説明

オルガノポリシロキサンの製造法

アルコール/水混合物及びシラン混合物用の別個の供給管、ガス状の反応生成物用の排出管が備わっている脱気容器、並びに液状の反応生成物用のオーバーフロー管を有する、クロロシランを部分的にアルコキシル化するための直立に配置された循環型反応器であって、その際、前記循環型反応器は、加熱装置、及び反応媒体中の温度を少なくとも5℃の精度で調節することができる、前記加熱装置に接続された循環流中の温度を調節するための調節装置を有し、その際、前記オーバーフロー管には、過剰のアルコール相を分離し、且つ循環型反応器に返送する付加的な相分離ユニットが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロシランの加水分解及び縮合によるオルガノポリシロキサンの多段階の製造法、並びに第一の工程段階を好ましくは実施することができる装置に関する。
【0002】
オルガノポリシロキサンの製造法は既に公知である。本発明に最も近い先行技術として、DE102007004838A1及びそこで引用された文献が引き合いに出される。
【0003】
DE102007004838A1では、本発明による方法において製造されるオルガノポリシロキサンの分子量及びそれとともに更なる生成物特性が、他の運転パラメーターを維持しながら、第一の工程段階において選択された圧力及び温度の条件によって、どのように制御されることができるのかが示される。他のプロセスパラメーター、例えば、殊に供給材料の化学量論、反応時間等は、その際に一定に保たれ、それというのも、これらは、先行技術によれば、同様に生成物の特性に影響を及ぼすからである。
【0004】
その際、第一の工程段階は、反応体用の供給管、HClを分離するための脱気容器並びにオーバーフロー管が備わっている、連続的に運転される単純な反応ループ管(図1を参照されたい)内で行われる。連続的に生じる反応生成物("部分アルコキシレート")は、あとに続く不連続的な加水分解工程で使用される前に、バッファー容器中で中間貯蔵される。
【0005】
記載された方法の欠点は、加水分解に際して放出された塩化水素の大部分がガス状の形態では生じず、そのためHCl再循環処理(メタノールと反応して塩化メチルが形成)に供給されることができないことである。第一の工程で得られた中間生成物("部分アルコキシレート")は、なお多量の、クロロシランとは反応しなかったアルコール、並びに該アルコール中に溶解した塩化水素("HCl")を含有する。これは望ましくなく、それというのも、アルコール中に溶解したHClガスは、あとに続く反応シーケンスの第2の工程において水でさらに希釈され、且つもはや経済的にはHCl循環に返送されることができないからである。そのうえ、廃棄処理前に苛性ソーダ溶液で中和されなければならず、このことは更なるコスト負担を伴う。その際に形成されたNaClは、引き続き公共の河川に流され、且つ環境に負担をかける。
【0006】
それゆえ先行技術を改善するという課題が存在していた。殊に本発明による方法は、この関連において3つの問題点:
1)シラン混合物を基準としたアルコール、例えばエタノールの使用量を減少させること、
2)再び回収することができないHClの損失量を最小にすること、及び
3)プラントの生産能力を高めること
を解決する。ただし、これらの工程改善の重要な境界条件は、最終製品特性を変えることではない。
【0007】
ただし、当業者の従来の見解によれば、アルコール、例えばエタノールの使用ファクターを変えた場合、最終製品特性も変わることが見込まれ、それというのも、第一の工程において得られた中間生成物は、本質的にアルコール、例えばメタノールとの反応の度合い(=アルコキシル化度)によって特徴付けられており、且つこれが中間生成物の反応性、ひいては最終生成物を形成するための更なる反応フロ−及びその特性プロフィールを決定する。そのため、製造コストの点で所望される、使用されるアルコール量、例えばエタノール量の減少においては、部分アルコキシレートのより低いアルコキシル化度(=より高い塩素含有量)が見込まれ、これはより高い反応性につながる(例えばS.Pawlenko,Houben−Weyl "Methoden der Organischen Chemie",vol.XIII/5,4th edition,p.161を参照されたい)。それによって、加水分解工程において、より迅速な反応、それによってより高い分子量又はそれどころかゲル化が見込まれる。
【0008】
ところで意想外にも、冒頭に記載した設定課題は、第一の反応工程を、加熱装置が備え付けられており、且つ反応温度を好ましくは5℃、4.5℃、4.0℃、3.5℃、3.0℃、2.5℃、2℃、1.5℃、1℃、有利には0.5℃まで正確に調節することができる循環型反応器中で行う場合に、生成物特性を変えずに解決することができることを見出した。
