説明

オルトフタラートによる水素処理触媒の処理方法およびこれを使用する硫化方法

本発明は、酸化物の形態の金属の水素処理触媒を場合によっては液体に溶解、または分散された少なくとも1つのオルトフタル酸エステルにより含浸する方法に関する。本発明は、更に、酸化物の形態の金属の水素処理触媒を硫化する方法であって、a)上記のような含浸段階とこれに続くb)このように処理された触媒を硫化剤と接触させる段階と、c)水素と接触させる段階を含んでなり、段階b)を段階c)に続いて行うか、または段階b)およびc)を同時に行う方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製油プラントにおいて炭化水素質原料を水素処理する分野に関する。本発明の主題は、この目的に使用可能な触媒を処理するための方法と前記触媒の硫化方法における本発明の使用である。
【背景技術】
【0002】
製油プラントの大気圧下での蒸留または減圧蒸留のユニットから得られるオイル留分などの炭化水素質原料は、特に有機イオウ化合物(硫化物、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンおよびこれらの誘導体など)、窒素化合物および/または酸素化合物の含量を低減させることを意図した水素処理の対象である。このような処理は水素処理として公知であり、液体オイル留分は一般に300および400℃の間の温度および10から250バール(1.0〜25.0MPa)の範囲の圧力で処理される。
【0003】
このようにして、本発明が関連する炭化水素質原料を水素処理するための触媒は、有機イオウ化合物を硫化水素(水素化脱硫またはHDSとして公知である操作)、有機窒素化合物をアンモニア(水素化脱窒素またはHDNにより表される操作)、および/または酸素化合物を水と炭化水素(水素化脱酸素またはHDOの用語の下で公知である操作)に適切な条件下、水素の存在下で変換するために使用される。
【0004】
これらの触媒は、一般に、モリブデン、タングステン、ニッケルおよびコバルトなどの元素周期律表のVIbおよびVIII族の金属をベースとする。最も通常使用される水素処理触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナおよびゼオライトなどの多孔質無機担体上のコバルト−モリブデン(Co−Mo)、ニッケル−モリブデン(Ni−Mo)およびニッケル−タングステン(Ni−W)系、およびこれらの金属の組み合わせ物を含んでなる系から調合される。
【0005】
極めて大きなトン数で工業的に製造されるこれらの触媒は、酸化物の形態(例えば、アルミナ上のコバルト酸化物−モリブデン酸化物触媒、Co−Mo/アルミナの略号により記号表示される)でユーザー、特に製油業者に供給される。しかしながらこれらは、金属硫化物の形態においてのみ水素処理操作に活性である。このことが使用前に水素の存在下で硫化を含んでなる活性化段階にこれらを前もってかけなければならない理由である。
【0006】
したがって、硫化としても公知であるこの活性化段階は、特に経時的な活性と安定性に関する水素処理触媒の性能を改善するのに重要な段階であり、硫化手順の改善に多大の努力が払われてきた。
【0007】
触媒を硫化するための工業的な手順は、製油プラントで入手できるものなどの有機イオウ化合物を硫化剤として既に含んでなる液体炭化水素質原料によって水素圧力下でしばしば行われる。しかしながら、この方法には著しい難点がある。これは硫化を低温で開始することおよびこの触媒の完全な硫化を得るためにゆっくりと高温にすることが必要であるということに関連するものである。
【0008】
この触媒の硫化を改善するためにイオウ含有添加物が提供されてきた。この方法は、ナフサなどの原料に、またはVGO(減圧ガスオイル)、または常圧蒸留ユニットから直接に得られるガスオイルであるSRGO(直留ガスオイル)などの特定の留分にイオウ化合物(スパイク剤として公知である)を組み入れることからなる。
【0009】
