オフセット作業機
【課題】作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において作業部のオフセット移動が可能なオフセット作業機の提供。
【解決手段】畦塗り機は、走行機体に装着される装着部5に対して揺動可能に支持され、先端側に作業部60を首振り可能に支持したオフセット機構部10と、これを揺動させる揺動シリンダ17と、オフセット機構部10の先端側に設けられた回動支持アーム15と作業部60との間に連結されたリンク機構部20及びオフセット機構部10の揺動に応じてリンク機構部20のジョイント21の移動を案内して作業部60の向きを反転可能なガイド部材30を備える。ガイド部材30は、作業部60の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部10の揺動に伴って作業部60をオフセット移動させる反転オフセット溝35を有する。
【解決手段】畦塗り機は、走行機体に装着される装着部5に対して揺動可能に支持され、先端側に作業部60を首振り可能に支持したオフセット機構部10と、これを揺動させる揺動シリンダ17と、オフセット機構部10の先端側に設けられた回動支持アーム15と作業部60との間に連結されたリンク機構部20及びオフセット機構部10の揺動に応じてリンク機構部20のジョイント21の移動を案内して作業部60の向きを反転可能なガイド部材30を備える。ガイド部材30は、作業部60の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部10の揺動に伴って作業部60をオフセット移動させる反転オフセット溝35を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に装着され、走行機体から動力を受けて走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなオフセット作業機のうち、矩形圃場の外縁に沿って直線的な畦塗作業を行う畦塗り機は、走行機体の後部に装着されて入力軸を備える装着部と、走行機体から入力軸に伝達された動力によって畦塗り作業を行う作業部と、基端側が装着部に回動自在に接続されて先端側に作業部を回動可能に設けたオフセット機構部とを備えて構成されたものが一般的に知られているが、このような畦塗り機は、走行機体の先端が圃場端部に達した時点でそこから先の畦塗作業を行うことができなくなり、矩形圃場の隅部に必ず未作業部分が残るという間題が生じる。そこで、この問題を解決するために、作業部を通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させると共に、その前後関係を反転(反転リバース)させ、隅部の未作業部分に対して走行機体を後進させながら作業を行う反転リバース機構を備えた畦塗り機が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
この畦塗り機は、走行機体に挿着される装着部に平行リンク機構を構成するオフセット機構部が水平方向に回動自在に設けられ、装着部とオフセット機構部とに接続された揺動シリンダの伸縮によって、オフセット機構部は畦塗り機の進行方向に対して左右方向に回動可能である。オフセット機構部の先端側には作業部の一部を構成するフレーム部を介して作業部が回動可能に設けられている。オフセット機構部の先端下部には平行リンク機構の一部を構成する連結アーム部に繋がる連結部が回動自在に設けられ、この連結部とフレーム部との間に回動リンク機構が設けられている。回動リンク機構には作業部との間に伸縮シリンダが取り付けられ、この伸縮シリンダの伸縮に伴い、作業部はオフセット機構部の先端側に取り付けられたフレーム部の回動支点を中心として首振り可能である。
【0004】
従って、作業部は、揺動シリンダの伸縮に伴い、走行機体の一方側にオフセットして前進作業が可能な前進作業位置及び走行機体の他方側にオフセットした後進作業位置に移動可能であるとともに、伸縮シリンダの伸縮に伴い、オフセット機構部に対する回動支点を中心として首振りして、走行機体の前進時に作業を行うことが可能な通常作業方向又は走行機体の後進時に作業を行うことが可能な反転作業方向に向くことができる。また、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部を揺動させると、作業部は走行機体に対してオフセット移動して作業部の位置の微調整が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−143315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の畦塗り機は、作業部をオフセットさせる揺動シリンダの他に、作業部を首振りさせる伸縮シリンダが必要であり、コストが増大する。
【0007】
そこで、作業部を首振りさせる伸縮シリンダを無くし、オフセット機構部の回動に伴って作業部が首振りし、作業部の向きを反転作業に維持したまま反転作業位置において、作業部の走行機体に対するオフセット量の調整が可能な畦塗り機が望まれている。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、作業部を首振りさせる伸縮シリンダが無く、オフセット機構部の回動に伴って作業部が首振りし、作業部の向きを反転作業に維持したまま反転作業位置において、作業部の走行機体に対するオフセット量の調整が可能なオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、走行機体に装着され、該走行機体から動力を受けて走行機体の走行位置に対して一方側にオフセットした作業位置(例えば、実施形態における前進作業位置Pf)と、走行位置に対して他方側にオフセットした反転作業位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機(例えば、実施形態における畦塗り機1)であって、走行機体に装着される装着部に対して基端側が回動可能に支持され、先端側に作業部を首振り可能に支持したオフセット機構部と、装着部とオフセット機構部との間に接続され、装着部に対するオフセット機構部の回動角度を変更する伸縮アクチュエータ(例えば、実施形態における揺動シリンダ17)と、オフセット機構部の回動に応じて作業部の向きを反転可能な反転機構部を備え、反転機構部は、オフセット機構部の一部を構成して該オフセット機構部の回動に拘わらずに一定の方向を向く回動支持アームと作業部との間に連結されたリンク機構部と、オフセット機構部に取り付けられて該オフセット機構部の回動に応じてリンク機構部に設けられたジョイントの移動を案内して、作業部の向きを反転可能なガイド部材を有し、ガイド部材は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部の回動に伴ってジョインの移動を案内して作業部の走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できることを構成要件とする。
【0010】
オフセット機構部は、装着部に対して回動可能に支持されて先端側に作業部を首振り可能に支持するものであり、具体的には、平行リンク機構として構成される(請求項2)。オフセット機構部は進行方向に対して幅方向に水平回動可能に支持される。
【0011】
伸縮アクチュエータは、オフセット機構部を回動させるものであり、伸縮することでオフセット機構部を回動させる。伸縮アクチュエータは、電動式油圧シリンダ、油圧シリンダ、伸縮部材を備える電動モータでもよい。
【0012】
回動支持アームは、オフセット機構部の一部を構成し、具体的には、オフセット機構部が平行リンク機構として構成されている場合には、回動支持アームは平行リンク機構の先端側に配設される部材であり、その一端側は作業部の回動軸心と同軸上に回動可能に配設される(請求項2)。
【0013】
反転機構部は、リンク機構部とガイド部材を有してなり、リンク機構部は回動支持アームと作業部との間に連結されている。具体的には、リンク機構部は四節リンクである。この四節リンクを構成する複数のリンク部材のうち隣接して繋がる部分にジョイントが設けられている。このジョイントがガイド部材で案内される(請求項2)。