【0009】
本発明の対象は、アルコール/水混合物及びシラン混合物用の別個の供給管、ガス状の反応生成物用の排出管が備わっている脱気容器、並びに液状の反応生成物用のオーバーフロー管を有する、クロロシランを部分的にアルコキシル化するための直立に配置された循環型反応器において、循環型反応器が、加熱装置、及び反応媒体中の温度を少なくとも5℃の精度で調節することができる、該加熱装置と接続された循環流中の温度を調節するための調節装置を有し、その際、該オーバーフロー管には、過剰のアルコール相を分離し、且つ循環型反応器に返送する付加的な相分離ユニットが接続されていることを特徴とする循環型反応器である。
【0010】
本発明による循環型反応器は、直立に配置された循環型反応器(図2を参照されたい)であり、その内装は、含水アルコールとクロロシランとの反応時に生じる反応混合物に対して安定である材料から成り、その垂直の管部分には、反応体のアルコール/水混合物とシラン(場合によりシラン混合物)の供給管が取り付けられている。
【0011】
この管部分の上方には、反応時に形成されたHClガスを分離し、且つHCl回収に供給することができる脱気容器が存在する。液状の反応生成物は、オーバーフロー管を通して循環型反応器から排出される。
【0012】
本発明による加熱装置は、好ましくは、反応体供給管も存在している管型反応器の上昇部に設置されており、それというのも、熱導入時に付加的にHClがガス放出し、そうして該ガス放出によって駆り立てられる反応混合物の自然循環が一層強められるからである(図2を参照されたい)。加熱装置として、好ましくは、化学的に反応性の媒体に熱エネルギーを導入することができる、化学プロセス工学において慣例の全ての装置が考慮に入れられる。例示的に、熱交換器、例えば熱媒体(油、蒸気)により運転される管束熱交換器、電気発熱体(ヒートコイル、ヒーティングロッド、予熱プラグ)、伝導性媒体中の電気抵抗加熱装置(例えばDE102006053157A1(US4296082A、US4252602A、EP775511Aも参照されたい)に記載されたもの)、並びにマイクロ波加熱装置、誘導加熱装置が挙げられる。
【0013】
有利なのは、安価な熱媒体(温水、蒸気)により運転されることができ慣用の熱交換器、例えば管束熱交換器である。しかしながら、特に有利なのは、導電性の反応混合物の場合には電気抵抗加熱装置である。式(I)
aSiCl4-a (I)、
[式中、Rは、同じであるか又は異なっていてよく、且つSiC結合した置換又は非置換の一価の炭化水素基を意味し、且つ
aは、1、2、3である]
のシランと、含水アルコール、例えばエタノールであって、好ましくは5〜30質量%の水、有利には8〜25質量%の水、特に有利には10〜20質量%の水を含有するアルコールとの本発明による反応時に、HClで飽和したアルコール相並びにシロキサン相から成る導電性の二相反応媒体が生じる。ガスを含有する導電性のアルコール相が交流加熱される場合、ほぼ全てのエネルギーが液体中で加熱のために利用される。熱伝達を妨げる断熱性のガス膜は形成されない。
【0014】
好ましくは、交流電圧は、少なくとも10V、殊に少なくとも50V、及び好ましくはせいぜい1000Vである。
【0015】
好ましくは、交流電圧の周波数は、少なくとも10Hz、殊に少なくとも30Hz、及び好ましくはせいぜい10000Hz、殊にせいぜい10000Hzである。交流は三相交流も含む。本発明による循環型反応器は、調節装置を有し、該装置は、反応媒体中の温度を、好ましくは5℃の精度で、4.5℃、4℃、3.5℃、3℃、2.5℃、2℃、1.5℃、1℃の一連の有利な温度で、特に有利には0.5℃の精度で調節する。
【0016】
電極の材料は導電性であり、且つ反応媒体に対して安定でなければならず、そして好ましくはグラファイトから成る。
【0017】
本発明により、本発明による循環型反応器は、加熱装置に加えて、循環型反応器中で反応混合物の(より軽い)HCl飽和アルコール相の濃度を高めることに適している装置を含む。この装置は、最も簡単には、オーバーフロー管に接続しているサイホン(図2を参照されたい)から成る。この場合−オーバーフロー管の流方向の意味において−サイホンの降下部は、比較的大きい断面を有する相分離容器として構成されている。この箇所での低い流速に基づき、比較的低い相対密度を有するアルコール相がシロキサン相から分離し、それによりオーバーフロー管に、ひいては循環型反応器中で蓄積される。そのため、アルコールの添加を少なくした場合でも、循環型反応器中のアルコール濃度は高いままである。サイホンの上昇部は、本来のオーバーフロー管の高さより若干高く延びている。サイホンのオーバーフロー管は、"連通管の原理"に従って、循環型反応器中での液体水位の高さを決定する。
