説明

オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子および該粒子の利用法

【課題】オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子および該粒子の利用法を提供する。
【解決手段】複数の異なるオリゴヌクレオチドが付着した平均径が5nm〜150nm金ナノ粒子であって、前記オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着していない側の端部が蛍光分子によって標識されており、核酸標的の存在下でオリゴヌクレオチドが結合した金ナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然もしくは合成を問わず、修飾もしくは未修飾を問わない核酸の検出方法に関する。本発明はさらに、ナノファブリケーションに関するものでもある。最後に本発明は、選択核酸を他の核酸と分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の検出および配列決定方法の開発は、遺伝病、細菌疾患およびウィルス疾患の診断において必須である(Mansfield, E.S. et al., Molecular and Cellular Probes, 9, 145-156 (1995)参照)。現在のところ、特定の核酸配列の検出に使用される方法は各種ある(同上参照)。しかしながら、これらの方法は複雑かつ時間を要するものであり、および/または特殊で高価な装置の使用が必要である。そのような装置の使用を必要としない簡単で迅速な核酸検出方法が望ましいことは明瞭であろう。
【0003】
金属コロイドおよび半導体コロイドを凝集させてナノ材料とする方法が各種開発されている。それらの方法は、対象のコロイドに対して化学的親和性を有する両端に官能基を持った共有結合連結分子を使用する方法を中心とするものであった。今日までに最も奏功しているアプローチの一つ(Brust et al.,Adv.Mater.,7,795-797 (1995))は、金コロイドおよび確立されたチオール吸着化学(Baln & Whitesides ,Angew Chem.Int. ,Ed.Engl.,28,506-512 (1989)およびDubois & Nuzzo,Annu.Rev.Phvs.Chem.,43,437-464 (1992))を使用するものである。この方法では、粒子連結分子として直鎖アルカンジチオールを使用する。その連結分子の各末端にあるチオール基が、コロイド粒子に共有結合的に付着して、凝集体構造を形成する。この方法の欠点は、プロセスの制御が困難で、アセンブリの形成が不可逆的であるという点である。これらの構造の材料特性を十分に活用したいのであれば、アセンブリプロセスを系統的に制御する方法が必要である。
【0004】
生体材料製造のためのDNA利用の可能性ならびにナノファブリケーションにおけるDNA利用の可能性が認識されるようになってきた。その研究において研究者らは、オリゴヌクレオチドの配列特異的分子認識特性を利用して、明瞭な幾何形状および大きさを有する印象的な構造を設計することに主眼を置いている(Shekhtman et al.,New J.Chem.,17,757-763 (1993);Shaw & Wang, Science, 260,533-536 (199 3);Chen et al.,J.Am.Chem.Soc.,111 ,6402-6407 (1989);Chen & Seeman, Nature, 350, 631-633(1991);Smith and Feigon, Nature, 356, 164-168 (1992);Wang et al.,Bimochem. ,32,1899-1904 (1993);Chen et al.,Biochem.,33,13540-13546 (1994);Marsh et al.,Nucleic Acids Res.,23,696-700 (1995);Mirkin ,Annu.Review Biophys.Biomol.Struct.,23,541-576 (1994);Wells,J.Biol.Chem.,263 ,1095-1098 (1988);Wang et al.,Biochem.,30,5667-5674 (1991))。しかしながら、DNA構造生成の理論の方が
、実験的確認よりかなり先行している(Seeman et al. ,New J.Chem. ,17,739-755(1993))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子および該粒子の利用法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の異なるオリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子であって、
前記オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着していない側の端部が蛍光分子によって標
識されており、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合した金ナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有することを特徴とするナノ粒子、を要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、2つ以上の部分を有する核酸の検出方法であって、
オリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子を提供することと、前記ナノ粒子は平均径が5nm〜150nmであることと、
1種類以上の連結オリゴヌクレオチドを提供し、各連結オリゴヌクレオチドは2つの部分を有し、この内の一方の部分の配列は前記核酸の前記部分の内の1つの配列に対して相補的であり、他方の部分の配列は前記ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的であることと、
前記ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが前記連結オリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズする条件下において前記ナノ粒子と前記連結オリゴヌクレオチドとを接触させることと、
前記連結オリゴヌクレオチドが前記核酸と有効にハイブリダイズする条件下において前記核酸と前記連結オリゴヌクレオチドとを接触させることと、
検出可能な変化を観測することとを含み、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有することを特徴とする方法、を要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記金ナノ粒子に対して前記核酸を接触させる前に前記連結オリゴヌクレオチドを接触させることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、2つ以上の部分を有する核酸の検出方法であって、
前記核酸をオリゴヌクレオチドが付着した2種類以上の粒子に接触させることと、
この内の第1の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは前記核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有し、エネルギー供与体により標識されることと、
第2の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは前記核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、エネルギー受容体により標識されることと、
前記接触は前記粒子上のオリゴヌクレオチドが前記核酸と有効にハイブリダイズする条件下で行われることと、
前記粒子上のオリゴヌクレオチドが前記核酸とハイブリダイズすることによって起こる検出可能な変化を観測することとを含み、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有することを特徴とする方法、を要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記エネルギー供与体及び受容体は蛍光分子であることを要旨とする。
【0009】
本発明は、核酸の検出方法を提供するものである。1実施態様において該方法は、核酸
を、オリゴヌクレオチドが付着した1種類以上のナノ粒子(ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体)と接触させることを含む。核酸は2つ以上の部分を有し、各種類のナノ粒子が持つオリゴヌクレオチドは、それら核酸部分の一つの配列に対して相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと核酸とのハイブリダイズによって、検出可能な変化が生じる。
【0010】
別の実施態様では当該方法は、核酸を、オリゴヌクレオチドが付着した2種類以上のナノ粒子と接触させることを含む。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有する。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行い、そのハイブリダイズによって生じる検出可能な変化を観察する。
【0011】
さらに別の実施態様では当該方法は、第1の種類のナノ粒子が付着した基板を提供することを含む。該第1の種類のナノ粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、そのオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有する。ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で、基板を核酸と接触させる。次に、オリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子が提供される。そのオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の1つ以上の他の部分に対して相補的な配列を有し、基板に結合した核酸を、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で、第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と接触させる。この時点で、検出可能な変化を観察し得る。当該方法はさらに、2つ以上の部分を有し、第1の部分が第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的である選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドを提供することを含む。結合オリゴヌクレオチドがナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で、結合オリゴヌクレオチドを、基板に結合した第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と接触させる。次に、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した第3の種類のナノ粒子を、結合オリゴヌクレオチドがナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で、基板に結合した結合オリゴヌクレオチドと接触させる。最後に、それらのハイブリダイズによって生じた検出可能な変化を観察する。
【0012】
さらに別の実施態様において当該方法は、核酸を、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板と接触させることを含む。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。次に、基板に結合した核酸を、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した第1の種類のナノ粒子と接触させる。接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。次に、基板に結合した第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列が付着した第2の種類のナノ粒子と接触させる。その接触は、第1および第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイズができるような条件下で行う。最後に、それらのハイブリダイズによって生じる検出可能な変化を観察する。
【0013】
別の実施態様において該方法は、核酸を、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板と接触させることを含む。接触は、基板上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。次に、基板に結合した核酸を、核酸の配列の一部に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したリポソームと接触させる。その接触は、リポソーム上のオリゴヌクレオチドが核酸
とハイブリダイズするような条件下で行う。次に、基板に結合したリポソームオリゴヌクレオチド結合体を、少なくとも第1の種類のオリゴヌクレオチドが付着した第1の種類のナノ粒子と接触させる。この第1の種類のオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着していない方の末端に疎水性基が付着しており、接触は、疎水性相互作用の結果として、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドがリポソームに付着するような条件下で行う。この時点で、検出可能な変化を観察し得る。当該方法はさらに、リポソームに結合した第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、オリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子と接触させることを含んでもよい。第1の種類のナノ粒子には、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する第2の種類のオリゴヌクレオチドが付着しており、該第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1の種類のナノ粒子上の第2の種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する。接触は、第1および第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイズが起こるような条件下で行う。次に、検出可能な変化を観察する。
【0014】
さらに別の実施態様において当該方法は、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を提供する操作、ならびに1種類以上の結合ヌクレオチドを提供する操作を含む。各結合オリゴヌクレオチドは、2つの部分を有する。一方の部分の配列は、核酸部分のうちの一つの配列に対して相補的であり、他方の部分の配列は、ナノ粒子のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的である。ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と結合ヌクレオチドとを、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが結合オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするような条件下で接触させる。核酸と結合オリゴヌクレオチドを、結合オリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で接触させる。次に、検出可能な変化を観察する。ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を結合オリゴヌクレオチドと接触させてから核酸と接触させたり、あるいはこれら3つを全て同時に接触させることができる。
【0015】
別の実施態様において当該方法は、核酸を、オリゴヌクレオチドが付着した2種類以上の粒子と接触させることを含む。第1の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有し、粒子に付着していない末端にエネルギー供与体分子を有する。第2の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、粒子に付着していない末端にエネルギー受容体分子を有する。接触は、粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行い、そのハイブリダイズによって生じる検出可能な変化を観察する。エネルギー供与体および受容体分子は、蛍光分子とすることができる。
【0016】
本発明はさらに、核酸検出キットを提供するものである。1実施態様において当該キットは、1つ以上の容器を有し、該容器にはオリゴヌクレオチドが付着した2種類以上のナノ粒子が入っている。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する。
【0017】
別形態として当該キットは、2つ以上の容器を有することができる。第1の容器には、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入っている。第2の容器には、該核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入っている。
【0018】
さらに別の実施態様において当該キットは、1つ以上の容器を有する。該容器には、オリゴヌクレオチドが付着した、金属または半導体のナノ粒子が入っている。そのオリゴヌクレオチドは、核酸の一部に対して相補的な配列を有し、ナノ粒子に付着していないオリゴヌクレオチド末端に蛍光分子が付着している。
【0019】
さらに別の実施態様において当該キットは基板を有し、該基板にはナノ粒子が付着しており、該ナノ粒子には、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットにはさらに、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器もある。キットにはさらに、2つ以上の部分を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドが入った第2の容器もあり、そのうちの第1の部分は第1の容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的である。キットにはさらに、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第3の容器もある。
【0020】
別の実施態様において当該キットは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器、および第1の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第2の容器を有してなる。
【0021】
さらに別の実施態様において当該キットは、基板、ナノ粒子が入った第1の容器、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有する第1の種類のヌクレオチドが入った第2の容器、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する第2の種類のヌクレオチドが入った第3の容器、および第2の種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する第3の種類のオリゴヌクレオチドが入った第4の容器を有してなる。
【0022】
さらに別の実施態様において当該キットは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板を有する。キットにはさらに、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したリポソームが入った第1の容器ならびに少なくとも第1の種類のオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第2の容器も含み、その第1の種類のオリゴヌクレオチドには、ナノ粒子に付着していない末端に疎水基が付着していることで、ナノ粒子は疎水性相互作用によって、リポソームに付着することができる。キットはさらに、第1の種類のナノ粒子に付着した第2の種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子が入った第3の容器を有していてもよい。第1の種類のナノ粒子に付着した第2の種類のオリゴヌクレオチドは、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。
【0023】
さらに別の実施態様において当該キットは、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器を有してなる。キットにはさらに、1つ以上の別の容器もあり、各容器に結合オリゴヌクレオチドが入っている。各結合オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する第1の部分と、検出対象の核酸の一部の配列に対して相補的な配列を有する第2の部分とを有する。各配列が検出対象核酸の配列の一部に対して相補的である限りにおいて、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列は異なっていてもよい。
【0024】
さらに別の実施態様において当該キットは、オリゴヌクレオチドが付着した1種類のナノ粒子ならびに1種類以上の結合オリゴヌクレオチドが入った容器を有してなる。各種類の結合オリゴヌクレオチドは、2つ以上の部分を有してなる配列を有する。第1の部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的であり、それによって該結合オリゴヌクレオチドは、容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする。第2の部分は、核酸の一部の配列に対して相補的である。
【0025】
さらに別形態の実施態様において当該キットは、3つ以上の容器を有してなる。第1の容器には、ナノ粒子が入っている。第2の容器には、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有する第1のオリゴヌクレオチドが入っている。第3の容器には、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する第2のオリゴヌクレオチドが入っている。キットはさらに、2つ以上の部分を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドが入った容器であって、第1の部分が第2のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的である第4の容器と、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが入った第5の容器とを有してもよい。
【0026】
さらに別の実施態様において当該キットは、2種類の粒子が入った1つまたは2つの容器を有してなる。第1の種類の粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有し、さらにはナノ粒子に付着していない末端にエネルギー供与体分子が付着している。第2の種類の粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、さらにはナノ粒子に付着していない末端に、エネルギー受容体分子が付着している。エネルギー供与体および受容体は、蛍光分子とすることができる。
【0027】
本発明はさらに、ナノ粒子が付着した基板を提供するものでもある。ナノ粒子は、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着していてもよい。
【0028】
本発明はさらに、ナノファブリケーションを提供するものでもある。その方法は、選択配列を有する1種類以上の連結オリゴヌクレオチドを提供することを含むものであり、各種類の連結オリゴヌクレオチドの配列は2つ以上の部分を有する。当該方法はさらに、オリゴヌクレオチドが付着した1種類以上のナノ粒子を提供することを含むものであり、各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは連結オリゴヌクレオチドの配列の一部に対して相補的な配列を有する。連結オリゴヌクレオチドとナノ粒子とを、ナノ粒子が連結オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で接触させて、所望のナノ材料またはナノ構造を形成する。
【0029】
本発明は、別のナノファブリケーションを提供する。その方法は、オリゴヌクレオチドが付着した2種類以上のナノ粒子を提供することを含むものである。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。第1および第2の種類のナノ粒子を、それらナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズするような条件下で接触させて、所望のナノ材料またはナノ構造を形成する。
【0030】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子であって、オリゴヌクレオチド結合部によって互いに結合されたナノ粒子からなるナノ材料またはナノ構造も提供する。
【0031】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドが付着した2種類以上のナノ粒子を有してなる組成物をも提供するものである。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸もしくは連結オリゴヌクレオチドの第1の部分の配列に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸もしくは連結オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する。