このように、この触媒を硫化するために二硫化ジメチル(DMDSとしても公知であり、式CH−S−S−CHである)を使用することが特に欧州特許第EP64429号で公知である。この目的で、対応する触媒を装填した工業用水素処理反応器にDMDS(液体炭化水素質原料に添加される)および水素を導入し、これを水素処理反応を中断した後に行う。工業用水素処理反応器にこの硫化剤を導入するためのこのような方法は「系内」と記述される。
【0010】
更に最近になって、2つの段階を含んでなる触媒を硫化するための新しい方法が開発された。欧州特許第130850号はこのような方法を開示している。「系外」段階として公知である第1の段階においては、触媒を製油プラントの外で水素の不存在下で硫化剤、本例では有機多硫化物による含浸を含んでなる処理により予備活性化する。この触媒の完全な硫化は、水素の存在下で硫化剤を更に添加せずに工業用水素処理反応器中で行われる。この「系外」予備硫化によって、製油業者は触媒の硫化時に水素の存在下で硫化剤を注入することから開放される。
【0011】
DMDSに関しては、特許出願EP 1 046 424は、水素処理触媒の硫化の目的で触媒にオルトフタル酸エステルを添加することによって、このように活性化された触媒の活性を特に水素脱硫において更に改善することが可能となることを教示している。この文献はこの目的にはオルトフタル酸エステルの導入をDMDSの導入と同時に行わなければならないこと、このような方法を系外と同じく系内(例示の実施例により)で充分に適用されることができることを特定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
オルトフタル酸エステルを導入し、次にDMDSを順次導入することによって、水素処理触媒を活性化することが可能となり、触媒活性の改善をもたらすことが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このように、本発明の主題は、第1に、酸化物の形態の金属の水素処理触媒を処理する方法であって、オルトフタル酸、フタル酸無水物または一般式(I)
【0014】
【化2】

(ここで、記号RとRは、同一であるかまたは異なり、アルキル(線状または分岐の)、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基を各々表し、この基は1から18個の炭素原子および場合によっては1個またはそれ以上のヘテロ原子を含んでなることが可能である)
のエステルから選択される少なくとも1つの化合物と水素処理触媒をイオウ化合物の不存在下で接触させることを特徴とする方法である。
【0015】
任意の適切な装置、例えばダブルコーンミキサーまたはロータリーミキサーにより液体状態の式(I)のエステルを処理対象の触媒装填物の上にスプレーすることにより、この接触操作を行うことができる。このオルトフタル酸、このフタル酸無水物、適切ならば式(I)のエステルを200℃未満の、好ましくは180℃未満の沸点の溶媒に溶解した後にスプレーすることができ、この場合この溶媒は加熱することにより蒸発する。式(I)のエステルを任意の適切な分散剤または乳化剤により水に乳化した後でスプレーすることができる。
【0016】
有機溶媒、例えば脂肪族、芳香族または脂環式炭化水素など、またはアルコール、エーテルまたはケトンを溶媒として使用してもよい。
【0017】
一般式(I)のエステルを触媒と接触させることが好ましい。この場合、トルエン中の一般式(I)のエステル溶液を使用することが好ましい。
【0018】
本発明により好ましいオルトフタル酸エステルは、記号RとRが1から8個の炭素原子を含んでなる同一のアルキル基を表すものであり、工業的に入手し得ることと、妥当な価格であることにより特にジメチルオルトフタル酸エステル、ジエチルオルトフタル酸エステルおよびビス(2−エチルヘキシル)オルトフタル酸エステルである。
【0019】
ジエチルオルトフタル酸エステルが特に好ましい。
【0020】
この触媒に含浸される式(I)のエステルの量は触媒の吸収容量に関連し、一般に1および60%の、好ましくは5および50%の間(酸化物の形態の触媒の重量に対するエステルの重量として表して)にある。特に示さない限り、本明細書で使用されるパーセントは重量パーセントである。
【0021】
本発明の方法で使用される金属の水素処理触媒は、一般に、多孔質無機担体上に担持されたモリブデン、タングステン、ニッケルおよび/またはコバルトの酸化物をベースとする触媒である。
