説明

オメガ9品質カラシナ

本発明は、カラシナ(Brassica juncea)を含む、改良されたアブラナ属(Brassica)種、カラシナからの改良された油及びミール、そのような改良されたアブラナ属種の産生方法、並びにアブラナ属系統の選択方法に関する。さらなる実施形態は、カラシナの現在存在する市販栽培品種に比べて増加したオレイン酸含有量及び減少したリノレン酸含有量を有する内因性の油を含むカラシナの種子、種子油中の増加したオレイン酸含有量及び種子油中の減少したリノレン酸含有量がその中に安定して組み込まれている形質を有するカラシナの種子、並びに前記種子から生産される後代植物の一又はそれ以上の世代に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラシナ(Brassica juncea)を含む改良されたアブラナ属(Brassica)種、カラシナからの改良された油及びミール、そのような改良されたアブラナ属種の産生方法、並びにアブラナ属系統の選択された方法に関する。さらなる実施形態は、カラシナの現在存在する市販栽培品種に比べて増加したオレイン酸含有量及び減少したリノレン酸含有量を有する内因性の油を含むカラシナの種子、並びに種子油中の増加したオレイン酸含有量及び種子油中の減少したリノレン酸含有量がその中に安定して組み込まれている形質を有するカラシナの種子に関する。
【0002】
優先権主張
本出願は、2008年11月4日に出願された「Omega-9 Quality Brassica Juncea」についての米国特許仮出願番号第61/198,442号の出願日の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
カノーラは、カナダの植物育種家によって、具体的にはその油及びミールの特性、特にその低い飽和脂肪レベルのために、開発された菜種の遺伝子変異種である。「カノーラ」は、種子油中に2重量%未満エルカ酸(Δ13−22:1)と油不含ミール1グラムにつき30マイクロモル未満のグルコシノレートとを有するアブラナ属種の植物を一般に指す。概して、カノーラ油は、パルミチン酸及びステアリン酸として公知の飽和脂肪酸、オレイン酸として公知のモノ不飽和脂肪酸、並びにリノール酸及びリノレン酸として公知の多価不飽和脂肪酸を含み得る。これらの脂肪酸を、時として、それらの炭素鎖の長さ及びその鎖内の二重結合の数により言及する。例えば、オレイン酸は、炭素数18の鎖と1つの二重結合を有するので、時としてC18:1と呼ばれ、リノール酸は、炭素数18の鎖と2つの二重結合を有するので、時としてC18:2と呼ばれ、及びリノレン酸は、炭素数18の鎖と3つの二重結合を有するので、時としてC18:3と呼ばれる。カノーラ油は、約7%未満の全飽和脂肪酸(主としてパルミチン酸及びステアリン酸)及び(全脂肪酸に対する百分率として)60%より多くのオレイン酸を含有することがある。従来、カノーラ作物は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)及びアブラナ(Brassica rapa)品種を含む。最近、他のカノーラタイプに類似した油及びミール品質を有するカノーラ品質カラシナ品種が、カノーラ作物ファミリーに加えられた(2001年10月16日にPottesらに発行された米国特許第6,303,849号;Yaoらの米国特許第7,423,198号;Potts and Males, 1999)。
【0004】
植物油の脂肪酸組成は、その油の品質、安定性及び健康特性に影響を及ぼす。例えば、オレイン酸(C18:1モノ不飽和脂肪酸)は、血漿コレステロールレベルを低下させ、種子油中のより高いオレイン酸含有量レベル(>70%)を望ましい形質にする点での有効性をはじめとする、一定の健康上の恩恵を有すると考えられている。さらに、植物油中のすべての脂肪酸が、高温及び酸化の影響を同等に受けやすいとは限らない。むしろ、酸化に対する個々の脂肪酸の感受性は、それらの不飽和度に依存する。例えば、3つの炭素−炭素二重結合を有するリノレン酸(C18:3)は、炭素−炭素二重結合を1つしか有さないオレイン酸より98倍速く酸化し、2つの炭素−炭素二重結合を有するリノール酸は、オレイン酸より41倍速く酸化する(R. T. Holman and O. C. Elmer, 「The rates of oxidation of unsaturated fatty acid esters,」 J. Am. Oil Chem. Soc. 24, 127-129 1947)。オレイン脂肪酸、リノール脂肪酸及びリノレン脂肪酸の相対酸化速度に関するさらなる情報については、Hawrysh, 「Stability of Canola Oil,」 Chap. 7, pp. 99-122, CANOLA AND RAPESEED: PRODUCTION, CHEMISTRY, NUTRITION, AND PROCESSING TECHNOLOGY, Shahidi, ed., Van Nostrand Reinhold, NY, 1990を参照のこと。
【0005】
植物油の「安定性」は、酸化に対する、及び酸敗臭を生じさせ食品品質を低下させる生成物の産生に起因するその結果として生ずる劣化に対する、油の耐性と定義することができる。同一の処理、形成、包装及び保管条件下での、異なる植物油間の安定性の大きな違いは、それらの異なる脂肪酸プロフィールに起因する。従って、高オレイン酸含有量の植物油は、熱の存在下でその増強された耐酸化性のため、調理用途に好ましい。酸化がその油の商品価値を大幅に低下させ得る異臭及び臭気を生じさせるので、例えば、油をフライ油として使用する場合、劣った酸化安定性は、実使用時間を短くする。この理由のため、高オレイン酸及び低リノレン酸が植物油における望しい形質であり得る。
【0006】
植物は、それらの色素体において脂肪酸をパルミトイル−ACP(16:0−ACP)及びステアロイル−ACPとして合成する。ステアロイル−ACPのオレオイル−ACP(18:1−ACP)への変換は、可溶性酵素、ステアロイル−ACP Δ9デサチュラーゼ、によって触媒される(Shanklin and Somerville, 1991)。これらのアシル−ACP類は、葉緑体における糖脂質合成のために使用されるか、葉緑体から出て細胞質にアシル−CoAとして輸送される。オレイン酸のさらなる脱飽和は、それがグリセロ脂質の合成に使用され、膜に組み込まれてはじめて発生し、これが多価脂肪酸の合成をもたらす。
【0007】
脂肪種子作物における脂肪酸の不飽和が、脂肪酸デサチュラーゼ(FAD)酵素によってある程度制御されることは、当業者に広く公知である。FAD酵素は、脂肪酸、例えばステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)及びリノール酸(C18:2)、の不飽和を、規定量の炭素数の脂肪アシル鎖から水素原子を除去して炭素−炭素二重結合を作ることにより調節する。多価不飽和脂肪酸リノレアート(Δ9,12−18:2)及びα−リノレナート(Δ9,12,15−18:3)の合成は、オレイン酸(Δ9−18:1)のリノール酸への変換、ミクロソームω−6オレイン酸デサチュラーゼ(FAD2)によって触媒される酵素的段階で開始する。その後、リノール酸は、ω−3リノール酸デサチュラーゼ(FAD3)によるさらなる脱飽和により、ω−リノレン酸に変換される。遺伝子工学によるFAD2遺伝子の操作によって脂肪酸プロフィールを改変できたという報告がある。例えば、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)突然変異系統における大豆fad2遺伝子の異種発現は、多価不飽和脂肪酸の蓄積の劇的増加をもたらした(Heppard et al., 1996)。対照的に、fad2遺伝子の転写がT−DNA挿入に起因して有意に減少されるシロイヌナズナ族突然変異系統fad2−5においては、オレイン酸の蓄積の劇的増加並びにリノール酸及びリノレン酸レベルの有意な減少を示した(Okuley et al., 1994)。これらの発見は、FAD2遺伝子が、種子貯蔵脂質におけるオレイン酸のリノール酸への変換の制御に重要な役割を果たす。
【0008】
植物、特に、商用脂肪及び油の大規模生産に用いられるアブラナ属種などの脂肪種子品種、の脂肪酸プロフィールを操作するための有意な努力がなされてきた(例えば、1997年4月29日に発行された米国特許第5,625,130号、1997年9月16日に発行された米国特許第5,668,299号、1998年6月16日に発行された米国特許第5,767,338号、1998年11月24日に発行された米国特許第5,840,946号、1998年12月15日に発行された米国特許第5,850,026号、1999年1月19日に発行された米国特許第5,861,187号、2000年5月16日に発行された米国特許第6,063,947号、2000年7月4日に発行された米国特許第6,084,157号、2001年1月2日に発行された米国特許第6,169,190号、2001年11月27日に発行された米国特許第6,323,392号、並びに1997年11月27日に発行された国際特許出願国際公開第97/43907号及び2000年9月9日に発行された国際特許出願国際公開第00/51415号を参照のこと)。
【0009】
カラシナ(Brassica juncea)(AA BBゲノム;n=18)(本明細書では「カラシナ(B. juncea)」とも呼ぶ)は、アブラナ(AAゲノム;n=10)とクロガラシ(Brassica nigra)(BBゲノム;n=8)のハイブリダイゼーションの結果として生じたと一般に考えられているアブラナ属の複二倍体植物である。セイヨウアブラナ(Brassica napus)(AA CCゲノム;n=19)(本明細書では「セイヨウアブラナ(B. napus)とも呼ぶ」もアブラナ属の複二倍体植物であるが、アブラナとブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)(CCゲノム;n=9)のハイブリダイゼーションの結果として生じたと考えられている。一部の成長条件下では、カラシナがアブラナより優れた一定の形質を有することがある。これらの優れた形質としては、より高い収率、より良い耐乾燥性、より良好な耐暑性、及びより良い耐病性を挙げることができる。徹底的な育種努力により、種子が2%未満エルカ酸を含有し、脱脂ミールが1グラムにつき30マイクロモル未満グルコシノレートを含有する、アブラナ属種の植物が生産された。用語「カノーラ」は、低エルカ酸(Δ13−22:1)及び低グルコシノレートを含有するアブラナ属種の品種を述べるために用いられている。概して、カノーラ油は、約7%未満の全飽和脂肪酸及び(全脂肪酸に対する百分率として)60%より多くのオレイン酸を含有し得る。例えば、米国では、21 CFR 184.1555のもと、セイヨウアブラナ又はアブラナから採取される低エルカ酸菜種油は、それが成分脂肪酸の2%以下のエルカ酸含有量、50.0重量%を超えるオレイン酸(C18:1)含有量、40.0重量%未満のリノール酸(C18:2)含有量、及び14.0重量%未満のリノレン酸(C18:3)含有量を有する場合、カノーラ油とみなされる。カナダでは、カナダカノーラ協会(the Canola Council of Canada)によるカノーラの定義へのカラシナの追加により、カラシナカノーラ品種は、該種子中に全脂肪酸の55%に等しい又はそれより多いオレイン酸含有量を含む油を有する種子を生産しなければならい、及びカラシナカノーラ種子から得られるミールは、油不含ミール1グラムにつき1マイクロモル未満のアリル(2−プロピル)グルコシノレートを含有しなければならないという、追加要件が設定された。
【0010】
カラシナ油組成とセイヨウアブラナ油組成の間の相違は、当該分野において周知である。例えば、カラシナが、フェノール(例えばトコフェロール)、ステロール、スルフィド、脂肪酸成分、ミネラル及びイソチオシアナートを含むが、これらに限定されない、様々な成分の相違を含むことは、公知である。カラシナは、強い抗微生物(細菌及び真菌)特性を有する揮発分も含有する。
【0011】
植物育種家により、グルコシノレート、例えば3−ブテニル、4−ペンテニル、2−ヒドロキシ−3−ブテニル又は2−ヒドロキシ−4−ペンテニルグルコシノレート、が低いカノーラ品種も選出された。カノーラ品質ミールは、例えば、油不含ミール1グラムにつき30マイクロモル未満の脂肪族グルコシノレートのグルコシノレート含有量を有すると定義することができる。最近、主な商用カノーラ作物は、セイヨウアブラナ及びアブラナ(現 Brassica rapa;旧名 Brassica campestris)品種を含む。2001年10月16日にPottsらに発行された米国特許第6,303,849号には、カノーラに類似した特性を有する食用油を有するカラシナ系統が開示されている。そこに開示されているカラシナ系統は、ATCCアクセッション番号203389及び203390としてそれぞれ寄託されたカラシナ系統J90−3450及びJ90−4316を含む系統群を有する(これらの両方が、ブダペスト条約のもと、1998年10月23日にカナダ農務・農産食品省(Agriculture and Agri-Food Canada)により米国微生物系統保存機関(the American Type Culture Collection),10801 University Blvd.,Manassas,Va.USA 20110−2209に寄託された)。
【0012】
関連技術及びそれに関連した制限についての上述の例は、例証のためのものであり、排他的ではない。前記関連技術の他の制限は、本明細書を読むこと及び本図面を検討することにより、当業者に明らかになるだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,303,849号
【特許文献2】米国特許第7,423,198号
【特許文献3】米国特許第5,625,130号
【特許文献4】米国特許第5,668,299号
【特許文献5】米国特許第5,767,338号
【特許文献6】米国特許第5,840,946号
【特許文献7】米国特許第5,850,026号
【特許文献8】米国特許第5,861,187号
【特許文献9】米国特許第6,063,947号
【特許文献10】米国特許第6,084,157号
【特許文献11】米国特許第6,169,190号
【特許文献12】米国特許第6,323,392号
【特許文献13】国際公開第97/43907号
【特許文献14】国際公開第00/51415号
【特許文献15】米国特許第6,303,849号
【特許文献16】米国特許第6,303,849号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Potts and Males, 1999
【非特許文献2】R. T. Holman and O. C. Elmer, "The rate of oxidation of unsaturated fatty acid esters," J. Am. Chem. Soc. 24, 127-129 1947
【非特許文献3】Shanklin and Somerville, 1991
【非特許文献4】Heppard et al., 1996
【非特許文献5】Okuley et al., 1994
【発明の概要】
【0015】
以下の実施形態及びそれらの態様を、例示的及び例証的であることを意図したものであり、範囲の限定を意図したものでないシステム、ツール及び方法と共に説明し、例証する。様々な実施形態において、上で説明した問題の1つ又はそれ以上が低減又は排除されたが、他の実施形態は、他の改良に関する。
【0016】
様々な態様において、本発明は、カラシナ植物、種子、細胞、核酸配列のアレル変異、及び油を提供する。本発明の植物の種子における食用油は、他のカラシナ植物の種子において見出されるものより有意に高いオレイン酸含有量及び低いリノレン酸含有量を有し得る。多数の高オレイン酸/低リノレン酸(「HOLL」)カラシナ系統を本発明において開示する。1つの実施形態において、カラシナ系統は、国際公開番号国際公開第2006/0248611A1号に開示され、それに添付されている図1及び3、並びに配列番号7、9、12及び13に例示されているように、FAD2及びFAD3遺伝子を含む。結果として生ずる突然変異体アレルは、デルタ−12脂肪酸デサチュラーゼタンパク質をコードし、これらは、それに添付されている図2並びに配列番号8、10及び11に例示されている。他の実施形態において、カラシナ系統は、fad−a及びfad3−a遺伝子座での突然変異を含むことがあり、結果として生ずる突然変異体アレルは、予測されるBjFAD2−A及びBjFAD3−Aタンパク質の配列において1つ又はそれ以上の突然変異をコードすることがある。本発明での使用に適するfad2−a及びfad3−a突然変異遺伝子及びタンパク質の代表例としては、国際公開番号国際公開第2006/079567A3号(例えば、図1及び2、並びに配列番号3及び4);国際公開番号国際公開第2005/107590A2号(例えば、配列番号:1から12);米国特許第6,967,243号B2(例えば、図2及び3、並びに配列番号11、12、15、16、17及び18);及び欧州公報第1862551号A1(例えば、図1から10、及び配列番号22から33)に開示されているものも挙げられるが、それらに限定されない。別の実施形態において、BNfad2−a及びBnfad23−a変換系統は、BnFad2A、BnFad3A含有カラシナ植物における脂肪酸プロフィールの有意な変化を検出できるので、アブラナ属植物におけるBJFAD2B及びBJFAD3Bの自然変異を探すために使用し得る。
【0017】
本発明の1つの態様では、アブラナ属植物におけるFAD2及び/又はFAD3酵素活性の置換、欠失又はサイレンシングが、約70重量%より多いオレイン酸含有量及び約5重量%未満のリノレン酸含有量を有する油を生産することができる植物を生じさせることを、思いがけず発見した。もう1つの実施形態では、アブラナ属植物におけるFAD2及び/又はFAD3酵素活性を修飾する遺伝子の移動又は移入が、約70重量%より多いオレイン酸含有量及び約5重量%未満のリノレン酸含有量を有する油を生産することができる植物を生じさせることを、思いがけず発見した。そのような植物は、例えば、カラシナ又はセイヨウアブラナなどの、四倍体植物又は複二倍体植物である場合がある。従って、1つの態様において、本発明は、植物における、例えばカラシナの系統における、選択されたFAD2及びFAD3コード配列の欠失又はサイレンシングをもたらす。本発明の植物から採取される食用油は、次の特徴のうちの1つ又はそれ以上により特徴づけることができる:少なくとも70重量%のオレイン酸含有量、約5重量%未満のリノレン酸含有量、及び約7重量%未満の全飽和脂肪酸含有量。
【0018】
本発明の別の態様は、植物及び植物の部分が挙げられる。本明細書において用いる場合、「植物の部分」は、本発明の核酸を有する、又は本発明のfad2/fad3コード配列を有する、又はセイヨウアブラナからFAD2及び/若しくはFAD3酵素を発現する調節配列、例えばFAD2/FAD3コード領域の上流の配列、を有する、植物細胞、種子、花粉を含む。本発明の植物、すなわち本発明のマーカーによって選択された後代植物を含む植物を使用して植物生産品を得るための方法を提供する。本明細書において用いる場合、「植物生産品」は、改変されたオレイン酸及びリノレン酸の濃度を有する植物生産品を含めて、本発明の植物、すなわち植物の部分、例えば種子、ミール、脂肪又は油、を含む植物から採取されるあらゆるものを含む。活性FAD2酵素及び/又はFAD3酵素を発現することができるセイヨウアブラナからの移入fad2/fad3コード配列を有するように植物を修飾するための方法を提供する。そのような方法は、例えば、種間ハイブリダイゼーションによりセイヨウアブラナからfad2−a及び/又はfad3−aコード配列の1つ又はそれ以上を植物に移入して、その植物が、置換fad2及び/又はfad3コード配列を有するようにすることを含む。そのような方法により、誘導突然変異の同定及びセイヨウアブラナへの該突然変異の正確な遺伝子移入が可能になる。
【0019】
