説明

オレフィンおよび保護または非保護のヒドロキシスチレン単位を含む共重合体を形成するための方法

ブロック共重合体を含み、1つまたは複数のオレフィン単位および1つもしくは複数の保護または非保護ヒドロキシスチレン単位を含む共重合体を形成するための新規の方法を、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、保護または非保護のヒドロキシスチレン単位を含む重合体に結合するオレフィンを含む共重合体を形成するための方法、およびこのような方法によって形成される共重合体に関するものである。
【0002】
関連出願についての言明
本願は、2005年8月11日出願の米国特許仮出願第60/707581号に対する優先権を主張し、かつ2004年2月11日出願の米国実用特許出願第10/776,674号ならびに2005年2月11日出願の国際出願番号PCT/US2005/004379に関するものである。これらの出願内容は、これら全体を参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
リビング重合(すなわち、実際に単量体への連鎖移動および不可逆性の終結がない場合の重合の進行)は、例えば、末端官能化重合体、星形重合体および/またはブロック共重合体のような十分に定義された種々様々な重合体構造の調製のための万能な合成経路、ならびに分子量および重合体の分子量分布の調節を可能にし、加えて官能基を重合鎖の所望の点に置くことが可能である、重合体構造を設計するための非常に有用な方法である。Szwarc et al.は、1950年代にナフタレンナトリウムおよびスチレンの反応から形成されるポリスチリルリチウムの真の性質を明示したため、陽イオン、陰イオン、ラジカル、開環、および環移動の重合を含む種々様々なリビング重合スキームが発展した。リビング重合の最も有用な特徴の1つは、ブロック共重合体を調製する能力である。陽イオンの連続したリビングブロック共重合は、高い構造的完全性を有する十分に定義されたブロック共重合体を提供するための最も簡単でかつ最も都合のよい方法の1つとして一般的に認識されている。
【0004】
直鎖状の、星状の、およびゴム状ポリイソブチレン(PIB)中心ブロックおよびガラス状末端ブロックを有する樹枝状のブロック共重合体は、有用な熱可塑性エラストマーであり、熱および酸化安定性ならびに生体適合性のような非常に優れた特性を示す。今日まで末端ブロックとしてポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(p-tert-ブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)およびポリインデンを有するこれらのブロック共重合体の大多数が調製されている。
【0005】
上記の熱可塑性エラストマーのすべてが、疎水性の末端ブロックを含む。しかしながら、適用には、末端ブロックが疎水性である場合、ブロック共重合体を必要とするものもある。ブロック共重合体の全体の親水性を調整できることは、幅広い範囲の有用な製品を提供すると思われる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の局面により、ブロック共重合体の作製法が提供される。この方法は、以下の段階を含む:(a)1つまたは複数のオレフィンブロックを含む炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;(b)第1の反応条件下で、炭素陽イオンにより終端化した重合体を、第1の反応条件下でホモ重合しないキャッピング種に接触させ、これによって末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を形成する段階;(c)第1の反応条件を、保護されたヒドロキシスチレン単量体種の重合を実質的に妨げるために変更する段階;および(d)第2の反応条件下で、末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を、保護されたヒドロキシスチレン単量体種に接触させ、これによってブロック共重合体を提供する段階。
【0007】
1つの態様において、第1の反応条件は、TiCl4により与えられ、かつ段階(c)においてチタンテトラアルコキシド種の添加によって低下させるルイス酸性度を含む。1つの態様において、第2の反応条件は、SnBr4によって与えられるルイス酸性度を含む。もう1つの態様において、第1および第2の反応条件は、-50℃と-90℃の間の温度を含む。
【0008】
いくつかの態様において、炭素陽イオンにより終端化した重合体を、第1の反応条件下で、以下を含む反応混合物から形成する:(i)溶媒系、(ii)1分子につき4個から18個の炭素原子を含むイソモノオレフィンおよび1分子につき4個から14個の炭素原子を含むマルチオレフィンから選択される単量体種、(iii)有機エーテル、有機エステル、有機アルコール、および有機ハロゲン化物より選択される開始剤、ならびに(iv)ルイス酸。
【0009】
いくつかの態様において、この方法は、該保護ヒドロキシスチレン単量体種に対応する該ブロック共重合体における構成単位の少なくとも一部を加水分解し、これによってアルコール基を形成する段階をさらに含むことができる。
【0010】
1つの局面において、本発明は、以下を含むブロック共重合体を作製する方法を提供する:(a)キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;(b)キャッピングされた重合体と結合する開始剤を中和する段階;および(c)第2の開始剤の存在下で、キャッピングされた重合体を単量体に接触させることによって、ブロック共重合体を形成する段階。いくつかの態様において、ルイス酸性度を変更することによって、開始剤を中和する。いくつかの態様において、チタンテトラアルコキシド種を用いて、ルイス酸性度を変更する。いくつかの態様において、開始剤はTiCl4である。いくつかの態様において、第2の開始剤はSnBr4である。単量体は、保護または非保護のヒドロキシスチレンであることができるが、これに限定されない。炭素陽イオンにより終端化した重量体は、ポリイソブチレンであることができるが、これに限定されない。
【0011】
