説明

オリゴシロキサン変性液晶配合物およびそれを用いるデバイス

液晶配合物を記載する。この液晶配合物は、第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質;および、第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質、非液晶オリゴシロキサン変性物質、有機液晶物質、または非液晶物質から選択される少なくとも一種の追加物質を含み、この液晶配合物は、約15℃から約35℃のSmC温度範囲を有するI→SmA→SmC相転移を有し、約22.5°±6°または約45°±6°のチルト角を有し、約50nC/cm未満の自発分極を有し、かつ約600cP未満の回転粘度を有する。液晶配合物を含むデバイスも記載する。本デバイスは、安定なブックシェルフ配列、双安定スイッチング、および等温電場配向を有し、かつ二つの安定状態間でスイッチされる場合に500μ秒未満の応答時間、および約30V/μm未満の電気駆動場を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はオリゴシロキサン変性液晶の使用および電気光学デバイスでのその使用に関する。本発明は特に、等温的に電場配向させることができ、またアクティブマトリクス・バックプレーン技術を用いる実用的デバイスに必要とされる非常に低い自発分極(Ps)をも有する、双安定強誘電体ディスプレイでの使用を可能にする液晶配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモトロピック液晶は、相が温度の関数として変化し得る液晶すなわちメソゲン相を示す能力を有する物質である。これらの液晶相(例えば、ネマチックまたはスメクチックなど)は、等方相と結晶相との間に存在し、等方(液体)相または結晶相では観察されない物理特性を示す傾向がある。例えば、液晶相は、同じ温度で複屈折および流体挙動を示すことができる。このような特性は、例えば透過型および反射型ディスプレイなどの電気光学デバイスにおいて有効に使われてきており、そこでは、液晶分子の配向が制御されているデバイス構造において、印加電場により効果的に複屈折が調整され得る。ネマチック液晶は、液晶ディスプレイ(LCD)、例えばラップトップコンピューター、携帯電話、PDA、コンピューター・モニター、およびTVのディスプレイなどに広く使われてきた。ネマチック液晶ベースの電気光学デバイスは広く利用されているが、そのようなデバイスの最速応答時間はミリ秒の位に限定されている、なぜなら、デバイスが、スイッチング・サイクルの一部については表面配向制御緩和プロセスに依存しているためである。強誘電性液晶は、光学状態間で大幅に速くスイッチする能力を有する。しかし、デジタルおよびアナログのモードデバイスの両方が開発されているにも関わらず、このようなデバイスは実施することが困難であることがわかっており、それ故、特殊化されたマイクロディスプレイ用途、例えばカメラファインダーなどで商品化されているのみである。
【0003】
クラークおよびラガーウォール(米国特許第4,367,924号およびApplied Physics Letters、36,899−901(1980)、これら両方を、参照により本明細書に組み込む)は、サブマイクロ秒の電気光学スイッチング速度を示す有機強誘電性液晶を利用するデバイスを記述している。クラークおよびラガーウォールのこのデバイスは、いわゆる表面安定化強誘電性液晶デバイス(SSFLCD)である。このようなデバイスは、強誘電性スイッチングSSFLCDモードに必要とされるキラルスメクチックC(SmC)相を示す有機強誘電性液晶またはそれらの配合物を利用している。この材料は、典型的には、冷却すると、SSFLCDの製造を容易にするための次の相系列:等方相→ネマチック→SmA→SmCを示す。ここで、SmAはキラルスメクチックA相であり、SmCはキラルスメチックC相である。この相系列は、高温かつ低粘度の相中における液晶分子の表面位置合せ(surface registration)による表面安定化配向層の形成を可能にする。配向した液晶デバイスは、その後、慎重にSmC相へ冷却されて、SSFLCDを作り出す。SmC相が、確実にいわゆる「ブックシェルフ」配列され得る場合には、デバイスは双安定強誘電性スイッチングを示す。
【0004】
しかし、これは実際には困難であることが分かった。SSFLCDは、いくつかの問題に敏感であり、それがこの技術の限定された実商化をもたらしていた。主要な制限は、用いた相系列に起因している。なぜなら、従来の有機FLCは、高い温度のSmAから低い温度のSmC相に冷却すると、転移の間に著しい層収縮を受けるからである。層状構造の収縮は、欠陥の形成(ゆがんだ層またはシェブロンの形成による、ジグザグ欠陥)をもたらし、これがSSFLCDで観測されるコントラスト比を著しく低下させる。シェブロン構造の形成およびこの構造の制御は、当技術分野で知られているように、C1またはC2型デバイスのいずれかの製作を可能にする。例えば、Optical Applications of Liquid Crystals,Ed.L Vicari著,第1章,ISBN0750308575を参照されたい。いくつかの場合には、理想的な、いわゆる「ブックシェルフ配列」(SmC相の層がデバイス基板および配向層に対して垂直に配置された配列)が、電場の印加によって誘導されうる。しかし、誘導されたブックシェルフ構造または擬ブックシェルフ構造を有するデバイスは、そのデバイスを、以前配置されたシェブロン配向に戻すための製造要件およびその潜在的能力が理由で、商業的なディスプレイデバイスとしては実用的ではない。このため、多くのSSFLCD特許がブックシェルフ構造が存在すると特許請求の範囲に記載しているが、そのような構造が真のブックシェルフ構造または擬ブックシェルフ構造であるかどうか、およびデバイスに用いられた場合にシェブロン構造が実在しているのかどうかを理解することが重要である。従来のSSFLCDのこれらの制限はまた、クロスランドらによってFerroelectrics,312,3〜23(2004)でも議論されている。
【0005】
等方相→ネマチック→SmA→SmC相系列を有するFLC物質のこの固有の問題が、層収縮現象の傾向のない新規物質の研究へと導いた。これを除去する一つのアプローチが、等方相→SmA→SmC相系列を示し、このSmA→SmC相転移で実際に層収縮のない、いわゆる「ド・フリース(de Vries)」型の材料を用いることである。非常に低い粘度のネマチック相が存在しないため、SmC相のランダムドメインおよび自然なヘリエレクトリック(Helielectric)状態を、電極と基板に対して配向するモノ‐ドメインへと導く相構造に変換して、実用的な電気光学デバイスを生み出すことを可能にする、代替の配向スキームが必要となる。
【0006】
コールズら(Liquid Crystals,23(2),235〜239(1997);J.Phys II France,6,271〜279,(1996));リーら(J.Mater.Chem.,17,2313〜2318(2007);およびこれらに記載された引用文献(これらすべてを、参照により本明細書に組み込む)に記載されているように、オリゴシロキサン変性液晶は、ナノ相分離層状構造を形成する傾向に起因して、従来の液晶から区別される。このようなシステムは、「仮想ポリマー」として記述されている。なぜなら、これらの構造および特性は、サイド・チェーン液晶ポリマー(SCLCP)の特徴のいくつかと、従来の有機液晶の特性のいくつかとを、兼ね備えているからである。オリゴシロキサン変性液晶の構造および特性は、科学総説文献において両親媒性型またはナノ相分離型の液晶として分類されている有機液晶と非常に著しく異なっている(参照:C.Tschierske,「Non−conventional liquid crystals−the importance of micro−segregation for self−organization」,J.Mater.Chem.,1998,8(7),1485〜1508)。そのようなシステムの構造はなおも活発な科学的議論の分野であり、リーら(J.Mater.Chem.,17,2313〜2318(2007)、その全体を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0007】
コールズ(米国特許第5,498,368号およびProceeding of SPIE、Vol.2408,22〜29(1995)、両者を参照により本明細書に組み込む)は、フェニルベンゾアート芳香族核をベースにした単一成分オリゴシロキサン変性強誘電性液晶の予期しない特性を強調した。真の双安定性、すなわち、印加電場の除去後のLCモノドメインの電気的に選択された配向の保持、および、50℃ほどの広い温度範囲にわたって大きく低減されたFLCチルト角感受性が、この特許で示された。この場合、モノ‐ドメインは、印加電場下で、等方相からSmCを経由してゆっくり(例えば、1℃/分)デバイスを冷却することにより作り出された。クロスランドら(国際公開番号WO2005019380A1、参照により本明細書に組み込む)は、その後、フェニルベンゾアート芳香族核をベースにした単一成分オリゴシロキサンFLCを含むデバイスを実証し、それはモノ‐ドメイン配向のために電場だけを用いており(すなわち等温配向が可能であり)、かつ前記特許出願に含められた定義に基づいて双安定であると述べられている。
【0008】
Walbaら(米国特許第6,870,163号、参照により本明細書に組み込む)は、典型的なFLCデバイスがシェブロン欠陥形成に起因して真の光学的双安定性を示さないということは、FLC物質およびデバイスの当業者には良く知られていると指摘した。クロスランドらは、Ferroelectrics,312,3〜23(2004)(参照により本明細書に組み込む)において、画像化中に「デッド期間(Dead periods)」をもたらす、デバイス動作へのこの制限の影響、例えば直流バランスおよび逆フレーミング(reverse framing)の必要性などを論じている。米国特許第6,507,330号(Handschyら)も、直流バランスの必要性を論じた。
【0009】
Goodbyら(米国特許公開2005/0001200A1、参照により本明細書に組み込む)は、ビフェニル核を含有するオリゴシロキサン液晶に関する物の組成物を記述した。Goodbyは、このような物質が、単独でまたは他の液晶との混合物として用いることができると指摘したが、特許請求された、SmA相を有し、得られる液晶混合物のSmA相を安定化する材料の使用の域を越えたそのような混合物の設計については論じていない。このことと、この特許に記載された比較化合物例とに基づけば、等方相→ネマチック→SmA→SmC相系列を有する従来のSSFLC混合物を設計することを意図していたことは明白である。この特許は、実用的なFLCDを構築するために必要とされる他の重要な物理的特性に言及することなく、特許請求された物質の相系列のみを論じている。
【0010】
FLC分野の当業者は、通常、分子の配合によって、幅広い動作範囲が混合物に与えられ、かつ、実用的なFLCデバイスの要求事項に適合するために最適化されなければならない多くの物理的特性が調整されることを知っている。この配合知識の大部分は、有機FLCを用いて開発されてきたものであり、その有機FLCは、等方相→ネマチック→SmA→SmC相系列を有する物質を利用する従来モードのシェブロン・デバイスにおける用途に向けて開発されてきている。
【0011】