例えば、選択されたFAD2及び/又はFAD3遺伝子座の異なるアレルを区別するために使用し得る、本発明のfad2/fad3コード配列部分を同定するための増幅プライマを提供する。本発明のfad2/fad3コード配列、又は本発明のfad2/fad3コード配列の上流の領域、を使用して植物を得るための方法を提供する。例えば、本発明の配列は、選択されたFAD2若しくはFAD3遺伝子座からのFAD2及び/若しくはFAD3遺伝子の発現をダウンレギュレート若しくは改変すること、又は前記FAD2及び/若しくはFAD3遺伝子によってコードされたFAD2及び/若しくはFAD3タンパク質をトランケートすることなどにより、選択されたFAD2及び/又はFAD3コード配列の発現をダウンレギュレート又は改変し得る部位特異的突然変異を誘導する又は標的にするために使用し得る。従来の植物育種技術、例えば交配及び戻し交配、並びに他の育種技術を用いて、本発明のfad2及び/又はfad3コード配列を本発明の植物の後代に導入することができる。
【0020】
別の実施形態は、少なくとも68.0重量%オレイン酸及び4.0重量%未満リノレン酸を含む脂肪酸含有量を有するカラシナ品種の種子中の油を含む。
【0021】
本発明は、本明細書に記載するカラシナ植物の種子から得られるミールをさらに含み、この場合、そのようなミールは、粉砕種子、プレスケーキ、ホワイトフレーク、又は従来の粉砕及び溶媒抽出プロセスからのミールの形態であり得る。
【0022】
上で説明した例示的態様及び実施形態に加えて、図面への参照により、及び以下の説明の検討により、さらなる態様及び実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1−1】DMS100及びQuantumからクローニングしたfad2遺伝子の部分的ゲノムヌクレオチド配列を図示するものである。上は、DMS100配列であり、下は、Quantaum配列である。矢印は、終止コドン(TAG)(陰影付き)を生じさせた、CからTへの単一ヌクレオチド突然変異を示す。PCRに基づく突然変異体アレル特異的マーカーについてのフォワード及びリバースプライマを太字にし、下線を引く。
【図1−2】DMS100及びQuantumからクローニングしたfad2遺伝子の部分的ゲノムヌクレオチド配列を図示するものである。上は、DMS100配列であり、下は、Quantaum配列である。矢印は、終止コドン(TAG)(陰影付き)を生じさせた、CからTへの単一ヌクレオチド突然変異を示す。PCRに基づく突然変異体アレル特異的マーカーについてのフォワード及びリバースプライマを太字にし、下線を引く。
【図2】DMS100、Quantumからクローニングしたゲノムヌクレオチド配列からの、及び公表されているセイヨウアブラナFAD2遺伝子(BNFAD2)からの、縮重したfad2遺伝子のアミノ酸配列を提供している。矢印は、DMS100における単一ヌクレオチド突然変異(CからT)の結果として生ずる終止コドンの位置を示す。
【図3】DMS100及びQuantumからクローニングしたfad3c遺伝子のゲノムヌクレオチド配列を示す。上は、DMS100配列であり、下は、Quantum配列である。エキソンを枠で囲み、イントロンは枠で囲まない。これらは、アブラナ及びシロイヌナズナ属におけるfad3遺伝子のエキソン4、5、6及び7、並びにイントロン4、5及び6に対応する。矢印は、GからAへの単一ヌクレオチド突然変異を示す。PCRに基づく突然変異体アレル特異的マーカーについてのフォワード及びリバースプライマを太字にし、下線を引く。
【図4】本発明の原理による抗オレイン酸−低リノレン酸選択物とカラシナ親(Zem1、Zem2及びZEスコロスペルカ(ZE Skorospelka))の間の1回又はそれ以上の戻し交配(BC3およびBC4)を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明を明瞭にするために、本明細書において用いる専門用語の一部を以下の通り説明する。
【0025】
用語「系統」は、呼称を共有する個体間での総体的変異をほとんど示さない、植物の一群を指す。「系統」は、一般に、少なくとも1つの形質について個体間の遺伝的変異をほとんど又はまったく示さない、植物の一群を指す。本出願において用いる場合の「DH(倍加半数体)系統」は、半数体組織を培養し、その後、細胞分裂を伴わずに染色体含有量を倍増させて、それぞれの染色体対が2個の重複染色体からなる2倍数の染色体を有する植物を生じさせることによって産生された、植物の一群を指す。従って、DH系統は、通常、形質についての個体間の遺伝的変異をほとんど又はまったく示さない。
【0026】
「品種」又は「栽培品種」は、繁殖させたとき、その特質の点で異なり、安定しており、均一である、商業生産に用いられる植物系統である。
【0027】
「倍加半数体」(DH)系統は、植物が個々の小胞子から作出される小胞子胚形成プロセスによって作出された系統を指す。このプロセスにより、均一である系統が作出される。すなわち、その系統内のすべての植物が同じ遺伝子構成を有する。原DH植物をDH1と呼び、一方、後の世代をDH2、DH3などと呼ぶ。倍加半数体生産株は、周知であり、幾つかの作物について確証されている。カラシナについての生産株は、Thiagrarajah及びStringhamによって説明されている(1993)(L. Czern and Coss. Plant Breeding 111:330-334におけるA comparison of genetic segregation in traditional and microspore-derived populations of Brassica juncea)。
【0028】
用語「高オレイン酸」は、野生型又は他の基準品種若しくは系統のものより高いオレイン酸含有量を有する、その文脈が指示し得るとおりのカラシナ又は他のアブラナ属種を指し、より一般的には、それは、少なくとも70.0重量%オレイン酸を含む脂肪酸組成を示す。
【0029】
「全飽和」は、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、アラキドン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)及びテトラコサン酸(C24:0)脂肪酸の併せた百分率を指す。本明細書にて説明される脂肪酸濃度は、当業者に周知の標準的な手順に従って決定される。具体的な手順は、実施例において説明する。全脂肪酸含有量に対する重量百分率として脂肪酸濃度を表示する。
【0030】
「半粒種子(half-seed)」分析は、1枚の子葉(半粒種子)を用いて脂肪酸分析を行う手順を指し、その分析結果が陽性であった場合、残りの半粒種子を使用して植物を形成する。
【0031】
「突然変異誘発」は、遺伝物質の突然変異を生じさせることが公知の薬剤を植物材料に塗布するプロセスである。本実験研究において使用した突然変異誘発剤は、エチルメチルスルホネート(EMS)であった。その目的は、ある種において新たな遺伝的変異性を生じさせることであり、通常は具体的な形質を念頭において行う。新規変異を誘導するために半数体に対して用いられた突然変異誘発の一例は、Swansonらによって記載されている(Plant Cell Rep. 7:83-87,1998)。外来核酸フラグメントでの組換えなどの他の技術範囲が、突然変異体の産生に適する場合があること、及び一定の技術を用いることによって突然変異体の産生を完全にランダムではなく特定のヌクレオチド又はアミノ酸変化に指向させることができることは、理解されるであろう。そのようなすべての核酸配列変化導入方法が、本明細書において用いる場合の用語「突然変異誘発」に包含されると考えられる。
【0032】
「再生」は、選択された植物又は品種から再生することができる細胞(例えば、種子、小胞子、胚株、花粉、植物の部分)の選択を含む。これらの細胞を場合により突然変異誘発に付すことができ、その後、突然変異誘発した細胞のタイプに基づいて再生、受精及び/又は成長技術を用いてそれらの細胞から植物を発生させる。適用できる再生技術は、当業者に公知である;例えば、Pua et al., Bio/Technology 5:815-817 (1987);Jain et al., Euphytica 40:75-81 (1989);Szarejko et al., Proceedings of an International Symposium on the Contribution of Plant Mutation Breeding to Crop Improvement, 2:355-378 (1991);Cegielska-Taras and Szala, Rosliny Oleiste - Oilseed Crops, XVIII, 21-30 (1997);Ferrie and Keller, Proc. 9th International Rapeseed Congr., Cambridge, 3:807-809 (1995);Martini et al., Vortr. Pfl anzenzuchtg. 45:133-154 (1999);Swanson et al., Theoretical and Applied Genetics. 78:525-530 (1989);and Kirti and Chopra, Plant Breeding 102: 1 , 73-78 (1988)を参照のこと。これに関連して、「M0」は、未処理種子を指し、「M1」は、突然変異誘発物質に暴露された種子及び結果として生じる植物を指し;「M2」は、自家受粉したM1植物の後代(種子及び植物)であり;「M3」は、自家受粉したM2植物の後代(種子及び植物)であり;「M4」は、自家受粉したM3植物の後代(種子及び植物)であり;「M5」は、自家受粉したM4植物の後代(種子及び植物)である、等々。
【0033】
所与の遺伝子制御脂肪酸成分に関して本明細書において用いる場合の用語「安定性」又は「安定した」は、その脂肪酸成分が、少なくとも2世代、好ましくは少なくとも3世代、にわたって実質的に同レベルで、好ましくは±5%で、世代から世代へと維持されることを意味する。本発明の方法は、世代から世代へ±5%以下の安定した改良された脂肪酸組成を有するカラシナ系統を作出することができる。上で言及した安定性が、植栽の温度、場所、ストレス及び時間による影響を受けることがあることは、当業者には理解される。従って、同様の成長条件下で生産された種子を使用して、カノーラ系統間の脂肪酸プロフィールの比較を行うべきである。
【0034】
用語「アブラナ属植物」を本発明に関連して用いるとき、これは、その群の任意の単一遺伝子変換も含む。本明細書において用いる場合の用語「単一遺伝子変換植物」は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術よって開発されるアブラナ属植物を指し、この場合、該戻し交配技術によって品種の所望の形態学的及び生理的特質の本質的にすべてが、該品種への単一遺伝子移入に加えて、回復される。戻し交配法を本発明と共に用いて、品種を改良する又は品種に特質を導入することができる。本明細書において用いる場合の用語「戻し交配」は、ハイブリッド後代が反復親に戻る反復交配、すなわち、反復親への1回又はそれ以上の戻し交配(「BC1」、「BC2」などとして識別される)を指す。所望の特質のための遺伝子を与える親アブラナ属植物は、「1回(non-recurrent)」又は「ドナー親」と呼ばれる。この専門用語は、1回親が、戻し交配に1回用いられる、従って、反復されないことを指す。1回親からの遺伝子(単数又は複数)が移入される親アブラナ属植物は、戻し交配プロトコルにおける幾つかのラウンドにそれが用いられる場合、反復親として公知である(Poehiman & Sleper, 1994;Fehr, 1987)。典型的な戻し交配プロトコルでは、関心のある原品種(反復親)を移入することとなる関心のある単一遺伝子を有する第二の品種(1回親)と交配する。その後、この交配の結果として生ずる後代を前記反復親と再び交配し、このプロセスをアブラナ属植物が得られるまで繰り返し、この場合、同じ環境条件下で成長させたとき5%有意性レベルで判定して、反復親の所望の形態学的及び生理的特質の本質的にすべてが、1回親からの単一の移入された遺伝子に加えて、その変換植物において回復される。
【0035】
適切な反復親の選択は、戻し交配手順成功のための重要なステップである。戻し交配プロトコルの目的は、原品種における単一の形質又は特質を改変する又は置換することである。これを達成するために、反復親品種の単一遺伝子を1回親からの所望の遺伝子で修飾又は置換するが、原品種の残りの望ましい遺伝物質構成、並びに従って望ましい生理的及び形態学的構成の本質的にすべてを維持する。特定の1回親の選択は、その戻し交配の目的に依存するだろう。主な目的の1つは、何らかの商業的に望ましい、農業実用面で(agronomically)重要な形質を植物に加えることである。正確な戻し交配プロトコルは、適切な試験プロトコルを決定するために改変させる特質又は形質に依存するであろう。移入する特質が優性アレルであれば戻し交配法は簡単になるが、劣性アレルも移入することができる。この場合、所望の特質が首尾よく移入されたかどうかを判定するために、その後代の試験が導入されることもある。
【0036】
戻し交配技術によって改良することができるが、新たな品種の発生の際に一様には選択されない多くの単一遺伝子形質が、同定されている。単一遺伝子形質は、トランスジェニックである場合もあり、又はトランスジェニックない場合もあり、これらの形質の例としては、雄性不稔、ワキシースターチ、除草剤耐性、細菌、真菌又はウイルス病に対する耐性、耐虫性、強化された栄養価、工業的利用能、収量安定性及び収量向上が挙げられるが、それらに限定されない。これらの遺伝子は、一般に、核によって受け継がれる。これらの単一遺伝子形質の幾つかは、米国特許第5,959,185号、同第5,973,234号及び同第5,977,445号に記載されている。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書に記載する又は本明細書から推断されるポリペプチドのいずれかに対する抗体を利用して、開示するアレルのうちの1つについての存在又は発現を判定すること、及び突然変異タンパク質と野生型タンパク質又は他の突然変異体とを区別してもよい。
【0038】
本出願において、「改良された特質」は、カラシナの野生型株の又は他のいずれの考慮中のアブラナ属系統であっても、その野生型株の等価の特質に関するものであり得る基準値又は性質と比較して望ましい又は有益またはその両方であるように、当該特質が改変されることを意味する。その特質を基準(対照)として使うことができる1つの可能性のある野生型カラシナ株は、J96D−4830であるが、多くの他のものが可能であり、当業者には容易に識別されるであろう。
【0039】
本出願において「後代」は、植物(単数又は複数)の子及び派生物を含むすべての子孫を意味し、第一、第二、第三及びその後の世代を含み、並びに自家受粉によって生産されることがあり、又は同じ若しくは異なる遺伝子型を有する植物との交配によって生産されることもあり、並びにある範囲の適する遺伝子工学技術によって修飾されることもある。
【0040】
本出願において、「育種」は、植物を発生させる又は繁殖させるすべての方法を含み、並びに種内交配と種間交配の両方、及び系統内交配と系統間交配の両方、並びに全ての適する従来の育種及び人工育種技術を含む。従来の育種法によって所望の形質を他のカラシナ系統に移入してもよく、並びに種間交配によって所望の形質を他のアブラナ属種、例えばセイヨウアブラナ及びアブラナ、に移入することもできる。従来の育種法と種間交配法の両方、並びに植物間での遺伝物質のその他の移入法は、十分に文献に記述されている。
【0041】
本出願において、「分子生物学技術」は、核酸配列の、該配列及びその発現を改変するための、すべての操作形態を意味し、配列又は配列フラグメントの挿入、欠失又は修飾、並びに任意の適するベクター及び/又は技術を用いる定方向又はランダム組換えによる生物のゲノムへの新たな配列の直接導入を含む。
【0042】
本出願において、例えば「親系統に遺伝的に由来する」というフレーズで用いるような「遺伝的に由来する」は、当該特質が、当該植物の遺伝子構成の態様により完全に又は一部分規定されることを意味する。
【0043】
本出願において、用語「アブラナ属」は、セイヨウアブラナ、カラシナ、クロガラシ、アビシニアガラシ(Braccica carinata)、ブラッシカ・オレラセア及びアブラナをはじめとするアブラナ属に包含される種のいずれか又はすべてを含み得る。
【0044】
本出願において用いる場合のカノーラカラシナは、「カノーラ」油又はミールとしての商品名に関する要件をそれぞれ満たす油及びミール品質を有する種子を生産するカラシナ(すなわち、種子油中に2重量%未満のエルカ酸(Δ13−22:1)及び油不含ミール1グラムにつき30マイクロモル未満のグルコシノレートを有するカラシナ種の植物)を指す。
【0045】
本発明の様々な遺伝子及び核酸配列は、組換え配列であってよい。用語「組換えの」は、何かが組換えられたことを意味するので、核酸構築物に言及するとき、この用語は、分子生物学技術によって互いに連結された又は生産された核酸配列からなる分子を指す。タンパク質又はポリペプチドに言及するときの用語「組換えの」は、分子生物学技術によって作出された組換え核酸構築物を使用して発現されるタンパク質又はポリペプチドを指す。遺伝子組成に言及するときの用語「組換えの」は、親ゲノムには存在しなかったアレルの新たな組み合わせを有する配偶子又は後代を指す。組換え核酸構築物は、自然にはライゲートされない又は自然には異なる位置でライゲートされる核酸配列に、ライゲートしている、若しくは、ライゲートするように操作されているヌクレオチド配列を含むことがある。従って、核酸構築物を「組換えの」と言うことは、その核酸分子が、遺伝子工学を用いて、すなわち人間の介入により、操作されたことを示す。組換え核酸構築物は、例えば、形質転換によって宿主細胞に導入することができる。そのような組換え核酸構築物は、単離され、その宿主種の細胞に再び導入されたものである、同じ宿主細胞種に由来する又は異なる宿主細胞種に由来する配列を含み得る。組換え核酸構築物配列は、宿主細胞ゲノムに、その宿主細胞の原形質転換の結果として組み込まれることになる場合もあり、又はその後の組換え及び/若しくは修復事象の結果として、組み込まれることになる場合もある。
【0046】
本明細書における脂肪酸のすべての百分率は、その脂肪酸が1成分である油の全脂肪酸に他する重量百分率を指す。例えば、70%オレイン酸を有する植物への言及は、その油の脂肪酸成分が70%オレイン酸を含むことを指す。
【0047】
集団の「多型」は、特定の遺伝子座の最も頻度の高い変異体(又はアレル)が、99%を超えない集団頻度を有する状態を指す。
【0048】
用語「異型接合性」(H)は、集団内の個体の一部が、(同じアレルの2つのコピーとは対照的に)異なるアレルを特定の遺伝子座に有するときに用いられる。異型接合性は、その集団内の個体がその遺伝子座において異型接合である確率である。通常、異型接合性は、0から100%にわたる百分率(%)として、又は0から1の尺度で表される。
【0049】
「同型接合性」又は「同型接合の」は、集団内の個体の一部が特定の遺伝子座に同じアレルの2つのコピーを有することを指す。植物が二重半数体である場合、そのハプロタイプの複製中に発生するいずれの自然突然変異を受けても、すべての遺伝子座は同型接合であると考えられる。この文脈が示すように、植物は、1つ、幾つか又はすべての遺伝子座について同型接合である場合がある。
【0050】
「プライマ」は、増幅すべきポリヌクレオチドの一部に相補的である、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な短鎖ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドである。例えば、プライマは、50ヌクレオチド長以下、好ましくは約30ヌクレオチド長未満、及び最も好ましくは約24ヌクレオチド長未満であり得る。
【0051】
