップ(100)においては、前記本体部(110)の管軸に対して垂直方向から前記嵌合部(120)を見たとき、前記外側筒部(128)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(131)の位置は、前記内側筒部(122)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(126)の位置と同じ位置又は前記内側筒部の端縁(126)の位置に対して前記本体部(110)とは反対側に偏倚した位置にあることが好ましい。
【0011】
このように構成することにより、外側筒部によって内側筒部の外面を確実にカバーすることができるため、雑菌汚染の発生をさらに抑制することが可能となる。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]に記載のオス型シャントキャップ(100)においては、前記内側筒部(122)の外径寸法は、前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側から前記本体部(110)側に向かうにしたがって大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、メス型シャントキャップとの接続が比較的容易となるとともに、メス型シャントキャップとの接続をより確実にすることが可能となる。
【0014】
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のオス型シャントキャップ(100)においては、前記内側筒部(122)の外面(125)の一部及び前記外側筒部(128)の内面(129)の一部のうち少なくとも一方に設けられた突起部(132)をさらに有することが好ましい。
【0015】
[5]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のオス型シャントキャップ(100)においては、前記内側筒部(122)の外面(125)の一部及び前記外側筒部(128)の内面(129)の一部のうち少なくとも一方に設けられた溝部をさらに有することが好ましい。
【0016】
メス型シャントキャップとして、嵌合部の先端部に突起や溝などの係止手段が設けられたメス型シャントキャップを用いた場合、上記[4]又は[5]に記載した構成とすることにより、オス型シャントキャップとメス型シャントキャップとを接続したときに、オス型シャントキャップの突起部又は溝部とメス型シャントキャップの係止手段とが互いに引っ掛かり合うこととなる。その結果、メス型シャントキャップとの接続強度(外れにくさ)を高めることが可能となる。
【0017】
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のオス型シャントキャップ(100)においては、前記外側筒部(128)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(131)には、所定形状の切り欠き(133)が設けられており、前記栓部(140)には、前記切り欠き(133)の形状に対応する形状からなる突起(146)が形成されていることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、外側筒部の切り欠きと栓部の突起とが互いに噛み合うようにして栓部を嵌合部に嵌めたときには、液密性を維持することができ、外側筒部の切り欠きと栓部の突起とが噛み合わないように所定量ずらして栓部を嵌合部に嵌めたときには、通気性を確保することができる。
【0019】
[7]本発明の体外循環回路(1)は、回路部材(20,30)と、前記回路部材(20)の一方端に接続可能に構成され、オス型の嵌合部を有するオス型シャントキャップ(100)と、前記回路部材(30)の他方端に接続可能に構成され、前記オス型の嵌合部と嵌合可能なメス型の嵌合部を有するメス型シャントキャップ(200)とを備え、前記オス型シャントキャップは、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のオス型シャントキャップであることを特徴とする。
【0020】
このため、本発明の体外循環回路によれば、上記の優れたオス型シャントキャップを備えているため、プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能な体外循環回路となる。
【0021】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る体外循環回路1を説明するために示す図。
【図2】オス型シャントキャップ100の斜視図。
【図3】オス型シャントキャップ100の正面図。
【図4】オス型シャントキャップ100の背面図。
【図5】オス型シャントキャップ100の左側面図。
【図6】オス型シャントキャップ100の右側面図。
【図7】オス型シャントキャップ100の平面図。
【図8】オス型シャントキャップ100の底面図。
【図9】嵌合部120周辺部分の拡大正面図。
【図10】オス型シャントキャップ100の内部構造を説明するために示す図。
【図11】図5のB−B線断面図。
【図12】図6のC−C線断面の拡大図。
【図13】オス型シャントキャップ100の内部構造を説明するために示す図。
【図14】メス型シャントキャップ200の斜視図。
【図15】メス型シャントキャップ200の正面図。
【図16】メス型シャントキャップ200の右側面図。
【図17】図16のE−E線断面図。
【図18】オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とが接続される様子を示す図。