【0018】
循環型反応器にアルコールを返送するための装置の更なる実施形態では、部分アルコキシル化の生成物混合物("オーバーフロー流")が、第二の工程での更なる加工前にバッファー容器中で中間貯蔵され、そこで同様に相分離が行われることができる。引き続き行われる方法の第二の工程ではシロキサン相のみが使用され、アルコール相は循環型反応器にポンプ返送される。バッファー容器、相分離装置及び技術的な返送手段は、この意味では"アルコール濃縮ユニット"とも解される。複数のアルコール濃縮ユニットも組み合わせられることができる。
【0019】
さらに本発明の対象は、
第一の連続的な工程で、クロロシランを加水分解可能な塩素1モル当たり水0.10〜0.50モルと、及び加水分解可能な塩素1モル当たりアルコール0.30〜1.0モルと反応させ、その際、アルコールに対する水のモル比は、0.13〜0.85であり、その際、シラン混合物に対する含水アルコールの比は、上述の範囲で、この第一の工程の生成物混合物中でのアルコール相の割合が、0〜50質量%、有利には0〜20質量%、特に有利には0〜10質量%となるように調節し、その際、反応媒体の温度を、加熱装置によって標準値としての温度に調整し、目標値としての20〜60℃の範囲の一定に整えられた固定温度と比較し、且つ目標値に合わせる意味で5℃の精度で調節し、
第二の工程では、第一の段階で得られた反応混合物を、場合により、0.95kg/lを下回る密度を有する水不溶性の有機溶剤と混ぜ、且つSi成分1モル当たり水0.2〜100モルの量の水を計量供給し、且つ
第三の工程では、第二の工程の反応の終了後に水性/アルコール性相を分離する、
オルガノポリシロキサンの製造法である。
【0020】
方法の有利な実施形態においては、過剰のアルコール相が第一の工程の反応生成物から分離され、且つ循環に返送される。
【0021】
本発明による方法はさらに、反応温度が、循環型反応器中に取り付けられた加熱装置によって、好ましくは5℃の精度で、4.5℃、4℃、3.5℃、3℃、2.5℃、2℃、1.5℃、1℃の一連の有利な温度で、特に有利には0.5℃の精度で調節される場合において、最終生成生物品質(例えば分子量、粘度)と第一の反応工程で使用されるアルコールの量との関係は無関係であることを特徴としている。使用されるアルコール量が、生成物特性を変えることなく変化してよい範囲、有利には減少してよい範囲は、第一の反応工程に従った得られた生成物("部分アルコキシレート")のアルコール相を相分離後に循環型反応器に返送することによって拡張されることができる。これは、上記の通り、好ましくはU形の管材("サイホン")を循環型反応器のオーバーフロー管に付すことによって行われることができる。
【0022】
そのため、先行技術と比べて、最終生成物の特性を変えることなくアルコールの使用量を減らすことが可能になる。相応して、アルコール相中に溶解して第二の工程段階に至り、それにより最終的に廃水となり、且つ再び回収に供給されることのできない溶解した塩化水素の量が減らされる。反応の規模は、第一の工程の反応生成物中でのアルコール相の割合に基づいて決められる。最もコストが掛からない運転方法は、アルコール相が最小割合の時である。アルコール投入量がさらに減る場合、最終生成物の特性が変わると推測される。
【0023】
考えられ得るアルコールの削減率は、上記の相分離器が使用され且つアルコール相が循環型反応器に返送される場合に30〜50質量%である。
【0024】
第一の工程のアルコール相の最小化によって、容量が決定的に影響する後続の加水分解工程では、シロキサン相を基準として、より小さい反応器体積が要求される。これは、反応の最後にHCl濃度を下げ、且つ反応を中断するのに用いられる過剰の水によって実質的にバッチサイズが決められるだけに、なおさらのこと当てはめられる。それに従って、水相中でのHCl濃度は10質量%を下回るべきである。要求される過剰水の量はまた、HCl飽和アルコール相を介して導入されたHClによって決められる。空時収量の改善率は、容量が決定的に影響する加水分解工程(方法の"第二の工程")において30〜40%である。
【0025】
本発明による方法の第一の工程で使用されるクロロシランは、好ましくは、式
aSiCl4-a (I)、
[式中、Rは、同じであるか又は異なっていてよく、且つSiC結合した置換又は非置換の一価の炭化水素基を意味し、且つ
aは、1、2、3である]のものである。
【0026】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基;アルケニル基、例えばビニル基及びアリル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基及びナフチル基;アルカリール基、例えばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基;アラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基及びβ−フェニルエチル基である。