【0022】
コバルトおよびモリブデンの酸化物の混合物、ニッケルおよびモリブデンの酸化物の混合物、またはニッケルおよびタングステンの酸化物の混合物であって、酸化物のこの混合物をアルミナ、シリカまたはシリカ/アルミナにより担持したものを触媒として使用することが特に好ましい。
【0023】
本発明のもう一つの主題は、酸化物の形態の金属の水素処理触媒を硫化する方法であって、
−a)上記に定義したような金属の水素処理触媒を処理する段階と、これに続いて
−b)このように処理された触媒を硫化剤と接触させる段階と、これに続いて
−c)水素と接触させる段階
を含んでなり、段階b)に続いて段階c)を行うか、または段階b)およびc)を同時に行う方法である。
【0024】
イオウ化合物、例えば二硫化炭素、有機硫化物、二硫化物または多硫化物、チオフェン化合物またはイオウ含有オレフィンを場合によっては添加した水素脱硫対象の炭化水素質原料などの当業者に既知のいかなる硫化剤も硫化剤として使用してもよい。
【0025】
DMDSを硫化剤として使用し、0.5から5%の、好ましくは1から3%の比率で炭化水素質原料中に含むことが好ましい。
【0026】
使用される硫化剤の量は、一般に、この水素処理触媒の活性化のために達成すべき金属硫化物の安定な形の化学量論と、硫化対象の触媒の量とに関連する。一般に、当業者が過大な努力をせずに繰り返しの試験により決定することのできる硫化剤のこの量は、実際的には10%と50%の間にある(触媒重量に対する硫化剤のイオウの当量の重量比に相当する)。
【0027】
本発明の硫化方法の第1の好ましい代替的な形態によれば、段階a)を適切な混合装置で行い、得られる生成物を工業用水素処理反応器で段階b)およびc)を同時に行うことにより硫化する。段階a)に対しては、いかなる適切な装置、例えばダブルコーンミキサーまたはロータリーミキサーも使用してもよい。この場合、硫化は「系内」型の方法により行われる。
【0028】
本発明の硫化方法の第2の好ましい代替的な形態によれば、段階a)および得られる触媒が硫化剤と接触される(段階b)により)操作を上記の形式のミキサーなどの同一または異なる適切な2つの混合装置で行う。次に、段階c)を工業用水素処理反応器で行う。この場合、硫化は「系外」型の方法により行われる。
【0029】
本発明の方法の別な好ましい代替的な形態によれば、段階a)を工業用水素処理反応器で行い、このように処理される触媒を同一の反応器中で段階b)およびc)を同時に行うことにより、硫化する。この場合、硫化は「系内」型の方法により行われる。
【0030】
採用される温度、必要な時間または硫化剤の流量または水素圧力に関連するものなどこの触媒の硫化を行うための他の条件は当業者に通常公知のものである。
【0031】
次の実施例は純粋に本発明の例示として与えられるものであり、本発明の範囲を限定するように使用されるべきでない。
【0032】
(実施例)
【実施例1】
【0033】
(比較)触媒のDMDSによる硫化
1.1 硫化の実施:
炉中に置いたステンレススチール製の円筒形反応器(120mlの内容積)と、アルミナに担持され、3.3%のコバルトと8.6%のモリブデン(酸化物の形態の)を含んでなる市販の水素化脱硫触媒とを使用する。
【0034】
反応器中で気体および液体流の均一な分配を促進しおよび熱緩衝材としても作用する不活性剤の炭化ケイ素(SiC)の2つの層の間に40ml(31g)のこの触媒を入れる。
【0035】
窒素流下150℃で乾燥した後、原油の常圧蒸留から生成し、次表に照合した特性を呈するガスオイル(直留ガスオイル、これ以降SRGOと呼ぶ)によりこの触媒を濡らす(この同一温度で)。
【0036】
【表1】

【0037】
この反応器を水素圧力下に置いた後、DMDSを1.05g/時の流量でSRGOの中に注入する。DMDSによる硫化を次の条件下で行う。
【0038】
−水素圧力;30バール(3.0MPa)
−水素流(標準温度と圧力条件下で測定したリットルで表した)/SRGO流(リットルで表した)比;250Sl/lに等しい
−時間空間速度(触媒の容積に対するSRGOの容積での流量)HSV、2時−1
−150℃から220℃までの温度上昇、30℃/時の速度
