説明

オゾン濃度測定方法及びその装置

【課題】リアルタイムで非破壊的に高精度にオゾン濃度を測定する。
【解決手段】紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部2に供されるオゾン含有ガスの一部を導入するオゾン分解部3はオゾン濃度測定部2に並列に配置されている。オゾン分解部3では前記導入したガスに紫外光を照射することにより前記ガスに含まれるオゾンガスを酸素ガスに分解する。そして、オゾン分解部3にてオゾンガスが完全に酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出された前記オゾン含有ガスのオゾン濃度に基づきオゾン濃度測定部2の校正が行なわれる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は負圧雰囲気下で10体積%程度以上のオゾンガスのオゾン濃度をリアルタイムで非破壊的に高い精度で測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年高濃度(例えばオゾン濃度10%以上)のオゾンガスを利用する用途がますます増加している(特許文献1〜4等参照)。例えば半導体プロセスでは、層間絶縁膜等の機能性膜の堆積、基板の直接酸化、表面に付着した汚染の洗浄(有機汚染除去)など多岐にわたっている。これはオゾンが有する高い酸化力、あるいは有機物との高い反応性によるものであり、オゾンの濃度が高ければ高いほどより大きな効果が発揮できることが知られている。但し、半導体プロセスのようにプロセスの再現性の高さが要求される場合、用いるオゾンガスの濃度がプロセス間(処理する基板間)、プロセス中(時間的に)一定である(例えば濃度の揺らぎが濃度の絶対値の±10%以内で絶えず安定)するように管理することが必要である。また、オゾンガスは金属製の供給配管の内面に安定した保護膜(オゾン処理による不動態膜)を作成するまでは金属表面と反応しやすく、また、前記内面に肉眼で確認できないようなミクロな溶接痕などが残っているといつまでも反応が続く。したがって、前記供給配管の安定を確認するまたは異常を管理する観点から、オゾン処理部近郊の上流側でのオゾン濃度をその場で非破壊的に高い精度でモニターできることが望ましい。
【0003】
現在、オゾン濃度を測る方法としては紫外光吸収方式が一般的である(例えば特許文献3等)。これはオゾンガスが紫外線領域の波長254nm付近に強い吸収性を有し、他の一般的なガスではこの波長域の吸収が小さいことを利用して濃度を算出する方法であり、オゾンを含まない参照ガス(あるいはオゾンを排気したガス)と計測対象のオゾン含有ガスとをそれぞれオゾン濃度計の紫外線吸収セルに流し、それぞれ吸収強度から測定対象のガス中のオゾン濃度を算出している。
【特許文献1】特開2002−5826号公報
【特許文献2】特開2003−329585号公報
【特許文献3】特許第4009523号公報
【特許文献4】特開2004−279339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3のオゾンガス濃度測定方法及びその装置に例示される従来の紫外線吸収方式のオゾン濃度測定には大きく分けて以下の二つの問題点がある。
【0005】
第一の問題点は導入する紫外線により計測ガス中のオゾンが一部分解してしまうことである(すなわち、破壊測定となる)。計測用の紫外光の強度をできるだけ小さくし、同時にセルを透過した紫外光(透過光)の検出部の感度を上げることでオゾンの分解率を下げた測定をすることはできるが、紫外線光量を絞ると検出信号のS/N比が低下する(検出部に用いるフォトセンサーのダークカレントの影響が無視できなくなる)。また、紫外光の照射によるオゾンの分解率は紫外線吸収セルを流れるオゾンガスの流量とオゾンガス濃度、吸収セルでの圧力などセルを配置する環境に大きく依存する(例えば、オゾンガス流量が低ければ低いほど測定によるオゾン分解率は増大する)。近年、大気圧よりも負圧(例えば0.001気圧)でオゾンを利用するプロセスも多く、様々な計測環境(条件)で非破壊(紫外光照射による吸収セルでのオゾン分解率が元のオゾン濃度に対して無視できる程度)で且つできるだけ高いS/N比で精度の高いオゾン濃度測定を行なえることが求められる。