【0027】
置換された基Rの例は、Rに関する上記の全ての基であって、該基は、好ましくはメルカプト基、カルボキシ基、ケト基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、メタクリルオキシ基、ヒドロキシ基及びハロゲン基で置換されていてよい。
【0028】
有利には、基Rは、炭素原子1〜8個を有する炭化水素基、特に有利にはメチル基である。
【0029】
式(I)のシランの例は、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン及びメチルフェニルジクロロシランである。
【0030】
本発明による方法で使用されるシランは、有利には20℃及び900〜1100hPaの圧力で液状である。
【0031】
有利には、式(I)のシランと少なくとも1種のトリクロロシランとの混合物が使用される。
【0032】
本発明の範囲内で、加水分解可能な塩素は、SiCl基の形態で存在する塩素と解されるべきである。
【0033】
本発明による方法の第一の工程では、クロロシランが、加水分解可能な塩素1モル当たり有利には0.002〜0.75モル、特に有利には0.1〜0.5モルの水と反応させられる。
【0034】
本発明による方法の第一の工程では、クロロシランが、加水分解可能な塩素1モル当たり有利には0.1〜1.5モル、特に有利には0.3〜1.0モルのアルコールと反応させられる。
【0035】
本発明による方法の第一の工程では、水はアルコールに対して好ましくは0.13〜0.85のモル比で使用される。
【0036】
好ましくは、本発明による方法の場合、第一の工程での使用されるアルコールの量は、第一の工程の全生成物混合物中でのアルコール相の割合が、好ましくは0〜50質量%、0.1〜50質量%、有利には0〜40質量%、0.1〜40質量%、特に有利には0〜25質量%、0.1〜25質量%、極めて有利には0〜20質量%、0.1〜20質量%、殊に極めて有利には0〜10質量%、0.1〜10質量%となるまで減らされる。
【0037】
本発明による方法の第一の工程で使用されることができるアルコールの例は、20℃の温度及び900〜1100hPaの圧力で液状の全てのアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールであり、その際、メタノール、エタノール及びブタノールが有利であり、且つエタノールが特に有利である。
【0038】
所望される場合、本発明による方法の第一の工程では、クロロシラン、水及びアルコールに加えて、更に別の物質も使用されることができる。場合により使用される更なる物質の例は、アルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン又は非水溶性有機溶剤、好ましくは0.95kg/lを下回る密度を有するもの、例えばトルエンである。
【0039】
本発明による方法の場合、最終生成物(オルガノポリシロキサン)の分子量は、反応パラメーターであるオフガス圧力及び反応温度によって製造法の第一の工程(アルコキシル化工程)で制御されることができる。ここで、好ましくは20〜60℃、有利には25〜50℃、特に有利には25〜45℃、極めて有利には30〜40℃の範囲にある、加熱装置により一定に保たれた(調節された)所定の温度と、好ましくは800〜2000hPa、有利には1000〜1500hPa、特に有利には1100〜1400hPaの範囲にある、圧縮器により自由に選択可能な所与のオフガス圧力の場合に、分子量及びそれに伴う特性、例えば粘度を変えずに、アルコールの使用量を減らすことができることを見出した。
【0040】
本発明による方法の第一の工程では、シラン又はシランの混合物が、加熱装置が備え付けられている循環型反応器中に連続的に計量供給される。同時に、更なる供給管に水とアルコールから成る混合物が連続的に計量供給され、その際、アルコールの含水率は、5〜30質量%の範囲、有利には8〜25質量%の範囲、特に有利には10〜20質量%の範囲にある。場合により、更なる物質が該供給管の一つを介して混入され、且つ場合により反応させられることができる。その際、アルコキシシラン、アルコキシクロロシラン及びそれらの加水分解物及び縮合物並びにガス状の形態で塩化水素、アルキルクロライド及びジアルキルエーテルが発生する。その際、第一の工程で生じる塩化水素ガスは、好ましくは他の方法で直接使用されることができ、例えば、一方でメチルクロロシラン合成に際して使用されるクロロメタンの製造のためにメタノールと反応させることができる。そうして塩素を、環境に放出させずに循環させることができる。