実用的デバイス(例えば、これに限定されないされないが、アクティブマトリクス強誘電性LCD(FLCD)を含む実用的デバイス)に使用するためのオリゴシロキサン変性ナノ相分離強誘電性液晶の配合は、詳細には報告されていない。これに対し、有機液晶の配合は、広範囲にわたって研究されており、そのような配合物の液晶相挙動の設計を助けるための多くの予測法則が開発されている(Demusら,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,25,215〜232(1974);Hsuら,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,27,95〜104(1974);Rabinovichら,Ferroelectrics,121,335〜342(1991))。本発明者らの経験では、そのような配合設計の方法はオリゴシロキサンFLCには適さない。オリゴシロキサンFLCでは、未知の液晶の相は、もしそれが既知の相を持つ液晶と混和性かどうかで識別することができる(すなわち、「類似の液晶」は「類似の液晶」と混和する)という標準的な「経験則」(Goodby&Gray、Physical Properties of Liquid Crystals,ISBN3−527−29747−2,17頁)でさえ行き詰る。そのような基本則は、ナノ相分離スメクチック層化が優位であり、他のクラスの液晶または非液晶分子でさえそのSmC相構造の損失なしに容易に混合されるオリゴシロキサン変性強誘電性液晶には適合しない。例えば、コールズおよびリーは、それぞれ独自に、そのようなシステムでの混和性の予期しない例を実証し、オリゴシロキサンシステムと有機LCシステムとの相違を強調している(コールズら,Ferroelectrics,243,75〜85(2000)、およびリーら,Advanced Materials 17(5),567〜571(2005)を参照されたい。両者を参照により本明細書に組み込む)。本発明以前には、高濃度のオリゴシロキサン液晶を含む組成物の配合のための洗練された予測的法則は確認されていなかったし、実用的デバイスの、材料、配向、および構造安定性の要求事項に適合するように物理特性を調整する能力もなかった。例えば、リーら(J.Mater.Chem.,17,2313〜2318(2007))による、簡単な一連の物質のチルト角を研究する試みは挫折している。なぜなら、調製された混合物のうちわずかしか、チルト角が測定可能に配向されなかったからである。
【0012】
キヤノン(米国特許第5,720,898号、参照により本明細書に組み込む)は、シロキサン連結基を含む主鎖型液晶および液晶モノマーを含むデバイスの群を記述している。米国特許第5,720,898号では、最小の主鎖ポリマーはABA種(ここで、A=メソゲン基、およびB=ジシロキサン連結基)でありうる。この特許は、スメクチックABA物質を微量成分としてモノマーの有機メソゲンに加えることを教示しているが、この液晶相がナノ相分離されることを何ら示唆していない。事実、このシロキサン添加剤は、従来のスメクチック相構造を乱していない。この発明者らは、共有的に結合されたABAオリゴマーがスメクチック相の隣接層を橋渡しすることができるならば、その相を安定化できることに注目している。この液晶システムは、デバイス内でLC媒体を引き伸ばし又はせん断することにより巨視的(マクロスコピック)に配向される。この例では、相構造はナノ相分離されていない。なぜなら、この液晶システムは、モノマー有機メソゲンに基づいており、かつ、存在する相を橋渡しするためにABAオリゴシロキサンが低濃度で加えられ、相を一緒に固定し且つ相を安定化しているからである。この特許は、シロキサン連結セグメントが大きすぎる場合、分子はヘアピンに折りたたまれることになり、もはや隣接層を橋渡しできなくなるので、その固定化機構は失われることを教示している。
【0013】
リーら(J.Mater.Chem.,17,2313〜2318,(2007)、参照により本明細書に組み込む)はいくつかのアキラルなシロキサン末端フェニルピリミジンを合成した。これら材料のいくつかは、等方相→SmC→結晶相系列(下記の表中のメソゲン1a、1b、1c、1d、1e、2e、5,6、7、8)を有していたが、他のものは等方相→SmA→SmC→結晶相系列(下記の表中のメソゲン2a、2b、2c、2d、3、4)を有していた。彼は、POM(偏光光学顕微鏡)で光学チルト角を測定しようとしてメソゲン1b、2b、3、4、5,6、7、および8への添加剤として、1モル%のキラルオリゴシロキサン(「Brll−Si」)を用いた。彼は、他の人がシロキサン末端液晶についてX線データとPOM観察との間の不一致点を観察したことに注目し、X線によって規定されるスメクチック層間隔と、選択したメソゲンの光学チルト角との間の関係を調べた。形成された2成分混合物の相系列は報告されていない。彼は、5つの混合物(1b、5、6、7、および8に基づく混合物、いずれも等方相→SmC相系列を有する)を調製したが、モノ‐ドメインに配向できなかったこと、およびチルト角を測定できなかったことを報告した。彼は、用いた配向材料および用いたセルギャップに注目したが、試験セル内で配向を作り出そうとする試みに用いたプロセスを論じていない。彼は、メソゲン2bに基づいて1個のサンプルを配向させることができ、36度のチルト角が測定されたことに注目している。このチルト角は、実用的なFLCD(FLCデバイスの動作モードに応じて22.5度または45度に近いチルト角は必要条件である)には役立たず、配合物の目的が、特性の最適化ではなく、単に測定を可能にするためであることは明らかである。彼は、サンプルは、チルト角測定のために配向されなければならないことに注目し、メソゲン3および4に基づくさらなる2個の混合物についてチルト角(それぞれ24度および26度)を報告した。このように、彼は、等方相→SmA→SmC→結晶相系列を有するメソゲンにキラル添加剤が加えられた混合物のみしか配向することができなかったことを報告している。それらの要約および概要は、メソゲン3(末端塩素原子および等方相→SmA→SmC相系列を有する)の真のド・フリース挙動を強調している。構造を下記に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
Liは、クロロ末端ホストメソゲンによって、いわゆるド・フリース材料を調製するための最適ルートがもたらされることに注目している。Liは、末端クロロ基を有するホストが、ドーピングによって興味深い強誘電特性を示す能力を有することを指摘したが、これを実証しなかった。その後の会議(Ferroelectric Liquid Crystal Conference 2007、札幌)におけるプレゼンテーションで、Lemieuxは、同様のシステムでPsを調整する能力を実証したが、そのようなシステムのチルト角、配向、双安定性、または回転粘度については議論しなかった。このように、実際のFLCDへの好適性は実証されていない。Liらは、研究した材料がド・フリース挙動を示したことを、これらの冷却時の層収縮がSmA相からSmC相への相転移によって最小化されただけでなく、SmA相からSmC相に冷却した場合の化合物3および4の両方のファン/ブロークンファン-テクスチャ(fan/broken fan texture)における干渉色の有意な変化から推定されるように複屈折が有意に増加したことを根拠として、指摘している(J.Mater.Chem.,17,2313〜2318,(2007))。
【0016】
当業者であれば、「ド・フリース」様挙動の定義が、材料システムによってさまざまであることを理解するであろう。科学文献を詳細に検討すると、この種の挙動を定義するために用いられる多くの基準があり、全てのシステムを記述することができる「普遍的な」基準が決してないことは明らかである。Giesselmannらの「スメクチック液晶の最近の話題」についての総説(Chem.Phys.,7,20〜45,(2006))では、ド・フリース挙動の最近の概論が示されており、ド・フリース材料が、SmA相からSmC相への相転移における1%未満の相収縮、および、SmA相からSmC相への相転移における10〜20%の光学複屈折の増加を特徴とすることを指摘している。彼は、複屈折の変化が、偏光光学顕微鏡を用いて観察されるような液晶の干渉色における明確な違いによって検出することができることも指摘している。Walbaらは、ド・フリース相の特徴の明確な定義に関しては現実的な意見の一致が全く見られないことを指摘し、多くの特性をリストている(「ディスプレイ用途のためのキラルSmA相材料」、第26回International Dispray Reserch Conference,Sept.18−21,2006,Kent,Ohio)。彼らは、特定の材料が、そのリストから選択された複数の特徴を示し得たことを指摘している。彼らは、フルオロエーテルメソゲンについても議論しており、これらの材料が、別の種類のド・フリース相を示すことを指摘している。このように、ド・フリースの語は、現在、標準的ではないSmA相からSmC相への相転移であるが、最小化された相収縮に加えて広範な特性の組合せを示し得る相転移を定義するために用いられている。
【0017】
Walbaらは、「ド・フリース・スメチクックA相の存在によって、FLC化合物または材料であって、SSFLCデバイスにおいてブックシェルフ配置を形成し、真の双安定スイッチングを示すものの特徴が識別される」ことを指摘している(米国特許第6,870,163号B1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,870,163号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】J.Mater.Chem.,17, 2313-2318 (2007)
【非特許文献2】Chem. Phys., 7, 20-45, (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、双安定な強誘電性ディスプレイに使用可能なオリゴシロキサン液晶材料の配合物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、実用的デバイス用途のためのバランスのとれた特性セットを有するナノ相分離オリゴシロキサン変性液晶配合物を提供することによって、そのニーズを満たす。この液晶配合物は、第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質と、第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質、非液晶オリゴシロキサン変性物質、有機液晶物質、または非液晶物質から選択される少なくとも一つの追加物質とを含む。この液晶配合物は、約15℃から約35℃のSmC温度範囲をもってI→SmA相→SmC相転移を有し、約22.5°±6°または約45°±6°のチルト角を有し、約50nC/cm未満の自発分極を有し、かつ、約600cP未満の回転粘度を有する。
【0022】
本発明の別の態様は、上述した液晶配合物を含むデバイスである。このデバイスは、安定なブックシェルフ配列、双安定なスイッチング、および等温的電場配向、二つの安定状態間をスイッチされたときの500μ秒未満の応答時間、および約30V/μm未満の電気駆動場を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、典型的な双安定液晶セルの横断面図を示す。
【図2A】図2Aは、チルト角の温度依存性を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【図3A】図3Aは、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【図3B】図3Bは、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【図4A】図4Aは、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【図4B】図4Bは、チルト角の温度依存性を示すグラフである。
【図5】図5は、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【図6】図6は、駆動電圧および光透過を時間の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明以前には、高濃度のオリゴシロキサン液晶を含む組成物の配合のための洗練された予測的法則であって、実用的デバイス材料に適合する物理的特性セットを調整する能力を有する法則は、実証されていなかった。本発明は、オリゴシロキサン変性液晶成分を、等方性→SmA→SmC相系列を示す強誘電性液晶組成物の配合に用いて、Si−TFT技術に基づく実用的なデバイスを実現するために利用可能なバランスのとれた特性を得ることの利点を実証する。
