説明

オブジェクト表示装置

【課題】タッチセンサに対する接触に応じて振動を発生する装置において、良好な操作感を保持しながら、消費電力を低減することができるオブジェクト表示装置を提供する。
【解決手段】オブジェクト表示装置1は、オブジェクトを表示する表示部30と、接触物の接触を検出する接触検出部40と、接触検出部40を振動させる振動部50と、表示部30に表示されたオブジェクトに対応する位置において接触検出部40が接触物の接触を検出すると、そのオブジェクトに対応付けられた処理を行うように制御するとともに、接触検出部40が検出する接触物の接触の位置に応じて、振動部50を駆動する駆動信号を異ならせるように制御する制御部10と、を備え、制御部10は、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクト表示装置に関するものである。より詳細には、本発明は、タッチセンサなどの接触検出部に対する接触に基づいて振動を発生する装置の表示部にオブジェクトを表示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末において、ユーザによる操作を検出する操作部やスイッチ等の入力装置として、タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置が採用されているものがある。携帯端末以外に、電卓、券売機等の情報機器や、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)等にも、タッチセンサを備える入力装置は広く使用されている。
【0003】
このようなタッチセンサには、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の種々の方式が知られている。しかしながら、いずれの方式のタッチセンサにおいても、指やスタイラスペンによる接触を検出するものであって、タッチセンサ自体は、接触されても、押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない。
【0004】
このため、操作者は、タッチセンサに対して接触操作を行っても、当該操作に対するフィードバックを得ることができない。そこで、従来、聴覚や視覚によらず、タッチセンサが接触を検出すると、タッチセンサを振動させて、操作者の指先に振動を発生させるようにしたフィードバック方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献1および特許文献2に開示の技術によれば、タッチセンサに対する操作が検出された際に、操作者の指先などに、振動を発生させることができる。したがって、このような入力装置を用いて操作を行う操作者は、タッチセンサに対して行った操作が装置に正しく認識されたことを、触覚により認識することができる。
【0006】
ところで、このようにタッチセンサに対する接触に基づいて振動を発生させる際に、これらの入力装置は、振動を発生する圧電素子などの振動部に駆動信号を供給する。
【0007】
しかしながら、タッチセンサに対して常に同じ駆動信号を発生することにより振動部を振動させると、入力装置が操作者の指などに対して発生する振動が、タッチセンサ上で一様にならないという問題がある。これは、タッチセンサを構成する部材を基板などに固定する位置と、当該タッチセンサを振動させる振動部を配置する部位などの諸条件に依存して、振動部が発生する振動が伝播する度合いが、タッチセンサにおける位置により異なるためである。すなわち、同じ駆動信号により振動部を振動させても、タッチセンサにおける位置によっては、発生する振動の振幅などは同じにならないという問題がある。
【0008】
このため、操作者は、タッチセンサに対して自らの指などを用いて接触操作を行うと、タッチセンサ上で接触する部位によって得られる振動の強さが異なるため、操作の際に違和感を覚えることになる。以下、このような従来技術を、図面を用いて説明する。
【0009】
図5は、基板上に設置したタッチセンサにおいて所定の位置に振動部を配置し、当該振動部に駆動信号を供給した場合の、タッチセンサに伝播する振動の強度分布を説明する図である。
【0010】
図5に示すタッチパネル装置は、支持基板100と、接触検出部400と、振動部500と、を備えている。図5に示すように、これらのタッチパネル装置は、支持基板100の上に接触検出部400を配置して、接触検出部400において所定の縁辺に隣接して振動部500を配置している。なお、接触検出部400は支持基板100上に接着等により固定され、振動部500も支持基板100上に接着等により固定されている。したがって、振動部500が駆動信号により振動を発生すると、当該振動は接触検出部400にも伝播する。
【0011】
