オフセット補償器及びそれを用いた光ディスクドライブ
【課題】従来疑似ロックが発生し易いために使用が制限されていたJFBオフセット補償器の疑似ロック発生を防止し、PLL及びヴィタビ復号器の性能劣化を抑制する。
【解決手段】JFBオフセット補償器とは独立して再生信号のオフセットを監視する手段4,5,12を設けることにより疑似ロックの発生又は予兆を検出し、積分器13をリセットできるようにした。疑似ロックの契機となる突発的な大きなオフセットの影響を低減するために積分器13に入力されるオフセット信号の絶対値を制限するリミッタあるいはオフセット補償信号の絶対値を制限するリミッタを設けてもよい。
【解決手段】JFBオフセット補償器とは独立して再生信号のオフセットを監視する手段4,5,12を設けることにより疑似ロックの発生又は予兆を検出し、積分器13をリセットできるようにした。疑似ロックの契機となる突発的な大きなオフセットの影響を低減するために積分器13に入力されるオフセット信号の絶対値を制限するリミッタあるいはオフセット補償信号の絶対値を制限するリミッタを設けてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの再生信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用範囲はBlu-ray Disc(以下、BDという)に限定されないが、以下における説明ではBDを前提とし、また、用語もBDで使用されるものを基本とする。
【0003】
2007年現在、実用化されている最大容量の民生用光ディスクとしてはBDがある。光ディスクの面記録容量は、第一義的には記録及び再生に用いる記録面上における光スポットの大きさで制限される。そして、光スポットの大きさは主に光の波長と対物レンズの開口比で決定される。BDでは、大容量化を実現するために使用する光の波長を405 nm、対物レンズの開口比を0.85としている。その結果、BDの容量は、1記録面当り25GBで、2層で50GBのディスクを実現している。今後、大幅な記録容量の増大をもたらすほどに使用する光の波長を更に短くすることも対物レンズの開口比を大きくすることも困難であることは当業者であれば理解していることである。
【0004】
上記理由により、今後の大容量化の有力な手段として記録層の多層化が有力視されている。ただし、多層化にも課題があり、その主なものとしては、層間干渉と再生光量の低下が挙げられる。よって、単純に記録層数を増やすことは必ずしも得策ではなく、同時に線記録密度を高める必要性がある。
【0005】
線記録密度を高めていくと、符号間干渉が強く作用し、特に最短(2T:Tは、チャネルクロック周期)マーク及びスペースに与える影響は著しく、例えば、チャネルビット長を55.9 nm(面記録容量33.3GBに相当)にまで短くした場合、最短マーク及びスペースの長さはBD光学系の光学分解能以下となる。即ち、分解能は0となる。この様な状況下においてもヴィタビ復号を用いることにより復号性能を確保することは可能である。ヴィタビ復号を行う前提としてはチャネルクロックが再生信号と十分な精度で同期している必要がある。しかし、最短マーク及びスペースの分解能が0となることにより、この点において問題を生じる。つまり、チャネルクロックを再生信号から生成するPLL (phase locked loop)の動作に影響を与える。
【0006】
図2に、極めて基本的な復号信号処理系の構成例を示す。本明細書中では、アナログ再生信号をAD(analog to digital)変換してから信号処理を行うヴィタビ復号系を前提とする。よって、本明細書中では、専らAD変換後のデジタル信号を再生信号と呼ぶものとする。ただし、当業者であればAD変換前のアナログ信号とデジタル信号を混同する恐れはないので、簡潔のために文脈上明らかな場合はどちらも単に再生信号と呼ぶこととする。
【0007】
アナログ再生信号は、アナログ等化器1で等化された後に、AD変換器2でデジタル信号へ変換される。この際のサンプリングのタイミングは、チャネルクロックで決定される。その後、位相比較器6でチャネルクロックとの位相比較を行う。位相誤差信号は、ループフィルタ9で平滑化され、DA変換器11でアナログ信号に変換された後に、VCO(voltage controlled oscillator)10の制御電圧信号として入力される。VCOは、この入力電圧信号に指示された周波数で発振し、これをチャネルクロックとして用いる。即ち、AD変換器2を初めとし、位相比較器6、ループフィルタ9、DA変換器11、ヴィタビ復号器7の各要素の駆動クロックとなる。この閉ループがPLLを構成していて、チャネルクロックを再生信号のクロックに同期させる働きがあること及び、その動作の詳細に関しては当業者には周知であるので詳述はしない。また、ヴィタビ復号器に関してもその動作の詳細は本発明には直接的に関係しないので、ここでは詳述しない。
【0008】
図3は、位相比較の原理を説明する図である。位相比較は、エッジ(再生信号が0レベルを交差する箇所)、即ち、マークとスペースの境界に対応する点を用いて行う。チャネルクロックは、エッジに同期している。一方、AD変換のタイミングは、エッジを基準としたクロックタイミングからT/2(T:チャネルクロック周期)ずらしている。以下においては、簡単のために、チャネルクロック時刻nT(n:整数)のT/2前にサンプリングされた再生信号をx(n)と表記することにする。図3で、チャネルクロックとエッジの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点を、それぞれ破線と白抜き抜きの円で示す。エッジは、時刻nTにある。この時のエッジを挟む2つのサンプル点の値をそれぞれx(n+1), x(n)とする。また、エッジ付近で再生信号は、直線的であると仮定する。この時、x(n)=-x(n+1)となっている。一方、同じエッジがチャネルクロックに対して位相がΔT遅れている場合を、実線と黒塗りの円で示す。エッジは、チャネルクロック時刻(n+1)TとnTの間にあるものとし、それぞれにおけるサンプル点の値をx(n+1), x(n)とする。明らかにx(n)≠-x(n+1)である。エッジの直線性を仮定すると、式(1)の関係にあることは自明である。
【0009】
【数1】
【0010】
即ち、再生信号をチャネルクロックでサンプリングし、エッジを判別し、エッジを挟む2点の再生信号レベルの差から位相誤差を検出することが出来る。
【0011】
このようにして信号のレベルから位相誤差を求める場合、再生信号に不要な直流成分が重畳されていると正しく位相誤差を求めることが出来なくなる。その様子を、図4を用いて説明する。不要な直流成分がなく、かつ、再生信号とチャネルクロックの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜きの円で示す。一方、再生信号とチャネルクロックの位相が同期した状態で直流成分がΔx重畳されている状態のエッジとサンプル点を、それぞれ実線と黒塗りの円で示す。再生信号とチャネルクロックの同期が取れている状態であっても直流成分が重畳されていると、式(1)の定義によって位相比較を行うと誤った位相誤差値を出力してしまうことになる。このため、再生信号の直流成分は、位相比較器に入力する前に高域通過フィルタを用いて除去する。しかし、その状態でも、再生信号にはパターンに依存した直流成分変動などが残留している。
【0012】
PRML(partial response most-likely)復号法は、連続する複数時刻の再生信号と目標信号を比較しながら、最も確からしいビット列に復号するものである。ML(most-likely)復号法の1つであるヴィタビ復号法は、回路規模が大幅に削減できるため広く実用化されている。高速化,大容量化に対応するために、光ディスクの再生手段としてもPRML法が応用されるようになって来た。目標信号は、不要な直流成分が皆無であることを前提としているので、再生信号を目標信号と比較する際に、再生信号に直流成分が重畳されていると復号性能を劣化させる。
【0013】
以上に述べたように、再生信号に直流オフセットが印加されると再生性能が劣化する。従って、再生信号から直流オフセットを除去する手段として高域通過フィルタを初めとしてDFBやJFBが用いられてきた。
【0014】
高域通過フィルタは、信号にアシンメトリが無い場合、十分に長い時間での平均では直流成分はカットされている。しかし、記録パターンに依存する局所的な直流成分変動は残留する。また、信号にアシンメトリがある場合には、その影響による直流オフセットを生じる。これらによる直流オフセットを除去する手段としては、DFB(duty feedback)スライサーがある。DFBスライサーは、光ディスクに記録されるビット列が、一定以上の区間で積分した場合に”0”と”1”の出現確率が等しくなる変調符号を用いて変調されていることを用いるものである。
【0015】
DFBスライサーの構成の一例を図5に示す。再生信号は、AD変換器2で離散化された後、減算器3を用いて後述する手段で検出されたオフセット補償信号を減じる。この際の図の表記としては、減ずる側の信号の側に“−”を、減ぜられる側の信号の側に“+”を付記している。この表記法は、本明細書全体に適用するものとする。まず、再生信号をリミッタ4に通す。リミッタ4は、図6に示すように、再生信号を予め指定された値(リミットレベル)でクリップする。この信号をリミット信号と呼ぶ。先に述べたように“0”(リミット信号が負)と“1”(リミット信号が正)の出現確率は等しいから、リミット信号を積分器で積分した値が再生信号のオフセット成分となる。つまり、オフセットが0であれば、積分の結果は0であるのに対し、仮に再生信号に正のオフセットが存在する場合、リミット信号が正の期間が増大するために積分結果も正の値を取る。よって、積分結果を再生信号から減じることによりオフセットを除去できる。実際には、フィードバックループを構成しているので、ループの安定性や応答速度を考慮した適切なループゲインを乗じてから減じる。
【0016】
リミットレベルを再生信号振幅より十分に小さく設定することにより、リミット信号の積分結果は再生信号の正負の時間割合のみに依存するようになるので、再生信号にアシンメトリがある場合でも、その影響を殆ど受けずにオフセットを除去することが可能である。