本明細書において用いる場合の「単離された」核酸又はポリヌクレオチドは、その最初の環境(例えば、それが自然に存在する場合にはその自然環境)から取り去られた成分を指す。単離された核酸又はポリヌクレオチドは、最初に付随していた細胞成分の50%未満、75%未満、90%未満、及び99.9%未満、又は50%と99.9%の間の任意の整数値未満を含有することがある。前記細胞成分の残部とは(ゲルに基づき前例とは)十分に区別できるようにPCRを用いて増幅されたポリヌクレオチドは、例えば、「単離された」とみなすことができる。本発明のポリヌクレオチドは、「実質的に純粋」である場合がある、すなわち、当該分野において公知の特定の精製技術を用いて達成することができる最高純度を有し得る。
【0052】
「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖が塩基対合によって相補鎖と連結するプロセスを指す。1つのポリヌクレオチドの少なくとも1本の鎖を確定されたストリンジェンシー条件下で別のポリヌクレオチドの鎖にアニールすることができるとき、ポリヌクレオチドは互いに「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションは、2つのポリヌクレオチドが実質的に相補的な配列を含有することを必要するが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、ミスマッチを許容することができる。概して、高ストリンジェンシーでの(例えば、65℃で0.5×SCCの水溶液中でのような)2つ配列のハイブリダイゼーションは、それらの配列が、それらの全配列にわたって相当高い相補度を示すことを必要とする。中ストリンジェンシー(例えば、65℃で2×SCCの水溶液のような)及び低ストリンジェンシー(例えば、55℃で2×SCCの水溶液のような)は、ハイブリダイズする配列間でのそれ相応に総合的相補性を必要とする。(1×SCCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである)。本明細書において用いる場合、上記溶液及び温度は、ハイブリダイゼーション手順のプローブ洗浄段階を指す。「ストリンジェントな(低、中)条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」という用語は、1本の鎖だけしか別のポリヌクレオチドの相補鎖にハイブリダイズしないであろうが、1本鎖ポリヌクレオチドと2本鎖ポリヌクレオチドの両方を包含するためのものである。明記した溶液中での洗浄は、数分から数日の時間範囲にわたって行われることがあり、当業者は、結合された配列に関する異なる相同レベル間の区別に適する洗浄時間を容易に選択するであろう。
【0053】
1つの態様において、本発明は、高いオレイン酸重量百分率及び低いリノレン酸重量百分率を含む内因性脂肪酸含有量を有する種子を生産することができるアブラナ属植物、例えばカラシナ、を提供する。特定の実施形態において、前記オレイン酸は、約70.0%、71.0%、72.0%、73.0%、74.0%、75.0%、76.0%、77.0%、78.0%、79.0%、80.0%、81.0%、82.0%、83.0%、84.0%又は85.0%より多くの(これらのすべての整数及び小数部、又は85%より大きい値を有する任意の整数を含む)オレイン酸を含み得る。特定の実施形態において、前記脂肪酸のリノレン酸含有量は、約5%、4%、3%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.5%、又は0%未満であって、これらのすべての整数及び小数部分を含むものであり得る。1つの例示的実施形態において、前記植物は、その種子が少なくとも70重量%オレイン酸及び3重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有するカラシナである。さらなる実施形態において、前記植物は、その種子が少なくとも70重量%オレイン酸及び5重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有するカラシナである。
【0054】
1つの態様において、本発明は、高いオレイン酸重量百分率と、低いリノレン酸重量百分率と、表11に示すように約5.5%未満の全飽和脂肪酸又は>10%の全飽和脂肪酸をそれぞれ含み得る低い全飽和脂肪酸又は高い全飽和脂肪酸と、を含む内因性脂肪酸含有量を有する種子を生産することができるアブラナ属植物、例えばカラシナ植物、を提供する。
【0055】
カラシナの種子からの油の組成が、両脂肪酸成分(例えば、より高いエルカ酸含有量)の点でも、精油(例えば、アリルイソチオシアナート)の点でも、微量成分(例えば、トコフェロール、ミネラル、タンニン、フェノール、リン脂質、着色体(color bodies)、及びこれらに類するもの)の点でも、セイヨウアブラナのものと異なることは、公知である。カラシナからの種子における油(抽出油を含む)は、カラシナからの油のほうが概して高いC18:3レベルを有するにもかかわらず、セイヨウカラシナからの油と比較して酸化安定性が高いことが判明した(C. Wijesundera et al.,「Canola Quality Indian Mustard oil (Brassica juncea) is More Stable to Oxidation than Conventional Canola oil (Brassica napus)」 J. Am. Oil Chem. Soc. (2008) 85:693-699)。
【0056】
別の態様において、本発明は、アブラナ属植物のオレイン酸含有量を増加させ、リノレン酸含有量を減少させるための方法を提供する。そのような方法は:(a)55%より高いオレイン酸含有量及び14%未満のリノレン酸含有量を有するアブラナ属系統からの少なくとも幾つかの細胞において突然変異誘発を引き起こすこと;(b)前記突然変異誘発細胞の少なくとも1つから植物を再生させ、少なくとも70%オレイン酸(又は、上述のような、別の閾値濃度のオレイン酸)及び3%未満リノレン酸(又は、上述のような、別の閾値濃度のリノレン酸)を含む脂肪酸含有量を有する再生植物を選択すること;並びに(c)前記再生植物からの植物のさらなる発生を誘導すること、を含み得、前記植物のさらなる発生の個々の植物は、少なくとも70%(又は別の閾値濃度)のオレイン酸及び3%未満(又は別の閾値濃度)のリノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する。一部の実施形態において、前記アブラナ属は、カラシナであってもよい。用語「高いオレイン酸含有量」及び「低いリノレン酸含有量」は、上に記載した可能な値の全範囲を包含する。別の実施形態において、本発明の方法は、上に記載した可能な値の範囲などの、低下したリノール酸含有量のために、前記系統、前記再生植物及び前記植物のさらなる発生のうちの1つ以上を選択することをさらに含み得る。さらなる実施形態において、段階(c)は、段階(b)の再生植物からの種子を選択し、成長させることを含むことがある。さらなる実施形態において、本発明の方法は、所望のオレイン酸含有量、リノール酸含有量、又は両方が達成されるまで、明記した段階を反復することを含み得る。
【0057】
別の実施形態では、増加したオレイン酸含有量及び減少したリノール酸含有量について個々の種子をスクリーニングするための方法を提供し、これらの方法は、前記種子の発芽物の部分についての脂肪酸のオレイン酸含有量、又はリノール酸含有量、又はオレイン酸含有量とリノール酸含有量、のうちの1つ又はそれ以上を決定すること;前記含有量の1つ又はそれ以上と基準値とを比較すること;及び前記種子の可能性の高い相対オレイン酸、リノール酸、又はオレイン酸とリノール酸の含有量を推測することを含む。特定の実施形態において、分析に用いる前記植物の部分は、葉、子葉、幹、葉柄、茎、又は任意の他の組織、例えば種子の組成との確実な相関関係を明示する組成を有する組織、若しくは組織の断片の一部または全部であり得る。一連の実施形態において、前記発芽物の部分は、葉の部分である場合がある。一定の実施形態において、前記種子の脂肪酸組成を推測する段階は、前記の葉における所与の酸の有意に変化したレベルが、その種子におけるその酸のレベルの同様の相対変化を反映すると仮定することを含み得る。本発明の特定の実施形態では、葉組織を分析することによる、その種子が少なくとも70重量%オレイン酸及び3重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する個々の植物系統についてアブラナ植物をスクリーニングするための方法。加えて、前記葉組織を、気液クロマトグラフィーにより脂肪酸組成について分析することができ、この場合、前記脂肪酸の抽出は、バルク種子(bulk-seed)分析又は半粒種子分析などの方法によって行うことができる。
【0058】
別の実施形態において、本発明は、カラシナ系統からの前述の遺伝子アレルを含む、カラシナ植物である場合がある、アブラナ属植物を提供する。一定の実施形態において、前記植物は、突然変異体アレルによって表されるfad2−a及びfad3−a遺伝子座で同型接合性である場合がある。追加の実施形態において、前記カラシナ植物、植物細胞、又はその部分、は、本明細書において開示する、前述の配列からの核酸配列を有する遺伝子アレルを含有する。
【0059】
一部の実施形態において、本発明は、Bjfad2b遺伝子の存在又は不在を検査することにより(参考のために、米国特許公開第20030221217号、Yao et al.を参照のこと)、本発明のHOLL、カノーラ品質カラシナ(≧70%オレイン酸及び≦5%リノレン酸)と低オレイン酸/高リノレン酸カラシナ植物(約45%オレイン酸及び約14%リノレン酸)とを区別することを含み得る。この区別は、当該分野において公知であるように、BJfad2a遺伝子が、カノーラ品質カラシナ系統における唯一の機能性オレアート脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子であることを確認することを含み得る。
【0060】
1つの実施形態において、カラシナ系統は、国際公開番号国際公開第2006/0248611A1号に開示され、それに添付されている図1及び3、並びに配列番号7、9、12及び13に例示されているように、fad2及びfad3遺伝子を含有する。結果として生ずる突然変異体アレルは、デルタ−12脂肪酸デサチュラーゼタンパク質をコードし、これらは、それに添付されている図2並びに配列番号8、10及び11に例示されている。他の実施形態において、カラシナ系統は、fad2−a及びfad3−a遺伝子座での突然変異を含むことがあり、結果として生ずる突然変異体アレルは、予測されるBJFAD2−a及びBJFAD3−aタンパク質の配列に1つ又はそれ以上の突然変異をコードすることがある。本発明での使用に適するfad2a及びfad3a突然変異遺伝子及びそれらの結果として生ずるタンパク質の代表例としては、国際公開番号国際公開第2006/079567A3号(例えば、図1及び2、並びに配列番号3及び4);国際公開番号国際公開第2005/107590A2号(例えば、配列番号:1から12);米国特許第6,967,243号B2(例えば、図2及び3、並びに配列番号11、12、15、16、17及び18);及び欧州公報第1862551号A1(例えば、図1から10、及び配列番号22から33)に開示されているものも挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
プライマ対FAD2 2F:CAATCCCTCGCTCTTTCTCCTACCを配列番号1に例示し、及びFAD2 6R:CCTTTCTTGTCACCTTCCCTGTCCを配列番号2に例示する。fad31フラグメントを、プライマ対BNFD31 CF(GAGGCTTGGACGACCACTTG)(配列番号3)及びBNFD31 CR(GACTGGACCAACGAGGAATG)(配列番号4)によって増幅する。fad2及びfad32の突然変異体HOLLアレルを検出する目的で、PCR増幅を用いて突然変異体特異的プライマFAD2GM(CGCACCGTGATGGTTAACGGTTT)(配列番号5)及びFAD3cGM(ATAAATAATGTTGATCTACTTAT)(配列番号6)を設計した。
【0062】
本発明の配列に対する相同性は、適切な核酸プローブを用いるハイブリダイゼーションにより、適切なプライマを用いるPCR技術により、又は任意の他の一般に用いられている技術により、検出可能であり得る。特定の実施形態において、本発明のアレルの一部に相同な配列を含むことができる核酸プローブを提供する。さらなる実施形態は、本発明の配列、例えば、増加したオレイン酸含有量と関係づけられる配列、を増幅するための又は該配列の存在を検出するために適するプライマ対の使用を含むことがある。
【0063】
2つ又はそれ以上の核酸又はポリヌクレオチド間の配列関係を説明するために次の用語を用いる:(a)「基準配列」、(b)「比較ウインドウ」、(c)「配列同一性」、(d)「配列同一性百分率」及び(e)「実質的同一性」。
【0064】
本明細書において用いる場合、「基準配列」は、配列比較のための基準として用いる確定された配列である。基準配列は、例えば、完全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全cDNA若しくは遺伝子配列のような、特定の配列のサブセット又は全体であり得る。
【0065】
本明細書において用いる場合、「比較ウインドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続した指定のセグメントを指し、この場合、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列は、2配列の最適なアラインメントのために、(付加又は欠失を含まない)基準配列と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。一般に、比較ウインドウは、長さが少なくとも20連続ヌクレオチドであり、場合により、30、40、50、100、又はそれ以上長いことがある。ポリヌクレオチド配列にギャップが含まれているため基準配列への高い類似性を避けるために、ギャップペナルティを概して導入し、それをマッチ数から減算することは、当業者には理解される。
【0066】
比較のための配列のアラインメント法は、当該分野において周知である。従って、任意の2配列間の同一パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。そのような数学的アルゴリズムの非限定例は、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズム;Smith et al. (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所相同性アルゴリズム;Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443-453の相同性アラインメントアルゴリズム;Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-2448の類似性検索法;Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877におけるように改良された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264のアルゴリズムである。
【0067】
これらの数学的アルゴリズムのコンピュータ実装を、配列同一性を判定するための配列比較に利用することができる。そのような実装としては、PC/Geneプログラム(カリフォルニア州、Mountain ViewのIntelligeneticsから入手可能)におけるCLUSTAL;Wisconsin Genetics Software Package、バージョン8(米国、ウィスコンシン州、Madison、575 Science DriveのGenetics Computer Group(GCG)から入手可能)における、ALIGNプログラム(バージョン2.0)並びにGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAが挙げられるが、それらに限定されない。これらのプログラムを用いるアラインメントを、デフォルトパラメータを用いて実行することができる。CLUSTALプログラムは、Higgins et al. (1988) Gene 73:237-244 (1988);Higgins et al. (1989) CABIOS 5:151-153; Corpet et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:10881-90;Huang et al. (1992) CABIOS 8:155-65;及びPearson et al. (1994) Meth. Mol. Biol. 24:307-331によって十分に説明されている。ALIGNプログラムは、上のMyers and Miller (1998)のアルゴリズムに基づく。アミノ酸配列を比較するとき、ALIGNプログラムでPAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いることができる。Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403のBLASTプログラムは、上のKarlin and Altschul (1990)のアルゴリズムに基づく。BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12、でBLASTヌクレオチド検索を行って、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3、でBLASTタンパク質検索を行って、本発明のタンパク質又はポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを達成するには、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389に記載されているように(BLSST 2.0における)ギャップ付きBLASTを利用することができる。あるいは、(BLAST 2.0における)PSI−BLASTを用いて、分子間の遠縁関係を検出する反復検索を行うことができる。上のAltschul et al. (1997)を参照のこと。BLAST、ギャップ付きBLAST、PSI−BLASTを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、ヌクレオチド配列についてはBLASTN、タンパク質についてはBLASTX)のデフォルトパラメータを用いることができる。アラインメントを手動で精査により行うこともできる。アラインした配列間の相同性及び変異を、もしあれば、同定するために、(ミシガン州、Ann ArborのGene Codes Corporationからの)Sequencher(商標)ソフトウェアを用いてアラインメントを行うこともできる。
【0068】
本明細書において用いる場合、2つの核酸又はポリペプチド配列に関連しての「配列同一性」又は「同一性」は、明記した比較ウインドウにわたって最大一致に向けてアラインした際に同じである2つの配列内の残基を指す。配列同一性百分率をタンパク質に関連して用いるとき、同一でない残基位置は、アミノ酸残基が類似した化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基を置換し、従って、その分子の官能性を変えない保存アミノ酸置換に、多くの場合、差があると考えられる。配列が保存的置換の点で異なるとき、配列同一パーセントを上方に調整して、その置換の保存性について修正する。そのような保存的置換に差がある配列を、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言う。この調整を行うための手段は当業者に周知である。概して、これは、完全ミスマッチではなく部分ミスマッチとして保存的置換をスコアリングすることを含み、それによって配列同一性百分率を増加させる。従って、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換にゼロのスコアが与えられる場合、保存的置換にはゼロと1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(カリフォルニア州、Mountain ViewのIntelligenetics)で実行して、算出される。