図5(A)に示す装置においては、支持基板100上において、接触検出部400の左側の縁辺に振動部500を配置している。また、図5(B)に示す装置においては、支持基板100上において、接触検出部400の左右両側の縁辺に振動部500aおよび500bを配置している。なお、多くの場合、接触検出部400および支持基板100は透明または透光性の部材で構成し、これらの裏面に表示部(図示せず)を配置して、当該表示部にキーやボタンなどの形を画像で表現したオブジェクト等を表示する。このオブジェクトは、接触検出部400上において接触すべき箇所(位置)を操作者に示唆する。このような構成により、表示部に表示されたオブジェクトに対して操作者が接触操作を行うと、当該オブジェクトが表示された領域に対応する位置において、接触検出部400が当該操作による接触を検出する。
【0012】
図5(A)に示すように、この装置において振動部500に駆動信号を供給した場合、発生する振動の強度は、図中に破線で示すような分布になる。図5(A)において、Z1〜Z4は、振動部500の駆動により接触検出部400が振動する際に、接触検出部400の表面に対して法線方向に発生する振動の振幅の大きさを示している。ここでは、Z1>Z2>Z3>Z4の順に強い振動であることを表している。すなわち、Z1のように振動部500から近い部位においては、振動が強いまま伝播するため、大きな振動が発生する。しかしながら、例えばZ4のように振動部500から遠い部位においては、伝播する振動が減衰してしまっており、弱い振動しか発生しない。したがって、操作者が接触検出部400において接触する位置によって、発生する振動が強かったり弱かったりと均質でないため、操作者は操作の際に違和感を覚えることになる。
【0013】
また、図5(B)に示す装置においては、接触検出部400の左右両側の縁辺に振動部500aおよび500bを配置しているため、これらの振動部に駆動信号を供給した場合、発生する振動の強度は、図中に破線で示すように左右対称の分布になる。図5(B)においても、Z1〜Z4は、振動部500の駆動により接触検出部400が振動する際に、接触検出部400の表面に対して法線方向に発生する振動の振幅の大きさを示している。また、ここでも、Z1>Z2>Z3>Z4の順に強い振動であることを表している。この場合も、操作者が接触検出部400において接触する位置によって、発生する振動が強かったり弱かったりと均質でないため、やはり操作者は操作の際に違和感を覚えることになる。
【0014】
このような問題に対処するために、タッチセンサ上で接触が検出される位置に応じて、振動部を駆動させる駆動信号を異なるようにする技術が提案されている。具体的には、このような技術においては、タッチセンサ上で接触が検出される位置に応じて、例えば駆動信号により振動部を駆動する際の電力を調整することにより、タッチセンサ上で発生する振動の強度が均等になるように補正する。以下、このような従来技術を、図面を用いて説明する。
【0015】
図6は、タッチセンサ上で発生する振動の強度が均等になるように補正を行う様子を説明する図である。図6(A)は、筐体などに四隅を固定したタッチセンサにおいて所定の位置に振動部を配置し、当該振動部に駆動信号を供給した場合の、タッチセンサに伝播する振動の強度分布を説明する図である。
【0016】
図6に示すタッチパネル装置は、接触検出部400と、振動部500aおよび500bと、を備えている。この装置においては、接触検出部400は、その四隅を、筐体などに接着またはビス止め等により固定してあるものとする。このように、四隅が固定されている状態を、図6においては、接触検出部400の四隅のL字型の図形により示す。また、この装置においては、接触検出部400の上下側の縁辺に、振動部500aおよび500bをそれぞれ接着等により固着してある。したがって、振動部500aおよび500bが駆動信号により振動を発生すると、当該振動は接触検出部400にも伝播する。
【0017】
図6(A)に示す装置において、振動部500aおよび500bに駆動信号を供給した場合、発生する振動の強度は、図中に破線で示すような分布になる。この装置においては、四隅が固定されているため、当該四隅の周辺においては振動が発生しにくい。したがって、四隅の周辺において発生する振動は弱いものとなる。一方、四隅から離れた部位、例えば接触検出部400表面の中央の部位等は、固定端から離れているため、同じ駆動信号による振動を発生させても、強い振動が発生する。したがって、この例においても、図5で説明した例と同様に、操作者は操作の際に違和感を覚えることになる。
【0018】
そこで、図6(B)に示すように、接触検出部400が検出する接触の位置に応じて、振動部500aおよび500bを駆動する駆動信号を異ならせるようにする。すなわち、接触検出部400において、もともと振動の弱い位置(例えば接触検出部400の四隅の周辺)に対する接触が検出されたら、振動部500aおよび500bを駆動する際の電力が大きな駆動信号を供給することにより、発生する振動を強めにする。一方、接触検出部400において、もともと振動の強い位置(例えば接触検出部400の中央の領域)に対する接触が検出されたら、振動部500aおよび500bを駆動する際の電力が小さな駆動信号を供給することにより、発生する振動を弱めにする。このように、駆動信号を供給する際に補正を行うように制御部(図示せず)が制御することにより、接触検出部400において接触が検出される位置によらず、発生する振動の強度を均等にすることができる。このような装置であれば、操作者は接触検出部400においてどの位置に対して接触操作を行っても、得られるフィードバックの強さが均等になるため、操作者は違和感を覚えることがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−288158号公報