【0014】
ガイド部材は、作業部が反転作業位置側に接近する方向にオフセット機構部が回動するのに伴い、ジョインの移動を案内して作業部の向きを反転させる反転溝と、該反転溝に連通し作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部が回動するのに伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対してオフセット移動させる反転オフセット溝を有している(請求項3)。
【0015】
反転溝は、オフセット機構部が回動するのに伴い、ジョインの移動を案内してリンク機構部を作動させて作業部の向きを反転させる。反転溝は、ジョインの移動を案内して作業部の向きを反転可能であればよく、直線状、湾曲状、屈曲状のいずれでもよい。
【0016】
反転オフセット溝は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部が回動するのに伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対してオフセットさせるものであり、具体的には、反転オフセット溝は作業部のオフセット機構部に対する首振り中心を支点として所定の半径を有する仮想線に沿って延びるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わるオフセット作業機によれば、反転機構部のガイド部材は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部の回動に伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できるので、反転作業位置に移動した作業部を反転状態に維持したままで走行機体に対してオフセット移動させることが可能なオフセット作業機を提供することができ、反転作業状態においても畦に対する作業機の位置を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び反転機構部の動作説明図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び反転機構部の動作説明図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の側面図を示す。
【図4】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の平面図を示す。
【図5】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図7】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部の動作説明図を示す。
【図8】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられた反転機構部の動作説明図を示す。
【図9】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられた反転機構部の動作説明図を示す。
【図10】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたリンク機構部の動作説明図を示す。
【図11】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたロック装置の動作説明図を示す。
【図12】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたロック装置の動作説明図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係わる畦塗り機の好ましい実施の形態を図1から図12に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、オフセット作業機の一例である畦塗り機について説明する。オフセット作業機は、この他、溝掘機等を含む。
【0020】
畦塗り機1は、図3(側面図)、図4(平面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に首振り自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0021】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0022】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0023】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム11内には図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0024】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15b(図5(a)参照)とを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部10は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0025】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0026】
オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、図6(部分拡大模式側面図)に示すように、これと同軸上に配置されて下方へ延びる動力伝達軸14が連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0027】
伝動支持ケース61には、図4、図5(a)、図5(b)に示すように、その先端側から基端側に向かって、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
【0028】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62aを備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端側に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0029】
前処理部64は、回転自在な耕耘ロータ64a(図3参照)を備える。耕耘ロータ64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0030】
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図6参照)の中心軸線を回動支点Oとして首振り可能である。
【0031】
このように構成された天場処理部62、前処理部64を支持する伝動支持ケース61に連結された連結部18と回動支持アーム15との間には反転機構部19が設けられている。反転機構部19は、リンク機構部20とガイド部材30を有してなる。反転機構部19は、図8(a)に示すように、リンク機構部20とガイド部材30とが協働して、オフセット機構部10の左右方向の揺動に拘わらずに作業部60の向きを一定に維持するとともに、作業部60の向きを反転させる機能を有している。
【0032】
ガイド部材30は、オフセットフレーム11の一方の側面に沿って延びる第1案内板30aと、オフセットフレーム11の他方の側面に沿って延びる第2案内板30bと、第1案内板30aの基端側からオフセットフレーム11の他方の側面側へ延びる第3案内板30cと、第1案内板30aと第2案内板30bの先端側端部間に繋がる第4案内板30dとを有して形成される。第1案内板30aと第2案内板30bとの間には、所定間隔を有してオフセットフレーム11の長手方向に沿って直線状に延びる反転溝31が形成され、第2案内板30bと第3案内板30cの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の他方側に延びてオフセットフレーム11の他方側に開口する通常オフセット溝33が形成され、第1案内板30a及び第4案内板30dの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の一方側に延びる反転オフセット溝35が形成されている。これらの溝31,33,35は、リンク機構部20の後述するジョイント21が移動可能な幅を有している。なお、ガイド部材30は、連通するこれらの溝31,33,35を単一部材で形成したものや前記のように複数の部材で形成したものでもよい。また、ガイド部材30は、リンク機構部20の取り付け位置に応じてオフセットフレーム11の下面の他に、オフセットフレーム11の上面に設けてもよい。