【0017】
上記からも解るように、DFBスライサーが正常に動作できる条件は、再生信号の符号がある程度以上の確からしさで判別できることである。高線記録密度化により最短マーク及びスペースの分解能が0となった場合、これらの信号はほぼ0レベルとなる。しかし、実際には符号間干渉の影響などにより僅かに正或いは負へと不確定的に振れる。従って、DFBスライサーによる再生信号の正負の判別精度は低下する。再生信号にアシンメトリが無い場合は、著しい支障を来たすことは無い。しかし、再生信号に大きなアシンメトリがある場合には、著しく誤った結果をもたらすことがある。その一例を図7に示す。
【0018】
この時のチャネルビット長は、55.9 nmで、アシンメトリが15%である。図7中で破曲線が再生信号で、実線が位相誤差信号である。PLLはロック状態であるのにもかかわらず、各エッジで大きな位相誤差が検出されている。また、その符号は同一スペース或いはマークの左右のエッジで異符合となっている。これは、再生信号にオフセットがあるためである。即ち、定常的にオフセットがあるとエッジの中点が0レベルと一致せず、かつ、マーク或いはスペースの左右のエッジとも同じ方向にオフセットしているから位相誤差の定義により左右のエッジで異符号となる。このように、定常的に大きな位相誤差がPLLループ内で検出され続けると平均位相誤差が大きくなり、チャネルクロックのジッター増大やループの不安定化を招く。
【0019】
上記の他に、DFBスライサーが対処困難な現象には、2層ディスクの層間干渉などのようにディスク構造に起因するなどしてディスク上の極めて広範囲において再生性能を劣化させるものがある。図8に、層間干渉によって撹乱された再生信号の例を示す。これは、書き換え可能な2層のBDディスクのL1層、即ち、表面に近い側の層を再生した場合の例である。層間干渉により、本来ほぼ平坦であるべき上下の包絡線が共に大きな外乱を受けていることが解る。L1層再生時は、当該層に再生光が合焦されている。再生光の一部は、L1層を透過し、L0層にて反射され、その一部は光ヘッドのフォトディテクターにまで達する。フォトディテクター上にL0, L1両層からの光が同時に到達するために、両光による干渉が起こる。そして、一般にL0層とL1層の間隔はディスク上の位置毎に僅かに異なる。この様な状況下でディスクを再生するとフォトディテクター上におけるL0, L1両層からの光による干渉パターンは時間と共に変化する。その結果、図8に示すような再生信号の撹乱を生じる。図に示すような信号の乱れがあると、欠陥の場合と同様に、その箇所に記録されている信号を正しく復号することが出来ずにバーストエラーとなる。図8に示す例では、数100バイトの長さのバーストエラーとなる。これは、Blu-ray Discシステムのエラー訂正符号の能力からすれば再生には全く支障を来たすことの無い長さである。しかし、ディスクの接線方向で層間隔の変化が大きな領域を再生する場合、フォトディテクター上での干渉の状況もより急激に変化するので、図に示したような信号の乱れが出現する頻度が高くなり、1つのrecording unit block (RUB)中に複数回出現するようになる。この様な状況下では、リードエラーを起こす確率は無視できなくなる。尚、同様の再生信号攪乱を生じさせる要因としては、指紋やトラックデビエーションなどがある。
【0020】
DFBスライサーの他に再生信号のオフセットを除去する手段としてJFB(Jitter Feedback)オフセット補償器がある。これは、図4に示すように、本来PLLが完全にロックした状態では、位相誤差が0、即ち、エッジの中点が0レベルに一致するのに対し、PLLがロックした状態で再生信号にオフセットを生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れることを用いたものである。今、エッジは時刻nTにあり、PLLはロックしているものとする。エッジ近傍での再生信号の直線性を仮定すると、このエッジにおけるオフセットは式(2)で与えられる。
【0021】
【数2】
ここで、Sgn(x)は、xの符号を与える関数である。
【0022】
図9に示すように、検出されたオフセットを積分して再生信号から差し引くフィードバックループを構成することにより、オフセット補償を行うことが出来る。JFBオフセット補償器はDFBスライサーと異なり、”0”と”1”の出現確率を用いているわけでないので、積分時間を短くしても誤った結果を与えにくいという特長を有する。積分時間は、エッジの出現頻度及び雑音の影響を低減することを主眼に決定できるのでDFBスライサーの場合よりも短くできる。よって、2層ディスクにおける層間干渉のような比較的速い現象に対する適応性が高いという特長を有する。尚、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。
【0023】
JFBオフセット補償器には上記のような特長があるものの、疑似ロックに陥ることがあるという非常に重大な欠点を有している。JFBオフセット補償器の疑似ロックとは、図10に示すように何らかの原因により再生信号に大きなオフセットを生じた結果、再生信号の本来エッジではない箇所をエッジと誤判別し(これを疑似エッジと呼ぶ)、その箇所を0レベルにするようなフィードバックが掛かったままになった状態を言う。疑似ロックが発生すると、疑似エッジは本来のエッジではないので位相比較器が出力する位相誤差は意味を持たず、その結果、PLLは再生信号に対してロックすることが出来なくなり、正しい復号が不可能となる。疑似ロックに陥るきっかけとしては、欠陥や2層ディスクの層間干渉など、再生信号のオフセットが急激かつ大きく変化する現象がある。つまり、JFBオフセット補償器は、2層ディスクの層間干渉のような現象に対処する能力がある一方で、それらによって疑似ロックに陥る可能性も有している。この理由により、JFBオフセット補償器の適用範囲は限定的である。
【0024】
【特許文献1】特開平11−296987号公報
【特許文献2】特開2006−4465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合には、従来のDFBスライサーは再生信号中の最短マーク及びスペースを正しく判別することが出来ない。特に、再生信号にアシンメトリがある場合には、DFBスライサーは著しく誤った結果を与えることがあり、その結果、復号に支障を来たすことがある。
【0026】
2層ディスクの層間干渉などによって乱された再生信号の特徴は、局所的な直流成分の変動を伴うことである。この時、直流成分が変動している区間は、BD1Xの場合で時間にして数10μs程度と短いのが特徴である。前述のように再生信号に直流成分が重畳されるとPLL及びヴィタビ復号器の性能を劣化させる。再生信号から不要な直流成分を除去する手段としては、前述のようにDFBスライサーがある。しかし、DFBスライサーは、”0”と”1”の出現確率が等しくなっていることを用いているので、統計的な揺らぎを排除するためには十分に長い積分時間を必要とする。即ち、DFBスライサーでは、層間干渉などによる直流成分変動に対応することは出来ない。
【0027】
JFB直流補償器は、特許文献2にあるように、PLLがロックした状態で再生信号に直流変動を生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れる事を利用し、エッジの中点レベルを積分することにより直流レベルを得ている。この方式では、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。従って、本方式単独での直流成分変動補償は困難である。また、重畳された直流成分の振幅が非常に大きい場合、0レベルを挟む2点が本来のエッジの位置からずれてしまうために誤った結果を得てしまうという問題点を有する。本発明で特に対象としている2層ディスクの層間干渉などによる直流成分変動は、上述のようにDFBスライサーの動作速度と比較して速い現象で、かつ、その振幅も再生信号振幅の数10%もあるので、疑似エッジを検出してしまう状況に陥りやすい。
【0028】
一方、ヴィタビ復号器も再生信号のレベルに合わせて適応的にヴィタビ復号器の目標信号レベル(ターゲットレベル)を追従させることにより再生信号の直流成分変動に対応することが出来る。この技術については、特許文献1に記されている。この技術では、ヴィタビ復号を行う際に用いるターゲットレベルを再生信号に対して追従させているので、欠陥検出機構で検出できない短い欠陥などの影響を受けにくくする必要がある。従って、ターゲットの追従速度を決定する積分器の積分時間は、微小な欠陥などに過度に反応しないだけの長さにする必要がある。よって、適応ヴィタビ復号器も層間干渉のような局所的直流成分変動に対応するのには不適である。
【0029】
本発明が解決しようとしている課題は、線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合においても、また、2層ディスクの層間干渉のような局所オフセット変動を低減し、PLL及びヴィタビ復号器の性能劣化を抑制可能な再生信号オフセット補償器及びそれを用いた光ディスクドライブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、本発明に基づくJFBオフセット補償器では、疑似ロックの発生又は予兆を検出する手段と、オフセット信号を積分する積分器をリセットする手段を有する。疑似ロックの発生又は予兆が検出されたとき積分器をリセットする。
【0031】
好ましい態様では、積分器に入力されるオフセット信号の絶対値を制限する手段や、オフセット補償信号の絶対値を制限する手段を有する。また、再生信号の差分信号を用いて疑似エッジを位相比較及びオフセット検出から除外する手段を設けるのも有効である。さらに、位相比較器へ入力される信号の雑音を低減させるための手段、あるいはPLLのロック状態を監視し、その状態に応じてJFBオフセット補償器の動作を制御する手段を設けることも有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0かつ再生信号にアシンメトリがある場合でも十分な再生性能が保証される。また、2層ディスクの層間干渉のような局所オフセット変動も低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1に、本発明によるオフセット補償器の一例を示す。図1には、本発明の実施に必要な部分だけを描いており、その他の再生信号処理系は簡単化のために省略してある。