【特許文献2】特開2008−130055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、このような装置においては、操作者に提供する操作感を自然にすることを優先させたため、消費電力が犠牲になることが想定される。すなわち、例えば図6に示した装置は、例えば接触検出部400の中央の領域に対する接触に応じて発生する振動を基準にして、その周辺の領域に対する接触に応じて同様の振動を発生させるためには、より大きな消費電力が必要になる。また、この装置は、当該周辺の領域のさらに外側の領域に対する接触に応じて同様の振動を発生させるためには、さらに大きな消費電力を要する。特に、携帯端末のような装置は、バッテリの容量が限られているため、消費電力が増大すれば、それだけバッテリの寿命を縮めることになる。
【0021】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、タッチセンサに対する接触に応じて振動を発生する装置において、良好な操作感を保持しながら、消費電力を低減することができるオブジェクト表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成する第1の観点に係るオブジェクト表示装置の発明は、
オブジェクトを表示する表示部と、
前記表示部に対する接触物の接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部を振動させる振動部と、
前記表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置において前記接触検出部が前記接触物の接触を検出すると、当該オブジェクトに対応付けられた処理を行うように制御するとともに、
前記接触検出部が検出する前記接触物の接触の位置に応じて、前記振動部を駆動する駆動信号を異ならせるように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御することを特徴とするものである。
【0023】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係るオブジェクト表示装置において、
前記制御部は、オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度に基づいて、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御するものである。
【0024】
第3の観点に係る発明は、第1の観点に係るオブジェクト表示装置において、
前記制御部は、省電力モードで動作する際に、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御するものである。
【0025】
第4の観点に係る発明は、第1の観点に係るオブジェクト表示装置において、
前記制御部は、バッテリの残量に応じて、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、タッチセンサに対する接触に応じて振動を発生する装置において、良好な操作感を保持しつつも、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置の動作の具体例を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置の動作の他の具体例を説明する図である。
【図5】従来のタッチパネル装置において発生する振動の強度分布を示す図である。
【図6】従来のタッチパネル装置において発生する振動の補正を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、オブジェクト表示装置1は、制御部10と、表示部30と、接触検出部40と、振動部50と、記憶部80と、バッテリ残量検出部90と、を備えている。
【0031】
制御部10は、オブジェクト表示装置1を構成する各機能部を制御することにより、オブジェクト表示装置1の全体を制御および管理する。制御部10の動作のうち本実施の形態特有のものについては後述する。
【0032】
表示部30は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなオブジェクトを画像で表示する。このオブジェクトは、接触すべき領域を操作者に示唆する画像である。また、押しボタンスイッチとは、操作者が入力の操作に用いるボタンやキー等(以下、単に「キー等」と総称する)である。表示部30は、例えば、液晶表示パネル(LCD)や有機EL表示パネル等を用いて構成する。
