説明

オペレータ管理システム

【課題】各種作業機械において、容易に、かつ低コストで利便性に優れたオペレータ管理システムの提供。
【解決手段】オペレータ管理システムは、作業機械と、作業機械を操作するオペレータが所持する携帯電話と、作業機械に対して遠隔した位置に配置されたサーバ3とを備え、作業機械および携帯電話には、自身の位置を特定するGPSセンサと、GPSセンサからの位置情報信号をサーバ3へ送信する位置情報送信手段とが設けられ、サーバ3には、機械位置情報信号を受信した後にオペレータの携帯電話にオペレータ位置情報要求信号を出力するオペレータ位置情報要求手段52と、位置情報信号に基づいて作業機械およびオペレータの位置を判断する位置判断手段54と、判断された位置に基づいて作業機械およびオペレータを互いに関連付けて作業日報を作成するリスト作成登録手段55とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータ管理システムに係り、例えば建設機械等の作業機械のオペレータ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械に代表される作業機械の稼動状況やオペレータの作業状況を把握するために、オペレータが作業機械に搭載された管理端末にオペレータ自身の識別番号などの情報を入力すると、管理端末がオペレータの情報と作業機械の操作時間等の情報とを関連付けて、作業機械の操作履歴を記録していた。管理端末の通信装置は、記録されたデータを遠隔にある管理センターのサーバなどへ送信し、管理センターにてオペレータの管理を行ってきた(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−266200号公報
【特許文献2】特開2003−140743号公報
【特許文献3】特開2003−34954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムでは、オペレータが作業機械に搭載された端末への識別番号等の入力操作を手入力により行うため、操作に手間がかかり、煩雑であることから、入力ミスが生じやすい。また、識別番号そのものを失念したり、識別番号が記憶されたIDカードなどの媒体を携帯し忘れることもある。さらに、作業機械に応じて端末の種類が異なるため、オペレータが全ての端末の操作方法を把握することが困難であり、操作ミスも生じやすいなどの問題がある。これらの問題を解消するために、より高性能な管理端末を設けるとコストがかかる問題もある。
【0005】
本発明の目的は、各種作業機械において、容易に、かつ低コストで利便性に優れたオペレータ管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るオペレータ管理システムは、オペレータ管理システムにおいて、作業機械と、前記作業機械を操作するオペレータが所持する携帯電話と、前記作業機械に対して遠隔した位置に配置されたサーバとを備え、前記作業機械および携帯電話には、自身の位置を特定するGPSセンサと、前記GPSセンサからの位置情報信号を前記サーバへ送信する位置情報送信手段とが設けられ、前記サーバには、前記機械位置情報信号を受信した後にオペレータの前記携帯電話にオペレータ位置情報要求信号を出力するオペレータ位置情報要求手段と、前記機械位置情報信号および前記携帯電話から送信されるオペレータ位置情報信号に基づいて前記作業機械および前記オペレータの位置を判断する位置判断手段と、判断された位置に基づいて作業機械およびオペレータを互いに関連付けて作業日報を作成するリスト作成登録手段とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上において、請求項1の発明によれば、管理センター等に配置されるサーバは、作業機械に設置されたGPSセンサからの機械位置情報信号を位置情報送信手段から受信でき、かつサーバが機械位置情報信号を受信すると、オペレータ位置情報要求信号をオペレータの所有する携帯電話へ出力することになる。携帯電話がオペレータ位置情報要求信号を受信すると、オペレータ位置情報信号を出力するため、サーバに設けられた位置判断手段が、機械位置情報信号とオペレータ位置情報信号とから作業機械の位置と作業機械を操作するオペレータ位置とを判断でき、リスト作成登録手段がオペレータと作業機械とを関連付けて作業日報を作成することができる。したがって、高価な装置を新たに設ける必要なく、オペレータがGPS機能付きの携帯電話を所持しているだけで、オペレータとオペレータの操作する作業機械とを関連付けることができるため、低コストで、かつ容易にオペレータを管理でき、しかも利便性に優れている。よって、本発明の目的を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るオペレータの管理システムの概略構成図である。本システムは、作業機械1の位置や稼動状況をサーバ3へ送信するとともに、オペレータの作業機械1の操作管理についても行うように構成されている。この際、オペレータの位置情報はオペレータが所有するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能付き携帯電話2を利用して送信される。