【0034】
本発明では、再生信号からオフセット成分を除去する方式としてJFBオフセット補償器を基本としたものを用いている。即ち、アナログ再生信号は、AD変換器2で離散的な再生信号に変換された後に、減算器3においてオフセット補償信号と加算され、位相比較器6に入力される。位相比較器6は、位相誤差を出力すると共に背景技術の項で説明したように各エッジにおけるオフセット成分も同時に出力する。オフセット成分は、積分器13によって平滑化され、その結果がオフセット補償信号である。ここまでは、従来のJFBオフセット補償器と同じである。
【0035】
本発明では、JFBオフセット補償器の実用上、最大の課題である疑似ロックを防止するための手段を設けていることに特徴がある。即ち、疑似ロックの発生若しくは発生の予兆を検出する手段を設け、これらを検出した場合には積分器13の値をリセット(0にする)する。これにより、誤ったオフセット補償信号を再生信号から差し引き続ける期間を最小にすることが出来、PLLのロックが外れるのを防ぐことが出来る。
【0036】
図1の例では、監視器12が、積分器13のリセットを指示する。疑似ロックの発生若しくはその予兆は、以下のようにして検出する。減算器3の出力をリミッタ4に通し、リミッタ出力を移動平均器5に入力する。リミッタ4の働きは、背景技術の項で説明した通りであるから、移動平均器5の出力はJFBオフセット補償後の再生信号のオフセット成分である。よって、JFBオフセット補償器が正常に動作している場合には、移動平均器5の出力は0若しくは絶対値の小さな値となる。反対に、JFBオフセット補償器が正常に動作していない場合には、移動平均器5の出力は、有意の大きな値を取る。監視器12の動作としては、移動平均器5の出力の絶対値が予め設定された閾値を超えた場合に積分器13をリセットする。
【0037】
上の動作方式で疑似ロックを防止することは可能である。しかし、これだけでは十分にPLLの動作を保証できない場合がある。例えば、指紋や層間干渉などにより突発的に大振幅のオフセットを生じたりした際に、位相比較器で検出されたオフセットが実際のオフセットとは反対の符号で検出されてしまうことがある。その様子を図11に示す。
【0038】
チャネルクロックとエッジの位相が完全に同期し、オフセットが0である場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜き抜きの円で示す。エッジは、時刻nTにある。この時のエッジを挟む2つのサンプル点の値をそれぞれx(n+1), x(n)とする。また、エッジ付近で再生信号は、直線的であると仮定する。この時、x(n)=-x(n+1)となっている。一方、同一箇所でオフセットがΔx重畳されている場合を実線と黒塗りの円で示す。ここで、1/2<Δx<1である。このようにオフセットの大きさが著しく大きいために、位相比較器は本来のエッジを認識できずに時刻(n-1)Tにおける0クロスをエッジと誤認識してしまう(疑似エッジ)。今の場合、オフセットを印加する前のx(n-1), x(n)の値がそれぞれ-3/2と-1/2であるから、この疑似エッジにおいて検出されたオフセットは、式(2)に従うと次の様に求められる。
【0039】
【数3】
【0040】
また、1/2<Δx<1であるオフセットを与えているので明らかに式(3)で求められたオフセットは負の値をとる。これは、明らかに誤った結果である上に、オフセットを却って大きくする方向に作用するのでPLLの動作に大きな影響を与える。この様な事態を防止するために監視器は、移動平均器出力と同時にオフセット補償信号、即ち、積分器出力も同時に監視して、上記のような状態が発生した場合に積分器をリセットするモードも備えている。即ち、積分器出力と移動平均器出力が共に有意な大きさを持ち、かつ、両者の符号が互いに異なる場合に積分器をリセットする。また、このモードでは積分器をリセットする代わりに積分器の値を反転させることも有効である。反転させた場合も、効果は同じである。
【0041】
また、突発的に大きなオフセットが再生信号に重畳されることにより生じるJFBオフセット補償器の誤動作を防止するのには、位相比較器から出力されるオフセット信号の絶対値に制限を設けること、及び、オフセット補償信号の絶対値に制限を設けることが共に有効である。図12は、位相比較器6のオフセット出力と積分器13から出力されるオフセット補償信号にリミッタ4a,4bを挿入することにより上記の制限を実現した例を示すものである。オフセット出力の絶対値を制限することにより雑音による単発的な大きな誤ったオフセット信号の影響を低減できる。また、オフセット補償信号の絶対値を制限することにより、疑似ロックのきっかけとなるような大きなオフセット補償信号が再生信号に加算されるのを防ぐ。ただし、これらの制限を掛けることによりJFBオフセット補償器の性能に一部制限が出る。即ち、オフセット出力の絶対値を制限することにより大きなオフセット変動が生じた場合の追従性が制限される。また、オフセット補償信号の絶対値を制限することにより、比較的緩やかながら大振幅のオフセット変動が生じた場合に最大変位にまで追従できなくなる可能性がある。なお、リミッタ4a,4bは、どちらか一方だけを設けても誤動作防止に有効である。
【0042】
線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合、最短マーク及びスペースに関連したパターンからの再生信号ではエッジが定義できない。そのような波形の例として、PR(1,2,2,2,1)のターゲット波形の例を図13に示す。図の例では、2T信号の分解能が0で、そのために2T信号は0レベルに一致する。よって、エッジが定義できない。しかし、実際の波形では、これに符号間干渉や雑音、その他の局所的なオフセットが重畳されるために疑似エッジを生じる。この様な疑似エッジで位相比較又はオフセット検出を行うと誤った結果を与え、PLLの動作を不安定化する可能性がある。
【0043】
このような疑似エッジによる悪影響は極力避ける必要がある。本発明においては、位相比較器を改良することにより疑似エッジを排除することが出来る。その原理を、図14を用いて説明する。再生信号の時間差分信号y(n)は、先の表記に従って再生信号をx(n)と表した場合、式(4)で定義される。
【0044】
【数4】
【0045】
図14において、矢印で示された真のエッジとその前後の2点ずつ、つまり連続4時刻(3区間)に着目すると、この間、再生信号は単調に増加又は減少していることが解る。また、エッジ付近では、再生信号の変化率は大であるから差分信号の絶対値が大となっている。実線の楕円で囲った部分に着目すると、差分信号の絶対値が3点連続で1以上となっている。一方、2T信号の前後においては再生信号の単調増加又は減少するのは連続2区間までであり、また差分信号も1時刻は0近傍の値を取る。破線の楕円で囲われた部分に着目すると、疑似エッジ近傍では差分信号のうち1点は0となっている。これらの特性を利用することにより、見せかけのエッジを排除することが出来る。即ち、式(5)の条件を満たすものだけをエッジとして扱う。
【0046】
【数5】
ここで、aは予め指定した閾値で正の値を取る。図15に、この判定機能を実施した位相比較器の構成例を示す。遅延器14は、1チャネルクロックだけ信号を遅延させる。3つの遅延器を用いることにより、この回路の内部には、x(n-2)からx(n+1)までの4時刻の再生信号が存在する。これらから3時刻の差分信号y(n-1)からy(n+1)を得ると同時にx(n)とx(n-1)を位相比較器に入力する。位相比較器は、従来の定義に従ってエッジと判断した場合には位相誤差とオフセットを出力する。位相誤差及びオフセットは、それぞれ出力スイッチ15に入力される。
【0047】
一方、先に得られた差分信号y(n-1), y(n), y(n+1)は、判定器16に入力される。判定器は、各差分信号の符号及び絶対値を評価し、式(6)を満たすか否かを判定する。
【0048】
【数6】
【0049】
この判定結果は、各出力スイッチ15に入力され、各出力スイッチ15は判定結果が真であった場合に位相誤差又はオフセットを出力する。以上により、位相誤差又はオフセット検出時に最短マーク及びスペースの分解能が0若しくはきわめて小さいことにより生じる疑似エッジによる影響を排除することが出来る。
【0050】
先にも述べたように、JFBオフセット補償器は、原理的にDFBスライサーよりも積分時間を短く設定することが可能である。その分、高速な現象に対しても効果を発揮できる。しかし、雑音が大きい場合には、積分時間を短く設定するとオフセット補償信号の雑音も大きくなり、オフセット補償及び位相比較の精度を低下させる。図16は、位相比較器6の前に低域通過フィルタとしてFIRフィルタ17を挿入することにより、このような雑音の影響を低減した例である。FIRフィルタのタップ数は15で、各係数は表1の通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
また、この時のFIRフィルタの振幅周波数特性を図17に示す。図17から解るように、3T信号までを通過させ、2T信号よりも高い周波数領域で減衰特性を有する。これにより、再生信号よりも高い周波数領域に存在する雑音を抑圧することが出来る。図18は、FIRフィルタ挿入の有無による再生性能の差を示したものである。横軸は、アンプ雑音で再生信号の包絡線振幅に対する相対振幅で表現されている。縦軸は、バイトエラーレートである。明らかにFIRフィルタを挿入した場合の方が、エラーレートが低くなっている。なお、図16において、減算器3の直後にFIRフィルタ17を挿入とし、FIRフィルタ17を通過した信号を位相比較器6と共にリミッタ4に入力するようにしても良い。
【0053】
