説明

オフセット作業機のスタンド装置

【課題】格納状態の農作業機を、安定させることができるスタンド装置を提供することを目的とする。
【解決手段】農作業機は、農作業機本体1のメインフレーム8にスタンドホルダ部25を設け、右スタンド装置3と左スタンド装置4をスタンドホルダ部25に取り付けた状態で格納状態となり、右側スタンド装置3と左側スタンド装置4の少なくとも一方のスタンド基部41は前側が内側を向き、スタンド基部41の後側は外側を向くようにスタンド装置4の立上り部42に固着され、スタンドホルダ部25に係合ピン45と止めピン26にて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体であるトラクタの後部に装着され、トラクタの動力により作業を行うオフセット作業機の格納状態時にこのオフセット作業機本体を支持するスタンド装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−124796号公報 従来、例えばオフセット作業機の前後方向に向かって、左右のスタンド基部を平行に構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のスタンド装置では、スタンド基部が平行であるため、オフセット作業機のように格納状態に作業機を位置させ、スタンド装置を取り付けると重量のバランスが悪くなり、必要以上に左右のスタンド装置の間隔をあけなければならないという問題があった。
【0004】
つまり、オフセット作業機のようにトラクタの左右いずれかの側方に位置させて作業を行う作業姿勢と、トラクタの後方位置に位置変更させて非作業状態である格納姿勢とに姿勢変更させる農作業機は、作業機の構造上重心を中央にすることが難しいため、スタンド装置で支持した場合バランスが悪くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、格納状態時に農作業機本体を支持するスタンド装置であって、前記農作業機本体のスタンドホルダ部に取り付けられ、前記農作業機の前後方向に位置する左右のスタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部は前側が内側を向き、スタンド基部の後側は外側を向くようにスタンドホルダ部に固定されているものである。
【0006】
請求項2に記載の農作業機は、スタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部は前側が内側を向き、スタンド基部の後側は外側を向くようにスタンド装置の立上り部に固着されているものである。
【0007】
請求項3に記載の農作業機は、スタンド装置を取り付けるためのスタンドホルダ部がメインフレームに対してスタンドホルダ部の開口部が内側を向くように固着されているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、農作業機の前後方向に位置する左右のスタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部の前側が内側に向いており、スタンド基部の後側が外側に向くようスタンドホルダ部に固定されていることにより重量バランスの悪い農作業機を安定した格納状態とすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、スタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部の前側が内側に向いており、スタンド基部の後側が外側に向くようスタンド装置の立上り部に固着されていることにより重量バランスの悪い農作業機を安定した格納状態とすることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、スタンド装置を取り付けるためのスタンドホルダ部がメインフレームに対してスタンドホルダ部の開口部が内側を向くように固着されていることにより、左右同じスタンド装置を使用しながら農作業機を安定した格納状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の格納状態の平面図である。
【図2】(a)左側スタンド装置の正面図、(b)同側面図、(c)スタンドホルダの側面図、(d)同平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の要部平面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の要部平面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1において1は農作業機本体で、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)に連結された状態で作業を行う農作業機で、この農作業機本体1を支持する右側スタンド装置3と左側スタンド装置4とにて構成されている。
【0014】
農作業機本体1は、例えばトラクタに連結された状態でトラクタの走行により移動しながら畦塗作業をするものであり、この農作業機本体1は、図示しないトラクタの後部の昇降可能な3点リンク部(作業機昇降支持装置)に連結された機枠2を備えている。
【0015】
