説明

オゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法

【課題】植物がオゾンガスによる障害を受けにくく、かつオゾンによる養液の殺菌が可能であって、さらにオゾンによる養液殺菌において養液組成の変化が少なくなるようなオゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法を提供すること。
【解決手段】植物が配置される栽培ベッド1と、栽培ベッド1に供給する養液を貯留する養液タンク2と、原水から所定濃度のオゾン水を生成し、生成した当該オゾン水を養液タンク2および栽培ベッド1のうちの少なくともいずれか一方に供給する電解型オゾン水生成装置3と、を備える養液栽培設備100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法(養液栽培システム)に関する。さらに詳しくは、養液そのものや養液栽培設備の消毒・殺菌にオゾン水を使用して、栽培する植物の病害防除を行う養液栽培設備および養液栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養液栽培とは、固形培地や水中に根系を形成させ、生育に必要な栄養成分を液肥と希釈水とを所定比率で混合した養液(培養液)を介して与えて、土壌を用いることなく作物などの植物を栽培する栽培方法のことをいう。
養液栽培で発生する植物の主な病害としては、青枯病、萎ちょう病、根腐病などがあり、これら病害における病害虫の侵入経路の多くは、種子による伝染、空気中からの伝染、水や養液による伝染、および育苗資材やホース・水道管などからの伝染、と言われている。特に、栽培ベッド内や養液タンク内の養液に病原菌が混入した場合には、壊滅的な被害に拡大することがあり、これが養液栽培の生産安定や面積拡大の阻害要因の一つとなっている。さらに、現在、登録農薬がないため十分な消毒は不可能とされてきた。また、病害防除の対策として、紫外線照射による方法、超音波による方法、加熱殺菌による方法などが研究されているが、いずれも実用化技術に至っていない。このような実情の下、近年、紫外線照射による方法、超音波による方法、加熱殺菌による方法などに替え、オゾンを用いた消毒・殺菌による方法が検討されている。例えば、下記のような方法が挙げられる。
【0003】
従来、マイナスイオンおよびオゾン含有ガスを培養液中に注入混和して培養液を消毒活性化する水耕栽培用培養液の消毒方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の消毒方法では、マイナスイオンおよびオゾン含有ガスを培養液調整槽内の培養液中に注入混和して培養液を消毒活性化し、また水耕用培養液の酸素富化をはかるために培養液の一部を培養液調整槽内で曝気している。
【0004】
また、養液タンクと栽培ベッドとの間で養液を循環させる養液栽培装置の殺菌装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の殺菌装置は、インジェクタによりオゾンガスを養液中に吹き込む槽と、その槽から越流した養液中にさらに空気を吹き込み溶解されている未分解オゾンガスの分解を促進する槽とから構成された殺菌槽を有し、その殺菌槽の上部に未溶解オゾンガスの分解処理部(触媒分解および触媒加熱ヒータ)を設けたものである。
【0005】
さらに、脱塩処理した原水を用いて調整した養液を栽培ベッドに供給し、栽培ベッドからの余剰の養液排水を中空糸膜からなる除菌装置で除菌して養液を循環使用する養液栽培方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載の養液栽培方法では、植物生育が不活発になる夜間に、養液が流れる配管やタンクの内部にオゾンを含有する液を流して、それらに付着するバイオフィルムを除去するなどの殺菌を行っている。尚、オゾンを含有する液は、ミキシングポンプにより脱塩した原水中にオゾンガスを注入混合して生成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平03−236728号公報
【特許文献2】特開平05−336856号公報
【特許文献3】特開2001−299116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された水耕栽培用培養液の消毒方法では、培養液中に溶解されなかったオゾンガスが、培養液調整槽上部の排ガスパイプを経由して栽培ベッドが設置されている栽培施設内の空気中に排出されるので、植物のクロロシス(白化)などの障害が生じる。また、植物のみならず、作業環境中にオゾンガスが蓄積すると、作業者への影響も認められる場合がある。さらに、培養液調整槽内の培養液中に直接オゾンガスを吹き込み混合するため、高濃度のオゾンガスが培養液に接触し、培養液中の微量成分が酸化物を生成し、その結果酸化物が沈殿物として析出し培養液組成が大きく変化して、植物に栄養障害が発生する可能性もある。なお、培養液の成分中、マンガン>鉄>カルシウムの順に酸化されやすいが、高濃度のオゾンガスは比較的酸化されにくいカルシウムまでも酸化するため、栄養障害が甚大となりやすい。
【0008】
また、特許文献2に記載された養液栽培装置の殺菌装置においても、特許文献1に記載された消毒方法と同様、養液中に直接オゾンガスを吹き込み混合するため、養液組成が大きく変化して植物に栄養障害が発生する可能性がある。また、この殺菌装置は、養液中に空気注入することで未溶解のオゾンガスを養液中から除去するため、オゾンガスの分解装置が必要となる。また、オゾンガスを積極的に養液中から除外するため、オゾンガス分解装置が本技術の危険回避、安全確保の生命線となり、一般の農家で管理するには困難を伴う。さらに、養液中への空気注入によって養液中にはオゾンが残留していないため、養液に関しては殺菌できたとしても、栽培ベッドに発生した病原菌の殺菌は難しく、特に植物の根系に付着した病原菌の殺菌は困難で病害防除効果は不十分となる。
