説明

オゾン濃縮装置

【課題】固形の窒素酸化物などの不純物がオゾンを濃縮するオゾン分離部へ流入するのを効果的に防止できるオゾン濃縮装置を提供することを目的とする。
【解決手段】予備冷却部44において、オゾンの凝固点よりも高温で、且つオゾン含有ガス中に含まれる窒素酸化物の凝固点よりも低温とするので、窒素酸化物は、予備冷却部44で捕捉される。また、予備冷却部44で捕捉できなかったり、一旦捕捉されたものが剥離飛散して予備冷却部44から窒素酸化物の氷片(微粒子)として漏出した場合には、フィルタ部45で捕捉されて除去されるので、オゾン分離部43への窒素酸化物の侵入を効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電法などによって生成されたオゾン含有ガス中のオゾンを濃縮するオゾン濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを発生させる方法としては、無声放電法や電解法などがあるが、工業的に大量のオゾンを生成する方法としては、無声放電法が普及している。無声放電とは、空気中または誘電体を挟んだ二つの電極間に、交流の高電圧を通電すると生じる放電現象である。そして無声放電法は、無声放電中に空気または、酸素を通過させ、放電プラズマ中のイオンを持つエネルギーによって酸素をオゾン化する方法である。
【0003】
オゾンの用途は多伎にわたっており、工業用途、例えば、電子部品洗浄用のオゾン水として利用する場合には、高濃度のオゾンガスを生成する必要がある。オゾナイザで生成されたオゾン含有ガス中のオゾンを濃縮して高濃度のオゾンガスを生成する装置については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の装置は、無声放電方式によって生成したオゾンを沸点以下にまで冷却して液体オゾンと非凝縮気体とを分離する冷却チャンバー(オゾン分離部)を備えている。また、無声放電方式にてオゾンを生成する場合には、原料となる酸素に加えて微量の窒素を混入する必要があり、この窒素は無声放電によって窒素酸化物となり、この窒素酸化物が液化チャンバーに達すると不具合を生じさせる虞がある。そのため、液化チャンバーの前段には、窒素酸化物を凝固させて捕捉するコールドトラップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4285885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コールドトラップに凝固した窒素酸化物が堆積した場合、振動や衝撃などの外的な要因によって堆積物が崩れ、飛散する可能性がある。従来の装置では、このような事象について何ら考慮されておらず、後段に設けられた液化チャンバーなどのオゾン分離部への窒素酸化物の侵入を効果的に防止することができなかった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、固形の窒素酸化物などの不純物がオゾンを濃縮するオゾン分離部へ侵入するのを効果的に防止できるオゾン濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、オゾンナイザで生成されたオゾン含有ガス中のオゾンを濃縮するオゾン分離部を備えたオゾン濃縮装置において、オゾン含有ガスは、オゾンよりも凝固点の高い不純物を含有し、オゾン含有ガスをオゾンの凝固点よりも高温で、且つ不純物の凝固点よりも低温とすることで不純物を凝固させて捕捉する冷却捕捉部と、冷却捕捉部とオゾン分離部との間に配置されると共に、冷却捕捉部を通過したオゾン含有ガス中の固形物を捕捉するフィルタ部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
オゾン含有ガス中に含まれる不純物のうち、オゾンよりも凝固点の高い窒素酸化物などの不純物は、冷却捕捉部で凝固し、付着するなどして捕捉される。冷却捕捉部で捕捉された不純物は、冷却捕捉部において堆積していくが、外的な作用によって部分的に崩れて飛散し、オゾン含有ガス中の微細な固形物となって後段に流出する可能性がある。しかしながら、上記構成では、不純物の微細な固形物が飛散したとしてもフィルタ部で捕捉されて除去されるので、オゾン分離部への窒素酸化物などの不純物の侵入を効果的に防止できる。
【0009】
さらに、フィルタ部を冷却する冷却手段を更に備えると好適である。フィルタ部を配置する目的は、冷却捕捉部から飛散して流出した固形物を主体的に捕捉することである。フィルタ部の温度が上昇して不純物が気化してしまうと、フィルタ部での不純物の捕捉効率は低下する。しかしながら、上記構成によれば、冷却手段によってフィルタ部を不純物の凝固点以下にまで確実に冷却することができるので、フィルタ部での不純物の効果的な捕捉が可能になる。
【0010】
さらに、冷却捕捉部を加熱して不純物を気化させる加熱手段と、冷却捕捉部及びフィルタ部に残留する不純物を追い出すパージガスを冷却捕捉部及びフィルタ部に供給するパージガス供給部と、パージガスによって追い出された不純物を排出する排出部と、を更に備えると好適である。冷却捕捉部の長期の使用によって機能が低下した場合には、冷却捕捉部を加熱することで冷却捕捉部で捕捉した不純物を気化させ、さらに、パージガス供給部によって冷却捕捉部にパージガスを供給することで、不純物を冷却捕捉部から追い出し、排出部から排出することができる。その結果として、冷却捕捉部の機能回復を効率よく実行することができる。
【0011】
さらに、パージガス供給部は、パージガスとしてオゾナイザで生成されたオゾン含有ガスを供給すると好適である。冷却捕捉部の機能回復を図った後で復旧する際に、冷却捕捉部内に残留するパージガスがオゾン含有ガスであれば、復旧初期段階におけるオゾン濃縮の効率低下を抑制できる。
【0012】
さらに、冷却捕捉部とフィルタ部との組み合わせからなる冷却ユニットを複数備え、複数の冷却ユニットは、それぞれ独立した経路を介してオゾナイザ及びオゾン分離部に接続されると共に、複数の冷却ユニットそれぞれの経路を切り替える冷却ユニット切替手段を備えると好適である。一の冷却ユニットでの連続した運転によって、その一の冷却ユニットの冷却捕捉部やフィルタ部の機能が低下した場合、冷却ユニット切替手段によって経路を切り替えることで、他の冷却ユニットに引き継いで連続した運転が可能になり、効率的なオゾン濃縮が可能になる。