【0025】
本特許の主題であるオリゴシロキサン変性液晶は、ナノ相分離液晶というサブクラスの一つの例である。本発明者は、オリゴシロキサン変性液晶配合物の挙動が、そのシロキサンに富む領域の存在によって生じる明確に識別可能な特徴を有するナノ相分離に起因して、従来の液晶の大部分とは基本的に異なっていることを発見した。例えば、採用した本タイプのオリゴシロキサン変性は、おそらくナノ相分離によって、スメクチック相の形成を促進する。さらに、ナノ相分離されたスメクチック層化の影響によって、別のタイプの液晶および非液晶分子を、スメクチック相構造を損失することなしに容易に混合することができる。単一分子で、必要とされる特性セット(特性の組合わせ)を達成することは困難であるため、これらの特徴は重要である。したがって、種々の成分を混合することによって特性を最適化することは、実用的な液晶材料を実現する重要な方法である。ナノ相分離オリゴシロキサン変性液晶によって代表される液晶の群に見られる明確に識別可能な安定化スメクチック相は、本発明の重要な特徴である。本発明では、実用的なFLCデバイスにおいて用いるために強誘電性液晶に必要とされるSmC相構造およびブックシェルフ構造を保持しながら、バランスの良くとれた特性セットを有する実用的組成物を実現するために、戦略的な配合物を採用する。
【0026】
Dow Corning、Crossland、およびColesは、液体等方相SmC相系列を有するナノ相分離したオリゴシロキサンも、ブックシェルフ構造および真の双安定スイッチングを示し得ることを実証した。したがって、この特性セットは、「ド・フリース」材料に特有のものではない。本発明者らは、等方相→SmC相系列材料を配合して、等方相→SmA→SmC相系列材料を製造することができ、本発明の主題であるこれらの材料も、ブックシェルフ構造および真の双安定スイッチングを示し得ることを実証した。したがって、理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、オリゴシロキサン変性液晶の場合、ナノ相分離が、ブックシェルフ構造および真の双安定スイッチングに主として関与すると考える。本発明者らは、分離したSmA相の形成は、オリゴシロキサン変性液相の場合には必須ではないことを明らかにした。本発明者らは、いくつかのオリゴシロキサン変性液晶が、Giesselmanらによって記述された「ド・フリース転移」〔Chem.PHys.,7,20〜45,(2006)〕とは異なる他の特性を示すこと、例えば、i)等方相→SmA→SmC相系列を有するいくつかのオリゴシロキサン変性液晶は、電場を適用した場合であっても、SmA→SmC相転移において特徴的な「明確に識別可能な」変化を示さず、ii)そのような特性セットを有するオリゴシロキサン変性液晶配合物は、ド・フリース挙動の形態、すなわち等方相→SmA→SmC相系列を示す1種以上の成分をベースとする必要がなく、適切な配合によって好ましい特性セットが誘起されうることも実証した。
【0027】
本発明は、ナノ相分離したオリゴシロキサンFLCシステムにおいて、実用的デバイスに必要とされる基本的な材料およびデバイス特性を首尾よく開発する方法を実証する。等方相→SmA→SmC相系列を有する配合物およびそれにより可能となる新規な強誘電性デバイスが、本発明の主題である。全てが有機メソゲンであるものをこの相系列で配合することができるが、本発明は、少なくとも1種のオリゴシロキサン変性液晶を含有する配合物に関する。これらの低分子量液晶は、シロキサン部分-有機部分の複合体であり、ここで、不連続のシロキサンセグメントは、1つまたは複数の有機部分上にABまたはABAの形態(Bはオリゴシロキサンであり、Aは有機である)でグラフトしている。シロキサンはオリゴマーであり、したがって、側鎖液晶ポリシロキサン(SCLCP)、主鎖液晶ポリシロキサン(MCLCP)、または液晶ポリシロキサンエラストマー(LCE)とは、構造および物理的特性の両方で異なる。オリゴシロキサンLCは、安定なスメクチック相と、実際のLCDの作動に必要とされる高度な移動度とを兼ね合わせているため、興味深い。
【0028】
本発明は、少なくとも1種のオリゴシロキサン変性液晶物質を含有する、最適化された強誘電性液晶配合物の設計に関する。このオリゴシロキサン変性液晶物質を、他のオリゴシロキサン変性液晶、有機液晶、非液晶ハイブリッドオリゴシロキサン有機物質、または非液晶有機物質と混合して、最適化された液晶特性を有する配合物を作り出すことができる。この配合物を使用して、SmC相において等温的に電場配向された、真の双安定性を示すFLCデバイスを製造することができる。これらの特徴は、直流バランスをとる目的のために逆フレーム(inverse frame)を用いる必要なしにデジタル・アドレス方式を可能にするのみならず、電場だけを用いて等温的にデバイスを配向または再配向させる能力を有する。後者の特性は、全てが等方相→ネマティック→SmA→SmC相系列物質である組成物の欠点(ゆっくり冷却させることの必要性によって、機械的衝撃または温度逸脱によって引き起こされた損傷をうけた配向を有するデバイスの再配向が、損傷が一旦起こってしまった後では困難となる欠点)を克服する。任意選択により場合によっては、本出願の主題である配合物は、SmC相より下(すなわち、より低温で)の相を示すこともあり、そこでは、電場配向テクスチュアが保持され、デバイスの作動に何ら有意な影響(例えば、デバイスのコントラスト比の減少)を与えることなしに、真に双安定なスイッチングが、SmCに戻す加熱時に観察される。特許請求の範囲に記載した配合物およびデバイス作製方法を用いて作製したデバイスの特性は、オリゴシロキサン変性液晶の特異なナノ相分離構造および配合物中においてこの構造を維持する能力に起因する。この1種以上のオリゴシロキサン変性液晶成分は、例えばX線回折試験によって検出されるナノ相分離したSmC相を誘起するために十分な濃度で常に存在しなければならない。
【0029】
上記配合物は、少なくとも2種の成分を含む。配合物中に、1種以上のオリゴシロキサン変性液晶物質が存在することができる。さらに、配合物中には、1種以上の非液晶オリゴシロキサン変性物質、有機液晶物質、または有機非液晶物質が存在することができる。通常、任意の単一のオリゴシロキサン変性液晶物質が、約95モル%未満の量で存在する。しかし、2種以上のオリゴシロキサン変性液晶物質の合計量が、95モル%を超えていてもよい。オリゴシロキサン変性液晶物質でない成分は、それが存在する場合は、通常、約50モル%未満、または約45モル%未満、または約40モル%未満、または約35モル%未満、または約30モル%未満の量で存在する。反強誘電性オリゴシロキサン変性物質は、好ましくはないが、特性セットを損なわない量で用いることができる。
【0030】
これらの配合物は、光の振幅または位相変調を利用するさまざまなデバイス(以下に限定されないが、透過型ディスプレイ、空間光変調器、および反射モード超小型ディスプレイを含むデバイス)における使用向けに設計される。このようなデバイスは、薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーンを用いて、パッシブマトリクス型アドレッシングまたはアクティブ画素アドレッシングを利用することができ、例えば、パッシブマトリクス液晶デバイス(PMLCD)、またはアクティブマトリクス液晶デバイス(AMLCD)などのデバイスである。本出願では、本発明者は透過モードまたは反射モードで作動しうるAMCLDデバイスの場合に焦点をあてる。しかし、本配合物は、そのようなデバイスでの使用に限定されることを意図してはいない;本配合物は、当業者に周知の他のタイプのデバイスで使用することができる。液晶の配向性を制御するためにTFTを使用する場合には、アモルファスシリコン(a‐Si)、低温多結晶シリコン(LTPS)、または結晶シリコンに基づいていようといまいと、TFTの電荷輸送制限に起因して、容認できる液晶配合物の自発分極(Ps)の大きさに対する制約が課される。低Ps値は、TFTベースアクティブマトリクスの設計を大幅に単純にする。当業者であれば、高Psはディスプレイ設計における自由度の低下、例えば、より低い解像度、より小さいディスプレイサイズ、および潜在的な開口サイズの縮小をもたらし、最終的にはアモルファスSi−TFTの使用が排除されることを承知している。単純化されたバックプレーン電気回路は、大きな開口率(すなわち、より明るいディスプレイ)および低コストを可能にする。
【0031】
本発明の配合物は、アクティブマトリクス・バックプレーン電気光学デバイスに用いられることを可能にする低い自発分極(Ps値)を有するように特に設計される。Ps値が高すぎる場合は、メソゲンの一つの光学状態から他の状態への電場誘導再配向の間に生じる電流フローが、画素電気回路の電流駆動能力に対する妥当な設計空間を越えてしまう。当業者には周知のとおり、Ps値は正または負のいずれかでありえる。値が本明細書で与えられる場合は、その数は正および負の値の両方を意味することを意図している。例えば、10nC/cmのPsは+10nC/cmまたは‐10nC/cmのいずれかを意味する。
【0032】
強誘電性液晶の電気光学応答時間は次の式で決定することができる:
τ∝η/Ps・E
式中、
τ=光学応答が10%から90%に変化するために必要な時間
E=光学的状態の変化を駆動する印加電場
Ps=自発分極
η=回転粘度
【0033】
実際に、応答時間は可能な限り速くなければならず、好ましくは<約500マイクロ秒、または<約250マイクロ秒、または<約100マイクロ秒、または<約75マイクロ秒、または約50マイクロ秒である。配合物のPsの大きさはバックプレーンにより制限され(例えば、<約50nC/cm、または<約40nC/cm、または<約30nC/cm、または<約20nC/cm)、スイッチングのために必要な電場は可能な限り低くなければならない(例えば、<約30V/μm、または<約20V/μm、または<約15V/μm、または<約10V/μm、または<約5V/μm)。冷却時に等方相→SmA→SmC相系列を有するFLC配合物の開発に加えて、低Psシステムのための電場誘起配向時間および電気光学応答時間を最適化するために回転粘度を最小にする必要がある(例えば、<約600cP、または<約400cP、または<約300cP、または<約200cP、または<約100cP、または<約50cP)。チルト角は、典型的には、22.5°±6°、22.5°±4°、もしくは22.5°±2°、または45°±6°、45°±4°、もしくは45°±2°のいずれかである。複屈折は、典型的には、約0.05より大きく、または0.1より大きい。
【0034】
望ましくは、本発明の配合物を用いて作製したデバイスでは、SmC相における液晶配合物のチルト角が、動作温度範囲に亘って±4°より大きく変化しない。この動作温度範囲は、通常SmC範囲の最低温度からSmCからSmAへの相転移温度より5℃低い温度である。動作温度範囲は、典型的には、約15℃〜約30℃、約15℃〜約35℃、約10℃〜約40℃、約0℃〜約45℃、約−20℃〜約55℃、または約−30℃〜75℃である。
【0035】
以前の出願(例えば、クロスランドの出願(国際公開WO2005/019380)およびダウコーニングの出願(PCT/US07/009035))は、単一成分強誘導性液晶を強調している。しかし、その単一成分物質はAMLCDのために最適化されていなかった。実際は、AMLCDでの使用に要求される特性すべてを示す単一分子を設計することは非常に難しい。本発明は、配合方法によってそれら特性を最適化する方法を提供し、この方法はAMLCDに用いるのにより適している。
【0036】
例えば、実際の透過型AMLCDの場合、オリゴシロキサン変性液晶物質に基づく配合物の慎重な設計、および適する基本設計のカスタム設計は、配合物が多くの望ましい特徴を示すことを可能にする。「基本設計」とは、液晶配合物と、基本的なFLC電気光学デバイスを製作するために必要となる、適する基板、配向層技術、電極構造、および分極技術との一体化を意味する。そのようなデバイスは、実在する強誘電性液晶デバイスから、本配合物の組成、その液晶相系列、およびその配向特性の組み合わせによって区別される。AMLCDおよびPMLCDの両方にとって都合のよい特徴として、以下の点が挙げられる。