【0032】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器ならびにオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第2の容器を有してなる容器アセンブリを提供するものである。第1の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、第2の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。第2の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、第1の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。
【0033】
本発明はさらに、複数の異なるオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を提供するものでもある。
最後に本発明は、2つ以上の部分を有する選択核酸を、他の核酸から分離する方法を提供する。当該方法は、オリゴヌクレオチドが付着した1種類以上のナノ粒子を提供する段階を有してなり、各種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、選択核酸の部分のうちの一つの配列に対して相補的な配列を有する。選択核酸および他の核酸を、ナノ粒子と、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが選択核酸とハイブリダイズするような条件下で接触させて、選択核酸とハイブリダイズしたナノ粒子を凝集・沈殿させる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「1種類のオリゴヌクレオチド」とは、同一配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチドが付着した1種類のナノ粒子」とは、同一種類のオリゴヌクレオチドが付着した複数のナノ粒子を指す。「オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子」は、「ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体」と称する場合もあり、あるいは本発明の検出方法の場合には、「ナノ粒子オリゴヌクレオチドプローブ」、「ナノ粒子プローブ」または単に「プローブ」と称する場合もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、米国国立予防衛生研究所助成番号GM10265下に、政府支援を受けて行ったものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
本発明は、1996年7月29日出願の米国仮出願番号60/031809に基づくものである。
【0036】
(現在好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明の粒子で有用なナノ粒子には、金属(例:金、銀、銅および白金)、半導体(例:CdSeおよびCdS)および磁性体(例:強磁性体)コロイド材料などがある。本発明の実施において有用な他のナノ粒子には、ZnS、ZnO、TiO2 、Agl、AgBr、HgI2 、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2 3 、In2 Se3 、Cd3 2 、Cd3 As2 、InAs、およびGaAsなどがある。ナノ粒子の径は、好ましくは約5nm〜約150nm(平均径)、より好ましくは約5〜約50nm、最も好ましくは約10〜約30nmである。
【0037】
金属、半導体および磁性体ナノ粒子の製造方法は当該技術分野において公知である(例えば、Schmid,G. (ed. )Clusters and Colloids (VCH ,Weinheim,1994);Hayat,M.A.(ed. )Colloidal Gold:Principles ,Methods ,and Applications(Academic Press,San Diego ,1991);Massart,R. ,IEEE Taransactions On Magnetics ,17,1247(1981);Ahmadi,T.S .et al.,Science ,272 ,1924(1996);Henglein,A .et al.,J.Phys.Chem.,99,14129 (1995);Curtis,A.C.,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,27 ,1530(1988)参照)。
【0038】
ZnS、ZnO、TiO2 、AgI、AgBr、HgI2 、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2 3 、In2 Se3 、Cd3 2 、Cd3 As2 、InAsおよびGaAsナノ粒子の製造方法も当該技術分野では公知である(例えば、Weller,Angew.Ch
em.Int.Ed.Engl. ,32,41(1993);Henglein ,Top.Curr.Chem.,14 3 ,113 (1988);Henglein ,Chem.Rev,89,1861(1989);Brus ,Appl.Phys.A.,53,465 (1991);Bahncmann,Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy(eds .Pelizetti and
Schiavello 1991 ),p.251;Wang and Herron ,J.Phys.Chem.,95,525 (1991);Olshavsky et al. ,J.Am.Chem.Soc.,112 ,9438(1990);Ushida et al.,J.Phys.Chem.,95,5382(1992)参照)。
【0039】
好適なナノ粒子で市販されているものもある(例えば、Ted Pella ,Inc.(金)、Amersham Corporation(金)およびNanoprobes,Inc .(金)などから)。
現時点で核酸検出に使用するのに好ましいものは金ナノ粒子である。金コロイド粒子は、美しい発色が起きる帯域に対して、高い消光係数を有する。その強い色は、粒径、濃度、粒子間距離ならびに凝集体の凝集程度および形状(幾何形状)によって変わることから、その材料は比色アッセイにおいて特に好ましいものとなっている。例えば、金ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドおよび核酸とハイブリダイズすることによって、直ちに肉眼で観察できる変色が生じる(例えば、実施例参照)。
【0040】
さらに金ナノ粒子は、現在、上記と同じ理由ならびにその安定性、電子顕微鏡観察による撮像の容易さおよびチオール官能基による十分特徴が解明されている修飾(以下参照)により、ナノファブリケーションで好ましく使用されている。
【0041】
ナノ粒子、オリゴヌクレオチドまたはその両方を官能化して、ナノ粒子にオリゴヌクレオチドを付着させる。そのような方法は当該技術分野では公知である。例えば、3' 末端または5' 末端でアルカンチオールによって官能化されたオリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子に容易に付着する(例えば、Whitesides,Proceedings of the Robert A.Welch Foundation 39th Conference On Chemical Research Nanophase Chemistry ,Houston ,TX,pages 109-121 (1995)参照。さらに、Micic et al.,Chem.Commun.555-557 (1996)(3' チオールDNAを平坦な金表面に付着させる方法について記載;この方法を用いて、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させることができる)参照)。さらに、アルカンチオール法を用いて、他の金属、半導体および磁性体コロイドに、さらには上記の他のナノ粒子に、オリゴヌクレオチドを付着させることもできる。オリゴヌクレオチドを固体表面に付着させるための他の官能基としては、ホスホロチオエート基(例えば、オリゴヌクレオチド−ホスホロチオエートの金表面への結合に関しては米国特許第5472881号参照)、置換アルキルシロキサン類(例えば、オリゴヌクレオチドのシリカ表面およびガラス表面への結合に関してはBurwell ,Chemical Technology ,4 ,370-377 (1974)およびMatteucci and Caruthers ,J Am.Chem.Soc.,103 ,3185-3191 (1981)参照、ならびにアミノアルキルシロキサン類の結合およびメルカプトアルキルシロキサン類の同様の結合に関してはGrabar et al. ,Anal.Chem.,67,735-743 参照)などがある。5' チオヌクレオシドまたは3' チオヌクレオシドを末端とするオリゴヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドの固体表面への付着を行うこともできる。ビオチン標識オリゴヌクレオチドおよびストレプトアビジン金共役コロイドを用いて、金ナノ粒子をオリゴヌクレオチドに付着させることができ、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用によって、コロイドがオリゴヌクレオチドに付着する(Shaiu et al.,Nuc.AcidsRes.,21,99(1993))。以下の参考文献には、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させるのに用いることができる他の方法について記載されている。Nuzzo et al.,J.Am.Chem.Soc.,109 ,2358(1987)(金表面へのジスルフィド);Allara and Nuzzo ,Langmuir,1 ,45(1985)(アルミニウム表面へのカルボン酸);Allara and Tompkins,J.Colloid Interface Sci.,49,41 0-421 (1974)(銅表面へのカルボン酸);Iler,The Chemistry Of Silica,Chapter 6 ,
(Wiley 1979)(シリカ表面へのカルボン酸);Timmons and Zisman ,J.Phys.Chem.,69,984-990 (1965)(白金表面へのカルボン酸);Soriaga and Hubbard,J.Am.Chem.Soc.,104 ,3937(1982)(白金表面への芳香環化合物);Hubbard,Acc.Chem.Res. ,13,17
7 (1980)(白金表面へのスルホラン、スルホキシドおよび他の官能化溶媒);Hickman et al. ,J.Am.Chem.Soc.,111 ,7271(1989)(白金表面へのイソニトリル);Maoz and Sagiv ,Langmuir,3 ,1045(1987)(シリカ表面へのシラン);Maoz and Sagiv ,Langmuir,3 ,1034(1987)(シリカ表面へのシラン);Wasserman et al. ,Langmuir,5,1074 (1989)(シリカ表面へのシラン);Eltekova and Eltekov ,Langmuir,3 ,951 (1987)(酸化チタンおよびシリカ表面への芳香族カルボン酸、アルデヒド、アルコールおよびメトキシ基);Lec et al. ,J.Phys.Chem.,92,2597(1988)(金属表面への剛性ホスフェート)。
【0042】
各ナノ粒子には、複数のオリゴヌクレオチドが付着していてもよい。その結果として、各ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体が、相補的配列を有する複数のオリゴヌクレオチドまたは核酸に結合することができる。
【0043】
所定の配列のオリゴヌクレオチドは、本発明の実施における各種目的に使用される。所定の配列のオリゴヌクレオチドの製造方法は公知である(例えば、Sambrook et al,.Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.1989 )およびF.Eckstein(ed. )Oligonucleotides and Analogues,1st Ed. (Oxford University Press ,New York,1991)参照)。オリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドのいずれにも、固相合成が好ましい(公知のDNA合成法は、RNA合成にも有用である)。オリゴリボヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドは、酵素的に製造することもできる。
【0044】
本発明は、核酸検出方法を提供するものである。あらゆる種類の核酸を検出可能であり、その方法は例えば、疾患の診断および核酸の配列決定に使用することができる。本発明の方法によって検出可能な核酸の例としては、遺伝子(例:特定の疾患に関連する遺伝子)、ウィルスRNAおよびDNA、細菌DNA、真菌DNA、cDNA、mRNA、RNAおよびDNA断片、オリゴヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、変性オリゴヌクレオチド、1本鎖および2本鎖核酸、天然および合成核酸などがある。従って、その核酸検出方法の使用の例としては、ウィルス疾患(例:ヒト免疫不全ウィルス、肝炎ウィルス、疱疹ウィルス、サイトメガロウイルスおよびエプスタイン- バールウイルス)、細菌感染(例:結核、ライム病、ピロリ菌,大腸菌感染、レジオネラ感染、マイコプラズマ感染、サルモネラ感染)、性病(例:淋病)、先天性障害(例:嚢胞性繊維症、デュシェーヌ筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血)および癌(例:癌形成に関連する遺伝子)の診断および/またはモニタリングなどがあり、法医学、DNA配列決定、父子鑑定検査、細胞系による証明、遺伝子治療のモニタリング、および多くの他の目的での使用もある。
【0045】
肉眼での変色観察に基づく核酸検出方法は、安価、迅速、簡単、確実(試薬が安定である)であって、特殊な装置や高価な装置を必要とせず、計器装備を必要としない。それによって当該方法は、例えばDNA配列決定における研究・分析実験室で、特定の病原体の存在を検出する分野で、治療用薬剤の処方を支援する感染の迅速な同定に向けて病院で、ならびに安価で最も重要なスクリーニングに向けて家庭および医療施設での使用に特に好適となる。
【0046】
検出対象の核酸は、公知の方法によって単離することができるか、あるいは当該技術分野で公知のように、細胞、組織検体、生体液(例:唾液、尿、血液、血清)、PCR成分を含む溶液、大過剰のオリゴヌクレオチドもしくは高分子量DNAを含む溶液、および他の検体で直接検出することができる(例えば、Sambrook et al. ,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.1989 )およびB.D.Hames an S.J.Higgins,Eds.,Gene Probes 1(IRL Press ,New York,1995)参照)。プローブをハイブリダイズして核酸を検出するための核酸の調製法は当該技術分野においてよく知られている(例えば、Sambrook
et al. ,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.1989 )およびB.D.Hames an S.J.Higgins,Eds.,Gene Probes 1(IRL Press ,New York,1995)参照)。
【0047】
存在する核酸が少量の場合には、それを当該技術分野で公知の方法によって増幅することができる(例えば、Sambrook et al. ,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.1989 )およびB.D.Hames an S.J.Higgins,Eds.,Gene Probes 1(IRL Press ,New York,1995)参照)。好ましいものとしては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅がある。
【0048】
本発明による核酸検出方法の一つは、核酸を、オリゴヌクレオチドが付着した1種類以上のナノ粒子と接触させることから成る。検出対象の核酸は2つ以上の部分を有する。それらの部分の長さおよび該当する場合はそれらの間隔を選択して、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸にハイブリダイズする際に、検出可能な変化が起こるようにする。その長さおよび距離は経験的に決定することができ、使用する粒子の種類およびその径、ならびにアッセイで使用する溶媒中に存在する電解質の種類(ある種の電解質は、核酸の配座に影響を与える)によって決まる。
【0049】
さらに、他の核酸存在下に、ある核酸を検出したい場合、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが結合する核酸の部分を選択して、その部分が、核酸の検出が特異的となるように十分特異的な配列を持つようにしなければならない。それを行う上での指針は、当該技術分野では公知である。
【0050】
核酸は、使用しなければならないオリゴヌクレオチドナノ粒子結合体が1種類のみとなる程度に互いに近接した反復配列を有する場合があるが、それは希である。概して、選択される核酸の部分は各種配列を有するものであり、好ましくは異なるナノ粒子に付着した2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子と接触させる。核酸検出系の1例を図2に示してある。図からわかるように、第1のナノ粒子に付着した第1のオリゴヌクレオチドは、1本鎖DNA中の標的配列の第1の部分に対して相補的な配列を有している。第2のナノ粒子に付着した第2のオリゴヌクレオチドは、DNA中の標的配列の第2の部分に対して相補的な配列を有している。DNAの別の部分を、相当するナノ粒子によって標的とすることができると考えられる(図17参照)。1つの核酸のいくつかの部分を標的とすることで、検出可能な変化が大きくなる。
【0051】
ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と核酸との接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸の標的配列にハイブリダイズするような条件下で行う。そのハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、使用する特定の系に対して容易に最適化することができる(例えば、Sambrook et al. ,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2nd ed.1989 )参照)。好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイズ条件を用いる。
【0052】
検出対象核酸およびナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を含む溶液を凍結・溶解することで、ハイブリッド形成の速度を高めることができる。溶液は、例えばその溶液が凍結するのに十分な時間、ドライアイス−アルコール浴に入れる等の簡便な方法で冷凍することができる(通常は、溶液100μlに対して約1分間)。溶液は、熱変性温度より低い温度で溶解しなければならない。ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体および核酸のほとんどの組み合わせに関して、その温度は便宜的に室温とすることができる。溶液を解凍した後、ハイブリダイズが完結し、検出可能な変化を観察することができる。
【0053】
検出対象の核酸およびナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を含む溶液を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドと標的核酸上のオリゴヌクレオチドとの間で形成される複合体の解離温度(Tm)より低い温度まで昇温することによっても、ハイブリダイズの速度を高める
ことができる。別法として、解離温度(Tm)より高温まで加熱し、溶液を放冷することで、急速なハイブリダイズを行うことができる。
【0054】
塩濃度を上昇させることによっても(例えば、0.1M NaClから0.3M NaCl)、ハイブリダイズ速度を高めることができる。
ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの核酸に対するハイブリダイズ時に起こる検出可能な変化としては、変色、ナノ粒子凝集体の形成または凝集ナノ粒子の沈殿があり得る。変色は、肉眼または分光法によって観察することができる。ナノ粒子凝集体の形成は、電子顕微鏡観察または比濁分析によって観察することができる。凝集ナノ粒子の沈殿は、肉眼または顕微鏡観察によって観察することができる。好ましいものとしては、肉眼で観察できる変化である。特に好ましいものとしては、肉眼で観察できる変色である。
【0055】
肉眼による変色の観察は、対照的な色の背景と比較することで、より容易に行うことができる。例えば、金ナノ粒子を使用する場合、固体の白色表面(シリカまたはアルミナのTLC板、濾紙、硝酸セルロース膜およびナイロン膜、好ましくはC−18シリカTLC板など)上にハイブリダイズ溶液のサンプルをスポット状に付着させ、そのスポットを乾燥させることで、変色の観察が容易になる。最初に、スポットはハイブリダイズ溶液の色を保持している(ハイブリダイズがない場合のピンク/赤から、ハイブリダイズしていた場合の紫がかった赤/紫の範囲)。室温または80℃(温度は必須というわけではない)で乾燥すると、スポット付着前にナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体が標的核酸とハイブリダイズによって連結している場合は、スポットが青色に発色する。ハイブリダイズしていないと(例えば、標的核酸が存在しないために)、スポットはピンクである。その青色スポットとピンク色スポットは安定であり、その後の冷却や加熱および時間経過によっては変化しない。それらスポットは、簡便な永久的試験記録を提供するものである。変色を観察するのに、他の操作(ハイブリダイズナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と非ハイブリダイズナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体との分離など)は必要ない。
【0056】
アッセイ結果を容易に肉眼観察できるようにするための別法として、標的核酸に対してハイブリダイズしたナノ粒子プローブのサンプル液をガラス繊維フィルター(例えば、径が13nmの金ナノ粒子で用いる場合、孔径0.7μmのBorosilicate Microfiber Filter、等級FG75)に通しながら、該サンプルをフィルター上にスポット状に付着させる方法が考えられる。次に、水で洗って過剰の非ハイブリダイズプローブをフィルターから洗い流して、ナノ粒子プローブの標的核酸とのハイブリダイズによって生じた凝集体を含む観察可能なスポットを残す(その凝集体はフィルターの孔より径が大きいために保持される)。この方法では、過剰のナノ粒子プローブを使用できることから、感度を高めることができる。残念ながらナノ粒子プローブは、試みた他のいずれの固体表面(シリカスライドガラス、逆相プレートならびにナイロン、ニトロセルロース、セルロースおよび他の膜)にも付着したため、そのような洗浄方式で使用可能な固体表面として現在知られているものとしては、ガラス繊維フィルターのみである。
【0057】
図2に示した検出系の重要な面は、検出可能な変化が得られるか否かが、核酸における所定の標的配列が2つの異なるオリゴヌクレオチドへ協同的にハイブリダイズすることによって決まるということである。それら2つのオリゴヌクレオチドのいずれかに誤対合があると、粒子間結合が不安定となる。塩基対合における誤対合の不安定化効果は、長いオリゴヌクレオチドプローブの結合より短いオリゴヌクレオチドプローブの結合においてかなり大きい。図2に示した系の利点は、長い標的配列およびプローブ(図2に示した例では18塩基対)に関連する塩基識別を利用しているが、短いオリゴヌクレオチド(図2に示した例では9塩基対)の感度特性を有するという点である。
【0058】
核酸の標的配列が、図2に示したように隣接している場合もあり、あるいは図3に示し
たように、標的配列の2つの部分が、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに対して相補性がない第3の部分によって分離されている場合もある。後者の場合、溶液中で遊離しており、その第3の部分の配列に対して相補的な配列を有する充填オリゴヌクレオチドを用いるという選択肢がある(図3参照)。充填オリゴヌクレオチドが核酸の第3の部分とハイブリダイズすると2本鎖部分が形成され、それによってナノ粒子間の平均距離が変化し、結果的に変色が起こる。図3に示した系は、検出方法の感度を上昇させ得るものである。
【0059】
核酸検出方法の一部の実施態様は、基板を利用するものである。基板を用いることで、検出可能な変化(信号)を増幅し、アッセイの感度を上昇させることができる。
検出可能な変化を観察できるようにする基板であれば、いかなるものも使用可能である。好適な基板には、透明固体表面(例:ガラス、石英、プラスチックおよび他のポリマー)、不透明固体表面(例:TLCシリカ板、濾紙、ガラス繊維フィルター、硝酸セルロース膜、ナイロン膜などの白色固体表面)、ならびに導電性固体表面(例:インジウムスズ酸化物(ITO))などがある。基板はいかなる形状および厚さのものでもよいが、通常は平坦で薄いものとする。好ましくは、ガラス(例:スライドガラス)またはプラスチック(例:微量定量プレートのウェル)などの透明基板である。
【0060】
1実施態様では、オリゴヌクレオチドを基板に付着させる。オリゴヌクレオチドは、各種文献に記載の方法に従って基板に付着させることができる(例えば、Chrisey et al.,Nucleic Acids Res.,24,3031-3039 (199 6);Chrisey et al. ,Nucleic Acids Res.