【0013】
また、一の冷却捕捉部に接続された複数のフィルタ部を備え、冷却捕捉部と複数のフィルタ部それぞれとを接続する経路を切り替えるフィルタ部切替手段を備えると好適である。一のフィルタ部を利用した連続運転によって、その一のフィルタ部の機能が低下した場合、フィルタ部切替手段によって経路を切り替えることで、他のフィルタ部に引き継いで連続運転が可能になり、効率的なオゾン濃縮が可能になる。
【0014】
さらに、オゾン分離部は、オゾン含有ガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却して液体オゾンと非凝縮気体とに分離する液化分離部と、液化分離部により分離された液体オゾンを加熱して濃縮オゾンガスを得る気化部と、液化分離部と気化部とを液封可能に連絡する管路と、を有すると好適である。液化分離部と気化部とは液封を可能とする管路のみで接続されており、気化部で気化されることで減った分の液体オゾンが、液化分離部から管路を通じて気化部に供給される。その結果として、連続的に濃縮オゾンガスを生成できるようになり、例えば、一つのチャンバー内でのオゾンの液化分離と液体オゾンの気化とを間欠的に行う装置に比べて、濃縮オゾンガスの生成効率の向上に有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却捕捉部から流出した窒素酸化物などの固形の不純物がオゾン濃縮部へ侵入するのを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電子部品洗浄装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るオゾン濃縮装置を概略的に示す図である。
【図3】オゾン濃縮装置のNO除去部を示す側面図である。
【図4】冷却捕捉部の先端部分を拡大して示す部分断面図である。
【図5】フィルタ部内に設置されたフィルタ本体の側断面図である。
【図6】フィルタ本体の平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】オゾン濃縮装置の運転状態を概略的に示す図であり、(a)は濃縮オゾンガスの生成運転を示す図であり、(b)はNO除去部の清掃運転を示す図である。
【図9】フィルタ部の有無による二窒素酸化物の除去率の違いを示すグラフである。
【図10】本発明に第2実施形態に係るオゾン濃縮装置を概略的に示す図である。
【図11】本発明に第3実施形態に係るオゾン濃縮装置を概略的に示す図である。
【図12】本発明に第4実施形態に係るオゾン濃縮装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るオゾン濃縮装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、まず、第1の実施形態に係るオゾン濃縮装置に関し、電子部品洗浄装置に適用された場合を例に説明する。
(電子部品洗浄装置)
【0018】
図1に示されるように、電子部品洗浄装置1は、オゾンガス生成装置73を用いて高濃度オゾンガスを生成し、この高濃度のオゾンガスから生成した高濃度のオゾン水を半導体ウエハ、液晶、太陽電池、有機EL、プリント基板などの電子部品の表面に向けて噴射して洗浄する装置である。オゾンガス生成装置73は、オゾンガスを発生させるオゾナイザ10と、オゾナイザ10で発生したオゾン含有ガスを濃縮する濃縮部30と、オゾナイザ10の作動や濃縮部30での流路の切り替えなどの制御を行う制御装置20とを備えている。更に電子部品洗浄装置1のオゾン水生成装置71は、濃縮オゾンガスを生成するオゾンガス生成装置73と、このオゾンガスを超純水に溶解させて高濃度オゾン水を生成する溶解部50と、を備えている。そして、洗浄装置1は、このオゾン水生成装置71と、オゾン水生成装置71で得られた高濃度オゾン水で電子部品の表面を洗浄する洗浄部70と、を備えている。なお、本実施形態では、制御装置20及び濃縮部30によってオゾン濃縮装置80Aが構成される。
【0019】
電子部品洗浄装置1は、酸素タンク3と、窒素タンク5とを備えている。オゾナイザ10には、酸素タンク3からラインL1を通じて酸素が供給される。また、ラインL1には、窒素タンク5からの窒素ガス供給ラインが合流しており、酸素ガスに微量の窒素ガスが混入されてオゾナイザ10に導入される。オゾナイザ10は、酸素ガスを原料として放電方式(「無声放電方式」ともいう)によりオゾン含有ガスを生成する。このオゾナイザ10では、10vol%程度の比較的低濃度のオゾン含有ガス(約90vol%の酸素ガスと約10vol%のオゾンガスとの混合気体)が生成される。また、原料の酸素ガスに微量混入された窒素ガスに起因して、オゾナイザ10で生成されたオゾン含有ガス(非濃縮オゾンガス)中には微量の窒素酸化物(NOx)ガスが含まれる。オゾナイザ10から送出される非濃縮オゾンガスは、ラインL2を通じて濃縮部30に導入される。
【0020】
濃縮部30は、オゾナイザ10で生成される非濃縮オゾンガスを濃縮し、ほぼ100vol%の高濃度のオゾンガス(濃縮オゾンガス)を生成するものである。図2にも示されるように、濃縮部30は、真空断熱チャンバ31内に設けられたNOx除去部32と、ガス冷却部33と、分離タンク34と、気化器35と、熱交換部36と、を備えている。チャンバ31は、排気ポンプ37によって真空引きされる。なお、ガス冷却部33及び分離タンク34によって液化分離部42が構成され、液化分離部42及び気化器35によってオゾン分離部43が構成される。
【0021】
ラインL2からの非濃縮オゾンガスは、濃縮部30のNOx除去部32に導入される。NOx除去部32は、導入された非濃縮オゾンガスを、NOxの凝固点以下にまで冷却して、NOxを固化させて捕捉し、非濃縮オゾンガスから分離除去する。NOxよりも凝固点が低い酸素及びオゾンは、気体の状態でNOx除去部32を通過し、ラインL31を通じてガス冷却部33に導入される。一方、NOx除去部32で捕捉されたNOxは、NOx除去部32の清掃運転時に昇温されて再び気化し、パージガス(例えば、酸素、窒素または非濃縮オゾンガスなど)に追い出されるようにしてラインL21から排ガスラインL20に排出される。なお、ラインL31とラインL21の流路の切り替えは、運転状態に合わせて適宜に実行される。