【0006】
第二の問題点は吸収セルの形状、セル部でのガスの流れ、セル部の圧力や測定するオゾン濃度によっては以下の式(1)で与えられるランベルト・ベアーの法則から予測されるオゾン濃度Dが不正確となることがある。
【0007】
【数1】

【0008】
例えば、他の手法で計測した方法(例えばオゾン雰囲気への紫外線の照射でオゾンを人口的に分解した場合(2O3→3O2))の圧力上昇の割合から元のオゾンガスの濃度を算出する方法)で算出されたオゾン濃度に比べ、最大10%以上程度ずれることがある。これはセル部とセル上流側のガス流量断面積が異なる場合にガス流がセル部の紫外光吸収領域で局所的に乱れること、さらに紫外光を導入、導入用の窓材の温度が上がることで流れるガスの温度が局所的に上昇すること、紫外光が窓で散乱することも原因であると考えられる。
【0009】
プロセスを精密に再現性の高さ制御する要求が高まるを考えると、これらの問題を軽減し精度を高めたオゾン濃度測定が必要であるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1のオゾン濃度測定方法は、紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部に供されるオゾン含有ガスの一部を導入するオゾン分解部を前記オゾン濃度測定部に並列に配置し、前記オゾン分解部では前記導入したガスに紫外光を照射することにより前記ガスに含まれるオゾンガスを酸素ガスに分解し、前記オゾン分解部にてオゾンガスが完全に酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出された前記オゾン含有ガスのオゾン濃度に基づき前記オゾン濃度測定部の校正が行なわれる。
【0011】
請求項2のオゾン濃度測定方法は、請求項1のオゾン濃度測定方法において、前記オゾン分解部の上流側から導入したオゾンガスを前記紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度と前記オゾン分解部の下流側から導入したオゾンガスを紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度との偏差に基づき前記オゾン濃度測定部に供する紫外光の照射強度を制御する。
【0012】
請求項3のオゾン濃度測定方法は、請求項2のオゾン濃度測定方法において、前記偏差として前記両者のオゾン濃度の誤差が10%以内となるように紫外光の照射強度を制御する。
【0013】
請求項4のオゾン濃度測定方法は、請求項1から3のいずれかのオゾン濃度測定方法において、前記オゾンガスの完全分解に供する紫外光を照射する光源の照射強度を調整することによりオゾンガスを酸素ガスに完全分解させる時間を調整する。
【0014】
請求項5のオゾン濃度測定方法は、請求項1から4のいずれかのオゾン濃度測定方法において、前記紫外光の光源を前記オゾン濃度測定部と前記オゾン分解部とが共有する。
【0015】
また、請求項6のオゾン濃度測定装置は、紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部に供給されるオゾン含有ガスの一部を導入するオゾン分解部を前記オゾン濃度測定部と並列に配置し、前記オゾン分解部は導入したガスに紫外光を照射して前記ガスに含まれるオゾンガスを完全に酸素ガスに分解し、前記オゾン濃度測定部は前記オゾンガスが完全に酸素ガスに分解したときの前記オゾン分解部の圧力上昇の割合に基づき算出された前記オゾン含有ガスのオゾン濃度に基づき校正を行う。
【0016】
請求項7のオゾン濃度測定装置は、請求項6のオゾン濃度測定装置において、前記オゾン濃度測定部は、前記オゾン分解部の上流側から導入したオゾンガスを前記紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度と前記オゾン分解部の下流側から導入したオゾンガスを紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度との偏差に基づき前記オゾン濃度測定部に供する紫外光の照射強度を制御する。