【0009】
また、特許文献3に記載された養液栽培方法は、特許文献1、2に記載された技術のように養液を直接オゾンガスで殺菌するものではないが、ミキシングポンプにより溶解度の小さいオゾンガスを原水(RO水)中に注入しているため、未溶解のオゾンガスを含んだ液が栽培ベッドに供給される。そのため、栽培ベッドにおいて配管からオゾンを含有した液が散布されると、未溶解のオゾンガスが栽培施設内の空気中に排出され、オゾンガスによる植物の障害が生じる。なお、0.3ppmのオゾンガス濃度で植物に致命的な障害を与えるとされている。また、本技術は、養液中の塩分濃縮防止のための脱塩用RO膜設備、除菌のための中空糸膜設備など、機器構成の多い複雑な構成であり、設備のメンテナンスを含め非現実的な設備である。さらに、特許文献3に記載の実施例では固形培地を使用する方式を対象としているため、配管やタンク内部の殺菌が可能であっても固形培地内に生存する病原菌の殺菌までは難しい。固形培地内に生存する病原菌の殺菌を可能とするためには、比較的大量のオゾン含有水を供給することが必要であり、オゾンガスによる植物への障害を増加させる結果となってしまう。また、固形培地を用いる養液栽培においては、養液を供給する配管に酸化物が堆積し、配管或いはノズルを閉塞させる原因になっている。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その課題は、植物がオゾンガスによる障害を受けにくく、かつオゾンによる養液の殺菌が可能であって、さらにオゾンによる養液殺菌において養液組成の変化が少なくなるようなオゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明は、オゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法に関する。そして、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法は、上記課題を解決するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明のオゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0012】
上記課題を達成するための本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第1の特徴は、植物が配置される栽培ベッドと、前記栽培ベッドに供給する養液を貯留する養液タンクと、前記養液タンクから前記栽培ベッドへ前記養液を供給するための養液供給経路と、原水から所定濃度のオゾン水を生成し、生成した当該オゾン水を前記養液タンクおよび前記栽培ベッドのうちの少なくともいずれか一方に供給する電解型オゾン水生成装置と、を備えていることである。
【0013】
この構成によると、養液栽培における養液そのものや養液栽培設備の消毒・殺菌に電解型オゾン水生成装置にて原水から生成された所定濃度のオゾン水が使用される。ここで、電解型オゾン水生成装置にて原水から生成されるオゾン水(以下、適宜、電解オゾン水と記載する)は、オゾンガスを水中に吹き込み溶解させて生成するオゾン水(以下、適宜、ガス溶解オゾン水と記載する)に比して、オゾン水から揮散するオゾンガス量が極めて少ない。このため、植物のクロロシス(白化)などのオゾンガスによる植物障害を防止することができる。一方、養液は、上記電解オゾン水により殺菌可能である。
また、所定濃度の電解オゾン水が養液タンクおよび栽培ベッドのうちの少なくともいずれか一方に供給される。このため、特許文献1、2に開示された従来技術のように、高濃度のオゾンガスが養液に直接接触することはなく、その結果、オゾンによる養液殺菌において養液組成が大きく変化することはない。
さらに、本発明では、電解型オゾン水生成装置を用いて原水から直接オゾン水を生成するため、原水由来の病原菌の殺菌を確実に達成できる。すなわち、殺菌に必要なオゾン水濃度が、電解型オゾン水生成装置内での電解反応によって、瞬時に確実な再現性をもって得られることから、確実な殺菌効果が得られ、原水を汚染源とした病害の発生を防除できる。
【0014】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第2の特徴は、前記栽培ベッドから排出される排オゾン水を回収する排オゾン水回収タンクと、前記排オゾン水回収タンクに回収された前記排オゾン水を前記養液タンクに供給する供給手段と、を備えていることである。
【0015】
この構成によると、所定比率の養液を得るための希釈水として排オゾン水を再使用することができ、水の消費量の増加を抑えることができ、排水を系外に排出しない循環方式を構築できる。
【0016】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第3の特徴は、前記栽培ベッドから排出される前記養液を前記排オゾン水回収タンクに回収することである。
【0017】
この構成によると、排オゾン水回収タンク内の排オゾン水中に残留するオゾンによって、回収された養液の殺菌が可能となる。養液汚染拡大の大きな要因である栽培ベッドから排出された養液の殺菌を、養液が養液タンクに戻されるよりも前に行えるため、病害被害の拡大阻止に大きな効果がある。