【0033】
反転溝31は、ジョイント21の移動を案内し始める案内開始位置Paとジョイント21の移動の案内を終える案内終了位置Peとを繋ぐ直線状に形成されている。なお、反転溝31は、案内開始位置Paと案内終了位置Peとを繋ぐ仮想線に対して左右方向に湾曲したものや屈曲したものでもよい。
【0034】
通常オフセット溝33は、オフセット機構部10に対する作業部60の回動支点Oから案内開始位置Paまでの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。
【0035】
反転オフセット溝35は、作業部60のオフセット機構部10に対する回動支点Oから案内終了位置Pe(即ち、反転溝31の終端に移動したジョイント21の中心位置)までの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。反転オフセット溝35は、案内終了位置Peから有限長を有してオフセットフレーム11の一方側へ延びる。反転オフセット溝35の長さは、オフセット機構部10の反転作業位置側への最大揺動角度に応じて設定される。
【0036】
リンク機構部20は、図10(a)に示すように、4つの節からなる4節リンク機構であり、作業部60の回動支点Oから伝動支持フレーム65の先端側へ後述する所定距離を有した位置までの部分を第1節20aとし、第1節20aの先端部を回動支点Qとして機体幅方向に回動自在に枢結された第1リンク部材22を第2節20bとし、第1リンク部材22の先端部に一端側が枢結されて左右方向に回動自在であって他端側が回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に枢結された第2リンク部材23を第3節20cとし、回動支持アーム15のリンクアーム部15bを第4節20dとして構成されている。なお、第1節20aの長さは、作業部60の回動支点Oと第1節20a及び第2節20bの回動支点Qとの距離と、回動支点Qと第2節20b及び第3節20cの回動支点Sまでの距離を合算した値が、回動支点Oと回動支点Sとの間の距離よりも大きくなるように設定されている。
【0037】
リンク機構部20の第1節20aは従動節として機能し、第2節20b及び第3節20cは媒介節として機能し、第4節20dは原動節として機能する。第2節20bは平面視において右側に突出するように屈曲して前後方向に延びる。第2節20bと第3節20cとの回動支点Sとなるジョイント21は、図8(a)を更に追加して説明すると、後述するロック装置40によって伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が揺動するに伴って移動するジョイント21の回動半径と通常オフセット溝33の曲率半径とが同一になるように配設されている。このため、伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が左側に揺動すると、ジョイント21は通常オフセット溝33内に入り込んでこの溝に沿って移動することができる。
【0038】
また第1節20aと第2節20bとの回動支点Qとなるジョイント24は、前述したジョイント21が通常オフセット溝33の左側端部、即ち、案内開始位置Paに移動すると(図8(c)参照)、ジョイント21の中心と作業部60の回動支点Oとを結ぶ仮想線に対して右側に位置するように配設されている。このため、図8(c)において、ジョイント21が前述した反転溝31に沿って作業部60の回動支点O側に移動して第1リンク部材22が回動支点O側に移動するに伴って、ジョイント24には回動支点O側を向く力が作用し、第1節20aを時計方向に回動させるモーメントを生じさせる。従って、図8(d)のように作業部60をオフセット機構部10に対して首振りさせることができる。
【0039】
さらに、第2節20bの両端部に設けられたジョイント21,24の中心間距離は、第1リンク部材22に設けられたジョイント24が作業部60の回動支点O側に移動して作業部60を反転させるのに必要な長さを有している。従って、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側へ更に移動するに伴い、第2節20bが回動支点O側へ移動し、第1節20aと第2節20bとを繋ぐジョイント24を介して第1節20aが時計方向に回動して、作業部60を図9(e)に示す反転作業位置Prに移動させることができる。なお、作業部60がオフセット機構部10に対して首振りするときは、後述するロック装置40によるオフセット機構部10に対する作業部60のロック状態が解除されている。
【0040】
ロック装置40は、図10(a)及び図11(a)に示すように、伝動支持フレーム65の一方側の側方に配設されて上下方向に延びる前側ロックピン42と、伝動支持フレーム65の他方側の側方に配設されて上下方向に延びる後側ロックピン43と、回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に回動自在に取り付けられて前側ロックピン42又は後側ロックピン43に係止可能に横方向に延びる板状のフック45と、フック45に設けられてフック上方に回転自在に支持されたローラ47と、オフセットフレーム11の先端下部に設けられ、ローラ47と接触してフック45の回動を案内する斜線で示したフックガイド49とを有してなる。
【0041】
フック45は、平面視三角状に形成され、フック45の頂部がリンクアーム部15bに回動自在に取り付けられ、フック45の底部側の一方側端部に前側ロックピン42に係止される前側係合部45aが設けられ、フック45の底部側の他方側端部に後側ロックピン43に係止される後側係合部45bが設けられ、フック45の底部側の中央部に上方へ突出する支持ピンが設けられ、この支持ピンの上端部にローラ47が回転自在に支持されている。またフック45には、引っ張りばね48が取り付けられ、この引っ張りばね48により前側係合部45aが前側ロックピン42に係止される方向及び後側係合部45bが後側ロックピン43に係止される方向に常に附勢されている。
【0042】
フックガイド49は、平面視において略台形状に形成され、両側に形成された一対の側辺49a、49bとこれらの側辺49a、49bの先端部間を繋ぐ上辺49cに沿ってローラ47が転動する。詳細については後述するが、ローラ47が一方側の側辺49a上を転動するときは、前側係合部45aが前側ロックピン42に係止された状態にあり、ローラ47が上辺49c上を転動するときは、フック45のロック状態が解除され、ローラ47が他方側の側辺49b上を転動するときは、後側係合部45bが後側ロックピン43に係止された状態にある。
【0043】
ロック装置40は、作業部60の回動支点Oが図11(a)の状態から機体幅方向左側へ移動するようにオフセット機構部10が揺動すると、ローラ47がフックガイド49の一方側の側辺49aに沿ってフックガイド49の上辺49c側に移動し(図11(b)参照)、ローラ47がフックガイド49の上辺49c上に移動すると、引っ張りばね48に抗してフック45が反時計回りに回動して、フック45が前側ロックピン42から外れた状態になり(図11(c)参照)、図11(d)、図12(e)に示すように、作業部60はオフセット機構部10のさらなる反転作業位置側方向(矢印A方向)への揺動に伴って首振りする。
【0044】
なお、図12(e)は、作業部60が反転作業位置Prに移動し且つその向きが反転状態にされたときのロック装置40の状態を示している。また図2(e)は、図12(e)に示された構造に反転機構部19を追加したものを示している。この図2(e)に示すように、リンク機構部20のジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動すると、作業部60は反転作業位置Prに移動するが、作業部60の首振りは非ロック状態にあるため、この状態では作業ができない。