【0033】
接触検出部40は、通常は表示部30の前面に配置して、表示部30に表示したオブジェクトに対する操作者の指やスタイラスペン等(以下、単に「接触物」と総称する)による接触を、対応する接触検出部40のタッチ面において検出する。また、接触検出部40は、タッチ面に対する接触物の接触の位置を検出し、当該検出した接触の位置を制御部10に通知する。この接触検出部40は、例えば抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のもので構成されたタッチセンサを用いることができる。なお、接触検出部40が接触物による接触を検出する上で、接触物が接触検出部40に物理的に触れることは必須ではない。例えば、接触検出部40が光学式である場合は、接触検出部40は接触検出部40上の赤外線が接触物で遮られた位置を検出するため、接触物が接触検出部40に触れることは不要である。
【0034】
振動部50は、例えば圧電振動子等を用いて構成し、接触検出部40を振動させる。この振動部50は、所定の振動パターンによる振動を発生させることにより、タッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示する。本実施の形態において、振動部50は、制御部10から供給される駆動信号に基づいて振動を発生する。この際、制御部10は、接触検出部40が検出する接触物の接触の位置に応じて、振動部50を駆動する駆動信号を異ならせるように制御する。すなわち、このような制御により、オブジェクト表示装置1は、上述したような、接触検出部40上で発生する振動の強度が均等になるように補正を行うことができる。
【0035】
記憶部80は、例えばNAND型フラッシュメモリ等によって構成し、オブジェクト表示装置1において実行する各種のアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリケーション」と記す)を記憶するのみならず、各種の情報を記憶することができる。特に、本実施の形態において、記憶部80は、上述したように接触検出部40上で発生する振動の強度が均等になるように補正を行った際に、接触検出部40が検出する接触の位置と、当該接触に基づいて振動部50を駆動する際の電力との対応関係のテーブルを記憶しているものとする。
【0036】
バッテリ残量検出部90は、例えばオブジェクト表示装置1が内蔵のバッテリの電圧を検出することにより、オブジェクト表示装置1全体を駆動するバッテリの残量を検出する。すなわち、オブジェクト表示装置1は、例えば携帯電話等の携帯端末のように、バッテリを電源とする。
【0037】
次に、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1がオブジェクトの配置を変更して表示する動作について説明する。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係るオブジェクト表示装置1の動作を説明するフローチャートである。本実施の形態において、オブジェクト表示装置1は、省電力モードに移行した際に、表示部30に表示するオブジェクトの配置を変更して、消費電力が低減されるようにする。なお、以下の説明においては、接触検出部40上で発生する振動の強度が、接触検出部40上で接触が検出された位置によらず均等になるように、すでに上述の補正を行っているものとする。すなわち、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1において、制御部10は、接触検出部40が検出する接触物の接触の位置に応じて、振動部50を駆動する駆動信号を異ならせるように制御する。
【0039】
本実施の形態に係る動作が開始すると、制御部10は、オブジェクト表示装置1の動作が省電力モードに移行したか否かを判定する(ステップS11)。本実施の形態において、「省電力モード」とは、バッテリの持続時間を長くするためのモードとして、例えば操作者が自らメニュー画面等から項目を選択することにより、当該モードに移行することができる。その他、本実施の形態においては、バッテリ残量検出部90が検出するバッテリの残量が所定の閾値を下回った場合に、自動的に省電力モードに移行するようにしてもよい。この場合、操作者が接触検出部40に接触する間際に省電力モードに移行してオブジェクトの配置が変更されると操作性を害するおそれも考えられる。
【0040】
したがって、バッテリ残量検出部90が検出するバッテリの残量が所定の閾値を下回った場合、例えばポップアップ表示等を行うことにより、省電力モードに移行するか否かを操作者に問いかけ、選択操作を促すようにしてもよい。また、ポップアップ表示等により省電力モードに移行するか否かを操作者に選択させる態様の他にも、例えば表示部30においてユーザインタフェースの構成が変更される際に、省電力モードに移行するようにしてもよい。さらに、例えば振動を発生しないモードから振動を発生するモードに動作モードを切り換える際に、省電力モードに移行するようにもできる。