,24,3040-3047 (1996);Mucic et al. ,Chem.Commun.,555 (1996);Zimmermann and Cox ,Nucleic Acids Res.,22,492 (1994);Bottomley et al. ,J.Vac.Sci.Technol.A ,10,591 (1992); およびHegner et al. ,FEBS Lett.,336 ,452 (1993)参照)。
【0061】
基板に付着したオリゴヌクレオチドは、検出対象核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有する。核酸を、基板上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で基板と接触させる。このようにして、核酸は基板に結合するようになる。未結合の核酸を基板から洗い落としてから、ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を加えるのが好ましい。
【0062】
次に、基板に結合した核酸を、オリゴヌクレオチドが付着した第1の種類のナノ粒子と接触させる。オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。このようにして、第1の種類のナノ粒子が基板に結合するようになる。ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を基板に結合させた後、基板を洗浄して、未結合のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と核酸とを除去する。
【0063】
第1の種類のナノ粒子のオリゴヌクレオチドは、すべて同一の配列を有してもよいし、あるいは検出対象核酸の異なる部分とハイブリダイズするよう異なる配列を有してもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する場合、各ナノ粒子は、異なるオリゴヌクレオチドの全通りが付着したものであってもよいし、あるいは好ましくは、異なったオリゴヌクレオチドが異なったナノ粒子に付着してもよい。図17には、核酸の複数部分にハイブリダイズするナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体の使用を示してある。
【0064】
最後に、基板に結合した第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、オリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子と接触させる。それらのオリゴヌクレオチドは、第1の種類のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有しており、接触は、第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが第2の種類のナノ粒子上の配列とハイブリダイズするような条件下で行う。ナノ粒子を
結合させた後、好ましくは基板を洗浄して、未結合のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を除去する。
【0065】
このハイブリダイズの組み合わせによって、検出可能な変化が生じる。複数のハイブリダイズによって検出可能な変化が増幅される場合を除き、検出可能な変化は上記のものと同じである。特に、第1の種類の各ナノ粒子には複数のオリゴヌクレオチド(配列は同一でも異なっていてもよい)が付着していることから、第1の種類の各ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体は、複数の第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体にハイブリダイズすることができる。さらに、第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、検出対象核酸の複数の部分にハイブリダイズさせることができる。複数ハイブリダイズによって得られる増幅によって、その変化を初めて検出可能とすることができるか、あるいは検出可能な変化を大きくすることができる。この増幅は、アッセイの感度を高めて、少量の核酸を検出できるようにするものである。
【0066】
必要であれば、第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を連続的に加えることで、追加のナノ粒子層を堆積させることができる。そのようにして、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子数をさらに増加させて、それに相当する信号強度上昇を行うことができる。
【0067】
さらに、互いに直接ハイブリダイズするように設計された第1および第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を用いるのではなく、結合オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズの結果として、それらのナノ粒子を互いに結合させる上で役立つと考えられるオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子を用いることも可能であると考えられる。
【0068】
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの製造方法ならびにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる方法については、前述してある。ハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、使用する特定の系に対して容易に最適化することができる(上記参照)。
【0069】
この核酸(検体DNA)検出方法の1例を、図13Aに示してある。ハイブリダイズの組み合わせによって、ナノ粒子凝集体が検体DNAによって基板に連結している暗色領域が生じる。その暗色領域は、周囲光を用いて、好ましくは白色背景と対照させて基板を見ることで、容易に肉眼観察することができる。図13Aから容易にわかる通り、この方法は、検出可能な変化を増幅する手段を提供するものである。
【0070】
別の実施態様では、ナノ粒子を基板に付着させる。ナノ粒子の基板への付着は、各種文献に記載の方法に従って行うことができる(例えば、Grabar et al. ,Analyt.Chem.,67,73-743(1995);Bethell et al. ,J.Electroanal.Chem. ,409 ,137 (1996);Bar et al. ,Langmuir,12,117 2(1996);Colvin et al.,J.Am.Chem.Soc.,114,5221(1992))。
【0071】
ナノ粒子を基板に付着させた後、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる。それは、溶液中でのオリゴヌクレオチドのナノ粒子への付着について上述した方法と同様にして行うことができる。ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有する。
【0072】
ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で、基板を核酸と接触させる。そうして、核酸は基板に結合するようになる。好ましくは、未結合の核酸を基板から洗い出してから、さらに別のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を加える。
【0073】
次に、オリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子を与える。そのオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、基板に結合した核酸を、第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で、第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と接触させる。そのようにして、第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体が基板に結合するようになる。ナノ粒子を結合させた後、未結合のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体および核酸を、基板から洗い落とす。この時点で、変化(例:変色)が検出され得る。
【0074】
第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、全てが同一配列を持っていてもよいし、あるいは検出対象核酸の異なった部分とハイブリダイズするよう異なった配列を有するものであってもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する場合、各ナノ粒子は、異なるオリゴヌクレオチドの全通りが付着したものであってもよいし、あるいは好ましくは、異なったオリゴヌクレオチドが異なったナノ粒子に付着していてもよい(図17参照)。
【0075】
次に、2つ以上の部分を有する選択配列を持った結合オリゴヌクレオチドであって、第1の部分が第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的であるものを、結合オリゴヌクレオチドがナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で、基板に結合した第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体と接触させろ。そのようにして、結合オリゴヌクレオチドは基板に結合するようになる。結合オリゴヌクレオチドを結合させた後、未結合の結合オリゴヌクレオチドを、基板から洗い落とす。
【0076】
最後に、オリゴヌクレオチドが付着した第3の種類のナノ粒子を与える。そのオリゴヌクレオチドは、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する。そのナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、結合オリゴヌクレオチドがナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で、基板に結合した結合オリゴヌクレオチドと接触させる。ナノ粒子を結合させた後、未結合のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を基板から洗い落とす。
【0077】
このハイブリダイズの組み合わせによって、検出可能な変化が生じる。複数のハイブリダイズによって検出可能な変化が増幅される場合を除き、検出可能な変化は上記のものと同じである。特に、第2の種類の各ナノ粒子には複数のオリゴヌクレオチド(配列は同一でも異なっていてもよい)が付着していることから、第2の種類の各ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体は、複数の第3の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体にハイブリダイズすることができる(結合オリゴヌクレオチドを介して)。さらに、第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、検出対象核酸の複数の部分にハイブリダイズさせることができる。複数ハイブリダイズによって得られる増幅によって、その変化を初めて検出可能とすることができるし、あるいは検出可能な変化を大きくすることができる。その増幅は、アッセイの感度を高めて、少量の核酸を検出できるようにするものである。
【0078】
必要であれば、結合オリゴヌクレオチドと第2および第3の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を連続的に加えることで、追加のナノ粒子層を堆積させることができる。そのようにして、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子をさらに増加させて、それに相当する信号強度上昇を行うことができる。
【0079】
さらに、結合オリゴヌクレオチドを使用しないようにすることができ、第2および第3の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、それらが互いに直接ハイブリダイズするように作ることができる。
【0080】
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの製造方法ならびにオリゴヌクレオチドをナノ粒子に付着させる方法については、前述してある。ハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、使用する特定の系に対して容易に最適化することができる(上記参照)。
【0081】
この核酸(検体DNA)検出方法の1例を、図13Bに示してある。ハイブリダイズの組み合わせによって、ナノ粒子凝集体が検体DNAによって基板に連結している暗色領域が生じる。この暗色領域は、前述のように容易に肉眼観察することができる。図13Bからわかる通り、本発明の方法のこの実施態様は、検出可能な変化を増幅する別の手段を提供するものである。
【0082】
別の増幅方式では、リポソームを使用する。その方式では、オリゴヌクレオチドを基板に付着させる。好適な基板は前述のものであり、オリゴヌクレオチドの基板への付着は、前記の方法に従って行うことができる。例えば、基板がガラスの場合にはそれは、ホスホリル基またはカルボン酸基を介して、基板表面上のアミノアルキル基にオリゴヌクレオチドを縮合させることで行うことができる(関連の化学に関しては、Grabar et al,Anal.Chem.,67,735-743 (1995)参照)。
【0083】
基板に付着したオリゴヌクレオチドは、検出対象核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有する。核酸を、基板上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で、基板と接触させる。そのようにして、核酸は基板に結合するようになる。好ましくは、未結合核酸を基板から洗い落としてから、当該系の成分を追加する。
【0084】
次に、基板に結合した核酸を、オリゴヌクレオチドが付着したリポソームと接触させる。そのオリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、接触は、リポソーム上のオリゴヌクレオチドが核酸とハイブリダイズするような条件下で行う。そのようにして、リポソームは基板に結合するようになる。リポソームを基板に結合させたら、基板を洗って未結合のリポソームと核酸を除去する。
【0085】
リポソーム上のオリゴヌクレオチドは、全てが同一配列を持っていても良く、あるいは検出対象核酸の異なった部分とハイブリダイズするよう異なった配列を有するものであってもよい。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する場合、各リポソームは、異なるオリゴヌクレオチドの全通りが付着したものであってもよいし、あるいは異なったオリゴヌクレオチドが異なったリポソームに付着していてもよい。
【0086】
オリゴヌクレオチドリポソーム結合体を得るには、オリゴヌクレオチドをコレステリル基などの疎水基に連結させて(Letsinger et al.,J.Am.Chem.Soc.,115 ,7535-7536 (1993)参照)、得られた疎水基オリゴヌクレオチド結合体をリポソームの溶液と混合することで、膜に固定された疎水基オリゴヌクレオチド結合体を有するリポソームを形成する(Zhang et al.,Tetrahedron Lett. ,37,6243-6246 (1996)参照)。リポソーム表面への疎水基オリゴヌクレオチド結合体の負荷量は、混合物における疎水基オリゴヌクレオチド結合体のリポソームに対する比を調節することで制御できる。吊り下がったコレステリル基の疎水性相互作用によって付着したオリゴヌクレオチドを有するリポソームは、ニトロセルロース膜上に固定化されたポリヌクレオチドを標的とする上で有効であることが認められている(同上)。リポソームの膜に固定されたフルオレセイン基をレポーター基として使用した。この基は有効であったが、局所濃度の高い領域(例えば、リポソーム表面上)でのフルオレセインからの信号が自己消光によって弱くなるために、感度は限られたものであった。
【0087】
リポソームは、当該技術分野で公知の方法によって製造される(Zhang et al.,Tetrahedron Lett. ,37,6243(1996)参照)。リポソームは通常、その後の段階で使用される
ナノ粒子の大きさ(径)の約5〜50倍である。例えば、径が約13nmであるナノ粒子の場合、径が約100nmのリポソームを使用することが好ましい。
【0088】
基板に結合したリポソームを、少なくとも第1の種類のオリゴヌクレオチドが付着した第1の種類のナノ粒子と接触させる。第1の種類のオリゴヌクレオチドには、ナノ粒子に付着していない末端に疎水基が付着しており、接触は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが、疎水性相互作用の結果としてリポソームに付着するような条件下で行う。この時点で、検出可能な変化が観察され得る。
【0089】
当該方法はさらに、リポソームに結合した第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、オリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子と接触させることを含むことができる。第1の種類のナノ粒子には、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する第2の種類のオリゴヌクレオチドが付着しており、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1の種類のナノ粒子上の第2の種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する。接触は、第1および第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするような条件下で行う。そのハイブリダイズは温和な温度(例えば、5℃〜60℃)で行うことから、室温でハイブリダイズが起こる条件(例えば、0.3〜1.0M
NaCl)を用いる。ハイブリダイズ後、未結合のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を基板から洗い落とす。
【0090】
