説明

オレフィンのヒドロホルミル化法

【課題】オレフィン又はオレフィン混合物を従来の方法によるより高い収率で反応させて、有用生成物、例えばアルデヒド、アルコール及びそのギ酸エステルを得ることができる方法を提供する。
【解決手段】少なくとも反応器中で非修飾のコバルト錯体が触媒として作用する1工程又は多工程のヒドロホルミル化で、この反応器中に、供給されたオレフィンに対して0.5〜20モル%のアルデヒド(従ってヒドロホルミル化の生成物)を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン又はオレフィン混合物をコバルト触媒の存在下にヒドロホルミル化し、触媒を分離し、かつ場合により引き続き水素化することによりアルデヒド及び/又はアルコールを製造する方法において、少なくとも1つのヒドロホルミル化工程で出発材料にアルデヒドを添加することを特徴とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルデヒド、特に7〜25個の炭素原子を有するアルデヒドは、1炭素原子だけ少ないオレフィンを接触ヒドロホルミル化(工業的に主に、オキソ反応と呼ばれる)させることによって製造できることが知られている。これらのアルデヒドは、例えば合成前駆物質として、カルボン酸の製造のため及び香料として用いられる。これらのアルデヒドは工業的に、しばしば接触水素化によって相応のアルコールに変換され、該アルコールはとりわけ可塑剤及び洗剤の製造用の中間生成物として使用される。
【0003】
オレフィンのヒドロホルミル化法は文献に多数記載されている。ヒドロホルミル化のための触媒系の選択と最適な反応条件の選択は、使用されるオレフィンの反応性に依存する。使用されるオレフィンの構造がヒドロホルミル化でのその反応性に影響することは、例えばJ. FALBE, “New Syntheses with Carbon Monoxide”, Springer Verlag, 1980, Berlin, Heidelberg, New York、95頁以降によって記載されている。
【0004】
一般条件が一定の場合に、炭素数が増え、かつオレフィンの分枝度が高まるとヒドロホルミル化反応の速度が低下することは一般的な規則として認められている。このように、直鎖状オレフィンの反応速度は分枝鎖状異性体の反応速度を10の数累乗を上回ることがある。加えて、オレフィン中の二重結合の位置も反応性に決定的な影響を及ぼす。末端二重結合を有するオレフィンは、分子内部に二重結合を有する異性体よりも明らかに迅速に反応する。異性体オクテンの種々の反応性は、例えばB.L. HAYMORE, A. van HASSELT, R. BECK, Annals of the New York Acad. Sci., 1983, 415, 159-175で調べられた。一般的な概要と更に進んだ文献は、B. CORNILS, W. A. HERRMANN, “Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds”, Vol. 1&2, VCH, Weinheim, New York, 1996が挙げられる。
【0005】
ヒドロホルミル化合成のための出発材料として使用される工業用オレフィン混合物は、しばしば種々の分枝度、種々の二重結合の位置及び一部に種々のモル質量のオレフィンを有する種々の構造のオレフィン異性体を含有する。これは、特に2〜8個のC原子を有するオレフィン又は容易に入手可能な別の高級オレフィンの二量化、三量化又は更に進んでオリゴマー化によって、もしくは前記のオレフィンのコオリゴマー化によって得られるオレフィン混合物について当てはまる。工業的にヒドロホルミル化用に妥当な典型的なオレフィン混合物のための例として、トリプロペン及びテトラプロペン並びにジブテン、トリブテン及びテトラブテンが挙げられる。
【0006】
工業的に実施されるヒドロホルミル化では、高い転化率の他に高い選択率が達成され、最適な原材料の利用が保証されることが望まれる。高い転化率を達成するために、緩慢に反応するオレフィンの場合には、しばしば比較的長い反応時間及び/又はより高い反応温度を受け入れねばならない。それに対して、より反応性の高いオレフィンは同じ反応条件でもはるかに短時間でアルデヒドに変換される。種々の反応性のオレフィンの混合物を一緒にヒドロホルミル化する場合に、ヒドロホルミル化されづらいオレフィンにも十分な転化率が達成されるためには比較的長い反応時間が必要となる。しかしながら、反応されやすいオレフィンから生ずるアルデヒドは比較的迅速に形成され、その際、ヒドロホルミル化されづらいオレフィンは反応器中に存在する。このことは、アルデヒドの不所望な二次反応及び副反応、例えば水素化、縮合反応並びにアセタールとヘミアセタールの形成をもたらす。とりわけオレフィン異性体の種々の反応性のゆえに、ヒドロホルミル化に際して高い転化率と同時に高い選択性を達成することは従って困難である。
【0007】
二次反応、特にヒドロホルミル化で生ずる1種以上のアルデヒドの二次反応を低く抑えるために、工業的方法では、オレフィン転化率とヒドロホルミル化反応器中のアルデヒド濃度は制限される。未反応のオレフィンは、ヒドロホルミル化生成物の分離後に同じヒドロホルミル化反応器か又は1つ以上の他のヒドロホルミル化反応器中で変換される。
【0008】
DE19842371号では、6〜25個のC原子を有するアルコールを、相応のオレフィンの一工程のヒドロホルミル化並びにヒドロホルミル化生成物の水素化によって製造することを記載している。この場合に、ヒドロホルミル化反応器中で直路において、供給された一部のオレフィンのみが変換される。液状の反応器排出物からヒドロホルミル化触媒を除去し、選択的に水素化させる、すなわちアルデヒドは相応のアルコールに水素化されるが、オレフィンは水素化されない。選択的水素化の排出物から、蒸留によってオレフィンを分離し、そしてそれをヒドロホルミル化反応器に返送する。
【0009】
ヒドロホルミル化を少なくとも2つの反応器中で実施し、かつヒドロホルミル化排出物から蒸留によって未反応のオレフィンを分離し、かつそれをヒドロホルミル化反応器に返送して高級オキソアルコールを製造する方法は、DE10034360号、DE19842368号及びEP1057803号に記載されている。
【0010】
DE10034360号では、炭素原子6〜24個を有するオレフィンをコバルト触媒又はロジウム触媒によりアルコール及び/又はアルデヒドへと多工程でヒドロホルミル化する方法が記載されており、その際、オレフィンは、
a)ヒドロホルミル化段階で、転化率20〜98%までヒドロホルミル化され、
b)こうして得られた液状反応排出物から触媒を除去し、
c)こうして得られた液状ヒドロホルミル化混合物を、オレフィンとパラフィンを含有する低沸点留分並びにアルデヒド及び/又はアルコールを含有する底部留分に分け、
低沸点留分中に含まれるオレフィンを、工程段階a、b及びcを含んだ更なる方法工程で反応させ、そして
全ての方法工程の工程段階c)の底部留分を合している。
【0011】
好ましくは前記方法は、ヒドロホルミル化段階a)の液状反応排出物が均一な液相であるように行われる。コバルト触媒又はロジウム触媒は好ましくは、これらがヒドロホルミル化段階a)の液状反応排出物中に均一に溶解されているように使用される。
【0012】
DE19842368号では、炭素原子5〜24個を有する異性体オレフィンの混合物から、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下に高められた温度及び圧力で二工程のヒドロホルミル化によって高級オキソアルコールを製造する方法を記載しており、そこでは、第一のヒドロホルミル化工程の反応混合物を選択的に水素化させ、その水素化混合物を蒸留において粗製アルコールと主にオレフィンからなる低沸点物に分け、前記低沸点物を第二のヒドロホルミル化工程に送り、第二のヒドロホルミル化工程の反応混合物を再び選択的に水素化させ、その水素化混合物を蒸留において粗製アルコールと低沸点物に分け、粗製アルコールを蒸留によって後処理することで純粋なアルコールを得て、そして少なくとも一部の低沸点物を取り出して飽和炭化水素を排出している。
【0013】
EP1057803号では、オレフィン又はオレフィン混合物からアルコールを二工程で製造する方法を開示している。該方法では、第一の反応工程で、出発オレフィンはコバルト触媒の存在下で50〜90%までヒドロホルミル化される。触媒の分離後に、反応排出物から未反応のオレフィンを蒸留により分離し、そして分離されたオレフィンを第二のヒドロホルミル化反応器において反応させる。両方の工程からのヒドロホルミル化生成物を水素添加して相応のアルコールを得ることができる。両方の反応工程では、ヒドロホルミル化反応器の外部で製造されたCo(CO)又はHCo(CO)が触媒として使用される。ヒドロホルミル化の反応混合物から、更なる作業前に塩基による抽出によってコバルト触媒を除去する。
【0014】
6〜24個のC原子を有するオレフィン又はオレフィン混合物のヒドロホルミル化のための公知法では、各ヒドロホルミル化反応器中でオレフィン転化率が制限されるだけでなく、副生成物、例えばアルデヒドの縮合生成物、エーテル又はパラフィンが生ずる。
【特許文献1】DE19842371号
【特許文献2】DE10034360号
【特許文献3】DE19842368号
【特許文献4】EP1057803号
【非特許文献1】J. FALBE, “New Syntheses with Carbon Monoxide”, Springer Verlag, 1980, Berlin, Heidelberg, New York、95頁以降