【0018】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第4の特徴は、前記排オゾン水回収タンクに、一定量以上かつ一定濃度以上の前記排オゾン水を常時貯留することである。
【0019】
この構成によると、排オゾン水回収タンク内のオゾン水の量およびオゾン水濃度を一定値以上に確保できるため、排オゾン水回収タンクに回収された養液の殺菌をより安定して実施することができる。さらに養液を系外に排出しない循環方式を構築できる。
【0020】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第5の特徴は、前記養液タンク内または前記排オゾン水回収タンク内の残留オゾン水濃度が0.01mg/L以上であることである。この構成によると、養液そのものや養液栽培設備の殺菌をほぼ確実に行うことができる。
【0021】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培設備における第6の特徴は、前記電解型オゾン水生成装置にて生成された前記オゾン水を前記養液供給経路中に注入することである。
【0022】
この構成によると、養液タンクよりも栽培ベッドに近い位置で、栽培ベッドに供給される養液中にオゾン水を注入して混合できるので、より確実に養液の殺菌が可能となる。また、栽培ベッドに供給する養液量に対応させて必要最小限のオゾン水混合が可能となり、養液および栽培ベッドなどの殺菌に必要な養液中の残留オゾン濃度の管理が容易となる。その結果、植物に障害を与えることを防止しつつ病害防除を適切に行うことができる。
【0023】
また、本発明は、その第2の態様によると、オゾン水を用いた養液栽培方法に関する。そして、このオゾン水を用いた養液栽培方法は、上記課題を解決するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明のオゾン水を用いた養液栽培方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0024】
上記課題を達成するための本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培方法における第1の特徴は、原水からオゾン水を生成する電解型オゾン水生成装置にて生成された所定濃度のオゾン水を、植物が配置される栽培ベッドおよび前記栽培ベッドに供給する養液を貯留する養液タンクのうちの少なくともいずれか一方に供給することである。
【0025】
この構成によると、養液栽培における養液そのものや養液栽培設備の消毒・殺菌に電解オゾン水が使用される。ここで、電解オゾン水は、未溶解のオゾンを含まず、ガス溶解オゾン水に比して、オゾン水から揮散するオゾンガス量が極めて少ない。このため、植物のクロロシス(白化)などのオゾンガスによる植物障害を防止することができる。一方、養液は、電解オゾン水により殺菌可能である。また、所定濃度の電解オゾン水を養液タンクおよび栽培ベッドのうちの少なくともいずれか一方に供給するため、特許文献1、2に開示された従来技術のように、高濃度のオゾンが養液に直接接触することはなく、その結果、オゾンによる養液殺菌において養液組成が大きく変化することはない。
さらに、本発明では、電解型オゾン水生成装置を用いて原水から直接オゾン水を生成するため、原水由来の病原菌の殺菌を確実に達成できる。すなわち、殺菌に必要なオゾン水濃度が、電解型オゾン水生成装置内での電解反応によって、瞬時に確実な再現性をもって得られることから、確実な殺菌効果が得られ、原水を汚染源とした病害の発生を防除できる。
【0026】
また、本発明に係るオゾン水を用いた養液栽培方法における第2の特徴は、前記栽培ベッドから排出される排オゾン水を排オゾン水回収タンクに回収し、前記排オゾン水回収タンクに回収された前記排オゾン水を前記養液タンクに供給することである。
【0027】
この構成によると、所定比率の養液を得るための希釈水として排オゾン水を再使用することができ、水の消費量の増加を抑えることができる。さらに閉鎖型の養液栽培システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明のオゾン水を用いた養液栽培設備および養液栽培方法は、固形培地耕、湛液型水耕、およびNFT方式の養液栽培などのいずれの方式の養液栽培に対しても適用できる養液栽培設備および養液栽培方法である。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備100(以下、養液栽培設備100と記載する)を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る養液栽培設備100は、植物が配置される栽培ベッド1と、栽培ベッド1に供給する養液を貯留する養液タンク2と、電気分解により水道水から直接、所定濃度のオゾン水(電解オゾン水)を生成する電解型オゾン水生成装置3と、養液タンク2に供給する液肥を貯留する追肥タンク4と、を備えている。そして、これら各装置は、配管などの経路で相互に連結されている。経路14は、水道水取り出し口(不図示)と電解型オゾン水生成装置3とを連結する経路であり、オゾン水供給経路12および13は、それぞれ、電解型オゾン水生成装置3と、養液タンク2および栽培ベッド1上流部とを連結する経路であり、経路15は、水道水取り出し口(不図示)と、オゾン水供給経路13中に設けられた原水注入口41とを連結する経路である。また、経路17は、追肥タンク4と養液タンク2とを連結する経路である。さらに、養液供給経路11は、養液タンク2と栽培ベッド1上流部とを連結する経路であり、養液戻り経路16は、栽培ベッド1下流部と養液タンク2とを連結する経路である。尚、本実施形態においては、原水として水道水からオゾン水を生成する例を示すが、井水などを原水として電解型オゾン水生成装置3によりオゾン水を生成してもよい。