【0045】
そこで、反転作業位置Prに移動した作業部60の首振りをロックするには、図12(e)の状態から揺動シリンダ17を縮小してオフセットフレーム11を反時計方向に揺動させる。オフセットフレーム11が反時計方向に揺動すると、図12(f)に示すように、ローラ47がフックガイド49の他方側の側辺49bに沿ってフックガイド49の底辺側に移動する。ローラ47が側辺49bに沿って移動すると、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は時計方向に回動してフック45の後側係合部45bが後側ロックピン43に係止され、作業部60はオフセット機構部10に対してロックされた状態になる。
【0046】
なお、図12(f)の状態からオフセットフレーム11がさらに反時計方向に揺動すると、図12(g)に示すように、ローラ47はフックガイド49の他方側の49bに沿って移動し、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は後側ロックピン43に係止された状態に維持される。このため、作業部は向きが反転状態のままで、オフセット機構部10の揺動にともなってオフセット移動する。
【0047】
次に、このように構成された畦塗り機1の作業部60を前進作業位置から反転作業位置に移動させる場合の畦塗り機1の作動について説明する。作業部60が前進作業位置Pfに移動した状態では、図1(a)及び図7(a)に示すように、前側ロックピン42にフック45が係止されて、作業部60のオフセット機構部10に対する首振りはロックされている。この状態で揺動シリンダ17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(b)及び図8(b)に示すように、作業部60はその向きが前進作業方向に維持されたままで機体幅方向中央部側へ移動(オフセット移動)するとともに、リンク機構部20の第2節20bと第3節20cの回動支点であるジョイント21が通常オフセット溝33の開口端部側へ移動する。
【0048】
さらに、揺動シリンダ17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(c)に示すように、ジョイント21が通常オフセット溝33内に入り込んで案内開始位置Paに移動する。ジョイント21が案内開始位置Paに移動すると、図11(c)に示すように、フック45に設けられたローラ47がフックガイド49の上辺49c上に移動してフック45が反時計方向に回動し、フック45が前側ロックピン42から外れて、作業部60のオフセット機構部10に対する首振りのロック状態が解除される。
【0049】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(d)、図7(b)、図10(b)に示すように、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側に移動し、ジョイント21に繋がる第2節20bが回動支点O側へ移動しながら、第2節20bに繋がる第1節20aを作業部60の回動支点Oを中心として時計方向に回動させ、伝動支持フレーム65が回動支点Oを中心として時計回りに回動する。このため、作業部60は回動支点Oを中心に時計回りに首振りする。
【0050】
ジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動すると、図2(e)に示すように、作業部60は反転作業位置Prに移動するとともに前後方向の向きが反転した反転状態になる。このとき、フック45は、後側ロックピン43と非係止状態のままであり、作業部60の首振りは非ロック状態にある。
【0051】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小すると、図2(f)及び図9(f)に示すように、ジョイント21が反転オフセット溝35内に移動する。ジョイント21の反転オフセット溝35内への移動に伴い、ローラ47はフックガイド49の側辺49bに沿って移動し、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は時計方向に回動してフック45が後側ロックピン43に係止され、作業部60はその首振りがロック状態になる。従って、作業部60はオフセット機構部10の回動支持アーム15と一体的に連結された状態になる。
【0052】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小すると、図2(g)、図7(c)、図9(g)、図10(c)に示すように、オフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動するとともに、ジョイント21が反転オフセット溝35内に沿ってこの溝の先端側へ移動する。従って、作業部60は反転状態に維持されたままで走行機体90の走行位置に対してオフセット移動する。
【0053】
このように、反転機構部19のガイド部材30に反転オフセット溝35を設けることで、作業部60の向きを反転状態に維持したままでオフセット機構部10が揺動すると、ジョイン21が反転オフセット溝35内を移動して、反転作業位置Prに移動した作業部60を反転状態に維持したままで走行機体90の走行位置に対するオフセット量を調整することができ、反転作業状態においても畦に対する作業部60の位置を微調整することができる。
【0054】
なお、前述した実施の形態では、オフセット作業機として畦塗り機1を例にして説明したが、溝掘機の場合でも畦塗り機1の場合と同様に構成することで、畦塗り機1の場合と同様の効果、即ち、反転作業位置に移動した作業部を反転状態のままでオフセット移動可能である効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 畦塗り機(オフセット作業機)
5 装着部
10 オフセット機構部
15 回動支持アーム
17 揺動シリンダ(伸縮アクチュエータ)
19 反転機構部
20 リンク機構部
21 ジョイント
30 ガイド部材
31 反転溝
35 反転オフセット溝
60 作業部
90 走行機体
Pf 前進作業位置(作業位置)
Pr 反転作業位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に装着され、走行機体から動力を受けて走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなオフセット作業機のうち、矩形圃場の外縁に沿って直線的な畦塗作業を行う畦塗り機は、走行機体の後部に装着されて入力軸を備える装着部と、走行機体から入力軸に伝達された動力によって畦塗り作業を行う作業部と、基端側が装着部に回動自在に接続されて先端側に作業部を回動可能に設けたオフセット機構部とを備えて構成されたものが一般的に知られているが、このような畦塗り機は、走行機体の先端が圃場端部に達した時点でそこから先の畦塗作業を行うことができなくなり、矩形圃場の隅部に必ず未作業部分が残るという間題が生じる。そこで、この問題を解決するために、作業部を通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させると共に、その前後関係を反転(反転リバース)させ、隅部の未作業部分に対して走行機体を後進させながら作業を行う反転リバース機構を備えた畦塗り機が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
この畦塗り機は、走行機体に挿着される装着部に平行リンク機構を構成するオフセット機構部が水平方向に回動自在に設けられ、装着部とオフセット機構部とに接続された揺動シリンダの伸縮によって、オフセット機構部は畦塗り機の進行方向に対して左右方向に回動可能である。オフセット機構部の先端側には作業部の一部を構成するフレーム部を介して作業部が回動可能に設けられている。オフセット機構部の先端下部には平行リンク機構の一部を構成する連結アーム部に繋がる連結部が回動自在に設けられ、この連結部とフレーム部との間に回動リンク機構が設けられている。回動リンク機構には作業部との間に伸縮シリンダが取り付けられ、この伸縮シリンダの伸縮に伴い、作業部はオフセット機構部の先端側に取り付けられたフレーム部の回動支点を中心として首振り可能である。