【非特許文献2】B.L. HAYMORE, A. van HASSELT, R. BECK, Annals of the New York Acad. Sci., 1983, 415, 159-175
【非特許文献3】B. CORNILS, W. A. HERRMANN, “Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds”, Vol. 1&2, VCH, Weinheim, New York, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、オレフィン又はオレフィン混合物を従来の方法によるより高い収率で反応させて、有用生成物、例えばアルデヒド、アルコール及びそのギ酸エステルを得ることができる方法を提供することであった。有用生成物は引き続き水素化されて、アルコールを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ここで驚くべきことに、少なくとも反応器中で非修飾のコバルト錯体が触媒として作用する1工程又は多工程のヒドロホルミル化で、この反応器中に、供給されたオレフィンに対して0.5〜20モル%のアルデヒド(従ってヒドロホルミル化の生成物)を導入した場合に、有用生成物の収率を高めることができることが判明した。
【0017】
この知見が予想できるものではないのは、前記のようにオレフィンの転化率が高まり、そうして反応器中のアルデヒド濃度が高まると有用生成物の形成についての選択性が低下するからである。従って、純粋なオレフィン又は複数のオレフィンの純粋な混合物を使用する場合に、オレフィンの他にアルデヒドも含有する出発生成物の場合より、有用生成物の形成について、より高い選択性が得られることが予想されるはずである。従って、触媒として非修飾のコバルト錯体を使用してヒドロホルミル化した場合に、出発オレフィン中のアルデヒドの存在が、オレフィンに対して0.5〜20モル%の範囲で有用生成物形成の選択性を高めることは一層驚くべきことである。
【0018】
従って、本発明の対象は、6〜24個のC原子を有するオレフィンの接触ヒドロホルミル化のための方法において、ヒドロホルミル化を少なくとも1工程で、従って1工程又は多工程で実施し、その際、非修飾のコバルト錯体触媒の存在下に実施される前記工程の少なくとも1工程において、出発材料として少なくとも1種のオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドを含有する混合物を使用し、その際、アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.005:1〜0.2:1であることを特徴とする方法である。
【0019】
同様に本発明の対象は、6〜24個のC原子を有する少なくとも1種のオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドとを含有し、アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.005:1〜0.2:1である、本発明による方法で使用するのに適した出発混合物である。
【0020】
本発明の範囲では、非修飾の又は修飾されていない錯体とは、一酸化炭素、水素、オレフィン、アルキル基、アルケニル基、アシル基又はアルコキシ基から選択される配位子を有するが、配位子として、元素の周期律表の第5主族の元素(N、P、As、Sb、Bi)を含有する化合物が存在しない金属錯体、特にコバルト又はロジウムの金属錯体を表す。
【0021】
本発明の範囲では、出発混合物とは、反応開始時に反応器中に存在するか又は反応器への導入によって得られる混合物を表す。出発混合物中に含まれる化合物は、この場合に単独で又は既に混合物として反応器中で導入されてよい。
【0022】
本発明は、高級オレフィンのヒドロホルミル化において、収率を容易に高めることができ、そして場合により付加的にエネルギーを削減することができるという利点を有する。その利点は、新たに設置されるべき装置でも、既に工場に存在する装置でも得られる。例えば、未反応のオレフィンが蒸留により分離され、そしてそれが後続の反応器に供給される少なくとも2つの直列に連結された反応器中でヒドロホルミル化され、かつ第二の又は後続の反応器が、前記反応器中でヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液から製造される非修飾のコバルト錯体を触媒として含有する現存するヒドロホルミル化装置において、単にオレフィン分離塔中の蒸留条件を変更するだけでアルデヒドもしくはアルコールの収率の向上を達成できる。還流比を低下させることによって、蒸留物中で所望のオレフィン/アルデヒド比を調整することができる。同時に底部生成物のオレフィン含量が減少する。還流比の低下によって、更にエネルギーを削減できる。現存の方法を本発明による方法に変更するために更なる資本支出は必要ない。
【0023】
本発明による方法を以下に例示するが、本発明はこれらの実施態様の例に制限されるものではない。以下に、範囲、一般式又は化合物種を示すときに、これらは詳細に挙げられている化合物の相応の範囲又は群のみが明示されるだけではなく、幾つかの値(範囲)又は化合物を省いて得られる化合物の全ての部分範囲及び部分群も明示していることが望ましい。
【0024】
6〜24個のC原子を有するオレフィンの接触ヒドロホルミル化のための本発明による方法は、ヒドロホルミル化を1工程又は複数工程で実施し、その際、非修飾のコバルト錯体触媒の存在下に実施される前記工程の少なくとも1工程で、少なくとも1種のオレフィン、特に6〜24個のC原子を有するオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドとを含有し、アルデヒド(もしくは全てのの存在するアルデヒドのモル合計)とオレフィン(もしくは全てのオレフィンのモル合計)とのモル比が0.005:1〜0.2〜1、有利には0.01:1〜0.1:1、特に有利には0.05:1〜0.07:1である混合物を出発材料として使用するという点で優れている。特に有利には、出発混合物はアルデヒドとオレフィンとを有し、その際、オレフィンは平均してアルデヒドより1つだけ少ない炭素原子を有する。ジ−n−ブテンがヒドロホルミル化されている場合に、アルデヒドとオレフィンとのモル比は、有利には0.01:1〜0.07:1である。非修飾のコバルト触媒の存在下に実施され、かつ少なくとも1種のオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドを含有し、その際、アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.005:1〜0.2:1である混合物が出発材料として使用されるヒドロホルミル化工程を以下にOAヒドロホルミル化工程とも呼ぶ。
【0025】
出発混合物の製造用のアルデヒドとして、7〜25個のC原子を有するどのアルデヒドも使用できる。有利には、該出発混合物の製造のために、使用されるオレフィンより平均して1つだけ炭素原子が多いアルデヒドが使用される。特に有利には、出発混合物の製造のために、ヒドロホルミル化の生成物として、特に本発明による方法のヒドロホルミル化工程の生成物として得られるアルデヒドが使用される。それぞれのヒドロホルミル化工程で使用されるアルデヒドは別のヒドロホルミル化工程に由来するものでも、同じヒドロホルミル化工程に由来するものでもよい。
【0026】
アルデヒドとオレフィンとを含有する出発混合物の製造のために、例えばアルデヒドとオレフィンとを含有する、ヒドロホルミル化混合物から蒸留によって分離された蒸留物を使用してよい。しかしながらまた、アルデヒドとオレフィンとからなる出発混合物の製造のために、直接的にヒドロホルミル化混合物を使用してもよく、又はまず触媒が除去されたヒドロホルミル化混合物を使用してもよい。同様に、ヒドロホルミル化混合物から分離されたアルデヒドとオレフィンとを含有する蒸留物、及びヒドロホルミル化混合物又はまず触媒が除去されたヒドロホルミル化混合物(脱触媒されたヒドロホルミル化混合物)を、アルデヒドとオレフィンとからなる出発混合物の製造のために使用することも可能である。他方で、ヒドロホルミル化混合物又はその一部は、本方法中で行われるヒドロホルミル化工程のどれに由来するものであってよく、その際、ロジウム触媒を用いて行われる1工程に由来するヒドロホルミル化混合物の場合に、少なくとも触媒は、まず該ヒドロホルミル化混合物から分離してから、随意の更なる分離後に、OAヒドロホルミル化工程の出発混合物の製造のために使用される。
【0027】
上述の比率のオレフィンとアルデヒドを有する出発混合物の製造のために、例えば以下の手法が存在する:
1. 脱触媒されたオレフィンを含有するヒドロホルミル化混合物の蒸留による後処理を、蒸留条件の選択によって、低沸点留分がオレフィンの他にアルデヒドをも含有するように調整することができる。蒸留条件、特に還流比の選択肢によって、直接的に所望のアルデヒド/オレフィン比に調整できる。この流出物又はその部分量を、オレフィン及び/又はアルデヒドの混入なしに、OAヒドロホルミル化工程で出発材料として使用できる。
【0028】
2. 1のようにして得られた混合物と、新たなオレフィン及び/又はヒドロホルミル化工程から得られるオレフィンを含有する(低沸点)留分とを好適な比率で混合することによって、前記の比率でオレフィンとアルデヒドとを含有する混合物を得る。
【0029】