もう1つの局面において、本発明は、以下を含み、少なくとも1つの実質的に一様な力学的特性を有する共重合体を提供する:(a)1つまたは複数のオレフィン単量体種に対応する複数の構成単位、および(b)1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位。オレフィン単量体種は、イソブチレン、2-メチルブテン、イソプレン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよびβ-ピネンであることができるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、オレフィン単量体種は、イソブチレンを含む。保護のヒドロキシスチレン単量体種は、tert-ブチル保護ヒドロキシスチレン、ベンジル保護ヒドロキシスチレン、シクロヘキシル保護ヒドロキシスチレン、ネオペンチル保護ヒドロキシスチレン、アセチル保護ヒドロキシスチレンおよびtert-ブチルジメチルシリル保護ヒドロキシスチレンであることが、これらに限定されない。いくつかの態様において、実質的に一様な特性は、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性である。
【0012】
いくつかの態様において、共重合体は、以下を含み、実質的に一様な力学的特性を有するブロック共重合体である:(a)1つまたは複数の該オレフィン単量体種に対応する多数の構成単位を含むオレフィンブロック、および(b)1つもしくは複数の該保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位を含むスチレンブロック。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明をさらに説明する前に、以下の定義を本明細書において用いられる特定の用語について示す。
【0014】
本明細書で用いられる場合の「重合体」という用語は、1つまたは複数の鎖を含み、それぞれが1つまたは複数の構成単位の多数コピーを含む分子を表す。一般的な重合体の例は、ポリスチレン

であり、式中、nが整数、典型的には10またはそれ以上の整数、より典型的には10桁台、100桁台、1000桁台またはそれ以上でさえの桁台であり、鎖の構成単位がスチレン単量体:

に対応する(すなわち、それらは、スチレン単量体の重合から、この場合スチレン単量体の追加重合から生じる、またはこの重合から生じる際に特有の特徴を有する)。
【0015】
本明細書で用いられる場合の「共重合体」という用語は、少なくとも2つの似ていない構成単位を含む重合体を表す。共重合体は、重合体の重要なクラスであり、かつ数多くの商業的利用を有する。例えば、純粋な形態で、混合物で、融解して、溶液中でなどであろうとも、それらの特有の特性は、例えば、相溶化剤、接着剤、分散剤などとしての幅広い範囲の製品におけるそれらの使用につながる。各共重合体は、それ自体の特有の特性を有するので、上記のもののような製品において使用できる新規の共重合体の需要が続いている。
【0016】
本明細書において用いられる場合、重合体「ブロック」は、10またはそれ以上の構成単位、一般には20またはそれ以上の単位、50またはそれ以上の単位、100またはそれ以上の単位、200またはそれ以上の単位、500またはそれ以上の単位、または1000またはそれ以上でさえの単位が集まっていることである。ブロックは分枝してもまたは分子してなくてもよい。「鎖」は、10またはそれ以上の構成単位の直鎖状の(分枝していない)集まり(すなわち、直鎖状ブロック)である。本発明において、ブロックおよび鎖内の構成単位は、必ずしも同一ではないが、それらが一般的な重合技術、例えば、陽イオン重合技術または陰イオン重合技術において形成されるという事実によって互いに関連がある。
【0017】
いずれの特定の理論に拘束されることを望むことなく、実質的に一様な力学的特性を有するブロック共重合体、例えばポリオレフィン単位および保護または非保護のヒドロキシスチレン単位を含む共重合体を提供することが有益である場合があると考えられる。本明細書において用いられる場合、「実質的に一様な」という用語は、全体としていくつかの態様において、重合体の2つの領域間の相違がせいぜい所望のパーセンテージであることを表す。少なくとも1つの「実質的に一様な特性」を有する重合体は、特性、例えば硬度が、2つの所望の点の間において例えば20%を超えては変わらない重合体を表す。いくつかの態様において、「所望のパーセンテージ」という用語は、せいぜい50%、40%、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を表すために用いられる。列挙された値の間にあるすべての個々の値は、本発明によって含まれることを意味する。いくつかの態様において、所望のパーセンテージは、0%を表す。いくつかの態様において、「実質的に一様な」とは、値の正確なパーセント変動に関わらず所望の基準内にある特性を表す。例えば、特定の硬度範囲に収まる、または特定の値を超える硬度を有する特定の重合体が、望まれる場合がある。このような場合、実質的に一様な硬度は、所望の範囲内の値であると考えられる。特性は、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、例えば少ないまたは低減圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性を含むが、これらに限定されない。
【0018】
Satoh, Kotaro;Kamigaito, Masami;およびSawamoto, Mitsuo, Department of Polymer Chemistry Graduate School of Engineering, Kyoto University, Kyoto, Japan, Macromolecules (2000), 33(16), 5830参照の、MeCN/CH2Cl2溶媒中の多量の水の存在下での0℃におけるBF3.OEt2補助開始剤によるp-ヒドロスチレンおよびp-tert-ブトキシスチレンのリビングホモ重合および共重合が報告されているが、この系は、イソブチレンのリビングホモ重合に適用できない。 水溶性乳濁液重合における、およびトルエンまたはCH2Cl2中のHI/ZnI2開始系によるp-tert-ブトキシスチレンの陽イオンリビング重合はまた、報告されている。Higashimura, T.; Kojima, K.; Sawamoto, M., Makromolekulare Chemie, Supplement 1989, 15, 127。しかしながら、HI/ZnI2開始系は、イソブチレン(IB)重合に不活性である。
【0019】
さらに、連続的な単量体添加によるブロック共重合体の合成は、典型的には、例えば、ルイス酸、溶媒、添加剤、温度などのような重合条件の合理的選択、ならびに単量体添加の適切な順序の選択に頼る。陽イオンの連続的リビングブロック共重合の成功のためには、第2の単量体(Rcr)に対してのクロスオーバー速度は、第2の単量体(Rp)のホモ重合のものより早いまたは少なくとも同じであるべきである。一般的に、2つの連続的単量体が同様の反応性である場合、またはクロスオーバーがより反応性の高い単量体から反応性の劣る単量体に対して起こる場合、効率のよいクロスオーバーが達成される。その一方、クロスオーバーが反応性の劣る単量体からより反応性の高い単量体に対してである場合、ブロック共重合体およびホモ重合の混合物は、一般的に、好ましくないRcr/Rp比のために形成される。特定の保護ヒドロキシスチレン、例えばp-tert-ブトキシスチレンおよびp-tertブチルジメチルシリルオキシスチレンの陽イオン反応性が、イソブチレンなどのオレフィンのものよりかなり高いと期待されるため、単純な連続的単量体の添加は、本発明のブロック共重合体の調製に用いることができない
