説明

オルガノシラン及びそれに結合した基体

本発明は、新規ケイ素化合物、これらの新規ケイ素化合物の製造法、基体に結合されたこれらの新規ケイ素化合物を含有する組成物、新規ケイ素化合物を基体へ結合する方法、並びに様々なクロマトグラフィー用途において組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 技術分野
本発明は一般に、新規ケイ素化合物、これらの新規ケイ素化合物を作製する方法、基体へ結合したこれらの新規ケイ素化合物を含有する組成物、新規ケイ素化合物を基体へ結合する方法、及び様々なクロマトグラフィー適用においてこれらの組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景技術
通常の逆相シリカカラム(例えばODS)は、クロマトグラフィー分離のための汎用固定相として使用される(Neue, “HPLC Columns-Theory, Technology, and Practice,” WILEY-VCH, ニューヨーク, 1997, 183-203)。しかし例えば高度に水性環境における「相崩壊」(すなわち、ディウェッティング(dewetting))、イオン性化合物の弱い保持、及び塩基性被検体のピークテーリングにつながる残存シラノール活性を含むいくつかの欠点が、ある種の適用における通常の逆相シリカカラムの使用を妨げている。
【0003】
極性基-導入された相(polar-embedded phase)は、塩基性被検体のピークの形を改善し、及び高度に水性環境における逆相HPLCカラムの操作を可能にする(O'Garaら, LC-GC, 19(6):632-641(2001))。極性基-導入された相は主に疎水性であるが、基体表面の近傍には親水基を有する。一般に使用される極性基は、例えばアミド、尿素、エーテル及びカルバメートを含む。一般に極性基-導入された相は、塩基性被検体の優れたピークの形を提供し、及び汎用の逆相と比較した場合に、高度な水性環境とより適合性がある。更に極性基導入された相は、通常のC-18型充填剤により示されるものとは実質的に異なる選択性を有することが多い。しかし小型の親水性有機酸又は無機イオンのようなイオン性化合物は、全くではないとしても、極性基導入された相上でのクロマトグラフィーによる分離が不良である。
【0004】
典型的には、イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質、核酸、無機イオン、小型有機酸などの、イオン性又はイオン化可能な化合物の分離に使用される(Neue, 前掲, 224-249)。しかし、疎水性分子は、ほとんどのイオン交換樹脂上でうまく保持されないので、イオン交換クロマトグラフィーは、有機分子の分離のための通常のHPLCで使用されることは稀である。
【0005】
イオン対形成クロマトグラフィーは、イオン性又はイオン化可能な化合物を分離する別法である(Neue, 前掲, 209-211)。ここでは、典型的にはイオン化可能な末端を伴うアルキル鎖で構成される疎水性イオン性化合物が移動相に添加され、同時に固定相は、通常の逆-相媒体である。一般に、中性被検体の保持は、ほぼ影響を受けないが、イオン対形成試薬に対し補完的電荷を持つ被検体は、より長期間保持され、及びイオン対形成試薬に対し同じ電荷を持つ被検体は、より短い期間保持される。当業者には公知であるように、帯電された被検体の保持は、例えば、イオン対形成試薬の種類及び濃度、移動相のイオン強度及びpHを含む様々な要因により影響を受け得る。イオン対形成クロマトグラフィーの限界は、長いカラム平衡時間、並びにイオン対形成試薬のカラムからの溶離に必要な溶媒量及び時間である。更に、イオン対形成試薬の存在は、移動相の組成を複雑にし、及び例えば電気化学的検出様式のような、多くの検出法と干渉し得る。
【0006】
イオン性又はイオン化可能な化合物を分離する更に別の方法は、イオン交換クロマトグラフィーの局面と通常の逆相クロマトグラフィーの局面を組合せた混合-様式クロマトグラフィーである。例えば弱い疎水性陰イオン交換基体を提供するために、様々な疎水性有機酸で修飾された、商業的に入手可能なアミノプロピルシリルが結合した相が、オリゴヌクレオチドを分離するために使用されている(Bischoffら, Journal of Chromatography, 270:117-126(1983))。ここでno
イオン交換は、分離の主要様式であり、その理由はこの樹脂の疎水性は、3個の-炭素リンカーに起因しているためである。
【0007】
核酸を分離するために使用された液体クロマトグラフィーのための別の混合-様式の基体は、疎水基で陰イオン交換表面を官能基化することにより作製されている(Bischoffら, Journal of Chromatography, 296:329-337(1984))。この方法は、固定相の疎水性を変更するために使用することができるが、各官能基化の間に表面に導入されたわずかに異なる量のイオン交換部位及び疎水性部位は、基体の再現性に負の影響を及ぼす。タンパク質及びペプチドの分離に有用な混合-様式のポリマー樹脂は、カルボニルジイミダゾール又はエピクロロヒドリンによるヒドロキシル化されたポリマー表面の活性化、それに続くイオン交換官能基を含む第1級アミンとの反応により調製される(Burtonら, 米国特許第5,945,520号)。多孔質磁気シリカ粒子を基にしたイオン交換マトリックスを使用し、核酸、例えばプラスミドDNA、染色体DNA又はRNAを、タンパク質、脂質、細胞デブリなどを含む夾雑物から分離するために使用されてきた(Smithら, 米国特許第6,310,199号)。最後に、シリカ表面とアルキル鎖の間に導入されたイオン交換官能基を有し、従ってイオン交換部位及び疎水性保持部位の両方を提供する混合-様式のHPLCカラムの群が、商業的に入手可能となり始めている(SIELC Technologies, Prospect Heights, ILL)。
【0008】
前記の混合-様式のクロマトグラフィーの利点にもかかわらず、疎水性官能基及びイオン性官能基の両方を有する新規シラン化合物、これらの新規シラン化合物により官能基化された基体、及び混合様式クロマトグラフィーにおけるこれらの新規の官能基化された基体の使用は、イオン化された化合物及び中性化合物の両方の制御された保持を提供するために必要である。理想的には新規の官能基化された基体は、イオン対形成試薬の非存在下でイオン性又はイオン化可能な化合物を保持し、無機イオン及び有機化合物の同時分析及び分離を可能にし、イオン交換基の塩基性被検体の表面シラノールとの残留相互作用に対する作用をマスキングし、並びに開発された固定相の100%水性媒体中でのディウェッティングに対する抵抗性を増大するであろう。
【発明の開示】
【0009】
3. 概要
本発明は、疎水性及びイオン性官能基を有するシラン化合物の新規クラス、これらの新規シラン化合物により官能基化された基体、並びにこれらの新規官能基化された基体の混合-様式クロマトグラフィーにおける使用を提供することにより、これら及び他の必要性を満足する。
【0010】
ひとつの局面において、式(I)により説明された化合物、又はそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物が明らかにされる:
【0011】