3. 非修飾のコバルト錯体又はその前駆物質を含有するヒドロホルミル化混合物と、新たなオレフィン及び/又はヒドロホルミル化工程から得られるオレフィンを含有するオレフィンを含有する(低沸点)留分とを好適な比率で混合することによって、前記の比率のオレフィンとアルデヒドとを含有する混合物を得る。
【0030】
ヒドロホルミル化工程とは、本発明の範囲では、個別のヒドロホルミル化反応器又は並列に連結されたヒドロホルミル化反応器又は、出発材料が一連の第一の反応器のみに供給される直列に連結されたヒドロホルミル化反応器を表す。該方法は、1つだけのヒドロホルミル化工程においてか、又は2つ以上のヒドロホルミル化工程において実施できる。該方法を複数の工程で実施するのであれば、未反応のオレフィンを含有するヒドロホルミル化生成物のそれぞれ少なくとも一部は、場合により触媒の分離後に及び/又はアルデヒドの部分的又は完全な分離後に後続のヒドロホルミル化工程に供給される。
【0031】
非修飾のコバルト錯体触媒の存在下に実施され、かつ少なくともオレフィンとアルデヒドを含有する出発混合物が使用されるヒドロホルミル化工程の他に、非修飾もしくは修飾されたコバルト触媒又は修飾されたもしくは非修飾のロジウム錯体が触媒として使用される少なくとも1つの更なるヒドロホルミル化工程が存在することが有利なことがある。ロジウム触媒を有する付加的なヒドロホルミル化工程の使用は、末端ヒドロホルミル化された生成物の割合がどれだけ高いかとは無関係に、特にヒドロホルミル化法の収率が大変重要である場合に好ましいことがある。例えばジ−n−ブテンとして知られるn−ブテンの二量化混合物をオレフィンとして使用する場合に、第一工程で非修飾のコバルト触媒が使用され、そして1つ又は複数の後続工程で非修飾のロジウム触媒を使用するのであれば、収率が改善され、一方で末端ヒドロホルミル化された生成物の割合がいくらか下がる。
【0032】
しかしながらまた、本発明による方法に存在する全てのヒドロホルミル化工程で、コバルト錯体、特に非修飾のコバルト錯体を触媒として使用する場合に好ましいことがある。1つより多いヒドロホルミル化工程が存在する本発明による方法で専らコバルト触媒を使用することは、特に、生成物ができる限り高い末端ヒドロホルミル化されたオレフィンの割合を有することが望ましい場合に好ましいことがある。こうして、例えばジ−n−ブテンとして知られるn−ブテンの二量化生成物の混合物をオレフィンとして使用する場合に、二工程法で両方の工程において非修飾のコバルト触媒を使用する場合に、非常に高い割合の末端ヒドロホルミル化された生成物が満足いく収率で達成される。
【0033】
本発明による方法において、全てにコバルト触媒が使用されるヒドロホルミル化工程又は幾つかにコバルト触媒が使用されるヒドロホルミル化工程が存在するのであれば、特に、触媒としてコバルト錯体が幾つかに、有利には全てに使用されるヒドロホルミル化工程で、出発材料として、少なくとも1種のオレフィンとアルデヒドとを含有する混合物を使用する場合に好ましいことがある。
【0034】
ヒドロホルミル化工程で使用される非修飾のコバルト錯体は、ヒドロホルミル化と同時に、コバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によってヒドロホルミル化工程において製造できるか、又は事前に完成された触媒であってよい。ヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によってヒドロホルミル化段階で製造される非修飾のコバルト触媒を使用することが好ましい。特にヒドロホルミル化を一工程で実施する場合に、有利にはヒドロホルミル化の間に同じ反応器中でコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造される非修飾のコバルト錯体を触媒として使用することが好ましい。複数のヒドロホルミル化工程が存在する方法では、コバルト触媒及びロジウム触媒は、錯体安定化添加剤もしくは配位子、例えば有機ホスフィン又はホスファイトを添加するか又は非添加で使用できるが、但し、少なくとも1つのヒドロホルミル化工程はOAヒドロホルミル化工程として実施される。更に、触媒及び反応条件(触媒濃度、温度、圧力、滞留時間)の選択は、とりわけ炭素原子数と出発オレフィンの組成に依存する。
【0035】
本発明による方法では、出発材料として6〜24個の炭素原子、有利には6〜20個の炭素原子、特に有利には8〜20個の炭素原子を有するオレフィン又はオレフィンの混合物を使用できる。該混合物は末端C−C二重結合及び/又は内部C−C二重結合を有するオレフィンを有してよい。混合物は、炭素原子数(C数)が同一、類似(±2)又は明らかに異なる(>±2)オレフィンを有するか、又はこれらからなってよい。純粋形でも、異性体混合物でも、又は別のC数の更なるオレフィンとの混合物でも出発材料として使用できるオレフィンとして、例えば1−ヘキセン、2−ヘキセンもしくは3−ヘキセン、1−ヘプテン、内部二重結合を有する直鎖状ヘプテン(2−ヘプテン、3−ヘプテンなど)、直鎖状ヘプテンの混合物、2−メチル−1−ヘキセンもしくは3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、内部二重結合を有する直鎖状オクテン、直鎖状オクテンの混合物、2−メチルヘプテンもしくは3−メチルヘプテン、1−ノネン、内部二重結合を有する直鎖状ノネン、直鎖状ノネンの混合物、2−メチルオクテン、3−メチルオクテンもしくは4−メチルオクテン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセンもしくは5−デセン、2−エチル−1−オクテン、1−ドデセン、内部二重結合を有する直鎖状ドデセン、直鎖状ドデセンの混合物、1−テトラデセン、内部二重結合を有する直鎖状テトラデセン、直鎖状テトラデセンの混合物、1−ヘキセデセン、内部二重結合を有する直鎖状ヘキセデセン、直鎖状ヘキセデセンの混合物が挙げられる。好適なオレフィンは、更にとりわけ、プロペンの二量化において生ずる異性体ヘキセン(ジプロペン)の混合物、ブテネンの二量化において生ずる異性体オクテン(ジブテン)の混合物、プロペンの三量化において生ずる異性体ノネン(トリプロペン)の混合物、プロペンの四量化又はブテネンの三量化において生ずる異性体ドデセン(テトラプロペンもしくはトリブテン)の混合物、ブテネンの四量化において生ずるヘキサデセン混合物(テトラブテン)並びに種々のC数(有利には2〜4)を有するオレフィンのコオリゴマー化によって、場合により同一又は類似(±2)のC数を有する留分に蒸留分離した後に製造されるオレフィン混合物である。更に、フィッシャー・トロプシュ合成によって製造されたオレフィン又はオレフィン混合物を使用してよい。更にオレフィンメタセシス又は別の工業法によって製造されたオレフィンを使用してよい。有利な出発材料は、異性体オクテン、異性体ノネン、異性体ドデセン又は異性体ヘキサドデセン、すなわち低級オレフィンのオリゴマー、例えばn−ブテネン、イソブテン又はプロペンの混合物である。同様に非常に適した別の出発材料はCオレフィンからなるオリゴマーである。
【0036】
ブテネンをオリゴマー化して、主にCオレフィンを含有する混合物を得るために、原則的に、3種の変法が存在する。酸性触媒でのオリゴマー化は長い間知られており、その際、工業的には、例えばゼオライト又は担体上のリン酸が使用される。この場合に、分枝鎖状オレフィン、主にジメチルヘキセンの異性体混合物が得られる(WO92/13818号)。同様に世界的に実施される方法は、DIMERSOL法として知られる可溶性Ni錯体によるオリゴマー化である(B. CORNILS, W. A. HERRMANN, “Applied Homogeneous Catalysis with Organicmetallic Compounds”;Vol. 1&2, VCH, Weinheim, New York 1996)。第三の変法は、ニッケル固定床触媒でのオリゴマー化である;この方法は文献においてOCTOL法(Hydrocarbon Process., Int. Ed. (1986) 65 (2. Sect.1) Seiten 31 - 33)として理解され、例えばEP0395857号に記載されている。特に可塑剤の製造に適したCアルコール混合物の本発明による製造のために、有利には直鎖状ブテネンからOCTOL法により得られたCオレフィン混合物が使用される。
【0037】
ヒドロホルミル化工程では、有利には一酸化炭素と水素とのモル比が、好ましくは1:4〜4:1、特に好ましくは1:2〜2:1、殊に好ましくは1:1.2〜1.2:1である合成ガスが使用される。特に、ほぼ化学量論比の一酸化炭素と水素が存在する合成ガスが使用される。
【0038】
本発明による方法のヒドロホルミル化工程における温度と圧力は、触媒とオレフィン混合物に応じて、広い範囲で変動しうる。本方法を複数工程で実施する場合に、第一工程で有利には反応性の高いオレフィンが反応するので、後続のヒドロホルミル化工程では、有利には温度、触媒量及び滞留時間の点でより精力的な反応条件に調整される。
【0039】
最適な条件は、目標設定に応じてそれぞれ変動しうる:このように、例えば達成される空時収量、選択性の向上又は所望の生成物特性の全てが最適基準であってよい。一般に、出発オレフィンの組成及び触媒系の選択及び/又は反応条件の選択は、本発明による方法の可能な実施態様が経済的に最適となる決定要因となる。その最適化を当業者は容易にシミュレーション計算によって決定できる。
【0040】
有利には、本発明による方法は、複数のヒドロホルミル化工程が存在する場合に、個々のヒドロホルミル化工程で20〜98%、特に40〜80%、特に有利には50〜75%の転化率(それぞれ直路において)が得られるように実施される。
【0041】