【0041】
ステップS11において省電力モードに移行したら、制御部10は、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトを優先的に配置するように制御する(ステップS12)。なお、このステップS12の時点では、制御部10が仮想的にオブジェクトを配置する演算処理を行い、まだ表示部30に表示する制御は行わない。
【0042】
ステップS12の動作を行ったら、制御部10は、このようにして位置を変更したオブジェクトが、他のオブジェクトと重ならないか否かを判定する(ステップS13)。ここで、「他のオブジェクト」とは、例えばステップ12の動作を行う前に、もともとその位置に表示されていたオブジェクトなどを想定している。また、複数のオブジェクトを1つずつ順次図2のフローチャートに従って処理する場合は、以前の処理で移動して表示したオブジェクトも、「他のオブジェクト」と想定できる。
【0043】
ステップS13において、位置を変更したオブジェクトが、他のオブジェクトと重ならない場合、制御部10は、当該位置を変更したオブジェクトを表示部30に表示するように制御を行う(ステップS15)。一方、ステップS13において、位置を変更したオブジェクトが、他のオブジェクトと重なる場合、制御部10は、ステップS14に移行する。ステップS14において、制御部10は、オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度に基づいて、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトを再配置するように制御する。なお、「オブジェクトに対応付けられた処理」とは、表示部30に表示されたオブジェクトに対応する位置において接触検出部40が接触物の接触を検出した際に行われる処理である。すなわち、オブジェクトに対する入力がオブジェクト表示装置1に認識された際に行われる処理である。
【0044】
ここで、「オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度」とは、例えば、それまでに実行された処理と、当該処理の実行を開始するもとになったオブジェクトとの対応関係に基づいて、制御部10が各オブジェクトについて算出したものとすることができる。すなわち、この頻度とは、操作者によるそれまでの操作に基づいてオブジェクト表示装置1が学習した頻度とすることができる。
【0045】
その他、各オブジェクトについて、当該オブジェクトに対する接触が検出される場面に応じて想定される頻度を予め設定して、記憶部80に記憶しておくようにする頻度も、「オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度」として想定することができる。例えば、「処理を次に勧めてもよろしいですか?」のような確認に応答するために「はい」および「いいえ」のオブジェクトが用意されている場合、処理の内容によっては、通常は「はい」のオブジェクトに対して接触が検出されることが想定される。
【0046】
上述した動作により表示部30にオブジェクトが表示された後は、オブジェクト表示装置1は、操作者のブジェクトに対する接触操作に応じて所定の動作を行う。すなわち、制御部10は、表示部30に表示されたオブジェクトに対応する位置において接触検出部40が接触物の接触を検出すると、当該オブジェクトに対応付けられた処理を行うように制御する。
【0047】
このように、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1において、制御部10は、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトを優先的に表示するように制御する。また、オブジェクト表示装置1において、制御部10は、オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度に基づいて、接触検出部40において駆動信号により振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御する。
【0048】
次に、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1の動作の具体例を説明する。
【0049】
図3は、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1を、図6について説明したのと同様の状況において使用する場面について説明する図である。
【0050】
図3(A)に示すオブジェクト表示装置1は、表示部30と、接触検出部40と、振動部50aおよび50bと、を備えている。接触検出部40は、表示部30の前面に重ねて配置するように構成されている。この装置においては、図6に示した例と同様に、接触検出部40は、その四隅を、筐体などに接着またはビス止め等により固定してあるものとする。このように、四隅が固定されている状態を、図3においても、接触検出部40の四隅のL字型の図形により示す。また、この装置においては、接触検出部40の上下側の縁辺に、振動部50aおよび50bをそれぞれ接着等により固着してある。したがって、振動部50aおよび50bが駆動信号により振動を発生すると、当該振動は接触検出部40にも伝播する。