【0069】
本明細書において用いる場合、「配列同一性百分率」は、比較ウインドウにわたって2つの最適にアラインされた配列を比較することにより決定された値を意味し、この場合、前記比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は、前記2配列の最適なアラインメントのために(付加又は欠失を含まない)基準配列と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含むことがある。この百分率は、両方の配列内の同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を判定してマッチ位置の数を得、そのマッチ位置数を比較ウインドウ内の全位置数で割り、その結果に100をかけて配列同一性百分率を得ることによって算出される。
【0070】
ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、説明したアラインメントプログラムの1つを用い、標準的なパラメータを用いて基準配列と比較して、ポリヌクレオチドが、少なくとも70%の配列相同性、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%、を有する配列を含むことを意味する。コドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの位置決め、及びこれらに類するものを考慮に入れることにより、これらの値を適切に調整して、2つのヌクレオチド配列によりコードされているタンパク質の対応する同一性を判定できることは、当業者には理解されるであろう。ペプチドに関連しての「実質的同一性」という用語は、ペプチドが、明記した比較ウインドウにわたって基準配列との少なくとも70%の配列同一性、基準配列との好ましくは80%、さらに好ましくは85%、最も好ましくは少なくとも90%又は95%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。好ましくは、Needleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アラインメントアルゴリズムを用いて、最適なアラインメントを行う。2つのペプチド配列が実質的に同一であることの指標は、一方のペプチドが、もう一方のペプチドに対して産生された抗体と免疫反応性であるということである。従って、あるペプチドは、例えば、それら2つのペプチドが保存的置換にしか差がない場合、もう一方のペプチドと実質的に同一である。「実質的に類似した」ペプチドは、同一でない残基位置が保存的アミノ酸変化に差がある場合があることを除き、上で述べたように配列を共有する。
【0071】
本明細書において用いる場合、用語「オメガ−9」は、カノーラからの油プロフィールに関して、少なくとも68.0重量%オレイン酸及び4.0重量%未満又は4.0重量%に等しいリノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する非硬化油を意味する。カノーラ植物に関して、用語「オメガ−9」は、少なくとも68.0重量%オレイン酸及び4.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する種子を生産するカノーラ植物を意味する。
【0072】
選択された実施形態において、本発明は、完全オープン・リーディング・フレーム(ORFs)並びに/又は前に開示した突然変異体fad2及びfad3遺伝子の5’上流領域を含む、単離されたDNA配列を提供する。従って、本発明は、前述の突然変異体アレルからの突然変異を含む、予測突然変異体タンパク質のペプチド配列も提供する。膜結合デサチュラーゼ、例えばFAD2、が保存ヒスチジンボックスを有することは、公知である。これらのヒスチジンボックス外のアミノ酸残基の変化もFAD2酵素活性に影響を及ぼすことがある(Tanhuanpaa et al., Molecular Breeding 4:543-550, 1998)。
【0073】
本発明の1つの態様では、本明細書に記載する突然変異体アレルを植物育種に使用し得る。具体的には、本発明のアレルを、高オレイン酸アブラナ属種、例えばカラシナ、セイヨウアブラナ、アブラナ、クロガラシ及びアシビニアガラシ、の育種に使用し得る。本発明は、突然変異体アレルと別の配列を区別するための分子マーカーを提供する。それにより、本発明は、本発明のアレルを有する植物を含む遺伝子交配種の分離及び選択分析のための方法を提供する。それにより、本発明は、本発明のアレルを有する植物を含む遺伝子交配種に由来する後代の分離及び選択分析のための方法を提供する。
【0074】
別の実施形態において、本発明は、望ましい脂肪酸組成又は望ましいゲノム特質を有するアブラナ属植物、例えばカラシナ植物、を同定するための方法を提供する。本発明の方法は、例えば、特定のFAD2及び/又はFAD3アレル、例えば本発明のアレル又は野生型J96D−4830/BJfad2aアレル、のゲノムにおける存在を判定することを含むみ得る。特定の実施形態において、前記方法は、同定されたアレルの1つに関連した核酸多型の存在の同定を含み得、又は本発明のアレルの1つに関連した抗原決定基の同定を含み得る。そのような判定は、例えば、ある範囲の技術、例えば関連DNAフラグメントのPCR増幅、DNAフィンガープリント解析(fingerprinting)、RNAフィンガープリント解析、ゲルブロッティング及びRFLP分析、ヌクレアーゼ保護アッセイ、関連核酸フラグメントのシークエンシング、抗体(モノクローナル若しくはポリクローナル)の産生、又は関連アレルによって生産されたタンパク質とそのタンパク質の他の変異体若しくは野生型形態とを区別することに適している別法を用いて果たすことができる。本発明は、本発明の突然変異体アレルの存在によって判定することにより、その種子が少なくとも70重量%のオレイン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有するカラシナ植物を同定するための方法も提供する。
【0075】
選択された実施形態の一部において、本発明の突然変異体アレルの特異的単一塩基対変化を用いて、例えば3’ミスマッチを用いて、アレル特異的PCRプライマを設計することができる。様々なプライマの組み合わせ、例えば、(その野生型アレルを増幅するために)3’末端に「G/C」又は(突然変異体アレルを増幅するために)3’末端に「A/T」を有するフォワードプライマ又はリバースプライマ、を作ることができる。他の選択された実施形態では、本発明の突然変異体アレルの特異的単一塩基対変化を用いて、例えば3’ミスマッチを用いて、アレル特異的PCRプライマを設計することができる。様々なプライマの組み合わせ、例えば、(その野生型アレルを増幅するために)3’末端に「C/G」又は(突然変異体アレルを増幅するために)3’末端に「T/A」を有するフォワードプライマ又はリバースプライマ、を作ることができる。アレル特異的PCRプロトコルの例示的概要については、Myakishev et al., 2001, Genome Research 11: 163-169、又はTanhuanpaa et al., 1999, Molecular Breeding 4: 543-550を参照のこと。
【0076】
別の実施形態では、一塩基多型(SNP)を検出するための様々な方法を本発明のアレルの同定に用いることができる。そのような方法としては、例えば、TaqManアッセイ又はモレキュラービーコン(Molecular Beacon)アッセイ(Tapp et al., BioTechniques 28:732-738)、インベーダ・アッセイ(Invader Assays)((Mein et al., Genome Research 10:330-343, 2000)、Illlumina(登録商標)ゴールデン・ゲート・アッセイ(Golden Gate Assays)(
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)、又は一本鎖高次構造多形(single strand conformational polymorphisms:SSCP)に基づくアッセイ(Orita et al., Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A.86:2766-2770, 1989)を挙げることができる。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、突然変異FAD2及びFAD3タンパク質をコードするfad2及びfad3コード配列を含むアブラナ属植物を提供する。そのような突然変異FAD2/FAD3タンパク質は、野生型FAD2タンパク質と比較してたった1つのアミノ酸変化を含有し得る。代表的実施形態において、様々なカラシナ系統は、前述のアレルによってコードされた、前述の突然変異FAD2タンパク質を含有する。増加したオレイン酸含有量及び低下したリノレン酸含有量を本発明の植物に付与するために有効であるようにそのようなアレルを選択することができる。特定の実施形態では、育種技術によって所望のアレルを植物に導入することができる。別の実施形態では、植物形質転換をはじめとする分子生物学技術によって、本発明のアレルを導入することができる。そのような実施形態において、本発明の植物は、少なくとも約70重量%オレイン酸及び約3重量%未満リノレン酸又は上述のような任意の他のオレイン酸及びリノレン酸含有量閾値を含む内因性脂肪酸含有量を有する種子を生産し得る。本発明の植物は、約70重量%から85重量%オレイン酸、約70重量%から約78重量%オレイン酸、及び約0.1重量%から約3重量%リノール酸を含有する場合もあり、この場合の油の組成は、親系統に遺伝的に由来する。本発明の植物は、7.1重量%未満から約6.2重量%未満の全脂肪酸含有量を有する場合もある。1つの実施形態において、前記植物は、少なくとも約70%のオレイン酸及び3%未満のリノール酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する種子を生産し、この場合の油の組成は、親系統に遺伝的に由来する。
【0078】
選択された実施形態において、本発明は、上述の実施形態の1つ又はそれ以上について示した脂肪酸組成を有する内因性油含有量を有する、及び内因性油含有量についての遺伝的決定基が本発明の突然変異体アレルに由来する、カラシナ種子であり得る、アブラナ属種子を提供する。そのような種子は、例えば、本発明のそれぞれの突然変異体アレルの自家受粉によって得ることができる。あるいは、そのような種子は、例えば、前記突然変異体アレル系統と第二の親との交配、その後の選択によって得ることができ、この場合の第二の親は、任意の他のアブラナ属系統、例えば、カノーラ品質カラシナ若しくは非カノーラ品質カラシナであるカラシナ系統である場合もあり、又は任意の他のアブラナ属種、例えばセイヨウアブラナ、アブラナ、クロガラシ及びアビシニアガラシ、である場合もある。これらの育種技術は、当業者に周知である。
【0079】
別の実施形態において、本発明は、上述の実施形態の1つ又はそれ以上において開示した組成を有する成熟種子を発生させるカラシナ植物などの、カラシナ属の遺伝的に安定した植物を提供する。そのような植物は、本発明の突然変異体アレルを有するカラシナ系統に由来する場合がある。そのような植物の油組成は、その親系統に遺伝的に由来する場合がある。
【0080】
別の実施形態において、本発明は、上述の実施形態の1つ又はそれ以上について明記した組成を含む内因性脂肪酸含有量を有する成熟種子を生産する、遺伝的に安定したアブラナ属植物、例えばカラシナ植物、を生産するプロセスを提供する。本発明のプロセスは、セイヨウアブラナからのオメガ−9遺伝子(例えば、fad2a及びfad3a)を他のアブラナ属植物、例えばカラシナ、と交配してF1後代を作る段階を含み得る。例えば自家受粉又は倍加半数体植物の発生を含み得る手段によって、前記F1後代を繁殖させることができる。突然変異体FAD2アレルと突然変異体FAD3アレルを組み合わせることにより二重突然変異体遺伝子アレル(fad2及びfad3)を有する植物は、任意の単一突然変異体植物より優れた油脂肪酸プロフィールを有することができる。結果として生ずる後代を、上述の実施形態の1つ又はそれ以上について開示した組成を有する種子を産生する遺伝的に安定した植物についての選択に付すことができる。そのような種子は、例えば、全抽出可能油中の約7.1%から約6.5%の全飽和物含有量を含む、安定化された脂肪酸プロフィールを有することができる。一定の変異体において、後代は、別の実施形態について上で示したような組成を有する種子又は油をそれら自体が生産できる。約70重量%より多くのオレイン酸含有量及び約3重量%未満のリノレン酸含有量を有する。
【0081】
選択された実施形態では、本発明の植物、例えば本発明の突然変異体アレルに由来する植物、におけるオレイン酸の増加を、リノール酸及びリノレン酸の対応する減少によって、他の脂肪酸は事実上不変のままでありながら、果たすことができる。そのような特質を例証するデータを本明細書の表1、6〜10、及び12〜14に示す。原カラシナバックグラウンド脂肪酸データを表2に、及びBC2F2半粒種子選択系統についての脂肪酸データを表7、8及び10に示す。表12は、非常に高いオレイン酸及び低いリノレン酸を伴う、加えて非常に低いリノール酸レベルを示す、脂肪酸プロフィールを有するBC3F3 1/2種子データを例証するものである。表14は、表12に示した系統(成長させて自家受粉させ、その後、15の種子バルクを試験した、BC3F3 1/2種子選択物)についてのBC3F4種子データ(全種子に関するFAME)を例証するものである。これらの結果は、表12(BC3F3)において見出されるプロフィールを裏付けるものであり、それらのプロフィールが安定していることを示す。
【0082】
1つの態様において、本発明は、安定した、継承性の高オレイン酸及び低リノレン酸表現型を有する植物を提供する。例えば、本発明の突然変異体アレルから得られる高オレイン酸及び低リノレン酸表現型は、M2、M3及びM4世代を通して遺伝継承性され得る。
【0083】
様々な態様において、本発明は、植物ゲノムにおける発現可能なコード配列のコピー数の調節を含む。「発現可能な」とは、コード配列の一次構造、すなわち配列、が、その配列が活性タンパク質をコードすることを示すことを意味する。それにもかかわらず、発現可能なコード配列は、特定の細胞では活性タンパク質として発現されないことがある。この「遺伝子サイレンシング」は、例えば、インビボでの様々な相同トランスジーン不活性化のメカニズムによって発生し得る。相同トランスジーン不活性化は、導入遺伝子がセンス配向で挿入された植物に関して、遺伝子とトランスジーンの両方がダウンレギュレートされるという予想外の結果と共に説明されている(Napoli et al., 1990 Plant Cell 2:279-289)。そのような共抑制についての正確な分子的基礎は不明であるが、相同遺伝子配列の不活性化については少なくとも2つの推定的メカニズムが存在する。メチル化による転写不活性化が、1つのメカニズムとして提案されており、この場合、重複DNA領域が内因性メカニズムに遺伝子サイレンシングについてのシグナルを送る。転写後メカニズムも提案されており、この場合、遺伝子とトランスジーンの両方からの総合発現レベルが、両方のメッセージの閾値誘導減損を誘発する高い転写産物レベルを生じさせると考えられる(van Bokland et al., 1994, Plant J. 6:861-877)。従って、本発明では、ゲノム内の発現可能なコード配列が、特定の細胞においてすべて発現されるとは限らないだろう。
【0084】
別の実施形態において、本発明は、突然変異誘発実験に用いた野生型カラシナに比べて脂肪酸デサチュラーゼの活性が改変される、オレイン酸含有量が改変される、又はリノレン酸含有量が改変されるカラシナ植物を提供する。脂肪酸デサチュラーゼ(「FAD」)とは、タンパク質が脂肪酸の生合成の際に二重結合を導入する活性を阻害することを意味する。例えば、FAD2/FAD3酵素は、オレイン酸からのリノール酸の生合成の際に第二の二重結合を導入する活性を特徴とし得る。改変されるデサチュラーゼ活性としては、基準植物、細胞又はサンプルと比較してデサチュラーゼ活性の増加、低下又は除去を挙げることができる。
【0085】
他の態様において、デサチュラーゼ活性の低下は、本発明の核酸配列などの、デサチュラーゼをコードする核酸配列の発現の除去を含み得る。発現の除去とは、核酸配列によってコードされた機能性アミノ酸配列が検出可能なレベルで生産されないことを本明細書では意味する。デサチュラーゼ活性の低下は、デサチュラーゼをコードする核酸配列、例えば、FAD2酵素又はFAD3酵素をコードする本発明の配列の転写の除去を含み得る。転写の除去とは、前記核酸配列によってコードされたmRNA配列が検出可能なレベルで転写されないことを本明細書では意味する。デサチュラーゼ活性の低下は、デサチュラーゼをコードする核酸配列からのトランケート型アミノ酸配列の生産を含むこともある。トランケート型アミノ酸配列の生産とは、前記核酸配列によってコードされたアミノ酸配列が、野生型核酸配列によってコードされた機能性アミノ酸配列の1つ又はそれ以上のアミノ酸を欠失していることを本明細書では意味する。加えて、デサチュラーゼ活性の低下は、変異体デサチュラーゼアミノ酸配列の生産を含むことがある。変異体アミノ酸配列の生産とは、前記アミノ酸配列が、野生型核酸配列によってコードされたアミノ酸配列とは異なる1つ又はそれ以上のアミノ酸を有することを意味する。本明細書においてより詳細に論じるように、本発明は、本発明の突然変異系統が、野生型系統J96D−4830と比較して変異体アミノ酸を有するFAD2及びFAD3酵素を生産することを開示する。様々なタイプの突然変異、例えばフレームシフト突然変異、置換及び欠失を、デサチュラーゼ活性を低下させる目的で核酸配列に導入することができる。
【0086】
一部の実施形態において、本発明は、本発明の別の実施形態に従って修飾し得る、新たなFAD2/FAD3ポリペプチド配列を提供する。ポリペプチドの構造に、そのペプチドの生物学的機能を実質的に改変せずに、何らかの修飾及び変更を加えて、生物学的の等価のポリペプチドを得ることができることは、当該分野において周知である。本明細書において用いる場合、用語「保存アミノ酸置換」は、ペプチド内の所与の位置におけるあるアミノ酸での別のアミノ酸の置換であって、測定可能な機能喪失又は獲得を一切伴わずに行って、生物学的に等価のポリペプチドを得ることができる置換を指す。そのような変更を加える場合、側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらのサイズ、電荷、疎水性、親水性及びこれらに類するものに基づいて同様のアミノ酸残基の置換を行うことができ、並びに常例的な試験によってそのような置換をそのペプチドの機能性に対するそれらの影響についてアッセイすることができる。反対に、本明細書において用いる場合の「非保存的アミノ酸置換」は、ペプチド内の所与の位置におけるあるアミノ酸での別のアミノ酸の置換であって、測定可能な機能喪失又は獲得を生じさせて生物学的に等価でないポリペプチドを得る置換を指す。
【0087】
アミノ酸残基には(米国特許第4,554,101号において詳述されているように)以下の親水性値:Arg(+3.0);Lys(+3.0);Asp(+3.0);Glu(+3.0);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Pro(−0.5);Thr(−0.4);Ala(−0.5);His(−0.5);Cys(−1.0);Met(−1.3);Val(−1.5);Leu(−1.8);Ile(−1.8);Tyr(−2.3);Phe(−2.5);及びTrp(−3.4)が割り当てられており、一部の実施形態では、あるアミノ酸残基で、類似した親水性値(例えば、プラス又はマイナ2.0の値以内)を有する別のアミノ酸残基を置換する場合、保存アミノ酸置換を行うことができる。残基の親水性値が有意に異なる、例えば2.0より大きい差がある場合には非保存アミノ酸置換を行うことができる。