ロジウム触媒及びコバルト触媒によるヒドロホルミル化法は、主に作業パラメータの点で異なる。しかしながら主要な差異は、基本的に異なる触媒分離と触媒返送にある。以下に両方の方法を別々に説明する。
【0042】
コバルト触媒によるヒドロホルミル化
本発明による方法では、少なくとも1つのヒドロホルミル化工程で非修飾のコバルト錯体を触媒として使用する。別の工程で、有利には非修飾及び/又は修飾されたコバルト錯体又はロジウム錯体を触媒として使用してよい。非修飾のコバルト触媒は、ヒドロホルミル化反応器の外部で製造できるか、又は有利にはヒドロホルミル化反応器の内部でオレフィンのヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造することもできる。
【0043】
非修飾のコバルト触媒(HCo(CO)及び/又はCo(CO))をヒドロホルミル化反応器中でヒドロホルミル化の間に製造する方法は、例えばDE19654340号に記載されている。有利には本発明による方法において、ヒドロホルミル化工程として使用される方法によれば、出発材料、従ってコバルト溶液、有機出発材料混合物及び合成ガスを同時に、有利には混合ノズルを用いて向流で下方から反応器中に導入する。
【0044】
触媒もしくはコバルト塩溶液の製造のためのコバルト化合物としては、有利にはコバルト塩、例えばギ酸塩、酢酸塩又は水溶性のカルボン酸の塩を使用できる。特に有利には酢酸コバルトが使用される。コバルト塩は、有利には金属として計算してコバルト含量0.5〜3質量%、有利には0.8〜1.8質量%を有する水溶液として使用できる。使用されるコバルト溶液は、新たに加えられた溶液であり、かつ/又はしかしながら触媒分離でヒドロホルミル化工程のヒドロホルミル化排出物から得られるコバルト塩溶液であってよい。
【0045】
ヒドロホルミル化反応器に望まれる水量はコバルト塩溶液と一緒に導入してよく、その濃度は広範に変動してよい。しかしながら、コバルト塩溶液の他に付加的な水を供給することも可能である。
【0046】
コバルト触媒による方法では出発物質をヒドロホルミル化反応器に計量供給することが特に重要であることが有利であると見なされる。ヒドロホルミル化反応器中に出発材料を供給するために、該反応器は、良好な相混合とできる限り高い相交換面積の生成を保証する計量供給装置を有することが望ましい。かかる計量供給装置は、例えば混合ノズルであってよい。更に、ヒドロホルミル化反応器の反応器空間は、反応物流と生成物流の流動方向に対して垂直に配置された1〜10個、有利には2〜4個の多孔板を取り付けることによって区分することが好ましいことがある。反応器をカスケードにすることによって、簡単な気泡塔に対して逆混合が回避され、そして流動挙動は管形反応器のそれにほぼ一致する。このプロセス技術的措置により、ヒドロホルミル化の収率も選択性をも改善することができることとなる。
【0047】
コバルト触媒によるヒドロホルミル化の実施のためのより厳密な記述も、ヒドロホルミル化工程におけるヒドロホルミル化の特定の実施態様も、例えばDE19939491号A1及びDE10135906号から引き出すことができる。こうして、DE19939491号によれば、反応器の下方部から液状の混合相(コバルト塩水溶液/有機相)の部分流を取り出し、そしてより高い反応器位置で供給している。DE10135906号によれば、ヒドロホルミル化反応器中で水相の状態は一定に保たれ、その際、水性底部相中のコバルト化合物の濃度(金属コバルトとして計算した)は0.4〜1.7質量%の範囲である。
【0048】
本発明による方法のもう一つの実施態様において、完成した触媒は、出発オレフィン中に溶解されたCo(CO)を含有する触媒溶液の形で、又はより高い温度で液状形でヒドロホルミル化反応器に供給される。反応器中に投入されたこの触媒溶液に対して、オレフィン、触媒、合成ガス及び随意に水とアルデヒドを反応器に供給する。この場合に水は既に、反応器以前にオレフィン中に、例えばスタティックミキサーを使用して分散されていてもよい。しかしながら、全ての成分をまず反応器中で混合することも可能である。
【0049】
コバルト触媒によるヒドロホルミル化は、有利には温度100〜250℃、好ましくは140〜210℃で、かつ/又は圧力10〜40MPa、好ましくは20〜30MPaで実施される。使用される合成ガス中の一酸化炭素と水素との容量比は、有利には2:1〜1:2、好ましくは1.5:1〜1:1.5、特に好ましくは1:1〜1:1.5である。合成ガスは、有利には過剰に、例えばオレフィンに対して化学量論量の3倍まで使用される。液状のヒドロホルミル化排出物において、コバルト化合物の濃度(金属のコバルトとして計算した)は、通常は0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.08質量%(有機相と水相との合計に対して)である。
【0050】
水を添加する様々な可能性によって、ヒドロホルミル化反応器の供給物中の含水量は規定が困難である。従って、以下に反応器の排出物中の含水量に関して説明するが、その際、反応器排出物中の含水量は実質的に反応の間の液相の含水量と同義である。コバルト触媒によるヒドロホルミル化工程の液状のヒドロホルミル化排出物中の水濃度は、0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%であってよい。複数のコバルト触媒によるヒドロホルミル化工程が存在するのであれば、個々の工程のヒドロホルミル化排出物の含水量は同一又は異なってもよい。水が液状ヒドロホルミル化排出物中に均質に溶解されるほど含水量が高いことが好ましい。
【0051】
複数のヒドロホルミル化工程を伴う方法では、コバルト化合物が触媒として使用される反応器中で同一又は異なる条件を設定してよい。複数のヒドロホルミル化工程で本発明による方法を実施する場合には、反応性が高いオレフィンが反応される第一のヒドロホルミル化工程で温度140〜195℃、有利には160〜185℃に設定することが特に好ましい。前記の方法工程では、有利にはオレフィン転化率20〜95%、好ましくは50〜80%を指針とする。反応性の低いオレフィンがヒドロホルミル化される1つ又は複数の後続のヒドロホルミル化工程では、ヒドロホルミル化は有利には、第一のヒドロホルミル化工程での温度より高い温度で実施される。同様に、反応性の低いオレフィンを別の触媒、特に修飾されたコバルト又は修飾された又は非修飾のロジウム触媒を使用して実施することも可能である。
【0052】
脱コバルト
非修飾の触媒錯体を触媒として用いて実施するヒドロホルミル化工程のヒドロホルミル化排出物を、ヒドロホルミル化反応器を出た後に、圧力1.0〜3.0MPaにまで減圧させ、そして液相と気相とを分離する。液相を引き続き本来の脱コバルト段階に供給する。脱コバルト段階で、ヒドロホルミル化排出物の液相をコバルト(II)塩の酸性水溶液(“プロセス水”)の存在下に、酸素含有ガス、特に空気又は酸素と、温度90〜160℃で反応させ、こうして酸化的にコバルト−カルボニル錯体を除去する。ヒドロホルミル化に活性なコバルトカルボニル錯体は分解され、こうしてコバルト(II)塩が形成される。脱コバルト法はよく知られており、文献において、例えばJ. FALBE著“New Syntheses with Carbon Monoxide”, Springer Verlag (1980), Berlin, Heidelberg, New York, Seite 158 ffに詳細に記載されている。プロセス水として使用される溶液は、有利には1.5〜4.5のpH値を有する。使用されるプロセス水のコバルト含量は、有利にはヒドロホルミル化段階で使用される触媒混合物もしくは触媒前駆物質混合物のコバルト含量にほぼ相当し(±20%未満、有利には±10%未満、好ましくは±5%未満の差)、そして特に有利には0.8〜2.0質量%のコバルト含量を有する。
【0053】
脱コバルトは、充填体、例えばラシヒリングで充填された、できる限り高い相交換面積を生ずる圧力容器中で実施してよい。脱コバルトによって得られた生成物混合物は、例えば後接続された分離容器中で、水相と実質的にコバルト不含の有機相とに分離される。逆抽出され有機相から回収された酢酸コバルト/ギ酸コバルトの形のコバルトを含有する水相“プロセス水”を、全て又は低い割合の排出後にヒドロホルミル化工程に、有利にはそれぞれのヒドロホルミル化工程に返送し、かつ好ましくはコバルト触媒錯体のその場での製造のための出発物質として使用する。
【0054】
場合により、プロセス水をヒドロホルミル化反応器に返送する前に一部の過剰なギ酸を除去してよい。これは、例えば蒸留によって行ってよい。別の可能性としては、一部のギ酸を、例えばDE10009207号に記載のように触媒的に分解することもある。
【0055】
更に、脱コバルトの際に生ずるコバルト塩溶液から、予備カルボニル化によって本来のヒドロホルミル化触媒(Co(CO)及び/又はHCo(CO))を製造し、これをヒドロホルミル化工程に返送することも可能である。
【0056】
有機相は、とりわけ未反応のオレフィン、アルデヒド、アルコール、ギ酸エステル及び高沸点物並びに微量のコバルト化合物を含有する。1つ又は複数のヒドロホルミル化工程の液状のヒドロホルミル化混合物から、触媒の除去後に得ることができる有機相は、有利には低沸点物、好ましくは未反応のオレフィンと有用生成物(アルデヒド、アルコール、ギ酸エステル)とを分離する後処理に供給される。この後処理を以下に説明する。
【0057】
後処理