【0004】
従って、作業部は、揺動シリンダの伸縮に伴い、走行機体の一方側にオフセットして前進作業が可能な前進作業位置及び走行機体の他方側にオフセットした後進作業位置に移動可能であるとともに、伸縮シリンダの伸縮に伴い、オフセット機構部に対する回動支点を中心として首振りして、走行機体の前進時に作業を行うことが可能な通常作業方向又は走行機体の後進時に作業を行うことが可能な反転作業方向に向くことができる。また、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部を揺動させると、作業部は走行機体に対してオフセット移動して作業部の位置の微調整が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−143315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来の畦塗り機は、作業部をオフセットさせる揺動シリンダの他に、作業部を首振りさせる伸縮シリンダが必要であり、コストが増大する。
【0007】
そこで、作業部を首振りさせる伸縮シリンダを無くし、オフセット機構部の回動に伴って作業部が首振りし、作業部の向きを反転作業に維持したまま反転作業位置において、作業部の走行機体に対するオフセット量の調整が可能な畦塗り機が望まれている。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、作業部を首振りさせる伸縮シリンダが無く、オフセット機構部の回動に伴って作業部が首振りし、作業部の向きを反転作業に維持したまま反転作業位置において、作業部の走行機体に対するオフセット量の調整が可能なオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、走行機体に装着され、該走行機体から動力を受けて走行機体の走行位置に対して一方側にオフセットした作業位置(例えば、実施形態における前進作業位置Pf)と、走行位置に対して他方側にオフセットした反転作業位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機(例えば、実施形態における畦塗り機1)であって、走行機体に装着される装着部に対して基端側が回動可能に支持され、先端側に作業部を首振り可能に支持したオフセット機構部と、装着部とオフセット機構部との間に接続され、装着部に対するオフセット機構部の回動角度を変更する伸縮アクチュエータ(例えば、実施形態における揺動シリンダ17)と、オフセット機構部の回動に応じて作業部の向きを反転可能な反転機構部を備え、反転機構部は、オフセット機構部の一部を構成して該オフセット機構部の回動に拘わらずに一定の方向を向く回動支持アームと作業部との間に連結されたリンク機構部と、オフセット機構部に取り付けられて該オフセット機構部の回動に応じてリンク機構部に設けられたジョイントの移動を案内して、作業部の向きを反転可能なガイド部材を有し、ガイド部材は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部の回動に伴ってジョインの移動を案内して作業部の走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できることを構成要件とする。
【0010】
オフセット機構部は、装着部に対して回動可能に支持されて先端側に作業部を首振り可能に支持するものであり、具体的には、平行リンク機構として構成される(請求項2)。オフセット機構部は進行方向に対して幅方向に水平回動可能に支持される。
【0011】
伸縮アクチュエータは、オフセット機構部を回動させるものであり、伸縮することでオフセット機構部を回動させる。伸縮アクチュエータは、電動式油圧シリンダ、油圧シリンダ、伸縮部材を備える電動モータでもよい。
【0012】
回動支持アームは、オフセット機構部の一部を構成し、具体的には、オフセット機構部が平行リンク機構として構成されている場合には、回動支持アームは平行リンク機構の先端側に配設される部材であり、その一端側は作業部の回動軸心と同軸上に回動可能に配設される(請求項2)。
【0013】
反転機構部は、リンク機構部とガイド部材を有してなり、リンク機構部は回動支持アームと作業部との間に連結されている。具体的には、リンク機構部は四節リンクである。この四節リンクを構成する複数のリンク部材のうち隣接して繋がる部分にジョイントが設けられている。このジョイントがガイド部材で案内される(請求項2)。
【0014】
ガイド部材は、作業部が反転作業位置側に接近する方向にオフセット機構部が回動するのに伴い、ジョインの移動を案内して作業部の向きを反転させる反転溝と、該反転溝に連通し作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部が回動するのに伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対してオフセット移動させる反転オフセット溝を有している(請求項3)。
【0015】
反転溝は、オフセット機構部が回動するのに伴い、ジョインの移動を案内してリンク機構部を作動させて作業部の向きを反転させる。反転溝は、ジョインの移動を案内して作業部の向きを反転可能であればよく、直線状、湾曲状、屈曲状のいずれでもよい。
【0016】
反転オフセット溝は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部が回動するのに伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対してオフセットさせるものであり、具体的には、反転オフセット溝は作業部のオフセット機構部に対する首振り中心を支点として所定の半径を有する仮想線に沿って延びるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わるオフセット作業機によれば、反転機構部のガイド部材は、作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、オフセット機構部の回動に伴ってジョインの移動を案内して作業部を走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できるので、反転作業位置に移動した作業部を反転状態に維持したままで走行機体に対してオフセット移動させることが可能なオフセット作業機を提供することができ、反転作業状態においても畦に対する作業機の位置を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び反転機構部の動作説明図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部及び反転機構部の動作説明図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の側面図を示す。
【図4】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の平面図を示す。
【図5】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図7】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたオフセット機構部の動作説明図を示す。
【図8】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられた反転機構部の動作説明図を示す。
【図9】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられた反転機構部の動作説明図を示す。
【図10】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたリンク機構部の動作説明図を示す。