【図19】変形例に係る嵌合部120a周辺部分の拡大正面図。
【図20】従来のシャントキャップ800,900を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のオス型シャントキャップ及び体外循環回路について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
[実施形態]
まず、実施形態に係る体外循環回路1の構成について、図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る体外循環回路1を説明するために示す図である。図1(a)は体外循環回路1の概略図であり、図1(b)はオス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200との接続部分を拡大して示す図である。
【0025】
実施形態に係る体外循環回路1は、血液透析用の体外循環回路であって、図1(a)に示すように、血液処理器(ダイアライザーともいう。)10と、回路部材としての動脈側回路20及び静脈側回路30と、動脈側回路20の端部に接続されたオス型シャントキャップ100と、静脈側回路30の端部に接続されたメス型シャントキャップ200とを備える。血液処理器10は、例えば中空糸型の血液処理器である。動脈側回路20は、血液処理器10の一方端部に接続されており、静脈側回路30は、血液処理器10の他方端部に接続されている。
【0026】
動脈側回路20は、図1(a)及び図1(b)に示すように、チューブ21〜23と、チューブ21とチューブ22との間に配置されたドリップチャンバ24と、チューブ22とチューブ23との間に配置されたローリングチューブ25と、チューブ23の端部に接続されたコネクタ部材26と、チューブ23の端部に取り付けられた固定具(ロックナットともいう。)27とを有する。チューブ23には、プライミング液としての生理食塩水を回路内に導入するための生食ライン41と、ヘパリン液を回路内に導入するためのヘパリンライン42とが接続されている。ドリップチャンバ24には、モニターライン43が接続されている。
【0027】
コネクタ部材26は、図示による説明は省略するが、チューブ23とオス型シャントキャップ100とを接続する管状の部材である。固定具27は、図示による説明は省略するが、チューブ23とオス型シャントキャップ100との接続を固定する管状の部材であって、内部に螺旋状の突起が設けられている。
【0028】
静脈側回路30は、図1(a)及び図1(b)に示すように、チューブ31,32と、チューブ31とチューブ32との間に配置されたドリップチャンバ33と、チューブ32の端部に接続されたコネクタ部材34と、チューブ32の端部に取り付けられた固定具(ロックナットともいう。)35とを有する。ドリップチャンバ33には、プライミング処理時に余分な生理食塩水を排出するための排液ライン44と、モニターライン45とが接続されている。
【0029】
コネクタ部材34は、図示による説明は省略するが、チューブ32とメス型シャントキャップ200とを接続する管状の部材である。固定具35は、図示による説明は省略するが、チューブ32とメス型シャントキャップ200との接続を固定する管状の部材であって、内部に螺旋状の突起が設けられている。
【0030】
次に、オス型シャントキャップ100の構成について、図2〜図13を用いて説明する。
図2は、オス型シャントキャップ100の斜視図である。図3は、オス型シャントキャップ100の正面図である。図4は、オス型シャントキャップ100の背面図である。図5は、オス型シャントキャップ100の左側面図である。図6は、オス型シャントキャップ100の右側面図である。図7は、オス型シャントキャップ100の平面図である。図8は、オス型シャントキャップ100の底面図である。
図9は、嵌合部120周辺部分の拡大正面図である。なお、図9においては、突起部132の配置位置及び形状の理解を容易にするため、突起部132を灰色に着色している。図10は、オス型シャントキャップ100の内部構造を説明するために示す図である。図10(a)は図3のA−A線断面図であり、図10(b)は嵌合部120周辺部分の拡大断面図である。図11は、図5のB−B線断面図である。図12は、図6のC−C線断面の拡大図である。図13は、オス型シャントキャップ100の内部構造を説明するために示す図である。図13(a)は図7のD−D線断面図であり、図13(b)は嵌合部120周辺部分の拡大断面図である。
【0031】
オス型シャントキャップ100は、図2に示すように、本体部110と、本体部110の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部120と、嵌合部120の開口した部分を閉塞する栓部140と、本体部110と栓部140とを繋ぐ連結部150と、本体部110の他方端に配置されたコネクタ接続部160と、本体部110に配置された把持部170とを備える。
【0032】
本体部110は、図2、図10(a)及び図13(a)に示すように、例えば円筒形状の管状部材であり、内部に貫通孔112が形成されている。
【0033】
嵌合部120は、図2、図9、図10及び図13に示すように、貫通孔123が内部に形成された管状の内側筒部122と、内側筒部122の外面125を囲むように、内側筒部122の外面125との間に所定の間隔を設けて配置された外側筒部128と、外側筒部128の内面129の一部に設けられた突起部132と、外側筒部128の端縁131(栓部140によって閉塞されたときに栓部140と対向する側の端縁)に設けられた切り欠き133とを有する。貫通孔123は、図10(a)及び図13(a)から分かるように、本体部110の貫通孔112に通じている。