【0037】
1)幅広いSmC相、したがって、常温にわたる幅広いFLC駆動温度範囲。「幅広い」とは、少なくとも、約15℃から約35℃、および好ましくは約10℃から約40℃、または約0℃から約50℃、または約‐20℃から約60℃、または約‐30℃から約80℃までにわたる範囲を意味する。
【0038】
2)基本設計においてブックシェルフ配列を有する液晶モノドメインまたは準モノドメインの形成を可能にする配向プロセス。この配向プロセスは、配合され、ナノ相分離した等方相→SmA→SmCシステムのSmC相内で、適する電場を等温的に用いて行うことができる。これは、FLCDの従来技術とは異なっている。従来技術では、特定の上の液晶相(具体的には、ネマチック)と、等方相→ネマチック→スメクチックAを通して最終的にSmC相への慎重に制御された冷却プロフィルとが必須である。SmC相を等温的に配向させる能力は、デバイスの配置の際に随意に再配向させることを可能にする。このことは非常に意義がある。なぜなら、当業者は、現行の強誘電性液晶デバイスは、機械的衝撃または温度逸脱に起因して液晶が結晶または等方相になることによって可逆的に配向を失うおそれがあることを理解するからである。
【0039】
3)SmC範囲を最大化し、かつ、SmC相においてデバイスの等温的電場配向を容易にするための比較的狭いSmA相。「狭い」は、約20℃未満、約10℃未満、または約5℃未満の幅を意味する。
【0040】
4)得られたブックシェルフ構造は、デバイスの作動および保管の間安定でなければならない。いくらか劣化が見られる場合は、オリゴシロキサン強誘電性液晶配合物に使用される等温的、電気的配向スキームを、配向を回復させるために用いることができる。多くの従来からのすべての有機FLCは、ブックシェルフまたは擬ブックシェルフ配列を主張していたが、それらの構造はデバイス内での配置に対して十分には安定ではない。本明細書において特許請求の範囲に記載のブックシェルフ構造は、基本設計内での統合的な安定性を向上させた。本発明者は、コールズ、クロスランド、およびダウコーニングにより単一成分システムについて記述されたとおりの、ナノ相分離オリゴシロキサン変性液晶分子によって可能となる効果が、適切に配合されたシステムにおいて保たれ得ることを発見した。二重のセグメントホストのナノ相分離ブックシェルフ構造が、その構造を安定化する。キヤノンによって記述された固定機構は、ナノ相分離オリゴシロキサン変性液晶システムには必要とされず、また本発明者らはABA(すなわち、ビ−メソゲン)種を含有しないシステムにおいて真の双安定性を達成する能力を立証している。それ故に、キヤノンによって用いられたトリ−セグメント(ABA)分子は、本明細書において記述した配合物の安定化には必要とされない。しかし、所望する場合には、トリ−セグメント分子を、本発明においてSmC温度範囲を広げるのに用いることができる。本発明の主題である本配合物は、SmA→SmC相転移での相収縮の影響を最小化するようにも設計され、したがって、層のゆがみおよびジグザグ欠陥を形成するメカニズムが排除される。例えば、本オリゴシロキサン配合物は、通常みられない特性の組合せ、例えば、X線によって検出されるスメクチック層間隔の変化が限定されており、かつ、SmA→SmC相転移での複屈折の変化が非常に小さいという特性を示す。従来の有機FLCDの潜在的欠陥モードは、FLC物質が低温で、例えば保管または出荷中に、結晶化することが可能とされる場合に、配向が喪失することである。本発明者らは、結晶化しない配合物を開発できることを立証した。これらの配合物はSmC相の下に幅広いSmX相を有する。このSmX相は、その相中では、本明細書で定義した条件下で電気光学スイッチングが止まるが、ブックシェルフ構造のマクロスコピックな分子配向が低温で保持される非晶質相として定義される。このデバイスは、このSmX相では作動しないが、駆動温度範囲に戻された場合には再び作動するようになる。
【0041】
5)配向の質および均一性は、デバイスの高コントラスト比およびアクティブ領域全体にわたる双安定性の実現を可能にするために十分でなければならない。「高コントラスト」とは、同等の条件下で試験された、市販の有機の等方相→ネマチック→SmA→SmC相系列の配合物と同一またはそれより優れていることを意味する。
【0042】
6)SmC相のチルト角は、偏光子をベースとする電気光学デバイスの効率的作動のために、特定値に調整されなければならない。例えば、透過型デバイスの例では、最適チルト角は22.5度±6度、22.5度±4度、または22.5度±2度である。さらに、チルト角は、デバイスの駆動温度範囲内で、あまりにも劇的に変化してはならない。ある範囲のチルト角を有する配合物を設計する能力も有利である;例えば、45度±6度、45度±4度、または45度±2度のチルト角を有する配合物は、位相変調デバイス用としても用いることもできる。驚くべきことに、表2にリストした縦方向の双極子を有する添加剤を用いて、スイッチングに横方向の双極子を利用する媒体のチルト角を、電場配向または電気光学スイッチングプロセスを損なうことなく調整することができる。
【0043】
7)低Psの必要性もまた上で言及されている。低Psは、市販のLCDにおいて現在利用されているようなTFTをベースとするアクティブマトリクスバックプレーン技術の要求事項であるが、電場配向プロトコルを用い、常温または常温付近で、粘性なスメクチック相中においてその配向に取り組むデバイスに対して、大きな難題を負わせている。配向プロセスに加えて、低Psは、固定した温度および駆動場において液晶デバイスの応答時間にマイナスの影響を与え得る。
【0044】
8)デジタルモードデバイスについては、真の双安定性が必要条件である。「真の双安定性」とは、スイッチング場の除去後のいくらかの時間、特定の許容範囲内での光信号の保持を意味する。許容範囲の例は、光信号が約20%超えて、または10%を超えて、または5%を超えて低下してはならないということである。平坦域の値への短時間緩和は許容し得るが、光透過の継続的低下は許容されない。許容時間は用途により、且つ駆動アーキテクチャによって決定され、分からミリ秒までの範囲であり得る。
【0045】
9)配合物の複屈折は、基本設計、すなわちAMLCD設計に基づいて最適化されていなければならない。複屈折は、典型的には、約0.05よりも大きく、あるいは、約0.1よりも大きい。複屈折は、駆動温度範囲にわたって大きく変化するべきではなく、例えば、駆動温度範囲の下限温度と、SmC→SmA相転移点より約5℃低い温度との間における複屈折の変化は、約100ppm/℃未満、または約50ppm/℃未満である。
【0046】
10)本発明者らの経験では、偏光光学顕微鏡によって検出されるファン/ブロークンファン-テクスチャにおける干渉色の有意な変化から予測される、SmAからSmCへの相転移による冷却時の複屈折の有意な増加(有意性は、Giesselmannによって定義されているとおりである)を示さない配合物が、デバイスの製造に好ましい。
【0047】
上述により定義した制約内で機能する配合物が設計される場合には、実用的なFLCデバイスを開発することができる。前述したように、有機物質に基づく有機FLCシステムについては、かなり多数の配合経験が存在する一方で、そのような情報は、本オリゴシロキサンベースのFLC配合物に直接移行させることができない。これは、以下の影響が組み合わされているためである:i)本明細書が包含するオリゴシロキサンベースのシステムが示すナノ相分離構造の、構造上の複雑性が高いこと;ii)有機FLCの大多数に対して、特定の相系列、すなわち有機システムに対する、等方相→ネマチック→SmA→SmC相系列が利用されていること;iii)オリゴシロキサンベースの配合物において、Psおよびチルト角の低下温度依存性を観測可能であること;iv)オリゴシロキサンベースの配合物の電場配向および層回転の特性;v)オリゴシロキサンベースの配合物の真の双安定性;vi)ナノ相分離システムにおいてチルト角を調整する能力;vii)低温において、好ましい分子配向の崩壊を避けることができるサブ‐SmC相特性を設計することができること;および、viii)オリゴシロキサン変性強誘電性液晶配合物中で、ネマチック相の形成を抑制することができること、例えば、4‐n‐ペンチル‐4’‐シアノビフェニル(表1の化合物C5)またはFelix 15/000(表1の化合物C8)がスメクチック・オリゴシロキサンシステムに添加した場合。
【0048】
一つの方法は、等方相→SmA→SmC→結晶、または好ましくは等方相→SmA→SmC→SmX相系列を有する配合物を設計することである。本発明者らは、上記相系列を有する配合物を開発するために、幅広い相挙動を有する物質を用いることができることを発見した。これらだけに限定されないが、以下のタイプから選択される相系列を有する物質を配合物に用いることができる:i)等方相→SmC;ii)等方相→SmC;iii)等方相→SmA→SmC;iv)等方相→SmA→SmC;v)等方相→SmA;vi)等方相→ネマチック;vii)モノトロピック液晶相;viii)非液晶物質;など。配合物に用いられる物質すべてが官能化オリゴシロキサンである必要はないが、但し、配合物中に、ナノ相分離構造を維持するために十分なオリゴシロキサン変性物質が存在することを条件とする。
【0049】
本発明の一つの実施態様では、等方相→SmA→SmC相系列のオリゴシロキサン液晶の特性を、以下の方法で調整する:
1)分子間相互作用を低減するために芳香族コアを選択し、それによって最終配合物の回転粘度を低くする。
2)芳香族コアをシロキサンから引き離する炭化水素鎖を選択し、オリゴシロキサンからの最適に分離させるとともに、低領域(low regime)(約22.5度)または高領域(約45度)のチルト角を得る。
3)可能な限り短いオリゴシロキサンを選択して、最大限の可能な複屈折を得るとともに、必要とされる相特性を維持する。
4)それ自体はチルト相を示さないスメクチックA物質を添加して、配合物中にSmA相を誘発することなく、あるいはSmC相において配合物の電場配向を有意に損なうことなく、配合物の有効チルト角を下げることができる。
5)低い全体のPs値を実現するためにいくつかのアプローチをとることができる。例えば、本質的に低Psのメソゲン種を作ることができ、アキラルおよびキラル種を配合してPsを設定することができ、あるいは、相反する光学活性を有する物質を配合してPsを調整することができる。
【0050】
本発明者らの研究により、このような配合物の選択および最適化には、さまざまな成分の効果のバランスをとることが含まれることが明らかとなった。例えば、チルト角を小さくするのに有効な添加剤は、回転粘度を下げるには効果がないかもしれず、あるいはサンプルの配向を妨げるかもしれない。
【0051】
好適な配合物の製造に用いられるオリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質には、これらだけに限定されないが、以下に示す構造が含まれる。オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質は、AB(二つのセグメント付加物)、ABA(三つのセグメント付加物、LCダイマーとしても知られている)(式中、B=シロキサンセグメント、およびA=芳香族液晶コアである)として定義することができることに注意されたい。ABA’構造として定義することもできる(ここでAおよびA’は同一基ではなく、非対称構造が導かれる)。
【0052】
I)ナノ相分離スメクチック相を作り出すために用いることができる成分(一般的構造)
配合物中にナノ相分離スメクチック相を作り出すために用いることができるオリゴシロキサン変性液晶物質のなかには、フェニルベンゾアート類ならびにビフェニル類、テルフェニル類、およびフェニルピリミジン類がある。好適な材料の例を以下に示す。
【0053】
1)フェニルベンゾアート類およびビフェニル類
一つのクラスの化合物は次式を有する:
【0054】
【化1】