【0051】
また、図3(A)に示すオブジェクト表示装置1も、図6(A)で示したような分布で発生する振動の強度が異なるため、図6(B)で示した装置と同様に、接触検出部40上で発生する振動の強度が均等になるように補正を行う。その結果、図3(A)において破線で示すように、振動部50aおよび50bを駆動する際の電力の分布が小さい部位、中くらいの部位、大きな部位が存在するようになる。
【0052】
図3(A)に示すオブジェクト表示装置1は、例えばタッチパネルを備えた携帯電話のような小型の端末において、電子メール作成アプリケーションを起動している状態を想定している。表示部30の下半分には、操作者に接触操作を行うべき位置を示唆するために文字入力用のキーのオブジェクトが表示され、上半分には、入力された文字が表示されるウィンドウのオブジェクトが表示されている。
【0053】
図3(A)に示す状態においては、「か行」および「な行」のキーのオブジェクトのみが振動による電力の小さな部位に表示されている。「あ行」、「さ行」、「た行」、「は行」、および「や行」のキーのオブジェクトは電力が中くらいの部位に表示され、それ以外のキーのオブジェクトは電力が大きな部位に表示されている。このような配置においては、電力が大きな部位に表示されているオブジェクトがいくつも存在するため、消費電力が問題になるおそれがある。そこで、本実施の形態によるオブジェクト表示装置1は、操作者の選択またはバッテリの残量に応じて、消費電力を低減させるような配置に変更してオブジェクトを表示する。
【0054】
図3(B)は、本実施の形態の動作により、消費電力を低減させるような配置に変更してオブジェクトを表示した例を示す図である。オブジェクト表示装置1は、本実施の形態の動作を行うことにより、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトが優先的に配置して表示される。図3(B)に示す例においては、文字入力用のキーのオブジェクトが相対的なキーの配列はそのままに、全体として上方に移動している。これにより、消費電力が小さな部位に表示されるオブジェクトが多くなり、消費電力が大きな部位に表示されるオブジェクトはなくなっている。
【0055】
したがって、操作者は、接触検出部40のどの位置に対して接触操作を行ったとしても均等な振動による良好な操作感を得ることができつつ、さらにオブジェクト表示装置1の消費電力を低減することもできる。
【0056】
なお、図3で説明した例においては、文字入力用のキーのオブジェクトをいわば全体として1つのオブジェクトと捉えて位置の変更を行った。この場合において、キーのオブジェクトをそれぞれ個別に捉えて、各オブジェクトの優先度を考慮して配置を変更することも考えられる。しかしながら、図3に示すような文字入力用のキーボードにおいては、各キーの配列は一般的に決められているため、これらの配置を崩すと操作性を害するおそれがある。したがって、このように配列が一般的に決められているキーについては、各キーの相対的な配置は変更せずに、全体として1つのグループとして位置を変更するようにするのが好適である。
【0057】
次に、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1の動作の他の具体例を説明する。
【0058】
図4は、本実施の形態に係るオブジェクト表示装置1を、図6について説明したのと同様の状況において使用する他の場面について説明する図である。図4は、図3と同じ機器構成において、図3の例とは異なるアプリケーションを起動している状態を想定している。
【0059】
図4(A)に示す状態においては、表示部30の上方に、「次の処理を実行します。よろしいですか?」のダイアログが表示され、下方に、「はい」および「いいえ」のボタンのオブジェクトが表示されている。
【0060】
図4(A)に示す状態においては、「はい」および「いいえ」のボタンのオブジェクトとも振動による電力が大きな部位に表示されている。したがって、このような配置においては、消費電力が問題になるおそれがある。そこで、図3の例と同様に、本実施の形態によるオブジェクト表示装置1は、操作者の選択またはバッテリの残量に応じて、消費電力を低減させるような配置に変更してオブジェクトを表示する。
【0061】
図4(B)は、本実施の形態の動作により、消費電力を低減させるような配置に変更してオブジェクトを表示した例を示す図である。オブジェクト表示装置1は、本実施の形態の動作を行うことにより、接触検出部40において駆動信号により振動部50を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する表示部30の位置に、オブジェクトが優先的に配置して表示される。