【0088】
別の実施形態において、あるアミノ酸残基で、類似したハイドロパシー指数(例えば、プラス又はマイナ2.0の値以内)を有する別のアミノ酸残基を置換する場合には保存アミノ酸置換を行うことができる。そのような実施形態では、その疎水性及び電荷特性に基づいて、次のように、そのようなアミノ酸残基にハイドロパシー指数を割り当てることができる:Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(−0.4);Thr(−0.7);Ser(−0.8);Trp(−0.9);Tyr(−1.3);Pro(−1.6);His(−3.2);Glu(−3.5);Gin(−3.5);Asp(−3.5);Asn(−3.5);Lys(−3.9);及びArg(−4.5)。残基のハイドロパシー指数が有意に異なる、例えば2.0より大きい差がある場合には非保存アミノ酸置換を行うことができる。例えば、これに基づき、BJfad2−aにおけるアミノ酸105に対応する位置での野生型His(−3.2)の次のアミノ酸での置換は、非保存置換であろう:Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(−0.4);Thr(−0.7);Ser(−0.8);及びTrp(−0.9)。
【0089】
別の実施形態において、アミノ酸が、次のように非極性、酸性、塩基性及び中性クラスに分けられ:非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、Met;酸性:Asp、Glu;塩基性:Lys、Arg、His;中性:Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Tyr、あるアミノ酸残基で同じクラス内の別のアミノ酸残基を置換する場合には保存アミノ酸置換を行ってもよい。前記残基が同じクラスに入らない場合には非保存アミノ酸置換、例えば塩基性アミノ酸での中性又は非極性アミノ酸の置換、を行ってもよい。
【0090】
本発明は、本明細書に記載するカラシナ植物の種子から得られるミールをさらに含み、そのようなミールは、粉砕種子の形態である場合もあり、プレスケーキ(溶媒抽出若しくは他の化学的抽出に付されていないが、油を排出するようにプレスされた種子)の形態である場合もあり、ホワイトフレーク(粉砕され、より多くの油を除去するためにヘキサンなどの溶媒で抽出された種子)の形態である場合もあり、又は従来の粉砕及び溶媒抽出プロセスからのミールの形態である場合もある。1つの特定の実施形態では、カラシナ種子を、例えば、国際公開第2008024840A2号、国際公開第03/053157号、米国特許第5,844,086号;国際公開第97/27761号;米国特許出願第2005/0031767号、又は J. Caviedes, "Aqueous Processing Of Rapeseed (Canola)," Thesis For Degree Of Master Of Applied Science, University Of Toronto 1996, pages 1-147に記載されているタイプの水溶液処理に付す。
【0091】
本発明の油は、非料理又は食事用(dietary)のプロセス及び組成物において使用することもできる。これらの使用の一部は、工業的、化粧品又は医薬的なものであり得る。本発明の油は、本発明の油が適するいずれの用途においても使用することができる。一般に、本発明の油は、例えば、様々な用途、例えば潤滑剤、潤滑添加剤、金属工作液、作動液及び不燃性油圧油、において鉱油、エステル、脂肪酸又は動物脂肪の代わりに使用することができる。本発明の油は、変性油の製造プロセスにおいて材料としてとして使用することもできる。本発明の油変性技術の例としては、分留、水素添加、油のオレイン酸又はリノレン酸含有量の変更、並びに当業者に公知の他の変性技術が挙げられる。一部の実施形態では、本発明の油を、エステル交換油の生産、トリステアリンの生産、又は電気機器に含めることができる誘電流体組成物に用いる。
【0092】
本発明の油についての工業使用例としては、潤滑組成物(米国特許第6,689,722号;国際公開第2004/0009789A1号も参照のこと);燃料、例えば、バイオディーゼル(米国特許第6,887,283号;国際公開第2009/038108A1号も参照のこと);複写機器用の記録材料(米国特許第6,310,002号);粗製油類似組成物(米国特許第7,528,097号);コンクリート用のシーリング材組成物(米国特許第5,647,899号);硬化性コーティング剤(米国特許第7,384,989号);工業用フライ油;洗浄配合物(国際公開第2007/104102A1号;国際公開第2009/007166A1号も参照のこと);及びはんだ付用フラックスにおける溶剤(国際公開第2009/069600A1号)が挙げられる。本発明の油は、工業プロセス、例えばバイオプラスチックの生産(米国特許第7,538,236号);及び逆乳化重合によるポリアクリルアミドの生産(米国特許第6,686,417号)、においても使用することができる。
【0093】
本発明の油についての化粧品使用の例としては、化粧品組成物中の皮膚軟化薬として;ワセリン代用品として(米国特許第5,976,560号);石鹸の構成要素として、又は石鹸生産プロセスにおける材料として(国際公開第97/26318号;米国特許第5,750,481号;国際公開第2009/078857A1号);口腔処置溶液の構成要素として(国際公開第00/62748A1号);老化処置用組成物の構成要素として(国際公開第91/11169号);及び皮膚又は毛髪用エーロゾルフォーム製剤の構成要素として(米国特許第6,045,779号)の使用が挙げられる。
【0094】
加えて、本発明の油は、医療用途に用いることができる。例えば、本発明の油を感染に対する防護バリアに使用することができ(Barclay and Vega, 「Sunflower oil may help reduce nosocomial infections in preterm infants.」Medscape Medical News <http://cme.medscape.com/viewarticle/501077>, accessed September 8th, 2009);及びオメガ−9脂肪酸を大量に含んだ油を用いて、移植片生着を増進することができる(米国特許第6,210,700号)。
【0095】
上述の事項は、本発明の油が適している非料理的使用の非限定的な例であることは、理解されるはずである。前に述べたように、本発明の油及び変性油は、例えば、当業者に公知のすべての用途において鉱油、エステル、脂肪酸又は動物性脂肪の代わりに使用することができる。
【0096】
本発明に様々な修飾及び選択肢を加えることができることは理解される。従って、一定の具体的な実施形態を一般的な方法で説明し、以下の実施例によってさらに説明する。本発明は、すべてのカノーラ品質カラシナ種ばかりでなく、すべての非カノーラ品質カラシナ種にも、間違いなく適用される。カラシナ、クロガラシ及びアビシニアガラシを含むすべての他のアブラナ属種に本発明を適用して実質的に同様の結果を生じさせることができる。以下の実施例が、開示する特定の形態に本発明を限定するためのものでなく、むしろ、本発明が、本発明の範囲内に入るすべての修飾、等価物及び選択肢を包含するものであることも、理解されるはずである。
【実施例1】
【0097】
戻し交配
図1を参照して、カラシナ遺伝的背景を完全に回復させるための、高オレイン酸−低リノレン酸選択物とカラシナ親(Zem1、Zem2及びZEスコロスペルカ)間の1回又はそれ以上の戻し交配(BC3及びBC4)。ゼロエルカ酸カラシナ系統のみを、戻し交配プログラムで使用した。これは、FAE遺伝子(単数又は複数)と非競合状態でfad2及びfad3突然変異体アレルの完全発現が可能であるだろうからである。
【0098】
それぞれの先行戻し交配(例えば、BC3、BC4)及びその後の自家受粉(例えば、BC3F2、BC4F2)の後、後代種子を、先ず、fad2a及びfad3a遺伝子の存在について組織スクリーニングに付し(本明細書においてより詳細に説明するようなマーカーを使用する)、その後、成長開花させて、後の戻し交配において使用する。選択された系統から収穫した種子を、半粒種子を使用する油プロフィール分析、非破壊的一粒完全種子NIR分析、又は一粒種子NIR(FTNIR)に付す。その後、増加したオレイン酸レベル及び低下したリノレン酸レベルを含有するサンプルを土壌にまき、成長成熟させる。これらの植物から自家受粉種子が生産し、高オレイン酸及び低リノレン酸に相当する油プロフィールについてバルク種子を分析する。67〜80%の範囲内のオレイン酸及び5%未満のリノレン酸を有する選択物を特定する。これらの選択物をそれら自体の間で異種交配させて、所望の脂肪酸プロフィールを作出した。
【0099】
葉組織からゲノムDNAを単離し、種子油に高オレイン酸及び低リノレン酸表現型を付与することが公知のfad2a及びfad3a遺伝子に特異的な突然変異の存在についてスクリーニングした。植物は、その表現型(葉形及びきめ)がカラシナ親のものに近似していた。植物は、親カラシナに類似した現地条件下で耐裂莢性及び耐乾燥性も示した。
【0100】
カラシナ後代へのカラシナ×セイヨウアブラナ戻し交配では、もはや、CCゲノム及び望ましくないAAゲノム領域に特異的なSSRマーカーは提示されない。
【0101】
カラシナ及びオメガ−9セイヨウアブラナ系統から採集した葉組織を遺伝子フィンガープリント解析のために凍結乾燥した。多数の植物を使用してF1個体を産生する場合、後の産生の際に観察されることがあるアレルを説明するためにすべての祖先からの組織も採集した。親組織を採集しない場合には、それぞれの親種子ロット(源)からの6つの植物のランダムなサンプルを採集する別の選択肢を実行した。1系統につき6以下の個体からDNAを単離し、それぞれの等分割量をプールして遺伝子フィンガープリント解析のための親対照を作った。この交配プログラムにおいて使用したすべてのオメガ−9セイヨウアブラナの遺伝子フィンガープリントは以前に確証されており、並びにこれらの系統内のすべてのAゲノム及びCゲノム連鎖群にわたって収集したデータの代表である。
【0102】
結果の解釈及び妥当性評価をさらに向上させるために、A、B及びCゲノムにそれぞれ対応するアレルを推定的に同定する目的でアブラナ、クロガラシ及びブラッシカ・オレラセア・アクセッション(単数又は複数)についても葉組織を収集し、DNAを単離し、DNAサンプルプールも作製した。
【0103】
SSRマーカーのパネルを用いてカラシナ、セイヨウアブラナ、アブラナ、クロガラシ及びB.オレラセアのプールをスクリーニングする。観察されたDNAフラグメントの情報を収集することに加えて、ヌルアレルに関する情報を書き留める。収集した遺伝子型判定情報をGeneflow(商標)遺伝子型判定データベースに保存する。Geneflow(商標)遺伝子型判定データベース多型報告機能を用いて、それらの選択されたカラシナ及びセイヨウアブラナ系統についての情報価値のあるSSRマーカーの同定を果たす。
【0104】
戻し交配世代において、親スクリーニングにより同定された多型SSRマーカーでそれらの戻し交配集団をスクリーニングすることによって、セイヨウアブラナに特異的なゲノム領域を低減するマーカー支援選抜(maker-assisted selection)を行う。多型共優性マーカーに加えて、カラシナ系統についてのヌルをスコアリングするマーカーも、所望のA及びBゲノム領域についてのマーカー支援選抜に用いる。進めるための植物の選択は、表現型観察と遺伝子型観察の両方を用いて育種及び研究室焦点により行う。マーカープロフィールに基づき、望ましくないAAゲノムセグメントばかりでなく、オメガ−9セイヨウアブラナCCゲノムを有さない後代植物を、次の段階に進めるために選択する。
【実施例2】
【0105】
カラシナ特異的マーカーの開発
FAD2bに関係があるBBゲノムDNA並びに(BBゲノムを代表する)クロガラシ及びカラシナからの他の利用可能な配列の存在を検出することができるDNAマーカーを開発する。マーカー開発のために、二重半数体地図作成用集団を開発する。加えて、公知B−ゲノム配列からDNA(SSR及びSNP)マーカーを開発する。これらのマーカーによって、前記変換系統におけるカラシナのバックグラウンドの回復度を確認することができる。
【0106】
ジ−及びトリ−ヌクレオチド反復モチーフを主として含有する合計1931のセイヨウアブラナSSRマーカーを親スクリーニングに利用することができる。これらのマーカーを、カラシナ(Zem1、Zem2及びZEスコロスペルカ系統)、オメガ−9、セイヨウアブラナ、アブラナ、クロガラシ及びB.オレラセアに属するアブラナ属系統のパネルで、現在、スクリーニングしている。このスクリーニングにより、2つのタイプの情報が得られる。第一に、これらのSSRマーカーをセイヨウアブラナゲノムから発現させたので、そのスクリーニングにより、他のゲノムにおけるそれらの利用能に関する情報が得られ、及びAA、BB又はCCゲノムに特異的に対応するアレルを同定することができる。第二に、そのスクリーニングにより、カラシナ遺伝地図作成及び形質遺伝子移入に使用するためのマーカーのコアセットを特定することができる。
【0107】
上で述べたマーカーに加えて、カラシナに用いることができるSSRマーカーについて公共データベース(public database)を検索した。101がセイヨウアブラナ(AA CCゲノム)からのものであり、113がクロガラシ(BBゲノム)からのものであり、95がB.オレラセア(CCゲノム)からのものであり、及び129がアブラナ(AAゲノム)からのものである、合計438の公共SSRを特定した。これらのうち、クロガラシからの113のSSR、アブラナからの129のSSR、及びセイヨウアブラナからのSSRの一部を、カラシナにおいて潜在的に有用であるものとして特定した。
【0108】
本発明者らの現在のコレクションからの選択マーカー、並びに公知B−ゲノム配列から開発したSSR及びSNPマーカーを使用して、戻し交配におけるカラシナバックグラウンドの存在を確認する。親スクリーニングから特定し情報価値のあるマーカー使用して、カラシナ連鎖地図、並びに共有マーカー遺伝子を特定するためにカラシナとセイヨウアブラナとの比較地図も構築する。カラシナにおいて遺伝子移入されたfad2a及びfad3a遺伝子座の遺伝地図を作製して、それらがカラシナのAAゲノムに首尾よく遺伝子移入された証拠を得る。
【0109】
これらのカラシナ特異的マーカーの使用により、固有の突然変異体fad2a、fad2b、fad3a、及びfad3b配列を同定して、改良された脂肪酸プロフィールを有する選択系統におけるfad2及びfad3変異の位置を突きとめる。
【0110】
表3は、七(7)つのカラシナ同系繁殖系統と三(3)つのセイヨウアブラナ同系繁殖系統との種間ハイブリダイゼーションを示すものである。表4は、カラシナ/オメガ−9セイヨウアブラナ(F1種間ハイブリッド)FADマーカースクリーニング結果を示すものである。図5は、カラシナ//カラシナ/オメガ−9セイヨウアブラナ(BC1)GOIスクリーニング結果を示すものである。表6は、カラシナ*2//カラシナ/オメガ−9セイヨウアブラナ(BC2F1)GOIスクリーニング結果を示すものである。
【実施例3】
【0111】
Bゲノムの回復及び判定
前述のような、高オレイン酸及び低リノレン酸の種子油プロフィールを示す自家受粉及び倍加半数体植物を、BBゲノムについて選択されたマーカーを使用してスクリーニングした。前記変換系統に存在するBBゲノムを確認する。これらの突然変異体カラシナ系統は、セイヨウアブラナについて選択された陽性Cゲノムマーカー数の減少(又は完全な不在)も示す。これらのプロフィールを、前記系統の農業実用面(agronomics)を改良する、例えば、イールド・ドラッグを低減する、裂莢を低減する、様々な成長ゾーンについての成熟度を改変する、ストレス抵抗性を増大させる、耐病性を増大させる、及びこれらに類する、当該分野において公知の追加の戻し交配及び自家受粉技術によってさらに改良する。
【0112】
所望の種子油プロフィールを示すセイヨウアブラナとカラシナの種間交配からの自家受粉及びDH後代におけるBゲノムの判定に、3つの異なる方法を用いる。
【0113】
A)分子マーカー
セイヨウアブラナ系統とカラシナ系統の間の遺伝的多型を判定することができる分子マーカーを特定する。合計1931のセイヨウアブラナSSRマーカーをスクリーニングして、カラシナゲノムとセイヨウアブラナとを区別することができるSSRのコアセットを特定した。加えて、実施例2において説明したように、公共データベースを検索して、親スクリーニングのための追加のマーカーを特定した。従って、2,300より多くのSSRマーカーを、セイヨウアブラナに対してカラシナを区別するそれらの能力について調査した。このスクリーニングからの1セットのマーカーを、後代におけるカラシナゲノムの濃縮又はセイヨウアブラナゲノムの消失若しくは不在の判定に用いる。もう1つのマーカーシステムは、SNPマーカーセットの使用を含む。3,000を超えるSNPがコンソーシアームによって開発された。2つのハイスループット・イルミナ(Illumina)アッセイを生成する(すなわち、1つの1536プレックスSNP OPA(Ligo Pool All))。これらのOPAの両方(合計3,072のSNPアッセイ)を、全部で3つの四倍体セイヨウアブラナ、カラシナ及びアビシニアガラシ系統、並びにアブラナ属の全部で3つの二倍体先祖「Uの三角形」(1935)−クロガラシ、B.オレラセア及びアブラナ −からなる親パネルを用いてスクリーニングする。後代においてカラシナフラグメントを明白に追跡できる1セットのSNPを特定する。具体的には、後代においてBゲノムの存在を確認することができるSNPをそのセットに含める。このように、後代植物のスクリーニングに多数の情報価値のあるSSR及びSNPを使用することにより、高いBゲノム百分率を有する植物を特定する。自家受粉及びDH後代を特性づけした後、分離後代を用いて比較地図を構築することにより、セイヨウアブラナ及びカラシナ系統群に対するマーカー遺伝子座の遺伝地図作製位置を妥当性評価する。比較地図により、種間マッチングに従って可能性のあるマーカー遺伝子座の再配列、付加又は欠失を特定することができる。
【0114】
B)蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション
蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)技術を用いて、後代におけるBゲノムの存在及び濃縮を判定する。マーカー分析のためにも、細胞学的研究、例えば染色体数、異数体の出現の特定、のためにも、関心のあるゲノムセグメントの判定のためにも、後代植物を用いる。FISHは、分子マーカーによって得た情報をさらに強化することができる強力なツールである。このために、Bゲノムの存在を明白に判定することができる候補SSR及びSNPマーカー配列を使用して、大きなBACクローンを抜き出し、その後、それらを、高いBゲノム百分率を有するものとして特定された候補後代植物の分裂中期伸展標本(spreads)に対してプローブとして用いる。BAC配列は、コンピュータを利用する方法を用いて特定されもするが、BAC配列がそのデータベースにおいて入手できることを条件とする。そうである場合には、インシリコ(in silico)で特定されたBACをそれぞれの源から得、FISH実験において使用することができる。
【0115】
C)ゲノムインサイチューハイブリダイゼーション
競合非標識プローブとして全カラシナDNAを使用して全核BBゲノムDNAで候補後代植物の染色体をプローブ化することができるゲノムインサイチューハイブリダイゼーション(GISH)技術を用いる。カラシナにおけるBBゲノム染色体への強いハイブリダイゼーションが、その後代におけるBBゲノムの存在を示す。
【0116】
