説明

オゾン濃度計測方法ならびにオゾン濃度計測装置ならびにオゾン濃度計測装置付きオゾンガス貯留槽

【課題】
200g/Nm以上の高濃度オゾンガス濃度を測定する場合、従来の紫外線吸光式オゾン濃度計でオゾン吸光のための紫外線光路長を非常に短くする必要があったため、オゾンガスを流すための圧力損失が大きく、また、オゾンが紫外線により光解離し濃度低下が生じる恐れがあった。
【解決手段】
可視光光源、特に、波長550〜630nmnm付近の光を用いると、200g/Nm以上の高濃度オゾンガス濃度も、広い空間でオゾンガスを流通させたり滞留させて計測でき、かつ、オゾン分解を生ずることなく、精度良くオゾンガス濃度を計測できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン濃度の計測方法及びその装置に関し、特に、200g/Nm以上の高濃度オゾンガスの計測をオゾンを分解することなく、また、オゾンガス供給流量に関係なく正確に計測する方法と装置に関するものである。
また、このオゾン計測装置を組み込み、オゾン濃度が保証されたオゾンガスを供給するためのオゾンガス貯留槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のオゾン濃度計測方法としては紫外線吸収法が知られており、一般的なオゾン濃度計には広く用いられている。これは、オゾンが紫外領域で大きな吸収(ハートレー吸収帯)を持つことを利用し、紫外線光源として低圧水銀ランプの発光(254nm)をオゾンが吸光する光量を計測してオゾン濃度を導き出すものである。
【0003】
ところが、従来の紫外線吸光式オゾン濃度計は、オゾンによる紫外線(254nm)の吸収が非常に大きく(吸収断面積=3000±30L/mol・cm:非特許文献1)、高濃度オゾンを計測する場合、その光路長を極めて短くする必要がある。
【0004】
すなわち、光路長を50μmとしても大気圧下でオゾン濃度200g/Nm以上となると大部分の254nmの紫外線が吸収されるため、高濃度オゾンの計測精度が悪くなってしまう。
【0005】
さらに、紫外線の吸光率は圧力依存性が大きいが、光路長の短いセルをオゾンガスを通過させると、圧力損失が発生し、光路でのガス圧が正確に測定できないため、オゾンガス濃度の誤差が大きくなってしまう。
【0006】
また、320nm以下の紫外線ではオゾンが光分解する反応断面積が大きく、生成した高濃度オゾンが分解しオゾン濃度が低下する恐れがあった。
【0007】
高濃度オゾンガスを計測するために、特許文献1のように負圧状態でオゾン濃度を計測する方法もあるが、高濃度オゾンガスを生成する通常の放電型オゾン発生装置は大気圧以上の圧力でオゾンを生成しているため、負圧にするためには真空ポンプが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】宗宮功、特定非営利活動法人日本オゾン協会、オゾンハンドブック編集委員会 編著 「オゾンハンドブック p53」サンユー書房 2004年
【0009】
【特許文献1】特開2004−163293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
高濃度(200g/Nm以上)のオゾンガスを狭い隙間のセルを通すことなく、広い空間でオゾンガスを流通させたり滞留させて計測でき、かつ、オゾン分解を生ずることなく、精度良くオゾン濃度を計測する方法、ならびに計測装置を提供することを目的としている。
【0011】
また、従来のオゾン濃度計では、紫外線によるオゾン分解で濃度低下を防止するために、ある一定量以上のオゾンガスを流通させる必要があったため、オゾン貯留槽にオゾン濃度計を設置することができなかった。
【0012】
そこで、オゾン分解の恐れのない計測方法ならびに計測装置を提供することで、オゾン貯留槽のオゾン濃度を計測しつつ濃度が保証されたオゾンガスを供給するためのオゾン貯留槽を提供することを目的としている。
【0013】
また、低圧水銀ランプはその光出力が安定するのに時間がかかり、オゾン濃度計測装置を立ち上げるのに時間がかかっていた上、ランプのオンオフができなかった。また、その光量を調整することは難しかった。
【0014】