【0034】
図10及び図13に示すように、内側筒部122の内面124の形状はストレート状であり、外面125の形状はテーパ状である。具体的に説明すると、内側筒部122の内径は、端縁126側から本体部110との接続部分までの間で同じ値となるように設定されている。また、内側筒部122の外径は、端縁126側から本体部110側に向かうにしたがって大きくなるように(d1<d2となるように)設定されている。
【0035】
外側筒部128の内面129の形状は、ストレート状である。外側筒部128の端縁131の位置は、内側筒部122の端縁126の位置に対してd3の長さ分、本体部110とは反対側に偏倚した位置にある。言い換えれば、オス型シャントキャップ100を正面から見たとき、外側筒部128の端縁131は、内側筒部122の端縁126よりもd3の長さ分、手前側(正面側)に位置している。
【0036】
突起部132は、図9に示すように、外側筒部128の内面129に、内側筒部122を間に挟んで対向するように上下に計2つ設けられている。突起部132を正面から見たときの形状は、所定長さの弦と弧を結んだ形状(皿のような形状)である。
【0037】
切り欠き133は、嵌合部120を正面から見たときに左右方向に計2つ設けられている。嵌合部120を側面から見たときの切り欠き133の形状は、略四角状である(図5及び図6参照。)。
【0038】
栓部140は、図2、図6及び図12に示すように、嵌合凹部142と、鍔部144と、嵌合凹部142と鍔部144との接続部分に配置された2つの突起146とを有する。嵌合凹部142は円筒状であり、嵌合部120の内側筒部122と外側筒部128とによって形成される隙間に嵌合可能に構成されている。鍔部144における嵌合凹部142とは反対側の面は、所定の曲率で凹んでいる(図12参照。)。2つの突起146の位置及び形状は、嵌合部120の切り欠き133の位置及び形状に対応しており、嵌合部120に栓部140を嵌めたときに、切り欠き133に突起146を嵌めることができるように構成されている。
【0039】
連結部150は、所定の撓み性を有する。これにより、栓部140を嵌合部120に比較的容易に嵌めることができる。
【0040】
コネクタ接続部160は、図2、図5及び図6に示すように、ネジ状の突起からなる螺合部162と、本体部110の他方端の上下に設けられた2つの係止部164とを有する。コネクタ接続部160に図1に示したコネクタ部材26が接続され、螺合部162に固定具27が螺合されることとなる。また、固定具27の内部突起が係止部164と噛み合うことにより、固定具27が係止されることとなる。
【0041】
把持部170は、図5及び図6に示すように、本体部110の側面から垂直に立ち上がる立上がり部172と、所定の曲率で曲がる曲がり部173と、曲がり部173から本体部110側に向けて直線状に伸びる直線部174と、本体部110とは反対側に向けて屈曲する屈曲部175と、立上がり部172から直線部174の一部に沿って設けられた薄肉部176とを有する。立上がり部172の部分の断面形状は、図11に示すように、略T字状である。屈曲部175と本体部110とは接触しておらず、把持部170は所定の撓み性を有する。
【0042】
オス型シャントキャップ100を構成する各部材は、金型により一体成形されている。オス型シャントキャップ100を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチック材料を好適に用いることができる。
【0043】
次に、メス型シャントキャップ200の構成について、図14〜図17を用いて説明する。
図14は、メス型シャントキャップ200の斜視図である。図15は、メス型シャントキャップ200の正面図である。図16は、メス型シャントキャップ200の右側面図である。図17は、図16のE−E線断面図である。
【0044】
メス型シャントキャップ200は、図14に示すように、本体部210と、本体部210の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部220と、嵌合部220の開口した部分を閉塞する栓部240と、本体部210と栓部240とを繋ぐ連結部250と、本体部210の他方端に配置されたコネクタ接続部260と、本体部210に配置された第1把持部270及び第2把持部280とを備える。
【0045】
本体部210は、図14〜図17に示すように、例えば円筒形状の管状部材であり、内部に貫通孔212が形成されている。
【0046】
嵌合部220は、図14及び図16に示すように、ネジ状の突起からなる螺合部222と、本体部210の一方端の左右に設けられた2つの係止部224とを有する。螺合部222及び係止部224は、オス型シャントキャップ100の嵌合部120に設けられた突起部132と係止する係止手段であって、詳細には後述するが、嵌合部220にオス型シャントキャップ100の嵌合部120が接続され、螺合部222に嵌合部120の突起部132が引っ掛かるように構成されている。
【0047】
栓部240は、図14〜図16に示すように、嵌合凹部242と、嵌合凹部22の中心部に設けられた嵌合凸部244と、略四角状に切り欠かれた切り欠き246とを有し、嵌合部220を閉塞可能に構成されている。
【0048】
連結部250は、所定の撓み性を有する。これにより、栓部240を嵌合部220に比較的容易に嵌めることができる。