所望の種子油プロフィールとカラシナに起因するアレルとを有するサンプルを、戻し交配及びさらなる自家受粉のために使用する。分離集団において、MASを使用して、所望の表現型を維持しながら、可能な多型遺伝子座の最大数で優良ゲノムを回収する。セイヨウアブラナに関連したA及びCゲノムからのアレルを示すサンプルに対する選択に重点を置いて、SSR又はSNPマーカーで戻し交配後代の遺伝子型を判定する。このプロセスは、所望の表現型を得る為に多数の遺伝子座が必要とされるときに有効である。
【実施例4】
【0117】
油プロフィールに対するさらなる修飾及び油プロフィールの試験
公開番号US2008/0168587に開示されているB−ゲノムfad2、fad3突然変異又はクロガラシにおいて若しくはカラシナ種子において新たに引き起こされた突然変異を組み合わせることにより、脂肪種子に対するさらなる改良を果たす。一例では、様々な系統間で交配を行い、選択物を特定し、これらの選択物を組み合わせることにより、匹敵する農業実用収量を有するさらなる安定した高オレイン酸及び低リノレン酸選択物が生産される。
【0118】
突然変異体fad2b及び/又はfad3b遺伝子の他の起源を得る及び/又は特定するための他の潜在的方法としては、例えば、公知生殖質からの方法、高速中性子/EMS突然変異体からの方法、RNAiの適用からの方法、遺伝子発現の調節のジンクフィンガー媒介制御からの方法が挙げられる。上に記載した方法のいずれかによって、fad2b及びfad3b酵素の発現レベルを低下又は除去することができる。
【表1】

【0119】
遺伝子を得たら/同定したら、(a)DASのカラシナ系統と、突然変異体fad2b遺伝子及び/又はfad3b遺伝子を有する第二のクロガラシ、アビシニアガラシ又はカラシナ植物と交配すること;(b)分子マーカーを使用して、前記fad2b遺伝子及び/又はfad3b遺伝子の遺伝子移入を追跡すること;(c)段階(a)の交配から種子を得ること;(d)種子のFAPを分析し、その後、種子選択物から稔性植物を成長させること;(e)段階(d)の植物の自家受粉から後代種子を得ること;(f)様々な環境にわたって後代の温室及び野外試験を行うこと;及び(g)<3%のリノレン酸値及び約68%から約80%の間のオレイン酸値を有する種子を前記後代の中で特定することによって、突然変異FAD遺伝子をカラシナ植物に移入する。
【0120】
天然配列内のコード領域又は調節ドメインにおける欠失、挿入突然変異誘発により、FAD2B及びFAD3Bの酵素のダウンレギュレーションを果たす。
【実施例5】
【0121】
ハイブリッドカラシナ種子油プロフィール
HOLL油プロフィールは、細胞質雄性不稔系(例えば、オグラ型セイヨウアブラナCMS126−1を参照のこと)とそれらの対応する稔性回復バックグラウンドとを含むHOLL親系統を作出することによって生産されたハイブリッドにおいて表される。
【実施例6】
【0122】
農業実用、除草剤及び殺虫剤形質のHOLLカラシナへの導入
除草剤耐性形質(イミダゾリノン耐性):セイヨウアブラナにおけるイミダゾリノン耐性形質(BASF)は、LG01(AAゲノム、グリホサート耐性挿入部位からおおよそ20cM)に位置するPM2突然変異部位を含み、PM1突然変異部位は、LG11(CCゲノム)に位置する。ahas3がAAゲノムに対応し、一方、AHAS1がCCゲノムに対応すると考えられる。Swansonら(Theor. Appl Genet. 78:525-530, 1989)は、ahas3遺伝子のみがイミダゾリノン除草剤に対する耐性をもたらすことを示している。AAゲノムに位置する2つの他のAHASゲノム:ahas2及びahas4、が存在する。2つのahas遺伝子がイミダゾリノン除草剤に対する耐性に必要とされる場合、BBゲノム上に位置するAHAS遺伝子を突然変異誘発のために特定することができる。カラシナにおけるPM2だけでは、十分な耐性が得られないことが判明した。従って、カラシナにおいて2つ又はそれ以上の遺伝子を発生させて、十分なイミダゾリノン耐性をもたらす。
【0123】
オメガ−9 IMIセイヨウアブラナをカラシナと交配する。稔性種子をまき、種間交配の後代にイミダゾリノン除草剤を噴霧して、耐性についてアッセイする。インベーダ・アッセイを用いてPM2の存在によりPM2突然変異の存在が確認される。BBゲノム染色体とCCゲノム染色体が対合し、結果としてセイヨウアブラナCCゲノムからカラシナBゲノムへのPM1の遺伝的伝達が生じたかどうかを判定するためにPM1突然変異についてアッセイする。
【0124】
AHAS3遺伝子の突然変異だけが、イミダゾリノン除草剤に対する耐性をもたらす場合、PM2を含有するオメガ−9セイヨウアブラナ系統をカラシナ系統との交配種の作成に使用して、セイヨウアブラナ生殖質を完成HOLLカラシナ系統に再導入する必要をなくす。イミダゾリノン耐性カラシナのマーカー支援選抜は、BBゲノムの回復及び決定と同時に起こる。HOLLカラシナイミダゾリノン耐性系統が発生されれば、それを、他のカラシナ栽培品種へのその後の形質遺伝子移入に用いる。
【0125】
HOLLカラシナへの新たな除草剤形質の遺伝子移入:ジンクフィンガー技術の適用によるTIPS突然変異のカラシナへの導入によって、グリホサート耐性カラシナの開発を成し遂げる。5つのパラログが同定されており、これらのうちの1つ又は2つがEPSPS遺伝子の最高発現変種であった。結果としてグリホサート耐性表現型を生じさせることができる修飾epsps遺伝子がAゲノム上に存在することが判明し、それらをオメガ−9カラシナと交配して、グリホサート耐性オメガ−9カラシナを生産する。
【0126】
分離後代(T1S1、F2、又はBC1)をまく。葉のサンプルをDNA単離のために採集する。サンプルに除草剤選択マーカーを噴霧し、その後、遺伝子特異的マーカーで接合状態を検査する。耐性及び感受性クラスを含むように耐性及び感受性植物のランダムなサンプルからDNAをプールすることにより、バルク分離個体分析(bulk segregant analysis:BSA)プールを作る。R及びSプール、並びに優良栽培品種及び形質転換ドナー栽培品種を、SSR又はSNPマーカーを使用して遺伝子型判定して、予測挿入染色体を特定する。歪みのあるバルクを用いて染色体に関する選択的遺伝子型判定を行って、遺伝子挿入部位を特定する。マーカー支援遺伝子移入を用いて、関心のある遺伝子を所望のHOLLカラシナに遺伝子移入する。
【0127】
本発明の追加の実施形態
特定のタンパク質産物をコードする遺伝子の単離及び特性づけを可能にした分子生物学技術の登場により、植物生物学の分野の科学者は、外来若しくは追加の遺伝子を含有し、発現するように又は(おそらく異なるプロモータによって誘導された)天然遺伝子の修飾変種を発現するように植物ゲノムを遺伝子操作して、植物の形質を特異的に改変することに強い関心を抱いた。そのような外来のさらなる及び/又は修飾された遺伝子を本明細書では総称して「トランスジーン(transgene)」と呼ぶ。ここ20年にわたり、トランスジェニック植物を生産するための幾つかの方法が様々な作物について開発されており、それらの方法としては、アグロバクテリウム媒介形質転換及びパーティクルボンバードメント(particle bombardment)が挙げられる。具体的なアブラナ属形質転換プロトコルについては、参考のために特許(1993年2月23日、Moloneyらに発行された米国特許第5,188,958号;2000年4月18日、Chenらに発行された米国特許第6,051,756号;2001年10月2日、Tulsieramらに発行された米国特許第6,297,056号)を参照のこと。本発明は、特定の実施形態において、特許請求の範囲に記載する品種又は系統の形質転換変種にも関する。
【0128】
植物形質転換は、植物細胞において機能するだろう発現ベクターの構築を含む。そのようなベクターは、調節要素(例えば、プロモータ)の制御下の、又は該要素に作動するように連結された、遺伝子を含むDNAを含む。発現ベクターは、1つ又はそれ以上のそのような作動可能に連結された遺伝子/調節要素の組み合わせを含有する。前記ベクター(単数又は複数)はプラスミドの形態であり得、及びアブラナ属植物(単数又は複数)の遺伝物質にトランスジーンを組み込むための下で説明するような形質転換法を用いて形質転換アブラナ属植物を生じさせるために該ベクターを単独で使用することができ、又は他のプラスミドと併用することができる。
【0129】
アブラナ属形質転換のための発現ベクター:マーカー遺伝子−発現ベクターは、遺伝マーカーであって、該マーカーを含有する形質転換細胞をネガティブ選択、すなわちその選択マーカー遺伝子を含有しない細胞の成長の阻害、又はポジティブ選択、すなわちその遺伝子マーカーによってコードされた産物についてのスクリーニング、のいずれかによって回収することができる調節要素(例えば、プロモータ)に作動可能に連結されたものである少なくとも1つの遺伝子マーカーを含む。植物形質転換のための一般に使用されている多くの選択マーカーが形質転換技術分野において周知であり、それらとしては、例えば、抗生物質若しくは除草剤であり得る選択的化学薬品を代謝により解毒する酵素をコードする遺伝子、又はその阻害剤に対して反応しない改変された標的をコードする遺伝子が挙げられる。少数のポジティブ選択法も当該分野において公知である。
【0130】
植物形質転換のための1つの一般的に使用されている選択マーカー遺伝子は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子であり、これは、植物調節シグナルの制御下でカナマイシンに対する耐性を付与する(Fraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:4803, 1983)。もう1つの一般的に使用されている選択マーカー遺伝子は、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を付与するヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子である(Vanden Elzen et al., Plant Mol. Biol, 5:299, 1985)。
【0131】
抗生物質に対する耐性を付与する細菌起源のさらなる選択マーカー遺伝子としては、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ、ストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ、及びアミノグリコシド−3’−アデニルトランスフェラーゼ、ブレオマイシン耐性決定因子が挙げられる(Hayford et al., Plant Physiol. 86:1216, 1988; Jones et al., Mol. Gen. Genet., 210:86, 1987;Svab et al., Plant Mol. Biol. 14:197, 1990; Hille et al., Plant Mol. Biol. 7:171, 1986)。他の選択マーカー遺伝子は、除草剤、例えばグリホサート、グリホシナート、2,4−D又はブロモキシニル、に対する耐性を付与する(Comai et al., Nature 311:141-744, 1985;Lira et al.,国際公開第2008/070845号Wright et al.,国際公開第2005/107437号及び国際公開第2007/053482号;Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2:603-618, 1990;Stalker et al., Science 242:419-423, 1988)。細菌起源のものでない植物形質転換用の他の選択マーカー遺伝子としては、例えば、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ、植物5−エノール−ピルビル−シキミ酸−3−リン酸シンターゼ及び植物アセト乳酸シンターゼが挙げられる(Eichholtz et al., Somatic Cell Mol. Genet. 13:67, 1987;Shah et al., Science 233:478, 1986;Charest et al., Plant Cell Rep. 8:643, 1990)。原核及び真核細胞における遺伝子発現には、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子がマーカーとして利用されている(Chalfie et al., Science 263:802, 1994)。GFP及びGFPの変異体を選択マーカーとして使用することができる。
【0132】
プロモータ:発現ベクターに含まれる遺伝子は、調節要素、例えばプロモータ、を含むヌクレオチド配列によって進められるはずである。幾つかのタイプのプロモータが形質転換分野において今では周知であり、単独で使用することができる又はプロモータと併用することができる他の調節要素も周知である。本明細書において用いる場合、「プロモータ」は、転写の始点の上流のDNA領域であって、転写を開始させるためのRNAポリメラーゼ及び他のタンパク質の認識及び結合に関与する領域への言及を含む。「植物プロモータ」は、植物細胞において転写を開始させることができるプロモータである。発生制御下のプロモータの例としては、一定の組織、例えば葉、根、種子、繊維、木部導管、仮導管又は厚膜組織、において転写を優先的に開始させるプロモータが挙げられる。そのようなプロモータは、「組織優先の(tissue-preferred)」と言われる。一定の組織のみで転写を開始させるプロモータは、「組織特異的」と言われる。「細胞タイプ」特異的プロモータは、1つ又はそれ以上の器官における一定の細胞タイプ、例えば根又は葉の導管細胞、において主として発現を進める。「誘導性」プロモータは、環境制御下にあるプロモータである。誘導性プロモータによる転写に影響を及ぼし得る環境条件の例としては、嫌気性条件、又は光の存在が挙げられる。組織特異的、組織優先、細胞タイプ特異的、及び誘導性プロモータが、「非構成的」プロモータのクラスを構成する。「構成的」プロモータは、大部分の環境条件下で活性であるプロモータである。
【0133】
誘導性プロモータ:アブラナ属において発現させるための遺伝子に誘導性プロモータを作動可能に連結させる。場合により、アブラナ属において発現させるための遺伝子に作動可能に連結されているシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に誘導性プロモータを作動可能に連結させる。誘導性プロモータを用いると、転写速度が誘導剤に応じて増大する。本発明では任意の誘導性プロモータを使用することができる。Ward et al., Plant Mol. Biol. 22:361-366 (1993)参照。例示的誘導性プロモータとしては、銅に応答するACEI系からのもの(Mett et al., PNAS 90:4567-4571, 1993);ベンゼンスルホンアミド除草剤毒性緩和剤に応答するトウモロコシからのIn2遺伝子(Hershey et al., Mol. Gen. Genetics 227:229-237 (1991);及びGatz et al., Mol. Gen. Genetics 243:32-38 (1994))又はTn10からのTetリプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genetics 227:229-237 (1991))が挙げられるが、それらに限定されない。特に好ましい誘導性プロモータは、植物が通常は応答しない誘導剤に応答するプロモータである。例示的誘導性プロモータは、その転写活性がグルココルチコステロイドホルモンによって誘導される、ステロイドホルモン遺伝子からの誘導性プロモータである(Schena et al., Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A. 88:0421 (1991))。
【0134】
構成的プロモータ:アブラナ属において発現させるための遺伝子に構成的プロモータを作動可能に連結させる、又はアブラナ属において発現させるための遺伝子に作動可能に連結されているシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に構成的プロモータを作動可能に連結させる。本発明では多くの異なる構成的プロモータを利用することができる。例示的構成プロモータとしては、植物ウイルスからのプロモータ、例えばCaMVからの35Sプロモータ(Odell et al., Nature 313:810-812, 1985)、及び米アクチン(McElroy et al., Plant Cell 2:163-171, 1990);ユビキチン(Christensen et al., Plant Mol. Biol. 12:619-632, 1989;Christensen et al., Plant Mol. Biol 18:675-689 (1992));pEMU(Last et al., Theor. Appl. Genet. 81: 581-588, 1991);MAS(Velten et al., EMBO J. 3:2723-2730, 1984);トウモロコシH3ヒストン(Lepetit et al., Mol. Gen. Genetics 231: 276-285, 1992;Atanassova et al., Plant Journal 2 (3):291-300, 1992)のような遺伝子からのプロモータが挙げられるが、それらに限定されない。ALSプロモータ、セイヨウアブラナALS3構造遺伝子に対して5’のXba1/Ncolフラグメント(又は前記Xba1/Ncolフラグメントに対するヌクレオチド配列類似性)、は、特に有用な構成プロモータの代表である。PCT出願国際公開第96/30530号を参照のこと。
【0135】
組織特異的又は組織優先プロモータ:アブラナ属において発現させるための遺伝子に組織特異的プロモータを作動可能に連結させる。場合により、アブラナ属において発現させるための遺伝子に作動可能に連結されているシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に組織特異的プロモータを作動可能に連結させる。組織特異的プロモータに作動可能に連結された関心のある遺伝子で形質転換された植物は、特定の組織において排他的に、又は優先的に、トランスジーンのタンパク質生産を生じさせる。本発明では任意の組織特異的又は組織優先プロモータを利用することができる。例示的組織特異的又は組織優先プロモータとしては、根優先プロモータ −例えばファセオリン遺伝子からのもの(Murai et al., Science 23:476-482 (1983)及びSengupta-Gopalan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:3320-3324 (1985));葉特異的及び光誘導プロモータ、例えばcab若しくはrubiscoからのもの(Simpson et al., EMBO J. 4(1 1):2723-2729 (1985)、及びTimko et al., Nature 318:579-582 (1985)));葯特異的プロモータ、例えばLAT52からのもの(Twell et al., Mol. Gen. Genetics 217:240-245 (1989));花粉特異的プロモータ、例えばZm13からのもの(Guerrero et al., Mol. Gen. Genetics 244:161-168 (1993))、又は小胞子特異的プロモータ、例えばapgからのもの(Twell et al., Sex. Plant Reprod. 6:217-224 (1993))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0136】
トランスジーンによって生産されたタンパク質の、細胞内区画(例えば葉緑体、空胞、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、細胞壁若しくはミトコンドリア)への、又は分泌のためにアポプラストへの輸送は、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、関心のあるタンパク質をコードする遺伝子の5’及び/又は3’領域に作動可能に連結させることによって果たされる。タンパク質の合成及び(コードされたタンパク質が最終的に区画化される)処理中に、構造遺伝子の5’及び/又は3’末端のターゲッティング配列が決まるだろう。