【0062】
しかしながら、この場合、「はい」または「いいえ」のボタンのオブジェクトのいずれかを電力の小さい部位に配置してしまうと、もう一方のオブジェクトは、もはや電力の小さい部位に配置することはできない。そこで、本実施の形態の動作により、オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度に基づいて、どちらのオブジェクトを優先して電力の小さい部位に配置するかを決定する。この場合、現在までの操作履歴から算出された頻度、または予め定められた頻度によって、「はい」のボタンのオブジェクトに対する接触が検出されて当該オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度の方が高いものとする。すると、本実施の形態の動作により、図4(B)に示すように、「はい」のボタンのオブジェクトが電力の小さい部位に配置され、「いいえ」のボタンのオブジェクトは、その次に電力の小さな部位に配置されるようになる。
【0063】
したがって、この場合も、操作者は、接触検出部40のどの位置に対して接触操作を行ったとしても均等な振動による良好な操作感を得ることができつつ、さらにオブジェクト表示装置1の消費電力を低減することもできる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上述した実施の形態では、オブジェクト表示装置1は、携帯端末のようにバッテリで駆動するものとしたが、本発明は、このような形態に限定されるものではない。本発明は、バッテリで駆動される場合のように供給される電力が制限されている装置において特に顕著な効果を発揮するが、例えば電源が安定して供給される装置においても、消費電力を低減することができるという効果がある。
【0065】
また、上述した実施の形態においては、省電力モードに移行する際に、オブジェクトの位置を変更することについて説明した。しかしながら、例えば文字入力アプリケーションを起動中に文字の予測変換を行う場合、1つの文字が入力されるたびに、オブジェクトの配置が動的に変更されて、変換候補のうち選択頻度が高いものから優先して電力の小さな部位に表示されるようにしてもよい。
【0066】
なお、振動部50は、振動モータ(偏心モータ)などに基づいてオブジェクト表示装置1を振動させることにより、接触検出部40を間接的に振動させるように構成してもよいし、接触検出部40に圧電素子を配設することにより、接触検出部40を直接的に振動させるように構成してもよい。
【0067】
また、振動部50は、任意の個数の圧電振動子を用いて構成したり、タッチセンサの全面に透明圧電素子を設けて構成したり、触感を呈示する振動を表現できるのであれば、偏心モータを駆動信号の1周期で1回転させるようにして構成したり、することもできる。
【0068】
また、上述した実施の形態において、振動部50がタッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示する態様として、振動部50が接触検出部40のタッチ面に振動を発生させることにより、タッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示する態様を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、接触検出部40上に貼ったフィルムの電荷を制御する等により、機械的な振動を使わずに、タッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示してもよい。
【0069】
また、本実施の形態の説明における「表示部」および「接触検出部」は、表示部とタッチセンサとの両機能を共通の基板に持たせる等により、一体化した装置によって構成されるようにしてもよい。このように表示部とタッチセンサとの両機能を一体化した装置の構成の一例としては、液晶パネルが有するマトリクス状配列の画素電極群に、フォトダイオード等の複数の光電変換素子を規則的に混在させたものを挙げることができる。この装置は、液晶パネル構造によって画像を表示する一方で、パネル表面の所望位置をタッチ入力するペンの先端で液晶表示用のバックライトの光を反射し、この反射光を周辺の光電変換素子が受光することによって、タッチ位置を検出することができる。
【0070】
上述した実施の形態においては、接触検出部40に対する接触に基づいて、振動部50が振動を発生する構成について説明した。しかしながら、接触検出部40に対する操作者の押圧操作による荷重を検出する荷重検出部を設け、当該荷重が所定の基準を満たした際に接触を検出したものとすることもできる。ここで、荷重検出部により検出される押圧荷重が入力として認識されるための「所定の基準を満たした際」とは、荷重検出部により検出される押圧荷重が入力として認識される所定値に達した際であってもよいし、荷重検出部により検出される押圧荷重が入力として認識される所定値を超えた際でもよいし、荷重検出部により入力として認識される所定値が検出された際でもよい。