【0017】
請求項8のオゾン濃度測定装置は、請求項7のオゾン濃度測定装置において、前記偏差として前記両者のオゾン濃度の誤差が10%以内となるように紫外光の照射強度を制御する。
【0018】
請求項9のオゾン濃度測定装置は、請求項6から8のいずれかのオゾン濃度測定装置において、前記オゾンガスの完全分解に供する紫外光を照射する光源は照射強度が可変である。
【0019】
請求項10のオゾン濃度測定装置は、請求項6から9のいずれかのオゾン濃度測定装置において、紫外光の光源は前記オゾン濃度測定部と前記オゾン分解部が共有できるように配置されている。
【発明の効果】
【0020】
以上の発明によればリアルタイムで非破壊的に高精度にオゾン濃度を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は発明の実施形態に係るオゾン濃度装置1の概略構成図である。
【0022】
オゾン濃度装置1はオゾン濃度測定部2とオゾン分解部3とを備える。
【0023】
オゾン濃度測定部2は紫外光吸収方式のオゾン濃度測定法に基づく。オゾン濃度測定部2は参照ガス(オゾン含有ガス)が流通するガス流路4内に紫外光を照射させる一対の光透過窓5を備えている。一方の光透過窓5はケーシング6内に設けられた前記紫外光を照射する光源7側のガス流路4の側面に設置される。光源7と光透過窓5の間には照射光調節部8が配置されている。照射光調節部8は紫外光の照射面積を可変させる。もう一方の光透過窓5は光検出部9側のガス流路4の側面に設置される。光透過窓5と光検出部9との間には紫外光のみを透過するフィルター10が配置されている。光検出部9は照射光調節部8、光照射窓5、ガス流路4、光照射窓5、フィルター10を介して検出した光の強度を電気信号に変換する。この電気信号は信号増幅部11で増幅された後に演算処理部12に出力される。演算処理部12は信号増幅部11から入力された信号に基づき前述の式(1)の演算によってオゾン濃度Dを算出する。また、演算処理部12はオゾン分解部3の温度計13及び圧力計14から供給された信号に基づきオゾン濃度Dを補正できるようになっている。演算処理部12の演算結果は図示省略された表示部によって出力表示される。
【0024】
オゾン分解部3はオゾン濃度を測定したいオゾン含有ガスを導入し、このガスに対して紫外光を照射して瞬時に酸素分子に完全に分解する。
【0025】
オゾン分解部3はオゾン濃度測定部2と並列に配置されている。オゾン分解部3はバルブV1またはV2が開に設定されることで一時的に導入されたオゾン含有ガスに対して外部(大気圧部)から紫外光が照射できる構造を有する。すなわち、オゾン分解部2は、オゾン濃度測定部2と並列にガス流路4に接続されるバイパス路15と、このバイパス流路15内に滞留するガスに紫外光を透過させる一対の光照射窓16とを備える。前記紫外光を照射する光源7はバイパス路15の上部と下部に配置されている。バイパス路15の上流側及び下流側の管路には自動開閉可能なバルブV1及びV2が各々設置されている。バイパス路15には滞留するガスの圧力の時間変化を測定する圧力計14及び前記ガスの温度を測定できる温度計13が具備される。また、バイパス路15には分解ガスを廃棄するためのガス廃棄路17が接続されている。ガス廃棄路17には自動開閉可能なバルブV3が設置されている。
【0026】
光源7としては例えばウシオ電機製の高圧水銀ランプ(UVX−02528S1APA02)が挙げられる。光源7は紫外光の照度が可変であるとなおおい。前記照度を可変とすることで、バイパス路15内に取り込んだオゾンガスを酸素ガスに完全分解する時間を調整できる。
【0027】
オゾン濃度測定部2及びオゾン分解部3は紫外光を取り込む部分のみ(例えば光照射窓5,16、ガス流路4、バイパス路15の一部分)が石英ガラス等で構成し、その他の部分はアルミニウム、ステンレス等で構成するとよい。バイパス路15は紫外光が最大限にオゾン含有ガスに吸収されるように例えば円筒形状(隔壁は紫外光を透過する石英ガラス製)に形成され、紫外光を吸収せず反射する部材(例えば表面粗さRa<0.8μmとなるように表面研磨したステンレスまたはアルミニウムコートされた鋼材)からなるケーシング6によって完全に格納されている。これにより紫外光をオゾンガス流路へ最大効率で照射することができ、オゾンを高速に分解できる。また、光源7はケーシング6内に設けられた収納ボックス18内に交換可能に収納されている。収納ボックス18の底部には光源7の光をオゾン濃度測定部2に供給するためのスリット19が形成されている。