【0137】
シグナル配列の存在は、細胞内小器官若しくは細胞内区画に、又は分泌のためにアプロプラスに、ポリペプチドを指向させる。多くのシグナル配列が当該分野において公知である。例えば、Becker et al., Plant Mol. Biol. 20:49 (1992);C. Knox et al., Plant Mol. Biol. 9:3-17 (1987);Lerner et al., Plant Physiol. 91: 124-129 (1989);Fontes et al., Plant Cell 3:483-496 (1991);Matsuoka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 88:834 (1991);Gould et al., J. Cell. Biol. 108:1657 (1989);Creissen et al., Plant J. 2:129 (1991);Kalderon, et al., Cell 39:499-509 (1984);Steifel et al., Plant Cell 2:785-793 (1990)を参照のこと。
【0138】
本発明によるトランスジェニック植物を用いて、外来タンパク質を大量生産することができる。例えば、当該分野において十分に理解されている形質転換植物の選択及び繁殖技術によって多数のトランスジェニック植物が得られ、それらを従来の様式で収穫し、その後、関心のある組織から又は全バイオマスから外来タンパク質を抽出することができる。植物バイオマスからのタンパク質の抽出は、例えば、Heney and Orr, Anal. Biochem. 114:92-6 (1981)により論じられている公知の方法によって、果たすことができる。
【0139】
本発明の特定の実施形態によると、外来タンパク質の商業生産に供されるトランスジェニック植物は、アブラナ属植物である。もう1つの実施形態において、前記関心のあるバイオマスは、種子である。より高い発現レベルを示す比較的少数のトランスジェニック植物については、主として、組み込まれたDNA分子の近似的染色体位置を特定する従来のRFLP、PCR及びSSR分析により、遺伝地図を作製することができる。これに関しての例示的方法論については、Glick and Thompson, Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Press, Boca Raton 269:284 (1993)を参照のこと。染色体位置に関する地図情報は、対象トランスジェニック植物の所有権保護に有用である。無許可の繁殖が企てられ、他の生殖質との交配種が作られた場合、組み込み領域の前記地図と疑わしい植物についての類似の地図とを比較して、後述の疑わしい植物が前記対象植物と共通の系統図を有するかどうかを判定することができる。地図比較は、ハイブリダイゼーション、RFLP、PCR、SSR及びシークエンシング(これらのすべてが従来の技術である)を伴うだろう。
【0140】
アブラナ属形質転換のための方法:生物学的及び物理的植物形質転換プロトコルを含む非常に多数の植物形質転換方法が開発されている。例えば、Miki et al., 「Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants」 in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, B. R. Glick and J. E. Thompson, Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pages 67-88を参照のこと。加えて、植物細胞又は組織形質転換及び植物の再生のための発現ベクター及びインビトロ培養方法を利用することができる。例えば、Gruber et al., 「Vectors for Plant Transformation」 in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, B. R. Glick and J. E. Thompson, Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pages 89-119を参照のこと。
【0141】
アグロバクテリウム媒介形質転換:発現ベクターを植物に導入するための1つの方法は、アグロバクテリウムの天然形質転換系に基づく。例えば、Horsch et al., Science 227:1229 (1985)を参照のこと。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)及びA.リゾゲネス(A. rhizogenes)は、植物細胞を遺伝子的に形質転換させる植物病原性土壌細菌である。A.ツメファシエンス及びA.リゾゲネスのそれぞれTi及びRiプラスミドは、植物の遺伝子形質転換に関与する遺伝子を有する。例えば、C.I. Kado, Crit. Rev. Plant Sci. 10:1 (1991)を参照のこと。本発明の目的に適するアグロバクテリウム媒介遺伝子移入のためのアグロバクテリウムベクター系及び方法についての説明は、Bhalla and Singh, Nature Protocols 3(2): 181 -9 (2008)、Cardoza and Stewart, Methods Mol Biol. 343:257-66 (2006)、 Gruber et al., supra、Miki et al., supra、及びMoloney et al., Plant Cell Reports 8:238 (1989)によって提供されている。1996年10月8日に発行された米国特許第5,563,055号(Townsend及びThomas)も参照のこと。
【0142】
直接遺伝子移入:総称して直接遺伝子移入と呼ばれる、幾つかの植物形質転換法が、アグロバクテリウム媒介形質転換の代替法として開発された。一般に利用できる植物形質転換法は、1から4μmの長さを有するマイクロプロジェクタイルの表面にDNAが担持される、マイクロプロジェクタイル媒介形質転換である。植物細胞壁及び膜を貫通するために十分である300から600m/sの速度にマイクロプロジェクタイルを加速する遺伝子銃装置を用いて、発現ベクターを植物組織に導入する。Sanford et al., Part. Sci. Technol. 5:27 (1987)、J.C. Sanford, Trends Biotech. 6:299 (1988)、Klein et al., Bio/Technology 6:559-563 (1988)、J.C. Sanford, Physiol. Plant 7:206 (1990)、 Klein et al., Biotechnology 10:268 (1992)。1991年5月14日に発行された米国特許第5,015,580号(Christouら);1994年6月21日に発行された米国特許第5,322,783号(Tomesら)も参照のこと。
【0143】
植物へのDNAの物理的送達のためのもう1つの方法は、標的細胞の音波処理である。Zhang et al., Bio/Technology 9:996 (1991)。あるいは、リポソームとスフェロプラストの融合体が、発現ベクターを植物に導入するために用いられている。Deshayes et al., EMBO J. 4:2731 (1985), Christou et al., Proc Natl. Acad. ScL U.S.A. 84:3962 (1987)。CaCl2沈殿法、ポリビニルアルコール又はポリ−L−オルニチンを使用するプロトプラストへのDNAの直接取り込みも報告されている。Hain et al., Mol. Gen. Genet. 199: 161 (1985)及びDraper et al., Plant Cell Physiol. 23: 451 (1982)。プロトプラスト並びに全細胞及び組織のエレクトロポレーションも記載されている。Donn et al., In Abstracts of VIIth International Congress on Plant Cell and Tissue Culture IAPTC, A2-38, p 53 (1990);D'Halluin et al., Plant Cell 4:1495-1505 (1992)、及びSpencer et al., Plant Mol. Biol. 24:51-61 (1994)。
【0144】
アブラナ属標的組織の形質転換後、当該分野において今では周知である再生及び選択方法を用いて、上記選択マーカー遺伝子の発現により形質転換細胞、組織及び/又は植物を優先的に選択することができる。
【0145】
上述の形質転換法は、トランスジェニック品種の生産に概して用いられるだろう。さらにまた、そのトランスジェニック品種を別の(形質転換されていない又は形質転換された)品種と交配して、新たなトランスジェニック品種を生産することができるだろう。あるいは、上述の形質転換技術を用いて特定のアブラナ属系統に遺伝子工学で作られた遺伝形質を、植物育種技術分野において周知である従来の戻し交配技術を用いて、別の系統に移すことができるだろう。例えば、戻し交配アプローチを用いて、遺伝子工学で作られた形質を周知の非優良品種から優良品種に移すことができ、又はそのゲノム内に外来遺伝子を含有する品種からその遺伝子を含有しない品種(単数若しくは複数)に移すことができるだろう。本明細書において用いる場合、「交配」は、その文脈に依存して、単純なXとYの交配を指すこともあり、又は戻し交配を指すこともある。
【0146】
アブラナ属の組織培養:カラシナ系統のさらなる生産を、自家受粉によって行うこともでき、又は組織培養及び再生によって行うこともできる。アブラナ属の様々な組織の組織培養及びそれらからの植物の再生は公知である。例えば、組織培養によるアブラナ属栽培品種の繁殖は、次のもののいずれかに限定されないが、次のもののいずれかに記載されている:Chuong et al., 「A Simple Culture Method for Brassica Hypocotyl Protoplasts,」 Plant Cell Reports 4:4-6 (1985);T.L. Barsby et al.,「A Rapid and Efficient Alternative Procedure for the Regeneration of Plants from Hypocotyl Protoplasts of Brassica napus」Plant Cell Reports (Spring, 1996);K. Kartha et al., 「In vitro Plant Formation from Stem Explants of Rape」 Physiol. Plant, 31: 217-220 (1974);S. Narasimhulu et al., 「Species Specific Shoot Regeneration Response of Cotyledonary Explants of Brassicas,」 Plant Cell Reports (Spring 1988);E. Swanson, 「Microspore Culture in Brassica,」 Methods in Molecular Biology, Vol. 6, Chapter 17, p. 159 (1990)。
【0147】
従って、本発明のもう1つの態様は、成長及び分化すると、本発明のカラシナ系統の生理学的及び形態学的特質を有するアブラナ属植物を生産する、細胞を提供することである。
【0148】
本明細書において用いる場合、用語「組織培養物」は、同じ若しくは異なるタイプの単離された細胞を含む組成物、又は植物の部分に作り上げられたそのような細胞のコレクションを示す。組織培養物の例示的タイプは、植物又は植物の部分、例えば胚、花粉、花、種子、長角果、葉、幹、根、根尖、葯、めしべ及びこれらに類するもの、が無損傷である組織培養物を生じさせることができる、プロトプラスト、カルス、植物クランプ及び植物細胞である。植物組織培養物を調製及び維持するための手段は、当該分野において周知である。例としては、器官を構成する組織培養物を使用して、再生植物を生産が生産された。米国特許第5,959,185号、同第5,973,234号及び同第5,977,445号には、一定の技術が記載されている。
【0149】
本発明は、第一の親アブラナ属植物と第二のアブラナ属とを交配させることによりアブラナ植物を生産するための方法にも関し、この場合の第一又は第二の親アブラナ属植物は、少なくとも1つの突然変異FAD遺伝子(すなわち、FAD2及び/又はFAD3)を含むアブラナ属植物である。従って、本発明のカラシナ系列を使用するいずれのそのような方法も、本発明:自家受粉、戻し交配、ハイブリッド生産、集団との交配及びこれらに類するもの、の一部である。
【0150】
外来タンパク質遺伝子及び農業実用遺伝子
本発明によるトランスジェニック植物を用いて、外来タンパク質を大量生産することができる。例えば、当該分野において十分に理解されている形質転換植物の選択及び繁殖技術によって多数のトランスジェニック植物が得られ、それらを従来の様式で収穫し、その後、関心のある組織から又は全バイオマスから外来タンパク質を抽出することができる。植物バイオマスからのタンパク質の抽出は、例えば、Heney and Orr, Anal. Biochem. 114:92-6 (1981)により論じられている公知の方法によって、果たすことができる。
【0151】
好ましい実施形態によると、外来タンパク質の商業生産に供されるトランスジェニック植物は、カノーラ植物である。もう1つの実施形態において、前記関心のあるバイオマスは、種子である。より高い発現レベルを示す比較的少数のトランスジェニック植物については、主として、組み込まれたDNA分子の近似的染色体位置を特定する従来のRFLP、PCR及びSSR分析により、遺伝地図を作製することができる。これに関しての例示的方法論については、Glick and Thompson, Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Press, Boca Raton 269:284 (1993)を参照のこと。染色体位置に関する地図情報は、対象トランスジェニック植物の所有権保護に有用である。無許可の繁殖が企てられ、他の生殖質との交配種が作られた場合、組み込み領域の前記地図と疑わしい植物についての類似の地図とを比較して、後述の疑わしい植物が前記対象植物と共通の系統図を有するかどうかを判定することができる。地図比較は、ハイブリダイゼーション、RFLP、PCR、SSR及びシークエンシング(これらのすべてが従来の技術である)を伴うだろう。
【0152】
同様に、本発明によって、農業実用遺伝子を形質転換植物において発現させることができる。より詳細には、植物を遺伝子工学で作り変えて、農業実用的関心のある様々な表現型を発現させることができる。この事項に関与する例示的遺伝子としては、下に類別するものが挙げられるが、それらに限定されない:
【0153】
1.有害生物又は疾病に対する耐性を付与する及び次のものをコードする遺伝子:
A.植物耐病性遺伝子。植物防御は、植物中の耐病性遺伝子(R)と病原体中の対応する非病原性(Avr)遺伝子の産物との特異的相互作用によって活性化されることが多い。クローニングされた耐性遺伝子で植物品種を形質転換させて、特定の病原株に対して耐性である植物を遺伝子工学で作ることができる。例えば、Jones et al., Science 266:789 (1994) (cloning of the tomato Cf-9 gene for resistance to Cladosporium fulvum);Martin et al., Science 262:1432 (1993) (tomato Pto gene for resistance to Pseudomonas syringae pv. tomato encodes a protein kinase);Mindrinos et al., Cell 78:1089 (1994) (Arabidopsis RSP2 gene for resistance to Pseudomonas syringae)を参照のこと。
【0154】
B.有害生物、例えば大豆シスト線虫、に対する耐性を付与する遺伝子。例えば、PCT出願国際公開第96/30517号;PCT出願国際公開第93/19181号を参照のこと。
【0155】
C.バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、それらの誘導体又はそれらをモデルにした合成ポリペプチド。例えば、Bt δ−エンドトキシン遺伝子のクローニング及びヌクレオチド配列を開示しているGeiser et al., Gene 48:109 (1986)を参照のこと。さらに、δ−エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子は、バージニア州、Manassasの米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection)から、例えばATCCアクセッション番号40098、67136、31995及び31998で購入することができる。
【0156】
D.レシチン。例えば、ウケザキクンシラン(Clivia miniata)マンノース結合レシチン遺伝子のヌクレオチド配列を開示している、Van Damme et al., Plant Molec. Biol. 24:25 (1994)による開示を参照のこと。
【0157】
E.ビタミン結合タンパク質、例えばアビジン。PCT出願US93/06487を参照のこと。この出願は、害虫に対する殺幼虫剤としてのアビジン及びアビジン相同体の使用を教示している。
【0158】
F.酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼ若しくはプロテイナーゼ阻害剤又はアミラーゼ阻害剤。例えば、Abe et al., J. Biol. Chem. 262:16793 (1987)(米システインプロテイナーゼ阻害剤のヌクレオチド配列);Huub et al., Plant Molec. Biol. 21: 985 (1993)(タバコプロテイナーゼ阻害剤IをコードするcDNAのヌクレオチド配列);Sumitani et al., Biosci. Biotech. Biochem. 57:1243 (1993)(ストレプトマイセス・ニトロスポレウス (Streptomyces nitrosporeus)アルファ−アミラーゼ阻害剤のヌクレオチド配列);及び米国特許第5,494,813号(Hepher及びAtkinson、1996年2月27日発行)を参照のこと。
【0159】
G.昆虫特異的ホルモン又はフェロモン、例えばエクジステロイド又は幼虫ホルモン、それらの変異体、それらに基づく模倣剤又はそれらのアンタゴニスト若しくはアゴニスト。例えば、クローニングされた幼虫ホルモンエステラーゼ、幼虫ホルモンの不活性化因子、のバキュロウイルス発現についての、Hammock et al., Nature 344:458 (1990)による開示を参照のこと。
【0160】
H.発現すると、悪影響を及ぼす有害生物の生理機能を破壊する、昆虫特異的ペプチド又は神経ペプチド。例えば、Regan, J. Biol. Chem. 269:9 (1994)(発現クローニングにより、昆虫利尿ホルモン受容体をコードするDNAが生じる);及びPratt et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 163:1243 (1989)(アロスタチン(allostatin)が胎生ゴキブリ(Diploptera puntata)において同定される)の開示を参照のこと。昆虫特異的、麻痺性神経毒をコードする遺伝子を開示している、Tomalskiらの米国特許第5.266,317号も参照のこと。