【0041】
本発明による方法の第一の工程は、ループ型反応器中で実施され、有利には機械的エネルギーの導入なしに、すなわち、自然循環のみで実施される。先行技術と比べて、ループ型反応器には付加的に加熱装置並びに好ましくはさらに付加的に相分離ユニットに(それらによって場合により生じたHCl飽和アルコール相が循環処理に返送されることができる)が備え付けられている。
【0042】
本発明の範囲内で、密度に関する値は、20℃の温度及び周囲雰囲気の圧力、つまり、900〜1100hPaの圧力を基準としたものである。
【0043】
水不溶性の有機溶剤とは、本発明の範囲内では、25℃及び周囲雰囲気の圧力、つまり、900〜1100hPaの圧力での溶解度が、水100g当たり溶剤1gを下回る溶剤と解されるべきである。
【0044】
本発明による方法で場合により使用される、0.95kg/lを下回る密度を有する水不溶性の有機溶剤の例は、好ましくは飽和炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はオクタン並びにそれらの分枝鎖異性体及び飽和炭化水素と芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレンの混合物であり、その際、有利なのはトルエンである。
【0045】
本発明による方法の第二の工程で、好ましくは水不溶性の有機溶剤が使用される場合、その量は、そのつどシリコン成分1モルを基準として、有利には1〜100モル、特に有利には2〜90モルである。有利には、第二の工程では、水不溶性の有機溶剤が使用される。
【0046】
所望される場合、本発明による方法の第二の工程では、更に別の物質も使用されることができる。場合により使用される更なる物質の例は、クロロシラン、例えば式(I)のクロロシラン、又はアルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン、又はアルコール、例えばエタノールである。更なる物質が第二の段階で使用される場合、その量は、第一の工程で使用されるシリコン成分の100質量部を基準として、有利には0.01〜40質量部、特に有利には1〜20質量部である。
【0047】
本発明による方法の第二の工程では、好ましくは第一の工程で得られた反応混合物のシリコン成分並びに場合により使用される更なるシランは、適切な水添加によって所望の重合度になるまで加水分解及び縮合される。
【0048】
本発明による方法の有利な実施形態において、第二の工程では、第一の工程で得られた反応混合物が、場合によりトルエン並びに場合により更なる物質と混ぜられ、且つ水が定義された時間にわたって計量供給され、その際、混合プロセスは、好ましくは機械的エネルギーの導入によって、例えば攪拌機を用いて実施される。
【0049】
本発明による方法の特に有利な実施形態において、第二の工程は、好ましくはバッチ式反応器中で、例えば12m3の内容積を有するバッチ式反応器中で、好ましくは5〜100分の時間にわたり該バッチ式反応器中に水を計量供給し、その際、同時に攪拌することによって実施される。
【0050】
本発明による方法の更なる特別な実施形態において、第二の段階で使用される水は、好ましくは、液面より上方から反応器中に計量供給され、その際、同時に攪拌される。
【0051】
本発明による方法の第二の工程は、好ましくは0〜100℃の温度、殊に20〜80℃の温度、及び有利には500〜2000hPa、特に有利には600〜1500hPaの圧力で実施される。
【0052】
第二の工程で行われる加水分解反応若しくは縮合反応は、任意の且つ従来公知の方法により終結させられることができ、好ましくは、例えば水による希釈、又は塩基、例えば水酸化ナトリウムによる中和に従って終結させられることができる。
【0053】
本発明による方法の第三の工程では、場合により溶剤含有シロキサン相が、水性/アルコール性の塩化水素相から分離される。これは、当業者に公知の方法に従って、例えば好ましくは、相が分離するまで反応混合物を5〜60分間放置することによって行ってよい。HCl、アルコール及び水を含有する相の抜き取り及び後処理並びにシロキサン含有相のポンプ排出及び後処理。
【0054】
そのようにして得られたシロキサン相は、それから好ましくは任意の且つ自体公知の方法に従って、例えば全ての易揮発性成分の中和、濾過及び分離、有利には蒸留によって後処理されることができる。易揮発性成分は、有利には環状シロキサン、及び好ましくは0.95kg/lを下回る密度を有する水不溶性の有機溶剤である。さらに、シロキサン相の濃度を、例えば薄膜蒸発器中での蒸留による溶剤の除去によって高めて、オルガノポリシロキサン溶液を製造するか、又は溶剤を完全に除去して、溶剤不含のシロキサンを得ることもできる。