そして、機枠2は、前部に走行車連結部であるトラクタ連結部21を有し、このトラクタ連結部21がトラクタの後部の3点リンク部に連結されている。なお、機枠2のトラクタ連結部21は、トップピン23と、ロワピン22とにて構成されている。
【0016】
また、機枠2には、入力軸10側からの動力で回転して畦に土を盛り上げる盛土手段であるロータリ部5およびこのロータリ部5の後方位置で入力軸10側からの動力で回転して土を締め固める畦形成手段であるディスク部6がそれぞれ回転可能に設けられている。さらに、ディスク部6の左側方には接地輪7が設けられている。
【0017】
また一方、機枠2の前部の左右両側には、右側スタンド装置3と左側スタンド装置4を取り付けるためのスタンドホルダ部25が取り付けられている。
【0018】
スタンドホルダ部25は、図1及び図2に示すように、前面はホルダ開口部55を形成しており、前面及び上下面が開口面となっている断面コ字状で上下方向にやや長手状のものであり、このスタンドホルダ部25は互いに離間対向した左右一対の側板部50を有し、これら左右一対の側板部50の後端相互が後板部51にて一体に連結されている。なお、後板部51の前面部にて、ホルダ側当接部であるホルダ側当接面部52が構成されている。
【0019】
また、側板部50の上端には上方に向かって凹状のホルダ側係合部であるホルダ側係合凹み部53が設けられている。さらに側板部50の下端近傍には、左右方向に貫通した円形のホルダ側穴部54が形成されている。
【0020】
一方、左右一対のスタンドホルダ部25に対して着脱可能な右側スタンド装置3と左側スタンド装置4は、図1及び図2に示すように、前後方向に長手状のスタンド基部31・41を有し、このスタンド基部31・41の前後端部にはキャスタ43が装着されている。
【0021】
そして、右側スタンド装置3のスタンド基部31は前後方向にほぼ真直ぐ向かって伸びているのに対し、左側スタンド装置4のスタンド基部41の前側が内側に向いており、スタンド基部41の後側が外側に向かっている。すなわち、平面視で左側スタンド装置4のスタンド基部41は、後方に向かって開いた状態で立上り部42に固着されている。
【0022】
また、スタンド基部31・41の中央よりやや先端側からは、ホルダ部25の内側に嵌合する形状である例えば略四角筒状の立上り部32・42が前上方に向かって傾斜状に突出している。この場合、右側スタンド装置3の立上り部32と左側スタンド装置4の立上り部42は同一部品にて構成されているので代表して立上り部42で説明する。
【0023】
そして、立上り部42の上端側の後面部にて、ホルダ側当接面部52と面状に当接するスタンド側当接部であるスタンド側当接面部46が構成されている。
【0024】
また、立上り部42の上側側面部にはホルダ側係合凹み部53と係脱自在に係合するスタンド側係合部である係合ピン45が突出状に設けられている。この係合ピン45は、例えば左右方向に軸方向を有する1本の断面円形のピンにて構成され、その軸方向両端部が立上り部42の側面48より側方に突出している。
【0025】
さらに、立上り部42の係合ピン45の下部には左右方向に貫通した円形のスタンド側穴部47が形成されている。そして、スタンド側穴部47とホルダ側穴部54とは略同じ大きさの孔であり、図2に示すように互いに一致して連通したホルダ側穴部54及びスタンド側穴部47に着脱可能な挿入体である止めピン26が挿入され、この挿入された止めピン26により右側スタンド装置3と左側スタンド装置4がスタンドホルダ部25に対して固定される。
【0026】
なお、農作業機本体1を使用して畦塗り作業をする際には、右側スタンド装置3と左側スタンド装置4をスタンドホルダ部25から取り外す必要がある。
【0027】
次に、上記農作業機本体1による畦塗り作業終了後、上記右側スタンド装置3と左側スタンド装置4をスタンドホルダ部25に取り付ける場合について説明する。なお、取り付け方法は左右のスタンド装置共に同じであるので、代表して左側スタンド装置4にて説明する。
【0028】
スタンド装置4を農作業機本体1側のスタンドホルダ部25に取り付ける際には、トラクタの後部の3点リンク部を作動させて農作業機本体1を所望位置まで持ち上げた状態で、ホルダ側係合凹み部53と係合ピン45との係合によりホルダ側穴部54とスタンド側穴部47とを互いに一致させた後、この互いに一致したホルダ側穴部54とスタンド側穴部47に対して止めピン26を側方から挿入すればよい。
【0029】
すなわち、スタンド装置4を農作業機本体1側のスタンドホルダ部25に取り付ける場合、トラクタの3点リンク部で農作業機本体1を所望の位置まで持ち上げた状態で、スタンド装置4の立上り部42の上端をスタンドホルダ部25の内側に挿入し、スタンド側係合ピン45をホルダ側係合凹み部53に上方から引っ掛けるようにしてホルダ側係合凹み部53と係合ピン45とを互いに係合させると、ホルダ側当接面部52とスタンド側当接面部46が略面状に当接することでホルダ側穴部54とスタンド側穴部47が近接する。
【0030】
その状態で、スタンド装置4を係合ピン45を回動支点として僅かに後方に回動させることでホルダ側穴部54とスタンド側穴部47が一致し止めピン26を挿入しスタンド装置4を固定する
【0031】
こうして、スタンド装置4をスタンドホルダ部25に取り付けてから、トラクタの3点リンク部を作動させて農作業機本体1を所定位置まで下げ、農作業機本体1とトラクタとの連結を解除する。