【0031】
経路15には、その上流側から順に、電磁弁31、手動弁32、逆止弁33が取り付けられている。電磁弁31は、オゾン水供給経路13中への水道水の注入を制御するための弁であり、逆止弁33は、オゾン水供給経路13からのオゾン水の逆流を防止するための弁である。また、オゾン水供給経路13には、その上流側から順に、電動弁34、原水注入口41、手動弁35が取り付けられている。電動弁34は、電解型オゾン水生成装置3から栽培ベッド1へのオゾン水の供給を制御するための弁である。また、オゾン水供給経路12には、電動弁37が取り付けられている。電動弁37は、電解型オゾン水生成装置3から養液タンク2へのオゾン水の供給を制御するための弁である。また、電解型オゾン水生成装置3からのオゾン水が、オゾン水供給経路12、13に分岐して流れる前の共通経路には、オゾン水を排水するための電磁弁36が取り付けられている。
【0032】
また、養液供給経路11の上流側端部には、養液供給ポンプ5が接続され、養液供給ポンプ5は、養液タンク2内底部に設置されている。そして、養液供給経路11には、その上流側から順に電動弁38、電導度計43(EC計43)が取り付けられている。電動弁38は、養液タンク2から栽培ベッド1への養液の供給を制御するための弁である。電導度計43は、栽培ベッド1に供給される養液の濃度を管理するための計器であり、濃厚養液の供給量を調整することができる。また、養液戻り経路16には、電動三方弁39が取り付けられている。電動三方弁39は、栽培ベッド1から排出された養液(排養液)や栽培ベッド1から排出されたオゾン水(排オゾン水)を養液タンク2に戻したり、外部に排水したりするための弁である。
【0033】
また、養液タンク2には、液面計42が付属されている。ここで、追肥タンク4および電解型オゾン水生成装置3から、それぞれ液肥およびオゾン水が養液タンク2に供給され、養液タンク2内において、オゾン水により液肥が所定濃度に調整され、希釈されると共に、殺菌処理された養液(培養液)が貯留される。上記液面計42は、電解型オゾン水生成装置3から養液タンク2に供給されるオゾン水量を制御するための計器である。
【0034】
尚、図1に示す各バルブにおいては、適宜必要に応じて、電動弁を電磁弁に、或いは電磁弁を電動弁にしてもよいし、電動弁または電磁弁を手動弁に、手動弁を電動弁または電磁弁に変更してもよい。また、電解型オゾン水生成装置3から養液タンク2へのオゾン水の供給は、電動弁37及び供給経路12を介して行うのに限定されず、原水注入口41より下流の供給経路13から分岐(図1の一点鎖線)して行ってもよい。この場合には、水道水(原水)にて所定濃度に希釈されたオゾン水を養液タンク2へ供給することができる。
【0035】
次に、電解型オゾン水生成装置3としては、例えば、図2に示したような構造の電解型オゾン水生成装置3が挙げられる。図2は、図1に示す電解型オゾン水生成装置3の一実施例を示す要部縦断面図である。
【0036】
図2に示すように、この電解型オゾン水生成装置3は、固形電解質膜61の一面と他面とに、直流電圧を印加した陽極電極62と陰極電極63とを重ね、陽極電極62側に供給された水道水を(正確には、陽極電極62側に供給された水道水、および陰極電極63側に供給された水道水の双方を)電気分解して、陽極電極62側においてオゾン水を得るように構成されている。すなわち、電解型オゾン水生成装置3においては、ガス溶解オゾン水生成における、「オゾンガスを発生させた後、そのオゾンガスを水中に吹き込んで溶解させる」、という工程を必要とせずに、水の電気分解に基づきオゾン水を生成できる。尚、陽極電極62側においては、水(水道水)の電気分解により酸素も発生するため、生成されたオゾン水は、ガス溶解オゾン水に比して溶存酸素濃度が高くなる。また、図2に示した電解型オゾン水生成装置3によると、電解電流の値により、利用範囲で任意の濃度のオゾン水を得ることができる。
【0037】
ここで、図3は、電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水における時間経過に伴うオゾン水濃度の減衰傾向を示すグラフである。図4は、電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水における時間経過に伴うオゾンガス脱気量の増加傾向を示すグラフである。図3および図4に示すグラフにおいて、横軸は、経過時間(min)であり、縦軸は、オゾン濃度(mg/L)である。また、図3、4における電解方式で生成されたオゾン水の温度は、12.1℃、ガス溶解方式により生成されたオゾン水の温度は、10.1℃であった。
【0038】
図3に示したように、ガス溶解方式により生成されたオゾン水では、オゾン水濃度の半減期(オゾン水濃度が半分になる時間)が10分〜15分程度であるが、電解方式により生成されたオゾン水では、60分以上である。すなわち、ガス溶解方式では、電解方式に比して短時間で急激に濃度が低下していることがわかる。また、水中に溶解しているオゾンは、空気中に放出してくるため(脱気)、図4に示すように、ガス溶解方式では、オゾン濃度が減衰した分、電解方式に比してかなりの濃度のオゾンが空気中に放出してくることがわかる。つまり、電解オゾン水は、液中に未溶解のオゾンを含まないので、ガス溶解オゾン水に比して、オゾン水濃度の時間経過に伴う減衰が少なくなる。一方、ガス溶解オゾン水の場合には、未溶解オゾンガスの液中からの分離が顕著であり、例えば特許文献1〜3に記載された従来技術においては、液中に直接オゾンガスを吹き込み混合するという方法で生成したガス溶解オゾン水を用いているため、未溶解オゾンガスの分離によって発生したオゾンガスが、栽培される植物への障害を引き起こす原因となっていた。