連結部250と本体部210との付け根部分には、栓部240の切り欠き246に対応する形状を有する角型部材252が設けられている。この角型部材252は、嵌合部220に栓部240を嵌めたときに切り欠き246に嵌まるように構成されている。これにより、嵌合部220に栓部240を嵌めたときに栓部240が回転してしまうのを抑制し、栓部240を外れにくくすることができる。
【0049】
コネクタ接続部260は、図14及び図16に示すように、ネジ状の突起からなる螺合部262と、本体部210の他方端の左右に設けられた2つの係止部264とを有する。コネクタ接続部260に図1に示したコネクタ部材34が接続され、螺合部262に固定具35が螺合されることとなる。また、固定具35の内部突起が係止部264と噛み合うことにより、固定具35が係止されることとなる。
【0050】
第1把持部270は、図16に示すように、本体部210の側面から垂直に立ち上がる立上がり部272と、所定の曲率で曲がる曲がり部273と、曲がり部273から本体部210側に向けて直線状に伸びる直線部274と、本体部210とは反対側に向けて屈曲する屈曲部275と、立上がり部272から直線部274の一部に沿って設けられた薄肉部276とを有する。立上がり部272の部分の断面形状は、図示による説明は省略するが、オス型シャントキャップ100の場合と同様に、略T字状である。屈曲部275と本体部210とは接触しておらず、第1把持部270は所定の撓み性を有する。
【0051】
メス型シャントキャップ200を構成する各部材は、金型により一体成形されている。メス型シャントキャップ200を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチック材料を好適に用いることができる。
【0052】
次に、オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とが接続される様子について、図18を用いて説明する。
図18は、オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とが接続される様子を示す図である。図18(a)は接続前のオス型シャントキャップ100の嵌合部120とメス型シャントキャップ200の嵌合部220とを示す図であり、図18(b)は接続後のオス型シャントキャップ100の嵌合部120とメス型シャントキャップ200の嵌合部220とを示す図である。
【0053】
オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とは、図18に示すように、オス型シャントキャップ100の内側筒部122と外側筒部128とによって形成される隙間に、メス型シャントキャップ200の嵌合部220が嵌まるように構成されている。オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とを接続したとき、内側筒部122と嵌合部220とは、オス−メス嵌合することとなる。
【0054】
以上のように構成された実施形態に係るオス型シャントキャップ100によれば、上記した栓部140を備えているため、必要時まで嵌合部120の開口部分を栓部140で閉塞しておくことが可能となる。その結果、メス型シャントキャップ200との接続部分となる嵌合部120が雑菌で汚染されるのを抑制することが可能となる。
また、実施形態に係るオス型シャントキャップ100によれば、内側筒部122の外面125を囲むようにして外側筒部128が設けられているため、内側筒部122の外面125が外側筒部128でカバーされることとなる。この内側筒部122の外面125は、メス型シャントキャップ200との接続時においてメス型シャントキャップ200の嵌合部220の内面と接する部分であることから、内側筒部122の外面125が外側筒部128でカバーされた構成とすることにより、結果として、雑菌汚染の発生をさらに抑制することが可能となる。
したがって、実施形態に係るオス型シャントキャップ100は、プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能なオス型シャントキャップとなる。
【0055】
実施形態に係るオス型シャントキャップ100においては、本体部110の管軸に対して垂直方向から嵌合部120を見たとき、外側筒部128の端縁131の位置は、内側筒部122の端縁126の位置に対して本体部110とは反対側に偏倚した位置にある。これにより、外側筒部128によって内側筒部122の外面125を確実にカバーすることができるため、雑菌汚染の発生をさらに抑制することが可能となる。
【0056】
実施形態に係るオス型シャントキャップ100においては、内側筒部122の外径寸法は、端縁126側から本体部110側に向かうにしたがって大きくなるように設定されている。これにより、メス型シャントキャップ200との接続が比較的容易となるとともに、メス型シャントキャップ200との接続をより確実にすることが可能となる。
【0057】
実施形態に係るオス型シャントキャップ100においては、外側筒部128の内面129に設けられた突起部132をさらに有するため、オス型シャントキャップ100とメス型シャントキャップ200とを接続したときに、オス型シャントキャップ100の突起部132とメス型シャントキャップ200の螺合部222とが互いに引っ掛かり合うこととなる。その結果、メス型シャントキャップ200との接続強度(外れにくさ)を高めることが可能となる。
【0058】
実施形態に係るオス型シャントキャップ100においては、外側筒部128の端縁131には切り欠き133が設けられており、栓部140には、切り欠き133の形状に対応する形状からなる突起146が形成されている。これにより、外側筒部128の切り欠き133と栓部140の突起146とが互いに噛み合うようにして栓部140を嵌合部120に嵌めたときには、液密性を維持することができ、外側筒部128の切り欠き133と栓部140の突起146とが噛み合わないように所定量ずらして栓部140を嵌合部120に嵌めたときには、通気性を確保することができる。