【0022】
ガス冷却部33では、NOx除去後の非濃縮オゾンガスを、オゾンの融点以下にまで冷却して、オゾンを液化させる。この液体オゾンは、ラインL32を通じて分離タンク34に導入され、当該分離タンク34の下部に溜まる。一方、オゾンよりも融点が低い酸素等は、気体の状態でガス冷却部33及びラインL32を通過し、分離タンク34の上部に溜まる。分離タンク34上部に溜まる気体は、主に酸素であり、ラインL33を通じて分離タンク34外に送出される。
【0023】
前述のとおり、NOx除去部32とガス冷却部33においては、非濃縮オゾンガスの冷却のための低熱源が必要である。この濃縮部30では、極低温の低熱源としてクライオポンプ38を備えている。クライオポンプ38のクライオヘッド38aは、チャンバ31内部に挿入されており、クライオヘッド38aとNOx除去部32とが伝熱銅板39aで接続されている。また、クライオヘッド38aとガス冷却部33とが伝熱銅板39bで接続されている。この構成により、NOx除去部32とガス冷却部33とを、極低温に冷却することが可能となり、前述のNOx除去及びオゾン液化が実現される。
【0024】
分離タンク34の底部には、U字管41の一端が接続されている。このU字管41の他端は、気化器35の底部に接続されている。そして、分離タンク34内に溜まった液体オゾンは、U字管41内にも充填される。U字管41は、分離タンク34内の液体オゾンを気化部35に導くためのものであると共に、当該液体オゾンによって分離タンク34上部に溜まる酸素ガスと気化器35側とを液封するものである。U字管(管路)41によって分離タンク34と気化器35とは液封可能に連絡される。
【0025】
このU字管41内には、毛細管力を発現し、U字管41内の液体オゾンを気化器35内に導く充填材41aが充填されている。ここでは、充填材41aは金網状のものが用いられ、毛細管力を発現すべく密に構成されていると共に、気化器35の底部の入口35aを通して気化器35内に進入する構成とされている。この構成により、U字管41内の液体オゾンは、入口35aを通じて気化器35内に徐々に導入されていく。なお、この充填材41aとしては、金網状の充填材に限定されるものではなく、例えば密に配置される細い金属材料やガラス繊維、例えば多数配置される細かいシリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、毛細管力を発現する充填材であればよい。
【0026】
気化器35は、U字管41からの液体オゾンを気化するためのもので、円筒状の胴部を有し、下部が下細りの擂り鉢状に閉じられて下端に入口35aが設けられていると共に、上端にオゾンガス出口35bが設けられている。この気化器35の入口35aは、分離タンク34における液体オゾンの液面以上の高さに位置する。この入口35aを通して内部に進入する金網状の充填材41aは、液体オゾンを毛細管力により気化器35内に送り込むべく、当該気化器35の底部内面に沿って広がるように配置されている。
【0027】
気化器35内部に進入した充填材41aの上方には、加熱用のヒータ35cが設けられている。ヒータ35cは、気化部35の底部に供される液体オゾンを加熱して気化させる。前述のとおり、気化器35内には、酸素が分離除去された液体オゾンが導入されるので、気化器35内で気化されるオゾンは、ほぼ100vol%の濃度である。また、気化器35には、ラインL12を介して、酸素タンク3からの酸素が希釈用酸素ガスとして導入される。液体オゾンの気化で得られたほぼ濃度100vol%のオゾンは、ラインL12からの希釈用酸素ガスによって気化器35上部で適宜希釈され、オゾンガス出口35b及びラインL3を通じて、濃縮オゾンガスとして送出される。このラインL3の濃縮オゾンガスは、溶解部50に導入される。また、この濃縮オゾンガスの一部の余剰分は、ラインL3から分岐したラインL25を通じて排ガスラインL20に排出される。また、ラインL3には、酸素タンク3からのラインL13も合流しており、ラインL3の濃縮オゾンガスは、ラインL13からの酸素ガスによっても必要に応じて希釈されて、溶解部50に導入される。なお、本実施形態では、気化器35で得られたオゾンをラインL12からの希釈用酸素ガスで主体的に希釈するため、ラインL13を省略することも可能である。
【0028】
なお、ラインL12は、気化器35よりも上流側で熱交換部36を通過している。熱交換部36では、分離タンク34からラインL33を通じて排出される排酸素ガスとラインL12の希釈用酸素ガスとの熱交換が行われる。これにより、希釈用酸素ガスは、熱交換部36で冷却され温度調整された後に気化器35内に導入される。また排酸素ガスは、熱交換部36から、ラインL23を通じて排ガスラインL20に排出される。
【0029】
図1に示すように、溶解部50は、ラインL3から導入される濃縮オゾンガスとラインL11から導入される超純水とを接触させる溶解モジュールを備えている。溶解モジュールは、高分子膜、エジェクタ、マイクロリアクタなどオゾンガスを水に溶解させる装置をいう。溶解モジュールにおいては、超純水に濃縮オゾンガスが溶解し、高濃度のオゾン水が生成される。なお、超純水に溶解されなかった余剰の濃縮オゾンガスは、ガスラインL27を通じて排ガスラインL20に排出される。一方、オゾン水は、ラインL4を通じて洗浄部70に導入される。
【0030】
洗浄部70は、ラインL4から導入したオゾン水を、ノズルから電子部品表面に向けて噴射する。このようなオゾン水の噴射によって、電子部品表面に形成されたレジストが洗浄除去される。すなわち、洗浄部70は、電子部品のレジスト除去の用途で用いられる。
【0031】
なお、前述のように、洗浄装置1の各部で発生する不要なガス(ラインL21の排NOxガス、ラインL23の排酸素ガス、ラインL25の排オゾンガス、及びL27の排オゾンガス)は、すべて合流して排ガスラインL20を通過する。そして、このラインL20の不要ガスは、触媒分解装置7と排ガス冷却器8とを通過し、排気ポンプ9によって系外に排出される。触媒分解装置7は、不要ガスを例えば活性炭などの触媒と接触させることにより、不要ガス中のオゾンガスを比較的無害な酸素ガスに分解する。排ガス冷却器8は、不要ガスを大気に排出する前に当該不要ガスの温度調整を行う。