そこで、電源を入れるだけで短時間に計測することができるオゾン濃度を計測する方法、ならびに計測装置を供給するとともに、高濃度オゾンに与える外乱をできうる限り防止するために、必要なときのみに短時間でオゾン濃度を計測するための計測する方法、ならびに計測装置を提供することを目的としている。また、最小限度の光を照射することでオゾンの光分解を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によるオゾン濃度計測方法は、遮光した容器中のオゾンガスに、可視光光源からの光を照射しそれに対向して置いた受光素子により、オゾンガスの吸光度を測定することによりオゾン濃度を計測することを特徴としている。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では遮光した容器中に酸素ガスとオゾンガスを交互に導入し、酸素ガスとオゾンガスの吸光度を交互に測定するこすることでオゾン濃度を求めることを特徴としている。
【0017】
用いる可視光光源として、その発光スペクトルが500〜650nmの間、望ましくは550〜630nm間に最大発光強度を有する可視光LED又は半導体レーザであることを特徴としている。
【0018】
また、可視光光源から該受光素子間の光路中に550〜630nm間に光を通過させる帯域を有するフィルターを設けてもよい。
【0019】
用いる可視光光源への供給電流を常時供給しても良いが、パルス状、または、周期的にオンオフすることで、可視光光源からの光照射をパルス状、または、周期的にオンオフし、紫外線に比較して非常に小さいが、可視光の光子吸収によるオゾン分解を最小限に抑えることが可能となる。
【0020】
また、可視光光源への供給電流を制御し、可視光光源の発光強度を周期的に変動させたり、オゾンガス圧力により可視光光源の発光強度を変えるとオゾンガスに可視光光源からの光が全て吸収され、受光素子で光を検出できなくなることを防止できる。
【0021】
その結果、光路長を変えることなく、また、オゾンガスの圧力によらず、オゾン濃度を正確に計測することができる。すなわち、オゾンガスの圧力が高く、オゾン濃度が高い場合、光路長が長いと可視光光源からの光がオゾンガスによって殆ど吸光され、受光素子にて光を検出できない可能性があるが、この時に、可視光光源に供給する電流を大きくし発光強度を高くすることで、受光素子で光が検出できるわけである。
【0022】
請求項9のオゾン濃度計測装置は、遮光した密閉容器に、オゾンガスの流入口と流出口を設けるとともに、温度センサーと圧力センサーを取り付け、さらに、一対の光透過窓を対向して設け、一方の光透過窓の外部から外光を遮りつつ可視光光源を他方の光透過窓に向け照射し、他方の光透過窓の外部に外光を遮りつつ可視光光源に受光面を向けて設置することを特徴としている。
【0023】
請求項10のオゾン濃度計測装置密閉容器のオゾンガス流入口に酸素ガスとオゾンガスを交互に導入するための切換バルブを設け、酸素ガスのみで検出された光強度を検知し、可視光光源の発光強度が劣化していないことを確認したり、オゾンガスの吸光度を計測する直前又は直後の酸素ガスのみによる吸光度と比較することで可視光光源の光度変動の影響を最小に抑えることを特徴としている。
【0024】
請求項11のオゾン濃度計測装置付きオゾンガス貯留槽は、オゾンガス貯留槽に設けたオゾンガス流入口およびオゾンガス流出口にオゾンガスの流入流出を制御するバルブが設けられ、また、オゾンガス貯留槽の一部に可視光光源の光路を形成するように1対の窓を設け、一方の光透過窓の外部から可視光光源を他方の光透過窓に向け照射し、他方の光透過窓の外部に該可視光光源に受光面を向けて該可視光光源からの光のみを受光するように受光素子を設置し、オゾンガス貯留槽に温度センサーと圧力センサーを設けたことを特徴としている。
【0025】
その結果、オゾンガスが不要なときはオゾンガス流出口のバルブを閉めて、このオゾンガス貯留槽に高濃度オゾン発生装置から供給されるオゾンガスを加圧状態(高濃度オゾンガス発生装置の圧力)で貯留し、オゾンガスが必要となった場合にはオゾンガス流出口のバルブを開けてオゾンガスを供給すればよいが、このとき、オゾン濃度が計測されているため、オゾン濃度が低下していないことを確認しながらオゾンガスを供給することができる。
【0026】
また、このオゾンガス貯留槽は高濃度オゾン発生装置と高濃度オゾンを使用するオゾン処理槽との間のバッファタンクとしても用いることができ、この場合も、オゾン濃度がモニターされているため、オゾン濃度が低下していないことを確認しながらオゾンガスを使用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によるオゾン濃度計測方法は高濃度オゾンを分解する恐れが非常に低いオゾン濃度計測方法を提供するとともに、オゾンガス供給流量に関係なく正確にオゾンガス濃度を正確に計測する方法を提供できる。