図19は、シミュレーションにより本発明の効果を確かめた例である。テスト信号として、BD光学系の理想的な光学ステップ応答とBDの符号化ルールに則って発生させたビット列パターンを元に作成した合成波形に矩形波信号を重畳したものを用いた。この過程は、当業者であれば容易に理解できるので詳述は省く。また、波形の長さは、100000Tであった。図19の横軸は矩形波振幅で、再生信号の包絡線振幅に対する相対振幅で表現されている。縦軸は、矩形波の1エッジ当りのビットエラーの数である。比較のためにDFBスライサー及び従来のJFBオフセット補償器の結果も示してある。DFBスライサーは、矩形波振幅の増大と共にエラーの数が急増し、また、矩形波振幅が-18 dBより大きくなるとPLLがロック状態を保てなくなり、エラーが計測不能となる。従来方式のJFBオフセット補償器は、矩形波振幅に対するエラーの増大率がDFBスライサーよりも小さく、矩形波振幅が大きな領域では絶対値も約1桁小さい。しかし、矩形波振幅が-17 dB以上の領域では、疑似ロックが発生してエラー計測が不能であった。本発明によるJFBオフセット補償器は、矩形波振幅が-18 dB以下においては従来のJFB補償器と同等の結果である。しかし、矩形波振幅が-17 dB以上の領域においても疑似ロックは発生しておらず、本発明の有効性が確かめられた。
【0054】
JFBオフセット補償器は、PLLがロックしていないと正常な動作が保障されない。図20は、この問題に対処するためにPLLの動作状態を監視しながらJFBオフセット補償器の動作を制御できる構成の例である。構成及び動作は、図1とほぼ同じである。異なるのは、PLLの動作を監視するロックモニター18を有する点である。ロックモニター18には、位相比較器6の位相誤差が入力される。ロックモニター18は、その実効値の時間平均を評価し、その値が予め指定した値よりも大きい場合にはPLLはロックしていないものと判断する。この様な場合、ロックモニター18はJFBオフセット補償器の積分器13の値を0にするように積分器13に指示を出す。そして、PLLがロックしたと判断すると、積分器13の動作を有効にする。これにより、未記録部から記録部に遷移した直後のように、PLLが再生信号のクロックに対してロックできていない期間におけるJFBオフセット補償器の異常動作を防止することが出来る。
【0055】
図21は、本発明を適用した光ディスクドライブの構成略図を示す。図20には、本発明に関連して説明する必要のある部分のみを示し、他の部分は図示を省略している。同様に、各部の詳細に関しても、当業者なら容易に理解可能な部分に関しては説明を省略する。なお、本実施例では光ディスクドライブのアナログ回路の大部分を集積したAFE(analog front end)−ICとデジタル回路の大部分を集積したDSP(digital signal processor)という2種類のLSIを用いる構成になっている。この様にLSIを組み合わせる構成は、光ディスクドライブでは一般的であり、その場合、通常、アナログ等化器は、AFE−IC内に集積される。
【0056】
まず、動作の概要を説明する。光ディスク101に記録されている情報は、ピックアップ102により光学的に読み出され電気信号(再生信号)に変換される。再生信号は、AFE−IC103で一定の振幅に増幅され、また、内蔵されているアナログ等化器で等化された後に、DSP104中のPLLブロック109に入力される。PLLブロックは、PLL並びに関連するDFBスライサーやJFBオフセット補償器を含むもので、即ち、上記実施例の図5及び図1又は図13又は図17又は図21を内包する。PLLブロック109でチャネルクロックを再生信号のクロックに同期させた後に、再生信号はヴィタビ復号器110でビット列へと復号される。復号されたビット列は、ECCデコーダ106にてRUB単位でエラー訂正処理を行い、ユーザデータを得る。ユーザデータは、インターフェース回路107を介してドライブ外部へと出力される。
【0057】
先に述べたように、PLLブロック109内には、PLLのロック状態を示す信号が存在し、これらは、通常、JFBオフセット補償器の動作を制御するのに用いられる。本例では、ファームウェア108からこの信号の参照を可能としている。これにより、ファームウェア108は、再生中に発生した問題を知ることができる。本例では、あるブロックを再生中にリードエラーが起きた場合、PLLロック状態信号をモニターすることにより当該ブロックを再生中にPLLがアンロック状態に陥ったか否かを調べる。該当する場合、ファームウェア108は、PLLの時定数を一時的に増減するようにDSPにPLLパラメータを設定し、アンロック状態の回避を試みる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によると、光ディスクドライブ、特に多層及び高い線記録密度を有するディスクを再生する際の再生性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を実施した一例を示す図。
【図2】基本的な光ディスク再生信号処理系の例を説明する図。
【図3】位相比較の原理を説明する図。
【図4】オフセットが位相比較に及ぼす影響を説明する図。
【図5】DFBスライサーの構成例を示す図。
【図6】DFBスライサーにおけるリミット信号を説明する図。
【図7】高い線記録密度とアシンメトリの影響によりDFBスライサーが正しく動作できない例を説明する図。
【図8】2層ディスクにおける層間干渉による再生信号への影響の例を示す図。
【図9】JFBオフセット補償器の構成例を示す図。
【図10】JFBオフセット補償器における疑似ロックを説明する図。
【図11】大きなオフセットにより異符号のオフセットが検出されてしまう例を示す図。
【図12】オフセット出力及びオフセット補償信号の絶対値を制限する機能を付加した場合の例を示す図。
【図13】分解能が0であるためにエッジを定義できない波形の例を示す図。
【図14】疑似エッジを排除する方法の原理を説明する図。
【図15】疑似エッジを排除できる位相比較器の構成例を示す図。
【図16】FIR等化器を位相比較器の前に挿入した構成例。
【図17】FIR等化器の振幅周波数特性例。
【図18】FIRフィルタ挿入の有無による再生性能の差異を示す図。
【図19】本発明の有効性を確かめたシミュレーション結果を示す図。
【図20】PLLの動作状態によってJFBオフセット補償器の動作を制御する場合の構成例を示す図。
【図21】本発明を適用した光ディスクドライブの構成例。
【符号の説明】
【0060】
1:アナログ等化器、2:AD変換器、3:減算器、4:リミッタ、5:移動平均器、6:位相比較器、7:ヴィタビ復号器、9:ループフィルタ、10:VCO,11:DA変換器、12:監視器、13:積分器、14:遅延器、15:出力スイッチ、16:判定器、17:FIRフィルタ、18:ロックモニター、101:ディスク、102:ピックアップ、103:AFE−IC、104:DSP,106:ECCデコーダ、107:インターフェース回路、108:ファームウェア、109:PLLブロック、110:ヴィタビデコーダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの再生信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用範囲はBlu-ray Disc(以下、BDという)に限定されないが、以下における説明ではBDを前提とし、また、用語もBDで使用されるものを基本とする。
【0003】
2007年現在、実用化されている最大容量の民生用光ディスクとしてはBDがある。光ディスクの面記録容量は、第一義的には記録及び再生に用いる記録面上における光スポットの大きさで制限される。そして、光スポットの大きさは主に光の波長と対物レンズの開口比で決定される。BDでは、大容量化を実現するために使用する光の波長を405 nm、対物レンズの開口比を0.85としている。その結果、BDの容量は、1記録面当り25GBで、2層で50GBのディスクを実現している。今後、大幅な記録容量の増大をもたらすほどに使用する光の波長を更に短くすることも対物レンズの開口比を大きくすることも困難であることは当業者であれば理解していることである。
【0004】
上記理由により、今後の大容量化の有力な手段として記録層の多層化が有力視されている。ただし、多層化にも課題があり、その主なものとしては、層間干渉と再生光量の低下が挙げられる。よって、単純に記録層数を増やすことは必ずしも得策ではなく、同時に線記録密度を高める必要性がある。
【0005】
線記録密度を高めていくと、符号間干渉が強く作用し、特に最短(2T:Tは、チャネルクロック周期)マーク及びスペースに与える影響は著しく、例えば、チャネルビット長を55.9 nm(面記録容量33.3GBに相当)にまで短くした場合、最短マーク及びスペースの長さはBD光学系の光学分解能以下となる。即ち、分解能は0となる。この様な状況下においてもヴィタビ復号を用いることにより復号性能を確保することは可能である。ヴィタビ復号を行う前提としてはチャネルクロックが再生信号と十分な精度で同期している必要がある。しかし、最短マーク及びスペースの分解能が0となることにより、この点において問題を生じる。つまり、チャネルクロックを再生信号から生成するPLL (phase locked loop)の動作に影響を与える。
【0006】
図2に、極めて基本的な復号信号処理系の構成例を示す。本明細書中では、アナログ再生信号をAD(analog to digital)変換してから信号処理を行うヴィタビ復号系を前提とする。よって、本明細書中では、専らAD変換後のデジタル信号を再生信号と呼ぶものとする。ただし、当業者であればAD変換前のアナログ信号とデジタル信号を混同する恐れはないので、簡潔のために文脈上明らかな場合はどちらも単に再生信号と呼ぶこととする。
【0007】
アナログ再生信号は、アナログ等化器1で等化された後に、AD変換器2でデジタル信号へ変換される。この際のサンプリングのタイミングは、チャネルクロックで決定される。その後、位相比較器6でチャネルクロックとの位相比較を行う。位相誤差信号は、ループフィルタ9で平滑化され、DA変換器11でアナログ信号に変換された後に、VCO(voltage controlled oscillator)10の制御電圧信号として入力される。VCOは、この入力電圧信号に指示された周波数で発振し、これをチャネルクロックとして用いる。即ち、AD変換器2を初めとし、位相比較器6、ループフィルタ9、DA変換器11、ヴィタビ復号器7の各要素の駆動クロックとなる。この閉ループがPLLを構成していて、チャネルクロックを再生信号のクロックに同期させる働きがあること及び、その動作の詳細に関しては当業者には周知であるので詳述はしない。また、ヴィタビ復号器に関してもその動作の詳細は本発明には直接的に関係しないので、ここでは詳述しない。