【0039】
しかしながら、詳しくは後述するが、本実施形態においては、植物の養液栽培において、電解型オゾン水生成装置3にて水道水から生成された所定濃度の電解オゾン水を使用する。この電解オゾン水は、図4に示したように、ガス溶解オゾン水に比して、オゾン水から揮散するオゾンガス量が極めて少ないため、植物のクロロシス(白化)などのオゾンガスによる植物障害を防止することができる。
【0040】
次に、図1に基づいて本実施形態の養液栽培設備100の動作(本設備を用いた養液栽培方法)を説明する。
【0041】
まず、経路14を経由して供給された水道水から所定濃度のオゾン水を電解型オゾン水生成装置3にて生成する。そして、生成されたオゾン水をオゾン水供給経路12を介して養液タンク2に供給し、追肥タンク4から液肥を経路17を介して養液タンク2に供給する。なお、図1の二点鎖線で示したとおり、経路12から分岐して、経路17に合流する分岐流路を設け、追肥タンク4からの液肥を養液タンク2に到達する前に希釈するよう構成してもよい。そうすることで追肥タンク4からの液肥をより確実に殺菌することができる。そして、養液タンク2内において液肥をオゾン水により希釈すると共に、殺菌処理して所定濃度の養液を生成する。
【0042】
そして、養液タンク2から栽培ベッド1へ養液を供給するための養液供給経路11を介して、養液タンク2内の殺菌処理され所定濃度に生成された養液を養液供給ポンプ5により栽培ベッド1へ供給する。養液タンク2内の養液を栽培ベッド1に供給することにより、栽培ベッド1に配置された植物への栄養成分の供給を行うと共に、栽培ベッド1を構成する栽培タンク、ベッド、配管などの設備資材の残留オゾン水による殺菌処理を行う。なお、養液供給ポンプ5は養液タンク2内の養液に浸漬された、いわゆる水中ポンプに限るものではなく、養液タンク2外に配設された送水ポンプでもよい。
【0043】
栽培ベッド1で植物に吸収されずに栽培ベッド1から排出された養液は、養液戻り経路16を経由して養液タンク2に戻り、養液タンク2内で追肥タンク4から供給される液肥と混合して濃度調整され、養液タンク2と栽培ベッド1との間で循環使用される。栽培ベッド1から養液タンク2に戻された排出養液は、病原菌などに汚染されている場合があるが、電解型オゾン水生成装置3から養液タンク2に供給されるオゾン水によって殺菌されるので、養液の循環使用に伴う病原菌などによる汚染は防止できる。
【0044】
そして、定期的に、電動弁37および38を閉にし養液供給ポンプ5を停止し、かわりに電動弁34および電磁弁31を開にして、経路15を介して供給される水道水で希釈した所定のオゾン水濃度のオゾン水を、養液タンク2からの養液に替えて所定流量で所定時間、栽培ベッド1に供給する。このとき、電解型オゾン水生成装置3からのオゾン水と、経路15を介して供給される水道水との混合比は、1:0〜1:10程度であって、季節によって変動可能であるが、混合後のオゾン水濃度が0.01mg/L以上、好ましくは3.0mg/L以上であることが望ましい。
【0045】
希釈混合されたオゾン水は、オゾン水供給経路13を経由して栽培ベッド1に供給される。供給されたオゾン水により、栽培ベッド1を構成する栽培タンク、ベッド、配管などの設備資材、ならびに植物の根系も洗浄、殺菌されるため、栽培ベッド1および植物に付着する病原菌を殺菌でき発病を抑制できる。すなわち、電解オゾン水を適宜、養液に替えて栽培ベッド1に直接供給して、ベッド、配管などの設備資材および植物を殺菌することにより、原水や養液からの病原菌の植物への伝染、育苗資材、ホース、配管などからの病原菌の植物への伝染、などの病害を効果的に防除することが可能となり、病害の発生防止、拡大防止が可能である。特に、定期的に養液の供給にかえて、栽培ベッド1にオゾン水を直接供給することで、病原菌の温床であるバイオフィルムの形成を防止できる。また、湛液方式養液栽培、或いはNFT養液栽培システムでは、植物の根系が直接、オゾン水に触れるため、これら方式の養液栽培に、定期的に所定濃度のオゾン水を栽培ベッド1へ直接供給する構成を採用すれば、根に付着する病原菌由来の病害(根腐病、黒根病など)の防除効果をより高めることができる。
【0046】
尚、栽培ベッド1から排出された排オゾン水は、養液戻り経路16を介して養液タンク2に戻し、循環使用する。この排オゾン水中にはわずかに溶存オゾンが残留するため、この溶存オゾンによって養液タンク2内の養液の殺菌が可能である。したがって、養液タンク2へのオゾン水供給経路12を経由してのオゾン水の供給は、養液タンク2に養液を貯留する初期(養液栽培設備100の立ち上げ段階)、および養液タンク2の液面低下時のオゾン水補充時のみでよく、養液タンク2から栽培ベッド1への養液供給時に、常時のオゾン水供給は不要となる。尚、電解型オゾン水生成装置3から栽培ベッド1への直接のオゾン水供給は、例えば1回当たり5分程度の短時間で、1日数回、自動的に行われる。当然ながら、植物の成長に変化が見られる季節に応じて、オゾン水の供給時間、回数は適宜変更される。
【0047】
電解型オゾン水生成装置3にて生成するオゾン水を、オゾン水濃度:10mg/L、オゾン水量:10L/minとし、経路15を介して供給する水道水量(オゾン水希釈水量)を20L/min、栽培ベッド1へ直接供給するオゾン水を、オゾン水濃度:3.3mg/L、オゾン水量:30L/minとすることにより、植物への障害は無く、植物の成長促進は顕著であった。
【0048】