このハイブリダイズの組み合わせによって、検出可能な変化が生じる。複数のハイブリダイズによって検出可能な変化が増幅される場合を除き、検出可能な変化は上記のものと同じである。特に、各リポソームには複数のオリゴヌクレオチド(配列は同一でも異なっていてもよい)が付着していることから、各リポソ- ムは、複数の第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体にハイブリダイズすることができる。同様に、各第1の種類のナノ粒子には、複数のオリゴヌクレオチドが付着していることから、各第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体は、複数の第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体にハイブリダイズすることができる。さらに、そのリポソームは、検出対象核酸の複数の部分にハイブリダイズすることができる。複数回のハイブリダイズによって得られる増幅によって、その変化を初めて検出可能とすることもできるし、あるいは検出可能な変化を大きくすることもできる。この増幅は、アッセイの感度を高めて、少量の核酸を検出できるようにするものである。
【0091】
必要であれば、第1および第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を連続的に加えることで、追加のナノ粒子層を堆積させることができる。そのようにして、標的核酸1分子当たりの固定化ナノ粒子数をさらに増加させて、それに相当する信号強度上昇を行うことができる。金ナノ粒子の銀染色を行うことで、さらに強化することもできる(Bassell ,et al.,J.Cell Biol.,126 ,863-876 (1994);Braun-Howland et al. ,Biotechniques ,13,928-931 (1992))。
【0092】
さらに、互いに直接ハイブリダイズするような第2および第3の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を用いるのではなく、結合オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズの結果としてそれらのナノ粒子を結合させる上で役立つと考えられるオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子を用いることができると考えられる。
【0093】
ナノ粒子およびオリゴヌクレオチドの製造方法ならびにナノ粒子へのオリゴヌクレオチドの付着方法については前述してある。一端が官能化されてナノ粒子に結合できるようになっており、他端には疎水性基を持つかあるいは持たないオリゴヌクレオチドの混合物を、第1の種類のナノ粒子上で用いることができる。平均的な一つのナノ粒子当たりに結合
するそれらのオリゴヌクレオチドの相対的比率は、混合物中のそれら2つのオリゴヌクレオチドの濃度比によって制御される。ハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、使用する特定の系に対して容易に最適化することができる(上記参照)。
【0094】
この核酸検出方法の1例を図18に示してある。第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体のリポソームへのハイブリダイズによって、検出可能な変化を生じうる。金ナノ粒子の場合、ピンク/赤が観察されるか、あるいはナノ粒子同士が十分に近接している場合は、紫/青が観察され得る。第2の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体の第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体へのハイブリダイズによって、検出可能な変化が生じる。金ナノ粒子の場合、紫/青が観察される。これらの変色はいずれも、肉眼で観察することができる。
【0095】
基板を用いる場合には、複数の第1の種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体またはオリゴヌクレオチドを基板に配列して付着させて、標的核酸の複数部分を検出したり、複数の異なる核酸を検出したり、あるいはその両方を行うことができる。例えば、基板の複数のスポット列を設け、各スポットに、標的核酸の一部に結合する異なった種類のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドナノ粒子結合体が含まれるようにすることができる。1つ以上の核酸を含むサンプルを各スポットに加え、適切なオリゴヌクレオチドナノ粒子結合体、オリゴヌクレオチドリポソーム結合体、および結合オリゴヌクレオチドを用いて、上記の方法のいずれかの方法で、アッセイの残りの操作を行う。
【0096】
あらゆる核酸のアッセイで使用できるナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を図17のIVおよびVに示してある。この「万能プローブ」には、1種類の配列のオリゴヌクレオチドが付着している。このオリゴヌクレオチドは、2つ以上の部分を有する配列を持った結合オリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることができる。第1の部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的である。第2の部分は、検出対象核酸の配列の一部に対して相補的である。第1の部分が同じで第2の部分が異なる複数の結合オリゴヌクレオチドを用いることができ、その場合、結合オリゴヌクレオチドにハイブリダイズした後、「万能プローブ」を検出対象核酸の複数部分に結合させるか、あるいは異なる標的核酸に結合させることができる。
【0097】
さらに別の実施態様では、金属および半導体ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドが、ナノ粒子に付着していない末端に蛍光分子を付着することができる。金属および半導体ナノ粒子は公知の蛍光消光剤であり、その消光効果は、ナノ粒子と蛍光分子との間の距離によって決まる。非ハイブリダイズ状態では、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドがナノ粒子と相互作用して、かなりの消光が観察される(図20A参照)。標的核酸にハイブリダイズすると、蛍光分子とナノ粒子との間の間隔が開き、蛍光の消光が低減する(図20A参照)。少なくとも、蛍光基がナノ粒子表面から離れすぎて変化の増加が観察されなくなるまでは、オリゴヌクレオチドが長いほど、蛍光の変化は大きいはずである。有効なオリゴヌクレオチドの長さは、経験的に決定することができる。蛍光標識オリゴヌクレオチドが付着した金属および半導体ナノ粒子は、溶液中または基板上で行うものを含めて、上記のいかなるアッセイ形態でも使うことができる。
【0098】
蛍光分子によるオリゴヌクレオチドの標識方法および蛍光の測定方法は、当該技術分野で公知である。好適な蛍光分子も当該技術分野では公知であり、フルオレセイン類、ローダミン類およびテキサスレッド(Texas Red )などがある。そのオリゴヌクレオチドは、上記のように、ナノ粒子に付着する。
【0099】
さらに別の実施態様では、2つの異なる粒子に付着した2種類の蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用することができる。好適な粒子には、ポリスチレン粒子、ポリビニル粒子、
アクリレート粒子およびメタクリレート粒子などのポリマー粒子、ガラス粒子、ラテックス粒子、セファロースビーズならびに当該技術分野で公知の他の同様の粒子などがある。そのような粒子へのオリゴヌクレオチドの付着方法は、当該技術分野では公知である。特に、非常に多様な官能基を、粒子上で利用できるかあるいはそのような粒子に組み込むことができる。官能基には、カルボン酸、アルデヒド、アミノ基、シアノ基、エチレン基、水酸基、メルカプト基などがある。金属および半導体のナノ粒子などのナノ粒子も使用可能である。
【0100】
2つの蛍光団を、供与体および受容体ということで、dおよびaと称する。そのような組み合わせで有用な各種蛍光分子は当該技術分野で公知であり、市販されている(例えばMolecular Probesから)。興味深い組み合わせは、供与体としてフルオレセイン、受容体としてテキサスレッドを用いたものである。dおよびaが付着した2種類のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を標的核酸と混合し、螢光計で蛍光を測定する。その混合物を、dを励起させる波長の光で励起させ、該混合物についてaからの蛍光をモニタリングする。ハイブリダイズすると、dとaとは近接する(図20B参照)。
【0101】
非金属非半導体粒子の場合、ハイブリダイズは、dの蛍光からaの蛍光への蛍光の移動によって示されるか、あるいはdの蛍光に加えてaの蛍光が現れることで示される。ハイブリダイズがない場合は、蛍光団が離れすぎているために、エネルギー移動がほとんどなく、dの蛍光のみが観察される。
【0102】
金属および半導体ナノ粒子の場合、ハイブリッド形成がないと、消光のためにdおよびaによる蛍光がないことで示される(上記参照)。ハイブリダイズは、aによる蛍光の増加によって示される。
【0103】
ここで、受容体蛍光分子および供与体蛍光分子で標識されたオリゴヌクレオチドが付着した上記の粒子およびナノ粒子を、溶液中で行うものおよび基板上で行うものを含めて、上記のアッセイ形態で使用できることが理解される。溶液の形態では、好ましくは、オリゴヌクレオチド配列が図15に示したように標的核酸に結合するように、それらの配列を選択する。図13AおよびBならびに図18に示した形態では、結合オリゴヌクレオチドを用いて、2つのナノ粒子上の受容体蛍光分子と供与体蛍光分子を近接させることができる。さらに、図13Aに示した形態では、基板に付着したオリゴヌクレオチドをdで標識することができる。さらに原則として、ハイブリダイズ時に検出可能な信号または検出可能な信号における変化を与える、化学発光分子などの蛍光分子以外の他の標識を用いることができる。
【0104】
本発明はさらに、核酸検出キットを提供するものである。1実施態様において当該キットは、1つ以上の容器を有してなり、該容器にはオリゴヌクレオチドが付着した2種類以上のナノ粒子が入っている。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有する。当該容器はさらに、核酸の第3の部分に対して相補的な配列を有する充填オリゴヌクレオチドを有することができ、その第3の部分は第1の部分と第2の部分の間に位置している。充填オリゴヌクレオチドは、別個の容器に入れて提供することもできる。
【0105】
第2の実施態様では当該キットは、2つ以上の容器を有する。第1の容器には、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入っている。第2の容器には、該核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入っている。当該キットはさらに、核酸の第3の部分に対して相補的な配列を有する充填オリゴヌクレオチドが入った第3の容器を有
することができ、その第3の部分は第1の部分と第2の部分の間に位置している。
【0106】
さらに別の実施態様において当該キットは、別個の容器に入ったオリゴヌクレオチドおよびナノ粒子を有することができ、そのオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着させてから核酸検出アッセイを行うようにしなければならないと考えられる。オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子を官能化して、そのオリゴヌクレオチドがナノ粒子に付着できるようにしてもよい。別法として、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子を官能基を持たない状態でキットに入れることができ、その場合、アッセイを行う前にそれらを官能化しなければならない。
【0107】
さらに別の実施態様において当該キットは、1つ以上の容器を有する。該容器には、オリゴヌクレオチドが付着した金属または半導体のナノ粒子が入っている。そのオリゴヌクレオチドは、核酸の一部に対して相補的な配列を有し、ナノ粒子に付着していないオリゴヌクレオチド末端に蛍光分子が付着している。
【0108】
さらに別の実施態様において当該キットは基板を有し、該基板にはナノ粒子が付着している。該ナノ粒子には、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着している。キットにはさらに、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器もある。オリゴヌクレオチドは、同一または異なる配列を有してもよいが、各オリゴヌクレオチドは、核酸の一部に対して相補的な配列を有する。キットにはさらに、2つ以上の部分を有する選択配列を有する結合オリゴヌクレオチドが入った第2の容器もあり、該第1の部分は第1の容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的である。キットにはさらに、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第3の容器もある。
【0109】
別の実施態様において当該キットは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板を有する。このキットにはさらに、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第1の容器もある。オリゴヌクレオチドは、同一または異なる配列を有することができるが、各オリゴヌクレオチドは、核酸の一部に対して相補的な配列を有する。このキットにはさらに、第1の容器中のナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第2の容器もある。
【0110】
さらに別の実施態様において当該キットは、別個の容器に入った基板、オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子を有することができる。その基板、オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子を適切な形で互いに付着させてから、核酸検出アッセイを行うようにしなければならないと考えられる。その基板、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子を官能化して、付着を促進することができる。別法として、基板、オリゴヌクレオチドおよび/またはナノ粒子を官能基を持たない状態でキットに入れることができ、その場合、アッセイを行う前にそれらを官能化しなければならない。
【0111】
さらに別の実施態様において当該キットは、核酸の第1の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した基板を有してなる。キットにはさらに、核酸の第2の部分の配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したリポソームが入った第1の容器および少なくとも第1の種類のオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子が入った第2の容器もあり、その第1の種類のオリゴヌクレオチドには、ナノ粒子に付着していない末端にコレステリル基が付着していることで、ナノ粒子は疎水性相互作用によってリポソームに付着することができる。キットはさらに、第1の種類のナノ粒子
に付着した第2の種類のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが付着した第2の種類のナノ粒子が入った第3の容器を有していてもよい。第1の種類のナノ粒子に付着した第2の種類のオリゴヌクレオチドは、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。
【0112】
さらに別の実施態様において当該キットは、オリゴヌクレオチドを付着したナノ粒子が入った第1の容器を有していてもよい。キットにはさらに、1つ以上の別の容器もあり、各容器に結合オリゴヌクレオチドが入っている。各結合オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列の少なくとも一部分に対して相補的な配列を有する第1の部分と、検出対象核酸の一部の配列に対して相補的な配列を有する第2の部分とを有する。各配列が検出対象核酸の配列の一部に対して相補的である限りにおいて、結合オリゴヌクレオチドの第2の部分の配列は異なっていてもよい。
【0113】
別の実施態様において当該キットは、オリゴヌクレオチドが付着した1種類のナノ粒子および1種類以上の結合オリゴヌクレオチドが入った容器を有してなる。各種類の結合オリゴヌクレオチドは、2つ以上の部分を含んだ配列を有する。第1の部分は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的であり、それによって該結合オリゴヌクレオチドは、容器中のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。第2の部分は、核酸の一部の配列に対して相補的である。
【0114】
別の実施態様において当該キットは、2種類の粒子が入った1個または2個の容器を有してなる。第1の種類の粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有し、さらにはナノ粒子に付着していない末端はエネルギー供与体分子で標識されている。第2の種類の粒子にはオリゴヌクレオチドが付着しており、該オリゴヌクレオチドは、核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、さらにはナノ粒子に付着していない末端はエネルギー受容体分子で標識されている。エネルギー供与体および受容体は、蛍光分子とすることができる。
【0115】
これらのキットには、核酸の検出に有用な他の試薬および品目が含まれていてもよい。試薬としては、PCR試薬、ハイブリダイズ試薬、緩衝液などがあり得る。キットの一部として提供することができる他の品目としては、TLCシリカ板などの固体表面(ハイブリダイズを肉眼観察できるようにするため)、注射器、ピペット、キュベット、容器および熱循環器(ハイブリダイズ温度および脱ハイブリダイズ温度を制御するため)などがある。ヌクレオチドまたはナノ粒子を官能化するための試薬をキットに入れることもできる。
【0116】
凝集ナノ粒子の沈殿は、選択核酸を他の核酸と分離する手段を提供するものである。その分離は、核酸の精製における1操作として用いることができる。ハイブリダイズ条件は、核酸検出について前述した条件である。温度が、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの核酸への結合に関するTm(オリゴヌクレオチドの1/2がそれの相補的鎖に結合する温度)より低いと、凝集体が沈殿するのに十分な時間が必要である。ハイブリダイズの温度(例えば、Tmによって測定されるもの)は、塩(NaClまたはMgCl2 )の種類およびそれの濃度によって決まる。塩の組成および濃度を選択して、簡便な作業温度でナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが核酸にハイブリダイズするよう助長し、核酸不在下ではコロイドの凝集が起こらないようにする。
【0117】
本発明はさらに、ナノファブリケーションをも提供する。当該方法は、選択配列を有する1種類以上の連結オリゴヌクレオチドを提供することを含む。ナノファブリケーションに使用する連結オリゴヌクレオチドは、あらゆる所望の配列を有することができ、1本鎖であっても2本鎖であってもよい。そのオリゴヌクレオチドは、塩基、糖または骨格部分