【図11】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたロック装置の動作説明図を示す。
【図12】本発明の一実施の形態に係わる畦塗り機に設けられたロック装置の動作説明図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係わる畦塗り機の好ましい実施の形態を図1から図12に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、オフセット作業機の一例である畦塗り機について説明する。オフセット作業機は、この他、溝掘機等を含む。
【0020】
畦塗り機1は、図3(側面図)、図4(平面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に首振り自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によってオフセット作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0021】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0022】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0023】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム11内には図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0024】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15b(図5(a)参照)とを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部10は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0025】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0026】
オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、図6(部分拡大模式側面図)に示すように、これと同軸上に配置されて下方へ延びる動力伝達軸14が連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0027】
伝動支持ケース61には、図4、図5(a)、図5(b)に示すように、その先端側から基端側に向かって、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
【0028】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62aを備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端側に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0029】
前処理部64は、回転自在な耕耘ロータ64a(図3参照)を備える。耕耘ロータ64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0030】
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図6参照)の中心軸線を回動支点Oとして首振り可能である。
【0031】
このように構成された天場処理部62、前処理部64を支持する伝動支持ケース61に連結された連結部18と回動支持アーム15との間には反転機構部19が設けられている。反転機構部19は、リンク機構部20とガイド部材30を有してなる。反転機構部19は、図8(a)に示すように、リンク機構部20とガイド部材30とが協働して、オフセット機構部10の左右方向の揺動に拘わらずに作業部60の向きを一定に維持するとともに、作業部60の向きを反転させる機能を有している。
【0032】
ガイド部材30は、オフセットフレーム11の一方の側面に沿って延びる第1案内板30aと、オフセットフレーム11の他方の側面に沿って延びる第2案内板30bと、第1案内板30aの基端側からオフセットフレーム11の他方の側面側へ延びる第3案内板30cと、第1案内板30aと第2案内板30bの先端側端部間に繋がる第4案内板30dとを有して形成される。第1案内板30aと第2案内板30bとの間には、所定間隔を有してオフセットフレーム11の長手方向に沿って直線状に延びる反転溝31が形成され、第2案内板30bと第3案内板30cの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の他方側に延びてオフセットフレーム11の他方側に開口する通常オフセット溝33が形成され、第1案内板30a及び第4案内板30dの内側端面との間には、反転溝31に連通してオフセットフレーム11の一方側に延びる反転オフセット溝35が形成されている。これらの溝31,33,35は、リンク機構部20の後述するジョイント21が移動可能な幅を有している。なお、ガイド部材30は、連通するこれらの溝31,33,35を単一部材で形成したものや前記のように複数の部材で形成したものでもよい。また、ガイド部材30は、リンク機構部20の取り付け位置に応じてオフセットフレーム11の下面の他に、オフセットフレーム11の上面に設けてもよい。
【0033】
反転溝31は、ジョイント21の移動を案内し始める案内開始位置Paとジョイント21の移動の案内を終える案内終了位置Peとを繋ぐ直線状に形成されている。なお、反転溝31は、案内開始位置Paと案内終了位置Peとを繋ぐ仮想線に対して左右方向に湾曲したものや屈曲したものでもよい。
【0034】
通常オフセット溝33は、オフセット機構部10に対する作業部60の回動支点Oから案内開始位置Paまでの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。
【0035】
反転オフセット溝35は、作業部60のオフセット機構部10に対する回動支点Oから案内終了位置Pe(即ち、反転溝31の終端に移動したジョイント21の中心位置)までの距離を半径とする円弧の一部を含む曲線あるいは直線として形成される。反転オフセット溝35は、案内終了位置Peから有限長を有してオフセットフレーム11の一方側へ延びる。反転オフセット溝35の長さは、オフセット機構部10の反転作業位置側への最大揺動角度に応じて設定される。
【0036】
リンク機構部20は、図10(a)に示すように、4つの節からなる4節リンク機構であり、作業部60の回動支点Oから伝動支持フレーム65の先端側へ後述する所定距離を有した位置までの部分を第1節20aとし、第1節20aの先端部を回動支点Qとして機体幅方向に回動自在に枢結された第1リンク部材22を第2節20bとし、第1リンク部材22の先端部に一端側が枢結されて左右方向に回動自在であって他端側が回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に枢結された第2リンク部材23を第3節20cとし、回動支持アーム15のリンクアーム部15bを第4節20dとして構成されている。なお、第1節20aの長さは、作業部60の回動支点Oと第1節20a及び第2節20bの回動支点Qとの距離と、回動支点Qと第2節20b及び第3節20cの回動支点Sまでの距離を合算した値が、回動支点Oと回動支点Sとの間の距離よりも大きくなるように設定されている。
【0037】
リンク機構部20の第1節20aは従動節として機能し、第2節20b及び第3節20cは媒介節として機能し、第4節20dは原動節として機能する。第2節20bは平面視において右側に突出するように屈曲して前後方向に延びる。第2節20bと第3節20cとの回動支点Sとなるジョイント21は、図8(a)を更に追加して説明すると、後述するロック装置40によって伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が揺動するに伴って移動するジョイント21の回動半径と通常オフセット溝33の曲率半径とが同一になるように配設されている。このため、伝動支持フレーム65が回動支持アーム15にロックされた状態でオフセット機構部10が左側に揺動すると、ジョイント21は通常オフセット溝33内に入り込んでこの溝に沿って移動することができる。