尚、本実施形態においては、電解型オゾン水生成装置3にて水道水から直接生成したオゾン水を養液タンク2および栽培ベッド1のいずれにも供給する例を示しているが、養液タンク2および栽培ベッド1のうちのいずれか一方にオゾン水を供給する構成であってもよい。例えば、電解オゾン水を栽培ベッド1にのみ直接供給する構成とした場合には、栽培ベッド1から排出された排オゾン水を、養液戻り経路16を介して養液タンク2に戻すことにより、養液タンク2内の養液の殺菌を行う。養液タンク2に養液を貯留する初期(養液栽培設備100の立ち上げ段階)には、予め水道水などの原水で液肥を希釈した養液を養液タンク2に供給しておけばよい。但し、養液タンク2内での液肥の希釈、殺菌、ならびに、栽培ベッド1を構成する資材、植物の根系のオゾン水による直接の殺菌、をいずれも、より殺菌効率よく行うには、養液タンク2および栽培ベッド1のいずれにも電解オゾン水を供給する構成とした本実施形態が好ましい。
【0049】
以上説明した本実施形態によると、養液栽培における養液そのものや養液栽培設備の消毒・殺菌に電解型オゾン水生成装置にて原水から生成したオゾン水(電解オゾン水)が使用される。この電解オゾン水は、オゾンガスを水中に吹き込み溶解させて生成するガス溶解オゾン水に比して、オゾン水から揮散するオゾンガス量が極めて少ないため、植物の葉やけなどのオゾンガスによる植物障害を防止することができる。また、電解型オゾン水生成装置3にて生成された所定濃度の電解オゾン水が養液タンク2および栽培ベッド1のうちの少なくともいずれか一方に供給されため、例えば特許文献1、2に開示された従来技術のように、高濃度のオゾンが養液に直接接触することはなく、オゾンによる養液殺菌において養液組成が大きく変化することはない。
【0050】
さらに、電解型オゾン水生成装置3を用いて原水である水道水から直接オゾン水を生成するため、原水由来の病原菌の殺菌を確実に達成できる。すなわち、殺菌に必要なオゾン水濃度が、電解型オゾン水生成装置3内での電解反応によって、瞬時に確実な再現性をもって得られることから、確実な殺菌効果が得られ、原水を汚染源とした病害の発生を防除できる。
【0051】
また、電解型オゾン水生成装置3にて原水から生成されたオゾン水は、ガス溶解オゾン水に比して溶存酸素濃度が高いため、植物の成長促進をより高めることができるという効果もある。尚、湛液型およびNFT方式における養液を循環使用する栽培システムでは、攪拌ポンプおよび空気混合器によって空気を養液中に空気注入して溶存酸素濃度の低下を防止しているが、それら方式の栽培設備に、原水から電解型オゾン水生成装置3にて生成した電解オゾン水を用いる本発明を適用すれば、電解オゾン水の供給により殺菌効果と溶存酸素の保持、高濃度化とが同時に達成できる。
【0052】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備101を示すブロック図である。尚、以下の説明においては、上述の第1実施形態に係る養液栽培設備100と同一の構成部材については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0053】
まず、本実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、図5に示すように、本実施形態では、栽培ベッド1から排出される排オゾン水を回収する排オゾン水回収タンク6をさらに設けている点である。
【0054】
経路20は、栽培ベッド1下流部と排オゾン水回収タンク6とを連結する経路であり、経路内を栽培ベッド1から排出される排オゾン水が流れる。経路19は、栽培ベッド1下流部と排オゾン水回収タンク6とを連結する経路であり、経路内を栽培ベッド1から排出される養液(排養液)が流れる。また、経路18は、排オゾン水回収タンク6と養液タンク2を連結する経路であり、経路内を排オゾン水および養液(排養液)が流れる。
【0055】
経路20および経路19には、それぞれ、手動弁が取り付けられている。また、経路18の上流側端部には、排液揚水ポンプ7が接続され、排液揚水ポンプ7は、排オゾン水回収タンク6内底部に設置されている。そして、経路18には、電動弁40が取り付けられている。電動弁40は、排オゾン水回収タンク6から養液タンク2への排オゾン水および養液(排養液)の供給を制御するための弁である。なお、排液揚水ポンプ7は、排オゾン水回収タンク6内底部に設置される、いわゆる水中ポンプに限るものではなく、排オゾン水回収タンク6外に配設された送水ポンプでもよい。
【0056】
排液揚水ポンプ7と、配管などの経路18と、経路18中に取り付けられた電動弁40とで、排オゾン水回収タンク6に回収された排オゾン水を養液タンク2に供給する供給手段9を形成している。また、排オゾン水回収タンク6は、栽培ベッド1から排出される養液(排養液)を排オゾン水回収タンク6に回収するためのタンクでもある。尚、栽培ベッド1からの排養液を流す経路19と、栽培ベッド1からの排オゾン水を流す経路20とは、説明上、別経路としているが、経路を共通化して1経路としてもよい。排養液の排オゾン水により殺菌を考慮すれば、むしろ排養液および排オゾン水の経路を1経路に共通化することが好ましい。
【0057】
栽培ベッド1から排出される排オゾン水を排オゾン水回収タンク6に回収し、排オゾン水回収タンク6に回収された排オゾン水を供給手段9により養液タンク2に供給することで、所定比率の養液を得るための希釈水として排オゾン水を再使用することができ、水の消費量の増加を抑えることができる。また、排オゾン水を所定比率の養液を得るための希釈水として再使用することにより、養液の初期調整にのみ電解オゾン水を使用し、ほとんど系外に排水を出さない閉鎖型の養液栽培システムを構築し得る。
【0058】