【0012】
式(I)の化合物は、少なくとも1個の活性化されたシリル基(例えば、Si(OMe)3、-SiMe(OMe)2、-SiMe2(OMe)、-Si(OEt)3、-SiMe(OEt)2、-SiMe2(OEt)、-SiMe2NMe2、-SiCl3など)、及び少なくとも1個のヘッド基(例えば、アミン、フェノール及びそれらのエステル、カルボン酸及びそれらのエステル;スルホン酸及びそれらのエステル、ホスホン酸及びそれらのエステルなど)、及び活性化されたシリル基とヘッド基の間に少なくとも1個の極性基(例えば、アミド、スルホンアミド、カルバメート、尿素、エステル、エーテル、チオエーテルなど)を有する。ヘッド基は、1個又は複数のイオン交換官能基又はイオン交換官能基に転換され得る基を含む。式(I)の化合物は、2個のアルキル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリールのリンカーも含み、これは先に例示されたように、極性基と活性化されたシリル基及びヘッド基と極性基を連結する。
【0013】
いくつかの態様において、式(I)の化合物は、式(II):
【化1】

又はそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物により説明される:
(式中、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、1個又は複数の同じ又は異なるR12基で任意に置換されたアミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロ又はヒドロキシルであり、但しR1、R2及びR3の少なくとも1個は、アルキル、アリール、又はヒドロキシルではなく;
L1及びL2は独立して、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイル、又はヘテロアリールジイルであり;
Yは、-S-、-O-、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)O-、-N(R4)C(O)N(R5)-、又は-N(R4)C(S)N(R5)-であり;
R4及びR5は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
Wは、-(Z)nOH、-(Z)nN(R6)(R7)、-(Z)nN+(R6)(R7)(R8)X--、-(Z)nCO2R9、-(Z)nSO3R9、又は-(Z)nOP(O)(OR9)(OR10)、又は-(Z)nB(OR9)(OR10)(OR11)であり;
R6、R7及びR8は独立して、水素、アルキル又は置換されたアルキルであり;
R9、R10及びR11は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
R12は、水素又はアルキルであり;
X-は、陰イオン対イオンであり;
Zは、アリール又は置換されたアリールであり;並びに
nは、0又は1であり、但しWが-(Z)nOHである場合、nは1である。)。
【0014】
別の局面において、基体へ共有結合された式(II)の化合物を含有する組成物が提供される。一部の態様において、この組成物は、逆相クロマトグラフィー媒体の用途に適したフロー-スルー床内にある。
更に別の局面において、クロマトグラフィー法が提供される。水性液体は、基体へ共有結合された式(II)の化合物を含有する組成物を含む分離媒体床を通り流される。
更に別の局面において、液体試料中の被検体をクロマトグラフィーにより分離する方法が提供される。この液体試料は、基体へ共有結合された式(II)の化合物を含有する組成物を含む媒体を通り流される。
更に別の局面において、液体試料中の無機被検体及び有機被検体を同時分析する方法が提供される。この液体試料は、基体へ共有結合された式(II)の化合物を含有する組成物を含む媒体を通り流される。
【0015】
5. 詳細な説明
5.1 定義
「アルキル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親アルカン、アルケン又はアルキンの単独の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来した、飽和又は不飽和の、分枝鎖、直鎖又は環式の一価の炭化水素ラジカルを意味する。典型的アルキル基は、メチル;エチル、例えばエタニル、エテニル、エチニルなど;プロピル、例えばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロペ-1-エン-1-イル、プロペ-1-エン-2-イル、プロペ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロペ-1-エン-1-イル;シクロプロペ-2-エン-1-イル、プロピ-1-イニ-1-イル、プロピ-2-イニ-1-イルなど;ブチル、例えばブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブテ-1-エン-1-イル、ブテ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロペ-1-エン-1-イル、ブテ-2-エン-1-イル、ブテ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブテ-1-エン-1-イル、シクロブテ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブチ-1-イニ-1-イル、ブチ-1-イニ-3-イル、ブチ-3-イニ-1-イルなど;及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0016】
用語「アルキル」は、いずれかの程度又はレベルの飽和を有する基、すなわち、炭素-炭素単結合のみを有する基、1個又は複数の炭素-炭素二重結合を有する基、1個又は複数の炭素-炭素三重結合を有する基、並びに炭素-炭素単、二重及び三重結合の混合を有する基を含むことが、特に意図されている。特定の飽和レベルが意図されている場合、表現「アルカニル」、「アルケニル」及び「アルキニル」が使用される。一部の態様において、アルキル基は、1〜40個の炭素原子を含む。別の態様において、アルキル基は、1〜30個の炭素原子を含む。更に別の態様において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。更に別の態様において、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。
【0017】
「アルカニル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親アルカンの単独の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来した、飽和された、分枝鎖、直鎖又は環式アルキルラジカルを意味する。典型的アルカニル基は、メタニル;エタニル;プロパニル、例えばプロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イルなど;ブタニル、例えばブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イルなど;及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0018】
「アルケニル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親アルケンの単独の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の分枝鎖、直鎖又は環式アルキルラジカルを意味する。この基は、二重結合(複数)について、cis又はtransのいずれかの立体配座であってよい。典型的アルケニル基は、エテニル;プロペニル、例えばプロペ-1-エン-1-イル、プロペ-1-エン-2-イル、プロペ-2-エン-1-イル(アリル)、プロペ-2-エン-2-イル、シクロプロペ-1-エン-1-イル、シクロプロペ-2-エン-1-イルなど;ブテニル、例えばブテ-1-エン-1-イル、ブテ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロペ-1-エン-1-イル、ブテ-2-エン-1-イル、ブテ-2-エン-1-イル、ブテ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブテ-1-エン-1-イル、シクロブテ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イルなど;及び、同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
「アルキニル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親アルキンの単独の炭素原子からの1個の水素原子除去に由来した、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の分枝鎖、直鎖又は環式アルキルラジカルを意味する。典型的アルキニル基は、エチニル;プロピニル、例えばプロピ-1-イニ-1-イル、プロピ-2-イニ-1-イルなど;ブチニル、例えばブチ-1-イニ-1-イル、ブチ-1-イニ-3-イル、ブチ-3-イニ-1-イルなど;及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0020】
「アルキルジイル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親アルカン、アルケンもしくはアルキンの2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによるか、又は親アルカン、アルケンもしくはアルキンの単独の炭素原子から2個の水素原子を除去することに由来した、飽和又は不飽和の、分枝鎖、直鎖又は環式の二価炭化水素基を意味する。これら2個の一価ラジカル中心又は二価ラジカル中心の各価(valency)は、同じ又は異なる原子と結合を形成することができる。典型的アルキルジイル基は、メタンジイル;エチジイル、例えばエタン-1,1-ジイル、エタン-1,2-ジイル、エテン-1,1-ジイル、エテン-1,2-ジイルなど;プロピルジイル、例えばプロパン-1,1-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、シクロプロパン-1,1-ジイル、シクロプロパン-1,2-ジイル、プロペ-1-エン-1,1-ジイル、プロペ-1-エン-1,2-ジイル、プロペ-2-エン-1,2-ジイル、プロペ-1-エン-1,3-ジイル、シクロプロペ-1-エン-1,2-ジイル、シクロプロペ-2-エン-1,2-ジイル、シクロプロペ-2-エン-1,1-ジイル、プロピ-1-イン-1,3-ジイルなど;ブチルジイル、例えばブタン-1,1-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,1-ジイル;シクロブタン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、ブテ-1-エン-1,1-ジイル、ブテ-1-エン-1,2-ジイル、ブテ-1-エン-1,3-ジイル、ブテ-1-エン-1,4-ジイル、2-メチル-プロペ-1-エン-1,1-ジイル、2-メタンイリデン-プロパン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,4-ジイル、シクロブテ-1-エン-1,2-ジイル、シクロブテ-1-エン-1,3-ジイル、シクロブテ-2-エン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブチ-1-イン-1,3-ジイル、ブチ-1-イン-1,4-ジイル、ブタ-1,3-ジン-1,4-ジイルなど;及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。特定の飽和レベルが意図される場合、命名アルカニルジイル、アルケニルジイル及び/又はアルキニルジイルが使用される。好ましくは、アルキルジイル基は、(C1-C20)アルキルジイル、より好ましくは(C1-C10)アルキルジイル、最も好ましくは(C1-C6)アルキルジイルである。好ましいのは、ラジカル中心が末端炭素である飽和された非環式アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン-1,2-ジイル(エタノ);プロパン-1,3-ジイル(プロパノ);ブタン-1,4-ジイル(ブタノ);及び同類のもの(以下に定義されたアルキレノとも称される)である。