オレフィンをヒドロホルミル化排出物から分離することは、有利には触媒及び/又は場合により存在する触媒相の分離後に行われ、かつ例えば蒸留又は水蒸気蒸留によって実施できる。蒸留は、有利には、未反応のオレフィン、オレフィンの水素化により生ずるパラフィン及び溶解された水を含有する頂部留分(低沸点留分)が得られるように実施される。分離されたオレフィンもしくは頂部留分の少なくとも一部を1つ又は複数のヒドロホルミル化工程に返送することが好ましいことがある。この留分をアルデヒド含有の留分として出発混合物の製造のために又は直接的に出発混合物として使用することが望ましい場合に、底部生成物中に所望の割合のアルデヒドが生じるように相応して蒸留条件を選択せねばならない。この留分は、単独で又はオレフィンを含有する混合物と混合した後に、OAヒドロホルミル化工程に導入でき、その際、この工程は、例えば先行する工程、同じ工程又は後続のヒドロホルミル化工程であってよい。後続のヒドロホルミル化工程は、特に最後のヒドロホルミル化工程であってよい。
【0058】
簡単な蒸留塔における後処理の他に、1つ又は複数の側口を有する蒸留塔で後処理を実施することも可能である。1つ又は複数の側口から、アルデヒドとオレフィンを含有する留分を取り出すことができる。この後処理の実施態様では、頂部生成物として、アルデヒド不含又は少なくともほぼアルデヒド不含の留分を得ることができる。1つ又は複数の側口を有する蒸留塔での後処理の実施によって従って2種の異なるオレフィン含有の留分を得ることができ、それにより、特に複数のヒドロホルミル化工程が存在する場合には、オレフィン含有の留分の使用の汎用性が高まる。こうして、頂部留分は、例えば全体を又は部分的に、ロジウム触媒が使用されるヒドロホルミル化工程に供給でき、一方で側口からの留分はOAヒドロホルミル化工程のための出発混合物の製造のために又は直接的に出発混合物として使用することができる。また頂部留分を全体として又は部分的に出発混合物の製造のために使用できることは自明である。
【0059】
ロジウム触媒によるヒドロホルミル化
本発明による方法が、修飾された及び/又は非修飾のロジウム触媒を使用するヒドロホルミル化工程を有するのであれば、このヒドロホルミル化法は従来技術に従って、例えばEP0213639号、EP0214622号、WO2004/020380号又はWO2004/024661号に記載されるように実施することができる。ロジウム触媒が使用される複数のヒドロホルミル化工程が存在する場合に、使用されるロジウム触媒は同一又は異なっていてよい。触媒及び場合により存在する触媒相の分離後に、コバルト触媒の存在下に実施されるヒドロホルミル化工程について前述したヒドロホルミル化混合物の更なる後処理を実施してよい。
【0060】
水素化
本来の目標化合物がアルデヒドではなく、相応のアルコールである場合に、アルデヒドを水素化してアルコールを得ることができる。水素化の目的のために、有利には触媒及び場合により存在する水相が分離されたヒドロホルミル化工程からの排出物を水素化工程に供給してよい。供給前に、場合により排出物中になおも存在するオレフィンを同様に分離することも好ましいことがある。これは、例えば蒸留によって行ってよい。分離を省略することが望ましいのであれば、場合により存在するオレフィンを水素化において水素化してパラフィンを得るか、又は水素化を、場合により存在するオレフィンが水素化工程で全く水素化されないか、もしくは僅かな割合(<10%)までしか水素化されないほど選択的に実施せねばならない。
【0061】
本発明による方法で複数のヒドロホルミル化工程が存在するのであれば、各工程が、1つだけの工程が又は幾つかの工程のみがオレフィンの分離及び/又は水素化工程を有してよい。特に、1つだけの分離又は1つだけの水素化が存在する場合に有利なことがある。この場合には、集まった水素化排出物を、分離及び/又は水素化工程に供給する。水素化の実施の更なる方法は、複数のヒドロホルミル化工程で、全ての工程ないし最終工程においてオレフィンの分離を実施し、アルデヒド留分を水素化し、そして最終工程で、触媒及び場合により存在する水相が分離されたヒドロホルミル化排出物を直接的に水素化することにある。アルデヒド留分は、一緒に1水素化工程で水素化するか、又は種々の水素化工程で水素化することもできる。特に有利には、最後のヒドロホルミル化工程のヒドロホルミル化混合物の少なくとも一部を、有利には触媒及び場合により存在する水相の分離後に水素化する。
【0062】
水素化の前に少量の触媒残分もしくはその最終生成物を更なる段階で分離することが好ましいこともある。コバルト化合物の残分を水による抽出によって分離する方法は、例えばDE10227995号に記載されている。
【0063】
水素化のために、例えばニッケル触媒、銅触媒、銅/ニッケル触媒、銅/クロム触媒、銅/クロム/ニッケル触媒、亜鉛/クロム触媒、ニッケル/モリブデン触媒を使用できる。これらの触媒は担体不含であるか、又は水素化に活性な物質もしくはそれらの前駆体が担体、例えば二酸化ケイ素又は酸化アルミニウム上に施与されていてよい。
【0064】
ヒドロホルミル化混合物を水素化する有利な触媒は、担体材料、有利には酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素上に、それぞれ、0.3〜15質量%の銅及びニッケルを含有し、かつ賦活剤として0.05〜3.5質量%のクロム、有利には0.01〜1.6質量%、好ましくは0.02〜1.2質量%のアルカリ成分を含有する。量の指示は、まだ還元されていない触媒に対するものである。アルカリ成分は随意である。この触媒は、特にアルデヒドの選択的水素化のための触媒として適している。選択的水素化のための更なる詳細は、DE19842370号から引き出すことができる。
【0065】
触媒は、有利には、低い流動抵抗をもたらす形状、例えば細粒、ペレット又は成形体、例えばタブレット、円筒体、棒状押出物又は環状体の形状で使用される。これらを、その使用前に、例えば水素流中での加熱によって活性化させることが適切である。
【0066】
水素化は、有利には液相水素化として実施される。有利には、水素化は全圧0.5〜50MPa、特に有利には圧力1.5〜10MPaで行われる。気相中での水素化は、より低い圧力でも実施できるが、相応して大きな気体容量を伴う。複数の水素化反応器を使用するのであれば、個々の反応器におけるそれらの全圧は前記の圧力範囲内で同一又は異なってよい。
【0067】
反応温度は、液相又は気相での水素化において、有利には120〜220℃、有利には140〜180℃である。水素化工程で使用できるかかる水素化のための例は、例えば特許出願DE19842369号及びDE19842370号に記載されている。場合により、水素化は水を添加しながら実施できる。水の存在下でのヒドロホルミル化混合物の水素化のための液相法は、例えばDE10241266号に明示されている。
【0068】
1つ又は複数の水素化工程からの排出物を1つ又は複数の蒸留において後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
【0069】
本発明による方法は、断続的に、又は有利には連続的に実施できる。
【0070】
以下に、本発明による方法の幾つかの変法、とりわけ多工程のヒドロホルミル化のための幾つかの変法を二工程法として例示して説明する。しかしながら、ここに説明される方法様式は、二工程より多工程のヒドロホルミル化工程を有する方法についても合理的であると見なされることが強調される。以下に例として挙げられる本発明による方法の実施態様は、更に本発明による方法をこの実施態様に限定することを意味するものではない。
【0071】
実施態様1
本発明による方法の実施態様1の一変法をブロック図として図1に示す。この変法では、ヒドロホルミル化段階を1ヒドロホルミル化工程で1反応器において実施される。触媒は非修飾のコバルト錯体であり、これはヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造される。ヒドロホルミル化反応器1に、出発オレフィン(混合物)3、再循環オレフィン(Rueckolefin)11、合成ガス(一酸化炭素及び水素)2及びコバルト化合物の水溶液4を供給する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を1.5〜3.0MPaに減圧し、そして水と空気で実施される脱コバルト7の後に触媒分離8においてコバルト溶液4を分離する。触媒分離8前に、過剰の合成ガス6を取り出す。コバルト塩を含有する水相4を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、ヒドロホルミル化反応器1に返送する。触媒とは、ここでは触媒の前駆物質、例えばコバルト(II)塩溶液を指す。触媒が除去された有機相9を分離工程10において、オレフィンとアルデヒドを含有する低沸点留分11、実質的にアルデヒド不含の留分12、そして粗製アルデヒド13に分け、留分12は排出されて、パラフィンとそれ以外の低沸点副生成物が分離される。粗製アルデヒド13は、水素化装置14中で水素27により水素化されて、相応のアルコール15が得られ、これは示されていないが蒸留装置中で後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
【0072】
実施態様2
この本発明による方法の実施態様でも、ヒドロホルミル化は、再び1つだけのヒドロホルミル化工程において1つの反応器中で行われる。触媒は、再びヒドロホルミル化反応器において、ヒドロホルミル化と同時に合成ガスとコバルト塩水溶液との反応によって製造される。実施態様2と実施態様1とは、所望のアルデヒド量が全体的に又は部分的に、液状のヒドロホルミル化排出物の一部の返送によって導入されるという点で異なる。
【0073】