【0020】
従って、いくつかの局面において、本発明は、以下を含む共重合体を形成するための工程を提供する:(a)1つまたは複数のオレフィンブロックを含む炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;(b)第1の反応条件下で、炭素陽イオンにより終端化した重合体を、第1の反応条件下でホモ重合しないキャッピング種に接触させ、それにより末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を形成する段階;(c)第1の反応条件を、保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合を実質的に妨げるために変更する段階;および(d)第2の反応条件下で、末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した単量体を、保護ヒドロキシスチレン単量体種に接触させ、これによって、ブロック共重合体を提供する段階。例えば、以下にさらに考察するように、第1の反応条件は、TiCl4によって与えられるルイス酸性度を含む。さらに、ルイス酸性度は、段階(c)においてチタンテトラアルコキシド種の添加によって低下させることができる。その上、第2の反応条件は、SnBr4によって与えられるルイス酸性度を含むことができる。いくつかの態様において、本発明の方法によって形成されるブロック共重合体は、少なくとも1つの実質的に一様な力学的特性を有する。いくつかの態様において、実質的に一様な特性は、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、例えば少ないまたは低減圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性である。
【0021】
本発明に関連した使用のためのオレフィン単量体種の例は、1分子につき4個から18個の炭素原子を有するイソモノオレフィンおよび1分子につき4個から14個の炭素原子を有するマルチオレフィン、例えばイソブチレン、2-メチルブテン、イソプレン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペテン、β-ピネンなどを含む。
【0022】
ヒドロキシスチレン単量体種の例は、2-ヒドロキシスチレン、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、2,3-ジヒドロキシスチレン、2,4-ジヒドロキシスチレン、および3,4-ジヒドロキシスチレン種を含む。
【0023】
保護ヒドロキシスチレン単量体種の例は、陽イオン重合条件下で安定であるが、例えば酸または塩基の影響を受けてヒドロキシル基へ加水分解できる1つまたは複数の官能基で置換されるスチレン種を含む。本発明による保護ヒドロキシスチレン単量体種は、全体として(a)式中、Rが炭化水素基、典型的には1個から12個の炭素を含み、分枝アルキル基、シクロアルキル基およびアルキルアリール基を含む、1つもしくは複数R-O-基、または(b)式中、R1、R2、R3が、同一または異なるものであってもよくかつ炭化水素基であり、典型的には1個から4個の炭素を含み、分枝していないアルキル基、分枝アルキル基、シクロアルキル基、およびアルキルアリール基を含む、1つまたは複数の

基のどちらかで置換される。保護ヒドロキシスチレン単量体種の具体例は、tert-ブチル保護ヒドロキシスチレン(tert-ブトキシスチレン)、ベンジル保護ヒドロキシスチレン(ベンジルオキシスチレン)、シクロヘキシル保護ヒドロキシスチレン(シクロヘキソキシスチレン(cyclohexoxystyrene))、ネオペンチル保護ヒドロキシスチレン(ネオペントキシスチレン)、アセチル保護ヒドロキシスチレン(アセトキシスチレン)、tert-ブチルジメチルシリル保護ヒドロキシスチレン(tert-ブチルジメチルシリルオキシスチレン)などを含む。本発明のスチレン単量体種における保護ヒドロキシル基を、2位、3位または4位において、2,3位、2,4位および3,4位などにおいて置換することができる。一般に、本発明のスチレン単量体種における保護ヒドロキシル基は4位において置換される。
【0024】
典型的には、炭素陽イオンにより終端化したオレフィンブロックは、低温で以下を含む反応混合物から形成される:(a)開始剤、(b)ルイス酸補助開始剤、(c)オレフィン単量体、(c)任意のプロトン捕捉剤、および(d)任意の溶媒系。
【0025】
重合を、例えば約0℃から約-100℃までの、より典型的には約-50℃から-90℃までの温度範囲内で行うことができる。重合時間は、典型的には90%、95%、99%またはさらにそれ以上の割合のオレフィン単量体種の重合体への変換を達成するのに十分なこれらの時間である。
【0026】
適切な開始剤は、有機エーテル、有機エステルおよび有機ハロゲン化物を含む。開始剤は、一官能性、二官能性、三官能性などであり、これによって例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、および放射状型ブロック共重合体をそれぞれ作製することができる。具体例は、tert-塩化アルキル、クミルエーテル、アルキルクミルエーテル、ハロゲン化クミル、クミルエステル、アルキルクミルエステル、クミルヒドロキシル化合物およびこれらの障害型、例えば2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンテン、塩化クミル、塩化二クミル、5-tert-ブチル,1,3-塩化二クミル(すなわち、5-tert-ブチル-1,3-bis(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン)、5-tert-ブチル-1,3-bis(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、5-tert-ブチル-1,3-bis(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、および1,3,5-トリス(1-アセトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、および塩化トリクミル(すなわち、1,3,5-トリス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン)を含む。