【0021】
「アルキレノ」は、それ自身又は他の置換基の一部として、直鎖の親アルカン、アルケン又はアルキンの2個の末端炭素原子の各々からの1個の水素原子の除去に由来した、2個の末端一価ラジカル中心を有する直鎖アルキルジイル基を意味する。典型的アルキレノ基は、メタノ;エチレノ、例えばエタノ、エテノ、エチノなど;プロピレノ、例えばプロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロピ[1]イノなど;ブチレノ、例えばブタノ、ブテ[1]エノ、ブテ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブチ[1]イノ、ブチ[2]イノ、ブチ[1,3]ジノなど;及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。特定レベルの飽和が意図される場合、命名アルカノ、アルケノ及び/又はアルキノが使用される。好ましいアルキレノ基は、(C1-C20)アルキレノであり、より好ましくは(C1-C10)アルキレノであり、最も好ましくは(C1-C6)アルキレノである。好ましいのは、直鎖の飽和されたアルカノ基、例えばメタノ、エタノ、プロパノ、ブタノ及び同類のものである。
【0022】
「アルキルスルホニルオキシ」は、それ自身又は他の置換基の一部として、ラジカル-OS(O)2R30(式中、R30は、本願明細書に定義されたアルキル又はシクロアルキル基を表す。)を意味する。
「アルコキシ」は、それ自身又は他の置換基の一部として、ラジカル-OR31(式中、R31は、本願明細書に定義されたアルキル又はシクロアルキル基を表す。)を意味する。代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどを含むが、これらに限定されるものではない。
「アルコキシカルボニル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、ラジカル-C(O)OR32(式中、R32は、本願明細書に定義されたアルキル又はシクロアルキル基を表す。)を意味する。
【0023】
「アリール」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親芳香族環システムの単独の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来した、一価の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。典型的アリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン及び同類のもの由来の基を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アリール基は、5〜20個の炭素原子を、より好ましくは5〜12個の炭素原子を含む。
【0024】
「アリールジイル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親芳香族システムの2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによるか、又は親芳香族環システムの単独の炭素原子から2個の水素原子を除去することによる、二価の炭化水素ラジカルを意味する。2個の一価のラジカル中心又は二価中心の各価は、同じ又は異なる原子(複数)との結合を形成することができる。典型的アリールジイル基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン及び同類のもの由来の基を含むが、これらに限定されるものではない。好ましいアリールジイル基は、5〜20個の炭素原子、より好ましくは5〜12個の炭素原子を含む。
【0025】
「アリールオキシカルボニル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、ラジカル-C(O)OR33 (式中、R33は、本願明細書に定義されたアリール基を表す。)を意味する。
「アリールスルホニルオキシ」は、それ自身又は他の置換基の一部として、ラジカル-OS(O)2R35 (式中、R35は、本願明細書に定義されたアルキル基又はシクロアルキル基を表す。)を意味する。
「シクロアルキル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、飽和又は不飽和の環式アルキルラジカルを意味する。特定の飽和レベルが意図される場合、命名「シクロアルカニル」又は「シクロアルケニル」が使用される。典型的シクロアルキル基は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、シクロアルキル基は、(C3-C10)シクロアルキルであり、より好ましくは(C3-C7)シクロアルキルである。
【0026】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルキルジイル及びヘテロアルキレノ」は、それら自身又は他の置換基の一部として、その1個又は複数の炭素原子(及びいずれか関連した水素原子)が各々独立して、同じ又は異なるヘテロ原子基と交換されている、各々、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイル及びアルキレノ基を意味する。これらの基に含まれ得るヘテロ原子基の典型は、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR35R36-、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR37R38、-PR39-、-P(O)2-、-POR40-、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR41R42-及び同類のものを含むが、これらに限定されるものではなく、ここでR35、R36、R37、R38、R39、R40、R41及びR42は、独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は置換されたヘテロアリールアルキルである。
【0027】
「ヘテロアリール」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親ヘテロ芳香族環システムの単独の原子からの1個の水素原子の除去に由来する、一価のヘテロ芳香族ラジカルを意味する。典型的ヘテロアリール基は、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン及び同類のものに由来する基を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ヘテロアリール基は、5〜20員のヘテロアリールであり、より好ましくは5〜10員のヘテロアリールである。好ましいヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール及びピラジンに由来するものである。
【0028】
「ヘテロアリールジイル」は、それ自身又は他の置換基の一部として、親ヘテロ芳香族システムの2個の異なる炭素原子の各々の1個の水素原子の除去によるか、又は親芳香族環システムの1個の炭素原子の2個の水素原子の除去に由来した、二価のラジカルを意味する。2個の一価ラジカル中心又は二価の中心の各価は、同じ又は異なる原子(複数)と結合を形成することができる。典型的ヘテロアリールジイル基は、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン及び同類のものに由来する基を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ヘテロアリールジイル基は、5〜20個の炭素原子を、より好ましくは5〜12個の炭素原子を含む。
【0029】
「親芳香族環システム」は、それ自身又は他の置換基の一部として、共役π電子システムを有する不飽和の環式又は多環式環システムを意味する。「親芳香族環システム」の定義に特に含まれるのは、1個又は複数の環が芳香族であり、及び1個又は複数の環が飽和又は不飽和である、融合された環システム、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどである。典型的親芳香族環システムは、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
「親ヘテロ芳香族環システム」は、それ自身又は他の置換基の一部として、1個又は複数の炭素原子(及びいずれかの関連した水素原子)が、独立して同じ又は異なるヘテロ原子で交換されている親芳香族環システムを意味する。炭素原子と交換されている典型的ヘテロ原子は、N、P、O、S、Siなどを含むが、これらに限定されるものではない。「親ヘテロ芳香族環システム」の定義に特に含まれるのは、1個又は複数の環が芳香族であり、及び1個又は複数の環が、飽和又は不飽和である、融合された環システム、例えばアルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。典型的親ヘテロ芳香族環システムは、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
「置換された」は、1個又は複数の水素原子が同じ又は異なる置換基(複数)で独立して交換されている基を意味する。典型的置換基は、-M、-R60、-O-、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2OH、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-C(S)OR60、-NR62C(O)NR60R61、-NR62C(S)NR60R61、-NR62C(NR63)NR60R61及び-C(NR62)NR60R61を含むが、これらに限定されるものではなく、ここで、Mは独立してハロゲンであり;R60、R61、R62及びR63は、独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリールであるか、又は任意にR60及びR61は、それらが結合した窒素原子と一緒に、シクロヘテロアルキル又は置換されたシクロヘテロアルキル環を形成し;並びに、R64及びR65は、独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換されたシクロヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリールであるか、又は任意にR64及びR65は、それらが結合した窒素原子と一緒に、シクロヘテロアルキル又は置換されたシクロヘテロアルキル環を形成する。好ましくは、置換基は、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-NR62C(O)NR60R61を含み、より好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(0R61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-を含み、最も好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)O-を含み、ここでR60、R61及びR62は先に定義されたものである。
【0032】
5.2 オルガノシラン及びその基体
本発明は、疎水性及びイオン性の両官能基を有する新規シラン化合物を提供する。新規シラン化合物の片方の末端は、シリル基であり、これは基体へ共有結合することができる。新規シラン化合物の他端は、任意にマスキングされている1個又は複数のイオン性又はイオン化可能な基である。シリル基及び任意にマスキングされたイオン性官能基は、極性基により連結された2個のリンカーを介して、連結されている。これらのリンカーは、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロアルキル基であることができ、他方極性基は、アミド、カルバメート、尿素、酸素、イオウなどであることができる。
【0033】
ひとつの局面において、本発明は、式(I)に説明された化合物、又はそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する:
【0034】