本発明による方法の実施態様2の一変法をブロック図として図2に示す。ヒドロホルミル化反応器1に、出発オレフィン(混合物)3、場合により再循環オレフィン11、合成ガス(一酸化炭素及び水素)2、コバルト化合物の水溶液4及びヒドロホルミル化排出物5aを、触媒と一緒に又は触媒不含で供給する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を1.5〜3.0MPaに減圧し、そして水と空気で実施される脱コバルト7の後に第一の触媒分離8においてコバルト化合物4を分離する。触媒分離8前に、過剰の合成ガス6を取り出す。コバルト塩を含有する水相4を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第一のヒドロホルミル化反応器1に返送する。触媒とは、ここでは触媒の前駆物質、例えばコバルト(II)塩溶液を指す。触媒が除去された有機相9を分離工程10において、オレフィンと随意にアルデヒドを含有する炭化水素留分11、実質的にアルデヒド不含の留分12、そして粗製アルデヒド13に分け、留分12は排出されて、パラフィンとそれ以外の低沸点副生成物が分離される。蒸留物と一緒にアルデヒドを反応器に返送しないのであれば、場合により流れ11と12を1つの流れとして取り出し、そこから排出流を分離する。粗製アルデヒド13を水素化装置14において水素27を用いて水素化して、相応のアルコールを得ることができる。示されていないが蒸留装置中で後処理して純粋なアルコールを得ることができる。
【0074】
実施態様3
例としての実施態様3では、それぞれ1つのヒドロホルミル化反応器を有する2つのヒドロホルミル化工程で方法が実施され、その際、少なくとも第二のヒドロホルミル化反応器中で、ヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造できる非修飾のコバルト錯体が触媒として使用される。
【0075】
本発明による方法の実施態様3の一変法をブロック図として図3に示す。第一のヒドロホルミル化反応器1に、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水素)並びに触媒溶液4を供給する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を減圧し、そして水と空気で実施される脱コバルト7の後に第一の触媒分離8においてコバルト化合物4を分離する。触媒分離8前に、過剰の合成ガス6を取り出す。触媒を含有する相4を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第一のヒドロホルミル化反応器1に返送する。触媒とは、ここでは触媒の前駆物質、例えばコバルト(II)塩溶液を指す。触媒が除去された有機相9を分離工程10において、主に所望の比の未反応のオレフィンとアルデヒドとからなる低沸点留分11と、粗製アルデヒド13とに分ける。低沸点物11、合成ガス15及びコバルト化合物の水溶液20を、第二のヒドロホルミル化反応器16に導入する。第二のヒドロホルミル化反応器16からのヒドロホルミル化混合物17を1.5〜3MPaに減圧し、そして水と空気とによって実施される脱コバルト18の後に第二の触媒分離19において触媒20を除去する。触媒分離19前に、過剰の合成ガス21を取り出す。分離された触媒20を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第二のヒドロホルミル化反応器16に返送する。脱触媒されたヒドロホルミル化混合物22を、分離工程23において、主に飽和炭化水素からなる低沸点留分24と粗製アルデヒド25とに分離してよい。場合により、低沸点留分24の一部を反応器16又は1の1つに返送してよい(導管は図3に示されていない)。アルデヒド含有の留分13と25とを、単独で又は図3に示されるように一緒に水素化14に供給してよく、そこでは、アルデヒドと水素27とで水素化させ、アルコール28が得られ、それを場合により示されていないが蒸留において後処理することで、純粋なアルコールを得ることができる。
【0076】
この実施態様の更なる態様は、脱コバルトされたヒドロホルミル化混合物22を、分離工程23で分離することなく、第一のヒドロホルミル化工程からの粗製アルデヒド13と一緒に水素化装置14に供給(導管26)することよりなってよい。
【0077】
随意に、実施態様3では、触媒不含の又は触媒を含有する第二のヒドロホルミル化反応器16のヒドロホルミル化排出物17aを返送することによってアルデヒドを第二のヒドロホルミル化反応器16に供給することができる。特殊な事例においては、流れ17aと一緒に所望のアルデヒド量を第二の反応器16に導入するので、流れ11は実質的にアルデヒドを含有しないか、もしくは含有してはならない。
【0078】
第一の反応器においても、ヒドロホルミル化反応器でヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造される非修飾のコバルト錯体を触媒として使用するのであれば、触媒不含の又は触媒を含有するヒドロホルミル化排出物の一部5aを第一のヒドロホルミル化反応器1に返送することが適切であることがある。同様に、アルデヒド含有の流れ11(示されていない導管を介して)の一部を第一のヒドロホルミル化反応器に返送することが好ましいことがある。
【0079】
実施態様4
本発明による方法の更なる実施態様4では、同様に2つのヒドロホルミル化工程が存在し、その際、再び少なくとも第二のヒドロホルミル化反応器において、ヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造できる非修飾のコバルト錯体が使用される。第一の反応器のための触媒は自由に選択できる。実施態様3との主要な差異は、両方の脱触媒されたヒドロホルミル化排出物を一緒に後処理することにある。
【0080】
図4に、本発明による方法の実施態様4の変法をブロック図で示す。第一のヒドロホルミル化反応器1に、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水素)並びに触媒溶液4を供給する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を減圧し、そして水と空気で実施される脱コバルト7の後に第一の触媒分離8においてコバルト化合物4を分離する。触媒分離8前に、過剰の合成ガス6を取り出す。触媒を含有する相4を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第一のヒドロホルミル化反応器1に返送する。触媒とは、ここでは触媒の前駆物質、例えばコバルト(II)塩溶液を指す。脱触媒された有機相9を分離段階10に導入する。そこで、該相を、第二のヒドロホルミル化反応器16からの脱コバルトされたヒドロホルミル化混合物22と一緒に、未反応のオレフィンとアルデヒドとを含有する留分11、パラフィンとそれ以外の低沸点物が富化されている低沸点留分12、そして粗製アルデヒド13とに分ける。低沸点留分12を排出させる。炭化水素留分11を、合成ガス15並びにコバルト化合物の水溶液20と一緒に第二のヒドロホルミル化反応器16に送る。ヒドロホルミル化混合物17を減圧させ、そして水と空気で実施された脱コバルト18を第二の触媒分離19において触媒20を除去する。触媒分離19前に、過剰の合成ガス21を取り出す。分離された触媒20を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第二のヒドロホルミル化反応器16に返送する。脱コバルトされた第二のヒドロホルミル化混合物22を、前述のように第一工程のヒドロホルミル化混合物9と一緒に分離工程10に供給する。粗製アルデヒド13を水素化装置14において水素27を用いて水素化して、粗製アルコール28を得ることができる。このアルコールを、示されていないが蒸留において後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
【0081】
随意に、実施態様4では、触媒不含の又は触媒を含有する第二のヒドロホルミル化反応器16のヒドロホルミル化排出物(破線で示された導管17a)を返送することによってアルデヒドを第二のヒドロホルミル化反応器16に供給することができる。特殊な事例においては、流れ17aと一緒に所望のアルデヒド量を第二の反応器16に導入するので、流れ11は実質的にアルデヒドを含有しないことを要する。
【0082】
第一の反応器においても、ヒドロホルミル化反応器でヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造される非修飾のコバルト錯体を触媒として使用するのであれば、触媒不含の又は触媒を含有するヒドロホルミル化排出物の一部(破線で示された導管5a)を第一のヒドロホルミル化反応器1に返送することが適切であることがある。同様に、アルデヒド含有の流れ11(示されていない導管を介して)の一部を第一のヒドロホルミル化反応器に返送することが好ましいことがある。
【0083】
実施態様5
また以下に記載する本発明による方法の実施態様5も、同様に2つのヒドロホルミル化工程で実施される。両方の反応器において、非修飾のコバルト錯体が触媒として作用する。少なくとも1反応器において、特に第二の反応器において、触媒がヒドロホルミル化の間にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造される。この変法の殊に有利な実施は、両方の反応器において活性のコバルト錯体がヒドロホルミル化の間にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によって製造されることにある。