【0027】
適切なルイス酸補助開始剤の例は、三塩化ホウ素、四塩化チタンおよびハロゲン化アルキルアルミニウム(例えば、クロロジエチルアルミニウム、ジクロロエチルアルミニウム、クロロジメチルアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム)のようなハロゲン化金属およびハロゲン化アルキル金属を含む。1つの一般に用いられる補助開始剤は、四塩化チタンである。補助開始剤は、通常、開始剤と等しい濃度でまたは開始剤より高い濃度で、例えば、開始剤の濃度より1〜100倍高い、好ましくは2〜40倍高い濃度で用いられる。
【0028】
プロトン捕捉剤、典型的にはルイス塩基は、最終産物中の重合による夾雑物をもたらし得る水のようなプロトン性不純物の実質的な非存在を確実にするためにたびたび与えられる。プロトン捕捉剤(プロトントラップとも言われる)の例は、立体障害のあるピリジン、例えば、2,6-di-tert-ブチルピリジンおよび4-メチル-2,6-di-tert-ブチルピリジンのような置換または非置換の2,6-di-tert-ブチルピリジン、ならびに2,6-ジメチルピリジン、1,8-bis(ジメチルアミノ)-ナフタレンおよびジイソプロピルエチルアミンを含む。プロトントラップは、通常、重合系中のプロトン性不純物の濃度より1〜10倍高い濃度で用いられる。
【0029】
本発明の様々な反応は、典型的には、希釈剤または希釈剤混合物を含む溶媒系の存在下で行われる。陽イオン重合および末端キャッピング反応のために、典型的な希釈剤は、(a)塩化メチルおよび二塩化メチレンのような1分子あたり1個から4個の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素、(b)ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンのような1分子あたり5個から8個の炭素原子を含む脂肪族炭素および脂環式炭化水素、または(c)その混合物を含む。例えば、いくつかの態様において、溶媒系は、塩化メチル、塩化メチレンなどのような極性溶媒、およびヘキサン、シクロヘキサンもしくはメチルシクロヘキサンなどのような非極性溶媒の混合物を含む。
【0030】
合成技術に関わらず、一度所望の炭素陽イオンにより終端化したリビング重合体が得られると、用いられる反応条件(例えば、炭素陽イオンにより終端化した重合体の形成時に用いられる反応条件)下でホモ重合しないキャッピング種を、炭素陽イオンにより終端化した重合体に接触させ、これによって末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を形成する。この目的のためのキャッピング種の例は、置換または非置換のジフェニルエチレンのようなジアリールアルケン、例えばジフェニルエチレンまたはジトリルエチレンのようなジアリールアルケンを含む。いずれの特定のものにも拘束されることを望むことなく、これらの化合物が立体障害のために重合しないと考えられるが、それらが行うのは炭素陽イオンにより終端化したポリオレフィンを有する安定な炭素陽イオンを形成することである。一般的に、ジアリールアルキレン種は、リビング鎖の末端の濃度の等倍から最大約10倍、好ましくは、リビング鎖末端の濃度の約1〜5倍、さらにより好ましくはリビング鎖末端の濃度の約2倍の濃度で重合媒質へ添加される。ジアリールアルキレン種は、実質的に完全なキャッピングをもたらすための十分な時間リビング重合体と反応することを可能にする。
【0031】
得られた末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を、その後、保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合を実質的に妨げるために溶液のルイス酸性度を変更する化合物に、接触させる。
【0032】
上記のように、保護ヒドロキシスチレン単量体種を重合する場合、ルイス酸性度は、典型的には既に存在する反応条件(例えば、オレフィン重合および/または末端キャッピング工程に伴う条件)と比較して低い。ルイス酸性度を低下させるための1つの適切な方法は、金属アルコキシド種、例えばチタンアルコキシド種またはTiCl4と同様の有機チタン種を添加する方法である。典型的なアルコキシドチタン種は、式中、Rが1個から4個の炭素原子を含む分枝または非分枝のアルキル基であるTi(OR4)、例えば、Ti[OCH(CH3)2]4またはTi[O(CH2)3CH3]を含む。一般的に添加量は、保護ヒドロキシスチレン単量体種の反応性に依存する。適切なTiCl4/Ti(OR)4比は、保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合を妨げる。いくつかの態様において、TiCl4/Ti(OR)4比は約1.2未満である。さらに、ルイス酸性度を調整することによって、例えばTi(OR)4を添加し所望のTiCl4/Ti(OR)4比に到達することによって、副反応は最小化され、かつ重合はより良好に調節され、ブロッキング効率が高くなる。
【0033】
得られた末端キャッピング炭素陽イオンにより終端化した重合体を、その後、本発明に従って、適切なルイス酸性度条件下で、少なくとも1つの保護ヒドロキシスチレン単量体種に接触させ、ブロック共重合体を作製する。重合時間は、典型的には80%、90%、95%、99%またはそれ以上の割合の保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合体への所望の変換を達成するために十分な時間である。
【0034】
保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合に適切なルイス酸は、TiCl4より弱いルイス酸を含む。より弱いルイス酸は、SnCl4およびSnBr4を含むが、これらに限定されない。いずれの特定の理論にも拘束されることを望むことなく、SnBr4がアルコキシスチレンのリビング重合にかなり適していると考えられる。
【0035】
1つの局面において、本発明は、以下を含むブロック共重合体の作製方法を提供する:(a)キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;(b)キャッピングされた重合体と結合する開始剤を中和する段階;(c)第2の開始剤の存在下で、キャッピングされた重合体を単量体に接触させることによって、共重合体を形成する段階。
【0036】
キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体は、本明細書で記載されるオレフィン重量体種のいずれかから形成される重量体であることができるが、これに限定されない。例えば、炭素陽イオンにより終端化した重合体はポリイソブチレンであることができる。単量体は、本明細書で記載されるヒドロキシスチレンまたは保護ヒドロキシスチレンの単量体種のいずれかであることができるが、これに限定されない。例えば、単量体は、保護または非保護のヒドロキシスチレンであることができる。
【0037】
開始剤は、本明細書で記載される任意の開始剤またはルイス酸補助開始剤であることができるが、これに限定されない。いくつかの態様において、開始剤はルイス酸開始剤、例えば、TiCl4である。いくつかの態様において、開始剤は、ルイス酸性度を変更することによって中和される。ルイス酸性度を、例えば、上記のチタンテトラアルコキシド種の添加以外で、変更することができる。第2の開始剤は、最初の開始剤ではない、本明細書で記載される開始剤またはルイス酸補助開始剤であることができるが、これに限定されない。例えば、第2の開始剤は、最初の開始剤より弱いルイス酸性度のルイス酸であることができるが、これに限定されない。いくつかの態様において、第2の開始剤は、SnBr4である。
【0038】
いくつかの場合において、バッチ間のブロック共重合体の構造のまたは力学的な特性における変動性の低下は、例えば工業的またはより大きいバッチにまで拡大する場合に、望まれることがある。従って、いくつかの態様において、所定の特性は、重合体のあるバッチから別のバッチまで同一または実質的に同一のものである。このように、いくつかの態様において、本発明は、1つ1つのバッチで(from batch to batch)確実に得ることのできる特性を有する共重合体を提供する。
【0039】
本発明のいくつかの態様において、本発明の共重合体内のペンダント保護ヒドロキシル基の少なくとも一部は、例えば、ペンダントヒドロキシル基を形成するための強酸または強塩基を用いて加水分解されることができる。加水分解条件および反応時間は、典型的には、90%、95%、99%またはさらにそれ以上の割合のペンダント加水分解性エーテル基のアルコール基への変換を達成するために十分である。
【0040】
1つまたは複数の加水分解性の保護ヒドロキシスチレン単量体種が共重合体に組み込まれる場合の本発明の態様において、組み込まれた単量体種の少なくとも一部は、加水分解され、これによってヒドロキシル基を形成してもよい。
【0041】
多様なブロック共重合体を、上記技術を用いて形成することができる。例えば、式中、Xが開始剤種に対応し、Cがキャッピング種に対応し、POLが1つまたは複数のオレフィン単量体種に対応する複数の構成単位を含むオレフィンブロックであり、PSTが1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位を含むスチレンブロックであり、かつnが正の自然数、例えば1から5までの範囲の正の自然数である式X(POL-C-PST)nのブロック共重合体は、様々な態様において形成される。n=1またはn=2である場合、直鎖状ブロック共重合体が形成される。n=2の場合は、共重合体はトリブロック共重合体と呼ばれる場合がある。この専門用語は、開始剤の存在を無視し、例えば、単一のオレフィンブロックとしてPOL-X-POLを扱い、同時にそのためにトリブロックをPST-POL-PSTと表される。星型の共重合体は、n=3またはそれ以上の場合に形成される。nの値は、典型的には、n=1に対応する一官能性の開始剤、n=2に対応する二官能性の開始剤などによる開始分子の官能性によって決定される。上記のように、スチレンブロックは、1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位を含む一方、オレフィンブロックは、1つまたは複数のオレフィン種に対応する複数の構成単位を含むと考えられる。
【0042】
従って、本発明のいくつかの態様において、以下を含む共重合体を提供する:(a)1つまたは複数のオレフィン単量体種に対応する複数の構成単位、および(b)1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位。典型的には、これらの構成単位のそれぞれは、少なくとも10倍、およびより典型的には少なくとも50倍、100倍、500倍、1000倍またはそれ以上の頻度で共重合体分子内に存在する。
【0043】
いくつかの態様において、本発明の共重合体は、少なくとも1つの実質的に一様な力学的特性を有する。いくつかの態様において、実質的に一様な特性は、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、例えば少ないまたは低減圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性である。
【0044】
本発明の共重合体は、多様な立体配置、例えば、環状、直鎖状および分枝状立体配置を包含する。分枝状立体配置は、星型立体配置(例えば、3つまたはそれ以上の鎖をたった1つの領域から生じる放射状立体配置)、くし状立体配置(例えば主鎖および複数の副鎖を有するグラフト共重合体)、および樹状立体配置(例えば樹枝状のまたは過度に枝分かれした共重合体)を含む。本発明の共重合体は、(a)単一種類の繰り返しの構成単位を含む1つまたは複数の鎖、(b)2つまたはそれ以上の種類の無作為に分散した構成単位を含む1つまたは複数の鎖(例えば、無作為のまたは統計的共重合体)、(c)継続している一続きの中に繰り返す2つまたはそれ以上の種類の構成単位(例えば交互の共重合体)を含む1つまたは複数の鎖などを含む。
【0045】
例えば、特定の態様において、本発明の共重合体は、(a)それぞれがオレフィン単量体種に対応する複数の単位を含む1つまたは複数のオレフィンブロック、および(b)それぞれが保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の単位を含む1つまたは複数スチレンブロックを含むブロック共重合体である。オレフィン単量体種ならびに保護および非保護のヒドロキシスチレン単量体種の例は、上記に記載される。
【0046】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、典型的には例えば約1000から約2,000,000までの、より典型的には約10,000,から約500,000までの、さらにより典型的には50,000から200,000までの範囲であり、典型的には共重合体の10モル%から90モル%まで、より典型的には共重合体の10モル%から50モル%まで、さらにより典型的には共重合体の13モル%から28モル%までを含む保護または非保護のヒドロキシスチレン単位を有する。いくつかの態様において、重合体の重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)(すなわち多分散指数)が約1.1から1.5まで、または約1.05から1.3までさえの範囲になるように、重合体は、限られた分子量分布を有する。共重合体における、オレフィン単量体種に対応する構成単位の、保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する構成単位に対する比は、通常1/99 w/wから99/1 w/wまでの、例えば30/70 w/wから95/5 w/wまでの範囲である。