【0055】
〔上記式中、a=0または1;m=1または2;s=1または2;q=0または1;b=0または1;i=0〜4;T=O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCF;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;かつ、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
上記式中、Aは
【0056】
【化2】

であり、
Aを表す式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはW基であり、
ここで、Wは
【0057】
【化3】

であり、
【0058】
Wを表す式中、n=3〜15;a=0または1;m=1または2;s=1または2;q=0または1;b=0または1;i=0〜4;Tは、O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCFであり;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Qは、O、COO、またはOCOであり;かつ、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、ここで個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
【0059】
Xで表されるアルキルおよび置換アルキル基は、典型的には、2〜20個の炭素原子を有する。置換アルキル基は、以下の基の1個以上で置換され得る:さらなるアルキル基、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CF、またはOCF
【0060】
2)テルフェニル類
別のクラスの好適な化合物は、下記式:
【化4】

を有するテルフェニル類である。
【0061】
〔上記式中、a=0または1;b=0または1;Lは、独立に、H、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
上記式中、Aは
【0062】
【化5】

であり、
Aを表す式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または本明細書の他の箇所で定義するW’’もしくはW、またはW’のうちの一つであり、
W’は
【0063】
【化6】

であり、
W’を表す式中、n=3〜15;a=0または1;b=0または1;Lは、独立に、H、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;かつ、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
【0064】
Xで表されるアルキルおよび置換アルキル基は、典型的には、2〜20個の炭素原子を有する。置換アルキルは1、個以上の以下の基で置換され得る:さらなるアルキル基、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CFまたはOCF
【0065】
3)フェニルピリミジン類
その他のクラスの好適な化合物は、下記式を有するフェニル(またはビフェニル)ピリミジン類である:
【0066】
タイプ1
【化7】

【0067】
タイプ2
【化8】

【0068】
〔上記式中、a=0または1;p=0、1または2;k=0、1または2;f=0または1;h=0または1;c=0または1;i=0〜4;ただし、f=0である場合はc=0であり;ただし、a=0である場合はh=0であり;Yは、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFであり;
上記式中、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
上記式中、Vは
【0069】
【化9】

であり、
Vを表す式中、n=3〜15;d=1〜5;かつ、R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または本明細書の他の箇所で定義するWもしくはW’、もしくはW’’のうちのうちの一つであり、
ここで、W’’は次の群の一つから選択されて、対称または非対称の二量体添加剤を作る:
【0070】
【化10】

W’’を表す上記式中、n=3〜15;g=0または1;p=0、1または2;kは0、1または2であり;i=0〜4;tは0または1であり;u=0または1;ただし、t=0の場合はu=0であることを条件とし;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;Eは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
【0071】
XおよびEで表されるアルキルおよび置換アルキル基は、典型的には、2〜20個の炭素原子を有する。置換アルキルは1個以上の以下の基で置換され得る:さらなるアルキル基、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CFまたはOCF
【0072】
II)ナノ相分離スメクチック相(一般的構造)の特性を調整するために用いることができる成分
以下のクラスの物質は、上で示したオリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質を含有する配合物への添加剤として有用である。
【0073】
【化11】