(オゾン濃縮装置)
【0032】
次に、オゾン濃縮装置80Aについて、濃縮部30に設けられたNO除去部32を中心に更に詳しく説明する。オゾナイザ10により放電方式(「無声放電方式」ともいう)でオゾン含有ガスを生成する場合、超高純度の酸素ガスを原料とするとオゾンの発生が不安定になる。そのため、微量(0.05%〜0.1%程度)の窒素を添加してオゾンの発生量を安定化している。この時、オゾナイザ10では、オゾンの発生と共に、微量の窒素酸化物NO(例えば、二窒素酸化物NO)が発生し、また、超高純度の酸素ガスであってもごく微量の水蒸気を含んでいる可能性がある。窒素酸化物NOや水蒸気などの不純物は後段の気化器35に侵入すると不具合を引き起こす虞がある。そこで、本実施形態では、NO除去部32によって、これらの不純物を除去している。
【0033】
図3に示されるように、NO除去部32は、オゾン含有ガス中の窒素酸化物や水蒸気などの不純物を凝固させ、固体として捕捉する予備冷却部(冷却捕捉部)44と、予備冷却部44から漏出する微粒子(固体化物)を捕捉するフィルタ部45と、を備えている。なお、フィルタ部45は、予備冷却部44に隣接した後段に配置されているので、結果として、予備冷却部44とオゾン分離部43との間に配置された構成を実現している。
【0034】
予備冷却部44は(図4参照)、管群の冷却熱交換によってオゾン含有ガスを冷却する構造となっている。つまり、予備冷却部44は、断面矩形で筒状の筐体部44aと、筐体部44a内を横断するように配置された複数のトラップ部44bと、を有する。筐体部44aは、ステンレス製であり、一方の端部が先細りの形状となってラインL2の管路に接続されている。また、筐体部44aの他方の端部には、下流側のフィルタ部45がフランジ接続されるフランジ部44cが設けられている。
【0035】
図4に示されるように、トラップ部44bは、ステンレス製のパイプ(以下、「冷却管」という)44dと、冷却管44dの内面に固定された銅棒44eとを有している。銅棒44eは、筐体部44aに沿って配置された伝熱銅板39aに伝熱可能に接続され、伝熱銅板39aは、クライオポンプ38のクライオヘッド38aに接続されている(図2参照)。クライオポンプ38の作動による冷熱は、伝熱銅板39a及び銅棒44eを介して冷却管44dに伝えられ、その結果として冷却管44dの表面は、オゾンの凝固点よりも高温で、且つ二窒素酸化物や水蒸気などの不純物の凝固点よりも低温(以下、「不純物凝固温度」という)となるような温度に保持されている。
【0036】
複数のトラップ部44bは、オゾン含有ガスの流れ方向に対してちどり状に配置されており、流れ方向の上流側から複数のトラップ部44bを見た場合に、隣接するトラップ部44bの冷却管44d同士の間隔(ピッチ)Dと冷却管44dの外径dとの比は、D/d<2となっている。複数のトラップ部44bは、例えば、筐体部44aの長手方向に沿って20段〜50段程度配置されている。
【0037】
トラップ部44bの冷却管44dが不純物凝固温度に保持されているので、二窒素酸化物や水蒸気などの不純物は凝固し、小さな霜状の氷となって冷却管44dの表面に付着堆積される。また、予備冷却部44のトラップ部44bはちどり状で、且つ多段に配置されているので、オゾン含有ガスのシートパスが生じ難い構造になっている。また、筐体部44a内を流れるオゾン含有ガスの流速は、筐体部44aの断面当たり1m/s以下の低流速になっているため、不純物のほとんどはトラップ部44bで捕捉される。
【0038】
図3、図5〜図7に示されるように、予備冷却部44の後段に配置されたフィルタ部45は、予備冷却部44の筐体部44aにフランジ接続されるフィルタケース45aと、フィルタケース45a内に設置されたフルイフィルタ(以下、「フィルタ本体」という)45bと、を備えている。フィルタケース45aはステンレス製の筐体であり、内部が、予備冷却部44の筐体部44a内に連通している。フィルタケース45aの外壁には、オゾン含有ガスの排出口となる排出管45cが固定されており、フィルタ本体45bを通過したオゾン含有ガスは、排出管45cを通過してラインL22に排出される。
【0039】
フィルタケース45aの内側には、排出管45cの上端が嵌め込まれて固定されるようにフィルタホルダ45dが設置されており、フィルタホルダ45dには、複数のフィルタ本体45bが立設されている。フィルタホルダ45dは、中空平板状のブロック体であり、排出管45cはフィルタホルダ45dの内部空間S1に連通している。フィルタホルダ45dの裏面はフィルタケース45aの壁内面に接して固定されており、表面側には、フィルタ本体45bの内部とフィルタホルダ45dの内部空間S1とを連通する複数の流出孔45eが形成されている。
【0040】
フィルタ本体45bは、逆U字状のステンレス製の枠部材45fと、枠部材45fを両側から挟むように設置された一対のメッシュ板45gと、隣接する枠部材45f同士の間に配置されてメッシュ板45gを支える押え板45hとを有する。枠部材45fは、両端部がフィルタホルダ45dに固定されてフィルタホルダ45d上に立設されている。一対のメッシュ板45gは両側から枠部材45fを挟むように配置され、さらに、フィルタホルダ45d上の押え板45hによって支えられている。メッシュ板45gの目開きは20μm〜100μm程度であり、メッシュ板45gを透過したオゾン含有ガスは(図7参照)、枠部材45f及び一対のメッシュ板45gで囲まれた内側空間S2に一旦入り、フィルタホルダ45dの流出孔45e、フィルタホルダ45dの内部及び排出管45cを通過して排出される。
【0041】
ここで、フィルタ部45を設ける意図について説明する。本実施形態に係るオゾン濃縮装置20では、オゾン含有ガスのみを液化させ、液化した液体オゾンを気化器35に移送して気化器35で所定濃度の濃縮オゾンガスを生成する。このオゾン濃縮装置20では、万が一、何らかの要因によって気化器35内にオゾントリガーが侵入すると、濃縮オゾンガスは急激な自己分解反応を起し、その自己分解反応によって発生する熱で、オゾン分解反応が連鎖して急激な圧力上昇を引き起こす可能性がある。