また、栽培ベッド1からの排養液を、養液タンク2に直接戻すのではなく、排オゾン水回収タンク6に戻すことにより、排オゾン水回収タンク6内の排オゾン水中に残留するオゾンによって、回収された養液の殺菌が可能となる。養液汚染拡大の大きな要因である栽培ベッド1から排出された養液の殺菌を、養液が養液タンク2に戻されるよりも前に行えるため、病害被害の拡大阻止に大きな効果がある。なお、栽培ベッド1から経路19を介して排出される養液の量に比して、経路21を介して排出されるオゾン水の量を大きくする(例えば10倍程度)と、排養液の殺菌効果をより高めることができる。
【0059】
さらに、排オゾン水回収タンク6は、養液の濃度調整を行うためのタンクではなく、排オゾン水などの排液を回収するためのタンクであるため、排オゾン水回収タンク6内にはオゾンが残留した排水が貯留される。このため、排養液の殺菌を残留溶存オゾン水で行えるため、より効果的に排養液の殺菌を行えることになる。
【0060】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備102を示すブロック図である。尚、以下の説明においては、上述の第1、2実施形態に係る養液栽培設備100、101と同一の構成部材については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0061】
まず、本実施形態と第2実施形態との主要な相違点は、本実施形態では、排オゾン水回収タンク6に、一定量以上かつ一定濃度以上の排オゾン水を常時貯留する構成としている点である。図6に示すように、本実施形態では、電解型オゾン水生成装置3にて生成されたオゾン水を排オゾン水回収タンク6に直接、供給するためのオゾン水供給経路21を設けている。オゾン水供給経路21は、電解型オゾン水生成装置3と排オゾン水回収タンク6とを連結する経路であり、その経路中には電動弁44が取り付けられている。電動弁44は、電解型オゾン水生成装置3から排オゾン水回収タンク6へのオゾン水の供給を制御するための弁である。また、排オゾン水回収タンク6には、液面計42’が付属されている。液面計42’は、排オゾン水回収タンク6内の液面レベルを常時一定値以上に保持して排オゾン水回収タンク6内のオゾン水量およびオゾン水濃度を制御するための計器である。
【0062】
本実施形態では、上記オゾン水供給経路21および排オゾン水回収タンク6付属の液面計42’が、排オゾン水回収タンク6に、一定量以上かつ一定濃度以上の排オゾン水を常時貯留するための手段である。排オゾン水回収タンク6内のオゾン水量およびオゾン水濃度を一定値以上に確保することにより、排オゾン水回収タンク6に回収された養液の殺菌がより確実になる。
【0063】
尚、養液中のオゾン水濃度が0.3〜1mg/L以上であれば、殺菌可能であることが実証されている。従って、養液タンク2内または排オゾン水回収タンク6内の残留オゾン水濃度は、1〜2mg/L以上であることが好ましい。これにより、養液そのものや養液栽培設備の殺菌をほぼ確実に行うことができる。尚、残留オゾン水濃度を1〜2mg/L以上とするためには、栽培ベッド1へ供給するオゾン水濃度を、3mg/L以上とすべきである。また、排オゾン水回収タンク6へのオゾン水の供給については、栽培ベッド1に養液が供給され、栽培ベッド1から養液が排オゾン水回収タンク6に排出されるタイミングでオゾン水が供給されることでより殺菌効果が増す。更に、オゾン水の供給については、排オゾン水回収タンク6内に排養液がある所定レベルにまで貯留された後に行うことで、オゾン水滞留によるオゾン濃度の減衰を少なくし、殺菌効果を高めることができる。尚、濃度が高すぎることによる植物への影響を考慮すると、栽培ベッド1へ供給するオゾン水濃度の上限は、10mg/L程度であり、また、養液タンク2内または排オゾン水回収タンク6内の残留オゾン水濃度の上限は、3mg/L程度である。
【0064】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備103を示すブロック図である。尚、以下の説明においては、上述の第1〜3実施形態に係る養液栽培設備100〜102と同一の構成部材については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0065】
まず、本実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、本実施形態では、電解型オゾン水生成装置3にて生成されたオゾン水を、養液タンク2から栽培ベッド1へ養液を供給するための養液供給経路11中に注入する構成としている点である。図7に示すように、本実施形態では、電解型オゾン水生成装置3にて生成されたオゾン水を、養液供給経路11中に設けたオゾン水注入口47に供給するためのオゾン水供給経路22を設けている。オゾン水供給経路22は、オゾン水注入口47を介して、電解型オゾン水生成装置3と養液供給経路11とを連結する経路であり、その経路中には、上流側から順に、電動弁45、手動弁46が取り付けられている。電動弁45は、養液供給経路11中へのオゾン水の供給を制御するための弁である。また、養液供給経路11中のオゾン水注入口47よりも上流側には、逆止弁48が取り付けられ、養液供給経路11中に注入されたオゾン水の養液タンク2側への逆流が防止されている。
【0066】