【0055】
本発明による方法に従って、定義された特性を有する多数のオルガノポリシロキサン、例えば、SiC結合基、ヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンが再現可能に製造されることができる。殊に、本発明による方法は、オルガノポリシロキサン樹脂の製造に顕著に適している。
【0056】
本発明により製造されたオルガノポリシロキサンは、20℃及び900〜1100hPaの圧力で固体又は液体であってよく、且つポリスチレン標準に対して測定して、好ましくは162〜100000g/モル、特に有利には800〜10000g/モルの平均分子量を有する。
【0057】
本発明により製造されたオルガノポリシロキサンは、好ましくは少なくとも一部が、しかしながら、有利には全体が、アルコキシシラン及び/又はヒドロキシシラン及びそれらの縮合物に可溶性である。
【0058】
有利には、本発明により製造されたオルガノポリシロキサンは、式
[RSiO3/2g[R2SiO]b[R3SiO1/2c[SiO4/2d[R11/2e[HO1/2f
[式中、Rは、メチル基、イソオクチル基又はフェニル基であり、R1は、メチル基、エチル基又はブチル基であり、g=2〜200、b=0〜100、c=0〜50、d=0〜10、e=0〜20、f=0〜10である]のオルガノポリシロキサンである。
【0059】
本発明により製造されたオルガノポリシロキサンの例は、[MeSiO3/272[Me2SiO]24[EtO1/22.8[HO1/20.4、[MeSiO3/212.2[Me2SiO]3.3[Me3SiO1/21.4[EtO1/20.6[HO1/20.18、[MeSiO3/215.3[Me2SiO]2.6[Me3SiO1/21[IOSiO3/20.8[MeO1/22[HO1/20.3及び[PhSiO3/29.8[Me2SiO]2[MeO1/21.8[BuO1/20.04[HO1/20.18であり、その際、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、IOはイソオクチル基であり、Phはフェニル基であり、且つBuはブチル基である。
【0060】
本発明により製造されたオルガノポリシロキサンは、これまでもオルガノポリシロキサンが使用されていた全ての目的用に、例えば建築物保護において、コーティング領域において、化粧品において、テキスタイル並びに紙の領域において使用されることができる。殊に該オルガノポリシロキサンは、エマルジョンの製造のために並びに染料及び塗料を製造するためのバインダーとして適している。
【0061】
本発明による方法は、それが実施の点で簡単であり、且つオルガノポリシロキサンを高い収率で製造することができるという利点を有する。
【0062】
本発明による方法は、場合により使用される非水溶性有機溶剤、塩化水素並びにアルコールを簡単に回収することができるという利点を有する。
【0063】
本発明による方法は、先行技術に対して、部分アルコキシレートのアルコール相がシロキサン相と比較してより小さくなり、それによって、より多くの加水分解バッチが可能となり、ひいては、存在する装置においてより大きな生産能力が達成されるという利点を有する。
【0064】
本発明による方法によって、高い貯蔵安定性を有し、塩化物が非常に低量であり、低いVOC含有量を有し、且つ非常に低コストで製造可能であるオルガノポリシロキサンが得られる。
【0065】
さらに該方法は、周囲温度で固体の55℃までのガラス転移温度(Tg)(加熱速度:6℃/分)を有するオルガノポリシロキサンが製造可能であるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】先行技術に従った循環型反応器を概略的に示す図
【図2】本発明による循環型反応器を概略的に示す図
【0067】
図1
図1には、先行技術に従った循環型反応器を概略的に示している。クロロシランを部分的にアルコキシル化するための循環型反応器は、アルコール/水混合物1及びシラン混合物2用の別個の供給管、ガス状の反応生成物用の排出管が備わっている脱気容器3、ループ管4並びに液状の反応生成物5用のオーバーフロー管を有する。
【0068】
図2
図2には、本発明による循環型反応器を概略的に示している。クロロシランを部分的にアルコキシル化するための循環型反応器は、アルコール/水混合物1及びシラン混合物2用の別個の供給管、ガス状の反応生成物用の排出管が備わっている脱気容器3、調節装置を含む加熱装置7並びに相濃縮ユニット6、ループ管4並びに液状の反応生成物5用のオーバーフロー管を有する。
【0069】