【0047】
なお別の局面において、本発明は、本発明の共重合体、例えばブロック共重合体を含む製造の事項に関するものである。
【0048】
いくつかの態様において、多様な商業的利用において用いられる共重合体を製造することができる。いくつかの態様において、加水分解され、これによって親水性が増加した重合体を形成することができる共重合体を、製造することができる。
【0049】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関してさらに記載される。
【0050】
実施例
特徴付け
分子量は、500Å、103Å、104Å、105Å、および100Åの一連のものに接続された、510 HPLCポンプ、モデル410示差屈折計、モデル441吸光度検出器、オンライン多角度光散乱(MALLS)検出器(MiniDawn, Wyatt Technology Inc.)、モデル712サンプルプロセッサ、および5本のUltrastyragel GPCカラムを備えたWaters HPLCシステムにより測定される。テトラヒドロフラン(THF)は、1mL/minの流速で担体溶媒として用いられる。ブロック共重合体の組成は、Bruker 250 MHz装置を用いて1H NMR分光法により測定される。ホモ重合体およびブロック共重合体についてのdn/dc値は、P10フローセル(1mm路長)を用いて、OPTILAB DSP干渉屈折計において測定される。
【0051】
材料
塩化メチル(CH3Cl)およびイソブチレン(マシソン(Matheson))を、BaO/ドライエライトにより充填された直列ガス清浄器カラムに通し、かつ重合前に-80℃で濃縮する。メチルシクロヘキサン(MeChx)(Aldrich、無水グレード)、イソプロポキシドチタン(IV)(Aldrich、99.999%)、塩化チタン(IV)(Aldrich、99.9%)、フッ化テトラブチルアンモニウム(Aldrich、テトラヒドロフラン中の1.0M溶液)、2,6-Di-tert-ブチルピリジン(Aldrich 97%)、塩酸溶液(36.5〜38.0%、VWR)、ピリジン(Aldrich、無水グレード)および4-ジメチルアミノピリジン(Aldrich、99%)を、標準とされる場合に用いる。4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチレン(TBDMSt)は、文献に従って4-アセトキシスチレンから調製される。Hirai, A.;Yamaguchi, K.;Takenaka, K.;Suzuki, K.;Nakahama, S. Makromol. Chem., Rapid Commun. 1982, 3, 941。フェノチアジン(1〜2mg)阻害剤を用いた重合の前に、新たに減圧でCaH2からそれを蒸留する。4-tert-ブトキシスチレン(Aldrich、99%)を、減圧で蒸留する(p<1mmHg、CaH2上でb.p.66〜68℃)。2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタンを、0℃において乾性ジクロロメタン中の塩化水素ガスを用いた2,4,4-トリメチル-1-ペンタン(Aldrich、99%)のヒドロクロリーネーションにより調製する。Kaszas, G.;Gyor, M.;Kennedy, J. P.;Tudos, F. J. Macromol.Sci., Chem 1983, A18, 1367-1382。生成物を、CaCl2上で乾燥し、かつ使用前に減圧下で蒸留する。5-tert-ブチル-1,3-bis(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンは、Gyor, M. Wang., H. C.;Faust, R. J. J. Macromol.Sci., Pure Appl. Chem 1992, A29, 639に報告される手法に従って合成される。4,4'-ジメチル-1,1-ジフェニルエチレン(ジトリルエチレンまたはDTE)は、文献に従って合成される。Hadjikyriacou, S.;Faust, R., Macromolecules 1996, 29, 5261。無水酢酸を、一晩P2O5上に置き、注ぎ落し(pour off)、かつ再び一晩K2CO3上に置き、その後それを大気圧で蒸留する。137〜138℃の間の沸点を有する画分を回収する。メタノール(工業的グレード)をメトキシドナトリウムから蒸留する。テトラヒドロフラン(THF)をLiAlH4上で1日還流し、かつ使用前に蒸留する、または標準とする場合に用いる。
【0052】
条件
すべての実験を、Mbraun 150Mグローブボックス(Innovative Technology Inc., Newburyport, Masshachusettes)中で乾性窒素雰囲気下で75mLの培養管で行う。反応は、メチルシクロヘキサン(MeChx)/塩化メチル(MeCl)、60/40 v/v、溶媒混合液中で-80℃で行われる。
【0053】
実施例1:様々な[TiCl4]/[Ti(OiPr)4]比を有する4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチレンの重合
2-クロロ-2,4,4-トリメチルペンタン(TMPCI)は、モデル化合物として選択され、これは末端がtert-クロロであるPIBの末端基構造を模倣している。濃度は、以下である:[4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチレン]=0.35M、[TMPCl]=0.002M、[2,6-di-tert-ブチルピリジン, DTBP]=0.006M、[1,1ジトリルエチレン, DTE]=0.004M。試薬を以下の順序で添加する:MeChx、MeCl、TMPCl(0.5mL、MeChx中の0.05Mの保存溶液)、DTBP(0.5mL、MeChx中の0.15Mの保存溶液)、DTE(1.0mL、MeChx/MeCl中の0.05Mの保存溶液、60/40 v/v)およびTiCl4(1.0mL、MeChx/MeCl中の0.454Mの保存溶液=60/40)。反応時間1時間の後、Ti(OiPr)4保存溶液(MeChx/MeCl中の0.125M、60/40 v/v)を添加し、溶液を十分に攪拌させる。約10分後に3.0mLの4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチレン単量体保存溶液(MeChx/MeCl 60/40 v/v中の1.025gの単量体)を、激しく攪拌しながら添加する。反応混合液の全量は12.5mLである。重合を1時間行い、その後それをあらかじめ冷却したメタノールによって終結させ、かつ反応混合液を100mLメタノールへ注ぐ。重合体をTHFからメタノールへあらかじめ沈殿させることによって精製する。表1のように、TiCl4/Ti(OiPr)4比が約1.2より小さい4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチレンの重合が、減少しはじめることを示す。