−220℃における定常温度、反応器の出口ガス中で0.3容積%のHSを得るまで維持
−320℃までの温度上昇、30℃/時の速度
−320℃での定常温度、14時間維持
気体/液体分離器を通過後反応器の出口において液相を触媒反応器の上流へ再循環する。
【0039】
全硫化時間は24時間である。
【0040】
触媒を回収、洗浄し、窒素流下で乾燥する。
1.2 チオフェンの水素化脱硫反応における触媒活性の試験:
上記の1.1項により活性化(または硫化)された触媒の活性をチオフェンの脱硫反応で試験する。
【0041】
水素の存在下で行われるこの反応は、HSの同時形成を伴いながらチオフェンをブタジエン、ブタンまたはブテンなどの炭化水素質生成物に変換する効果を有する。この反応におけるこの触媒の活性は炭化水素質原料の水素化脱硫における活性を表す。
【0042】
1.1項により活性化された触媒の一部をアルゴン下でミル掛けして、炭化ケイ素(SiC)と混合した0.2から0.5mmの大きさの粒子を生成させる。
【0043】
15mgのこの混合物を10mlの容量の管状のガラス反応器に入れる。
【0044】
400℃の温度としたこの反応器に
−5.4Sl/時間の流量の水素と
−1.5g/時の流量(重量)に相当する8kPaの分圧のチオフェンを
101kPaの全圧力に対して供給する。
【0045】
種々の活性化(または硫化)処理から得られる活性の比較を可能とする目的で、触媒の活性を触媒1グラム当りのこの反応の速度定数kにより求め、相対重量活性(RWA)の形で表す。RWAを次の方法で計算する。
【0046】
DMDSによる各活性化処理(オルトフタル酸エステルによる含浸を含んでなる第1の段階を先行させるか、または先行させない)の後、この反応器の出口から出る気体中の残存チオフェン含量のクロマトグラフ分析の測定から速度定数(k)を計算する。このRWAは、本発明の参照試験(DMDSにより硫化された触媒)に対して活性定数をパーセントとして表した比、すなわち100×k/krefである。
【0047】
したがって、実施例1によってDMDSにより硫化された触媒のRWAは100%である。
1.3 オイル留分の水素化脱硫反応における触媒活性の試験:
この活性試験は触媒水素処理反応後のオイル留分の残存イオウ含量を測定することからなる。このタイプの試験は水素処理触媒の使用の工業的条件に極めて類似する。
【0048】
これらの試験においては、このオイル留分はガスオイルであり、この特性を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
この実施例の段落1.1により活性化された3mlの触媒をミル掛けして、200から500μmの間の粒子サイズの粉末を得る。この触媒を同一容積の炭化ケイ素粉末と混合し、次に管状反応器(内径10mm、高さ190mm)の中心部分に入れる。熱緩衝材として作用し、触媒床に良好な機械的安定性をもたらす炭化ケイ素の層により反応器の入口と出口を充填する。
【0051】
次に、水素とガスオイルを周囲温度で上昇流中に導入する。
【0052】
続いて、この反応器を60℃/時間の温度上昇速度で350℃まで上げる。15時間の安定化期間の後、液体の定期的試料を8時間にわたって反応器の出口から抜き取り、次に窒素により脱ガスして、いかなる痕跡の溶解硫化水素も除去する。この試験条件を表3に要約する。
【0053】
【表3】

【0054】
反応器の出口から出る液体中のイオウの残存濃度を各試料について測定し、平均イオウ濃度を計算した後、1ミリリットルのこの触媒の活性を特性化する速度定数(k)を次式により求める。
【0055】
【数1】

式中
−LHSVは
【0056】
【数2】

により定義される、h−1で示される液体の時間空間速度、LHSVを表し、
−nは反応次数であり、ガスオイルの水素化脱硫の場合1.65に等しく、
−Cガスオイル出口は試料中に存在するイオウの濃度(ppm)であり、
−C原料は使用ガスオイル原料中に存在するイオウの濃度(すなわち、13200ppm)である。
【0057】
異なる活性化処理から得られる特に参照処理に対する、活性の比較を可能とする目的で、触媒活性(速度定数(k)により特性化される)を次式により相対容積活性(RVA)という用語で表す。