に化学修飾を有することもできる。連結オリゴヌクレオチド用に選択される配列ならびにそれの長さおよび鎖数が、得られるナノ材料またはナノ構造もしくはそのナノ材料またはナノ構造の一部の剛性または柔軟性に影響する。1種類の連結オリゴヌクレオチドならびに2つ以上の異なる種類の連結オリゴヌクレオチドの使用が想到される。使用される異なる連結オリゴヌクレオチドの数およびそれの長さが、得られるナノ材料およびナノ構造の形状、孔径および他の構造的特徴に影響する。
【0118】
連結オリゴヌクレオチドの配列は、少なくとも第1の部分と第2の部分とを有して、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに結合する。連結オリゴヌクレオチドの第1、第2またはそれ以上の結合部分は、同一配列であってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0119】
連結オリゴヌクレオチドの全ての結合部分が同一配列を有する場合は、ナノ材料またはナノ構造を形成するのに、相補的配列を有するオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子は、1種類のみ必要である。連結オリゴヌクレオチドの2つ以上の結合部分の配列が異なっている場合、2つ以上のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を用いなければならない(図17参照)。各ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、連結オリゴヌクレオチドの配列のその2つ以上の結合部分のうちの一つに対して相補的な配列を有する。結合部分の数、配列および長さ、ならびに該当する場合はそれらの間の距離が、得られるナノ材料およびナノ構造の構造的性質および物性に影響する。当然のことながら、連結オリゴヌクレオチドが2つ以上の部分を有する場合には、結合部分の配列を選択して、それらが互いに相補的にならないようにし、連結ヌクレオチドの一つの部分が別の部分に結合するのを回避しなければならない。
【0120】
連結オリゴヌクレオチドとナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体とを、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドが連結オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするような条件下で接触させて、オリゴヌクレオチド結合部によってナノ粒子が一体となっている所望のナノ材料またはナノ構造を形成する。そのハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、特定のナノファブリケーション方式に対して最適化することができる(上記参照)。ストリンジェントなハイブリダイズ条件が好ましい。
【0121】
本発明はさらに、別のナノファブリケーションをも提供するものである。この方法は、2種類以上のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を提供することを含む。第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。第2の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、第1の種類のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的な配列を有する。それらのナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズするような条件下で接触させて、オリゴヌクレオチド結合部によってナノ粒子が一つになっている所望のナノ材料またはナノ構造を形成する。やはり、そのハイブリダイズ条件は当該技術分野では公知であり、特定のナノファブリケーション方式に対して最適化することができる。
【0122】
本発明のどちらのナノファブリケーションにおいても、1種類以上の異なるオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を使用することが想到される。ナノ粒子に付着した異なるオリゴヌクレオチドの数ならびに1種類以上のオリゴヌクレオチドの長さおよび配列が、得られるナノ材料およびナノ構造の剛性および構造的特徴に影響する。
【0123】
さらに、ナノ粒子の大きさ、形状および化学組成が、得られるナノ材料およびナノ構造の性質に影響する。その性質としては、光学的性質、光電子的性質、各種溶液中での安定性、孔径および流路径の変動、フィルターとして作用しながら生理活性物質を分離する能力などがある。異なる大きさ、形状および/または化学組成を有するナノ粒子の混合物の
使用ならびに均一な大きさ、形状および化学組成を有するナノ粒子の使用が想到される。
【0124】
どちらのファブリケーションにおいても、得られるナノ材料またはナノ構造におけるナノ粒子は、オリゴヌクレオチド結合部によって一体となっている。オリゴヌクレオチド結合部の配列、長さおよび鎖数、ならびに存在する異なったオリゴヌクレオチド結合部の数が、ナノ材料またはナノ構造の剛性および構造的性質に影響する。オリゴヌクレオチド結合部が部分的に2本鎖である場合、核酸検出方法との関連で上記のような充填オリゴヌクレオチドを使用することで、その剛性を高めることができる。完全に2本鎖のオリゴヌクレオチド結合部の剛性を高めるには、相補的配列を有する1つ以上の強化オリゴヌクレオチドを用いて、それが2本鎖オリゴヌクレオチド結合部に結合して、3本鎖オリゴヌクレオチド結合部が形成されるようにすることができる。デオキシグアノシンまたはデオキシシチジンカルテットに基づく4本鎖オリゴヌクレオチド結合体も想到される。
【0125】
オリゴヌクレオチドハイブリダイズに基づいてナノ粒子の構成を行う各種系のいくつかを図に示してある。簡単な系(図1)では、1組のナノ粒子が所定の配列を有するオリゴヌクレオチドを持ち、別の1組のナノ粒子が相補的配列を有するオリゴヌクレオチドを持っている。それら2組のナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を混合すると、所定の距離でナノ粒子を配置するためのスペーサーとして作用する2本鎖オリゴヌクレオチド結合部によって、その2種類の粒子が連結される。
【0126】
ナノ粒子を隔てる系として興味深いものでは、図2に示したように、1個の遊離連結オリゴヌクレオチドを加える。連結オリゴヌクレオチドの配列は、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに結合するために、少なくとも第1の部分と第2の部分を有している。加える連結オリゴヌクレオチドの長さを、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの合計長さに等しくなるように選択できる点を除いて、この系は基本的に、核酸検出方法で利用しているものと同じである。図3に示した関連する系は、使用しているナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体の組み合わせを変える必要なく、ナノ粒子間の距離を調整する簡便な手段を提供するものである。
【0127】
ナノ粒子間に所定の間隔を設けるための方法のさらに別の形態を図4に示してある。この場合、突出末端を有するDNAまたはRNAの2本鎖部分を連結オリゴヌクレオチドとして用いている。連結オリゴヌクレオチドの1本鎖突出部分を、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることで、ナノ粒子間に複数の2本鎖オリゴヌクレオチド架橋が得られる。
【0128】
ナノ粒子間に3本鎖オリゴヌクレオチド結合部を用いることで、さらに強固なナノ材料およびナノ構造またはそれらの部分を得ることができる。3本鎖を形成する際に、ピリミジン:プリン:ピリミジンという反復単位(Moser,H.E .and Dervan,P.B.Science ,238 ,645-650 (1987))またはプリン:プリン:ピリミジンという反復単位(Pilch,D.S .et al.,Biochemistry,30,6081-6087 (1991))のいずれかを利用することができる。ピリミジン:プリン:ピリミジン反復単位によって3本鎖結合部を形成することでナノ粒子の構成を行う例を、図10に示してある。図10に示した系では、一方の組のナノ粒子がピリミジンヌクレオシドを有する所定の鎖と結合しており、他方の組がプリンヌクレオシドを有する相補的オリゴヌクレオチドと結合している。ハイブリダイズによって形成された2本鎖オリゴヌクレオチドによってナノ粒子が隔てられるように、オリゴヌクレオチドの付着を行う。次に、ナノ粒子を混合する以前、それと同時またはその直後に、ナノ粒子に連結したピリミジン鎖の配向とは反対の配向を持った遊離ピリミジンオリゴヌクレオチドを系に加える。この系における第3の鎖はフーグスティーン型塩基対合によって保持されていることから、その3本鎖は熱安定性が相対的に低い。その二体鎖の幅にかかる共有結合架橋が、3本鎖複合体を安定化させることが知られている(Salunke, M.,Wu, T
. ,Letsinger, R.L.,J.Am.Chem.Soc.,114,8768-8772 (1992);Letsinger, R.L.and Wu, T. ,J.Am.Chem.Soc.,117 ,7323-7328 (1995);Prakash, G.and Kool,J.Am.Chem.Soc.,114 ,3523-3527 (1992))。
【0129】
ナノ材料およびナノ構造を構築するには、場合によってオリゴヌクレオチド成分のハイブリダイズによってナノ材料またはナノ構造を形成した後に、共有結合架橋によって、アセンブリを所定の位置に「固定」することが望ましいことがある。それは、不可逆反応を起こす官能基をオリゴヌクレオチドに組み込むことで行うことができる。そのための官能基の1例としては、スチルベンジカルボキサミド基がある。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド内に配列された2個のスチルベンジカルボキサミド基は、紫外線(340nm)照射すると容易に架橋を起こすことが明らかになっている(Lewis,F.D.et al.(1995)J.Am.Chem.Soc.117,8785-8792 )。
【0130】
別法として、メルカプトアルキル基によってナノ粒子に対して3' 位で保持されているオリゴヌクレオチドの5' −O−トシル基を、メルカプトアルキル基によってナノ粒子に保持されているオリゴヌクレオチドの3' 末端のチオホスホリル基で置換することが考えられる。両方のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、それによってチオホスホリル基をトシル基の近傍に持ってくるオリゴヌクレオチドの存在下、トシル基はチオニル基によって置換されて、2つの異なるナノ粒子に両端で連結したオリゴヌクレオチドが形成される。この種の置換反応については、Herrlein et al. ,J.Am.Chem.Soc.,177 ,10151-10152 (1995)を参照されたい。メルカプトアルキルオリゴヌクレオチドを金ナノ粒子に付着させるのに用いられる条件下では、チオホスホリルオリゴヌクレオチドは金ナノ粒子とは反応しないことで、そのメルカプト基を介してナノ粒子にアンカーされ、カップリング反応を行うことができる末端チオホスホリル基を有する金ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を得ることができる。
【0131】
アセンブリしたナノ粒子系を所定の位置に固定するための関連するカップリング反応では、Gryaznov and Letsinger,J.Am.Chem.Soc.,115 ,3808に記載の方法に従って、末端チオホスホリルオリゴヌクレオチドによる末端ブロモアセチルアミノヌクレオシドからのブロミドの置換を用いる。この反応の進行は、反応速度が早いことを除き、上記のトシレートの置換と非常に類似している。チオホスホリル基を末端とするオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子は、前述の方法に従って製造する。ブロモアセチルアミノ基を末端とするオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子を製造するには、最初に、一端がアミノヌクレオシド(例えば、5' −アミノ−5' −デオキシチミジンまたは3' −アミノ−3' −デオキシチミジンのいずれか)であって、他端がメルカプトアルキル基であるオリゴヌクレオチドを製造する。次に、そのオリゴヌクレオチドの分子を、メルカプト基を介してナノ粒子に固定し、その後、ブロモアセチルアシル化剤との反応によって、ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体をN−ブロモアセチルアミノ誘導体に変換する。
【0132】
アセンブリを所定の位置に固定するための第4のカップリング方式では、チオホスホリル基を末端とするオリゴヌクレオチドを有するナノ粒子の酸化を利用する。三ヨウ化カリウム、フェリシアン化カリウム(Gryaznov and Letsinger,Nucleic Acids Research,21,1403)または酸素などの温和な酸化剤が好ましい。
【0133】
さらに、連結するオリゴヌクレオチド鎖に、共有結合的付着によって所定の位置に保持された有機および無機官能基を組み込むことで、ナノ材料およびナノ構造の性質を変えることができる。非常に多様な別形態の骨格、塩基および糖が公知である(例えば、Uhlmann,E .and Peyman,A.Chemical Reviews,90,544-584 (1990)参照)。さらに、そのオリゴヌクレオチド鎖を、ヌクレオチド塩基がポリペプチド骨格によって保持されている「ペプチド核酸」鎖(PNA)によって置換することができると考えられる(Wittung,P .
et al.,Nature,368 ,561-563 (1994)参照)。
【0134】
以上の説明から明らかなように、本発明のナノファブリケーションは極めて用途が広い。連結オリゴヌクレオチドの長さ、配列および鎖数;連結オリゴヌクレオチドの結合部分の数、長さおよび配列;ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの長さ、配列および数;ナノ粒子の大きさ、形状および化学組成;使用される異なったオリゴヌクレオチドとナノ粒子の数および種類;ならびにオリゴヌクレオチド結合部の鎖数を変えることで、多様な構造および性質を有するナノ材料およびナノ構造を得ることができる。それらの構造および性質は、オリゴヌクレオチド結合部を架橋したり、オリゴヌクレオチドを官能化したり、オリゴヌクレオチドの骨格、塩基もしくは糖を修飾したり、あるいはペプチド核酸を使用することで、さらに変えることができる。
【0135】
本発明のナノファブリケーションによって作ることができるナノ材料およびナノ構造には、ナノメートル単位の大きさの機器、分離膜、バイオフィルターおよびバイオチップなどがある。本発明のナノ材料およびナノ構造を、化学センサーとして、コンピュータ、薬剤投与および蛋白工学において、さらには他の構造の生合成/ナノ構造ファブリケーション/他の構造に対する鋳型として使用できることが想到される。他の考えられる用途については、Seeman et al. ,New J.Chem. ,17,739(1993)を参照されたい。
【0136】
留意すべき点として、「一つの」という表記は、1つ以上のそのものを指す。例えば、「一つの特性」は、1つ以上の特性または少なくとも一つの特性を指す。そのように、「一つの」、「1つ以上の」および「少なくとも一つの」という用語は、本明細書では互換的に使用される。さらに留意すべき点として、「有してなる」、「含む」および「有する」という用語は、互換的に使用されている。
【実施例】
【0137】
実施例1.オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
A.金ナノ粒子の調製
Frens ,Nature Phys .Sci.,241 ,20(1973)及びGraber,Anal.Chem. ,67,735 (1995)に記載のようにHAuCl4 をクエン酸塩にて還元することにより金コロイド(粒子直径13nm)を調製した。使用に先立って、ガラス製器具は全て王水(HClが3に対しHNO3 が1の比率で混合したもの)中で洗浄し、10-9程度の純度のH2 Oにて洗い流し、オーブンにて乾燥した。HAuCl4 及びクエン酸ナトリウムはAldrich Chemical Company社より購入した。HAuCl4 水溶液(1mM,500ml)を撹拌しつつ還流を行った。これに38.3mMクエン酸ナトリウム(50ml)を素早く加えた。暗黄色から暗紅色に変化した溶液に対し15分間還流を行った。この赤色の溶液を室温まで冷却し、Micron Separations Inc.社の1ミクロンフィルターにて濾過した。Hewlett Packard 社の8452Aダイオードアレイ分光光度計を使用した可視紫外分光法及びHitachi 社の8100透過型電子顕微鏡を使用した透過型電子顕微鏡法(TEM )により生成した金コロイドを定性化した。13nmの直径を有する金粒子は、10〜35個のヌクレオチドからなる標的オリゴヌクレオチド及びプローブとして用いられるオリゴヌクレオチドと共に凝集すると眼に見える色の変化を生じる。
【0138】
B.オリゴヌクレオチドの合成
Milligene Expedite社のDNAシンセサイザーを使用してホスホアミダイト法によりシングルカラムモードで1マイクロモル量のオリゴヌクレオチドを合成した(Eckstein,F .(ed)Oligonucleotides and Analogues:A practical Approach (IRL Press,Oxford,1991 ))。必要な溶液は全てMilligene 社より購入した(DNA合成グレード)。平均カップリング収率は98〜99.8%の間であり、ジメトキシトリチル(DMT )保護基は精製を助けるためにオリゴヌクレオチドに付けたままとした。
【0139】
3'- チオール- オリゴヌクレオチドの調製に際しては、チオール修飾C3 S-S CPGサポートをGlen Research 社より購入し、自動合成器にて使用した。通常の固体サポートからの開裂が行われる間に(16時間55℃)、0.05Mジチオスレイトール(DTT )をNH4 OH溶液に加え、3'ジスルフィドをチオールに還元した。逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)にかける前に過剰なDTT を酢酸エチルで抽出して除去した。
【0140】
5'- チオールオリゴヌクレオチドの調製に際しては、5'- チオール- 修飾C6- ホスホアミダイト試薬をGlen Research 社(44901 Falcon Place,Sterling,Va20166 )より購入した。オリゴヌクレオチドを合成し、DMT 保護基を除去した。この後、乾燥アセトニトリル1mlを100μモルの5'- チオール修飾C6- ホスホアミダイトに加えた。アミダイト溶液200μlと(合成器にて得られた)アクティベイター200μlとを混合し、固体サポート上に合成オリゴヌクレオチドが載置されたカラムにシリンジにて導入し、該シリンジにてカラムを通じて10分間、注入した。この後、サポートを乾燥アセトニトリル(2x1ml)にて30秒間洗い流した。カラムに0.016MのI2/H2 O/ ピリジン混合液(酸化溶液)700μlを導入し、2個のシリンジを用いてカラム内にて30秒間注入した。この後サポートをCH3 CN/ ピリジンの1:1混合液(2x1ml)にて1分間洗い流し、乾燥アセトニトリル(2x1ml)にて最終的に洗い、窒素ガス流により乾燥した。精製を助けるためにトリチル保護基は付けたままとした。