以下の実施例において、部及び百分率の全ての値は、別記しない限り、質量を基準とする。別記しない場合、続く実施例は、周囲雰囲気、つまり、約1000hPaで実施し、且つ別記しない場合、室温、つまり、約20℃又は反応体を室温で付加的な加熱若しくは冷却なしに一緒に混ぜた際に生じる温度で実施する。実施例で挙げられる全ての粘度値は、25℃の温度を基準とするものである。
【実施例】
【0070】
実施例1(参考例)
1.35m3の内容積(そのうち0.85m3が脱気容積である)を有し、且つ自然循環により連続的に運転される反応ループ管に、連続的にメチルトリクロロシラン800kg/hとジメチルジクロロシラン200kg/hとから成るクロロシラン混合物1000kg/h及びエタノール638kg/hと水62kg/hとから成る混合物700kg/hを計量供給する。反応温度は30℃であり、ゲージ圧力は100mbarであり、且つシロキサン相の平均滞留時間は20〜24分である。反応の間、塩化水素300〜350kg/hが放出され、これを塩化水素回収プラントに供給する。
【0071】
加水分解/縮合のために、そのようにして得られた約1250kgのシロキサン相と約1250kgのエタノール/HCl相から成るHCl濃縮された部分アルコキシレート2500kgを、トルエン3000kgと一緒に、12m3の内容積を有するバッチ式反応器中に装入し、そして水510kgを75分間にわたって十分混合しながら計量供給する。反応温度は60℃までであり、ゲージ圧力は反応の第一の部分工程で達したゲージ圧力を超えない。
【0072】
その後、酸濃度を、水3050kgの添加によって不活性になるまで減少させる(酸相、エタノール相、水相中で14質量%を下回るHCl含有率)。5〜15分間慎重に混合した後、混合物を12m3の大きさの容器に排出し、そして60分間放置させる。
【0073】
引き続き、エタノール/塩化水素/含水相を、トルエン含有シロキサン相から分離する。更なる後処理工程では、トルエン含有樹脂相を、充填材を用いて運転される蒸留塔(塔底温度114℃、塔底ゲージ圧力100mbar、滞留時間60分)内で、より高い固体含有量に濃縮し、炭酸水素ナトリウムで中和し、活性炭で触媒活性金属の痕跡量を取り除き、引き続き濾過助剤により濾過し、そして薄膜蒸発器(120〜200℃)及び50〜100mbarの減圧下で揮発性成分を取り除く。濃縮及び薄膜蒸発の反応工程で生じるトルエンは、第二の反応工程で再び使用する。第三の工程(相分離)からの酸性のエタノール相/水相は、アルカリ性にした後に再蒸留し、そして第一の反応工程で再び使用する。
【0074】
1H−、29Si−NMR及びGPC分析装置(質量平均Mwを考慮に入れながら、ポリスチレン標準に対して測定)に従った平均的実験式[MeSiO3/272[Me2SiO2/223.9[EtO1/22.8[HO1/20.4を有するオルガノポリシロキサンが得られる。
【0075】
実施例2
1.35m3の内容積(そのうち0.85m3が脱気容積である)を有し、且つ自然循環による、DE102006053157A1に従った50kWまでの熱出力で稼働される電気抵抗加熱装置が備え付けられており、且つ図2中で構成要素(6)として示してあるように、循環流中のエタノール相の濃度を高めるための相分離容器が備わっている本発明による循環型反応器中に、連続的にメチルトリクロロシラン800kg/hとジメチルジクロロシラン200kg/hとから成るクロロシラン混合物1000kg/h及びエタノール(360kg/h)と水(90kg/h)とから成る混合物450kg/hを計量供給する。反応温度を加熱エレメントによって30℃に調節し、ゲージ圧力は100mbarであり、且つシロキサン相の平均滞留時間は20〜24分である。反応の間、塩化水素550〜600kg/hが放出され、これを塩化水素回収プラントに供給する。
【0076】
加水分解/縮合のために、そのようして得られた約2100kgのシロキサン相と約400kgのエタノール/HCl相から成るHCl濃縮された部分アルコキシレート2500kgを、トルエン3900kgと一緒に、12m3の内容積を有するバッチ式反応器中に装入し、そして水560kgを75分間にわたって十分混合しながら計量供給する。反応温度は60℃までであり、ゲージ圧力は反応の第一の部分工程で達したゲージ圧力を超えない。
【0077】
その後、酸濃度を、水2950kgの添加によって不活性になるまで減少させる(酸相、エタノール相、水相中で14質量%を下回るHCl含有率)。5〜15分間慎重に混合した後、混合物を12m3の大きさの容器に排出し、そして60分間放置させる。
【0078】
それにより、比較例1におけるのと同じ継続時間でシロキサン相2100kg(比較例1:1250kg)を反応させる。
【0079】
引き続き、エタノール/塩化水素/含水相を、トルエン含有シロキサン相から分離する。