【0035】
式(I)の化合物は、少なくとも1個の活性化されたシリル基及び少なくとも1個のヘッド基、並びに活性化されたシリル基とヘッド基の間に少なくとも1個の極性基を有する。ヘッド基は、任意にマスキングされる1個又は複数のイオン交換官能基を含む。式(I)の化合物は、先に図示されたような、活性化されたシリル基を極性基と及び極性基をヘッド基と連結する、2個のアルキル、アリール、ヘテロアルキル又はヘテロアリールリンカーも含む。
【0036】
「活性化されたシリル基」は、基体の表面と反応し、表面と共有結合を形成することが可能である、ケイ素部分を意味する。例えば、活性化されたシリル基は、表面Si-OH基を含むシリカ基体の表面と反応し、式(I)の化合物と基体の間にシロキサン結合を作製することができる。活性化されたシリル基の例は、-Si(OMe)3、-SiMe(OMe)2、-SiMe2(OMe)、-Si(OEt)3、-SiMe(OEt)2、-SiMe2(OEt)、-SiMe2NMe2及び-SiCl3を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
「イオン交換官能基」は、1個又は複数のイオン交換基を含む部分を意味する。イオン交換官能基の例は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミン、フェノール、カルボン酸、スルホン酸、及びホスホン酸を含むが、これらに限定されるものではない。典型的には、ヘッド基は、1個又は複数のイオン交換官能基を含む。加えてヘッド基は、イオン交換官能基に転換することができる部分、例えば、フェノール、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸のエステルを含んでもよい。
「リンカー」は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリール基を意味する。式(I)の化合物のリンカーは、極性基、例えばアミド、スルホンアミド、カルバメート、尿素、エステル、エーテル又はチオエーテルなどにより連結される。
【0038】
一部の態様において、式(I)の化合物は、式(II)、又はそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物により説明される:





【0039】
【化2】

【0040】
(式中、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、1個又は複数の同じ又は異なるR12基で任意に置換されたアミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロ又はヒドロキシルであり、但しR1、R2及びR3の少なくとも1個は、アルキル、アリール、又はヒドロキシルではなく;
L1及びL2は独立して、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイル、又はヘテロアリールジイルであり;
Yは、-S-、-O-、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)O-、-N(R4)C(O)N(R5)-、又は-N(R4)C(S)N(R5)-であり;
R4及びR5は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
Wは、-(Z)nOH、-(Z)nN(R6)(R7)、-(Z)nN+(R6)(R7)(R8)X--、-(Z)nCO2R9、-(Z)nSO3R9、又は-(Z)nOP(O)(OR9)(OR10)、又は-(Z)nB(OR9)(OR10)(OR11)であり;
R6、R7及びR8は独立して、水素、アルキル又は置換されたアルキルであり;
R9、R10及びR11は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
R12は、水素又はアルキルであり;
X-は、陰イオン対イオンであり;
Zは、アリール又は置換されたアリールであり;並びに
nは、0又は1であり、但しWが-(Z)nOHである場合、nは1である。)。
【0041】
一部の態様において、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ、ハロ、又は1個もしくは複数のR12基により任意に置換されたアミノである。更に別の態様において、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ、又はハロである。
更に別の態様において、L1及びL2は、独立してアルキルジイル又はアリールジイルである。一部の態様において、L1及びL2はアルカニルジイルである。別の態様において、L1及びL2はアルキレノである。更に別の態様において、L1は、(C4-C30)アルカニレノ、(C4-C20)アルカニレノ又は(C4-C10)アルカニレノである。更に別の態様において、L2は、(C1-C30)アルカニレノ、(C1-C20)アルカニレノ、(C1-C10)アルカニレノ又はフェニルジイルである。更に別の態様において、L1は、(C4-C18)アルカニレノである。更に別の態様において、L2は、(C1-C30)アルカニレノ、(C1-C18)アルカニレノである。
【0042】
更に別の態様において、L1は、(C4-C30)アルカニレノ、(C4-C20)アルカニレノ、又は(C4-C10)アルカニレノであり、及びL2は、(C1-C30)アルカニレノ、(C1-C20)アルカニレノ、(C1-C10)アルカニレノ又はフェニルジイルである。更に別の態様において、L1は、(C4-C30)アルカニレノであり、及びL2は、(C1-C30)アルカニレノ又はフェニルジイルである。更に別の態様において、L1は、(C4-C18)アルカニレノであり、及びL2は、(C1-C18)アルカニレノ又はフェニルジルである。
【0043】
一部の態様において、Yは、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-又は-N(R4)C(O)O-である。好ましくはR4及びR5は独立して、水素、アルキル又は置換されたアルキルであり、より好ましくは水素又はアルキルである。
別の態様において、Wは、N(R6)(R7)又はN+(R6)(R7)(R8)X-である。好ましくは、R6、R7及びR8は独立して、水素又はアルキルである。更に他の態様において、Wは、-(Z)nOH、-CO2R9、-SO3R9又は-OP(O)(OR9)(OR10)である。好ましくはR9、R10及びR11は独立して、水素、アルキル又は置換されたアルキルであり、より好ましくは水素又はアルキルである。
【0044】
一部の態様において、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ又はハロであり;L1は、(C4-C30)アルカニルジイルであり;L2は、(C1-C30)アルカニルジイルであり;R4及びR5は、水素又はアルキルであり;R6及びR7は独立して、水素又は1個もしくは複数のアミノ基により任意に置換されたアルキルであり;R8は、水素、又は1個もしくは複数の-OH、-CN、アリール又はペルフルオロ基により任意に置換されたアルキルであり;Wは、-(Z)nN(R6)(R7)又は-(Z)nN+(R6)(R7)(R8)Xであり;並びに、R6、R7及びR8は独立して、水素又はアルキルである。これらの態様の一部において、R1、R2及びR3は、-CH3又は-OC2H5である。これらの態様の別のものにおいて、R2は、-OC2H5であり、並びにR1及びR3は、-CH3である。これらの態様の更に別のものにおいて、L1は、(C4-C18)アルカニルジイルであり、及びL2は、(C1-C18)アルカニルジイルである。これらの態様の更に別のものにおいては、L1は、(C8-C12)アルカニルジイルである。更に別のこれらの態様において、Yは、-C(O)N(R4)-であり、及びR4は水素である。更に別の他のこれらの態様において、L2は、(C1-C5)アルカニルジイル又はフェニルジイルである。更に別のこれらの態様において、Wは、-N(R6)(R7)、又は-N+(R6)(R7)(R8)X-である。
【0045】
先の態様に包含された化合物の例は、以下を含む:
【0046】
【化3】

【0047】
一部の他の態様において、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ又はハロであり;L1は、(C4-C30)アルカニルジイルであり;L2は、(C1-C30)アルカニルジイル又はアリールジイルであり;Yは、-S-、-O-、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)O-、又は-N(R4)C(O)N(R5)-であり;R4及びR5は、水素又はアルキルであり;Wは、-(Z)nOH、-(Z)nCO2R9、-(Z)nSO3R9又は-(Z)nOP(O)(OR9)(OR10)であり;並びに、R9及びR10は独立して、水素又はアルキルである。これらの態様の一部において、L1は、(C4-C18)アルカニルジイルであり、及びL2は、(C1-C18)アルカニルジイルである。別のこれらの態様において、R1、R2及びR3は、-CH3又は-OC2H5である。更に別のこれらの態様において、R2は、-OC2H5であり、並びにR1及びR3は-CH3である。更に別のこれらの態様において、L1は、(C8-C12)アルカニルジイルである。更に別のこれらの態様において、Yは、-C(O)N(R4)-であり、及びR4は水素である。更に別のこれらの態様において、L2は、(C1-C5)アルカニルジイル又はフェニルジイルである。更に別のこれらの態様において、Wは-CO2R9又は-SO3R9である。
【0048】
先の態様に包含された化合物の例は、以下を含む:
【0049】
【化4】