【0009】
なお、作業機械1としては、図1で示すような油圧ショベルの他、ホイルローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーンなどの建設機械であってよく、また、ダンプトラックなどの運搬車両であってもよい。
【0010】
図1において、本システムは具体的に、作業機械1と、オペレータが所有する携帯電話2と、管理センターなどの遠隔地にて作業機械1と通信可能に設置されたサーバ3と、サーバ3に接続されたデータベース4とで構成される。ここで、携帯電話2は、GPS機能を有する一般的なものでよい。図中の符号5は、作業機械1と携帯電話2の位置情報を送信するGPS衛星であり、符号6は、無線通信用の中継基地等である。
【0011】
図2は、作業機械1の構成を示す模式図である。図2において、作業機械1は、その駆動部分を電子制御する電子制御コントローラ12と、この電子制御コントローラ12に接続される通信コントローラ13と、この通信コントローラ13に接続されたGPSセンサ14および通信端末15と、GPSセンサ14に接続されたGPSアンテナ16と、通信端末15に接続された通信アンテナ17とから構成される車体内ネットワーク18を備えている。
【0012】
電子制御コントローラ12は、エンジン11の回転数、バッテリ電圧、燃料量、冷却水温、その他の作業機械1を駆動するための要素を検知するセンサからの信号を受けて、これらの要素を電子的に制御するものである。
【0013】
通信コントローラ13は、電子制御コントローラ12からの信号を受信し、この信号や各種データを、必要に応じて通信端末15を介して管理センターに送信する。これにより、管理センター側にて作業機械1の稼動状況を知ることが可能である。また、通信コントローラ13には、キースイッチ20が接続されているとともに、本システムで利用される所定の手段が設けられている。キースイッチ20をオンポジションにした場合には、図示しないバッテリからセルモータへ電気エネルギーが供給され、エンジン11を始動させるのであるが、これと同時にキースイッチ20からの操作信号が通信コントローラ13へ送信されるようになっている。
【0014】
図3ないし図5には、通信コントローラ13、携帯電話2、およびサーバ3のブロック図が示されている。図3において、通信コントローラ13は、キーポジション判定手段31と、機械位置情報送信手段32とを備えている。
【0015】
通信コントローラ13にあるキーポジション判定手段31は、キースイッチ20がスタートポジションであるか否かを、キースイッチ20からの操作信号によって判断する。
機械位置情報送信手段32は、キーポジション判定手段31がキースイッチ20から操作信号を受信すると、GPSセンサ14より位置情報信号を取得し、通信端末15および中継基地6を介してサーバ3へ送信する。
【0016】
図4において、携帯電話2は、オペレータ位置情報要求受信手段41と、携帯GPSセンサ42と、オペレータ位置情報送信手段43とを備えている。これらオペレータ位置情報要求受信手段41、携帯GPSセンサ42、およびオペレータ位置情報送信手段43は、GPS機能付き携帯電話に一般的に搭載されている機能である。
【0017】
オペレータ位置情報要求受信手段41は、サーバ3から位置情報要求信号を受信する機能を備えている。
オペレータ位置情報送信手段43は、オペレータ位置情報要求受信手段41がサーバ3から位置情報要求信号を受信すると、携帯GPSセンサ42からオペレータ位置情報信号を取得し、サーバ3へ送信する機能を備えている。
【0018】
図5において、サーバ3は、機械位置情報受信手段51と、オペレータ位置情報要求手段52と、オペレータ位置情報受信手段53と、位置判断手段54と、リスト作成登録手段55とを備えている。
【0019】
機械位置情報受信手段51は、作業機械1の通信コントローラ13から位置情報信号を受信する機能を有している。
オペレータ位置情報要求手段52は、位置情報要求信号を生成する機能を有するとともに、データベース4を参照し、データベース4に登録されている全てのオペレータの携帯電話2へ位置情報要求信号を送信する。
【0020】