【0141】
逆相HPLCをHewlett Packard 社のODS ハイパーシルカラム(4.6x200mm,粒子径5mm)にて、0.03M Et3 NH+ OAc緩衝液(TEAA)を用い、pH7、95%CH3 CN/5%TEAAの1%/分勾配にて行った。260nmのUV検出にて流率は1ml/分であった。調製HPLCを行って、DMT 保護された非修飾オリゴヌクレオチドを精製した(27分後に溶出)。回収及び緩衝液の蒸発後に、80%酢酸にて室温で30分間処理してオリゴヌクレオチドからDMT を開裂させた。この溶液をほぼ乾燥状態にまで蒸発させ、水を加えた。酢酸エチルを用いて、このオリゴヌクレオチド水溶液から開裂したDMT を抽出した。オリゴヌクレオチドの量を260nmにおける吸光度より求め、最終純度は逆相HPLC(溶出時間14.5分)にて評価した。
【0142】
DMT の抽出後にDTT を加えてジスルフィドの生成量を減少させた点を除き、3' - チオ
ール- オリゴヌクレオチドの精製に際しても同様の手順を行った。40℃にて6時間静置した後、酢酸エチルにてDTT を抽出し、オリゴヌクレオチドをHPLCにて再精製した(溶出時間15分)。
【0143】
5'チオール修飾オリゴヌクレオチドの精製に際しては、非修飾オリゴヌクレオチドの場合と同様な条件下で調製HPLCを行った。精製の後に、150μlの50mM AgNO3 水溶液を乾燥オリゴヌクレオチド試料に加えてトリチル保護官能基を除去した。官能基の開裂が生じ、試料は乳白色に変色した。20分後に10mg/mlDTT 溶液200μlを加え、Agをキレート化し(反応時間5分)、試料を遠心分離にかけて黄色の錯体を沈殿させた。このオリゴヌクレオチド溶液(<50 OD )を(10塩基より大きなオリゴヌクレオチドの脱塩及び緩衝液交換のためのDNAグレードのSephadex G-25 媒質が入れられた)脱塩NAP-5 カラム(Pharmacia Biotech 社,Uppsala ,Sweden)に移して精製した。5'チオール修飾オリゴヌクレオチドの量は可視紫外分光法にて260nmにおける吸光度を測定することにより求められた。最終純度はDionex Nucleopac PA-100 (4x250)カラムにて10mM NaOH溶液(pH12)を用い、10mM NaOH、1M NaCl溶液の2%/分勾配にてイオン交換HPLCを行って評価した。一般的に、約19分及び約25分の溶出時間において2つのピーク値が見られた(溶出時間はオリゴヌクレオチド鎖の長さに依存する)。これらのピークはそれぞれチオールオリゴヌクレオチド及びジスルフィドオリゴヌクレオチドに対応する。
【0144】
C.金ナノ粒子へのオリゴヌクレオチドの結合
前記Aの記述に基づいて調製した金コロイド粒子の水溶液17nM(150μl)を、前記Bの記述に基づいて調製した3'- チオール-TTTGCTGA 3.75μM(46μl)と混合し、1mlEppendorf キャップ付きバイアル中で室温で24時間静置した。第2のコロイド粒子溶液を3.75μM(46μl)3'- チオール-TACCGTTG と反応させた。これらのオリゴヌクレオチドは互いに相補的ではない点に留意されたい。使用の少し前に、2つのナノ粒子溶液のそれぞれの等量を混合した。これらのオリゴヌクレオチドは互いに相補的ではないため、何らの反応も見られなかった。
【0145】
昇温温度(80℃)及び高塩濃度(1M NaCl)の下ではオリゴヌクレオチド修飾ナノ粒子は数田こわたって安定しており、粒子の成長も観察されていない。
高塩濃度における安定性は、本発明の検出方法、及びナノファブリケーションの方法の基本をなすハイブリダイズ反応に必要な条件であるため重要である。
【0146】
実施例2.ナノ粒子集合体の形成
A.連結オリゴヌクレオチドの調製
2種類の(チオール化されていない)オリゴヌクレオチドを例1のBに述べたように合成した。これらのオリゴヌクレオチドは次のような配列を有する。すなわち、
3’ATATGCGCGA TCTCAGCAAA(配列番号1)及び、
3’GATCGCGCAT ATCAACGGTA(配列番号2)
である。
【0147】
これら2種類のオリゴヌクレオチドを1M NaCl、10mMリン酸緩衝溶液(pH7.0)中にて混合すると互いにハイブリダイズし、12塩基対が重なり、2つの8塩基分の付着端を有する2本鎖が形成された。各付着端は、実施例1のCの記述に基づいて調製した金コロイド粒子に結合したオリゴヌクレオチドのうちの一方の塩基配列に対して相補的な配列を有する。
【0148】
B.ナノ粒子集合体の形成
この実施例のAの記載に基づいて調製した連結オリゴヌクレオチド(NaCl溶液にて希釈し最終濃度0.17μMとした)を実施例1のCに基づいて調製したナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体(NaCl溶液にて希釈し、最終濃度5.1nMとした)に室温で加えた。この溶液をNaCl水溶液にて(最終濃度1Mにまで)希釈し、10mMリン酸緩衝液でpH7に安定化させた。これは上記オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成に好適な条件である。溶液の色は直ちに赤から紫に変化し、沈殿が生じた(図6を参照)。数時間経過の後に溶液は透明になりピンク色がかった灰白色の沈殿物が反応容器の底に沈殿した(図6を参照)。
【0149】
この過程にオリゴヌクレオチド及びコロイド粒子の両方が関与していることを確認するため、沈殿物を回収し、pH7に調整された1M NaCl水溶液中に(振盪により)再懸濁した。これによりナノ粒子にハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドは全て取り除かれる。ここで、ハイブリダイズしたオリゴデオキシヌクレオチドの特性吸光度(260nm)、及び金粒子間の距離を示す、凝集したコロイド粒子の特性吸光度(700nm)を調べることにより温度/時間融解実験を行った(図7を参照)。260nm及び700nmにおける吸光度の変化をPerkin-Elmer Lambda 2可視紫外分光計を用い、Peltier PTP-1 温度制御セルホルダーを使用して、温度を0℃と80℃との間にて1℃/分の割合で変化させながら記録した。10mMリン酸緩衝溶液にてpH7に調整し、NaCl濃度が1Mである場合、DNA溶液は約1吸光単位(OD)を示した。
【0150】
この結果を図8Aに示す。温度を0℃と80℃(2本鎖の融解温度(Tm=42℃)よりも38℃高い温度である)との間にて周期的に変化させた場合、コロイド粒子及びオリゴヌクレオチドの光学的計測値の間には明瞭な相関が認められた。図8Bに示されるように、何も結合していない金コロイド粒子の可視紫外スペクトルはそれほど温度に依存していない。
【0151】
高分子状のオリゴヌクレオチドコロイド粒子沈殿物を融点以上に加熱した場合、眼に見える顕著な光学的変化が認められた。この高分子状の物質が脱ハイブリダイズして、水溶液中に可溶な、互いに連結されていないコロイド粒子が生成するのに従って透明な溶液は暗紅色に変化した。この過程は、図8Aの温度変化に基づいたグラフに示されるように可逆的である。
【0152】
コントロール実験において、14-T:14-Aの2本鎖を使用した場合、可逆的に変化する金コロイド粒子集合体は効率的に生成しないことが示された。別のコントロール実験において、付着端に4箇所の塩基誤対合が含まれる連結オリゴヌクレオチド2本鎖を使用した場合、(実施例1のCの記載に基づいて調製され、上述したように反応させた)オリゴヌクレオチド修飾されたナノ粒子の可逆的な凝集は起きないことが示された。第3のコントロール実験においては、連結オリゴヌクレオチドの付着端に相補的な配列を有するが、チオール化されていないオリゴヌクレオチドをナノ粒子と反応させたものを、連結オリゴヌクレオチドと混合した場合、可逆的な凝集は生成しないことが示された。
【0153】
高分子化/凝集過程の更なる証拠は粒子の透過型電子顕微鏡(TEM )法を用いた研究により得られた。TEM 法はHitachi 8100透過型電子顕微鏡を用いて行った。コロイド溶液100μlを多孔質カーボンを張ったグリッド上に滴下して試料を調製した。このグリッドを真空で乾燥し、像視した。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドによって連結された金コロイド粒子のTEM 像においては、金コロイド粒子が凝集した大きなネットワークの形成が見られた(図9A)。何も結合していない金コロイド粒子は同様な条件下においても凝集せず、拡散するか、粒子成長反応を起こす(Hayat ,Clloidal Gold:Principles,Methods ,and Applications,Academic Press,SanDiego,1991 )。今回行った実験におい
てはコロイド粒子成長は見られず、ハイブリダイズしたコロイド粒子は平均径が13nmと非常に均一な大きさを有していた。
【0154】
TEM 法においては、多層構造は重ね合わされた像として示されるため、集合体の立体的な凝集の度合いを評価することは困難である。しかし、1つの層として形成された平面的な集合体を小さな尺度で見た像により、図9Bに示されるように、自律的な凝集過程の更なる証拠が得られた。凝集体においては、粒子は緊密に凝集しており、各粒子間の距離はほぼ60Åの大きさである様子が示されている。この距離は、使用された配列を有する、柔軟性を有さないオリゴヌクレオチドハイブリッドによって連結されたコロイド粒子において予測された距離である95Åよりも若干小さい。しかし、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが連結オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズして形成される2本鎖中にニックが存在することにより、これらのハイブリッドは非常に柔軟であった。粒子間の距離は、系を4本の鎖が重ね合わされるようなものから3本の鎖を用いた系に変更するか(これによりニックの数は減る)、あるいは2本鎖の代りに3本鎖を用いることによって制御可能な変量である点は留意されるべきである。
【0155】
実施例3.オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子の調製
実施例1に示されるように金コロイド粒子(直径13nm)を調製した。更に実施例1に示されるようにチオールオリゴヌクレオチド(HS(CH2 6 OP(O)(O)−オリゴヌクレオチド)を調製した。
【0156】
実施例1に示されたチオールオリゴヌクレオチドを金ナノ粒子に結合させる方法では、場合によっては満足な結果が得られないことがある。殊に、長いオリゴヌクレオチドが使用される場合、診断用系において一般的に存在するバックグラウンドDNAのモデルとして使用される、分子量の大きなサケ精子DNAが過剰に存在する条件下では、オリゴヌクレオチドコロイド粒子結合体は安定化しない。コロイド粒子をチオールオリゴヌクレオチドにより長時間接触させることによりサケ精子DNAに対して安定なオリゴヌクレオチドコロイド粒子結合体が生成したが、これにより生じた結合体は充分にハイブリダイズしなかった。更なる実験により、任意の長さのチオールオリゴヌクレオチドを金コロイド粒子に結合させるための、以下に示す手法が得られた。これにより結合体は分子量の大きなDNAに対して安定であり、かつ充分にハイブリダイズする。
【0157】
金コロイド粒子(17nM)水溶液1mlを(28塩基分の長さを有する)チオールオリゴヌクレオチド(3.68μM)の水溶液の過剰量に加え、混合液を室温で12〜24時間静置した。この後、100μlの1.0Mリン酸水素ナトリウム緩衝液(pH7.0)及び100μlの1.0M NaCl溶液を予混し、前記混合液に加えた。10分後に1%NaN3 水溶液を10μl加え、混合液を更に40時間静置した。この「ねかせ」操作は、チオールオリゴヌクレオチドによる表面の被覆率を高め、オリゴヌクレオチドの塩基を金粒子の表面から遊離させるためのものである。40時間のインキュベーションの後にこの溶液をドライアイス槽中で凍結させ、室温で溶解させると、その後のアッセイにおいて若干透明度が向上した、より鮮明な赤いスポットが得られた。次に溶液をEppendorf 遠心分離器5414を用いて14,000rpmにて約15分間遠心分離し、オリゴヌクレオチド(260nmの吸光度にて示される)の大部分とコロイド状金(520nmの吸光度にて示される)の7〜10%とを含む淡紅色の上清、及び、チューブの底に沈殿した小さな暗色のゼラチン状の沈殿物を得た。
【0158】
この上清を取り除き、沈殿物を約200μlの緩衝液(10mMリン酸、0.1M NaCl)中に再懸濁し、再び遠心した。この上清を取り除いた後、1.0mLの緩衝液(10mMリン酸、0.1M NaCl)にNaN3 の1%水溶液10μlを加えたものに沈殿物を入れた。ピペットによりこの溶液の吸引、排出を数回繰返して沈殿物を再び溶かした。このようにして得られた赤色のマスター溶液は安定であり(赤色のままの状態を保ち凝集しない)、室温で何ヶ月にもわたって安定状態を保つ。また、シリカ薄層クロマトグラフィー(TLC )プレート上にスポットした場合(実施例4参照)にも安定であり、2M NaCL、10mM MgCl2 溶液に加えた場合、あるいはサケ精子DNAを高濃度にて含む溶液に加えた場合にも安定である。
【0159】
実施例4.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体のハイブリッド形成の促進
図11に示されるオリゴヌクレオチド金コロイド粒子結合体I及びIIを実施例3の記載に基づいて調製した。これら2種類の結合体のハイブリッド形成は極めて遅い。殊に、結合体I及びIIの試料を、0.1M NaCl水溶液中、または0.1M NaClに10mM MgCl2 を加えた溶液中にて混合し、混合液を室温で1日放置した場合、色の変化はほとんど、あるいは全く見られなかった。
【0160】
ハイブリッド形成を促進する2つの方法が見出された。
第1の方法として、結合体I及びIIの混合液(0.1M NaCl溶液中にそれぞれ15nMずつ含まれている)をドライアイス及びイソプロピルアルコールが入れられた槽に5分間浸漬して凍結させた後、室温で溶かすことによりハイブリッド形成が促進された。凍結した溶液が溶けて生じた溶液は青味がかった色を呈した。この溶液1μlを標準的なC-18 TLCシリカプレート(Alltech Associates社)上に置くと直ちに濃青色を呈した。こうした凍結溶解法によるハイブリッド形成及びこれに伴う色変化は可逆的であった。ハイブリッド形成が生じている溶液を80℃に加熱すると溶液は赤色に変化し、TLC プレート
上に紅色のスポットを生じた。これに続く凍結、溶解により系は(青い)ハイブリッド形成した状態に(溶液及びC-18 TLCプレート上のスポットの両方共)戻った。溶液を再凍結させない同様な実験においてC-18 TLCプレート上に得られたスポットは紅色であった。
【0161】
より速い結果を得るための第2の方法は結合体及び標的核酸を暖めるものである。例として、別の一実験では、0.1M NaCl溶液中でオリゴヌクレオチド金コロイド粒子結合体及びオリゴヌクレオチド標的配列を急速に65℃にまで暖め、20分間かけて室温にまで冷却させた。これをC-18シリカプレート上にスポットし、乾燥させるとハイブリッド形成を示す青いスポットが得られた。これに対し、結合体と標的核酸とを0.1M NaCl溶液中で室温で1時間インキュベートした場合には、ハイブリッド形成を示す青色を呈さなかった。ハイブリッド形成0.3M NaCl中において更に促進された。
【0162】
実施例5.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
図12に示されたオリゴヌクレオチド金コロイド粒子結合体1及び2を実施例3の記載に基づいて調製し、図12に示されたオリゴヌクレオチド標的核酸3を実施例2の記載に基づいて調製した。誤対合及び欠失を含む標的核酸4,5,6及び7はNorthwestern University Biotechnology Facility,Chicago ,ILより購入した。これらのオリゴヌクレオチドは40nmolスケールで合成し、逆相C18 カートリッジ(OPC )にて単離したものである。オリゴヌクレオチドの純度はイオン交換HPLCを行って測定した。
【0163】
急速な加熱を行った後、ストリンジェント温度にまで急速に冷却することにより選択的なハイブリッド形成が実現された。例として、オリゴヌクレオチドコロイド粒子結合体1及び2を各15nMづつと標的オリゴヌクレオチド3,4,5,6または7のいずれかを3nmol含む0.1M NaClに5mMのMgCl2 を加えて100μlとしたものを74℃にまで加熱し、下の表1に示される温度にまで冷却し、その温度で10分間インキュベートしてハイブリッド形成を行った。この後、各反応物の試料を3μlずつC-18TLC シリカプレート上にスポットした。これを乾燥(5分間)すると、ハイブリッド形成が生じている場合には濃青色を呈した。
【0164】
この結果を下の表1に示した。紅(ピンク)色のスポットは陰性(ナノ粒子はハイブリッド形成により凝集しなかった)の結果を示し、青いスポットは陽性(ナノ粒子は両方のオリゴヌクレオチドコロイド粒子結合体が関与するハイブリッド形成により凝集した)の結果を示す。
【0165】
【表1】

【0166】
表1に示されるように、60℃でのハイブリッド形成においては完全に相補的な標的核酸3に対してのみ青いスポットが生じた。50℃でのハイブリッド形成においては標的核酸3及び6の両方に対して青いスポットが生じた。45℃でのハイブリッド形成においては標的核酸3、5及び6に対して青いスポットが得られた。
【0167】
これに関連して、1個の誤対合Tヌクレオチドを含む標的核酸は結合体1及び2と混合すると58℃で陽性反応(青色)を示し、64℃で陰性(赤色)を示した。同様な条件で、完全に相補的な標的核酸(3)はいずれの温度においても陽性反応を示した。このことはこの試験により完全に相補的な標的核酸と誤対合塩基を1個含む標的核酸とを区別することが可能であることを示す。
【0168】
異なるハイブリッド形成法を用いても同様な結果が得られた。特に、凍結、溶解の後にストリンジェント温度にまで急速に暖めることにより選択的ハイブリッド形成が実現された。例として、オリゴヌクレオチドコロイド粒子結合体1及び2をそれぞれ15nMずつと、標的オリゴヌクレオチド3,4,5,6または7のいずれかを10ピコモル含む0.1M NaCl溶液100μl中でハイブリッド形成を行い、これをドライアイス- イソプロピルアルコール槽に5分間浸漬して凍結させ、室温にて溶解した後、下の表2に示される温度にまで急速に暖め、その温度で10分間インキュベートした。この後、各反応物の試料を3μlずつC-18TLC シリカプレート上にスポットした。結果を表2に示す。
【0169】
【表2】

【0170】
これらの系の重要な特徴は、温度変化に伴う色の変化が非常に明瞭である点であり、約1℃の温度範囲で色の変化が起きる。このことはコロイド粒子結合体に関する溶融過程及び結合過程において高い協同性があることを示し、完全に相補的な配列と誤対合塩基対を1対含む配列とを容易に区別することが可能となる。
【0171】