また、追肥タンク4’と養液タンク2との間には液肥混合装置8が配置されている。液肥混合装置8は、追肥タンク4’からの液肥と、電解型オゾン水生成装置3からの電解オゾン水および水道水のうちの少なくともいずれか一方(希釈水)とを混合して所定濃度の養液を生成し、生成した養液を養液タンク2へ送るための装置である。希釈水としては、少なくとも電解型オゾン水生成装置3からの電解オゾン水を使用して殺菌処理された養液を生成することが好ましい。なお、液肥混合装置8に替え、その部位にオゾン水注入口47に近似する構成のものを設け、追肥タンク4’からの液肥と、電解型オゾン水生成装置3からの電解オゾン水および水道水のうちの少なくともいずれか一方とを混合するようにしてもよい。
【0067】
本実施形態によると、養液タンクよりも栽培ベッドに近い位置で、栽培ベッドに供給される養液中にオゾン水を注入して混合できるので、より確実に養液の殺菌が可能となる。また、栽培ベッドに供給する養液量に対応させて必要最小限のオゾン水を注入することが可能となり、過剰なオゾンによる養液中の栄養成分の過剰減少を防止できる。
また、オゾン水注入口47と栽培ベッド1の間に、オゾン水との反応で濃度低減が予想される無機塩類の微量栄養成分を添加できるよう構成してもよい。それにより、栄養成分の減少を抑制できる。
【0068】
尚、本養液栽培設備103でも他の実施形態と同様、定期的に電解型オゾン水生成装置3からの電解オゾン水を直接、栽培ベッド1に供給して、栽培ベッド1を構成する栽培タンク、ベッド、配管などの設備資材、ならびに植物の根系を洗浄、殺菌することができる。また、第2、3実施形態のような排オゾン水回収タンク6を設けて、排オゾン水および排養液を回収してもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電解型オゾン水生成装置の一実施例を示す要部縦断面図である。
【図3】電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水における時間経過に伴うオゾン水濃度の減衰傾向を示すグラフである。
【図4】電解方式またはガス溶解方式により生成されたオゾン水における時間経過に伴うオゾンガス脱気量の増加傾向を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るオゾン水を用いた養液栽培設備を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1:栽培ベッド
2:養液タンク
3:電解型オゾン水生成装置
4:追肥タンク
6:排オゾン水回収タンク
11:養液供給経路
100、101、102、103:オゾン水を用いた養液栽培設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が配置される栽培ベッドと、
前記栽培ベッドに供給する養液を貯留する養液タンクと、
前記養液タンクから前記栽培ベッドへ前記養液を供給するための養液供給経路と、
原水から所定濃度のオゾン水を生成し、生成した当該オゾン水を前記養液タンクおよび前記栽培ベッドのうちの少なくともいずれか一方に供給する電解型オゾン水生成装置と、
を備えていることを特徴とする、オゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項2】
前記栽培ベッドから排出される排オゾン水を回収する排オゾン水回収タンクと、
前記排オゾン水回収タンクに回収された前記排オゾン水を前記養液タンクに供給する供給手段と、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のオゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項3】
前記栽培ベッドから排出される前記養液を前記排オゾン水回収タンクに回収することを特徴とする、請求項2に記載のオゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項4】
前記排オゾン水回収タンクに、一定量以上かつ一定濃度以上の前記排オゾン水を常時貯留することを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載のオゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項5】
前記養液タンク内または前記排オゾン水回収タンク内の残留オゾン水濃度が0.01mg/L以上であることを特徴とする、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のオゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項6】
前記電解型オゾン水生成装置にて生成された前記オゾン水を前記養液供給経路中に注入することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のオゾン水を用いた養液栽培設備。
【請求項7】
原水からオゾン水を生成する電解型オゾン水生成装置にて生成された所定濃度のオゾン水を、植物が配置される栽培ベッドおよび前記栽培ベッドに供給する養液を貯留する養液タンクのうちの少なくともいずれか一方に供給することを特徴とする、オゾン水を用いた養液栽培方法。
【請求項8】
前記栽培ベッドから排出される排オゾン水を排オゾン水回収タンクに回収し、
前記排オゾン水回収タンクに回収された前記排オゾン水を前記養液タンクに供給することを特徴とする、請求項7に記載のオゾン水を用いた養液栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−165374(P2009−165374A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5192(P2008−5192)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】