【0054】
(表1)

【0055】
実施例2:PIB-b-ポリ(4-tert-ブチルジメチルシリルオキシスチレン)ジブロック共重合体の合成
まず、分子量が約30,000であるリビングポリイソブチレン(PIB)を、-80℃でメチルシクロヘキサン(MeChx)/塩化メチル(MeCl) 60/40 v/vの溶媒混合液中で調製する。試薬を以下の順序で適用する:MeChx、MeCl、2-クロロ,2,4,4-トリメチルペンタン(TMPCl)(1.0mL、MeChx中の0.05M)、2,6-di-tert-ブチルピリジン(DTBP)(1.0mL、MeChx中の0.15M)、イソブチレン(IB)(2.1mL)およびTiCl4(2.0mL、MeChx/MeCl中の0.454M、60/40 v/v)。IBを90分間重合する。その後、1,1-ジトリルエチレン(DTE)保存溶液(1.0mL、MeChx/MeCl中の0.1M、60/40 v/v)を添加し、かつ混合液を60分間置く。キャッピング反応後、Ti(OiPr)4溶液を、[TiCl4]/[Ti(OiPr)4]比が1.2に到達するように添加し、十分に攪拌させる。この比において4-tert-ブトキシスチレンの重合がないことが、別に確認される。その後、MeChx/MeCl中の4-tert-ブトキシスチレン保存溶液、60/40, v/v溶媒混合液を、激しく攪拌させながら重合混合液へ注ぎ、続いて様々な量のSnBr4を添加する。重合は、60分後にあらかじめ冷却したメタノールによって終結させ、かつ重合体をメタノールへ沈殿させる。重合体は、THFからメタノールへの繰り返しの沈殿によって精製される。重合体の特徴を表2に示す。GPCにより測定されるMnsを理論的Mns(Mn th)と実質的に同一であり、かつ多分散指数(PDI)は低い。
【0056】
(表2)様々な量のSnBr4を用いたブロック共重合体の特徴

IB重合のための濃度:[TMPCI]=0.002M; [DTBP]=0.004M;[IB]=1M、[TiCl4]=0.036M;[DTE]=0.004 M
溶媒:MeCHx/MeCl(60/40)
時間=90分およびT=-80℃
【0057】
実施例3:ポリ(4-tert-ブチルジメチルシリルオキシスチレン)-b-PIB-b-ポリ(4-tert-ブチルジメチルシリルオキシスチレン)トリブロック共重合体の合成
まず、二官能性のリビングポリイソブチレン(PIB)(Mn th=90,000、Mn GPC=99,000、PDI=1.2)を-80℃で調製する。以下の順序で試薬を適用する:メチルシクロヘキサン(MeChx、154.5mL)、塩化メチル(MeCl、103mL)、5-tert-ブチル-1,3-ジクミルメチルエーテル(1.0mL、MeChx中0.05M)、2,6-di-tert-ブチルピリジン(DTBP)(4.0mL、MeChx中0.51M)、イソブチレン(IB)(37.5mL)およびTiCl4(5.0mL、MeChx/MeCl中2.16M、60/40 v/v)。IBを100分間重合する。その後、1,1-ジトリルエチレン(DTE)保存溶液を添加し(24mL、MeChx/MeCl中0.051M、60/40 v/v)、かつ混合液を60分間置く。キャッピング反応後、Ti(OiPr)4(室温でストレートの3.8mL)は、[TiCl4]/[Ti(OiPr)4]比が1.2に到達するように添加され、かつ60分間十分に攪拌させる。その後、SnBr4(19mL、MeChx/MeCl中0.072M、60/40 v/v)を添加し、次に4-tert-ブトキシスチレン(室温でストレートの27.3mL)を添加し、これを激しく攪拌させながら重合混合液へ注ぐ。重合は、120分後にあらかじめ冷却したメタノールによって反応停止させ、かつ重合体をメタノールへ沈殿させる。重合体は、THFからメタノールへの繰り返しの沈殿によって精製される。GPCにより測定されるトリブロック共重合体のMn GPC=168,000は、理論的Mn th=175,000と実質的に同一であり、かつ多分散指数(PDI=1.2)は低いままである。
【0058】
予想される実施例4:PIB-b-ポリ(4-tert-ブチルジメチルシリルオキシスチレン)ジブロック共重合体およびポリ(4-tert-ブトキシスチレン)-b-PIB-b-ポリ(4-tert-ブトキシスチレン)トリブロック共重合体の加水分解
上記で合成されるようなジブロックまたはトリブロックの共重合体を、50mL THFに溶解し、その後約2mL HCl酸(37.0%)を添加すると考えられる。溶液を、3時間還流し、その後冷却し、かつ1mL アンモニア溶液(30%)を含む400mLの水へ沈殿させると考えられる。得られた重合体を、濾過し分離し、水で洗浄し、かつ減圧乾燥させると考えられる。実質的に完全な加水分解(tert-ブチル基なし)が予想される。
【0059】
予想される実施例5:共重合体のアセチル化
実施例4から1gの共重合体を、15mLの無水THFに溶解すると考えられる。その後、1.42mL(15mモル)の蒸留無水酢酸、1.21mL(15mモル)のピリジンおよび122mg(1mモル)4-ジメチルアミノピリジンを添加すると考えられる。得られた均一溶液を、1日室温に置くと考えられる。重合溶液を水(200mL)へ注ぎ、かつ沈殿重合体を水で十分に洗浄し、濾過しかつ減圧乾燥させると考えられる。実質的に完全なエステル化が予想される。
【0060】
様々な態様を具体的に説明し、本明細書において記載するが、本発明の改変および変化が、上記の教示により含まれ、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを認識されると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、ブロック共重合体を作製する方法:
(a)1つまたは複数のオレフィンブロックを含む炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;