【0050】
本願明細書に説明された化合物を合成する方法の例は、下記スキーム1-3に示されている。本願明細書に説明された化合物を調製するのに有用な出発材料は、市販されているか、又は周知の合成法により調製することができる。他の本願明細書に説明された化合物の合成法は、当業者には容易に明らかであろう。従って本願明細書のスキーム1-3に示された方法は、包括的であるよりもむしろ例証である。
【0051】
ここで下記スキーム1に関して、少なくとも1個の第1級又は第2級アミノ基を有するアミン8は、末端二重結合を有する塩化アシル9と反応される。次に得られる化合物10は、白金触媒の存在下でシラン11によりヒドロシリル化され、化合物12を生成する。化合物12は、ハロゲン化アルキル又はエポキシドとの反応により、化合物13に転換されてもよい。






【0052】
【化5】

【0053】
ここで下記スキーム2に関して、少なくとも1個の第1級又は第2級アミノ基及び少なくとも1個の遊離又は保護された(例えば、Greenら, “Protective Groups in Organic Chemistry”, (Wiley, 第2版 1991)参照)カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸官能基を含む化合物14が、末端二重結合を有する塩化アシル9と反応される。その後得られる化合物15は、白金触媒の存在下でシラン11によりヒドロシリル化され、化合物16を生成する。
【0054】
【化6】

【0055】
ここで下記スキーム3に関して、第1級アミン17は、末端二重結合を含むハロゲン化物18と反応させられ、化合物19を提供し、これは次に白金触媒の存在下でシラン11によりヒドロシリル化され、化合物20を生成する。化合物20の酸無水物21との反応は、化合物21を生成する。











【0056】
【化7】

【0057】
当業者は、先に明らかにされた合成戦略は、出発アミン又は塩化アシル又はハロゲン化アルキルを変更することにより、アリール、ヘテロアリール及びヘテロアルキルリンカーを伴うシランを作製するように、容易に適合され得ることを理解するであろう。更に前記の変換(又はそれらの同等物)を実現するための多様な方法が、当業者に公知であり、並びに有機合成のいずれかの概説において認めることができる(例えば、Harrisonら, “Compendium of Synthesis Organic Methods”, Vols.1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry,” Beilstein Institute of Organic Chemistry、フランクフルト、独国;Feiserら, “Reagents for Organic Synthesis,” Volumes 1-17, Wiley Interscience;Trostら, “Comprehensive Organic Synthesis,” Pergamon Press, 1991;“Theilheimer's Synthesis Methods of Organic Chemistry,” Volumes 1-45, Karger, 1991;March, “Advanced Organic Chemistry,” Wiley Interscience, 1991;Larock “Comprehensive Organic Transformations,” VCH Publishers, 1989;及び、Paquette, “Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,” John Wiley & Sons, 1995参照)。
【0058】
先に明らかにされた化合物は、基体と反応し、官能基化された基体を形成することができ、これは広範な様々な用途において使用することができる。先に明らかにされた化合物は、1個の分子構造に疎水性部位及びイオン交換部位の両方を組み込むことができ、基体表面との反応において再現可能な表面化学を有する。
【0059】
いくつかの態様において、式(I)及び(II)の化合物は、基体へ共有結合される。これらの態様において、イオン化可能な基は、基体の表面から比較的遠くに配置され、これは官能基化された基体の加水分解安定性を改善することができる。式(I)及び(II)の化合物は、基体に結合することができ(例えば、基体)、様々なクロマトグラフィー分離、特に逆相分離のために官能基化された固定相を提供する。得られる材料は、混合-様式基体とみなすことができる。本願明細書において使用される「混合-様式基体」は、疎水性相互作用、イオン交換相互作用もしくは水素結合相互作用又はそれらの組合せにより有機分子を保持することができる、疎水性及びイオン性の両部分を伴う化合物で修飾された基体を意味する。従って混合-様式基体は、同じ試料中に存在するイオン性検体及び中性被検体の分解(resolving)において柔軟性を提供する。例えばイオン性化合物及び中性分子は、実験変数の操作により選択することができる、疎水性又はイオン交換のいずれかの保持機構を適用することにより、同じクロマトグラフィー試行において分離することができる。更に、式(I)及び(II)の化合物は、基体官能基化の前に、通常のC1、C8、フェニル又はC18シリルリガンドに加え、更には極性基導入されたリガンドと混合し、様々な選択性の混合様式基体を提供することができる。
【0060】
式(I)及び(II)の化合物は、Si官能基のR1、R2又はR3の、シラノール、アルコキシシラン、ハロシラン及びアミノシラン部分からなる群より選択された基体上の反応基との反応により、基体に共有結合されてもよい。一部の態様において、基体へ共有結合された式(I)及び(II)の化合物は、式(I)及び(II)の他の化合物上のシラノール、アルコキシシラン又はハロシランからなる群より選択される反応基との反応により、式(I)及び(II)の1種又は複数の化合物に架橋することができる。
【0061】
式(I)及び(II)の化合物は、様々な基体へ共有結合することができる。基体の例は、式(I)及び(II)の化合物中の活性化されたシリル基と反応することができる官能基を有する物質を含む。従って式(I)及び(II)の化合物は、例えば、シリカベースの材料、ガラス表面へ、又は他の酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムベースの材料の表面へ;並びに同じく活性化されたシリル基と反応するのに適した官能基を含む、様々な炭化された材料、金属、架橋した及び架橋していないポリマーの表面へ、結合することができる。適当な官能基の例は、シラノール、アルコキシシラン、水酸化チタン、水酸化ジルコニウムなどを含む。式(I)及び(II)の化合物は、反応性ケイ素官能基を利用し、ポリマー又はゾル-ゲルネットワークへ組み込むこともできる。重合可能な基又はラジカル及び/もしくはイオン-ラジカル及び/もしくはイオンに転換することができる基を含む式(I)及び(II)の化合物を使用し、高分子材料を作製するか、又はこれらの基及び/もしくは反応性ケイ素官能基を利用することにより、表面グラフト重合することができる。得られる物質は、吸着材、メンブレン、フィルター、マイクロフルイダイズ装置、マイクロチップ、並びに様々な種類の分離、検出及び分析のための官能基化された表面の開発に適用することができる。
【0062】
一部の態様において、構造式(III)の組成物が提供される:
【0063】
【化8】

【0064】
(式中、R1、R3、L1、L2、Y及びWは先に定義されたものである。)。当業者は、式(II)の化合物の態様は、同じく式(III)の組成物の態様であることを理解するであろう。いくつかの例証的組成物を、以下に示す:



【0065】
【化9】

【0066】
一部の態様において、単-及び多-層表面が、シリカ基体の式(I)及び(II)の化合物による処理により調製される。式(I)及び(II)の化合物は、シリカゲル、ジルコニア、ハイブリッドゾル-ゲル/ポリマー又はガラスプレートなどの、様々な基体へ、共有的に結合することができる。適当なシリカゲルは、非孔質であるか、又は様々な孔径、好ましくは20Å〜3000Å、更に好ましくは60Å〜2000Å;及び、様々な粒度、好ましくは0.2μm〜1000μm、より好ましくは2μm〜50μmである、多孔質であるシリカ粒子を含む。結合反応は、不活性溶媒、例えばトルエン中の、高温でのシリカゲルスラリーにおいて実行することができる。水、酸又は塩基触媒を、分離媒体に望ましい特性の種類に応じ、表面被覆を増強するために適用することができる。
【0067】
あるいは、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンのようなアミノシラン化合物を使用し、誘導体化されないシリカゲルを、反応性アミノ基を表面へ導入することにより修飾することができる。その後適当な官能基を含む塩化アシル、塩化カルバミル、塩化スルホニル、又はイソシアネートのような試薬を、アミノ化されたシリカゲルと反応し、対応する結合相を形成することができる。
【0068】
本発明は、優れた加水分解安定性を伴う、様々な新規固形基体を作製する単純かつ多目的な方法を提供する。この合成法は、様々な官能基の基体及び特にシリカ基体の表面への効率的組込みを可能にする。得られる物質は、吸着材、メンブレン、フィルター、マイクロフルイダイズ装置、マイクロチップ、並びに様々な種類の分離、検出及び分析のための官能基化された表面の開発に適用することができる。
【0069】
6. 実施例
下記実施例は、単に例証のために提供され、制限のために提供されるのではない。当業者は、本質的に同様の結果を得るために、変更又は修飾することができる様々な重要でないパラメータを容易に認めるであろう。
【0070】
6.1 化合物1の調製
(ジメチルアミノ)プロピルアミンを、無水CH2Cl2中で過剰なトリエチルアミン(2.0当量)と混合し、約0℃〜約5℃で20分間維持した。その後CH2Cl2中の塩化10-ウンデセノイル(1.0当量)の溶液を滴下し、この混合物を周囲温度で12時間攪拌した。反応混合物を、水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、溶媒を真空で除去し、10-ウンデセン酸のジメチルアミノプロピルアミドを得た。過剰なジメチルエトキシシラン(10当量)をこのアミドへ添加し、引き続き触媒(0.1mol%)(例えば、最低量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)の溶液に添加した。50℃で24時間攪拌後、シラン及び溶媒を真空で除去し、シリル化合物1を得た。
【0071】
6.2 実施例2:化合物2の調製
アセトニトリル中の化合物1(1当量)の溶液へ、アセトニトリル中のヨードメタン(1.1当量)の溶液を室温で滴下した。反応混合物を、周囲温度で24時間攪拌した。全ての揮発物を真空で除去後、化合物2を、定量的収率で得た。
【0072】
6.3実施例3:化合物3の調製
塩酸グリシンエチルエステルを、CH2Cl2中の過剰なトリエチルアミン(4.0当量)と0℃〜5℃で20分間維持した。CH2Cl2中の塩化10-ウンデセノイル(1.0当量)の溶液を滴下し、この反応混合物を周囲温度で12時間攪拌した。反応混合物を、水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、揮発物を真空で除去し、10-ウンデセン酸(undenoic acid)のグリシンアミドを得た。このアミドを、過剰なジメチルエトキシシラン(10当量)及び触媒(0.1mol%)(例えば、最低量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)の添加により加水分解した。50℃で24時間攪拌後、シラン及び溶媒を真空で除去し、化合物3を得た。
【0073】
6.4 実施例4:組成物23、25及び26の合成
高温でトルエンなどの不活性溶媒中の化合物1又は3を、以下の物理特性を伴う選択された粗シリカゲルのスラリーと混合した:平均粒度5.0μm;比表面積300m2/g;平均孔径120Å;孔容積1.00mL/g。水、酸又は塩基触媒の添加は、表面被覆を制御するために適用することができる。適当な末端-キャッピング剤、例えばトリアルキルシリルクロリドも、逆相クロマトグラフィー分離のための充填材料を作製するために必要である。組成物26の合成の最終工程は、酸性条件下での末端エステル基の加水分解である(例えば、10mmolメタンスルホン酸の溶液が、室温で、1ml/分で24時間充填されたシリカビーズの上を通過される)。
6.5 実施例5:組成物24の合成
アセトニトリル中の組成物23のスラリーへ、過剰なヨードメタン(シリカの1/1質量%)を添加した。この反応混合物を、周囲温度で24時間攪拌した。濾過後、組成物を、アセトニトリル、エーテルで洗浄し、乾燥し、組成物24を得た。
【0074】
6.6 実施例6:混合様式評価試験
従来の高圧スラリー技法を用い4.6x150mmステンレス鋼製チューブに充填された組成物23上における、中性化合物(トルエン)、塩基性化合物(α-メチルベンジルアミン)及び2種の酸性化合物(フマル酸及びp-ブチル安息香酸)を含有する試験混合物のHPLCクロマトグラフィーは、図1に示した結果を生じた。この混合物は、CH3CN/20mM Na2SO4 (50:50v/v)で、異なるpHで(メタンスルホン酸で調節)、流量1mL/分;注入量5μL;温度30℃;及び、検出210nmで溶離した。
【0075】
中性被検体(すなわち、トルエン)は、酸性化合物(すなわちフマル酸及びp-ブチル安息香酸)と共に保持されるので、図1は、組成物23の混合-様式特性を示している。塩基性被検体(すなわちα-メチルベンジルアミン)について保持は認められない。p-ブチル安息香酸の保持時間は、フマル酸の保持時間よりもより長く、これは恐らく芳香族酸のより大きい疎水性のためであろう。フマル酸及びp-ブチル安息香酸は、より高いpH(すなわち3.6)でより低いpH(すなわち3.0)よりもより大きい保持時間を有し、これは恐らくより高いpHでより大きい割合のイオン化されたカルボキシラートが形成されるためであろう。更にこのフマル酸及びp-ブチル安息香酸の保持時間の増加は、中性被検体(すなわちトルエン)の保持時間の変化を伴わずに生じる。組成物23の選択性は、イオン強度及び移動相の組成を変更することにより修飾することができる。
【0076】
6.7 実施例7:一般的親水性モノカルボン酸の分離
従来の高圧スラリー技法を用い4.6x150mmステンレス鋼製チューブに充填された組成物23上における、10種の一般的親水性モノカルボン酸を含有する被験混合物のHPLCクロマトグラフィーは、図2に示した結果を生じた。被験混合物は、25mM K2HPO4/KH2PO4, pH6.0;流量1mL/分;注入量10μL;温度30℃;及び、検出210nmで、溶離した。
【0077】
6.8 実施例8:ディウェッティング試験
組成物23を、25mM K2HPO4/KH2PO4 (pH6)移動相において、30℃で試験した。組成物23を含む新たに充填したカラムは、50カラム容量のCH3CNで洗浄し、50カラム容量の移動相で平衡とした。10種の一般的親水性モノカルボン酸を含んだ試料溶液は、図3に示した。ストップ-フロー試験において、各試験サイクルは、2工程からなった。第一の工程において、カラムは、移動相により20分間平衡とした。試料を注入し、データを、10分間得た。第二の工程において、流れを、30分間停止し、その後次サイクルを開始した。50サイクルを実行した。他の試験条件は以下である:流量1mL/分;注入量10μL;検出210nm。この試験は、組成物23は、100%水性媒体中で一貫した保持及び良好なピーク効率を提供したことを示した。
【0078】
前記発明は、理解を明確化する目的で例証及び実施例により一部詳細に説明されているが、当業者には、添付された「特許請求の範囲」の精神又は範囲から逸脱しない限りは、ある種の変化及び修飾を行うことができることは容易に明らかであろう。
本願明細書に列記された全ての刊行物及び特許文書は、それらの全体が本願明細書に参照として組入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、官能基化された基体23の混合様式の特徴を図示している;
【図2】図2は、基体23による10種の親水性カルボン酸の分離を図示している;及び
【図3】図3は、100%水性環境におけるフロー停止前及びフロー停止後の基体23の性能を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(II)の化合物:
【化1】