【0008】
図3は、位相比較の原理を説明する図である。位相比較は、エッジ(再生信号が0レベルを交差する箇所)、即ち、マークとスペースの境界に対応する点を用いて行う。チャネルクロックは、エッジに同期している。一方、AD変換のタイミングは、エッジを基準としたクロックタイミングからT/2(T:チャネルクロック周期)ずらしている。以下においては、簡単のために、チャネルクロック時刻nT(n:整数)のT/2前にサンプリングされた再生信号をx(n)と表記することにする。図3で、チャネルクロックとエッジの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点を、それぞれ破線と白抜き抜きの円で示す。エッジは、時刻nTにある。この時のエッジを挟む2つのサンプル点の値をそれぞれx(n+1), x(n)とする。また、エッジ付近で再生信号は、直線的であると仮定する。この時、x(n)=-x(n+1)となっている。一方、同じエッジがチャネルクロックに対して位相がΔT遅れている場合を、実線と黒塗りの円で示す。エッジは、チャネルクロック時刻(n+1)TとnTの間にあるものとし、それぞれにおけるサンプル点の値をx(n+1), x(n)とする。明らかにx(n)≠-x(n+1)である。エッジの直線性を仮定すると、式(1)の関係にあることは自明である。
【0009】
【数1】
【0010】
即ち、再生信号をチャネルクロックでサンプリングし、エッジを判別し、エッジを挟む2点の再生信号レベルの差から位相誤差を検出することが出来る。
【0011】
このようにして信号のレベルから位相誤差を求める場合、再生信号に不要な直流成分が重畳されていると正しく位相誤差を求めることが出来なくなる。その様子を、図4を用いて説明する。不要な直流成分がなく、かつ、再生信号とチャネルクロックの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜きの円で示す。一方、再生信号とチャネルクロックの位相が同期した状態で直流成分がΔx重畳されている状態のエッジとサンプル点を、それぞれ実線と黒塗りの円で示す。再生信号とチャネルクロックの同期が取れている状態であっても直流成分が重畳されていると、式(1)の定義によって位相比較を行うと誤った位相誤差値を出力してしまうことになる。このため、再生信号の直流成分は、位相比較器に入力する前に高域通過フィルタを用いて除去する。しかし、その状態でも、再生信号にはパターンに依存した直流成分変動などが残留している。
【0012】
PRML(partial response most-likely)復号法は、連続する複数時刻の再生信号と目標信号を比較しながら、最も確からしいビット列に復号するものである。ML(most-likely)復号法の1つであるヴィタビ復号法は、回路規模が大幅に削減できるため広く実用化されている。高速化,大容量化に対応するために、光ディスクの再生手段としてもPRML法が応用されるようになって来た。目標信号は、不要な直流成分が皆無であることを前提としているので、再生信号を目標信号と比較する際に、再生信号に直流成分が重畳されていると復号性能を劣化させる。
【0013】
以上に述べたように、再生信号に直流オフセットが印加されると再生性能が劣化する。従って、再生信号から直流オフセットを除去する手段として高域通過フィルタを初めとしてDFBやJFBが用いられてきた。
【0014】
高域通過フィルタは、信号にアシンメトリが無い場合、十分に長い時間での平均では直流成分はカットされている。しかし、記録パターンに依存する局所的な直流成分変動は残留する。また、信号にアシンメトリがある場合には、その影響による直流オフセットを生じる。これらによる直流オフセットを除去する手段としては、DFB(duty feedback)スライサーがある。DFBスライサーは、光ディスクに記録されるビット列が、一定以上の区間で積分した場合に”0”と”1”の出現確率が等しくなる変調符号を用いて変調されていることを用いるものである。
【0015】
DFBスライサーの構成の一例を図5に示す。再生信号は、AD変換器2で離散化された後、減算器3を用いて後述する手段で検出されたオフセット補償信号を減じる。この際の図の表記としては、減ずる側の信号の側に“−”を、減ぜられる側の信号の側に“+”を付記している。この表記法は、本明細書全体に適用するものとする。まず、再生信号をリミッタ4に通す。リミッタ4は、図6に示すように、再生信号を予め指定された値(リミットレベル)でクリップする。この信号をリミット信号と呼ぶ。先に述べたように“0”(リミット信号が負)と“1”(リミット信号が正)の出現確率は等しいから、リミット信号を積分器で積分した値が再生信号のオフセット成分となる。つまり、オフセットが0であれば、積分の結果は0であるのに対し、仮に再生信号に正のオフセットが存在する場合、リミット信号が正の期間が増大するために積分結果も正の値を取る。よって、積分結果を再生信号から減じることによりオフセットを除去できる。実際には、フィードバックループを構成しているので、ループの安定性や応答速度を考慮した適切なループゲインを乗じてから減じる。
【0016】
リミットレベルを再生信号振幅より十分に小さく設定することにより、リミット信号の積分結果は再生信号の正負の時間割合のみに依存するようになるので、再生信号にアシンメトリがある場合でも、その影響を殆ど受けずにオフセットを除去することが可能である。
【0017】
上記からも解るように、DFBスライサーが正常に動作できる条件は、再生信号の符号がある程度以上の確からしさで判別できることである。高線記録密度化により最短マーク及びスペースの分解能が0となった場合、これらの信号はほぼ0レベルとなる。しかし、実際には符号間干渉の影響などにより僅かに正或いは負へと不確定的に振れる。従って、DFBスライサーによる再生信号の正負の判別精度は低下する。再生信号にアシンメトリが無い場合は、著しい支障を来たすことは無い。しかし、再生信号に大きなアシンメトリがある場合には、著しく誤った結果をもたらすことがある。その一例を図7に示す。
【0018】
この時のチャネルビット長は、55.9 nmで、アシンメトリが15%である。図7中で破曲線が再生信号で、実線が位相誤差信号である。PLLはロック状態であるのにもかかわらず、各エッジで大きな位相誤差が検出されている。また、その符号は同一スペース或いはマークの左右のエッジで異符合となっている。これは、再生信号にオフセットがあるためである。即ち、定常的にオフセットがあるとエッジの中点が0レベルと一致せず、かつ、マーク或いはスペースの左右のエッジとも同じ方向にオフセットしているから位相誤差の定義により左右のエッジで異符号となる。このように、定常的に大きな位相誤差がPLLループ内で検出され続けると平均位相誤差が大きくなり、チャネルクロックのジッター増大やループの不安定化を招く。
【0019】
上記の他に、DFBスライサーが対処困難な現象には、2層ディスクの層間干渉などのようにディスク構造に起因するなどしてディスク上の極めて広範囲において再生性能を劣化させるものがある。図8に、層間干渉によって撹乱された再生信号の例を示す。これは、書き換え可能な2層のBDディスクのL1層、即ち、表面に近い側の層を再生した場合の例である。層間干渉により、本来ほぼ平坦であるべき上下の包絡線が共に大きな外乱を受けていることが解る。L1層再生時は、当該層に再生光が合焦されている。再生光の一部は、L1層を透過し、L0層にて反射され、その一部は光ヘッドのフォトディテクターにまで達する。フォトディテクター上にL0, L1両層からの光が同時に到達するために、両光による干渉が起こる。そして、一般にL0層とL1層の間隔はディスク上の位置毎に僅かに異なる。この様な状況下でディスクを再生するとフォトディテクター上におけるL0, L1両層からの光による干渉パターンは時間と共に変化する。その結果、図8に示すような再生信号の撹乱を生じる。図に示すような信号の乱れがあると、欠陥の場合と同様に、その箇所に記録されている信号を正しく復号することが出来ずにバーストエラーとなる。図8に示す例では、数100バイトの長さのバーストエラーとなる。これは、Blu-ray Discシステムのエラー訂正符号の能力からすれば再生には全く支障を来たすことの無い長さである。しかし、ディスクの接線方向で層間隔の変化が大きな領域を再生する場合、フォトディテクター上での干渉の状況もより急激に変化するので、図に示したような信号の乱れが出現する頻度が高くなり、1つのrecording unit block (RUB)中に複数回出現するようになる。この様な状況下では、リードエラーを起こす確率は無視できなくなる。尚、同様の再生信号攪乱を生じさせる要因としては、指紋やトラックデビエーションなどがある。
【0020】
DFBスライサーの他に再生信号のオフセットを除去する手段としてJFB(Jitter Feedback)オフセット補償器がある。これは、図4に示すように、本来PLLが完全にロックした状態では、位相誤差が0、即ち、エッジの中点が0レベルに一致するのに対し、PLLがロックした状態で再生信号にオフセットを生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れることを用いたものである。今、エッジは時刻nTにあり、PLLはロックしているものとする。エッジ近傍での再生信号の直線性を仮定すると、このエッジにおけるオフセットは式(2)で与えられる。
【0021】
【数2】
ここで、Sgn(x)は、xの符号を与える関数である。
【0022】
図9に示すように、検出されたオフセットを積分して再生信号から差し引くフィードバックループを構成することにより、オフセット補償を行うことが出来る。JFBオフセット補償器はDFBスライサーと異なり、”0”と”1”の出現確率を用いているわけでないので、積分時間を短くしても誤った結果を与えにくいという特長を有する。積分時間は、エッジの出現頻度及び雑音の影響を低減することを主眼に決定できるのでDFBスライサーの場合よりも短くできる。よって、2層ディスクにおける層間干渉のような比較的速い現象に対する適応性が高いという特長を有する。尚、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。