【0059】
実施形態に係る体外循環回路1は、上記の優れたオス型シャントキャップ100を備えているため、プライミング処理時の雑菌汚染の発生を従来よりも抑制可能な体外循環回路となる。
【0060】
以上、本発明のオス型シャントキャップ及び体外循環回路を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
(1)上記実施形態においては、外側筒部128の端縁131の位置が、内側筒部122の端縁126の位置に対して本体部110とは反対側に偏倚した位置にある場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。外側筒部の端縁の位置が、内側筒部の端縁の位置と同じ位置にあってもよい。
【0062】
(2)上記実施形態においては、外側筒部128の内面129にのみ突起部132が設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内側筒部122の外面125にのみ突起部が設けられていてもよいし、外側筒部128の内面129と内側筒部122の外面125の両方に突起部が設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、突起部132を正面から見たときの形状が、所定長さの弦と弧を結んだ形状(皿のような形状)である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。メス型シャントキャップの嵌合部に設けられた係止手段(実施形態では螺合部222及び係止部224)と係止可能であれば、他の形状からなっていてもよい。
【0063】
(3)上記実施形態においては、外側筒部128の内面129に設けられた突起部132が、内側筒部122を間に挟んで対向するように上下に計2つ設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図19は、変形例に係る嵌合部120a周辺部分の拡大正面図である。なお、図19においては、突起部132aの配置位置及び形状の理解を容易にするため、突起部132aを灰色に着色している。また、図19において、図9と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
例えば図19に示す嵌合部120aのように、突起部132aが、内側筒部122を間に挟んで対向するように左右に計2つ設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、突起部132が計2つ配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0064】
(4)上記実施形態においては、外側筒部128の内面129に突起部132が設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、内側筒部122の外面125の一部及び外側筒部128の内面129の一部のうち少なくとも一方に、溝が設けられていてもよい。この場合、メス型シャントキャップの嵌合部には、当該溝と係止可能な突起などの係止手段が設けられていることが好ましい。
【0065】
(5)上記実施形態においては、外側筒部128の内面129の形状がストレート状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、外側筒部128の端縁131側から本体部110側に向かうにしたがって内径が狭くなるようなテーパ状に形成されていてもよい。
【0066】
(6)上記実施形態においては、嵌合部120に設けられた切り欠き133が、嵌合部120を正面から見たときに左右方向に計2つ設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。切り欠きの数及び配置位置については、適宜変更可能である。また、切り欠き133の形状についても、略四角状に限定されるものではなく、例えば略V字状や略U字状など、他の形状であってもよい。この場合、栓部140に設けられる突起の数、配置位置及び形状は、切り欠きの数、配置位置及び形状に対応するものであることが好ましい。
【0067】
(7)上記実施形態においては、本体部110が円筒形状の管状部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば角筒形状の管状部材であってもよい。
【0068】
(8)上記実施形態においては、オス型及びメス型シャントキャップ100,200を構成する各部材が、金型により一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オス型及びメス型シャントキャップを構成する各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0069】
(9)上記実施形態においては、オス型及びメス型シャントキャップ100,200が、プラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プラスチック材料以外の材料を用いてもよい。
【0070】
(10)本発明のオス型シャントキャップは、上述した回路構成からなる動脈側回路20及び静脈側回路30を備える体外循環回路1に限らず、上述の構成とは異なる回路構成からなる回路部材を備える体外循環回路に用いることができる。また、血液透析用の体外循環回路に限らず、他の用途として用いられる体外循環回路(例えば、血漿分離用の体外循環回路や人工心肺用の体外循環回路等)に用いることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 体外循環回路