【0028】
また、本発明によるオゾン濃度計測装置は、複雑な光学系が不要で、安価な可視光光源と受光素子をオゾンガスを隔てた光透過窓を介して対向させるだけよく、安価なオゾン濃度計測装置を構成することができる。
【0029】
さらに、オゾン発生装置とオゾン処理槽の間に置いたオゾンガス貯留槽の一部、または、オゾンガス流路に可視光光源の光路をおいたオゾン濃度計測装置を設置することで、オゾン濃度が保証されたオゾンガスをオゾン処理槽に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明によるオゾン濃度計測方法ならびにオゾン濃度計測装置の構成例を示すものである。
【図2】図2は本発明によるオゾン濃度計測方法ならびにオゾン濃度計測装置のガス流路の例である。
【図3】図3は本発明によるオゾン濃度計測装置付きオゾンガス貯留槽の例である。
【図4】図4は本発明によるオゾン濃度計測装置付きオゾンガス貯留槽の別の例である。
【図5】図5は高濃度オゾン(395g/Nm)の可視光の吸光度の波長依存性である。
【図6】図6は可視光光源として橙色LED(日亜化学工業株式会社製NSPA510A)を用いた場合の吸光度とオゾン濃度の関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すようにの遮光容器13の両端に光透過窓4、8を設置し、その一方の光透過窓4から可視光LEDなどの可視光光源11からの光を、他方の透過窓8の外に置いた受光素子18に向けて照射する。
【0032】
この時、遮光容器13内に導入されたオゾンガス16中に可視光光路15が形成され、オゾンガス16により可視光が吸収される。その結果、オゾンガス16の吸光によって強度の低下した可視光が受光素子18に流入する。
【0033】
図2は、本発明による図1の構成のオゾン濃度計測用光学系14のオゾンガス入口5にオゾンガス21と酸素ガス22を切り替える入口切換バルブ23を設けオゾンガス濃度計測用光学系14に供給するガスを酸素ガスのみとオゾンガスを切り替えると同時に、オゾンガス濃度計測用光学系14から排出するガスをオゾン処理槽へ供給したり排気したりするための出口切換バルブ24が設けられたガス流路を示したものであるが、酸素ガスのみを供給した場合の受光素子18の出力からオゾンガスの吸光度を求めることでオゾンガス濃度を正確に求めることができる。
【0034】
図5は可視光光源としてタングステンランプを用い、受光素子として分光器(オーションフォトニクス株式会社製MAYA2000Pro)を用いて、酸素ガスとオゾン濃度395g/Nmの高濃度オゾンガスを供給した場合の波長400nm〜900nmの吸光度:−log(I/I)を示したものである。ここで、Iは酸素での受光素子信号強度であるが、酸素は可視光領域では殆ど光吸収がなく、真空の場合とほぼ同じ信号強度が得られると考えられる。Iはオゾンガスでの受光素子信号強度である。なお、この場合の光路長は53.5cmである。
【0035】
特に、550〜630nm間にオゾンガスによる吸収のピークがあることがわかる。そのため、550〜630nm間に最大発光強度を有する可視光LED又は半導体レーザを可視光光源11とするとオゾン濃度計測誤差を小さくできる。
【0036】
例えば、可視光LEDなどのワイドレンジの可視光を用いる場合、550〜630nm間に光を通過させる帯域を有するフィルター12を光路中に設け、また、受光素子17として550〜630nmに高い感度を有する照度センサーやフォトダイオードを用いるとよい。
【0037】
しかしながら、550〜630nmのオゾンガスに吸光係数は低圧水銀ランプの発光スペクトル254nmに比べて3桁以上小さいため、光路長は長く取る必要があるが、200g/Nm以上の高濃度オゾンを計測する場合は光路長を数〜数十センチに収まり、光路長が非常に短くしなければならない低圧水銀ランプを用いたオゾンガス濃度計よりもオゾンガスの供給を考えた場合、オゾン濃度計の遮光容器13をオゾン配管そのものとするなどが可能で、オゾン濃度計配管を単純な構造とすることができる。
【0038】
さらに、吸光度が254nmの紫外線に比較して非常に小さいため、光吸収によるオゾンガス分解が生じにくい。そのため、オゾンガスの流量を小さくし、オゾン濃度計測用光学系14での滞留時間を長くしても、さらには、オゾンガスを封じても、オゾン濃度が光解離によって低下することがほとんど無い。
【0039】