【0032】
なお、スタンド装置4をスタンドホルダ部25から取り外す際には、トラクタの後部の3点リンク部を作動させて農作業機本体1を所望位置まで持ち上げた状態で止めピン26を抜いた後、スタンド装置4を持ち上げるようにしてホルダ係合凹み部53と係合ピン45との係合を解除すればよい。

【0033】
次に、畦塗り機の前進作業姿勢について図1を基に説明する。
【0034】
図1の格納状態から前進作業状態にするためには、農作業機本体1を先に説明したように所望の高さまで持ち上げる。次にスタンドホルダ部25からスタンド装置4を取り外す。そして、第1ロック用カム14を時計回りの方向に回動させ第2ロック用ピン13と第1ロック用カム14の固定を解除する。次にロータリ部5やディスク部6等で構成される作業部9を右方向(反時計回りの方向)に回動させ、第1ロック用カム14と第1ロック用ピン12を固定状態にする。
【0035】
次に、畦塗り機のバック作業姿勢について図1を基に説明する。
【0036】
図1の格納状態からバック作業状態にするためには、農作業機本体1を先に説明したように所望の高さまで持ち上げる。次にスタンドホルダ部25からスタンド装置4を取り外す。そして、第2ロック用カム19を時計回りの方向に回動させ第3ロック用ピン18と第2ロック用カム19の固定を解除する。次にロータリ部5やディスク部6等で構成される作業部9を時計回りの方向に回動させ、第2ロック用カム19と第4ロック用ピン20を固定状態にする。
【0037】
なお、上記の説明は格納場所においてある農作業機本体1を格納状態から作業状態に移動させる場合の説明であり、通常作業中に前進作業状態から非作業状態(格納状態)へ移動させる場合や非作業状態(格納状態)からバック作業状態に移動させる場合等はいちいち農作業機本体1を所望の高さまで持ち上げ、スタンド装置4を着脱する必要はない。
【0038】
また、実施例2として、図3に示すようにスタンド基部61の前側が内側に向いており、スタンド基部61の後側が外側に向くスタンド基部61を設けたスタンド装置60を第1の実施例とは反対側、つまり右側に設けても同様の効果を奏することができる。
【0039】
そして、実施例3として、図4に示す様にスタンド基部41・61の前側が内側に向いており、スタンド基部41・61の後側が外側に向くスタンド基部41・61を設けたスタンド装置4・60を左右両側に設けることにより、より安定した格納状態とすることが可能になる。
【0040】
また、実施例4として、図5に示すように左側のスタンドホルダ部25のホルダ開口部55が内側を向くように、ホルダ取り付け部材70をスタンドホルダ部25とメインフレーム8の間に設けることによって、実施例1の右側スタンド装置3を用いても、スタンド基部31の前側が内側に向き、スタンド基部31の後側が外側に向くようにスタンドホルダ25に固定することが可能となる。
【0041】
実施例4の場合、左右のスタンド装置3を共通なものとすることができ、左右のスタンド装置3を付け間違える恐れもなくなり、コストダウンにもなる。
【0042】
なお、上記実施の形態の他に、右側スタンド装置3と左側スタンド装置4を間違えて取り付けできないよう、左右のホルダ側穴部54とスタンド側穴部47の位置を変える、スタンド装置3.4の立上り部32・42に突起を設ける等のポカよけを設けても良い。
【0043】
また、農作業機本体1は畦塗作業をするものには限定されず、例えば図示しないが、溝掘機や草刈機のようにオフセット作業を行うものであればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 農作業機本体
3 右側スタンド装置
4 左側スタンド装置
25 ホルダ部
26 止めピン
31、41、61 スタンド基部
32、42 立上り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機の格納状態時に農作業機本体を支持するスタンド装置であって、前記農作業機本体のスタンドホルダ部に取り付けられ、前記農作業機の前後方向に位置する左右のスタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部は前側が内側を向き、スタンド基部の後側は外側を向くようにスタンドホルダ部に固定されていることを特徴とする農作業機のスタンド装置。
【請求項2】
前記農作業機のスタンド装置の少なくとも一方のスタンド基部は前側が内側を向き、スタンド基部の後側は外側を向くようにスタンド装置の立上り部に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記農作業機のスタンド装置を取り付けるためのスタンドホルダ部がメインフレームに対してスタンドホルダ部の開口部が内側を向くように固着されていることを特徴とする請求項1に記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50(P2013−50A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133849(P2011−133849)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】