【0023】
JFBオフセット補償器には上記のような特長があるものの、疑似ロックに陥ることがあるという非常に重大な欠点を有している。JFBオフセット補償器の疑似ロックとは、図10に示すように何らかの原因により再生信号に大きなオフセットを生じた結果、再生信号の本来エッジではない箇所をエッジと誤判別し(これを疑似エッジと呼ぶ)、その箇所を0レベルにするようなフィードバックが掛かったままになった状態を言う。疑似ロックが発生すると、疑似エッジは本来のエッジではないので位相比較器が出力する位相誤差は意味を持たず、その結果、PLLは再生信号に対してロックすることが出来なくなり、正しい復号が不可能となる。疑似ロックに陥るきっかけとしては、欠陥や2層ディスクの層間干渉など、再生信号のオフセットが急激かつ大きく変化する現象がある。つまり、JFBオフセット補償器は、2層ディスクの層間干渉のような現象に対処する能力がある一方で、それらによって疑似ロックに陥る可能性も有している。この理由により、JFBオフセット補償器の適用範囲は限定的である。
【0024】
【特許文献1】特開平11−296987号公報
【特許文献2】特開2006−4465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合には、従来のDFBスライサーは再生信号中の最短マーク及びスペースを正しく判別することが出来ない。特に、再生信号にアシンメトリがある場合には、DFBスライサーは著しく誤った結果を与えることがあり、その結果、復号に支障を来たすことがある。
【0026】
2層ディスクの層間干渉などによって乱された再生信号の特徴は、局所的な直流成分の変動を伴うことである。この時、直流成分が変動している区間は、BD1Xの場合で時間にして数10μs程度と短いのが特徴である。前述のように再生信号に直流成分が重畳されるとPLL及びヴィタビ復号器の性能を劣化させる。再生信号から不要な直流成分を除去する手段としては、前述のようにDFBスライサーがある。しかし、DFBスライサーは、”0”と”1”の出現確率が等しくなっていることを用いているので、統計的な揺らぎを排除するためには十分に長い積分時間を必要とする。即ち、DFBスライサーでは、層間干渉などによる直流成分変動に対応することは出来ない。
【0027】
JFB直流補償器は、特許文献2にあるように、PLLがロックした状態で再生信号に直流変動を生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れる事を利用し、エッジの中点レベルを積分することにより直流レベルを得ている。この方式では、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。従って、本方式単独での直流成分変動補償は困難である。また、重畳された直流成分の振幅が非常に大きい場合、0レベルを挟む2点が本来のエッジの位置からずれてしまうために誤った結果を得てしまうという問題点を有する。本発明で特に対象としている2層ディスクの層間干渉などによる直流成分変動は、上述のようにDFBスライサーの動作速度と比較して速い現象で、かつ、その振幅も再生信号振幅の数10%もあるので、疑似エッジを検出してしまう状況に陥りやすい。
【0028】
一方、ヴィタビ復号器も再生信号のレベルに合わせて適応的にヴィタビ復号器の目標信号レベル(ターゲットレベル)を追従させることにより再生信号の直流成分変動に対応することが出来る。この技術については、特許文献1に記されている。この技術では、ヴィタビ復号を行う際に用いるターゲットレベルを再生信号に対して追従させているので、欠陥検出機構で検出できない短い欠陥などの影響を受けにくくする必要がある。従って、ターゲットの追従速度を決定する積分器の積分時間は、微小な欠陥などに過度に反応しないだけの長さにする必要がある。よって、適応ヴィタビ復号器も層間干渉のような局所的直流成分変動に対応するのには不適である。
【0029】
本発明が解決しようとしている課題は、線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合においても、また、2層ディスクの層間干渉のような局所オフセット変動を低減し、PLL及びヴィタビ復号器の性能劣化を抑制可能な再生信号オフセット補償器及びそれを用いた光ディスクドライブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、本発明に基づくJFBオフセット補償器では、疑似ロックの発生又は予兆を検出する手段と、オフセット信号を積分する積分器をリセットする手段を有する。疑似ロックの発生又は予兆が検出されたとき積分器をリセットする。
【0031】
好ましい態様では、積分器に入力されるオフセット信号の絶対値を制限する手段や、オフセット補償信号の絶対値を制限する手段を有する。また、再生信号の差分信号を用いて疑似エッジを位相比較及びオフセット検出から除外する手段を設けるのも有効である。さらに、位相比較器へ入力される信号の雑音を低減させるための手段、あるいはPLLのロック状態を監視し、その状態に応じてJFBオフセット補償器の動作を制御する手段を設けることも有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0かつ再生信号にアシンメトリがある場合でも十分な再生性能が保証される。また、2層ディスクの層間干渉のような局所オフセット変動も低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1に、本発明によるオフセット補償器の一例を示す。図1には、本発明の実施に必要な部分だけを描いており、その他の再生信号処理系は簡単化のために省略してある。
【0034】
本発明では、再生信号からオフセット成分を除去する方式としてJFBオフセット補償器を基本としたものを用いている。即ち、アナログ再生信号は、AD変換器2で離散的な再生信号に変換された後に、減算器3においてオフセット補償信号と加算され、位相比較器6に入力される。位相比較器6は、位相誤差を出力すると共に背景技術の項で説明したように各エッジにおけるオフセット成分も同時に出力する。オフセット成分は、積分器13によって平滑化され、その結果がオフセット補償信号である。ここまでは、従来のJFBオフセット補償器と同じである。
【0035】
本発明では、JFBオフセット補償器の実用上、最大の課題である疑似ロックを防止するための手段を設けていることに特徴がある。即ち、疑似ロックの発生若しくは発生の予兆を検出する手段を設け、これらを検出した場合には積分器13の値をリセット(0にする)する。これにより、誤ったオフセット補償信号を再生信号から差し引き続ける期間を最小にすることが出来、PLLのロックが外れるのを防ぐことが出来る。
【0036】
図1の例では、監視器12が、積分器13のリセットを指示する。疑似ロックの発生若しくはその予兆は、以下のようにして検出する。減算器3の出力をリミッタ4に通し、リミッタ出力を移動平均器5に入力する。リミッタ4の働きは、背景技術の項で説明した通りであるから、移動平均器5の出力はJFBオフセット補償後の再生信号のオフセット成分である。よって、JFBオフセット補償器が正常に動作している場合には、移動平均器5の出力は0若しくは絶対値の小さな値となる。反対に、JFBオフセット補償器が正常に動作していない場合には、移動平均器5の出力は、有意の大きな値を取る。監視器12の動作としては、移動平均器5の出力の絶対値が予め設定された閾値を超えた場合に積分器13をリセットする。
【0037】
上の動作方式で疑似ロックを防止することは可能である。しかし、これだけでは十分にPLLの動作を保証できない場合がある。例えば、指紋や層間干渉などにより突発的に大振幅のオフセットを生じたりした際に、位相比較器で検出されたオフセットが実際のオフセットとは反対の符号で検出されてしまうことがある。その様子を図11に示す。
【0038】
チャネルクロックとエッジの位相が完全に同期し、オフセットが0である場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜き抜きの円で示す。エッジは、時刻nTにある。この時のエッジを挟む2つのサンプル点の値をそれぞれx(n+1), x(n)とする。また、エッジ付近で再生信号は、直線的であると仮定する。この時、x(n)=-x(n+1)となっている。一方、同一箇所でオフセットがΔx重畳されている場合を実線と黒塗りの円で示す。ここで、1/2<Δx<1である。このようにオフセットの大きさが著しく大きいために、位相比較器は本来のエッジを認識できずに時刻(n-1)Tにおける0クロスをエッジと誤認識してしまう(疑似エッジ)。今の場合、オフセットを印加する前のx(n-1), x(n)の値がそれぞれ-3/2と-1/2であるから、この疑似エッジにおいて検出されたオフセットは、式(2)に従うと次の様に求められる。
【0039】
【数3】
【0040】
また、1/2<Δx<1であるオフセットを与えているので明らかに式(3)で求められたオフセットは負の値をとる。これは、明らかに誤った結果である上に、オフセットを却って大きくする方向に作用するのでPLLの動作に大きな影響を与える。この様な事態を防止するために監視器は、移動平均器出力と同時にオフセット補償信号、即ち、積分器出力も同時に監視して、上記のような状態が発生した場合に積分器をリセットするモードも備えている。即ち、積分器出力と移動平均器出力が共に有意な大きさを持ち、かつ、両者の符号が互いに異なる場合に積分器をリセットする。また、このモードでは積分器をリセットする代わりに積分器の値を反転させることも有効である。反転させた場合も、効果は同じである。
【0041】