具体的に、データベース4には、図6に示す作業機械オペレータリスト101が登録されており、オペレータ位置情報要求手段52は、登録されている各オペレータの携帯電話2へ位置情報要求信号を送信する。ここで、図6に示すM1,M2,M3・・・は、各作業機械1の名称であり、O1,O2,O3・・・は、各オペレータの氏名である。例えば、一台の作業機械を操作可能なオペレータとしては、複数人が登録されることもあり、また、一人のオペレータが、複数の作業機械を操作できるように登録されることもある。したがって、オペレータ位置情報要求手段52は、各オペレータに重複しないように、位置情報要求信号を送信する機能をも有している。
【0021】
オペレータ位置情報受信手段53は、携帯電話2のオペレータ位置情報送信手段43からオペレータ位置情報信号を受信する機能を有している。
位置判断手段54は、機械位置情報受信手段51が受信した作業機械1の機械位置情報信号と、オペレータ位置情報受信手段53が受信したオペレータ位置情報信号とから、各作業機械1に設置されたGPSアンテナを中心とする指定した範囲内にオペレータが存在しているか否かを判断する。オペレータが範囲内に存在する時は、単独か複数かを判断し、複数人存在するときは、オペレータ位置情報要求手段52が再度、各オペレータの携帯電話2へ位置情報要求信号を送信する。また、オペレータが範囲内に存在しない時は、作業機械1の管理者へ通報する。そして、位置判断手段54は、作業機械1の運転者が特定されたものについて、作業機械1の位置情報信号とオペレータ位置情報信号をリスト作成登録手段55へ送信する。
【0022】
具体的には、図7に示すように、位置判断手段54は、作業機械M1からの指定した範囲内にオペレータO1が居る場合には、オペレータO1を作業機械M1の運転者として判断する。これに対し、作業機械M1からの指定した範囲内に複数のオペレータO1,O2が居た場合は、どちらが作業機械M1の運転者であるか特定できないため、特定できるまではオペレータ位置情報要求手段52が繰り返し、オペレータO1,O2の携帯電話2へ位置情報を要求することになる。また、作業機械M1からの指定した範囲内にオペレータが居ない場合には、作業機械1の管理者へ通報することとなる。このような場合には、指定されているオペレータ以外によって、作業機械1が操作されており、盗難が発生している可能性がある。
【0023】
各作業機械1からの指定範囲については、各作業機械1に設置されたGPSアンテナ16を中心とする半径Rの距離を各作業機械1に応じて設定することができ、またリモート操作でも変更できる。
【0024】
リスト作成登録手段55は、位置判断手段54から作業機械1の位置情報信号とオペレータ位置情報信号を受信すると、それらに基づいて作業機械1とオペレータとの関連付けリストを作成する。具体的には、図6に示すような作業機械1の位置情報やオペレータの位置情報を記載した関連付けリスト102を作成する。作成されたリストは、データベース4へ登録される。
【0025】
データベース4には、図4に示す作業機械オペレータリスト101と、作業機械とオペレータとの関連付けリスト102が登録されている。これらは、随時更新され、最新のリスト101,102が登録されている。
【0026】
以下、図8をも参照して、本システムを利用した場合のフローを説明する。
作業機械1のキースイッチ20がオフポジションにある状態において、キーポジション判定手段31は、オペレータがキースイッチ20を操作したかどうかを監視している(S1)。キースイッチ20がスタートポジションへ操作されると、キーポジション判定手段31は、キースイッチ20から操作信号を受信する(S2)。そうすると、位置情報送受信手段32は、GPSセンサ14にてGPS衛星5から位置情報を取得し、位置情報信号を通信端末15を介し、サーバ3へ送信する(S3)。
【0027】
サーバ3側では、機械位置情報受信手段51が、作業機械1からの位置情報信号を受信する(S4)。この後、オペレータ位置情報要求手段52は、位置情報要求信号を生成するとともに、データベース4から作業機械オペレータリスト101を読み出し、各オペレータの所有する携帯電話2に対して、位置情報要求信号を送信する(S5)。
【0028】
携帯電話2側では、オペレータ位置情報要求受信手段41にてサーバ3からの位置情報要求信号を受信すると、オペレータ位置情報送信手段43は、携帯GPS42によりオペレータの位置情報を取得し、オペレータ位置情報信号をサーバ3へ送信する(S6)
【0029】
サーバ3側にて、オペレータ位置情報受信手段53がオペレータ位置情報信号を受信する(S7)。次に、位置判断手段54は、機械位置情報受信手段51からの作業機械1の位置情報信号と、オペレータ位置情報受信手段53からのオペレータ位置情報信号とを参照することで、作業機械1に設置されたGPSアンテナを中心とする指定した範囲内にオペレータが居るかを判断する(S8)。オペレータが居る場合には、位置判断手段54はオペレータの人数が単独か、複数かを判断し(S9)、作業機械1を中心とする所定の範囲内にオペレータが居ない場合には作業機械1の管理者へ通報する(S10)。