【0058】
【数3】

式中
−k試料は試験される触媒の速度定数であり、
−k標準は参照触媒(実施例1によりDMDSで硫化された触媒)の速度定数である。
【0059】
したがって、実施例1によりDMDSで硫化された触媒のRVAは100%である。
【実施例2】
【0060】
実施例1で使用した触媒の9.2%のフタル酸ジエチル(またはDEP)による含浸
実施例1と同一の水素処理触媒と、この底部に溶接された焼結ガラスを備えた200mlの容積のジャケット付き管状ガラス反応器とを使用する。
【0061】
この反応器の焼結ガラス上に40ml(31gに相当)のこの触媒を堆積させ、続いてこの中に32.5gのトルエン中の2.86gのDEP溶液を導入する。対応する酸化物の形態の触媒の全重量に対するDEPの比は9.2重量%である。DEPと触媒充填物を周囲温度で30分間接触させたままとする。
【0062】
続いて、この反応器の温度を100℃とし、窒素をこの反応器に通して、トルエンを蒸発させる。
【実施例3】
【0063】
実施例2により処理された触媒のDMDSによる硫化
実施例1の1.1項のDMDSによる硫化処理を実施例2で得られた触媒に対して繰り返す。
【0064】
実施例1の1.2項に述べたチオフェンの水素化脱硫の試験によりこのように硫化された触媒の活性を測定する。
【0065】
116のRWAを得る。
【0066】
結果として、DEPでの予備的な含浸によってDMDSにより硫化された触媒の活性を著しく増大させることが可能となる。
【実施例4】
【0067】
実施例1で使用した触媒の19.6%のDEPによる含浸
実施例2を繰り返して、19.6%の触媒(酸化物の形態の)の全重量に対するDEPの比を得る。
【実施例5】
【0068】
実施例4により処理された触媒のDMDSによる硫化
実施例4により製造されたものを触媒として用いて実施例3を繰り返す。
【0069】
チオフェンの脱硫において112のRWAを測定する。
【実施例6】
【0070】
水素処理触媒の28.3%のDEPによる含浸
アルミナ上に担持された3.3%のコバルトと12.1%のモリブデン(酸化物の形態の)からなる230ml(180g)の市販の水素化脱硫触媒を500mlの丸底ガラスフラスコ中に入れ、次に46ml(51g)のDEPと51ml(44g)のトルエンからなる溶液をこの触媒上に流す。この組み合わせた混合物を周囲温度で12時間放置し、次にロータリーエバポレータを用いてトルエンを真空下60℃で蒸発させる。
【0071】
この触媒上にこのように導入されたDEPの量は、市販の水素脱硫触媒(酸化物の形態の)の重量の28.3%に相当する。
【実施例7】
【0072】
実施例6により処理された触媒のDMDSによる硫化
反応器の上流に液相を再循環せずに、実施例1の1.1項の触媒のDMDSによる硫化処理を実施例6で得られた触媒について繰り返す。
【0073】
このように硫化された触媒の活性を実施例1の1.3項に述べたオイル留分について水素化脱硫試験により測定する。ここで、参照の速度定数のk標準は実施例6に対して使用され、DMDSにより硫化された市販の触媒に対して測定されたものである。
【0074】
116のRVAを得る。
【0075】
DEPによる予備的な含浸によってDMDSで硫化された触媒の活性を著しく増大させることが可能となるという事実はこのように裏付けられる。
【実施例8】
【0076】
実施例6で使用した触媒の40.5%のDEPによる含浸
53ml(41g)の実施例6で使用した触媒を250mlの丸底ガラスフラスコに入れる。続いて、14.8ml(16.6g)のDEPと8.4ml(7.2g)のトルエンからなる溶液をこの触媒上に流す。この組み合わせた混合物を周囲温度で12時間放置し、次にロータリーエバポレータを用いてトルエンを真空下60℃で蒸発させる。
【0077】
この触媒上にこのように導入されたDEPの量は、市販の水素脱硫触媒(酸化物の形態の)の重量の40.5%に相当する。
【実施例9】
【0078】
実施例8により処理された触媒のDMDSによる硫化
液相をこの反応器の上流に再循環せずに、実施例8により処理された触媒を用いて実施例1のDMDSによる硫化処理を繰り返す。
【0079】