【0080】
更なる後処理工程では、トルエン含有樹脂相を、充填材を用いて運転される蒸留塔(塔底温度114℃、塔底ゲージ圧力100mbar、滞留時間60分)内で、より高い固体含有量に濃縮し、炭酸水素ナトリウムで中和し、活性炭で触媒活性金属の痕跡量を取り除き、引き続き濾過助剤により濾過し、そして薄膜蒸発器(120〜200℃)及び50〜100mbarの減圧下で揮発性成分を取り除く。濃縮及び薄膜蒸発の反応工程で生じるトルエンは、第二の反応工程で再び使用する。第三の工程(相分離)からの酸性のエタノール相/水相は、アルカリ性にした後に再蒸留し、そして第一の反応工程で再び使用する。
【0081】
1H−、29Si−NMR及びGPC分析装置(質量平均Mwを考慮に入れながら、ポリスチレン標準に対して測定)に従った平均的実験式[MeSiO3/272[Me2SiO2/223.9[EtO1/22.8[HO1/20.4を有するオルガノポリシロキサンが得られる。
【符号の説明】
【0082】
1 アルコール/水混合物、 2 シラン混合物、 3 脱気容器、4 ループ管、 5 液状の反応生成物、 6 相濃縮ユニット、 7 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール/水混合物及びシラン混合物用の別個の供給管、ガス状の反応生成物用の排出管が備わっている脱気容器、並びに液状の反応生成物用のオーバーフロー管を有する、クロロシランを部分的にアルコキシル化するための直立に配置された循環型反応器において、該循環型反応器は、加熱装置、及び反応媒体中の温度を少なくとも5℃の精度で調節することができる、該加熱装置と接続された循環流中の温度を調節するための調節装置を有し、その際、該オーバーフロー管には、過剰のアルコール相を分離し、且つ該循環型反応器に返送する付加的な相分離ユニットが接続されていることを特徴とする、直立に配置された循環型反応器。
【請求項2】
前記調節装置が、反応媒体中の温度を0.5℃の精度で調節することを特徴とする、請求項1記載の循環型反応器。
【請求項3】
オルガノポリシロキサンの製造法であって、
第一の連続的な工程では、クロロシランを加水分解可能な塩素1モル当たり水0.10〜0.50モルと、及び加水分解可能な塩素1モル当たりアルコール0.30〜1.0モルと反応させ、その際、アルコールに対する水のモル比は、0.13〜0.85であり、その際、シラン混合物に対する含水アルコールの比は、上述の範囲で、この第一の工程の生成物混合物中でのアルコール相の割合が、0〜50質量%となるように調節し、その際、反応媒体の温度を、加熱装置によって標準値としての温度に調整し、目標値としての20〜60℃の範囲の一定に整えられた固定温度と比較し、且つ目標値に合わせる意味で5℃の精度で調節し、
第二の工程では、第一の段階で得られた反応混合物を、場合により、0.95kg/lを下回る密度を有する非水溶性有機溶剤と混ぜ、且つSi成分1モル当たり水0.2〜100モルの量の水を計量供給し、且つ
第三の工程では、第二の工程の反応の終了後に水性/アルコール性相を分離する、
オルガノポリシロキサンの製造法。
【請求項4】
前記第一の工程で使用するアルコール量を、前記第一の工程の全生成物混合物中でのアルコール相の割合が0〜40質量%となるまで減らすことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記使用するアルコール量を、前記第一の工程の全生成物混合物中でのアルコール相の割合が0〜25質量%となるまで減らすことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記温度を25〜45℃の特定の温度に調節することを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第二の工程で、水不溶性の溶剤を使用することを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第一の工程を、請求項1及び2に記載の循環型反応器中で実施することを特徴とする、請求項3から7までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508489(P2013−508489A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534620(P2012−534620)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065103
【国際公開番号】WO2011/047973
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】