【0030】
オペレータが単独で居る場合は、リスト作成登録手段55が、オペレータと作業機械1との位置情報から、作業機械とオペレータとの関連付けリスト102を作成し、データベース4に登録する(S11)。一方、オペレータが複数人居る場合はオペレータ位置情報要求受信手段41が再度、オペレータの位置情報を要求するフローへ戻ることになる(S6)。このことにより、作業機械1を操作しているオペレータを一名に特定する。したがって、管理センターでは、特定されたオペレータの作業機械1の操作時間を記録し、作業日報を作成することができる。なお、操作時間の記録は、エンジン1が停止されるまで続けられることになる。
【0031】
以上のように、本願発明によれば、オペレータが一般的なGPS機能付きの携帯電話2を所持しているだけで、どの作業機械1を操作しているか、またオペレータの作業機械1の操作時間を容易に把握することができ、オペレータの管理が可能である。さらに、作業機械1には、従来から設置されているGPSセンサ14があれば、新たに高度な装置を設置する必要がなく、本システムを利用することができるため、低コストに抑えることができる。従って、旧式の作業機械や、安価な作業機械においても同一の形式でオペレータの管理を行うことができる。オペレータも作業機械1を操作する上で、新たな操作を覚える必要がないため、手入力などの面倒な作業も省略でき、利便性に優れている。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成などを含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれるものである。
例えば、本発明は、無線通信用の中継基地6の代わりに、通信衛星を設けてもよい。このような構成では、海外で作業するオペレータを管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、各種の建設機械や、産業機械、運搬車両などの作業機械に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るオペレータ管理システムの概略図。
【図2】作業機械の構成を示す模式図。
【図3】作業機械の通信コントローラを示すブロック図。
【図4】作業機械の携帯電話を示すブロック図。
【図5】作業機械のサーバを示すブロック図。
【図6】本実施形態でのデータベースに登録されているリストの例を示す図。
【図7】本実施形態での作業機械とオペレータとの位置関係を示す図。
【図8】本実施形態を利用した場合のフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
1…作業機械、2…携帯電話、3…サーバ、13…通信コントローラ、14…GPSセンサ、31…キーポジション判定手段、32…機械位置情報送信手段、41…オペレータ位置情報要求受信手段、42…携帯GPSセンサ、43…オペレータ位置情報送信手段、52…オペレータ位置情報要求手段、54…位置判断手段、55…リスト作成登録手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータ管理システムにおいて、
作業機械と、
前記作業機械を操作するオペレータが所持する携帯電話と、
前記作業機械に対して遠隔した位置に配置されたサーバとを備え、
前記作業機械および携帯電話には、
自身の位置を特定するGPSセンサと、
前記GPSセンサからの位置情報信号を前記サーバへ送信する位置情報送信手段とが設けられ、
前記サーバには、
前記作業機械からの機械位置情報信号を受信した後にオペレータの前記携帯電話にオペレータ位置情報要求信号を出力するオペレータ位置情報要求手段と、
前記機械位置情報信号および前記携帯電話から送信されるオペレータ位置情報信号に基づいて前記作業機械および前記オペレータの位置を判断する位置判断手段と、
判断された位置に基づいて作業機械およびオペレータを互いに関連付けて作業日報を作成するリスト作成登録手段とが設けられている
ことを特徴とするオペレータ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−240462(P2008−240462A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85466(P2007−85466)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】