【0028】
オゾン分解部3は、オゾンの完全分解による圧力上昇によるオゾン濃度計測とこれによる紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部2の校正機能(吸収特性の補正)、オゾン濃度測定部2の制御因子である紫外光強度の調整機能(非破壊測定のための調整)を有する。
【0029】
図2はオゾン分解部3の動作例を説明したタイムチャートを示す。
【0030】
計測したいオゾンガス(測定ガス)が安定してガス流路4内を流れている状態で、初めにバルブV1,V2を開、バルブV3を閉にして前記オゾンガスの一部をオゾン濃度測定部2の上流側からオゾン分解部3へ導入させる。例えば、バルブV1,V2を1秒間開けることで、オゾン完全分解部であるオゾン分解部3(パイバス路15)の内圧が安定する。この圧力が安定した状態でバルブV1,V2を閉じることで、紫外線吸収方式(オゾン濃度測定部2)で測定するオゾン含有ガスとほぼ同じ圧力(及び同じ濃度)のオゾンガスをバルブV1〜V3で密閉された空間に溜め込むことができる。その後、紫外線の光源7をONにする(点灯させる)。または光源7とオゾンガスのガス流路4の間に設けた照射光調節部8のシャッター(光開閉機構)を開けることにより、オゾン含有ガスの雰囲気に紫外光が照射されるようにする。これにより短時間に(例えば数秒で)オゾンを完全に酸素分子に分解できる。
【0031】
そして、演算処理部12はオゾンの完全分解後に到達した圧力P1と分解前の圧力P2の比から「オゾンガス濃度[vol%]={(P2−P1)/(1.5P1−P1)}×100」の演算(特開2003−262627号公報に開示されたオゾンが酸素に分解することにより圧力が1.5倍になることを利用すること)によって分解前のオゾン濃度を算出する。この際、オゾン分解部3の温度計13の値に基づく式(1)による温度補正を行なうと、より正確なオゾン濃度が算出される。
【0032】
オゾンの完全分解に要する時間はオゾン分解部3の圧力計13の応答時間で決定されるが、前記時間は光源7の紫外光強度で可変である。例えば、10W(波長250nm付近の紫外光の光量)の光源7を用いた場合、毎秒供給できる光子数は1.3×1019個である。一方、オゾン分解部3の体積が100ccで、ここにオゾン分圧1000Paのガスが導入された場合、この空間に滞留するオゾン分子数は3.7×1019個であるので、全ての光子がオゾンに吸収されるとして(最も理想的な状態)、完全分解する時間は約3秒と計算できる。実際、実験により1000Paの100%オゾンガス(明電舎製の高純度オゾン発生装置(例えばMPOG−SM1C1)から供給されたガス)を完全に分解し1.5倍の圧力までかかる時間は5秒程度であることが確認された。これから紫外光強度を2倍にすることで、オゾンの完全分解に要する時間を半分程度にすることができると予想される。その他、オゾン分解部3の容積を小さくすればするほど、オゾンの完全分解までの時間は短縮できるが、圧力計14の応答時間との兼ね合いから最適に設計すればよい。
【0033】
次に、圧力計14の圧力値が安定したタイミングで、図2に示されたタイムチャートのようにバルブV3を開にしてバイパス路15内に滞留するガスを外部に廃棄する。このガスは酸素分子ガスであること、また、オゾン分解部3の容積は通常小さいので(例えば100cc)、小型の能力の排気ポンプで瞬時(例えば1秒)に真空状態(例えば導入時の圧力の1/100以下、導入したオゾン含有ガス圧力が1000Paの場合、10Pa以下)まで排気できる。真空排気後、バルブV3が閉に、バルブV2は開に設定される。
【0034】
次に、バルブV3を閉、バルブV2,V1を開にしてオゾン濃度測定部2の下流側からオゾン含有ガスをオゾン分解部3に導入し、パイバス路15内の圧力が安定した後、バルブV2,V1を閉じ、光源7からの紫外光の照射を開始する。紫外光の照射前後の圧力P1,P2の比からオゾン濃度が算出される。