【0042】
一方で、オゾン含有ガス中には、上述のように窒素酸化物や水蒸気などの不純物が含まれており、これらの不純物は、一旦は、予備冷却部44にて捕捉され、オゾン含有ガス中から分離除去される。しかしながら、予備冷却部44で捕捉された固形の不純物の量が増え、トラップ部44bでの堆積厚が大きくなった場合に、衝撃や振動などの外的な要因によって不純物の微粒子(微細な氷片)が剥離離散し、オゾン含有ガスの流れに随伴して予備冷却部44から漏出する可能性がある。仮に、フィルタ部45を設けていなければ、予備冷却部44から漏出した不純物の微粒子は、後段のガス冷却部33、分離タンク34に侵入する。ガス冷却部33や分離タンク34では、−150℃〜−160℃程度の極低温でオゾンを液化するため、侵入した不純物は固体化する。すると、この不純物がオゾントリガーとなる可能性もある。
【0043】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aによれば、フィルタ部45を設けることで、例え予備冷却部44から不純物が漏出したとしても、それらの不純物はフィルタ部45で捕捉されるため、後段のガス冷却部33や分離タンク34への侵入を阻止することができる。その結果として、気化器35での急激な圧力上昇を回避してオゾン濃縮装置80Aでの濃縮オゾンガスの安定した生成を実現し、運転時間の長時間化を図ることが可能になる。
【0044】
なお、オゾン含有ガス中に含まれる不純物、例えば、二窒素酸化物の濃度は、窒素の添加率やオゾナイザ10でのオゾン含有ガス当りの投入電力によって変化するが、通常は10ppm〜30ppm程度となる。この程度の微量の二窒素酸化物が凝固する場合、例えば、配管の外側をクライオポンプ等で冷却する予冷チャンバー構造を採用すると、非常に大きな予冷チャンバーを設ける必要が生じ、さらに、予冷チャンバー構造では、チャンバー内のオゾン含有ガスの流れによって不純物の微粒子が舞い上がり易い環境となってしまい、その結果として後段のガス冷却部33や分離タンク34に侵入し易くなってしまう。一方で、本実施形態に係る予備冷却部44では、管群の冷却熱交換によってオゾン含有ガスを冷却する構造となっているため、小型化に有利であり、さらに、一旦、捕捉した不純物も剥離などの特段の事情が生じない限り、漏出し難い。
【0045】
NO除去部32の出口側、すなわち、フィルタ部45の排出管45cにはライン(管路)L22が接続されている。ラインL22には、フィルタ部45のフィルタ本体45bよりも目の細かなフィルタエレメントによって微粒子を除去する排ガスフィルタ部46(図2参照)が設けられている。ラインL22は、途中で分岐し、一方がラインL21となり、他方がラインL31となっている。ラインL21には、流路を開閉するバルブ47が設けられている。バルブ47はチャンバー31外に配置されている。また、ラインL31には、流路を開閉するバルブ48が設けられている。バルブ48を開放する駆動モータ49は、チャンバー31の外に配置されている。
【0046】
NO除去部32の上流側と下流側とには、それぞれ温度センサーや圧力センサーなどの検出手段32aが配置されている。予備冷却部44のトラップ部44bに二窒素酸化物などの不純物が凝固して付着すると、トラップ部44bのステンレス製冷却管44dの伝熱効率が低下するため、検出手段32aで検出された温度によって、トラップ部44bに付着した不純物除去(NO除去部32の清掃)の必要性を判断することができる。また、トラップ部44bに付着堆積した不純物の量が増えると上流側と下流側とでの圧力差が大きくなるため、検出手段32aで検出された圧力差によって目詰まりを判断でき、不純物除去(NO除去部32の清掃)の必要性を判断することができる。
【0047】
NO除去部32の筐体部44aに沿って配置された伝熱銅板39aには、予備冷却部44を加熱するヒータ(加熱手段)81が接している。ヒータ81が作動して伝熱銅板39aを加熱すると、トラップ部44bの冷却管44dは昇温され、捕捉していた不純物が気化する。このタイミングで必要に応じてパージガスを供給するとNO除去部32に残留する不純物は、パージガスによって追い出され、NO除去部32の清掃を行うことができる。なお、パージガスは酸素ガス、窒素ガスを利用したり、またはオゾナイザを作動させてオゾン含有ガスを利用したりすることができる。
【0048】
制御装置20は、制御信号が送受信可能となるように有線または無線によってヒータ81に接続されており、ヒータ81の駆動及び停止を実行する。なお、制御装置20は、ガス冷却部33を加熱するヒータ82にも制御信号が送受信可能となるように接続されている。また、制御装置20は、検出手段32aに接続されており、検出手段32aで検出された温度や圧力を随時監視している。また、制御装置20は、酸素ガスを供給する流路を開閉するバルブ83または窒素ガスを供給する流路を開閉するバルブ84にも制御信号が送受信可能となるように接続されており、濃縮オゾンガスの生成運転中またはNO除去部32の清掃運転中において適宜にバルブ83,84の開閉を制御する。
【0049】
また、制御装置20は、ラインL31を開閉するバルブ48の駆動モータ49やラインL21を開閉するバルブ47にも、制御信号が送受信可能となるように有線または無線によって接続されており、NO除去部32を清掃する際のパージガスが通過するラインL21を開閉したり、また、オゾン含有ガスが通過するラインL31を開閉したりして流路の切り替えを適宜に実行する。また、制御装置20は、酸素ガスを供給する流路を開閉するバルブ83または窒素ガスを供給する流路を開閉するバルブ84にも制御信号が送受信可能となるように接続されており、濃縮オゾンガスの生成運転中またはNO除去部32の清掃運転中において適宜にバルブ83,84,47,48の開閉を行う。
【0050】
次に、NO除去部32の作用について図8を参照して説明する。図8は、オゾン濃縮装置80Aに関し、NO除去部32を中心にして運転状態と各要素との関係を概略的に示す図であり、(a)は濃縮オゾンガスの生成運転を示す図であり、(a)はNO除去部32の清掃運転を示す図である。
【0051】