また、突発的に大きなオフセットが再生信号に重畳されることにより生じるJFBオフセット補償器の誤動作を防止するのには、位相比較器から出力されるオフセット信号の絶対値に制限を設けること、及び、オフセット補償信号の絶対値に制限を設けることが共に有効である。図12は、位相比較器6のオフセット出力と積分器13から出力されるオフセット補償信号にリミッタ4a,4bを挿入することにより上記の制限を実現した例を示すものである。オフセット出力の絶対値を制限することにより雑音による単発的な大きな誤ったオフセット信号の影響を低減できる。また、オフセット補償信号の絶対値を制限することにより、疑似ロックのきっかけとなるような大きなオフセット補償信号が再生信号に加算されるのを防ぐ。ただし、これらの制限を掛けることによりJFBオフセット補償器の性能に一部制限が出る。即ち、オフセット出力の絶対値を制限することにより大きなオフセット変動が生じた場合の追従性が制限される。また、オフセット補償信号の絶対値を制限することにより、比較的緩やかながら大振幅のオフセット変動が生じた場合に最大変位にまで追従できなくなる可能性がある。なお、リミッタ4a,4bは、どちらか一方だけを設けても誤動作防止に有効である。
【0042】
線記録密度が高く、最短マーク及びスペースの分解能が0である場合、最短マーク及びスペースに関連したパターンからの再生信号ではエッジが定義できない。そのような波形の例として、PR(1,2,2,2,1)のターゲット波形の例を図13に示す。図の例では、2T信号の分解能が0で、そのために2T信号は0レベルに一致する。よって、エッジが定義できない。しかし、実際の波形では、これに符号間干渉や雑音、その他の局所的なオフセットが重畳されるために疑似エッジを生じる。この様な疑似エッジで位相比較又はオフセット検出を行うと誤った結果を与え、PLLの動作を不安定化する可能性がある。
【0043】
このような疑似エッジによる悪影響は極力避ける必要がある。本発明においては、位相比較器を改良することにより疑似エッジを排除することが出来る。その原理を、図14を用いて説明する。再生信号の時間差分信号y(n)は、先の表記に従って再生信号をx(n)と表した場合、式(4)で定義される。
【0044】
【数4】
【0045】
図14において、矢印で示された真のエッジとその前後の2点ずつ、つまり連続4時刻(3区間)に着目すると、この間、再生信号は単調に増加又は減少していることが解る。また、エッジ付近では、再生信号の変化率は大であるから差分信号の絶対値が大となっている。実線の楕円で囲った部分に着目すると、差分信号の絶対値が3点連続で1以上となっている。一方、2T信号の前後においては再生信号の単調増加又は減少するのは連続2区間までであり、また差分信号も1時刻は0近傍の値を取る。破線の楕円で囲われた部分に着目すると、疑似エッジ近傍では差分信号のうち1点は0となっている。これらの特性を利用することにより、見せかけのエッジを排除することが出来る。即ち、式(5)の条件を満たすものだけをエッジとして扱う。
【0046】
【数5】
ここで、aは予め指定した閾値で正の値を取る。図15に、この判定機能を実施した位相比較器の構成例を示す。遅延器14は、1チャネルクロックだけ信号を遅延させる。3つの遅延器を用いることにより、この回路の内部には、x(n-2)からx(n+1)までの4時刻の再生信号が存在する。これらから3時刻の差分信号y(n-1)からy(n+1)を得ると同時にx(n)とx(n-1)を位相比較器に入力する。位相比較器は、従来の定義に従ってエッジと判断した場合には位相誤差とオフセットを出力する。位相誤差及びオフセットは、それぞれ出力スイッチ15に入力される。
【0047】
一方、先に得られた差分信号y(n-1), y(n), y(n+1)は、判定器16に入力される。判定器は、各差分信号の符号及び絶対値を評価し、式(6)を満たすか否かを判定する。
【0048】
【数6】
【0049】
この判定結果は、各出力スイッチ15に入力され、各出力スイッチ15は判定結果が真であった場合に位相誤差又はオフセットを出力する。以上により、位相誤差又はオフセット検出時に最短マーク及びスペースの分解能が0若しくはきわめて小さいことにより生じる疑似エッジによる影響を排除することが出来る。
【0050】
先にも述べたように、JFBオフセット補償器は、原理的にDFBスライサーよりも積分時間を短く設定することが可能である。その分、高速な現象に対しても効果を発揮できる。しかし、雑音が大きい場合には、積分時間を短く設定するとオフセット補償信号の雑音も大きくなり、オフセット補償及び位相比較の精度を低下させる。図16は、位相比較器6の前に低域通過フィルタとしてFIRフィルタ17を挿入することにより、このような雑音の影響を低減した例である。FIRフィルタのタップ数は15で、各係数は表1の通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
また、この時のFIRフィルタの振幅周波数特性を図17に示す。図17から解るように、3T信号までを通過させ、2T信号よりも高い周波数領域で減衰特性を有する。これにより、再生信号よりも高い周波数領域に存在する雑音を抑圧することが出来る。図18は、FIRフィルタ挿入の有無による再生性能の差を示したものである。横軸は、アンプ雑音で再生信号の包絡線振幅に対する相対振幅で表現されている。縦軸は、バイトエラーレートである。明らかにFIRフィルタを挿入した場合の方が、エラーレートが低くなっている。なお、図16において、減算器3の直後にFIRフィルタ17を挿入とし、FIRフィルタ17を通過した信号を位相比較器6と共にリミッタ4に入力するようにしても良い。
【0053】
図19は、シミュレーションにより本発明の効果を確かめた例である。テスト信号として、BD光学系の理想的な光学ステップ応答とBDの符号化ルールに則って発生させたビット列パターンを元に作成した合成波形に矩形波信号を重畳したものを用いた。この過程は、当業者であれば容易に理解できるので詳述は省く。また、波形の長さは、100000Tであった。図19の横軸は矩形波振幅で、再生信号の包絡線振幅に対する相対振幅で表現されている。縦軸は、矩形波の1エッジ当りのビットエラーの数である。比較のためにDFBスライサー及び従来のJFBオフセット補償器の結果も示してある。DFBスライサーは、矩形波振幅の増大と共にエラーの数が急増し、また、矩形波振幅が-18 dBより大きくなるとPLLがロック状態を保てなくなり、エラーが計測不能となる。従来方式のJFBオフセット補償器は、矩形波振幅に対するエラーの増大率がDFBスライサーよりも小さく、矩形波振幅が大きな領域では絶対値も約1桁小さい。しかし、矩形波振幅が-17 dB以上の領域では、疑似ロックが発生してエラー計測が不能であった。本発明によるJFBオフセット補償器は、矩形波振幅が-18 dB以下においては従来のJFB補償器と同等の結果である。しかし、矩形波振幅が-17 dB以上の領域においても疑似ロックは発生しておらず、本発明の有効性が確かめられた。
【0054】
JFBオフセット補償器は、PLLがロックしていないと正常な動作が保障されない。図20は、この問題に対処するためにPLLの動作状態を監視しながらJFBオフセット補償器の動作を制御できる構成の例である。構成及び動作は、図1とほぼ同じである。異なるのは、PLLの動作を監視するロックモニター18を有する点である。ロックモニター18には、位相比較器6の位相誤差が入力される。ロックモニター18は、その実効値の時間平均を評価し、その値が予め指定した値よりも大きい場合にはPLLはロックしていないものと判断する。この様な場合、ロックモニター18はJFBオフセット補償器の積分器13の値を0にするように積分器13に指示を出す。そして、PLLがロックしたと判断すると、積分器13の動作を有効にする。これにより、未記録部から記録部に遷移した直後のように、PLLが再生信号のクロックに対してロックできていない期間におけるJFBオフセット補償器の異常動作を防止することが出来る。
【0055】
図21は、本発明を適用した光ディスクドライブの構成略図を示す。図20には、本発明に関連して説明する必要のある部分のみを示し、他の部分は図示を省略している。同様に、各部の詳細に関しても、当業者なら容易に理解可能な部分に関しては説明を省略する。なお、本実施例では光ディスクドライブのアナログ回路の大部分を集積したAFE(analog front end)−ICとデジタル回路の大部分を集積したDSP(digital signal processor)という2種類のLSIを用いる構成になっている。この様にLSIを組み合わせる構成は、光ディスクドライブでは一般的であり、その場合、通常、アナログ等化器は、AFE−IC内に集積される。
【0056】
まず、動作の概要を説明する。光ディスク101に記録されている情報は、ピックアップ102により光学的に読み出され電気信号(再生信号)に変換される。再生信号は、AFE−IC103で一定の振幅に増幅され、また、内蔵されているアナログ等化器で等化された後に、DSP104中のPLLブロック109に入力される。PLLブロックは、PLL並びに関連するDFBスライサーやJFBオフセット補償器を含むもので、即ち、上記実施例の図5及び図1又は図13又は図17又は図21を内包する。PLLブロック109でチャネルクロックを再生信号のクロックに同期させた後に、再生信号はヴィタビ復号器110でビット列へと復号される。復号されたビット列は、ECCデコーダ106にてRUB単位でエラー訂正処理を行い、ユーザデータを得る。ユーザデータは、インターフェース回路107を介してドライブ外部へと出力される。
【0057】
先に述べたように、PLLブロック109内には、PLLのロック状態を示す信号が存在し、これらは、通常、JFBオフセット補償器の動作を制御するのに用いられる。本例では、ファームウェア108からこの信号の参照を可能としている。これにより、ファームウェア108は、再生中に発生した問題を知ることができる。本例では、あるブロックを再生中にリードエラーが起きた場合、PLLロック状態信号をモニターすることにより当該ブロックを再生中にPLLがアンロック状態に陥ったか否かを調べる。該当する場合、ファームウェア108は、PLLの時定数を一時的に増減するようにDSPにPLLパラメータを設定し、アンロック状態の回避を試みる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によると、光ディスクドライブ、特に多層及び高い線記録密度を有するディスクを再生する際の再生性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を実施した一例を示す図。