ガスオイルの水素化脱硫における活性試験(実施例1の1.3項に述べた)によって137のRVA測定値を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物の形態の金属の水素処理触媒を処理する方法であって、オルトフタル酸、フタル酸無水物または一般式(I):
【化1】

(ここで、記号RとRは同一であるかまたは異なり、アルキル(線状または分岐の)、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基を各々表し、この基は1から18個の炭素原子および場合によっては1個またはそれ以上のヘテロ原子を含んでなることが可能である)
のエステルから選択される少なくとも1つの化合物と水素処理触媒をイオウ化合物の不存在下で接触させることを特徴とする方法。
【請求項2】
触媒と接触させられる化合物が一般式(I)のエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)のエステルが記号RとRが1から8個の炭素原子を含んでなる同一のアルキル基を表すようなものであることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
式(I)のエステルがジエチルオルトフタル酸エステルであることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
水素処理触媒が多孔質無機担体上に堆積されたモリブデン、タングステン、ニッケルおよび/またはコバルトの酸化物をベースすることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒と接触させられる式(I)のエステルがトルエン中に溶解されていることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
−a)請求項1から6の一項に定義したような処理段階と、これに続く
−b)このように処理された触媒を硫化剤と接触させる段階と、これに続く
−c)水素と接触させる段階
を含んでなり、段階b)に続いて段階c)を行うか、または段階b)およびc)を同時に行う、酸化物の形態の金属の水素処理触媒を硫化する方法。
【請求項8】
硫化剤が場合によっては二硫化炭素、有機硫化物、二硫化物または多硫化物、チオフェン化合物またはイオウ含有オレフィンなどのイオウ化合物を添加した水素化脱硫対象の炭化水素質原料であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
DMDSを硫化剤として使用し、0.5から5%の、好ましくは1から3%の比率で炭化水素質原料中に含むことを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
段階a)を適切な混合装置で行い、段階b)およびc)を同時に行うことにより、生成物を工業用水素処理反応器で硫化することを特徴とする、請求項7から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
段階a)および得られる触媒が段階b)により硫化剤と接触される操作を同一または異なる2つの混合装置で行い、段階c)を工業用水素処理反応器で行うことを特徴とする、請求項7から9の一項に記載の方法。
【請求項12】
段階a)を工業用水素処理反応器で行い、続いて同一の反応器で段階b)およびc)を同時に行うことによりこのように処理される触媒を硫化することを特徴とする、請求項7から9の一項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−521921(P2006−521921A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505758(P2006−505758)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000768
【国際公開番号】WO2004/091789
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591004685)アルケマ (112)
【Fターム(参考)】