【0161】
I.ヘビ、スズメバチなどにより自然に生産される昆虫特異的毒液。例えば、サソリ昆虫毒ペプチドをコードする遺伝子の植物における異種発現の開示について、Pang et al., Gene 116:165 (1992)を参照のこと。
【0162】
J.モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体、又は殺虫活性を有する別の非タンパク質分子の過剰蓄積の原因となる酵素。
【0163】
K.生物活性分子の修飾(翻訳後修飾を含む)に関与する酵素;例えば、天然のものであろうと、合成のものであろうと、糖分解酵素、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼ、エステラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼ及びグルカナーゼ。カラーゼ(callase)遺伝子のヌクレオチド配列を開示している、Scottらの名義のPCT出願国際公開第93/02197号を参照のこと。キチナーゼをコードする配列を含有するDNA分子は、例えば、ATCCからアクセッション番号39637及び67152で入手することができる。タバコスズメガ・キチナーゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列を教示している Kramer et al., Insect Biochem. Molec. Biol. 23:691 (1993)、及びパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子のヌクレオチド配列を提供している Kawalleck et al., Plant Molec. Biol. 21:673 (1993)も参照のこと。
【0164】
L.シグナル伝達を刺激する分子。例えば、緑豆カルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列についての Bottela et al., Plant Molec. Biol. 24:757 (1994)による開示;及びトウモロコシカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列を提供している Griess et al., Plant Physiol. 104:1467 (1994)を参照のこと。
【0165】
M.疎水モーメントペプチド。PCT出願国際公開第95/16776号(真菌植物病原体を阻害するタキプレシン(Tachyplesin)のペプチド誘導体の開示)及びPCT出願国際公開第95/18855号(耐病性を付与する合成抗微生物ペプチドを教示している)を参照のこと。
【0166】
N.膜パーミアーゼ、チャネル形成因子又はチャネル遮断因子。例えば、セクロピン−β、トランスジェニックタバコ植物をシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対して耐性にする溶菌ペプチド類似体、の異種発現についてのJaynes et al., Plant Sci. 89:43 (1993)を参照のこと。
【0167】
O.ウイルス侵襲性(viral-invasive)タンパク質又はそれらに由来する複合毒素。例えば、形質転換植物細胞におけるウイルスコートタンパク質の蓄積は、そのコートタンパク質遺伝子が由来するウイルスにより及び関連ウイルスにより果たされるウイルス感染症及び/又はウイルス性疾患発現に対する耐性をもたらす。Beachy et al., Ann. Rev. Phytopathol. 28:451 (1990)を参照のこと。形質転換植物に対して、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモXウイルス、ジャガイモYウイルス、タバコエッチ病ウイルス、タバコ茎えそウイルス及びタバコモザイクウイルスに対するコートタンパク質媒介耐性が付与される。同上。
【0168】
P.昆虫特異的抗体又はそれらに由来する免疫毒素。例えば、昆虫腸管における重要な代謝機能を標的にする抗体は、作用を受けた酵素を不活性化して、昆虫を殺すだろう。Taylor et al., Abstract #497, Seventh Int'l Symposium on Molecular Plant-Microbe Interactions (Edinburgh, Scotland) (1994)(一本鎖抗体フラグメントの生産によるトランスジェニックタバコにおける酵素的不活性化)を参照のこと。
【0169】
Q.ウイルス特異的抗体。例えば、組換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物をウイルス攻撃から防護することを示している、Tavladoraki et al., Nature 366:469 (1993)を参照のこと。
【0170】
R.病原体又は寄生虫により自然に生産される発育抑制(developmental-arrestive)タンパク質。例えば、真菌エンドα−1,4−D−ポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−α−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することにより、真菌コロニー形成及び植物栄養放出を助長する。Lamb et al., Bio/Technology 10:1436 (1992)を参照のこと。豆エンドポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子のクローニング及び特性づけは、Toubart et al., Plant J. 2:367 (1992)により記載されている。
【0171】
S.植物により自然に生産される発育抑制タンパク質。例えば、Logemann et al., Bio/Technology 10:305 (1992)には、大麦リボソーム不活性化遺伝子を発現するトランスジェニック植物が、増加された耐真菌病性を有することが示されている。
【0172】
2.除草剤に対する耐性を付与する遺伝子:
A.成長点又は分裂組織を阻害する除草剤、例えばイミダゾリノン又はスルホニル尿素。このカテゴリーの中の例示的遺伝子は、例えば、Lee et al., EMBOJ. 7:1241 (1988)及び Miki et al., Theor. Appl. Genet. 80:449 (1990)によってそれぞれ記載されているような突然変異体ALS及びAHASをコードする。
【0173】
B.グルホサート(例えば、突然変異体5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSP)遺伝子(組換え核酸の誘導、及び/又は天然EPSP遺伝子の様々な形態のインビボ突然変異誘発による)、aroA遺伝子及びグリホサートアセチルトランスフェラーゼ(GAT)遺伝子、それぞれによって付与される耐性)、他のホスホノ化合物、例えばグルホシナート(ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)及びストレプトマイセス・ビリジクロモゲン(Streptomyces viridichromogenes)をはじめとするストラプトマイセス種からのホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子)、並びにピリジノキシ又はフェノキシプロピオン酸及びシクロヘキサノン(ACCアーゼ阻害剤をコードする遺伝子)。例えば、植物にグルホサート耐性を付与することができる形態のEPSPのヌクレオチド配列を開示している、Shahらの米国特許第4,940,835号及びBarryらの米国特許第6,248,876号を参照のこと。突然変異体aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCCアクセッション番号39256で入手することができ、及びその突然変異遺伝子のヌクレオチド配列は、Conamiの米国特許第4,769,061号に開示されている。Kumadaらの欧州特許出願第0 333 033号及びGoodmanらの米国特許第4,975,374号には、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する耐性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。PAT遺伝子のヌクレオチド配列は、Leemanらの欧州特許第0 242 246号に提供されており、DeGreef et al., Bio/Technology 7:61 (1989)には、PAT活性をコードするキメラbar遺伝子を発現するトランスジェニック植物の生産が記載されている。フェノキシプロピオン酸及びシクロヘキサノン、例えばセトキシジム及びハロキシホップ、に対する耐性を付与する遺伝子の例は、Marshall et al., Theor. Appl. Genet. 83:435 (1992)によって記載されている、Acc1−S1、Acc1−S2及びAcc1−S3遺伝子である。グリホサート耐性を付与することができるGAT遺伝子は、Castleらの国際公開第2005012515号に記載されている。2,4−D、fop、及びピリジルオキシオーキシン除草剤に対する耐性を付与する遺伝子は、国際公開第2005107437号及び米国特許出願番号第11/587,893号(両方ともDow AgroSciences LLCに譲渡された)に記載されている。
【0174】
C.光合成を阻害する除草剤、例えばトリアジン(psbA及びgs+遺伝子)又はベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)。Przibila et al., Plant Cell 3:169 (1991)には、突然変異体psbA遺伝子をコードするプラスミドでのクラミドモナス属(Chlamycomonas)の形質転換が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子についてのヌクレオチド配列は、Stalkerらの米国特許第4,810,648号に開示されており、及びこれらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCCアクセッション番号53435、67441及び67442で入手できる。グルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするDNAのクローニング及び発現は、Hayes et al., Biochem. J. 285:173 (1992)により記載されている。
【0175】
3.下記のものなどの、付加価値形質を付与する又は付加価値形質の一因となる遺伝子:
A.例えばステアリル−ACPデサチュラーゼのアンチセンス遺伝子で植物を形質転換させてその植物のステアリン酸含有量を増加させることによる、修飾脂肪酸代謝。Knultzon et al., Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A. 89:2624 (1992)を参照のこと。
【0176】
B.減少したフィテート含有量−−1)より多くの遊離ホスファートを形質転換植物に加えることとなるフィテート破壊を増進するフィターゼをコードする遺伝子の導入。例えば、クロコウジカビ(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子のヌクレオチド配列の開示については、Van Hartingsveldt et al., Gene 127:87 (1993)を参照のこと。2)フィテート含有量を低減した遺伝子を導入することができるだろう。例えばトウモロコシの場合、低いフィチン酸レベルを特徴とするトウモロコシ突然変異体の原因となる単一アレルに関連したDNAをクローニングし、その後、再導入することにより、これを果たすことできるだろう。Raboy et al., Maydica 35:383 (1990)を参照のこと。
【0177】
C.例えば、デンプンの分枝パターンを改変する酵素をコードする遺伝子で植物を形質転換することによってもたらされる、修飾炭水化物組成物。Shiroza et al., J. Bacteriol. 170:810 (1988)(連鎖球菌(Streptococcus)突然変異体フルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Steinmetz et al., Mol. Gen. Genet. 20:220 (1985)(枯草菌(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Pen et al., Bio/Technology 10:292 (1992)(バチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenifonnis)α−アミラーゼを発現するトランスジェニック植物の生産)、Elliot et al., Plant Molec. Biol. 21: 515 (1993)(トマトインベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Sogaard et al., J. Biol. Chem. 268:22480 (1993)(大麦α−アミラーゼ遺伝子の部位特異的突然変異誘発)、及びFisher et al., Plant Physiol. 102:1045 (1993)(トウモロコシ内乳デンプン分枝酵素II)を参照のこと。
【0178】
本発明の様々な実施形態を本明細書に開示するが、当業者の世間一般の知識に従って本発明の範囲内で多くの改変及び変更を加えることができる。そのような変更は、公知の等価物で本発明の任意の態様を置換して実質的に同じ方法で同じ結果を達成することを含む。数値範囲は、その範囲を定義する数値を含む。本発明は、実質的に上で説明したような並びに実施例及び図に関しての、すべての実施形態及び変形形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子が、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、カラシナ(Brassica juncea)植物。
【請求項2】
種子が、3.0重量%未満のリノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項1に記載のカラシナ植物。
【請求項3】
種子が、70.0重量%から85.0重量%オレイン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項1に記載のカラシナ植物。
【請求項4】
種子が、70.0重量%から85.0重量%オレイン酸及び3.0重量%未満のリノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項1に記載のカラシナ植物。
【請求項5】
請求項1に記載のカラシナ植物の種子から抽出される内因性の油であって、前記種子が、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有するものである油。
【請求項6】
70.0%から85.0%オレイン酸を含む脂肪酸含有量を有する、請求項5に記載の油。
【請求項7】
3.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項5に記載の油。
【請求項8】
70.0重量%から85.0重量%オレイン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項5に記載の油。
【請求項9】
70.0重量%から85.0重量%オレイン酸及び3.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、請求項5に記載の油。
【請求項10】
少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸の脂肪酸含有量を含む全抽出可能油を有する、請求項1に記載の種子。
【請求項11】
70.0重量%から85.0重量%のオレイン酸含有量及び0.1重量%から3.0重量%のリノレン酸含有量を含む全抽出可能油を有する、請求項10に記載の種子。
【請求項12】
突然変異fad2遺伝子を含有する、請求項1に記載のカラシナ植物。
【請求項13】
突然変異fad3遺伝子を含有する、請求項1に記載のカラシナ植物。
【請求項14】
少なくとも70,0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する、カラシナ品種の種子中の油。
【請求項15】
種子が、少なくとも70,0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有する、カラシナ植物を生産する方法であって、
突然変異fad2a核酸配列、突然変異fad2b核酸配列、突然変異fad3a核酸配列、突然変異fad3a核酸配列及び突然変異fad3b核酸配列からなる群より選択される1つ又はそれ以上の核酸配列を、従来の交配法により、前記カラシナ植物に導入することを含む方法。
【請求項16】
少なくとも70,0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む内因性脂肪酸含有量を有するカラシナ植物の種子からのミール。
【請求項17】
粉砕種子、プレスケーキ、ホワイトフレーク、又は従来の粉砕及び溶媒抽出プロセスからのミールの形態のものである、請求項16に記載のカノーラミール。
【請求項18】
カラシナ植物からの種子であって、従来の育種法によって前記カラシナ植物に導入した遺伝子である、Brassica aa及び/又はBrassica bbゲノムの1つ又はそれ以上のゲノム成分からの1つ又はそれ以上の非組換えfad2及びfad3遺伝子が組み込まれているものであり、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する油を生産するものである種子。
【請求項19】
前記1つ又はそれ以上の非組換えfad2及びfad3遺伝子が組み込まれている種子であって、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する油を生産するものである種子を生産する後代植物である、請求項20に記載の種子の少なくとも1つから生産される後代植物の一又はそれ以上の世代。
【請求項20】
少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸を含む脂肪酸含有量を有する種子油である、非トランスジェニックカラシナ植物の作物の種子において生産される種子油。
【請求項21】
カラシナの作物であって、該作物全体を通して、平均して、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸である内因性油含有量を有する種子を生産するものであるカラシナの作物。
【請求項22】
請求項21に記載の作物の種子の少なくとも1つから得られる後代作物の一又はそれ以上の世代。
【請求項23】
カラシナ栽培品種であって、該作物全体を通して、平均して、少なくとも70.0重量%オレイン酸及び5.0重量%未満リノレン酸である内因性油含有量を有する種子を生産するものであるカラシナ栽培品種。
【請求項24】
請求項23に記載のカラシナ栽培品種をアブラナ属(Brassica)種の植物と交配することによって生産される脂肪種子植物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−507286(P2012−507286A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534530(P2011−534530)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/005968
【国際公開番号】WO2010/053541
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】