〔上記式中、e=0または1;Gは、H、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CH、CF、またはOCFであり;
Mは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただしこの液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし、あるいは、Mは、下記の基:
【0074】
【化12】

であり、
Mを表す上記式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはZであり、
ここで、Zは、
【0075】
【化13】

であり、
Zを表す式中、n=3〜15;e=0または1;Gは、H、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CH、CF、またはOCFである。〕
【0076】
Mで表されるアルキルおよび置換アルキル基は、典型的には、2〜20個の炭素原子を有する。置換アルキルは、1個以上の以下の基で置換され得る:さらなるアルキル基、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CFまたはOCF
【0077】
以下のクラスの物質を、添加剤として用いることもできる。
【化14】

【0078】
〔上記式中、r=0または1;p=0、1、または2;v=0、1、または2;xは0または1であることができ;q=0または1;i=0〜4であり;ただし、r=0の場合はx=0であることを条件とし;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;JおよびJ’は、独立に、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルから選択され、ここで個々のキラル基はラセミまたは非ラセミでもあることができ、ただし液晶配合物が非ラセミとなることを確実にするように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
【0079】
JおよびJ’で表されるアルキルおよび置換アルキル基は、典型的には、2〜20個の炭素原子を有する。置換アルキルは、1個以上の以下の基で置換され得る:さらなるアルキル基、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CFまたはOCF
【0080】
オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶成分がアキラルである場合は、液晶配合物中にキラリティーを生じさせるために有機キラル分子を用いることもできる。
【実施例】
【0081】
配合物の実施例
液晶分子(メソゲン)は、通常は複雑な混合物中に配合される。このような配合物は、単一の分子からは実現が難しいか、不可能でさえあろう特性セット(特性の組合わせ)を実現可能にする。クロスランドの特許出願(国際公開番号WO2005/019380)およびダウコーニングの特許出願(PCT/US07/009035)は、電場配向および双安定スイッチングを示す単一成分システムを確認した;しかし、そのような分子は、それらが幅広い温度で用いられ且つアクティブ・マトリクス・バックプレーンデバイスに用いられる場合には配合を必要とする。オリゴシロキサン変性液晶に基づく配合されたシステムの開発は、このような物質の特異なミクロ相分離した性質によって複雑化される。以下に示す実施例は、相系列、SmC相の温度範囲、自発分極(Ps)、およびチルト角を、このようなシステムでどのように制御するかを明らかにする。このような材料の配合は、有機FLCの例から推定することはできない。なぜなら、有機FLCシステムには存在しないナノ相分離オリゴシロキサン領域が、バルク配合物の特性およびそれから作製されるデバイスの電気光学特性の制御において重要な役割を果たすからである。
【0082】
さまざまな配合物に用いた成分の化学構造を、表1に示す。配合物およびそれらの特性を、表3〜5に示す。表2に、チルト角調整に用いたシアノビフェニル系物質の相挙動を示す。表3に、オリゴシロキサン変性テルフェニルメソゲンと、有機シアノビフェニルメソゲンおよび有機FLC配合物とに基づく二成分配合物の例についてのデータを示す。表4に、オリゴシロキサン変性テルフェニルメソゲンおよびシアノビフェニルメソゲンに基づく二成分配合物の例を示す。表5に、オリゴシロキサン変性フェニルピリミジンと、さまざまなキラル・オリゴシロキサン変性ドーパントとを含有する配合物の例を示す。
【0083】
容器に成分を秤量し、次いで、等方相を形成させるために、最も高い転移温度(液晶から等方相への転移温度)(あるいは、非液晶成分の場合には融点)を有する成分の透明化温度(あるいは融点)よりも、約10℃上の温度に容器を加熱することによって、配合物を調製した。サンプルをこの温度で約5〜10分間保持かつ混合し、次いで、常温に放冷した。すべての組成物は、別段の指定をしない限り、それぞれの成分のモルパーセントで示す。配合物について、最初に、示差走査熱量計(DSC)を使用して特性解析を行なった。DSC試験の温度範囲は、配合物の透明相転移温度が100℃を超えない限り、典型的には、−40℃〜120℃であった(100℃を超える場合には、上限温度を高くした)。未使用サンプルを等方相に加熱し(加熱♯1)、その後−40℃に冷却し(冷却♯1)、その後等方相に加熱して戻し(加熱♯2)、次に−40℃に冷却し戻し(冷却♯2)、その後等方相に加熱し戻し(加熱♯3)、次に室温に冷やして戻した(冷却♯3)。加熱♯2と♯3を用い、各転移に対するピーク温度を選択することによって、相転移温度を決めた。存在する液晶相のタイプ(型)を分類するために、偏光光学顕微鏡およびプログラム可能なホットステージシステムを用いる熱光学分析を行なった。Psを測定するための最近の反転法(Miyasatoら、Japan Journal Applied Physics,22,L661(1983)に記載されている)を用いて、SmC相の存在を確認し、かつ、SmCの転移温度境界を特定した。熱光学および電気光学測定は、ITOガラス基板を用い、スペーサービーズでセパレートし、接着剤で端部をシールして組み立てた単一画素デバイスで行った。ラビングしたポリイミド配向層をこのデバイスに用いた。図1を参照されたい。
【0084】
図1は、配合物を試験するために用いた典型的な双安定性液晶セルの構造を示す。液晶配合物17を、2枚の基板10、11の間に配置する。基板は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、シリコン、有機ポリマー、または無機ポリマーなどで作製することができる。基板の一つまたは両方を、デバイスの種類次第で、透明とすることができる。
【0085】
基板10、11の内表面は、電極12、13、例えば、アルミニウムまたはインジウムスズ酸化物(ITO)を有し、この電極は選択した領域に適用することができる。1個の電極が各基板上に存在するか、あるいは、両方の電極が基板のうちの一方の上に存在しうるが、一対の電極だけが必要とされる。電極の1個または両方は、デバイス次第で透明であってよい。あるいは、電気光学効果を制御可能にする、フリンジ電場を与える電極を存在させることもできる。電極の内表面は、所望する場合は、不動態化(パッシベーション)層で被覆することもできる。
【0086】
電場配向、層配向、およびSmC相のスイッチングを容易にするために、(液晶物質に隣接する)電極の内表面、あるいはフリンジ電場デバイスの場合には基板の内表面を、配向層14、15で被覆する。この配向層は、有機コーティングであっても、無機コーティングであってもよい。適する配向層としては、以下に限定されないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、酸化ケイ素、シラン、およびポリシランが挙げられる。配向層物質の的確な選択およびその製造条件は、良好な配向および双安定性を実現するために重要であるが、的確な選択は配合物の組成に左右される。好ましい物質としては、約3°未満のプレチルト角を有するポリイミドが挙げられる;しかし他の物質を用いることもできる。用いることのできる物質の例として、日産化学工業株式会社からSE130、SE1410、SE8292、およびRN1199の表示で販売されているポリイミドが挙げられる。配向層は、当技術分野で既知の任意の方法で形成することができ、その方法としては、以下に限定されないが、ラビング、延伸、堆積、およびエンボス加工が挙げられる。配向層は、モノドメイン(すなわち「ブックシェルフ」)を形成させ、かつ、双安定なスイッチングを観測可能にするために役立つ。均一な配向および双安定性を達成するために、配向層の厚さは、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、または25nm未満であるべきである。
【0087】
スペーサー16は、基板10、11を隔てさせ、かつ、セル厚を決定する。シーリング層18を用いて、セル内に液晶材料を保持する。本発明の液晶電気光学デバイスは、典型的には、0.5ミクロンから10ミクロンの範囲となるように設計されたセルギャップを有する。
【0088】
積層させたデバイスを、互いの光軸が90度に配置された偏光子19、20の間に置くことができ、液晶が二つの状態間でスイッチされると明状態または暗状態を生じる。図1に記載したデバイスは透過モードデバイスである。当業者に公知の、代替的な偏光子配置を、透過モードおよび反射モードデバイスのために用いることができる。
【0089】
【表2A】

【表2B】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
[実施例1]:
I→SmC相系列ナノ相分離オリゴシロキサン変性物質は、チルト角の低い温度依存性を有する。しかし、チルト角の大きさは、実際のデバイスの製造の際にも重要である。この実施例では、アキラルI→SmA物質を、チルト角の大きさを調整するために用いると、不連続なSmA相が導入され、その結果チルト角の温度依存性がさらに比較的低くなることを明らかにする。
【0095】
I→SmC相系列を有する化合物C1を、I→SmA→Cr相系列を有する化合物C6と種々の割合で混合した。C6がSmC相を有さないため、ド・フリースSmA物質の何らかの形態が形成されることは考えられない。C6はまた、強誘電スイッチングによって示唆されるとおりの強い横方向双極子挙動が存在するC1とは異なって、シアノ-ビフェニル構造に起因する強い縦方向双極子を有する。ブレンドにおいて、縦方向の双極子分枝を添加した状態でもSmC相が保持されることは、オリゴシロキサン変性液晶による強いスメクチック構造の増強を反映している。さまざまな量のC6を用いた数種の配合物を調製した。C6はSmA相のみを示すにもかかわらず、全ての配合物が、SmC相を示した。さらに、全ての配合物が、SmC相の下にSmX相を示した。
【0096】
【表7】