この区別の精度の高さは2つの特徴に起因するものと考えられる。第1には、陽性反応を得るためには比較的短い2つのプローブオリゴヌクレオチド断片(15ヌクレオチド)が標的核酸上で互いに直線上に整列することが必要な点である。いずれの断片中に1個の誤対合が含まれる場合にも、類似の2成分検出系において、より長いプローブ(例として30塩基対分のオリゴヌクレオチド)中に1個の誤対合が含まれる場合と比較して不安定である。第2に、溶液中で標的オリゴヌクレオチドがナノ粒子結合体にハイブリダイズする際に得られる260nmにおける吸光度は、ナノ粒子に基づいたものであって、DNAに基づいたものではないという点である。260nmにおける吸光度は、多数のオリゴヌクレオチド2本鎖による重合化ネットワークとして形成されるナノ粒子集合体の解離に依存している。このことにより、標準的なDNAの熱変性と比較して、集合体の解離が生じる温度範囲は狭くなる。簡単に述べれば、複雑に連結した集合体中では、特定の2本鎖が
分離してもナノ粒子が溶液中に遊離しない場合があるということである。したがってナノ粒子を含まない類似の系において溶融が起きる温度範囲(12℃)と比較して、集合体の溶融が起きる温度範囲は非常に狭い(4℃)。この検出法において更に重要かつ有利な点はC-18シリカプレート上における色変化の感度に対する温度範囲である(<1℃)。原理的に、ナノ粒子に基づいた、3成分を用いるこの手法は、標的核酸にハイブリダイズする1本鎖プローブに基づいたいかなる2成分検出系と比較してもより選択的な検出が可能である。
【0172】
マスター溶液を、1nmolの標的核酸3を含むハイブリッド形成緩衝液(0.3M NaCl,10mM リン酸,pH7)100μlとして調製した。この溶液1μlは標的ヌクレオチド10ピコモルに相当する。このマスター溶液の少量を特定の濃度にまでハイブリッド形成緩衝液にて連続希釈した。表3は、プローブ1及び2の混合液3μlと異なる量の標的核酸3とを使用した場合の感度を示す。凍結溶解手法によりハイブリッド形成を行った後、これらの溶液3μlずつをC-18 TLCプレート上にスポットして色を調べた。下の表3において、ピンクは陰性反応を示し、青は陽性反応を示す。
【0173】
【表3】

【0174】
この実験結果はこの特定の系の下方検出限界は10フェムトモルであることを示す。
実施例6.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
DNA修飾ナノ粒子は図13Bのパネル1−6に示されるように修飾された透明基板上に吸着された。この方法は、DNAハイブリッド形成という相互作用を用い、ガラス表面に付着したナノ粒子に対してDNA修飾ナノ粒子を連結させることを含む。
【0175】
顕微鏡用スライドグラスはFisher scientific より購入した。このスライドグラスを先端にダイヤモンドを使用したペン型ガラス切りにて約5x15mmの小片に切断した。スライドガラスは、H2 SO4 :H2 2 比が4:1である50℃の混合溶液に20分間浸漬して洗浄した。この後、スライドグラスを多量の水、続いてエタノールにて洗い流し、乾燥窒素ガス流にあてて乾燥した。末端にチオールを有するシランにてこのスライドグラス表面を機能修飾するために、スライドグラスを脱ガスしたメルカプトプロピルトリメトキシシラン1%(体積比)エタノール溶液中に12時間浸漬した。この後、スライドグラスをエタノール溶液から取り出し、エタノール、次いで水にて洗い流した。直径13nmの金ナノ粒子(実施例1の記載に基づいて調製)を含む溶液中にスライドグラスを浸漬することによりナノ粒子はスライドグラスの末端を有する表面上に吸着された。このコロイド溶液中に12時間浸漬した後、スライドグラスを取り出して水で洗い流した。このスライドグラスは吸着したナノ粒子のためにピンク色の外観を呈し、金ナノ粒子の水コロイド溶液と同様な可視紫外吸光プロファイルを示した(520nmに表面のプラズモン吸光度ピーク)(図14A参照)。
【0176】
スライドグラスを、新たに単離した3'チオールオリゴヌクレオチド(3'チオールATGCTCAACTCT(配列番号33))(実施例1及び3の記載に基づいて合成)を含む0.2OD(1.7μM)溶液に浸漬することによりDNAをナノ粒子修飾表面に付着させた。12時
間浸漬した後、スライドグラスを取り出し水で洗い流した。
【0177】
検体DNA鎖がナノ粒子を修飾基板に結合させる能力を証明するため、連結オリゴヌクレオチドを調製した。連結オリゴヌクレオチド(実施例2の記載に基づいて調製)は24bpの長さを有し(5'TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG(配列番号34))、その配列は端部において、既に基板表面上に吸着されたDNA (配列番号33)に相補的な12bpの配列を有する。この後、基板を連結オリゴヌクレオチドを含む(0.4OD,1.7μM)ハイブリッド形成緩衝溶液(0.5M NaCl,10mMリン酸緩衝液,pH7)に12時間浸漬した。基板を溶液から取り出し、同様な緩衝溶液にて洗い流した後、基板に付着した連結オリゴヌクレオチドのハイブリダイズしていない部分に相補的なオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC 5' チオール(配列番号35))(実施例3の記載に基づいて調製)にて修飾された直径13nmの金ナノ粒子を含む溶液に、基板を浸漬した。12時間浸漬した後、基板を取り出してハイブリッド形成緩衝液にて洗い流した。基板の色は紫へと暗化し、520nmでの可視紫外吸光度はほぼ2倍となった(図14A)。
【0178】
オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子が、連結オリゴヌクレオチドによるDNAハイブリッド形成相互作用を介して、オリゴヌクレオチド/ナノ粒子修飾された表面に付着したことを確認するため、溶融曲線実験を行った。溶融実験を行ううえで、ハイブリッド形成緩衝液1mLが入れられたキュベットに基板を入れ、実施例2のBにおいて使用されたものと同様な器具を用いた。基板の温度を毎分0.5℃づつ上昇させながらナノ粒子による吸光度(520nm)を調べた。ナノ粒子による吸光度は温度が60℃を越えた時点で急激に低下した(図14B)。この吸光度信号の1次導関数は融解温度62℃を示した。この温度はナノ粒子を含まない溶液中で3本のDNA鎖をハイブリダイズさせた場合の温度に対応するものである(図14B参照)。
【0179】
実施例7.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
図15に示された検出系は、2個のプローブ1と2とが相補的な標的核酸上において互いの尾部同士が向き合うような状態で直線上に並ぶように構成されたものである(図15参照)。これは標的鎖上において2個のプローブが同じ方向で並ぶ実施例5で述べられた系とは異なるものである(図12参照)。
【0180】
図15に示されたオリゴヌクレオチド金ナノ粒子結合体1及び2を、ナノ粒子をハイブリッド形成緩衝液(0.3M NaCl,10mMリン酸,pH7)中に再び遊離させた点を除き、実施例3の記載に基づいて調製した。ナノ粒子が赤色を呈する原因である、522nmにおける表面のプラズモン帯域の吸光度の低減を測定することにより、ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体の最終濃度は13nMと推定された。図15に示されたオリゴヌクレオチド標的はNorthwestern University Biotechnology Facility,Evanston,ILより購入した。
【0181】
オリゴヌクレオチドナノ粒子結合体1及び2を13nMづつ含むハイブリッド形成緩衝液150μlに60ピコモル(6μl)の標的核酸4を加えると、溶液の色は直ちに赤から紫に変化した。この色の変化は金ナノ粒子がオリゴヌクレオチドによって連結され、大きな重合ネットワークが形成されたことによるものである。これによりナノ粒子の表面プラズモン共振が赤方に偏移する。この溶液を2時間静置すると、大きな巨視的集合体の沈殿が見られた。この溶液において集合体を懸濁し、「溶融分析」を行った。「溶融分析」を行うため、溶液をハイブリッド形成緩衝液にて1mlに希釈し、1分/度の温度保持時間にて温度を25℃から75℃に上昇させ、1分毎に260nmにおける集合体の光学的サインを記録した。「融解温度」(Tm)53.5℃において特徴的な急激な変化が見られた(最大値の1/2において幅最大、1次導関数のFW1/2 =3.5℃)。これは集合体のオリゴヌクレオチドナノ粒子重合体としての特徴に一致するものである。これはナノ粒子
を含まないオリゴヌクレオチド(Tm=54℃,FW1/2 =〜13.5℃)において見られる幅の広い変化におけるTmとは対称的である。ナノ粒子を含まないオリゴヌクレオチド溶液の「溶融分析」を、ナノ粒子を含む場合の分析と同様な条件の下で行った。ただしこの場合、温度は10℃から80℃に上昇させた。また、各オリゴヌクレオチド成分の溶液中の濃度は1.04μMとした。
【0182】
この系の選択性を検定するため、プローブ1及び2に対して完全に相補的な標的核酸4により形成された集合体のTmと、1個の塩基の誤対合、欠失、または挿入の内のいずれかを含む標的核酸(図15)により形成された集合体のTm' とを比較した。異なる集合体のTm値によって示されるように、完全に相補的な標的核酸により形成された集合体と比較した場合、不完全な標的核酸を含む金ナノ粒子オリゴヌクレオチド集合体は全て、顕著かつ測定可能な不安定化効果を示した。不完全な標的核酸を含む溶液は、52.5℃に保った恒温槽に入れた場合の色によって、完全に相補的な標的核酸を含む溶液と容易に区別することが可能であった。この温度は誤対合を含むポリヌクレオチドのTmよりも高い温度であるため、この温度で紫色を呈したのは完全に相補的な標的核酸を含む溶液だけであった。半相補的な標的核酸を含むプローブ溶液についても「溶融分析」を行った。この場合260nmにおける吸光度はわずかに増加しただけであった。
【0183】
次に、各オリゴヌクレオチド標的(図15)2μl(20ピコモル)を各プローブを50μl(13nM)づつ含むハイブリッド形成溶液に加えた。室温にて15分静置した後、この溶液を温度制御される水槽中に移し、下の表4に示された温度で5分間インキュベートした。この後、各反応溶液の試料3μlづつをC-18シリカプレート上にスポットした。2つのコントロール実験を行って、標的核酸上において両プローブが並ぶことが、凝集が起こるため、ひいては色の変化が起こるために必要であることを証明した。第1のコントロール実験はプローブ1及び2からなり、標的核酸は含まない。第2のコントロール実験はプローブ1及び2と一方のプローブの配列に対してのみ相補的である標的核酸(図15)とからなる。結果を下の表4に示す。ピンク色のスポットは陰性反応を示し、青色のスポットは陽性反応を示す。
【0184】
肉眼にて検出可能な色の変化は1℃よりも小さな幅で起きるため、完全に相補的な標的核酸4を、誤対合を含んだ標的核酸(5及び6)、末端において欠失が見られる標的核酸(7)、及び、2個のオリゴヌクレオチドプローブが出合う標的核酸上の点において1個の塩基が挿入されている標的核酸(8)から容易に区別することが可能である。色変化が起きる温度TCはTmに近い温度であるが同じではない点は注意を要する。両方のコントロールにおいて、全ての温度において見られたピンクがかった赤色によって示されるように、粒子の凝集や溶液中の不安定性の形跡は認められなかった。両コントロールは、プレートテストにおいて全ての温度で陰性のスポット(ピンク)を示した(表4)。
【0185】
1個の塩基が挿入された標的核酸8を、完全な相補性を有する標的核酸4から区別可能であることは、挿入を有する鎖が2個のプローブ配列に対して完全な相補性を有することを考慮すると真に驚くべきことである。標的核酸8とナノ粒子プローブとから形成された集合体のこのような不安定性は、2個の短いプローブの使用と、プローブの尾部が出合う部分の2個のチミジン塩基の間に挟まれた塩基が、完全に相補的な標的核酸にハイブリダイズする際に失われることによるものと考えられる。同様な効果は、3個の塩基対(CCC )が挿入された標的核酸を同様の条件(Tm=51℃)下にてプローブにハイブリダイズさせた場合にも見られた。上記の実施例5に記載された系においては、挿入塩基を有する標的核酸を完全に相補的な標的核酸から区別することはできない。したがって、この実施例に示される系は選択性の面から見て非常に好ましい。この系はまた実施例5に記載の系と同程度の感度、すなわち増幅技術を用いずに約10フェムトモル程度の検出感度を示した。
【0186】
この結果は標的鎖中の1塩基誤対合は標的鎖中への挿入と同様、全て検出可能であることを示す。重要な点としては、色変化が検出可能である温度範囲は極めて明確であり、色変化は非常に狭い温度範囲で起きる点である。この明確な変化は標的オリゴヌクレオチド鎖によって連結されたコロイド粒子の大きなネットワークに関与する溶融過程には大きな協同性があることを示すものである。データによって示されるような顕著な選択性はこのことに起因する。
【0187】
【表4】

【0188】
実施例8.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
「充填」2本鎖オリゴヌクレオチドによるハイブリッド形成を用いた一連の実験を行った。図16に示されたナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体1及び2を異なる長さを有する標的核酸(24,48及び72塩基分の長さ)と相補的な充填オリゴヌクレオチドと共に図16に示されるようにインキュベートした。他の条件は実施例7と同様である。また、オリゴヌクレオチド及びナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体も実施例7の記載に基づき調製した。
【0189】
予想されたように、粒子間の距離に依存した金ナノ粒子の光学的特性により、ハイブリッド形成後の反応溶液はそれぞれ大きく異なる光学的性質を示した(表5参照)。しかし、これらの溶液をC-18 TLCプレート上にスポットした場合、標的オリゴヌクレオチドの長さや金ナノ粒子間の距離に関わらず、室温または80℃において乾燥すると青色が現れた(表5参照)。これは恐らく固体による支持によってハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドナノ粒子結合体の凝集が促進されることによるものと思われる。このことにより、溶液をTLC プレート上にスポットした際、金粒子間の距離は大きく(少なくとも72塩基分)、色変化による検出はやはり可能であることが示される。
【0190】
【表5】

【0191】
この実施例及び他の実施例において見られる色の変化は、金ナノ粒子間の距離(粒子間距離)がナノ粒子の直径にほぼ等しいかあるいはナノ粒子の直径よりも小さい場合に生じる。すなわち、オリゴヌクレオチドナノ粒子結合体が標的核酸にハイブリダイズして集合体を形成する際に色変化が生じるかどうかは、ナノ粒子の大きさ、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドの大きさ、及び標的核酸にハイブリダイズした際のナノ粒子間の間隔に影響される。例えば、直径13nmの金粒子は、10〜35ヌクレオチド長の標的配列にハイブリダイズするように構成され、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドを使用して凝集させた場合、色の変化を生じる。標的核酸にハイブリダイズした場合に色変化を生じるための粒子間の好適な間隔は、実験結果に示されるように凝集の程度に応じて変化する。この結果はまた、固体表面によって既に凝集している試料の更なる凝集が促進され、金ナノ粒子がより接近することを示している。
【0192】
金ナノ粒子において見られる色変化は金の表面プラズモン共鳴の偏移及び拡大に起因するものである。この色変化は、直径が約4nmよりも小さい金ナノ粒子では、核酸の特異的検出に必要なオリゴヌクレオチドの長さがナノ粒子の直径を上回るために起きにくい。
【0193】
実施例9.ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
プローブ1及び2(図12)5μlづつを緩衝液(10mMリン酸,pH7)に加え、0.1M NaClの最終濃度とし、この溶液に1μlのヒトの尿を加えた。この溶液を凍結、溶融し、C-18 TLCプレート上にスポットすると青色を呈さなかった。各プローブを12.5μlづつとヒトの尿2.5μlとを含む同様の溶液に、0.25μl(10ピコモル)の標的核酸3(図12)を加えた。この溶液を凍結、溶融し、C-18 TLCプレート上にスポットすると青色を呈した。
【0194】
同様の実験をヒトの唾液の存在下にて行った。プローブ1、2を各12.5μlづつと標的核酸3を0.25μl含む溶液を70℃にまで加熱した。これを室温にまで冷却した後、2.5μlの唾液溶液(ヒト唾液を水で1:10に希釈したもの)を加えた。これを凍結、溶融し、C-18 TLCプレート上にスポットすると、プローブが標的核酸にハイブリダイズしたことを示す青色のスポットを得た。標的核酸を加えないコントロール実験においては、青色のスポットは得られなかった。
【0195】
実施例10. ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体を使用したアッセイ
図13Aに示されるようなアッセイを行った。まずFisher scientific より購入した顕微鏡用スライドグラスを、先端にダイヤモンドを使用したペン型ガラス切りにて約5x15mmの小片に切断した。このスライドグラスを、H2 SO4 :H2 2 比が4:1である50℃の混合溶液に20分間浸漬して洗浄した。この後、スライドグラスを多量の水、続いてエタノールにて洗い流し、乾燥窒素ガス流にあてて乾燥した。チオール修飾DNA
を文献(Chrisey et al.,Nucleic Acids Res. ,24,3031-3039 (1996)及びChrisey et
al.,Nucleic Acids Res.,24,3040-3047 (1996))に報告されている方法の改良法に基づいてスライドグラス上に吸着させた。最初に10-9程度の純度の水を用いた1mM酢酸水溶液にて1%トリメトキシシリルプロピルジエチルトリアミン(DETA,United Chemical Technologies,Bristol ,PAより購入)溶液を調製し、これにスライドグラスを室温で20分浸漬した。この後スライドグラスを水、続いてエタノールにて洗い流した。乾燥窒素ガス噴流による乾燥の後、スライドグラスを温度制御ヒートブロックを用いて120℃で5分ベークした。冷却後、スライドをメタノール:ジメトキシスルフォキシドが80:20の比率である溶媒を用いて調製した1mMスクシニミジル4- (マレミドフェニル)- ブチレート(SMPB、Sigma Chemicals より購入)溶液に室温で2時間浸漬した。SMPB溶液から取り出し、エタノールにて洗い流した後、SMPB架橋剤に結合しなかったアミン部位を以下のようにキャップした。まず、スライドグラスを10%1- メチルイミダゾルを含むTHF :ピリジンの8:1溶液に5分間浸漬した。この後スライドグラスをTHF:無水酢酸の9:1溶液に5分間浸漬した。これらのキャップ溶液はGlen Research,Sterling,VA より購入した。スライドグラスをTHF 、続いてエタノール、最後に水にて洗い流した。
【0196】
新たに精製されたオリゴヌクレオチド(3'チオールATGCTCAACTCT(配列番号33))を含む0.2OD(1.7μM)溶液中に上記の改良スライドグラスを浸漬して表面にDNAを付着させた。12時間の浸漬の後、スライドグラスを取り出し、水で洗い流した。
【0197】