又はそれらの塩、溶媒和物もしくは水和物:
(式中、R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、1個又は複数の同じ又は異なるR12基で任意に置換されたアミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロ又はヒドロキシルであり、但しR1、R2及びR3の少なくとも1個は、アルキル、アリール、又はヒドロキシルではなく;
L1及びL2は独立して、アルキルジイル又はアリールジイルであり;
Yは、-S-、-O-、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)O-、-N(R4)C(O)N(R5)-、又は-N(R4)C(S)N(R5)-であり;
R4及びR5は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
Wは、-(Z)nOH、-(Z)nN(R6)(R7)、-(Z)nN+(R6)(R7)(R8)X--、-(Z)nCO2R9、-(Z)nSO3R9、又は-(Z)nOP(O)(OR9)(OR10)、又は-(Z)nB(OR9)(OR10)(OR11)であり;
R6、R7及びR8は独立して、水素、アルキル又は置換されたアルキルであり;
R9、R10及びR11は独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール又は置換されたアリールであり;
R12は、水素又はアルキルであり;
X-は、陰イオン対イオンであり;
Zは、アリール又は置換されたアリールであり;並びに
nは、0又は1であり、但しWが-(Z)nOHである場合、nは1である。)。
【請求項2】
R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ又はハロであり;
L1は、(C4-C30)アルカニルジイルであり;
L2は、(C1-C30)アルカニルジイルであり;
R4及びR5は、水素又はアルキルであり;
R6及びR7は独立して、水素又は1個もしくは複数のアミノ基により任意に置換されたアルキルであり;
R8は、水素、又は1個もしくは複数の-OH、-CN、アリールもしくはペルフルオロ基により任意に置換されたアルキルであり;
Wは、-(Z)nN(R6)(R7)又は-(Z)nN+(R6)(R7)(R8)X--であり;並びに、
R6、R7及びR8は独立して、水素又はアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記構造を有する、請求項2記載の化合物:
【化2】

【請求項4】
R1、R2及びR3は独立して、アルキル、アルコキシ又はハロであり;
L1は、(C4-C30)アルカニルジイルであり;
L2は、(C1-C30)アルカニルジイル又はアリールジイルであり;
Yは、-S-、-O-、-C(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)-、-N(R4)S(O)2-、-S(O)2N(R4)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)N(R4)-、-N(R4)C(O)O-、又は-N(R4)C(O)N(R5)-であり;
R4及びR5は、水素又はアルキルであり;
Wは、-(Z)nOH、-(Z)nCO2R9、-(Z)nSO3R9、又は-(Z)nOP(O)(OR9)(0R10)であり;並びに
R9及びR10は独立して、水素又はアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
下記構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化3】

【請求項6】
基体に共有結合された、請求項1記載の化合物を含有する、組成物。
【請求項7】
化合物が、1個又は複数のR1、R2及びR3の、シラノール、アルコキシシラン、ハロシラン又はアミノシランからなる群より選択される基体上の反応基との反応により、基体へ共有結合されている、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
-SiR1(R2)(R3)が、他の化合物上のシラノール、アルコキシシラン又はハロシランからなる群より選択される反応基との反応により、別の請求項1記載の化合物へ共有結合されている、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
基体が、シリカ基体である、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
シリカ基体が、シリカゲルである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
基体が、ガラス、ゾル-ゲルポリマー又はハイブリッドゾル-ゲルポリマーである、請求項6記載の組成物。
【請求項12】
構造式(III)の、請求項6記載の組成物:
【化4】

【請求項13】
下記構造の、請求項6記載の組成物:
【化5】

【請求項14】
逆相クロマトグラフィー媒体の用途に適したフロー-スルー床中の、請求項6記載の化合物。
【請求項15】
請求項6記載の組成物を含む分離媒体の床を通り水性液体が流れることを含む、クロマトグラフィー法。
【請求項16】
液体試料が、請求項6記載の組成物を含む媒体を通り流れることを含む、液体試料中の被検体のクロマトグラフィー分離の方法。
【請求項17】
液体試料が、請求項6記載の組成物を含む媒体を通り流れることを含む、液体試料中の無機被検体及び有機被検体を同時に分析する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−512493(P2008−512493A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531422(P2007−531422)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032393
【国際公開番号】WO2006/031717
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】