【0071】
上述した実施の形態においては、文字入力用のキーボードについては、各キーの相対的な配置は変更せずに、全体として1つのグループとして位置を変更する一方、「はい」および「いいえ」のボタンについては、これらのボタンの位置を変更する場合、相対的な配置も変更する例について説明した。このように、本発明の制御部は、「文字入力用のキーボード」、「「はい」および「いいえ」のボタン」等の複数のキーやボタンからなるオブジェクト群毎に、オブジェクト群に含まれるオブジェクトの相対的な配置が変更可能であるか否かを設定することができる。
【0072】
また、オブジェクト群に含まれるオブジェクトの相対的な配置が変更可能として設定されていないオブジェクト群(つまり、オブジェクトの相対的な配置が変更不可能として設定されているオブジェクト群)が複数ある場合、本発明の制御部は、当該複数のオブジェクト群毎に、その設定に対する優先度を更に設定することができる。すなわち、本発明の制御部は、オブジェクト群に含まれる複数のオブジェクトの相対的な配置が変更不可能に設定されている際、当該設定を維持する優先度を、オブジェクト群ごとに、さらに設定することもできる。
【0073】
例えば、本発明の制御部は、オブジェクト群である「文字入力用のキーボード」並びに「「はい」および「いいえ」のボタン」それぞれに対して、オブジェクト群に含まれるオブジェクトの相対的な配置が変更可能として設定するとともに、「文字入力用のキーボード」については優先度が「高」、「「はい」および「いいえ」のボタン」については優先度が「低」と更に設定することができる。
【0074】
このように設定された場合、本発明によれば、これらのオブジェクト群は、通常の場合であれば、オブジェクト群における各オブジェクトの相対的な配置は変更されずに、オブジェクト群全体としての位置のみが変更されることになる。しかしながら、例えば、バッテリの残量が極端に減っている場合でかつ、本発明により配置を変更したとしても、各オブジェクト群が消費電力の小さい位置に配置されない場合、本発明の制御部は、優先度が「低」と設定されている「「はい」及び「いいえ」のボタン」については、「はい」と「いいえ」のオブジェクトの相対的な配置を変更して、それぞれ配置することができる。
【0075】
なお、上記優先度が設定された場合において、その優先度が用いられる場合は、上記「バッテリの残量が極端に減っている場合」に限定されず、例えば、省電力モードにおいて当該優先度を利用するように設定した場合であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 オブジェクト表示装置
10 制御部
30 表示部
40 接触検出部
50 振動部
80 記憶部
90 バッテリ残量検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを表示する表示部と、
前記表示部に対する接触物の接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部を振動させる振動部と、
前記表示部に表示されたオブジェクトに対応する位置において前記接触検出部が前記接触物の接触を検出すると、当該オブジェクトに対応付けられた処理を行うように制御するとともに、
前記接触検出部が検出する前記接触物の接触の位置に応じて、前記振動部を駆動する駆動信号を異ならせるように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御することを特徴とする、オブジェクト表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、オブジェクトに対応付けられた処理が実行される頻度に基づいて、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御する、請求項1に記載のオブジェクト表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、省電力モードで動作する際に、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御する、請求項1に記載のオブジェクト表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、バッテリの残量に応じて、前記接触検出部において前記駆動信号により前記振動部を駆動する際の電力がより小さい部位に対応する前記表示部の位置に、オブジェクトを優先的に配置して表示するように制御する、請求項1に記載のオブジェクト表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137848(P2012−137848A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288287(P2010−288287)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】