(b)第1の反応条件下で、炭素陽イオンにより終端化した重合体を、第1の反応条件下でホモ重合しないキャッピング種に接触させ、これによって末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を形成する段階;
(c)保護ヒドロキシスチレン単量体種の重合を実質的に妨げるために、第1の反応条件を変更する段階;および
(d)第2の反応条件下で、末端キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を、保護ヒドロキシスチレン単量体種に接触させ、これによってブロック共重合体を提供する段階。
【請求項2】
第1の反応条件が、TiCl4により与えられるルイス酸性度を含み、かつルイス酸性度が、チタンテトラアルコキシド種の添加により段階(c)において低下する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の反応条件がSnBr4により与えられるルイス酸性度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1および第2の反応条件が-50℃と-90℃の間の温度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
炭素陽イオンにより終端化した重合体が、第1の反応条件下で、以下を含む反応混合液から形成される、請求項1記載の方法:
(i)溶媒系、
(ii)1分子あたり4個から18個の炭素原子を含むイソモノオレフィンおよび1分子あたり4個から14個の炭素原子を含むマルチオレフィンから選択される単量体種、
(iii)有機エーテル、有機エステル、有機アルコール、および有機ハロゲン化物から選択される開始剤、ならびに
(iv)ルイス酸。
【請求項6】
保護ヒドロキシスチレン単量体種に対応するブロック共重合体中の構成単位の少なくとも一部を加水分解し、これによってアルコール基を形成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの実質的に一様な力学的特性を有する共重合体を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
実質的に一様な特性が、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性から選択される少なくとも1つの特性である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
以下の段階を含む、ブロック共重合体を作製する方法:
(a)キャッピングされた炭素陽イオンにより終端化した重合体を提供する段階;
(b)キャッピングされた重合体と結合する開始剤を中和する段階;および
(c)第2の開始剤の存在下で、キャッピングされた重合体を単量体に接触させることによりブロック共重合体を形成する段階。
【請求項10】
開始剤がルイス酸性度を変更することによって中和される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ルイス酸性度がチタンテトラアルコキシド種を用いて変更される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
開始剤がTiCl4である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
第2の開始剤がSnBr4である、請求項9記載の方法。
【請求項14】
単量体が保護または非保護のヒドロキシスチレンである、請求項9記載の方法。
【請求項15】
炭素陽イオンにより終端化した重合体がポリイソブチレンである、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記請求項のいずれか一項記載の方法により作製される組成物。
【請求項17】
(a)1つまたは複数のオレフィン単量体種に対応する複数の構成単位、および
(b)1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位
を含み、少なくとも1つの実質的に一様な力学的特性を有する、共重合体。
【請求項18】
実質的に一様な特性が、硬度、反跳、崩壊圧力、縦方向可撓性、圧着側面、抗張力、曲げ強さ、衝撃抵抗、弾性および圧縮性から選択される少なくとも1つの特性である、請求項17記載の共重合体。
【請求項19】
1つまたは複数のオレフィン単量体種が、イソブチレン、2-メチルブテン、イソプレン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよびβ-ピネンから選択される、請求項17記載の共重合体。
【請求項20】
1つまたは複数のオレフィン単量体種がイソブチレンを含む、請求項17記載の共重合体。
【請求項21】
保護ヒドロキシスチレン単量体種が、tert-ブチル保護ヒドロキシスチレン、ベンジル保護ヒドロキシスチレン、シクロヘキシル保護ヒドロキシスチレン、ネオペンチル保護ヒドロキシスチレン、アセチル保護ヒドロキシスチレンおよびtert-ブチルジメチルシリル保護ヒドロキシスチレンから選択される少なくとも1つの単量体種を含む、請求項17記載の共重合体。
【請求項22】
(a)1つまたは複数のオレフィン単量体種に対応する複数の構成単位を含むオレフィンブロック、および
(b)1つもしくは複数の保護または非保護のヒドロキシスチレン単量体種に対応する複数の構成単位を含むスチレンブロック
を含むブロック共重合体であり、実質的に一様な力学的特性を有する、請求項17記載の共重合体。
【請求項23】
1つまたは複数のオレフィン単量体種がイソブチレンを含み、かつ保護ヒドロキシスチレン単量体種が、tert-ブチル保護ヒドロキシスチレン、ベンジル保護ヒドロキシスチレン、シクロヘキシル保護ヒドロキシスチレン、ネオペンチル保護ヒドロキシスチレン、アセチル保護ヒドロキシスチレンおよびtert-ブチルジメチルシリル保護ヒドロキシスチレンから選択される、請求項22記載の共重合体。

【公表番号】特表2009−504852(P2009−504852A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526282(P2008−526282)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/031613
【国際公開番号】WO2007/022072
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507233442)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ロウエル (2)
【Fターム(参考)】