【0038】
また第1節20aと第2節20bとの回動支点Qとなるジョイント24は、前述したジョイント21が通常オフセット溝33の左側端部、即ち、案内開始位置Paに移動すると(図8(c)参照)、ジョイント21の中心と作業部60の回動支点Oとを結ぶ仮想線に対して右側に位置するように配設されている。このため、図8(c)において、ジョイント21が前述した反転溝31に沿って作業部60の回動支点O側に移動して第1リンク部材22が回動支点O側に移動するに伴って、ジョイント24には回動支点O側を向く力が作用し、第1節20aを時計方向に回動させるモーメントを生じさせる。従って、図8(d)のように作業部60をオフセット機構部10に対して首振りさせることができる。
【0039】
さらに、第2節20bの両端部に設けられたジョイント21,24の中心間距離は、第1リンク部材22に設けられたジョイント24が作業部60の回動支点O側に移動して作業部60を反転させるのに必要な長さを有している。従って、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側へ更に移動するに伴い、第2節20bが回動支点O側へ移動し、第1節20aと第2節20bとを繋ぐジョイント24を介して第1節20aが時計方向に回動して、作業部60を図9(e)に示す反転作業位置Prに移動させることができる。なお、作業部60がオフセット機構部10に対して首振りするときは、後述するロック装置40によるオフセット機構部10に対する作業部60のロック状態が解除されている。
【0040】
ロック装置40は、図10(a)及び図11(a)に示すように、伝動支持フレーム65の一方側の側方に配設されて上下方向に延びる前側ロックピン42と、伝動支持フレーム65の他方側の側方に配設されて上下方向に延びる後側ロックピン43と、回動支持アーム15のリンクアーム部15bの先端部に回動自在に取り付けられて前側ロックピン42又は後側ロックピン43に係止可能に横方向に延びる板状のフック45と、フック45に設けられてフック上方に回転自在に支持されたローラ47と、オフセットフレーム11の先端下部に設けられ、ローラ47と接触してフック45の回動を案内する斜線で示したフックガイド49とを有してなる。
【0041】
フック45は、平面視三角状に形成され、フック45の頂部がリンクアーム部15bに回動自在に取り付けられ、フック45の底部側の一方側端部に前側ロックピン42に係止される前側係合部45aが設けられ、フック45の底部側の他方側端部に後側ロックピン43に係止される後側係合部45bが設けられ、フック45の底部側の中央部に上方へ突出する支持ピンが設けられ、この支持ピンの上端部にローラ47が回転自在に支持されている。またフック45には、引っ張りばね48が取り付けられ、この引っ張りばね48により前側係合部45aが前側ロックピン42に係止される方向及び後側係合部45bが後側ロックピン43に係止される方向に常に附勢されている。
【0042】
フックガイド49は、平面視において略台形状に形成され、両側に形成された一対の側辺49a、49bとこれらの側辺49a、49bの先端部間を繋ぐ上辺49cに沿ってローラ47が転動する。詳細については後述するが、ローラ47が一方側の側辺49a上を転動するときは、前側係合部45aが前側ロックピン42に係止された状態にあり、ローラ47が上辺49c上を転動するときは、フック45のロック状態が解除され、ローラ47が他方側の側辺49b上を転動するときは、後側係合部45bが後側ロックピン43に係止された状態にある。
【0043】
ロック装置40は、作業部60の回動支点Oが図11(a)の状態から機体幅方向左側へ移動するようにオフセット機構部10が揺動すると、ローラ47がフックガイド49の一方側の側辺49aに沿ってフックガイド49の上辺49c側に移動し(図11(b)参照)、ローラ47がフックガイド49の上辺49c上に移動すると、引っ張りばね48に抗してフック45が反時計回りに回動して、フック45が前側ロックピン42から外れた状態になり(図11(c)参照)、図11(d)、図12(e)に示すように、作業部60はオフセット機構部10のさらなる反転作業位置側方向(矢印A方向)への揺動に伴って首振りする。
【0044】
なお、図12(e)は、作業部60が反転作業位置Prに移動し且つその向きが反転状態にされたときのロック装置40の状態を示している。また図2(e)は、図12(e)に示された構造に反転機構部19を追加したものを示している。この図2(e)に示すように、リンク機構部20のジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動すると、作業部60は反転作業位置Prに移動するが、作業部60の首振りは非ロック状態にあるため、この状態では作業ができない。
【0045】
そこで、反転作業位置Prに移動した作業部60の首振りをロックするには、図12(e)の状態から揺動シリンダ17を縮小してオフセットフレーム11を反時計方向に揺動させる。オフセットフレーム11が反時計方向に揺動すると、図12(f)に示すように、ローラ47がフックガイド49の他方側の側辺49bに沿ってフックガイド49の底辺側に移動する。ローラ47が側辺49bに沿って移動すると、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は時計方向に回動してフック45の後側係合部45bが後側ロックピン43に係止され、作業部60はオフセット機構部10に対してロックされた状態になる。
【0046】
なお、図12(f)の状態からオフセットフレーム11がさらに反時計方向に揺動すると、図12(g)に示すように、ローラ47はフックガイド49の他方側の49bに沿って移動し、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は後側ロックピン43に係止された状態に維持される。このため、作業部は向きが反転状態のままで、オフセット機構部10の揺動にともなってオフセット移動する。
【0047】
次に、このように構成された畦塗り機1の作業部60を前進作業位置から反転作業位置に移動させる場合の畦塗り機1の作動について説明する。作業部60が前進作業位置Pfに移動した状態では、図1(a)及び図7(a)に示すように、前側ロックピン42にフック45が係止されて、作業部60のオフセット機構部10に対する首振りはロックされている。この状態で揺動シリンダ17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(b)及び図8(b)に示すように、作業部60はその向きが前進作業方向に維持されたままで機体幅方向中央部側へ移動(オフセット移動)するとともに、リンク機構部20の第2節20bと第3節20cの回動支点であるジョイント21が通常オフセット溝33の開口端部側へ移動する。
【0048】
さらに、揺動シリンダ17が縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(c)に示すように、ジョイント21が通常オフセット溝33内に入り込んで案内開始位置Paに移動する。ジョイント21が案内開始位置Paに移動すると、図11(c)に示すように、フック45に設けられたローラ47がフックガイド49の上辺49c上に移動してフック45が反時計方向に回動し、フック45が前側ロックピン42から外れて、作業部60のオフセット機構部10に対する首振りのロック状態が解除される。
【0049】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小してオフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動すると、図1(d)、図7(b)、図10(b)に示すように、ジョイント21が反転溝31に沿って回動支点O側に移動し、ジョイント21に繋がる第2節20bが回動支点O側へ移動しながら、第2節20bに繋がる第1節20aを作業部60の回動支点Oを中心として時計方向に回動させ、伝動支持フレーム65が回動支点Oを中心として時計回りに回動する。このため、作業部60は回動支点Oを中心に時計回りに首振りする。