【図2】基本的な光ディスク再生信号処理系の例を説明する図。
【図3】位相比較の原理を説明する図。
【図4】オフセットが位相比較に及ぼす影響を説明する図。
【図5】DFBスライサーの構成例を示す図。
【図6】DFBスライサーにおけるリミット信号を説明する図。
【図7】高い線記録密度とアシンメトリの影響によりDFBスライサーが正しく動作できない例を説明する図。
【図8】2層ディスクにおける層間干渉による再生信号への影響の例を示す図。
【図9】JFBオフセット補償器の構成例を示す図。
【図10】JFBオフセット補償器における疑似ロックを説明する図。
【図11】大きなオフセットにより異符号のオフセットが検出されてしまう例を示す図。
【図12】オフセット出力及びオフセット補償信号の絶対値を制限する機能を付加した場合の例を示す図。
【図13】分解能が0であるためにエッジを定義できない波形の例を示す図。
【図14】疑似エッジを排除する方法の原理を説明する図。
【図15】疑似エッジを排除できる位相比較器の構成例を示す図。
【図16】FIR等化器を位相比較器の前に挿入した構成例。
【図17】FIR等化器の振幅周波数特性例。
【図18】FIRフィルタ挿入の有無による再生性能の差異を示す図。
【図19】本発明の有効性を確かめたシミュレーション結果を示す図。
【図20】PLLの動作状態によってJFBオフセット補償器の動作を制御する場合の構成例を示す図。
【図21】本発明を適用した光ディスクドライブの構成例。
【符号の説明】
【0060】
1:アナログ等化器、2:AD変換器、3:減算器、4:リミッタ、5:移動平均器、6:位相比較器、7:ヴィタビ復号器、9:ループフィルタ、10:VCO,11:DA変換器、12:監視器、13:積分器、14:遅延器、15:出力スイッチ、16:判定器、17:FIRフィルタ、18:ロックモニター、101:ディスク、102:ピックアップ、103:AFE−IC、104:DSP,106:ECCデコーダ、107:インターフェース回路、108:ファームウェア、109:PLLブロック、110:ヴィタビデコーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生信号を離散化再生信号に時間離散化する手段と、
前記離散化再生信号からオフセット補償信号を減じ出力信号とする手段と、
前記出力信号のオフセットを検出する第1のオフセット検出手段と、
前記出力信号のオフセットを前記オフセット検出手段とは別の手法により検出する第2のオフセット検出手段と、
前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセットを時間領域で平滑化しオフセット補償信号とする手段と、
前記オフセット補償信号と第2のオフセット検出手段の出力を用いて疑似ロック発生の可能性を判定する判定手段とを有し、
前記判定手段は擬似ロック発生の可能性があると判定したとき、前記オフセット補償信号をゼロにする、若しくは、値を反転させることを特徴とするオフセット補償器。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第2のオフセット検出手段は、リミッタと、前記リミッタの出力を移動平均する手段とを有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項3】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセット信号の絶対値を制限する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項4】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記オフセット補償信号の絶対値を制限する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項5】
請求項1に記載のオフセット補償器において、線記録密度が高いことによって生じる疑似エッジをエッジ近傍における再生信号及びその差分信号の単調増加又は単調減少特性を用いて判別する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項6】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第1のオフセット検出手段の前に低域通過フィルタを有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項7】
請求項1に記載のオフセット補償器において、PLLの動作状態に応じてオフセット補償回路の動作を制御する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項8】
光ディスクに記録された情報を光学的に読み出して再生信号に変換するピックアップと、
前記再生信号を処理する再生信号処理回路とを含み、
前記再生信号処理回路は、PLLブロックとヴィタビ復号器とECCデコーダとで構成され、
前記PLLブロックは、再生信号を離散化再生信号に時間離散化する手段と、前記離散化再生信号からオフセット補償信号を減じ出力信号とする手段と、前記出力信号のオフセットを検出する第1のオフセット検出手段と、前記出力信号のオフセットを前記オフセット検出手段とは別の手法により検出する第2のオフセット検出手段と、前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセットを時間領域で平滑化しオフセット補償信号とする手段と、前記オフセット補償信号と第2のオフセット検出手段の出力を用いて疑似ロック発生の可能性を判定する判定手段とを有し、前記判定手段は擬似ロック発生の可能性があると判定したとき、前記オフセット補償信号をゼロ又は値を反転させるオフセット補償器と、PLLとから構成されることを特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項1】
再生信号を離散化再生信号に時間離散化する手段と、
前記離散化再生信号からオフセット補償信号を減じ出力信号とする手段と、
前記出力信号のオフセットを検出する第1のオフセット検出手段と、
前記出力信号のオフセットを前記オフセット検出手段とは別の手法により検出する第2のオフセット検出手段と、
前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセットを時間領域で平滑化しオフセット補償信号とする手段と、
前記オフセット補償信号と第2のオフセット検出手段の出力を用いて疑似ロック発生の可能性を判定する判定手段とを有し、
前記判定手段は擬似ロック発生の可能性があると判定したとき、前記オフセット補償信号をゼロにする、若しくは、値を反転させることを特徴とするオフセット補償器。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第2のオフセット検出手段は、リミッタと、前記リミッタの出力を移動平均する手段とを有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項3】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセット信号の絶対値を制限する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項4】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記オフセット補償信号の絶対値を制限する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項5】
請求項1に記載のオフセット補償器において、線記録密度が高いことによって生じる疑似エッジをエッジ近傍における再生信号及びその差分信号の単調増加又は単調減少特性を用いて判別する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項6】
請求項1に記載のオフセット補償器において、前記第1のオフセット検出手段の前に低域通過フィルタを有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項7】
請求項1に記載のオフセット補償器において、PLLの動作状態に応じてオフセット補償回路の動作を制御する手段を有することを特徴とするオフセット補償器。
【請求項8】
光ディスクに記録された情報を光学的に読み出して再生信号に変換するピックアップと、
前記再生信号を処理する再生信号処理回路とを含み、
前記再生信号処理回路は、PLLブロックとヴィタビ復号器とECCデコーダとで構成され、
前記PLLブロックは、再生信号を離散化再生信号に時間離散化する手段と、前記離散化再生信号からオフセット補償信号を減じ出力信号とする手段と、前記出力信号のオフセットを検出する第1のオフセット検出手段と、前記出力信号のオフセットを前記オフセット検出手段とは別の手法により検出する第2のオフセット検出手段と、前記第1のオフセット検出手段によって検出されたオフセットを時間領域で平滑化しオフセット補償信号とする手段と、前記オフセット補償信号と第2のオフセット検出手段の出力を用いて疑似ロック発生の可能性を判定する判定手段とを有し、前記判定手段は擬似ロック発生の可能性があると判定したとき、前記オフセット補償信号をゼロ又は値を反転させるオフセット補償器と、PLLとから構成されることを特徴とする光ディスクドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−123289(P2009−123289A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296768(P2007−296768)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
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