10 血液処理器
20 動脈側回路
21〜23,31,32 チューブ
24,33 ドリップチャンバ
25 ローリングチューブ
26,34 コネクタ部材
27,35 固定具
30 静脈側回路
41 生食ライン
42 ヘパリンライン
43,45 モニターライン
44 排液ライン
100 オス型シャントキャップ
110,210 本体部
112,212 (本体部の)貫通孔
120,120a,220 嵌合部
122 内側筒部
123 貫通孔
124 内側筒部の内面
125 内側筒部の内面
126 内側筒部の端縁
128 外側筒部
129 外側筒部の内面
130 外側筒部の外面
131 外側筒部の端縁
132,132a 突起部
133 (外側筒部の)切り欠き
140,240 栓部
142,242 嵌合凹部
144 鍔部
146 (栓部の)突起
150,250 連結部
160,260 コネクタ接続部
162,222,262 螺合部
164,224,264 係止部
170 把持部
172,272 立上がり部
173,273 曲がり部
174,274 直線部
175,275 屈曲部
176,276 薄肉部
244 嵌合凸部
246 (栓部の)切り欠き
252 角型部材
270 第1把持部
280 第2把持部
d1,d2 内側筒部の外径
d3 内側筒部の端縁から外側筒部の端縁までの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貫通孔(112)が形成された管状の本体部(110)と、
前記本体部(110)の一方端に配置され、所定方向に開口する嵌合部(120)と、
前記嵌合部(120)の前記開口した部分を閉塞する栓部(140)とを備え、
前記嵌合部(120)は、
前記本体部(110)の前記貫通孔(112)に連通する貫通孔(123)が内部に形成された管状の内側筒部(122)と、
前記内側筒部(122)の外面(125)を囲むように、前記内側筒部(122)の外面(125)との間に所定の間隔を設けて配置された外側筒部(128)とを有することを特徴とするオス型シャントキャップ(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のオス型シャントキャップにおいて、
前記本体部(110)の管軸に対して垂直方向から前記嵌合部(120)を見たとき、
前記外側筒部(128)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(131)の位置は、前記内側筒部(122)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(126)の位置と同じ位置又は前記内側筒部の端縁(126)の位置に対して前記本体部(110)とは反対側に偏倚した位置にあることを特徴とするオス型シャントキャップ(100)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオス型シャントキャップにおいて、
前記内側筒部(122)の外径寸法は、前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側から前記本体部(110)側に向かうにしたがって大きくなるように設定されていることを特徴とするオス型シャントキャップ(100)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオス型シャントキャップにおいて、
前記内側筒部(122)の外面(125)の一部及び前記外側筒部(128)の内面(129)の一部のうち少なくとも一方に設けられた突起部(132)をさらに有することを特徴とするオス型シャントキャップ(100)。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオス型シャントキャップにおいて、
前記内側筒部(122)の外面(125)の一部及び前記外側筒部(128)の内面(129)の一部のうち少なくとも一方に設けられた溝部をさらに有することを特徴とするオス型シャントキャップ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のオス型シャントキャップにおいて、
前記外側筒部(128)の端縁のうち前記栓部(140)によって前記開口部分が閉塞されたときに前記栓部(140)と対向する側の端縁(131)には、所定形状の切り欠き(133)が設けられており、
前記栓部(140)には、前記切り欠き(133)の形状に対応する形状からなる突起(146)が形成されていることを特徴とするオス型シャントキャップ(100)。
【請求項7】
回路部材(20,30)と、
前記回路部材(20)の一方端に接続可能に構成され、オス型の嵌合部を有するオス型シャントキャップ(100)と、
前記回路部材(30)の他方端に接続可能に構成され、前記オス型の嵌合部と嵌合可能なメス型の嵌合部を有するメス型シャントキャップ(200)とを備え、
前記オス型シャントキャップは、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオス型シャントキャップであることを特徴とする体外循環回路(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図14】
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