検体DNA鎖がナノ粒子を修飾基板に結合させる能力を証明するため、連結オリゴヌクレオチドを調製した。連結オリゴヌクレオチドは24bpの長さを有し(5'TACGAGTTGAGAATCCTGAATGCG(配列番号34))、その配列は端部において、既に基板表面上に吸着されたDNAに相補的な12bpの配列を有する。この後、基板を連結オリゴヌクレオチドを含む(0.4OD,1.7μM)ハイブリッド形成緩衝溶液(0.5M NaCl,10mMリン酸緩衝液,pH7)に12時間浸漬した。基板を溶液から取り出し、同様な緩衝溶液にて洗い流した後、基板に付着した連結オリゴヌクレオチドのハイブリダイズしていない部分に相補的なオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC 5' チオール(配列番号35))にて修飾された直径13nmの金ナノ粒子を含む溶液に、基板を浸漬した。12時間の浸漬の後、基板を取り出してハイブリッド形成緩衝液にて洗い流した。ガラス基板の色は無色透明から透明なピンク色に変化した(図19A参照)。
【0198】
上述のようにスライドグラスを連結オリゴヌクレオチドの溶液に浸漬し、更にオリゴヌクレオチド(3'チオールATGCTCAACTCT(配列番号33))が付着させられた13nm金ナノ粒子を含む溶液に浸漬することにより、スライドグラスに更なるナノ粒子の層を付着させた。12時間の浸漬の後、スライドグラスをナノ粒子溶液から取り出し、上述のようにハイブリッド形成緩衝液にて洗い流し緩衝液に浸漬した。スライドグラスの色は明らかに分かる程度に更に赤く変化した(図19A参照)。上記の連結オリゴヌクレオチド手順、及びオリゴヌクレオチド(TAGGACTTACGC 5' チオール(配列番号35))にて修飾した、最終層としての13nm金ナノ粒子を用いた、ナノ粒子溶液に浸漬する手順を繰返すことにより最終ナノ粒子層を付着させた。やはり色は暗化し、520nmにおける可視紫外吸光度は増大した(図19A参照)。
【0199】
オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子が、連結オリゴヌクレオチドによるDNAハイブリッド形成相互作用を介して、オリゴヌクレオチド修飾表面に付着したことを確認するため、溶融曲線実験を行った。溶融実験を行ううえで、ハイブリッド形成緩衝液1.5mLが入れられたキュベットにスライドグラスを入れ、実施例2のBにおいて使用されたものと同様な器具を用いた。温度を1℃上昇させるごとに1分間その温度にて保持するようにして基板の温度を20℃から80℃にまで上昇させ、各温度におけるナノ粒子による吸光度(520nm)を調べた。ナノ粒子による吸光度は温度が52℃を越えた時点で急激に減
少した(図19B参照)。吸光度シグナルの1次導関数は融解温度55℃を示した。この温度は溶液中でオリゴヌクレオチドナノ粒子結合体と連結オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせた場合の温度に対応するものである(図19B参照)。
【0200】
【表6】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】相補的オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を結合させることによるナノ粒子凝集体の形成を示した略図。相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイズの結果、ナノ粒子が互いに結合して凝集体となっている。Xは、何らかの共有結合アンカー(−S(CH2 3 OP(O)(O)−などで、この場合Sが金ナノ粒子に結合している)を表す。図1およびそれ以降の一部の図において簡潔を期して、各粒子に1個のみのオリゴヌクレオチドが付着しているように図示してあるが、実際には、各粒子にはいくつかのオリゴヌクレオチドが付着している。さらに、留意すべき重要な点として、図1およびそれ以降の図において、金ナノ粒子とオリゴヌクレオチドの相対的な大きさは、一定の比で描いてあるわけではない。
【図2】オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を使用する核酸検出系を示した略図。この2個のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、図示した1本鎖DNAの2つの異なる部分に対して相補的な配列を有する。その結果、それらはDNAにハイブリダイズして、検出可能な変化を起こす(凝集体の形成および変色)。
【図3】図2に示した系の別形態のものの略図。この2個のナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、そのナノ粒子上のオリゴヌクレオチドに対して相補性のない第3の部分によって隔てられている図示した1本鎖DNAの2つの異なる部分に対して相補的な配列を有する。さらにこの図には、適宜使用される充填オリゴヌクレオチドも示してあり、そのオリゴヌクレオチドは、1本鎖DNAの非相補的部分とのハイブリダイズに使用することができる。DNA、ナノ粒子および充填オリゴヌクレオチドを組み合わせると、ナノ粒子が凝集して、ニックを有する2本鎖オリゴヌクレオチド結合部が形成される。
【図4】連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズおよび脱ハイブリダイズの結果としての、オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子の可逆的凝集を示す略図。図示した連結オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドに対して相補的な突出末端(付着端)を有する2本鎖DNAである。
【図5】オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子と該ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドに対して相補的な配列を有する連結オリゴヌクレオチドとを結合させることによる、ナノ粒子凝集体の形成を示す略図。
【図6】2種類の金コロイドを含むキュベットを示す図。各コロイドには、異なるオリゴヌクレオチドが付着しており、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドに対して相補的な付着端を有する連結2本鎖オリゴヌクレオチドがある(図4参照)。キュベットA−連結DNAのTmより高温の80℃;脱ハイブリダイズ(熱変性)。色は暗赤色である。キュベットB−冷却して連結DNAのTmより低い室温とした後;ハイブリダイズが起こり、ナノ粒子が凝集しているが、凝集体は沈殿していない。色は紫である。キュベットC−室温で数時間後に、凝集したナノ粒子がキュベットの底に沈殿している。溶液は透明で、沈殿はピンクがかった灰色である。BまたはCを加熱するとAになる。
【図7】図4に示したように、温度を下げた際の連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズしたために、オリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子が凝集する時の吸光度変化を示す、波長(nm)に対する吸光度のグラフ。
【図8A】図4に示した系についての温度/時間に対する吸光度の変化のグラフ。低温では、オリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子が、連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズのために凝集している(図4参照)。高温(80℃)では、ナノ粒子が脱ハイブリダイズしている。経時的温度変化は、それが可逆的プロセスであることを示している。
【図8B】未修飾金ナノ粒子の水溶液を用いて同様に行った温度/時間に対する吸光度の変化のグラフ。図8Aで認められる可逆的変化は認められない。
【図9A】透過型電子顕微鏡(TEM)写真。金ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズによって互いに結合した凝集金ナノ粒子のTEM画像である。
【図9B】透過型電子顕微鏡(TEM)写真。連結ナノ粒子の配列を示す2次元凝集体のTEM画像である。
【図10】ピリミジン:プリン:ピリミジンという反復単位を有するナノ粒子間の熱的に安定な3本鎖オリゴヌクレオチド結合部の形成を示す略図。そのような3本鎖結合部は、2本鎖結合部より堅固である。図10では、一方のナノ粒子には、全てプリンからなるオリゴヌクレオチドが付着しており、他方のナノ粒子には、全てピリミジンからなるオリゴヌクレオチドが付着している。3本鎖結合部(ナノ粒子に付着していない)を形成するための第3のオリゴヌクレオチドは、ピリミジンで構成されている。
【図11】相補的オリゴヌクレオチドが付着しているナノ粒子を結合させることによるナノ粒子凝集体の形成を示す略図。相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイズの結果、ナノ粒子が結合して凝集体となる。図11では、円形はナノ粒子を表し、式はオリゴヌクレオチド配列であり、sはチオアルキルリンカーである。円形上の不規則な曲線は、ナノ粒子の表面を覆う、上記と同じ配列の他のオリゴヌクレオチド分子を表す。この2種類のナノ粒子上の複数のオリゴヌクレオチドは互いにハイブリダイズして、凝集体構造を形成することができる。
【図12】(A−F)オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図。オリゴヌクレオチドナノ粒子結合体1および2ならびに1本鎖オリゴヌクレオチド標的3、4、5、6および7が図示してある。円形はナノ粒子を表し、式はオリゴヌクレオチド配列であり、点線及び破線はヌクレオチドの結合連結部を表す。
【図13A】ナノ粒子および透明基板を用いたDNA(検体DNA)検出系を示した略図。
【図13B】ナノ粒子および透明基板を用いたDNA(検体DNA)検出系を示した略図。
【図14A】オリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子(一定量は溶液中にあり、一定量は図13Bに示したように透明基板に付着している)が、連結オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズによって凝集する場合の吸光度変化を示す、波長(nm)に対する吸光度のグラフ。
【図14B】図14Aで言及したハイブリダイズ系での、昇温(溶融)に伴う吸光度変化を示すグラフ。
【図15】(A−G)オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図。オリゴヌクレオチドナノ粒子結合体1および2ならびに1本鎖オリゴヌクレオチド標的3、4、5、6、7および8が図示してある。円形はナノ粒子を表し、式はオリゴヌクレオチド配列であり、Sはチオアルキル連結部を表す。
【図16】(A−C)オリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図。オリゴヌクレオチドナノ粒子結合体1および2、各種長さの1本鎖オリゴヌクレオチド標的、ならびに各種長さの充填オリゴヌクレオチドが図示してある。円形はナノ粒子を表し、式はオリゴヌクレオチド配列であり、Sはチオアルキル連結部を表す。
【図17A】ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体およびオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図である。円形はナノ粒子を表し、直線はオリゴヌクレオチド鎖(塩基は図示していない)を表し、間隔が狭い2本の平行線は二本鎖部分を表し、小文字は特異的ヌクレオチド配列を示す(aはa' に対して相補的であり、bはb' に対して相補的である等)。
【図17B】ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体およびオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図である。円形はナノ粒子を表し、直線はオリゴヌクレオチド鎖(塩基は図示していない)を表し、間隔が狭い2本の平行線は二本鎖部分を表し、小文字は特異的ヌクレオチド配列を示す(aはa' に対して相補的であり、bはb' に対して相補的である等)。
【図17C】ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体およびオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図である。円形はナノ粒子を表し、直線はオリゴヌクレオチド鎖(塩基は図示していない)を表し、間隔が狭い2本の平行線は二本鎖部分を表し、小文字は特異的ヌクレオチド配列を示す(aはa' に対して相補的であり、bはb' に対して相補的である等)。
【図17D】ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体およびオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図である。円形はナノ粒子を表し、直線はオリゴヌクレオチド鎖(塩基は図示していない)を表し、間隔が狭い2本の平行線は二本鎖部分を表し、小文字は特異的ヌクレオチド配列を示す(aはa' に対して相補的であり、bはb' に対して相補的である等)。
【図17E】ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体およびオリゴヌクレオチドが付着したナノ粒子を用いる核酸検出系を示した略図である。円形はナノ粒子を表し、直線はオリゴヌクレオチド鎖(塩基は図示していない)を表し、間隔が狭い2本の平行線は二本鎖部分を表し、小文字は特異的ヌクレオチド配列を示す(aはa' に対して相補的であり、bはb' に対して相補的である等)。
【図18】リポソーム(大きい二重円)、ナノ粒子(小さい白抜き円)および透明基板を用いる核酸検出系を示す略図。図18において、黒四角はコレステリル基を表し、不規則な曲線はオリゴヌクレオチドを表し、梯子は2本鎖(ハイブリダイズした)オリゴヌクレオチドを表す。
【図19A】金ナノ粒子オリゴヌクレオチド結合体が、図13Aに示したように透明基板上で複数層状に凝集する場合の吸光度変化を示す、波長(nm)に対する吸光度のグラフである。
【図19B】図19Aで言及したハイブリダイズ系での、昇温(溶融)に伴う吸光度変化を示すグラフ。
【図20A】金属または半導体消光ナノ粒子に付着した蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いる方式を示す図。
【図20B】非金属非半導体粒子に付着した蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いる方式を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なるオリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子であって、
前記オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に付着していない側の端部が蛍光分子によって標識されており、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合した金ナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有することを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
2つ以上の部分を有する核酸の検出方法であって、
オリゴヌクレオチドが付着した金ナノ粒子を提供することと、前記ナノ粒子は平均径が5nm〜150nmであることと、
1種類以上の連結オリゴヌクレオチドを提供し、各連結オリゴヌクレオチドは2つの部分を有し、この内の一方の部分の配列は前記核酸の前記部分の内の1つの配列に対して相補的であり、他方の部分の配列は前記ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの配列に対して相補的であることと、
前記ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドが前記連結オリゴヌクレオチドと有効にハイブリダイズする条件下において前記ナノ粒子と前記連結オリゴヌクレオチドとを接触させることと、
前記連結オリゴヌクレオチドが前記核酸と有効にハイブリダイズする条件下において前記核酸と前記連結オリゴヌクレオチドとを接触させることと、
検出可能な変化を観測することとを含み、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と高い融解温度とを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
前記金ナノ粒子に対して前記核酸を接触させる前に前記連結オリゴヌクレオチドを接触させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2つ以上の部分を有する核酸の検出方法であって、
前記核酸をオリゴヌクレオチドが付着した2種類以上の粒子に接触させることと、
この内の第1の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは前記核酸の配列の第1の部分に対して相補的な配列を有し、エネルギー供与体により標識されることと、
第2の種類の粒子上のオリゴヌクレオチドは前記核酸の配列の第2の部分に対して相補的な配列を有し、エネルギー受容体により標識されることと、
前記接触は前記粒子上のオリゴヌクレオチドが前記核酸と有効にハイブリダイズする条件下で行われることと、
前記粒子上のオリゴヌクレオチドが前記核酸とハイブリダイズすることによって起こる検出可能な変化を観測することとを含み、
核酸標的の存在下かつハイブリッド形成条件下で、オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子が前記核酸標的と複合体を形成し、該ナノ粒子‐核酸標的複合体は、前記核酸標的内のヌクレオチドの挿入、欠失、または誤対合を選択的に区別可能なように、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する非標識のオリゴヌクレオチドと前記核酸標的とで形成された類似の複合体の融解特性および融解温度と比較して明瞭な融解特性と
高い融解温度とを有することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記エネルギー供与体及び受容体は蛍光分子である請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【公開番号】特開2008−67711(P2008−67711A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264002(P2007−264002)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【分割の表示】特願平10−508917の分割
【原出願日】平成9年7月21日(1997.7.21)
【出願人】(501216012)ナノスフェアー インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】NANOSPHERE INC.
【Fターム(参考)】