【0084】
本発明による方法の実施態様5の変法のブロック図を図5に示す。第一のヒドロホルミル化反応器1に、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水素)並びにコバルト化合物の水溶液4bを供給する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を、第二のヒドロホルミル化反応器16からのヒドロホルミル化混合物17と一緒に合されたヒドロホルミル化排出物として、有利には1.5〜3.0MPaに減圧させ、そして水と空気で実施された脱コバルト7の後に触媒分離8において触媒4を除去する。触媒分離8前に、過剰の合成ガス6を取り出す。形成されたアルデヒド、アルコール及び未反応のオレフィンを含有する混合物9が得られる。触媒4を、場合により部分量を排出し、新たな触媒で補充した後に、両方の部分流4bと4bに分配する。部分流4bを第一のヒドロホルミル化反応器1に返送し、かつ部分流4aを第二のヒドロホルミル化反応器16に返送する。脱コバルトされたヒドロホルミル化排出物9を、分離工程10において、主にオレフィンとアルデヒドとからなる留分11、パラフィンとそれ以外の低沸点副生成物が富化された実質的にアルデヒド不含の低沸点留分12、そして粗製アルデヒドとに分離する。低沸点留分12を排出させる。炭化水素留分11を、合成ガス15並びにコバルト化合物の水溶液4aと一緒に第二のヒドロホルミル化反応器16に導入する。粗製アルデヒド13を水素化装置14において水素27を用いて水素化して、粗製アルコール28を得ることができる。これを、示されていないが蒸留において再び後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
【0085】
随意に、変法5では、第二の反応器16の触媒を含有するヒドロホルミル化排出物17aの供給によって、両方の反応器の触媒を含有する混合物の供給によって(導管は示されていない、装置7の前又はその中から取り出す)、もしくは両方の反応器の脱触媒された混合物9の供給によって(導管は示されていない)、又は前記の流れの2つ又は3つの供給によって、アルデヒドを第二のヒドロホルミル化反応器16に導入できる。特殊な事例においては、前記の1つの/複数の流れと一緒に所望のアルデヒド量を第二の反応器16に導入するので、流れ11は実質的にアルデヒドを含有しないことを要する。
【0086】
随意に、第一の反応器1において、第一の反応器1からの触媒を含有するヒドロホルミル化混合物5a、両方の反応器のヒドロホルミル化排出物の触媒を含有する混合物5bもしくは両方のヒドロホルミル化排出物の脱触媒された混合物9a又は前記の流れの何らかの組合せを導入して、第一の反応器の供給口において規定のオレフィン/アルデヒド比に調整することができる。同様に、アルデヒド含有の流れ11(示されていない導管を通じて)の一部を第一のヒドロホルミル化反応器に導入することが好ましいことがある。
【0087】
本発明を、以下の実施例で例示的に説明するが、本発明は、詳細な説明と特許請求の範囲からその用途範囲が生ずるもので、実施例に示される実施態様に制限されるものではない。
【実施例】
【0088】
実施例1 連続的な二工程法、第一のヒドロホルミル化工程
オレフィンのヒドロホルミル化は、実質的に縦型高圧管形反応器(90mmの直径、3600mm長)及び後接続されたラシヒリングで充填された脱コバルト容器(内容量5l)並びに相分離容器(内容量30l)からなる試験設備において連続的に実施した。流動方向と互いに直交して取り付けられた複数の多孔板(5つの多孔板、第一の多孔板は1000mmの反応器高さに、後続の多孔板は500mm間隔で)によって、高圧反応器の反応器空間はカスケード化されている。反応器の下端部で出発物質を計量供給するために、3成分混合ノズルを使用した。反応器内容物は、必要に応じて、設置された加熱装置及び冷却装置によって加熱又は冷却することができる。
【0089】
ヒドロホルミル化の開始前に、反応器に15lのジ−n−ブテン(OXENO Olefinchemie GmbH社のOctol法から)及び3lの酢酸コバルト水溶液(1質量%のコバルト)を供給した。反応器を175〜185℃の作業温度にした後に、これらの混合ノズルを介して更なる出発物質:Cオレフィン(OXENO社のOctol法からのジ−n−ブテン)、1質量%のコバルトを含有する酢酸コバルト水溶液及び合成ガス(容量比CO/H=1:1)を反応器に連続的に供給した。
【0090】
以下の流量に調整した:10.0kg/hのジ−n−ブテン及び0.50kg/hの酢酸コバルト溶液。反応器の圧力を、合成ガスによって27MPaの一定の反応圧に、5.0〜9.5Nm/hの合成ガス流量で調節した。5時間の試験時間後に、定常作業状態に至った。有機相を連続的に反応器の頂部で取り出し、1〜1.5MPaに減圧し、そして引き続き脱コバルト容器に送った。脱コバルト容器前に、有機相にプロセス水(8kg/h)を供給した。
【0091】
脱コバルト工程で、ここで二相の混合物から、140℃において25Nl/hの空気と一緒にプロセス水の存在下に、Co−カルボニル錯体を酢酸コバルト及び/又はギ酸コバルトに変換させつつ除去し、そして引き続き後接続された分離容器中で分離した。非常に十分にコバルト除去された有機相から、蒸留によって未反応のCオレフィンを除去した(実施例2と3を参照)。
【0092】
選択された反応条件下で、ジ−n−ブテン転化率は約80%で達成された。脱コバルト後の粗生成物排出物は、GC分析によれば以下の組成を質量%で有する:19.8%のC炭化水素、そのうち4.6%はCパラフィン、57.6%のイソノナナール、18.3%のイソノナノール、2.7%のエステル(イソノニルホルミエート)及び1.6%残留物。脱コバルト後に、後接続された蒸留において実施例2及び3に記載のように、C炭化水素を有用生成物(イソノナナール、イソノナノール及びイソノニルホルミエート)の粗生成物に分離した。Cオレフィン含有の炭化水素を、出発材料として第二のオキソ工程で使用した。
【0093】
実施例2及び3炭化水素の蒸留による分離
炭化水素(オレフィン及びパラフィン)と有用生成物とを分離するという目的で、1つの蒸留塔において、2つの試験で回分式に、実施例1からのそれぞれ約250kgの反応生成物(脱コバルト工程の生成物)を蒸留した。
【0094】
蒸留試験のために、Sulzer DX型研究用充填物(Laborpackung)で5mに充填された80mmの直径を有する回分塔(Batch-Kolonne)を使用した。
【0095】
実施例2(本発明によるものではない)
頂部温度67℃、圧力0.01MPa及び還流比5での第一の蒸留試験において、頂部を介して低沸点物として実質的にCアルデヒド不含のC炭化水素留分(46kg)を取り出した。GC分析によれば、前記留分は99.9質量%のC残留炭化水素(76.9質量%、Cオレフィン、23.0質量%のCパラフィン)及び0.1質量%のCアルデヒドを含有していた。底部留分(197kg)は、有用生成物としてCアルデヒド、Cアルコール及びイソノニルホルミエートを含有していた。以下の底部留分の組成がGC分析によって測定された:71.7質量%のイソノナナール、22.7質量%のイソノナノール、3.4質量%のエステル(イソノニルホルミエート)、2.0質量%の高沸点物及び0.2質量%のC炭化水素。C炭化水素含有の頂部留分は、ヒドロホルミル化のための出発材料として第二のオキソ工程で使用した(実施例4を参照)。
【0096】
実施例3(本発明による)
脱コバルト工程からの第二の250kgの生成物の蒸留において、相応の蒸留条件(頂部温度70℃、圧力0.01MPa及び還流比2)を選択することによって、意図的により高い含量のCアルデヒド(イソノナナール)をC炭化水素留分中に残した。頂部から低沸点物として取り出された約45.5kgの留分は、95.0質量%のC炭化水素の他に約5.0質量%のイソノナナールを含有していた。C炭化水素含有の頂部留分は、ヒドロホルミル化のための出発材料として第二のヒドロホルミル化工程で使用した(実施例5を参照)。底部留分(196kg)のために、GC分析により以下の組成が測定された:71.5質量%のイソノナナール(INA)、23.0質量%のイソノナノール、3.3質量%のエステル(イソノニルホルミエート)、2.0質量%の高沸点物及び0.2質量%のC炭化水素。
【0097】
実施例4(本発明によるものでない) INA不含のCオレフィンを使用した第二のヒドロホルミル化工程
蒸留によって得られた実施例2からのオレフィンのヒドロホルミル化は、実施例1でのように試験設備において連続的に実施した。出発材料として使用される第一のオキソ工程からのC残留炭化水素は、77質量%のCオレフィンの他に、付加的に、Cオレフィンの不所望な水素化によって第一のヒドロホルミル化工程で形成された約23質量%のCパラフィンを含有していた。反応器を180〜195℃の作業温度にした後に、混合ノズルを介して出発物質:C残留炭化水素、1質量%のコバルトを含有する酢酸コバルト水溶液及び合成ガス(容量比CO/H=1:1)を反応器に連続的に供給した。ヒドロホルミル化の開始前に、反応器中に残留C炭化水素及び酢酸コバルト溶液を装入した(量は実施例1を参照)。
【0098】
以下の流量に調整した:5.0kg/hのC炭化水素混合物及び0.35kg/hの酢酸コバルト溶液。反応器の圧力を、合成ガスによって27MPaの一定の反応圧に、2.5〜5.5Nm/hの合成ガス流量で調節した。有機相を連続的に反応器の頂部(7.4kg/h)で取り出し、そして脱コバルト容器中で1.0〜1.5MPaに減圧する。脱コバルト容器前に、有機相に4kg/hのプロセス水を供給した。