図8(a)に示されるように、ラインL2からNO除去部32の予備冷却部44に導入されたオゾン含有ガス中には、二窒素酸化物(NO)や水蒸気などが不純物として含まれている。予備冷却部44は、不純物凝固温度となるように維持されている。従って、オゾン含有ガスが予備冷却部44を通過する場合、不純物は予備冷却部44にて捕捉され、オゾンガスや酸素ガスは捕捉されずにそのまま通過し、後段のオゾン分離部43に供給されて濃縮オゾンガスが生成される。
【0052】
ここで例えば、不純物がNO除去部32で捕捉されずに漏出したり、また、NO除去部32に衝撃や振動などの外的な要因が働き、予備冷却部44で捕捉された不純物の微粒子が剥離して飛散し、予備冷却部44から漏出したりした場合であっても、その微粒子はフィルタ部45で捕捉される。従って、NO除去部32からの微粒子の漏出を効果的に防止することができ、オゾン分離部43への侵入を防ぐことができる。
【0053】
長時間の運転を続けると、予備冷却部44やフィルタ部45で捕捉された不純物の量も増え、伝熱効率が低下したり、目詰まりが生じたりする。制御装置10は、一定時間の経過後、または検出手段32aで検出された温度や圧力差の値を監視しており、所定の閾値を超えると、図8(b)に示されるように、NO除去部32の清掃運転に切り替える。具体的には、オゾナイザ10の作動を停止させ、さらにラインL31を閉鎖して代わりにラインL21を開放する。さらに、ヒータ81によってNO除去部32を加熱し、予備冷却部44やフィルタ部45で捕捉されている不純物を気化させる。次に、パージガスをNO除去部32内に供給してNO除去部32内に残留する不純物ガスをラインL21に追い出す。
【0054】
なお、パージガスとしては、オゾナイザ10を作動してオゾン含有ガスを利用したり、または酸素ガスや窒素ガスを利用したりすることができる。ここで、パージガスとして酸素ガスを利用する場合には酸素タンク3がパージガス供給部に相当し、窒素ガスを利用する場合には窒素タンク5がパージガス供給部に相当し、オゾン含有ガスを利用する場合にはオゾナイザ10がパージガス供給部に相当する。なお、NO除去部32の清掃により、予備冷却部44やフィルタ部45の機能回復を図った後で復旧する場合、予備冷却部44やフィルタ部45内に残留するパージガスがオゾン含有ガスであれば、復旧初期段階におけるオゾン濃縮の効率低下を抑制できる。従って、復旧後の効率を考慮すると、パージガスとしてオゾン含有ガスを利用すると有利である。
【0055】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aによれば、予備冷却部44から不純物の微粒子(微細な固形物)が飛散したとしてもフィルタ部45で捕捉されて除去されるので、オゾン分離部43への窒素酸化物などの不純物の流入を効果的に防止できる。この効果を裏付ける実証実験の結果について図9を参照して説明する。
【0056】
図9は、フィルタ部の有無による二窒素酸化物の除去率の違いを示すグラフであり、(a)はフィルタ部を設けることなく、予備冷却部のみを設けたNO除去部(参考例)において、オゾン含有ガスに追加で二窒素酸化物を10ppm添加した場合を示す。また、図9(b)は予備冷却部及びフィルタ部を設けたNO除去部において、オゾン含有ガスに追加で二窒素酸化物を10ppm添加した場合を示し、(c)は予備冷却部及びフィルタ部を設けたNO除去部において、オゾン含有ガスに追加で二窒素酸化物を100ppm添加した場合を示し、(d)は、予備冷却部は設けるが、フィルタ部を設けなかったNO除去部(比較例)において、オゾン含有ガスに追加で二窒素酸化物を100ppm添加した場合を示す。また、図中のg1は、時間経過に伴うガス温度(K)を示すグラフであり、g2は、NO除去部から漏出する二窒素酸化物の濃度をガス温度(K)に対応付けて示すグラフである。
【0057】
図9(a)で示されるように、参考例では、例えば、ガス温度が200(K)を越えると、漏出する二窒素酸化物の濃度は20ppm以上になっており、ガス温度が高ければ二窒素酸化物はフィルタ部を透過して流出することが観測された。また、図9(d)で示されるように、比較例では、漏出する二窒素酸化物の濃度は極低温下(120K〜130K程度)でも40ppm以上になり、除去率が50%前後であることが観測された。一方で、図9(b),(c)に示されるように、本実施形態に係る各実施例では、極低温下において除去率が95%以上であることが観測された。特に、図9(c)で示す実施例では、予備冷却部から二窒素酸化物が漏出するように追加で100ppmもの二窒素酸化物を添加しており、その場合であっても95%以上の除去率を実現できているため、漏出した二窒素酸化物をフィルタ部で捕捉していることが推察された。
【0058】
また、本実施形態では、クライオポンプ(冷却手段)38に接続された伝熱銅板39aを介して、予備冷却部44及びフィルタ部45を冷却している。フィルタ部45を配置する目的は、予備冷却部44から飛散して流出した微粒子を主体的に捕捉することであるが、フィルタ部45の温度が上昇して不純物が気化してしまうと、フィルタ部45での不純物の捕捉効率は低下する。しかしながら、本実施形態によれば、クライオポンプ38によってフィルタ部45を不純物の凝固点以下にまで確実に冷却することができるので、フィルタ部45での不純物の効果的な捕捉が可能になる。
【0059】
また、本実施形態に係るオゾン分離部43は、オゾン含有ガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却して液体オゾンと非凝縮気体とに分離する液化分離部42と、液化分離部により分離された液体オゾンを加熱して濃縮オゾンガスを得る気化器34と、液化分離部42と気化器34とを液封可能に連絡するU字管41と、を有する。液化分離部42と気化器34とは液封を可能とするU字管(管路)41のみで接続されており、気化器34で気化されることで減った分の液体オゾンが、液化分離部42からU字管41を通じて気化器34に供給される。その結果として、連続的に濃縮オゾンガスを生成できるようになり、例えば、一つのチャンバー内でのオゾンの液化分離と液体オゾンの気化とを間欠的に行う装置に比べて、濃縮オゾンガスの生成効率の向上に有効である。
(第2実施形態)