【0050】
ジョイント21が反転溝31の案内終了位置Peに移動すると、図2(e)に示すように、作業部60は反転作業位置Prに移動するとともに前後方向の向きが反転した反転状態になる。このとき、フック45は、後側ロックピン43と非係止状態のままであり、作業部60の首振りは非ロック状態にある。
【0051】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小すると、図2(f)及び図9(f)に示すように、ジョイント21が反転オフセット溝35内に移動する。ジョイント21の反転オフセット溝35内への移動に伴い、ローラ47はフックガイド49の側辺49bに沿って移動し、引っ張りばね48の附勢力によってフック45は時計方向に回動してフック45が後側ロックピン43に係止され、作業部60はその首振りがロック状態になる。従って、作業部60はオフセット機構部10の回動支持アーム15と一体的に連結された状態になる。
【0052】
この状態で揺動シリンダ17がさらに縮小すると、図2(g)、図7(c)、図9(g)、図10(c)に示すように、オフセット機構部10が機体幅方向左側に揺動するとともに、ジョイント21が反転オフセット溝35内に沿ってこの溝の先端側へ移動する。従って、作業部60は反転状態に維持されたままで走行機体90の走行位置に対してオフセット移動する。
【0053】
このように、反転機構部19のガイド部材30に反転オフセット溝35を設けることで、作業部60の向きを反転状態に維持したままでオフセット機構部10が揺動すると、ジョイン21が反転オフセット溝35内を移動して、反転作業位置Prに移動した作業部60を反転状態に維持したままで走行機体90の走行位置に対するオフセット量を調整することができ、反転作業状態においても畦に対する作業部60の位置を微調整することができる。
【0054】
なお、前述した実施の形態では、オフセット作業機として畦塗り機1を例にして説明したが、溝掘機の場合でも畦塗り機1の場合と同様に構成することで、畦塗り機1の場合と同様の効果、即ち、反転作業位置に移動した作業部を反転状態のままでオフセット移動可能である効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 畦塗り機(オフセット作業機)
5 装着部
10 オフセット機構部
15 回動支持アーム
17 揺動シリンダ(伸縮アクチュエータ)
19 反転機構部
20 リンク機構部
21 ジョイント
30 ガイド部材
31 反転溝
35 反転オフセット溝
60 作業部
90 走行機体
Pf 前進作業位置(作業位置)
Pr 反転作業位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着され、該走行機体から動力を受けて前記走行機体の走行位置に対して一方側にオフセットした作業位置と、前記走行位置に対して他方側にオフセットした反転作業位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機であって、
前記走行機体に装着される装着部に対して基端側が回動可能に支持され、先端側に前記作業部を首振り可能に支持したオフセット機構部と、
前記装着部と前記オフセット機構部との間に接続され、前記装着部に対する前記オフセット機構部の回動角度を変更する伸縮アクチュエータと、
前記オフセット機構部の回動に応じて前記作業部の向きを反転可能な反転機構部を備え、
前記反転機構部は、前記オフセット機構部の一部を構成して該オフセット機構部の回動に拘わらずに一定の方向を向く回動支持アームと前記作業部との間に連結されたリンク機構部と、前記オフセット機構部に取り付けられて該オフセット機構部の回動に応じて前記リンク機構部に設けられたジョイントの移動を案内して、前記作業部の向きを反転可能なガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、前記オフセット機構部の回動に伴って前記ジョインの移動を案内して前記作業部の前記走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
前記オフセット機構部は、平行リンク機構として構成され、
前記回動支持アームは、その一端側が前記作業部の回動軸心と同軸上に回動可能に配設されて前記オフセット機構部の一部をなし、
前記リンク機構部は、前記回動支持アームと前記作業部との間に設けられた四節リンクであり、
前記四節リンクの一部に設けられたジョイントが前記ガイド部材で案内されることを特徴とする請求項1に記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記作業部が反転作業位置側に接近する方向に前記オフセット機構部が回動するのに伴い、前記ジョインの移動を案内して前記作業部の向きを反転させる反転溝と、該反転溝に連通し前記作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、前記オフセット機構部が回動するのに伴って前記ジョインの移動を案内して前記作業部を前記走行機体の走行位置に対してオフセット移動させる反転オフセット溝を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット作業機。
【請求項1】
走行機体に装着され、該走行機体から動力を受けて前記走行機体の走行位置に対して一方側にオフセットした作業位置と、前記走行位置に対して他方側にオフセットした反転作業位置で作業させる作業部を有したオフセット作業機であって、
前記走行機体に装着される装着部に対して基端側が回動可能に支持され、先端側に前記作業部を首振り可能に支持したオフセット機構部と、
前記装着部と前記オフセット機構部との間に接続され、前記装着部に対する前記オフセット機構部の回動角度を変更する伸縮アクチュエータと、
前記オフセット機構部の回動に応じて前記作業部の向きを反転可能な反転機構部を備え、
前記反転機構部は、前記オフセット機構部の一部を構成して該オフセット機構部の回動に拘わらずに一定の方向を向く回動支持アームと前記作業部との間に連結されたリンク機構部と、前記オフセット機構部に取り付けられて該オフセット機構部の回動に応じて前記リンク機構部に設けられたジョイントの移動を案内して、前記作業部の向きを反転可能なガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、前記オフセット機構部の回動に伴って前記ジョインの移動を案内して前記作業部の前記走行機体の走行位置に対するオフセット量を調整できることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
前記オフセット機構部は、平行リンク機構として構成され、
前記回動支持アームは、その一端側が前記作業部の回動軸心と同軸上に回動可能に配設されて前記オフセット機構部の一部をなし、
前記リンク機構部は、前記回動支持アームと前記作業部との間に設けられた四節リンクであり、
前記四節リンクの一部に設けられたジョイントが前記ガイド部材で案内されることを特徴とする請求項1に記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記作業部が反転作業位置側に接近する方向に前記オフセット機構部が回動するのに伴い、前記ジョインの移動を案内して前記作業部の向きを反転させる反転溝と、該反転溝に連通し前記作業部の向きを反転状態に維持したまま反転作業位置において、前記オフセット機構部が回動するのに伴って前記ジョインの移動を案内して前記作業部を前記走行機体の走行位置に対してオフセット移動させる反転オフセット溝を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−233549(P2010−233549A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87854(P2009−87854)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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