【0097】
これらの配合物のチルト角を、図1に示した13mm×16mm液晶セルで測定した。液晶試験用セルは、以下の方法で作製した:ITOコーティングを、形成される電極のそれぞれについてコンタクトパッドを有する5mm×5mmの活性化領域で光パターン化した。このITOコーティングされたガラスは、ガラス基板とITOコーティングとの間にSiOコーティングを有し、ITOのシート抵抗は100オーム/スクエアであった。指定した配向剤を約25nmの厚さにスピンコートし、硬化させ、その後ラビングして、配向層を形成させた。所望のサイズのスペーサーを、約2%(質量)量で紫外線硬化性シーラントと混合し、これを一方の基板上のセルの2つの端部に、配向層の上面に適用した。これを、シーラントの適用なしに別の基板と、配向層どうしが内側を向き且つ逆平行ラビング配向となるようにラミネートした。二つの基板は13mm×13mmの基板の重なりおよび5mm×5mmの対向する電極を有し、かつ電源接続用コンタクトパッドを有する二つの反対方向の3mm出っ張りを有するように、ねじれた形態に組み立てた。この組立品を、真空プレスを使用して圧縮し、紫外線光源を照射して、シーラントを硬化させた。
【0098】
配向層としてのナイロン(登録商標)と3μmのスペーサーとを用いて作製したセルに、前述の配合物を充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。次いで、そのポートを紫外線硬化性シーラントでシールし、電場を液晶配合物の全域に適用するための相対するITO電極のためのコンタクトパッドに、はんだ付けによってワイヤーを取り付けた。
【0099】
充填されたデバイスを、SmC相の上限の直ぐ下の温度で800Hz10V/μm方形波を適用して処理することにより、均一な配向を生じさせた。次いで、このデバイスを、40℃で特性解析し、C6の量を増加すると、チルト角が低下することを見出し、C6のチルト角調整挙動を実証した。さらに、配合物10(C1:C6=75:25)についてチルト角依存性が見られ、SmC相内で5°(±2.5°)以内の偏差を有する良好な安定性が示された。図2aに、配合物10の温度依存性を、親化合物C1および市販の有機FLC配合物C8(Felix 015/000)の温度依存性と共に示す。図2aは、この有機配合物と比較して優れている配合物10の温度安定性を実証している。
【0100】
これらのデバイスは、良好な双安定性を示すことも見出された。図2bに、67m秒のパルス間遅延時間を有する10V/μm670μ秒の幅広い両極性パルスでデバイスを駆動した場合の、75:25配合物についての例を示す。
【0101】
[実施例2]:
化合物C1と、化合物C3、C4、またはC5とをさまざまな比率で混合した。C3、C4、およびC5の相系列は、上記表2に示しており、いずれもSmC相を示さないため、これらはド・フリースSmA物質の形態ではない。これらの配合物はいずれも、スメクチック相、基本的にSmC相を形成する強い傾向を示した。このことは、Si−FLCの強いナノ相分離挙動を暗示している。
【0102】
各配合物を、実施例1で記述したとおりに、液晶試験用セルに充填した。40℃にてチルト角を測定し、下記表に記載した。有機SmA化合物が、C1とのブレンドにおいて、チルト角について類似した影響を示したのに対し、シロキサン変性等価体(化合物C6)は、チルト角への影響がより強かった(下記表に記載した)。再び、オリゴシロキサン変性液晶が、増強されたスメクチック構造安定性を示した。しかし、有機化合物の組成範囲は、さらなる添加が配合物のスメクチックC範囲を狭くするため、制限される。
【0103】
【表8】

【0104】
[実施例3]:
I→SmC相挙動を有する化合物C1と、I→N→SmA→SmC相系列を示す化合物C8〔市販のFelix 015/000(AZ Electronic Materials社から入手可能)〕とを、さまざまな比率で混合した。配合物の相系列は、C8含量が25質量%を超える場合には、I→SmA→SmCであり、C8含量が25質量%未満である場合には、I→SmC挙動を示した。ニート(neat)のC8を含有するデバイスは、配向させると、SmA→SmC相転移時の層収縮を示すジグザグ欠陥を示し、ド・フリースSmA物質の形成が全くないことを示唆した。したがって、これらの配合物はいずれも、ド・フリース成分のいかなる形態も含まない。
【0105】
【表9】

【0106】
予測したとおり、C8では、双安定性が観測されないことが、図3aに示すように、電場を除去した後で透過性プロファイルが継続して減衰することによって実証された。一方、I→SmA→SmC相系列を有する配合物12(C1:C8の質量比は、62.5:37.5である)は、パルス間の遅延時間19秒を有する200μ秒の幅の10V/μm両極性パルスを適用した場合に、良好な双安定性を示した(図3b)。このことは、オリゴシロキサンFLC配合物が、ド・フリース・スメチックA挙動の何らかの形態を示す成分を何ら含むことなく、双安定性を示すことを実証している。
【0107】
[実施例4]:
オリゴシロキサン液晶組成物である配合物17を、以下の化合物を下記表に示した組成で混合することによって調製した。得られた配合物は、表4に示したとおりの相系列を有し、SmC範囲が17℃〜61℃の間にわたって拡がっていることを特徴としている。
【0108】
【表10】

【0109】
実施例1に記載したとおりに、配合物17をセルに充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。デバイスを等方相で充填し、次いで、SmC相に冷却した。この際、デバイスを、30Hz 13V/μmの方形波の適用によって等温的に配向させた結果、35:1のコントラスト比を有する均一な配向の形成がもたらされた。市販の有機強誘電液晶材料C8(Felix 015/000)は、同じコントラスト比測定条件で26:1のコントラスト比を示した。次いで、配合物17を含有するこのデバイスを、40℃で特性解析し、電圧印加から90%透過までの応答時間が75μ秒であり、27nC/cmのPsを示すことがわかった。このデバイスは、10m秒のパルス間遅延時間を有する200μ秒幅の5.6V/μm両極性パルスで駆動した場合に、90%を超えるシグナルが維持される良好な双安定性を示した(図4a)。チルト角は、21.5°であることが測定され、25℃〜55℃の間の変化が±2.5°以内であることがわかり、チルト角の良好な温度安定性が示された(図4b)。
【0110】
[実施例5]:
オリゴシロキサン液晶組成物である配合物19を、以下の化合物を下記表に示した組成で混合することによって調製した。得られた配合物は、表4に示したとおりの相系列を有し、SmC範囲が16℃〜62℃の間にわたって拡がっていることを特徴としている。
【0111】
【表11】

【0112】
実施例1に記載したとおりに、配合物19をセルに充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。デバイスを等方相で充填し、次いで、SmC相に冷却した。この際、デバイスを、17Hz 10V/μmの方形波の適用によって等温的に配向させた結果、数分以内に、11:1のコントラスト比を有する均一な配向の形成がもたらされた。次いで、このデバイスを、40℃で特性解析し、電圧印加から90%透過までの応答時間が64μ秒であり、20nC/cmのPsを示すことがわかった。チルト角は、20°であった。
【0113】
このデバイスを、サブ-SmC温度に冷却したところ、強誘電スイッチングが停止した。次いで、このデバイスを、40°に再び加熱すると、コントラスト比が11:1であることが観測され、SmC相の保持が確認された。
【0114】
[実施例6]:
オリゴシロキサン液晶組成物である配合物20を、以下の化合物を下記表に示した組成で混合することによって調製した。得られた配合物は、表4に示したとおりの相系列を有し、SmC範囲が24℃〜76℃の間にわたって拡がっていることを特徴としている。
【0115】
【表12】

【0116】
ポリイミド配向層を用いた以外は実施例1に記載したとおりにして、配合物20をセルに充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。デバイスを等方相で充填し、次いで、SmC相に冷却した。この際、デバイスを、380Hz 26V/μmの方形波の適用によって等温的に配向させた結果、69:1の非常に優れたコントラスト比を有する均一な配向の形成がもたらされた。次いで、このデバイスを、40℃で特性解析し、電圧印加から90%透過までの応答時間が69μ秒であり、30nC/cmのPsを示すことがわかった。10V/μm 200μ秒のパルスで駆動した場合に、20分後のシグナル保持率が95%より高い良好な双安定性が達成された(図5)。
【0117】
このデバイスを、SmC相より低い温度に冷却したところ、強誘電スイッチングが停止した。次いで、このデバイスを、40°に再び加熱すると、SmC相の低温堅牢性が確認された。コントラスト比が69:1であることが観測され、暗状態および明状態の透過性に実質的な変化が全くなく、非常に優れた配向安定性が明らかとなった。
【0118】
[実施例7]:
オリゴシロキサン液晶組成物である配合物26を、以下の化合物を下記表に示した組成で混合することによって調製した。得られた配合物は、表5に示したとおりの相系列を有し、SmC範囲が−30℃〜47℃の間にわたって拡がっていることを特徴としている。
【0119】
【表13】

【0120】
ポリイミド配向層を用いた以外は実施例1に記載したとおりにして、配合物26をセルに充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。充填したデバイスを、周囲温度にて30Hz 10V/μmの方形波を適用にすることによって処理した結果、なめらかな暗状態テクスチュアを有し、62:1の高いコントラスト比を有する均一な配向の形成がもたらされた。このデバイスを、25℃で特性解析し、電圧印加から90%透過までの応答時間が125μ秒であり、15nC/cmのPsを示し、25°のチルト角を有することがわかった。このデバイスは、一方の状態についてはわずかしか緩和せず、他方の状態については、23m秒のパルス間遅延時間および230μ秒の幅を有する10V/μmの両極性パルス(図6)で駆動した場合に非常に優れた双安定性を示す、合理的な双極性を示した。
【0121】
このデバイスを、サブ-SmC相に冷却したところ、強誘電スイッチングが停止した。次いで、このデバイスを、25°に再び加熱して、冷却時の配向性の保持をチェックした。コントラスト比が60:1であることが観測され、配向したSmCの配向の堅牢性が示された。
【0122】
[実施例8]:
オリゴシロキサン液晶組成物である配合物28を、以下の化合物を下記表に示した組成で混合することによって調製した。得られた配合物は、表5に示したとおりの相系列を有し、SmC範囲が−25℃〜48℃の間にわたって拡がっていることを特徴としている。
【0123】
【表14】