【0099】
脱コバルト工程において、容器中でここで存在する二相混合物を140℃で15Nl/hの空気の存在下に反応させ、そして有機相からCo−カルボニル錯体を酢酸コバルトへの反応によって除去し、そして引き続き後接続された分離容器において水相を分離する。十分にコバルト不含の有機相を分析した。脱コバルト後の粗生成物排出物は、GC分析によれば以下の組成を質量%で有する:29.3のC炭化水素(6.9のCオレフィン、22.4のCパラフィン)、23.3のイソノナナール、36.9のイソノナノール及び5.3のエステル(イソノニルホルミエート)並びに5.2の残留物。選択された反応条件下に、Cオレフィン転化率約88.8%及び有用生成物収率81.9%が達成された。
【0100】
実施例5(本発明による) INA含有のCオレフィンを用いたヒドロホルミル化工程
蒸留によって得られた実施例3からのオレフィンのヒドロホルミル化は、実施例4でのように試験設備において連続的に実施した。出発材料(実施例3からの頂部留分)として使用されるC残留炭化水素は、73.18質量%のCオレフィン及び21.86質量%のCパラフィンの他に、付加的に4.96質量%のCアルデヒドを含有していた。
【0101】
反応器を180〜195℃の作業温度にした後に、混合ノズルを介して出発物質:C残留炭化水素、1質量%のコバルトを含有する酢酸コバルト水溶液及び合成ガス(容量比CO/H=1:1)を反応器に連続的に供給した。
【0102】
以下の流量に調整した:5.28kg/hの実施例3からの蒸留物及び0.35kg/hの酢酸コバルト溶液。反応器の圧力を、合成ガスによって27MPaの一定の反応圧に、2.5〜5.5Nm/hの合成ガス流量で調節した。有機相を連続的に反応器の頂部(7.6kg/h)で取り出し、そして脱コバルト容器中に1.0〜1.5MPaに減圧供給する。脱コバルト容器前に、有機相に4kg/hのプロセス水を供給した。脱コバルト工程において、有機相から、140℃で16Nl/hの空気の存在下に、Co−カルボニル錯体を、酢酸コバルト及び/又はギ酸コバルトへと反応させることによって除去し、引き続き後接続された分離容器において水相を分離する。
【0103】
十分にコバルト不含の有機有用生成物相を分析した。出発材料と一緒に反応器に供給されるイソノナナール量を、分析結果(転化率と収率の計算)の評価で考慮した。脱コバルト後の粗生成物排出物は、GC分析によれば以下の組成を質量%で有する:26.3%のC炭化水素(5.2のCオレフィン、21.1のCパラフィン)、20.8のイソノナナール、41.9のイソノナノール、及び5.4のエステル(イソノニルホルミエート)並びに5.6%の残留物。選択された反応条件下に、Cオレフィン転化率約91.7%及び有用生成物収率84.3%が達成された。
【0104】
出発材料中にイソノナナールを含む(実施例5)、そして含まない(実施例4)場合のCオレフィンのヒドロホルミル化でのCオレフィン転化率と収率の比較は、Cアルデヒド含有の出発材料を使用することによって、転化率と収率の顕著な改善に至ることを示している。当該結果によれば、本発明による方法を使用することによって、第二のヒドロホルミル化工程で転化率は従来の技術の方法と比べて約2.9%測点だけ、収率は約2.4%測点だけ改善され得た。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は実施態様1の一変法のブロック図を示す
【図2】図2は実施態様2の一変法のブロック図を示す
【図3】図3は実施態様3の一変法のブロック図を示す
【図4】図4は実施態様4の一変法のブロック図を示す
【図5】図5は実施態様5の一変法のブロック図を示す
【符号の説明】
【0106】
1 ヒドロホルミル化反応器、 2 合成ガス、 3 出発オレフィン、 4 コバルト化合物の水溶液、 4a,4b 部分流、 5 ヒドロホルミル化混合物、 5a,5b 部分流、 6 合成ガス、 7 脱コバルト、 8 触媒分離、 9 有機相、 10 分離工程、 11 低沸点留分、 12 留分、 13 粗製アルデヒド、 14 水素化装置、 15 アルコール、 16 ヒドロホルミル化反応器、 17 ヒドロホルミル化混合物、 17a,17b 部分流、 18 脱コバルト、 19 触媒分離、 20 コバルト化合物の水溶液、 21 合成ガス、 22 ヒドロホルミル化混合物、 23 分離工程、 24 低沸点留分、 25 粗製アルデヒド、 26 導管、 27 水素、 28 アルコール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6〜24個のC原子を有するオレフィンの触媒によるヒドロホルミル化のための方法において、ヒドロホルミル化を一工程又は多工程で実施し、その際、非修飾のコバルト錯体触媒の存在下に実施される前記工程の少なくとも1工程で、出発材料として、少なくとも1種のオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドとを含有し、アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.005:1〜0.2:1である混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.01:1〜0.07:1である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒドロホルミル化を一工程で実施する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも二工程のヒドロホルミル化工程で実施する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一工程のヒドロホルミル化工程で、修飾された又は非修飾のロジウム錯体を触媒として使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
全てのヒドロホルミル化工程でコバルト錯体を触媒として使用する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
全てのヒドロホルミル化工程で非修飾のコバルト錯体を触媒として使用する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
コバルト錯体が触媒として使用される全てのヒドロホルミル化工程で、出発材料として、少なくとも1種のオレフィンとアルデヒドを含有する混合物を使用する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一工程のヒドロホルミル化工程において、ヒドロホルミル化と同時にコバルト塩水溶液と合成ガスとの反応によってヒドロホルミル化工程で製造される非修飾のコバルト錯体を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ヒドロホルミル化混合物から分離されるアルデヒドとオレフィンを含有した蒸留物を、アルデヒドとオレフィンからなる出発混合物の製造のために又は直接的に出発混合物として使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ヒドロホルミル化混合物をアルデヒドとオレフィンからなる出発混合物の製造のために使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ヒドロホルミル化混合物から分離されるアルデヒドとオレフィンを含有した蒸留物及びヒドロホルミル化混合物を、アルデヒドとオレフィンからなる出発混合物の製造のために使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
脱触媒されたヒドロホルミル化混合物を使用する、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
最後のヒドロホルミル化工程のヒドロホルミル化混合物の少なくとも一部を水素化する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
一工程又は多工程のヒドロホルミル化工程の液状のヒドロホルミル化混合物から、触媒の除去後に、未反応のオレフィンを分離する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
分離されたオレフィンの一部を一工程又は多工程のヒドロホルミル化工程に返送する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の方法で使用するのに適した出発混合物であって、該混合物が少なくとも1種の6〜24個のC原子を有するオレフィンと7〜25個のC原子を有するアルデヒドとを含有し、その際、アルデヒドとオレフィンとのモル比が0.005:1〜0.2:1であることを特徴とする出発混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−160746(P2006−160746A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356655(P2005−356655)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(398054432)オクセノ オレフィンヒェミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】OXENO Olefinchemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】