【0035】
そして、バルブV1から導入したガスのオゾン濃度とバルブV2から導入したオゾンガスでのオゾン濃度を比較し、両者の偏差が無視できるほど小さいか(例えば両者のオゾン濃度の誤差が±10%以内であるか)が確認される。
【0036】
バルブV2から導入したガスの方がバルブV1から導入したガスに比べ低い(例えば10%以上)場合、ガス流路4に照射した紫外光によりオゾンが分解したことになるため、ガス流路4に照射する光強度を小さくするように制御する。
【0037】
これにより任意のオゾン計測ガス条件において、ガス流路4を流通するガスに含まれるオゾン分子を破壊させることなく前記ガスのオゾン濃度測定が可能になる。また、この「紫外光照射式オゾン完全分解法」で算出したオゾン濃度と「紫外光吸収法」で算出したオゾン濃度とを比較することにより、紫外線吸収方式の濃度の校正(ランベルト・ベアーの法則が成立しているかの確認及びガス流路4の形状、オゾン計測条件等による固有の要因による補正)が実施でき、リアルタイムのオゾン濃度測定器として用いる紫外光吸収方式のオゾン濃度計の精度が向上する。
【0038】
紫外光吸光式のオゾン濃度計に供する紫外光の強度の制御、紫外光吸光式濃度計の再校正及び補正は図2に例示されたようなタイムチャートで実施される。例えば、新規のプロセスラインにオゾン濃度測定装置1を設置する場合、オゾン濃度測定装置1の下流側のオゾン供給条件(ガス流量、圧力、供給オゾンガス濃度などの)が大きく変わった場合、ある一定の時間が経過しオゾン濃度測定部2の再校正が必要となった場合などである。
【0039】
このタイムチャートで再校正及び補正を行なうと、オゾン濃度測定装置1を設置する環境が安定している限りは、オゾン分子を破壊させることなくリアルタイムで紫外光吸光式のオゾン濃度測定が行なえる。前記タイムチャートで実施する時間は例えば10秒で行なうことができ、紫外光吸光方式によるリアルタイムの非破壊的な測定を妨げない。前記タイムチャートの場合、ガスフローライン(パイパス路15)から取り出すガス量も少なく、またバルブV3を介して廃棄されるガスの流量が少なく酸素ガスであるので小型のポンプで済むという利点がある。
【0040】
以上の説明から明らかなようにオゾン濃度測定装置1は、紫外光をオゾン分解部3のみに閉じ込める、適当な開口径を有する口から取り出しているので、オゾン濃度測定装置1内の紫外光の迷光及びそれによる濃度測定の誤差の発生が防げる。
【0041】
オゾン濃度測定装置1において、オゾン分解部3とオゾン濃度測定部2は光源7を共有できる。従来のオゾン濃度測定系に対し新たに紫外光の光源を追加する必要がない。
【0042】
オゾン分解部3は、紫外光で完全にオゾンを分解する方式であり、爆発させることなくオゾンを完全分解させているので安全である。また、発生するガスは酸素ガスのみであるので、系の内外部が汚染しないと共にオゾン完全分解後の排ガスの廃棄にも特別なポンプを必要としない。
【0043】
また、オゾンの完全分解の際に、光源7の紫外光の照度を調整することで、取り込んだオゾン含有ガスを酸素ガスに完全分解する時間を調整できるようになり、圧力計14は前記オゾン分解による圧力上昇を正確に追随できる。
【0044】
ガス流路4内のオゾン圧力、オゾン流量、オゾン濃度などが時間的に刻々と変わるようなプロセスであっても(例えば10秒以上の時間間隔で変化する場合)、オゾン濃度を常時正確に測定できる。
【0045】
オゾン濃度測定部2の内圧、温度による補正はオゾン分解部3に具備された測定手段の測定値(例えば随時バルブV1またはV2を瞬間的に開いたときのガス圧力、ガス温度)で行なうことができる。すなわち、従来の圧力、温度補正があるタイプのオゾン濃度測定装置に対して圧力測定手段、温度測定手段を追加する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】発明の実施形態に係るオゾン濃度装置の概略構成図。
【図2】発明の実施形態に係る紫外光の光量の調整及び濃度の校正のタイムチャート図。
【符号の説明】
【0047】
1…オゾン濃度装置
2…オゾン濃度測定部
3…オゾン分解部
4…ガス流路
7…光源
8…照射光調節部