【0060】
次に、図10を参照して第2実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bについて説明する。なお、本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bは、第1実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aと同一の構成や部材などを備えているため、同一の構成や部材などには第1実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aと同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0061】
オゾン濃縮装置80Bは、複数、例えば二つのNO除去部(冷却ユニット)90A,90Bを備えている。第1のNO除去部90Aと第2のNO除去部90Bとは、それぞれ独立したライン(経路)L5A,L5Bを介してオゾナイザ10に接続されており、また、それぞれ独立したライン(経路)L6A,L6Bを介してオゾン分離部43に接続されている。また、第1のNO除去部90Aと第2のNO除去部90Bとは、それぞれ独立した排ガスライン(経路)L7A,L7Bに接続されている。オゾナイザ10と第1のNO除去部90Aとを接続する上流側第1のラインL5A、オゾナイザ10と第2のNO除去部90Bとを接続する上流側第2のラインL5B、第1のNO除去部90Aとオゾン分離部43とを接続する下流側第1のラインL6A、第2のNO除去部90Bとオゾン分離部43とを接続する下流側第2のラインL6B、第1のNO除去部90Aに接続された第1の排ガスラインL7A及び第2のNO除去部90Bに接続された第2の排ガスラインL7Bのそれぞれには、流路を開閉するバルブ90a,91a、90b,91b、90c,91cが設けられている。制御装置20は、各バルブ90a〜90c、91a〜91cそれぞれに制御信号を送受信可能に接続されており、各バルブ90a〜90c、91a〜91cの開閉を制御することで、第1のNO除去部90A及び第2のNO除去部90Bそれぞれの経路を切り替える冷却ユニット切替手段として機能する。
【0062】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bでは、制御装置20が、例えば、オゾンナイザ10、第1のNO除去部90A及びオゾン分離部43を連絡する第1の経路を最初に開放して濃縮オゾンガスを生成する。次に、一定時間の経過や検出手段での検出値に応じて経路切り替えの要否を判断し、必要であると判断した場合には、第1の経路を閉じ、オゾンナイザ10、第2のNO除去部90B及びオゾン分離部43を連絡する第2の経路に切り替える。さらに、制御装置20は、第1の排ガスラインL7Aを開き、第1の経路に対しては第1のNO除去部90Aを加熱して不純物を気化させ、窒素ガスなどのパージガスを第1の経路に供給して不純物ガスを第1の排ガスラインL7Aに追い出す清掃運転を行う。次に、制御装置20によって経路切り替えが必要であると判断された場合には、第2の経路を閉じ、第1の経路に切り替えると共に、第2の排ガスラインL7Bを開き、第2のNO除去部90Bを加熱して不純物を気化させ、窒素ガスなどのパージガスを第2の経路に供給して不純物ガスを第2の排ガスラインL7Bに追い出す清掃運転を行う。
【0063】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bでは、例えば、第1のNO除去部90Aでの連続した濃縮オゾンガス生成運転によって、第1のNO除去部90Aの予備冷却部44やフィルタ部45の機能が低下した場合、制御装置(冷却ユニット切替手段)20によって経路を切り替えることで、第2のNO除去部90Bに引き継いで連続した運転が可能になり、効率的なオゾン濃縮が可能になる。
(第3の実施形態)
【0064】
次に、図11を参照して第3実施形態に係るオゾン濃縮装置80Cについて説明する。なお、本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Cは、第2実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bと同一の構成や部材などを備えているため、同一の構成や部材などには第2実施形態に係るオゾン濃縮装置80Bと同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0065】
オゾン濃縮装置80Cは、複数、例えば二つのNO除去部(冷却ユニット)90A,90Bを備えている。第1のNO除去部90Aと第2のNO除去部90Bとは、伝熱銅板39aを介してクライオポンプ38に接続されており、さらに、伝熱の経路を切り替える伝熱切替部91を備えている。伝熱切替部91は、例えば、回転自在な構成によって物理的に伝熱銅板39a,39a同士の接点を切り替える構成とすることができる。
【0066】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Cによれば、上述の第1及び第2の実施形態に係るオゾン濃縮装置80A,80Bと同様の効果を奏することができ、さらに、クライオポンプ38での冷熱を二つのNO除去部(冷却ユニット)90A,90Bのいずれか一方に効果的に伝達することができる。
(第4の実施形態)
【0067】
次に、図12を参照して第4実施形態に係るオゾン濃縮装置80Dについて説明する。なお、本実施形態に係るオゾン濃縮装置80Dは、第1実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aと同一の構成や部材などを備えているため、同一の構成や部材などには第1実施形態に係るオゾン濃縮装置80Aと同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0068】