【0124】
ポリイミド配向層を用いた以外は実施例1に記載したとおりにして、配合物28をセルに充填することによって、透過型液晶デバイスを作製した。充填したデバイスを、周囲温度に保って30Hz 10V/μmの方形波を適用することによって処理した結果、50:1の高いコントラスト比を有する均一な配向の形成がもたらされた。このデバイスを、25℃で特性解析し、電圧印加から90%透過までの応答時間が85μ秒であり、11nC/cmのPsを示し、23°のチルト角を有することがわかった。
【0125】
本発明を説明する目的で、特定の代表的態様及び詳細を示したが、添付した特許請求の範囲で定義した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質約95モル%未満;および
第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質、非液晶オリゴシロキサン変性物質、有機液晶物質、または非液晶物質から選択される少なくとも一つの追加物質、
を含む液晶配合物であって、
前記液晶配合物が、約15℃〜約35℃のSmC温度範囲を有するI→SmA→SmC相転移を有し、約22.5°±6°または約45°±6°のチルト角を有し、約50nC/cm未満の自発分極を有し、かつ約600cP未満の回転粘度を有する、液晶配合物。
【請求項2】
前記第一または第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質の1つ以上が、フェニルベンゾアート類、ビフェニル類、テルフェニル類、フェニルピリミジン類、またはビフェニルピリミジン類である、請求項1記載の液晶配合物。
【請求項3】
前記第一または第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質の1つ以上が下記式:
【化1】

または
【化2】

〔上記式中、a=0または1;p=0、1または2;k=0、1または2;f=0または1;h=0または1;i=0〜4;c=0または1;ただし、f=0の場合はc=0であることを条件とし;ただし、a=0の場合はh=0であることを条件とし;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;
上記式中、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし、本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
上記式中、Vは
【化3】

であり、
Vを示す式中、n=3〜15;d=1〜5;かつR’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、またはW、W’、もしくはW’’のうちの一つであり、
Wは
【化4】

であり、
Wを示す式中、n’=3〜15;a’=0または1;m=1または2;s=1または2;q=0または1;b=0または1;i’=0〜4;T=O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCF;Y’は、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;かつ、X’は、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
W’は
【化5】

であり、
W’を示す式中、n’’=3〜15;a’’=0または1;b’=0または1;Lは、独立に、水素、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q’=O、COO、またはOCOであり、;かつ、X’’は、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;かつ、
W’’は
【化6】

のうちの1つであり、
W’’を示す式中、n’’’=3〜15;g=0または1;p’=0、1または2;k’は0、1または2であり;i’’=0〜4;tは0または1であり;u=0または1;ただし、t=0の場合はu=0であることを条件とし;Y’’は、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;Eは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
を有するフェニルピリミジン類である、請求項1または2に記載の液晶配合物。
【請求項4】
前記第一または第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質の1つ以上が下記式:
【化7】

〔上記式中、a=0または1;b=0または1;Lは、独立に、H、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
式中、Aは
【化8】

であり、
Aを示す式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、またはW、W’、またはW’’のうちの一つであり、
Wは
【化9】

であり、
Wを表す式中、n’=3〜15;a’=0または1;m=1または2;s=1または2;q=0または1;b’=0または1;i=1〜4;T=O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCFであり;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q’=O、COO、またはOCOであり;かつ、X’は、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
W’は
【化10】

であり、
W’を表す式中、n’’=3〜15;a’’=0または1;b’’=0または1;L’は、独立に、H、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;式中Q’’=O、COO、またはOCOであり;かつ、X’’は、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;かつ、
W’’は
【化11】

のうちの1つであり、
W’’を表す式中、n’’’=3〜15;g=0または1;p=0、1または2;kは0、1または2であり;i’=0〜4;tは0または1であり;u=0または1;ただし、t=0の場合はu=0であることを条件とし;Y’は、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;Eは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
を有するテルフェニル類である、請求項1〜3のいずれか一項記載の液晶配合物。
【請求項5】
前記第一または第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質の1つ以上が下記式:
【化12】

〔上記式中、a=0または1;m=1または2;s=1または2;q=0または1;b=0または1;i=0〜4;T=O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCFであり;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q=O、COO、またはOCOであり;かつ、Xは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;
Aは
【化13】

であり、
Aを表す式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはW基であり、
Wは
【化14】

であり、
Wを表す式中、n’=3〜15;a’=0または1;m’=1または2;s’=1または2;q’=0または1;b’=0または1;i’=0〜4;T’=O、COO、OCO、CH=N、N=CH、CFO、OCF、NHCO、CONH、CH、CHCH、C≡C、−CH=CH−、またはCFCFであり;Y’は、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、OCFから選択され;Q’=O、COO、またはOCOであり;かつ、X’は、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とする。〕
を有するフェニルベンゾアート類またはビフェニル類である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項6】
前記追加物質が下記式:
【化15】

〔上記式中、e=0または1;Gは、H、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CH、CF、またはOCFであり;Mは、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルであり、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなるように個々のキラル基が選択されることを条件とし;または、Mは、下記の基:
【化16】

であり、
Mを表す上記式中、n=3〜15;d=1〜5;R’およびR’’は、独立に、C(2r+1)(r=1〜4)またはフェニル基から選択され;
Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、またはZであり、
Zは
【化17】

であり、
Zを表す上記式中、n’=3〜15;e’=0または1;G’は、H、ハロゲン、エポキシド、NO、CN、CH、CF、またはOCFである。〕
を有する、請求項1〜5いずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項7】
前記追加物質が下記式のうちの一つを有する、請求項1〜6いずれか一項に記載の液晶配合物:
【化18】

〔上記式中、r=0または1;p=0、1、または2;v=0、1、または2;x=0、または1;q=0または1;i=0〜4;ただし、r=0の場合はx=0であり;Yは、独立に、ハロゲン、NO、CN、CH、CF、またはOCFから選択され;JおよびJ’は、独立に、アルキル、または、少なくとも1個のキラル中心を有する置換アルキルから選択され、個々のキラル基はラセミであっても非ラセミであってもよく、ただし本液晶配合物が非ラセミとなることを確実にするように個々のキラル基が選択されることを条件とする〕。
【請求項8】
前記自発分極が約40nC/cm未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項9】
前記液晶配合物が、I→SmA→SmC→Cr相転移またはI→SmA→SmC→SmX相転移を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項10】
前記第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質がI→SmC相転移またはI→SmC相転移を示し、少なくとも1種の追加物質がSmA相を示し且つSmA→SmC相転移を示さない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項11】
前記第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質がI→SmC相転移を示し、少なくとも1種の追加物質がSmA相を示し且つSmA→SmC相転移を示さず、かつ、キラル物質である第二の追加物質をさらに含む、請求項10に記載の液晶配合物。
【請求項12】
前記第一オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質が、I→SmCまたはI→SmC相転移を示し、少なくとも1種の追加物質がI→Cr相転移を示し、かつ、キラル物質である第二の追加物質をさらに含み、前記第二の追加物質が、SmA相を示し且つSmA→SmC相転移を示さない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項13】
前記第一または第二オリゴシロキサン変性ナノ相分離液晶物質がABA構造を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項14】
前記液晶配合物が、約0.05より大きな複屈折を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項15】
前記液晶配合物が、SmA→SmC相転移を通過する際に、偏光光学顕微鏡によって観察される色の干渉に有意な変化を示さない請求項1〜14のいずれか一項に記載の液晶配合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の液晶配合物を含むデバイスであって、安定なブックシェルフ配列、双安定スイッチング、および等温電場配向を有し、かつ二つの安定状態間でスイッチされたときに500μ秒未満の応答時間および約30V/μm未満の電気駆動場を有する、デバイス。
【請求項17】
間に隙間を有する一対の基板;
前記基板の一つの上に配置されたかまたは各基板上に1つずつ配置された、一対の電極;および
前記一対の基板間の隙間に配置された請求項1〜16のいずれか一項に記載の液晶配合物、
を含む少なくとも1個の液晶セルを含む、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
少なくとも1つの電極が透明である、請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
少なくとも1つの偏光子をさらに含む、請求項17または18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスがラビングした配向層をさらに含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記配向層がポリイミドをベースとする物質である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記配向層が200nm未満の厚さを有する、請求項20または21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記液晶配合物の配向が、印加電場下でSmC相中において等温的に行われる、請求項16〜22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
二つの安定状態間でスイッチされたときに約100μ秒未満の応答時間を有する、請求項16〜23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記電気駆動場が約10V/μm未満である、請求項16〜24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
チルト角が22.5度±6度である場合に前記デバイスが少なくとも10:1のコントラスト比を有する、請求項16〜25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記デバイスが、前記電気駆動場を除去した後20m秒後に、透過強度に約10%未満の緩和しか有しない、請求項16〜26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
SmC相における前記液晶配合物のチルト角が、動作温度範囲で±4°を超えて変化しない、請求項14〜27のいずれか一項に記載のデバイス。

【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−502193(P2011−502193A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530977(P2010−530977)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/082676
【国際公開番号】WO2009/054855
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】