5…光透過窓、9…光検出部、10…フィルター、11…信号増幅部、12…演算処理部
13…温度計、14…圧力計
15…バイパス路、16…光照射窓
V1,V2,V3…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部に供されるオゾン含有ガスの一部を導入するオゾン分解部を前記オゾン濃度測定部に並列に配置し、
前記オゾン分解部では前記導入したガスに紫外光を照射することにより前記ガスに含まれるオゾンガスを酸素ガスに分解し、
前記オゾン分解部にてオゾンガスが完全に酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出された前記オゾン含有ガスのオゾン濃度に基づき前記オゾン濃度測定部の校正が行なわれること
を特徴とするオゾン濃度測定方法。
【請求項2】
前記オゾン分解部の上流側から導入したオゾンガスを前記紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度と前記オゾン分解部の下流側から導入したオゾンガスを紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度との偏差に基づき前記オゾン濃度測定部に供する紫外光の照射強度を制御することを特徴とする請求項1に記載のオゾン濃度測定方法。
【請求項3】
前記偏差として前記両者のオゾン濃度の誤差が10%以内となるように紫外光の照射強度を制御することを特徴とする請求項2に記載のオゾン濃度測定方法。
【請求項4】
前記オゾンガスの完全分解に供する紫外光を照射する光源の照射強度を調整することによりオゾンガスを酸素ガスに完全分解させる時間を調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定方法。
【請求項5】
前記紫外光の光源を前記オゾン濃度測定部と前記オゾン分解部とが共有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定方法。
【請求項6】
紫外光吸収方式のオゾン濃度測定部に供給されるオゾン含有ガスの一部を導入するオゾン分解部を前記オゾン濃度測定部と並列に配置し、
前記オゾン分解部は導入したガスに紫外光を照射して前記ガスに含まれるオゾンガスを完全に酸素ガスに分解し、
前記オゾン濃度測定部は前記オゾンガスが完全に酸素ガスに分解したときの前記オゾン分解部の圧力上昇の割合に基づき算出された前記オゾン含有ガスのオゾン濃度に基づき校正を行うこと
を特徴とするオゾン濃度測定装置。
【請求項7】
前記オゾン濃度測定部は、前記オゾン分解部の上流側から導入したオゾンガスを前記紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度と前記オゾン分解部の下流側から導入したオゾンガスを紫外光の照射によって酸素ガスに分解したときの圧力上昇の割合に基づき算出されたオゾン濃度との偏差に基づき前記オゾン濃度測定部に供する紫外光の照射強度を制御すること
を特徴とする請求項6に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項8】
前記偏差として前記両者のオゾン濃度の誤差が10%以内となるように紫外光の照射強度を制御することを特徴とする請求項7に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項9】
前記オゾンガスの完全分解に供する紫外光を照射する光源は照射強度が可変であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項10】
紫外光の光源は前記オゾン濃度測定部と前記オゾン分解部が共有できるように配置されたことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−281943(P2009−281943A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135962(P2008−135962)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】