図6は可視光光源として可視光LED(日亜化学工業株式会社製NSPA510A)を用い、受光素子として分光器(オーシャンフォトニクス株式会社製MAYA2000Pro)、または、フォトICダイオード(浜松フォトニクス株式会社製S9648−100)を用いた場合に置いて、吸光度(但し、この場合はeを基底としている)を縦軸にオゾンガス濃度を横軸にしてプロットしたものである。 なお、この場合の光路長は53.5cmである。
【0040】
○は602nmの波長のみの場合(図5で求めた吸光度のピークがある波長)を示しており、△はこの可視光LEDの発光スペクトル555nm〜669nm(LEDの発光スペクトルが最大値の50%以上の波長領域)の受光信号を平均化したのちに求めたものであり、□はこの可視光LEDの発光スペクトル全体(450nm〜850nm)に渡り受光信号を平均化した後に求めたものである。
【0041】
また、×は受光素子としてフォトICダイオードを用いた時の、吸光度を示している。
【0042】
光吸光が大きい602nmの場合が最も傾きが大きくなり、発光スペクトル全体で求めた場合がやや小さくなるが、いづれの場合も相対透過率でオゾン濃度を求めることが可能である。
【0043】
オゾンガスによる光の吸収は数式1に示すランバート・ベールの法則に従うことが知られている。ここで、cはオゾンガス濃度、I/Iは可視光の相対透過率(I:酸素での受光素子信号強度とI:オゾンガスでの受光素子信号強度)、εはオゾンガスのモル吸光係数、Lは光路長である。
【0044】
【数1】

【0045】
図6は数式1に従っており、可視光の吸光度ln(I/I)でオゾンガス濃度を求めることができる。
【0046】
可視光光源11として可視光LEDや半導体レーザを使用すると、連続的に発光させるだけでなく、その発光をパルス状にしたり、点灯と消灯を繰り返したり、または、発光強度を周期的に変動させたりすることができる。
【0047】
その結果、オゾン濃度計測用光学系14中のオゾンガス16への可視光照射強度(可視光の強度と照射時間)をできるだけ少なくし、オゾンガスの可視光による光解離を防止することができる。さらに、可視光光源11の温度上昇を小さく抑えることができる。
【0048】
また、光路長Lを変えることなく広範囲のオゾンガス濃度を測定するために、可視光光源11の発光強度を周期的に変えることで、最も適した発光強度での相対透過率でオゾン濃度を求めることができる。例えば、可視光光源11として可視光LEDを用いた場合、順電流−発光強度特性がほぼ比例関係にあり、かつ、変動も非常に小さいため、可視光LEDを駆動する電流を制御することで簡単に発光強度を変化することができる。
【0049】
また、ε(オゾンガスのモル吸光係数)は数式2に示すようにオゾンガスの温度T(K)と圧力P(Pa)に依存する。
【0050】
【数2】

【0051】
圧力が大きく変化しても、例えば、オゾン発生装置の最高運転圧力(〜0.2MPa)から、真空で用いられるオゾン処理槽の圧力近傍(〜数百Pa)まで変動するとした場合、可視光光源5の発光強度をオゾンガスの圧力やオゾン濃度に応じて変化させることで、可視光の相対透過率I/Iの計測誤差が小さい領域で測定するとよい。
【実施例1】
【0052】
図1に示すように、耐オゾン性のSUS316やSUS304などの筒を遮光容器13として用い、そこにオゾンガス入口5とオゾンガス出口17を設けるとともに、温度センサー6と圧力センサー7を取り付け、さらに、一対の光透過窓4と8を対向して設け、一方の光透過窓4の外部から外光を遮光器3で遮りつつ可視光光源11を他方の光透過窓8に向け照射し、他方の光透過窓8の外部に外光を遮光器9で遮りつつ可視光光源11に受光面を向けて受光素子18を設置する。
【0053】
勿論、図示はしていないが、、可視光光源11と受光素子18間に反射鏡やハーフミラーなどを用いた光学系を組み込むことも可能である。
【0054】
可視光光源11としてはランプ、蛍光灯、LED、レーザなどが使用できるが、可視光LEDは最も安価でその出力も十分大きく、かつ、駆動電流と発光強度の関係が比例に近く取り扱いも簡単である。
【0055】
特に、オゾンガスの吸光が可視光領域で最も大きくなる550〜630nmnm付近に最大発光強度を有する橙色LEDを用いるとよい。
【0056】
受光素子18としては、照度センサー、フォトダイオード、フォトICならびにフォトマル、分光器などが使用できるが、半導体センサー(照度センサー、フォトダイオード、フォトICなど)は安価で、取り扱いが簡単である。特に、550〜630nmnm近傍の感度がよいものを選ぶとよい。