オゾン濃縮装置80Dは、一の予備冷却部92に接続された複数、例えば、二つのフィルタ部93A,93Bを備えている。予備冷却部92、第1のフィルタ部93A及びオゾン分離部43とは第1のライン(経路)L8Aによって接続され、予備冷却部92、第2のフィルタ部93B及びオゾン分離部43とは第2のライン(経路)L8Bによって接続されており、第1のラインL8A及び第2のラインL8Bには、それぞれ流路を開放するバルブ94,95が設けられている。制御装置20は、各バルブ94,95に制御信号を送受信可能に接続されており、各バルブ94,95の開閉を制御することにより、フィルタ部切替手段として機能する。なお、第1及び第2のフィルタ部93A,93Bは、伝熱銅板39cを介してクライオポンプ(冷却手段)38のクライオヘッド(図示省略)に接続され、さらに、第1及び第2のフィルタ部93A,93Bには、それぞれヒータ81が設置されている。
【0069】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置90では、制御装置20が、例えば、第1の経路を最初に開放して濃縮オゾンガスを生成する。次に、一定時間の経過や検出手段での検出値に応じて経路切り替えの要否を判断し、必要であると判断した場合には、第1の経路を閉じ、第2の経路を開いて濃縮オゾンガスの連続して生成する。
【0070】
本実施形態に係るオゾン濃縮装置によれば、上述の第1の実施形態に係るオゾン濃縮装置と同様の効果を奏することができる。さらに、第1のフィルタ部93Aを利用した連続運転によって、第1のフィルタ部93Aの機能が低下した場合、制御装置(フィルタ部切替手段)20によって経路を切り替えることで、第2のフィルタ部93Bに引き継いで連続運転が可能になり、効率的なオゾン濃縮が可能になる。
【0071】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、オゾン分離部の態様としては、オゾン含有ガスを冷却して液体オゾンと非凝縮気体とに分離する態様に限定されず、例えば、圧力や温度に応じてオゾンを選択的に吸着する触媒を用いてオゾンガスと他の気体(酸素ガス)とを分離する態様であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、液化分離部と気化部(気化器)が分離した構成について説明したが、液化分離部と気化部が同一のチャンバで構成されている場合にも適用できる。更には、上記実施形態では、連続式でオゾン濃縮を行う場合について説明したが、単一のチャンバで液化と気化とを繰り返す所謂バッチ式のオゾン濃縮装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
3…酸素タンク(パージガス供給部)、5…窒素タンク(パージガス供給部)、10…オゾナイザ、20…制御装置(冷却ユニット切替手段、フィルタ部切替手段)、32,90A,90B…NO除去部(冷却ユニット)、35…気化器(気化部)、38…クライオポンプ、41…U字管(管路)42…液化分離部、43…オゾン分離部、44,92…予備冷却部(冷却捕捉部)、45,93A,93B…フィルタ部、80A,80B,80C,80D…オゾン濃縮装置、81…ヒータ(加熱手段)、L21…ライン(不純物ガスの排出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンナイザで生成されたオゾン含有ガス中のオゾンを分離濃縮するオゾン分離部を備えたオゾン濃縮装置において、
前記オゾン含有ガスは、前記オゾンよりも凝固点の高い不純物を含有し、
前記オゾン含有ガスを前記オゾンの凝固点よりも高温で、且つ前記不純物の凝固点よりも低温とすることで前記不純物を凝固させて捕捉する冷却捕捉部と、
前記冷却捕捉部と前記オゾン分離部との間に配置されると共に、前記冷却捕捉部を通過した前記オゾン含有ガス中の固形物を捕捉するフィルタ部と、
を備えたことを特徴とするオゾン濃縮装置。
【請求項2】
前記フィルタ部を冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオゾン濃縮装置。
【請求項3】
前記冷却捕捉部を加熱して前記不純物を気化させる加熱手段と、
前記冷却捕捉部及び前記フィルタ部に残留する前記不純物を追い出すパージガスを前記冷却捕捉部に供給するパージガス供給部と、
前記パージガスによって追い出された前記不純物を排出する排出部と、を更に備えることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン濃縮装置。
【請求項4】
前記パージガス供給手段は、パージガスとして前記オゾナイザで生成されたオゾン含有ガスを供給することを特徴とする請求項3記載のオゾン濃縮装置。
【請求項5】
前記冷却捕捉部と前記フィルタ部との組み合わせからなる冷却ユニットを複数備え、複数の前記冷却ユニットは、それぞれ独立した経路を介して前記オゾナイザ及び前記オゾン分離部に接続されると共に、複数の前記冷却ユニットそれぞれの経路を切り替える冷却ユニット切替手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のオゾン濃縮装置。
【請求項6】
一の前記冷却捕捉部に接続された複数の前記フィルタ部を備え、前記冷却捕捉部と複数の前記フィルタ部それぞれとを接続する経路を切り替えるフィルタ部切替手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のオゾン濃縮装置。
【請求項7】
前記オゾン分離部は、
前記オゾン含有ガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却して液体オゾンと非凝縮気体とに分離する液化分離部と、
前記液化分離部により分離された前記液体オゾンを加熱して濃縮オゾンガスを得る気化部と、
前記液化分離部と前記気化部とを液封可能に連絡する管路と、を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のオゾン濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−132064(P2011−132064A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292721(P2009−292721)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】