【0057】
また、数式2に示したように、正確なオゾンガス濃度を計測するためには温度センサー6と圧力センサー7をオゾン濃度計測用光学系14に取り付けるとよい。
【0058】
まず、オゾン濃度計測用光学系14に酸素ガスを供給し、例えば、可視光光源11として可視光LEDを用いた場合、このLEDを駆動する駆動電流10と温度センサー6で求められた温度T、圧力センサー7で求められた圧力Pをパラメータとして受光素子18で検出する光強度Iの関係を計測しておき、オゾンガス濃度計制御・算出部2にデータとして記憶させておく。
【0059】
また、オゾン濃度計測用光学系14に既知の濃度のオゾンガス16を導入し、受光素子11で検出する光強度Iとその時の駆動電流10、温度センサー6で求められた温度T、圧力センサー7で求められた圧力Pから前述の酸素での光強度Iを求め、I/Iからオゾン濃度をオゾンガス濃度計制御・算出部2で数式1ならびに数式2を用いて求めるεを求めておく。これを駆動電流10、温度Tならびに圧力Pの関数としてオゾンガス濃度計制御・算出部2にデータとして記憶させておく。
【0060】
オゾン濃度が未知のオゾンガスのオゾン濃度を計測する場合は、オゾン濃度計測用光学系14に未知の濃度のオゾンガス16を導入し、受光素子11で検出する光強度Iとその時の駆動電流10、温度センサー6で求められた温度T、圧力センサー7で求められた圧力Pから前述の酸素での光強度Iならびにεオゾンガス濃度計制御・算出部2に記憶させたデータから求め、I/Iからオゾン濃度をオゾンガス濃で数式1ならびに数式2を用いて求めることができる。
【0061】
この時、オゾンガスに可視光が吸収されてIが小さくなり過ぎないように駆動電流3を制御すると、オゾン濃度の計測誤差を小さくすることができる。
【実施例2】
【0062】
図2に示すようにオゾンガスと酸素ガスを交互に、あるいは、条件を変えたときに酸素ガスをオゾン濃度計測用光学系14に供給してIを計測し、可視光光源11の発光強度や受光素子18の信号強度が低下していないことを確認することで、信頼性の高いオゾン濃度計測装置とすることができる。
【実施例3】
【0063】
図3の実施例は、オゾン入口31にオゾンガス流入制御バルブ32が設けられ、オゾンガス出口34にオゾンガスの流出を制御するバルブ、例えば、マスフローコントローラ33を設けたオゾン貯留槽36の一部に可視光光源11から受光素子17に向け照射される可視光光路15が、オゾン貯留槽35の一部を通過するように形成する。
【0064】
オゾン貯留槽35は、オゾンガス圧を高くすることで、オゾンガスを貯留するもので、例えば、オゾン発生装置の最高運転圧力(〜0.2MPa)から、真空で用いられるオゾン処理槽の圧力近傍(〜数百Pa)まで変動する場合もある。
【0065】
オゾン濃度の計測方法は実施例1に記載のものと同様であるが、マスフローコントローラ33でオゾン処理槽に供給するオゾンガス濃度が常に計測されて供給されるため、オゾン処理槽での処理プロセスでオゾン濃度不足が生じないことを確認しながら処理を行うことができ、オゾン処理プロセスの信頼性を上げることができる。
【実施例4】
【0066】
図4に示す実施例はオゾンガス貯留槽36のオゾンガス流出通路42をオゾン濃度計の遮光容器13とそれに光学系と設置してオゾン濃度計測用光学系14としたものである。
【0067】
オゾン濃度計測方法、ならびに、本実施例の効果は実施例3と同様である。
【0068】
400g/Nm以上のオゾンガスを貯留する場合は、オゾンの爆発が発生する可能性もあり、圧力リリーフバルブ41をオゾンガス貯留槽に取り付けておくと、万が一発生するオゾン爆発によってオゾンガス貯留槽やオゾンガス濃度計測部が破壊されることを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明はオゾンガスの濃度、特に、200g/Nm以上の高濃度オゾンガスを計測する方法と計測装置として、従来から用いられている紫外線吸光法によるオゾン濃度計測方法ならびに装置に、その構成が単純且つ安価であることから容易に置き換えることができる。
【0070】
また、高濃度オゾンガスを貯蔵し供給するオゾンガス貯留槽の供給オゾン濃度が光解離により低下することなく、常時、モニターしながらオゾンガスを供給できるため、特に、オゾン濃度の信頼性が要求される酸化膜作製プロセスなどの高濃度オゾンガス処理槽に取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 可視光光源駆動電源
2 オゾンガス濃度計制御・算出部
3 遮光器
4 光透過窓
5 オゾンガス入口
6 温度センサー
7 圧力センサー
8 光透過窓
9 遮光器
10 駆動電流
11 可視光光源
12 フィルター
13 遮光容器
14 オゾンガス濃度計測用光学系
15 可視光光路
16 オゾンガス
17 オゾンガス出口
18 受光素子
21 オゾンガス
22 酸素ガス
23 入口切換バルブ
24 出口切換バルブ
25 オゾン処理槽へ
26 排気
31 オゾンガス入口
32 オゾンガス流入制御バルブ
33 マスフローコントローラ
34 オゾンガス出口
35 オゾンガス貯留槽容器
36 オゾンガス貯留槽
41 圧力リリーフバルブ
42 オゾンガス流出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光した容器中のオゾンガスに、可視光光源からの光を照射しそれに対向して置いた受光素子により、オゾンガスの吸光度を測定することによりオゾン濃度を計測することを特徴とするオゾン濃度計測方法。
【請求項2】
遮光した容器中に酸素ガスとオゾンガスを交互に導入し、酸素ガスとオゾンガスの吸光度を交互に測定することでオゾン濃度を求めることを特徴とする請求項1に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項3】
該可視光光源の発光スペクトルが550〜630nmnm付近に最大発光強度を有する可視光LED又は半導体レーザであることを特徴とする請求項1から2に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項4】
該可視光光源から該受光素子間の光路中に550〜630nm間に光を通過させる帯域を有するフィルターを設けたことを特徴とする請求項1から3に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項5】
該可視光光源が連続的に一定の強度で連続的に発光することを特徴とするとする請求項1から4に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項6】
該可視光光源がパルス状に点滅し、若しくは、一定間隔で点灯と消灯を繰り返すことを特徴とするとする請求項1から4に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項7】
該可視光光源の発光強度が周期的に変動することを特徴とするとする請求項1から4に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項8】
該可視光光源の発光強度が遮光した容器内のオゾンガスの濃度や圧力に応じて変動することを特徴とする請求項1から7に記載のオゾン濃度計測方法。
【請求項9】
遮光した密閉容器に、オゾンガスの流入口と流出口を設けるとともに、温度センサーと圧力センサーを取り付け、さらに、一対の光透過窓を対向して設け、一方の光透過窓の外部から外光を遮りつつ可視光光源を他方の光透過窓に向け照射し、他方の光透過窓の外部に外光を遮りつつ可視光光源に受光面を向けて受光素子を設置することを特徴とするオゾン濃度計測装置。
【請求項10】
該密閉容器のオゾンガス流入口に酸素ガスとオゾンガスを交互に導入するための切換バルブを設けたことを特徴とする請求項9に記載のオゾン濃度計測装置。
【請求項11】
オゾンガス貯留槽に設けたオゾンガス流入口およびオゾンガス流出口にオゾンガスの流入流出を制御するバルブが設けられ、また、オゾンガス貯留槽の一部、または、その流路に可視光光源の光路を形成するように1対の窓を設け、一方の光透過窓の外部から可視光光源を他方の光透過窓に向け照射し、他方の光透過窓の外部に該可視光光源に受光面を向けて該可視光光源からの光のみを受光するように受光素子を設置し、オゾンガス貯留槽に温度センサーと圧力センサーを設けたことを特徴とするオゾン濃度計測装置付きオゾンガス貯留槽。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−132827(P2012−132827A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286192(P2010−286192)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(595172078)
【Fターム(参考)】